○立花敏男君
日本共産党は、ただいま提案されました
地方税法の
改正原案に反対であり、
修正部分には
賛成であります。
昭和二十七
年度地方予算は、当初予算約七千億に達する厖大なものでありまして、これを二十六
年度に比べますと約一千百億の膨脹であり、さらに二十五
年度に比べますと二千百億の
増加であります。しかるに、この間二十七
年度におきまして
政府の支出いたしました
平衡交付金は、二十六
年度に対しましてわずか五十億の増額でありまして、二十五
年度に比しましてもわずか百六十五億の増額でしかないのであります。
地方財政膨脹のわずか二十分の一にも達していないのであります。
しかも、この間における国家予算を見ますと、二十七
年度国家予算は、当初予算約八千五百億に達しておりまして、これを二十六
年度の当初予算約六千五百億に比べますと約二千億円の大膨脹であります。この大膨脹のすべては売国的軍事支出でありまして、米軍の駐屯費、安全保障費、警察予備隊費約二千億を支出していることは周知の通りであります。この間、わずか五十億の
平衡交付金の増額を
行つているのみであります。
地方財政に対しては、ほとんど何らの顧慮も拂わず、
所得税等、税の主たる
部分を中央において占有し、二千億に達する專売益金を独占し、
平衡交付金を削減し、あまつさえ
地方の責任において借り入れますところの
地方起債に至るまで重大なる制限を加えているのであります。
政府は、まつたく中央における植民地的軍事予算の確保のために
地方財政を
犠牲にしているのでございます。ここに
地方財政破綻の第一の基本的な原因が横たわ
つているのであります。
しかも、
政府の軍事産業偏重の産業政策及び中日貿易あるいは日ソ貿易等の禁止の向米一辺倒の貿易政策は、完全に
地方の平和産業、あるいは民族資本を崩壞いたしまして、
地方の財源を完全に枯渇せしめているのであります。一方、奴隷的な低賃金と略奪的な重税との挾撃にあいまして、
国民の大半は完全に担税力と納税意欲を喪失しているのであります。従
つて、
地方自治体といたしましては、急激に増大する財政需要に対し、
平衡交付金等の国家よりの支出以外には、
地方にはまつたく財源を求める余地がないのであります。ここに
地方財政破綻の第二の原因があるのであります。
さらに
政府は、何ら財政的裏づけなくして徴兵
事務、住民登録
事務、防空
事務、軍事土木
事務、あるいは政治特高警察
事務等々をどしどし
地方に押しつけまして、その費用を
地方の
負担に転嫁せしめているのであります。さらに民生
関係事務、社会
関係事務等も
地方へ移管いたしまして、中央はその責任と経費の
負担をまぬがれようとしているのであります。ここに
地方財政破綻の第三の根本的な原因があるのであります。
かくて、
地方自治体の財政破綻、赤字
市町村の続出が全国的現象とな
つて現われているのは当然でありまして、この
法案の
提案理由、
趣旨説明によるところの
岡野国務大臣の言葉によりましても、次のように明言されております。
地方団体の財政状態をながめますと、若干の例外を除き、ひとしく財源捻出に苦慮しているのであります、
昭和二十五
年度の決算においては、形式上も赤字を出している団体は、四十六都道府県の中では四団体、五大市の中では三団体、その他の二百六十有余の都市の中では約三割に上る八十一団体、一万町村の中では約四百の団体に達しているのであります、形式上は赤字決算をいたしませんでも、実質上赤字であつた団体は、おそらくこの数倍に上るものと想像されるのであります。
地方団体が財政的に異常の窮迫状態にあるということは、何人もこれを認めざるを得ないのであります、これはほかならない
政府自身の告白であります。
しかも、
政府は、かかる事実を認めながらも、問題の正しい解決の方向へは向わないで、かえ
つて逆に一層事態を悪化させる手段を採用したのであります。すなわち、
政府に真に
地方財政を確保し、
地方自治を確立する意図があるのであるならば、
政府は、今ただちに、上に述べたような
地方財政破綻の根本的原因を除却するために、中央の軍事予算を廃し、中央より
地方への十分なる財源援助をなし、さらに
地方への植民地的軍事
事務の押しつけをやめるべきであります。しかるに、
政府は、かかる
措置をとるどころか、かえ
つて逆に
地方税の大増税を企てまして、そのために
提出されて参
つたのがこの
法案であります。
政府は、この
改正案によ
つて、
昭和二十七
年度の
地方税を、二十六
年度に比しまして約四百十四億の大増税を
実施しようとしているのであります。まことにこれは、しかばねにむちうつがごとき
法案であり、一万有余の全国自治団体をもあえて
犠牲に供せんとする
政府の売国的植民地政策は、まつたくここにきわまれりというべきであります。従
つて、
法案の
内容も軍事的、反
国民的
内容を持つものであります。
まず第一に
改正案の持つ軍事的な性格は、巨大産業あるいは大資本の擁護の点であります。すなわち、大資本の住民税の
税率を百分の十五から百分の十二・五に引下げているのであります。あるいはまた、大
企業の
事業税の計算において、
企業の赤字を二箇年間にわた
つて毎年の
所得より
控除するということを認めているのであります。あるいはまた、
附加価値税の
実施をさらに一箇年延長することによ
つて、大
企業に対して、二十七
年度において約三十数億円の実質上の減税を與えているのであります。その他
修正案におきましては、主として軍需工業の製品、たとえばアルミナ、電解鉄、各種ソーダ、セメント、ビニール等々、二十五品目にわた
つて電気ガス税の免税を
規定しているのであります。まことに、この
改正案は、完全に軍事産業を育成し、侵略戰争に奉仕するものであります。
次に、第二に
改正案の持つ反
国民的、反民族資本的な点を見まするに、すなわち、
附加価値税を
延期することによりまして、
中小企業に対しまして約百二十三億の大増税を課しているのであります。しかも、現行のままの
事業税の計算でいたしますと、
中小企業に対しましては約二百七億の大増税となるのでありますが、いくら何でもこれではあまりひど過ぎまして、
中小企業をごまかすことはできないというので、
政府、與党の考えましたのが、
基礎控除三万八千円の
改正であります。
政府は、この点のみを宣伝これ努めているのでありますが、
中小企業者は断じて欺かれないのであります。すなわち、
事業税は、二十六
年度に比しまして、二十七
年度は百四十二億の絶対的な増税が行われているからであります。
次は、
国民健康保険税の適用の範囲の拡大であります。
国民健康保険経済の行詰りは、
政府の社会保障費の削減と、低賃金による勤労階級の生活の破綻がその根本的な原因であることは明白でありまして、これが解決はあくまで
政府の責任においてなさるべきものでありまして、決して強制力をも
つて国民より
徴収するところの
国民健康保険税の形でなさるべきでないことは明白であります。しかも、なおあえてこれをなすところに今回の
改正案の反
国民的な性格が潰憾なく暴露されていると断言してはばからないのであります。
さらに最後には、苛烈な形における住民税の收奪が企図されている点であります。すなわち、前
年度までは税金を免除されておつたところの、六十歳以上、年収十万円以下の老人から新しく住民税を
徴収しようとしているのであります。まさに鬼畜の行為といわなければなりません。かくのごとく、この
改正案は、まさに軍事的であり、かつ反
国民的であることは明白であります。
そこで、総選挙を目前に控えて、いくら何でもこれではあまりひどいと考えました
政府、與党が案出いたしましたのが
修正案であります。従
つて、
修正案は、本質的には欺瞞的なものであり、
改正案の反
国民的本質を隠蔽する役割を果すものであります。すなわち、
修正案は、何ら以上のごとき
改正原案の持つところの欠陷を
修正するものではなく、
改正案とはまつたく別個な、現行
地方税に対するところの
修正であります。しかも、この
修正はまつたく無責任きわまるものでありまして、大衆の
負担の
軽減を何ら約束していないのであります。あるいは、
修正案による
地方団体の減収に対しては何ら保証していないのであります。この二点において、まつたく人気取り的な選挙対策以外の何ものでもないのであります。すなわち、
入場税と
遊興飲食税の
軽減によりまして、これら業者は平
年度約百三十億円の納税義務が免除せられるのでありますが、一方、入場料あるいは
遊興飲食費をそれだけ安くするための
措置は何らとられていないのであります。また一方、
地方自治団体は、特に府県側は、この
修正によりまして、二十七
年度数十億、平
年度百数十億の
減收になるのでありますが、これに対する財源
措置は何ら與えられていないのであります。しかもなお共産党がこの
修正案に
賛成いたしますのは、この
修正案によ
つて真に大衆の
負担を
軽減するための闘いの道が開かれるという意味においてであります。(
拍手)もう一つは、主として
中小企業に属するこれら業者の経営が少しでも容易になる可能性が生れるという点からのみであります。
以上のごとく、
政府はあくまで單独講和條約あるいは売国
行政協定に基くところの軍事植民地政策を強行せんとしていることは明白であります。その行政的、財政的しわ寄せを
地方団体と
国民の肩に転嫁せんとしておることも明白であります。その結果といたしまして、四百十四億の大増税を
規定するところの本
改正案も
提出されておりますことは、もはや疑問の余地がないのであります。しかも、
国民大衆の生活も、
地方産業の経営も、
政府の売国政策の結果、今や壞滅的状態にあるのでありまして、これ以上の増税などは、まつたくも
つてのほかというべきであります。
さらに、従来の植民地的重税政策と、最近の苛酷なる強制
徴税は、今や全
国民の憤激の的とな
つておるのでありまして、自己の防衛と民族の独立のために、今や売
国税政策打破、再軍備、人民彈圧のための強制
徴税反対の闘争が、全国的規模で燃え上
つておるのであります。
政府は、この状態に狼狽して、これを隠蔽せんとして……。