○八木一郎君 ただいま
議題となりました
経済審議庁設置法案外二十八件のいわゆる機構改革諸
法案につきまして、
内閣委員会における
審査の
経過並びに結果を御
報告申し上げます。詳細は
会議録に譲り、ここには
概要のみの
報告といたします。
これら多数の
法律案は、五月七日以来相次いで当
委員会に付託されましたが、爾来
委員会は二十日余にわたり
愼重審議を重ね、昨日をも
つて全
法案を議了いたしました。この間、
委員会はほとんど連日午前午後にわた
つて熱心に
政府の
説明を聞き、
質疑応答を重ねた次第でありますが、五月十九日には
公聽会を開きまして、各分野の有識者から
意見を徴しました。続いてさらに連日
審議が重ねられた次第であります。
現在の行政組織のために置かれておる機関は、府と省の数において、
経済安定本部を入れ、二府、十一省、一本部で、都合十四でありますが、改革案によれば、電気通信省を廃して公共企業体とし、
法務府を省に改め、また
経済安定本部を
廃止した結果、一府十一省、すなわち合せて十二府省となるのであります。
まず、今次の機構改革の基本構想について、
政府の
説明並びに各
法律案の
内容を総合いたしまして、立法の主要な基準を一言で申せば、簡素にして能率的な、責任のはつきりした機構にしたい、そうして行政組織のために置かれる行政機関はそれぞれに、また
政府は
政府全体として
内閣の方針に従い、まとまりのある行政権が行使できるようにいたしたいというのであります。
わが国の行政機構は、戰争中及び
戰後を通じて驚くべきほど複雑厖大化し、行政組織法によれば、組織のために置かれる機関が府であり、省であり、
委員会であり、庁であり、公団までが一機関としてありまするかち、都合五つの機関、すなわち府、省、
委員会、庁、公団が行政権を行使する機関の形とな
つておる次第であります。ところが、憲法の明文には「行政権は、
内閣に属する。」「
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」とあります。現
内閣は、組閣以来、機構改革上について特にこの点に留意し、これを尊重、重視いたしまして、責任の明確を欠くおそれのある複雑な機関はできるだけこれを
整理するか、あるいは
廃止する方針を進めて参つたのであります。すなわち、今回の改革において、各種行政
委員会や各省の外局たる庁は、審判的機能を主とするものを除きこれを
廃止し、または公団に関する
規定のごときは全部これを削除し、
内閣がしつかりと責任を持
つて行政権を行使しておるという責任体制の明確化をはかつたのであります。
〔副
議長退席、
議長着席〕
右の結果が外局
廃止の断行と
なつたのであります。ところが、これは画一的に行われ、実体が無視されたではないかとの批判もあります。
今その実績を概括して申し上げますると、行政
委員会は二十三あつたものが十、すなわち統計、全国選挙管理、公益
事業、
地方財政、電波管理、中央更生
保護、証券取引、公認
会計士、管理及び外資の十
委員会はこれを
廃止したのであります。このほかに統合されるものと新たに設けられるものとがありまするために、これらを差引いたしまして十四の
委員会を置くこととな
つているのであります。また庁は二十二あつたものが十四
廃止されまして、賠償、入国管理、国税、引揚援護、資源、中小企業、海上保安、航空、
経済調査、印刷、造幣及び工業技術等の十四庁は、各省の内局または附属機関にしたのであります。
御承知の通り、外局、すなわち何々
委員会、何々庁と呼ばれる役所は、終
戰後にわかにその数が増しておりまして、現在実におびただしい数に上
つております。しかも、それは戰前の外局と異りまして、特別の権限を持
つておりまして、ある程度独立的の存在であります。特にそれは
委員会においてはなはだしきもののあることを見るのであります。一省としてのまとまりある行政を行うためには、ぜひともこれを内局に改めて、
内閣の責任において一貫した行政権の行使をする必要がある。これが今回極力外局の
整理に努めたゆえんと認めておるのであります。役人の判こを押す長の数を減らしても簡素、能率、責任の三大眼目に資することに苦心した結果であると認めました。
さらに、このたび人事院が
廃止せられ、新たに国家人事
委員会なる名称のもとに、総理府の外局たる地位に移されましたが、これもまた責任体制確立の見地からきわめて意義深いものがあるといわなければなりません。現在、人事院は、御承知のごとく、
国家行政組織法や
行政機関職員定員法の適用の範囲外にあります。
従つて、一般の行政機関とはよほど違つた性格を持
つておりまして、巷間往々四権分立に
なつたのだとまで評せられたほどでありましたが、今回の
改正によりまして、他の行政機関と同様に
国家行政組織法並びに
行政機関職員定員法の支配下に入ることとなり、人事院総裁は国家人事
委員長となり、一般行政機関と同様にしたのであります。
次に、今回新たに
内閣に法制局を置くことといたしております。これは現在
法務府に置かれてありまする法制
意見各局を
内閣に移すものでありまして、これによ
つて法制面よりする
内閣の総合調整的機能を強化充実せんとするものであります。現在においても、
法務府設置法の
規定によれば、
法務総裁は
内閣に置くものとせられておりますが、他面、その事務所たる
法務府は
国家行政組織法の適用を受けておりまして、その所掌事務にも種々なるものを含んでおるのであります。今回これらを
整理区分いたしまして、法制
意見的事項は
内閣直属の法制局に移すと同時に、一般
法務行政は新設される
法務省に所管させることにいたしておるのであります。
次には、行政管理庁が機構においても人員においても著しく拡大されておりますが、これは全行政機構を総合調整する機能の充実であると思われます。すなわち、現在の行政管理庁は長官官房及び管理、監察の二部からなり、職員の数もわずか五十八名にすぎませんけれども、
改正案におきましては、新たに統計基準部を加え、職員の数は千三百余人を置くことにな
つております。増員の大
部分は監察部でありまして、従来は中央機関だけでありましたものを、新たに
地方機関として
地方監察局を八箇所に設けようとしております。これによりまして、従来とかく監察機構が犬牙錯綜して煩雑をきわめておりましたものが、面目を改め、適切なる監察を行い得ることと思われるのであります。
元来、行政
改善の実をあげるためには、機構の改革のみでは所期の
目的を達し得ないことはあらためて申すまでもないのでありまして、各機関が機関本来の機能を十分に発揮し得るように
運営することがむしろ何よりも肝要なのであります。その
運営のぐあいを、つぶさに跡づけてこれを評価し、批判して、絶えずこれを向上
改善せしめるところに、初めてその機構もその効果を現わすことができるのであります。今回の行政管理庁機構の拡充は、この意味において、総合調整上顯著なる改革であると申さなければならないと思います。
以上申し述べました以外にも、現在の
地方自治庁を拡大して自治庁とし、これに
地方財政
委員会並びに全国選挙管理
委員会を統合したこと、及び
経済安定本部を
廃止して新たに
経済審議庁を設けたことなども、いずれも今次の行政改革において一貫した方針といわれる、行政組織と行政の機関が統合調整せられ、十分その機能が発揮できるように努めた成果であると見るべきでありましよう。
なお、従来の警察予備隊と海上保安庁の一部を統合して新たに保安庁を設けましたこと、あるいは電気通信省を
廃止してこれを公共企業体とし、国際電気通信部門は分離して
政府出資の特殊会社とすることのごときは、いずれも時の必要に応ずる適切の改革と申すべきでありましよう。
以上をも
つて今回の行政機構改革案の主要なる事項に関し一応の
説明を終りました。次に、
委員会における
質疑応答について
簡單に申し述べたいと思います。何分
委員会に付託せられました
法案の数が三十の多きに達しておりますので、自然
質疑応答の
内容も多岐多端にわた
つております。詳細はすべて
会議録について御承知願うことといたしまして、ただここでは、ごく
簡單に概略の
説明をさせていただきます。
まず、行政機構改革の前提となるのは事務の
整理であ
つて、事務の
整理を行わないで機構の改革を行うことは事の前後を誤るものではないかとの質問がなされましたが、これに対して、
政府からは、事務
整理の先決問題たることは認めていたが、何分これはすこぶる多量の法令の
整理にまたねばならない
関係上、短日月に行うことは困難であるから、法令
整理本部を設け、先般来せつかくこれが調査に着手している、その調査の完了をま
つて、すみやかに
整理を行う考えである旨の答弁がなされました。
次に、今回の改革案においては、
予算編成を担当する部局について何ら手を触れるところがなかつたが、かくのごとくであ
つては、せつかくの機構改革も画龍点睛を欠くではないかという質問に対して、
政府は、
予算編成部局の問題はきわめて重大で、各国の
制度も一様ではないが、これは諸般の
制度や一般社会
状態ないしその国の伝統などとも密接な関連を持
つているから、この部局の構成だけを切り離して得失を判定するわけには行かぬ、またその影響するところが広汎であるから、軽々しく改革を加えることができない、いろいろな角度から十二分に
検討を加えた上で愼重に結論を出す必要があるので、今回はこれを改革案の中に加えなかつたという
趣旨の答弁をしました。
また、各省間にまたがる共管事項の
整理統合は年来の懸案で、当然今回の改革案中の主要なる
内容の一つとなるべきものと期待していたが、別段それが見当らないようだがという質問に対して、
政府の答弁は、共管事項の
整理は重要問題だが、事すこぶる多端にわたるので、法令
整理本部において十分調査
検討の上、適切妥当の
整理を行いたいということでありました。
次に、真に行政を改革するには機構の改革だけでなく、
運営を
改善するためには、ある程度の立法
措置も必要でないかという質問がなされましたが、
政府はその
趣旨にはまつたく同感だと答弁いたしました。
次に、今回の改革案において、外局たる庁や官房または局中の部を
廃止することとしており、その結果少からぬ次長または監なるものが設けられることにな
つているが、これはいたずらに形式にとらわれたもので、中にはこうも
実情に沿わないものも少くないようだ、たとえば中小企業庁や引揚援護庁のごときは
現状のまま存置すべきであ
つて、これらは画一的でなく、あくまで
実情に即した機構となすべきでないかとの質問に対し、
政府は、今回の改革は各行政機関の権限を明らかにし、かつ内部部局の
命令系統を直截簡明にして、大臣、次官、局長、課長とそれぞれ責任の所在をはつきりさせるという
趣旨から外局を内局にすることにいたしたのであ
つて、その行政部局を軽視したり、その仕事を圧縮する意図はごうもなく、むしろ責任体制を確立することに役立たせ、これを重視し、これを伸張する考えであるというのであります。この点は、
法律的に見ても、
国家行政組織法の立法精神として明らかであります。ただ暫定的な
経過措置として、一年また一年と期限を限
つて認めて参つたものであります。
原案は、本年五月三十一日限りを六月三十日まで認めて、七月一日以降は新機構に改めて参ろうということにな
つております。また次長や監は特に必要と認めたところにのみ設けたのであ
つて、すなわち官房や局中の部で
廃止されるものは全部で五十四あるのに対して、次長または監が設けられましたものはわずかに十五にすぎないと答弁しました。
以上は、
委員会における
質疑応答の一斑であります。このほか幾多の重要な問題について熱心なる
質疑応答が行われておりますが、すべては
会議録に譲りますから御了承願います。
かくて、五月二十八日、上述の二十八
法案、並びに同
日本委員会付託と
なつた、参議院発議にかかる
国家行政組織法の一部を
改正する
法律案について
討論採決を行つたのでありますが、その詳細は
会議録によ
つて御承知を願うこととし、
審査の概略を申し上げますならば、まず改進党の竹山委員より、
経済審議庁設置法案について、
経済審議庁を
経済企画庁とし、同庁の任務に
予算編成方針の策定等を加え、内部部局に開発部を設ける等の
修正案、並びに
通商産業省設置法案については、中小企業庁を
現状に復活する
修正案が
提出されたのでありますが、これらの
修正案はいずれも多数をも
つて否決の上、
原案の通り可決されたのであります。
次いで、
自由党の江花委員より、
保安庁法案ついて長官、次長、局長等の任用に関する制限
規定に対する
修正案、並びに
法務府
設置法等の一部を
改正する
法律案、
運輸省設置法の一部を
改正する
法律案、
大蔵省設置法の一部を
改正する
法律案等の
施行に伴う
関係法令の
整理に関する
法律案及び
国家行政組織法の一部を
改正する
法律案について
関係法律の
改正または制定に伴う
修正案が
提出され、これらはいずれも多数をも
つて修正案の通り
修正議決されました。残余の二十二
法案はいずれも多数をも
つて原案の通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
なお
自由党の青木正委員より、行政機構の改革については、国会が自主的に常時調査研究の上これを立案することが最も当を得たものであるとし、これがため
相当額の
予算をも
つて衆議院に特別機関を設け、行政機構改革に関する調査立案を行うことが適当であるとする旨の申合せをなす動議が
提出され、
討論採決の結果、多数をも
つて右提案を可決されました。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)