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1952-05-15 第13回国会 衆議院 本会議 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十五日(木曜日)  議事日程 第四十一号     午後一時開議  第一 地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  簡易生命保險法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  日程第一 地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案内閣提出)  破壊活動防止法案内閣提出)  公安調査庁設置法案内閣提出)  公安審査委員会設置法案内閣提出)     午後三時三十二分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————  簡易生命保険法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 参議院から、内閣提出簡易生命保険法の一部を改正する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案議題となすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  簡易生命保険法の一部を改正する法律案参議院回付案議題といたします。     —————————————
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案参議院修正同意諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて参議院修正同意するに決しました。      ————◇—————  第一 地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案内閣提出
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第一、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員会理事野村專太郎君。     〔野村專太郎登壇
  8. 野村專太郎

    野村專太郎君 ただいま議題となりました地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案に関する地方行政委員会における審議経過並びに結果につきまして、その概要を御報告申し上げます。  まず本案内容をきわめて簡單に申し上げまするが、改正の第一点は、現行法では昭和二十五年、同二十六年の両年度限りとなつておりました特別交付金恒久制度といたし、そのために交付金普通交付金特別交付金の二種にわかつことといたし、特別交付金総額は、従来交付金総額の一〇%でありましたものを八%と改めることであります。  改正の第二点は、普通交付金算定に用いる基準財政需要額算定のための測定單位につきまして、厚生労働費に関する昭和二十六年度までの特例を廃止するとともに、一層合理的かつ簡素に需要額測定ができるようにするため、たとえば、従来警察費については警察吏員数消防費については家屋の床面積測定單位でありましたのを、それぞれその団体の人口に改めるというふうに、道府県においては社会福祉費外費目市町村においては警察費外費目につき必要な改正を加えるとともに、社会福祉費生活保護費及び児童福祉費衛生費保健所費については、なお検討余地がありますので、暫定的な特例を存置することであります。  改正の第三点は、基準財政需要額算定に用いる各測定單位の費用を法律に定めることとすることであります。これは本来法律で定めることになつているのを、暫定的に地方財政委員会の定めるところにゆだねられておつた。それを、本則にもどすことでありまして、この單位費用法定により、交付金制度全般運営安定感を増大するものであります。なお單位費用法定に関連いたしまして、現在委員会規則をもつて定めることになつておりますところの測定單位の数値、補正係数及び基準財政收入額算定方法も、また右と同じ理由によつてこれを法定することが必要でありますので、あらためてこれを法律で定めることといたし、しかもなお十分な研究が遂げられますまでの過渡的な措置として、昭和二十七年度及び昭和二十八年度に限り委員会規則で定めることとなつております。  改正の第四点は、新たに交付金制度運用にあたり、地方団体はその地方行政について合理的かつ妥当なる水準を維持することに努め、少くとも法律または法律に基く政令により義務づけられました規模内容とを備えるようにしなければならないことといたしまして、地方団体がこれを備えることを怠つていると認められる場合には、関係行政機関はこれを備えるべき旨の勧告をすることができ、さらに、もし地方団体がなおこの勧告に従わなかつた場合には、一定の手続により、当該地方団体に対し交付すべき交付金の額の全部もしくは一部を減額し、またはすでに交付した交付金の全部または一部を返還させる方途を講じ得ることといたした点であります。  以上のほか、交付金交付時期の改正都道府県知事市町村基準財政收入額算定する場合における国税に関する書類の閲覧に関する規定の整備、その他この制度運営経験に徴し必要と認められた若干の改正を行おうとするものであります。  本法案は、三月二十六日、本委員会に付託せられ、翌二十七日、岡野国務大臣から提案理由の説明を聞き、爾来愼重審議を軍ねたのでありますが、そもそも地方財政平衡交付金制度は、新しい地方財政制度の根幹としての重要性から、実施以来二年有余、常に本委員会における論議の対象として取上げられ、あるいはその交付金総額の大小、あるいは交付金額算定基準配分方法適否等については熱心な検討がなされていたことでもありますし、今回の政府提案にかかる本改正案も、本制度運用の既往の実績にかんがみ、かつ本制度の本旨に一層即応するため、交付金配分基準財政需要額算定を合理的かつ適切ならしめ、本制度運用上その機能の全きを期そうとするものでありますので、個々改正案については多くの異論はなかつたのであります。従つて本案の所期する目的及び改正趣旨は一応これを了承するも、なお本制度がその効果を十分に発揮して地方財政の安定を期するためには、ひとり本法に規律する個々技術的諸点改正を加えるのみにとどまらず、地方財政の現状に即応して地方財源の不足を十分に補い得るだけの交付金総額確保せられなければならないということが強調せられるとともに、地方行政費中に大きな割合を占める義務教育費平衡交付金制度との関係や、また交付金返還制度運用上、中央政府地方自治に対する侵害が起りはせぬかというような問題が論議されたのでありますが、それらの詳細は会議録についてごらんを願うことといたします。  かくて、五月十三日質疑を終了、討論に入り、大泉委員自由党を、床次委員は改進党を、門司委員日本社会党を、八百板委員日本社会党第二十三控室をそれぞれ代表して賛成意見を述べられ、立花委員日本共産党を代表して反対の意を表せられました。翌十四日の採決に付し、賛成多数をもつて可決と決定されたのであります。  次いで、この際、自由党及び改進党の両党共同提案により、本法案附帶決議を付すべき旨の動議がなされたのでありますが、その内容は次の通りであります。 一、政府地方財政平衡交付金総額決定基礎たる基準財政需要額及び基準財政收入額算定にあたつては、十分経済の推移と地方実情に即してこれを行い、もつて所要交付金額確保し、将来再び地方財政に不当な圧迫を加え、または欠陷を生ぜしめるがごときことなきを期すること。 二、政府はすみやかに義務教育実施のため必要とする施設内容基準規定する法律を提出し、もつて義務教育費確保に資すること。 三、特別交付金算定配分については、できる限り客観的基準によりこれを決定するよう努力すること。この動議は、採決の結果、賛成多数をもつてこれを付すべきものと決定いたしました。  かくて、本法律案は、右の附帯決議を付して原案通り可決すべきものと決定せられた次第であります。  右報告をいたします。(拍手
  9. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 岩本信行

  11. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出破壊活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、右三案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  12. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  破壊活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。法務委員長佐瀬昌三君。     〔佐瀬昌三登壇
  14. 佐瀬昌三

    佐瀬昌三君 ただいま議題となりました破壊活動防止法案公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の三案につきまして、政府提案理由及び法務委員会における審議経過並びに結果を一括して御報告申し上げます。  御承知のように、本法案は、わが国独立後の治安状態に関し、内外注視のさ中に提出されたものであります。以下、本案に対する政府提案理由を御説明申し上げますると、現下国内においては、あるいは集団暴力により、あるいはゲリラ戰法により、警察、税務、署等を襲撃して、放火殺傷等犯罪をあえてする活動がひんぴんとして各地に行われているのであります。しかも、これら破壊活動の背後には、憲法及びそのもとに成立した政府武装暴動によつて転覆することの正当性を主張し、あるいはその準備的訓練として暴力の行使を煽動する不穏なる文書が組織的に配布せられているのであります。従つて、このような一連の事犯は、広汎かつ秘密な組織団体によつて指導推進されているとの疑いを深めざるを得ないのであります。しかるに、わが国におきましては、このような暴力主義的破壊活動をあえてした団体に対しては、たといその団体自体がいかに危險なものであつても、手をこまねいて傍観せざるを得ない状態でありまして、すなわち治安確保の法制の上において、まことに警戒すべき空白状態が生じておるのであります。また、このような暴力主義的破壊活動に関する現行刑法等処罰規定は決して十分ではないのであります。以上の理由から、一般国民憲法上の基本的人権を侵さぬよう十分顧慮しつつ、しかも、かかる暴力主義的破壊活動をあえてする団体規制するとともに、暴力主義的破壊活動をなした個人処罰を補整せんがために本法案を提出した次第であるというのが、政府提案理由の大要でございます。(拍手)  よつて本法案内容について概略を御説明いたしますると、三法案の骨子は、一、団体として暴力主義的破壊活動をなした団体に対する活動制限解散行政的規制処分、二、暴力主義的破壊活動をなした者に対する刑事上の処罰、三、規制をなすべき機関及びその手続規定しているのであります。  しからば、いわゆる暴力主義的破壊活動とは何を言うか、また団体とは何を意味するかという点でありまするが、ここに暴力主義的破壊活動とは、刑法等規定するところの、イ、内乱及びその予備陰謀、幇助と、その教唆扇動等、ロ、政治上の主義施策を推進、支持し、またはこれに反対するためにする騒擾、放火激発物破裂、汽車、電車転覆往来妨害、殺人、強盗、爆発物使用治安機関に対する職務執行妨害と、その予備陰謀教唆扇動等犯罪行為であります。また、本法にいう団体とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体、またはその連合体でありますが、さらに団体の支部、分会その他の下部組織も、この要件を満たす場合には団体と同じ扱いを受けることになつているのであります。もちろん、団体活動規制するのでありまするから、団体意思決定に基かないものは団体活動ではないのであります。  また、規制をなすには嚴格な條件を必要といたし、規制手続として、調査及び規制処分請求公安調査庁に、その審査決定公安審査委員会に行わせることといたし、規制処分の公正を期せんとしているのであります。従つて公安調査庁の行う調査には強制権は與えられておらず、当該団体意見弁解及び有利な証拠を提出することが認められておるのであります。この公安調査庁法務府の外局として設置せられ、現在の特別審査局は廃止されますが、その定員は、現在の千百四十五人にさらに五百六十七人だけ増加されるのであります。なお公安審査委員会法務府の外局として設置せられ、その委員長及び四角の委員は、衆参両院同意を得て、法務総裁が任命することになつているのであります。特に、以上のような調査及び規制をなすには、基本的人権を不当に制限することなく、また労働組合団体の正当な活動制限したり、これに不当な介入をすることがあつてはならない旨を明言し、規制基準を明らかにしておるのであります。  さて、これらの三法案は、去る四月十七日法務委員会に付託され、一昨五月十三日まで、ほとんど連日質疑応答が行われ、本日討論採決終つたのであります。その間二回にわたつて公聽会を開き、各界各層十八名の公述人意見を徴しました。  本法案は、基本的人権に関し、きわめて重要にしてかつ困難なる問題を包含しているだけに、質疑応答もきわめて詳細にわたつておるのでありますが、その審議の詳細は会議録に讓りまして、ここではその概要だけを御報告いたすにとどめたいと存じます。  第一に、本法案必要性及び目的等について、いやしくも憲法保障する人権の中でも最も重要なる言論結社等基本権にかかわる事項の制限を含む立法違憲ではないか、またかりに違憲でないとしても、必要やむを得ない場合に限るべきであるが、その必要なる理由、また本法案はかつて治安維持法の復活ではないか等の質疑に対しましては、政府より、いかなる自由権といえども絶対的のものではなく、常に公共の福祉によつて調整されなければならないものであつて最高裁判所憲法の解釈も同様であるとの答弁があり、治安維持法のごとく單に思想を取締るものではなくして、本法は外部に現われた重大犯罪対象とするものであるとの答弁があつたのであります。  第二に、国家に対する抵抗権ないしは権力に対する正当防衛に関する資疑があり、政府よりは、これに対し、わが民主主義憲法は、個人尊嚴基礎に立ち、議会主義により、憲法その他の法律のもとに民主的政治を行うものである、従つて暴力革命は絶対に許さるべきものではなく、国家権力に対する正当防衛権を主張することは憲法否認である旨の答弁があつたのであります。  第三に、労働組合との関係でありまするが、第二條に、労働組合の正当な活動制限し、またはこれに介入することはないとあるが、正当な組合活動とは何か、本法案労働運動に対する影響等質疑に対しまして、政府より、第二條第二項は、立法政策上、本法案趣旨を一層明確にし、労働団体等の危惧を除くために規定したものであるが、労働組合それ自体として正当ならざる組合活動をしたものは今日までない、正当な組合運動とは法令に違反しない活動であり、正当な政治活動も許されている旨の答弁があつたのであります。  第四に、団体規制行政処分とした理由、特に解散愼重司法処分とすべきではないか等の質疑に対し、政府より、国家治安責任は行政府にあり、行政処分をもつて団体解散することは他の法令にもその例多く、解散刑罰ではないから、行政処分をもつてすることは憲法違反ではなく、事案の迅速な処理を必要とする団体規制は、内閣の全責任をもつてすることが最も妥当と考える、三権分立の建前から、これを司法処分とすることは行き過ぎである、規制を受けた団体は、裁判所に対し処分取消しまたは変更を求める道を開く等、人権保障に遺憾なき措置を講じている旨の答弁があつたのであります。  第五に、本法案構成について、団体規制刑法の補整とを合せて一つの法律規定することは適当ではない、運用混淆を来し、人権を侵害するおそれはないか等の質疑に対しましては、政府より、刑法恒久法であり、急に改正することは不可能であり、しかも現下緊急の事態に応じないのみならず、政治上の主義施策を支持または反対するため等、構成要件をしぼつてあるから、刑法中に規定することは必ずしも適当とは思わない、また調査については、公安調査庁刑罰を必要とする捜査については司法警察職員が行うから運用混淆はないが、遺憾なきを期したいとの旨の答弁があつたのであります。  第六に、公安審査委員会について、委員長及び委員法務総裁の任命とするのは干渉のおそれがあり、不当ではないか、また委員会独立調査権を與えるべきではないか等の質疑に対し、政府より、委員は身分の保障があり、独立して準司法的事務を行い、法務総裁干渉のおそれはない、行政簡素化趣旨から大規模委員会を設けず、証拠収集等調査は一切公安調査庁が行い、審理の結果を調書にとり、これを関係人に示し、意見弁解を述べる機会を與えて十分公正な審査が盡されるから、その上重ねて小さな委員会においてこれを繰返す必要は認められない、事件の迅速公正な処理のためには公安調査庁の資料で十分であると考える、しかし、公安審査委員会調査権等については一考の余地はある旨の答弁があつたのであります。  第七に、本法案は破壞活動予防のため言論等基本権制限するものであるが、予防危險である、過去の経験に徴しても、本法濫用危險が大である、本法案は各所に濫用禁止訓示規定があるが、その裏づけとなるべき濫用保障制裁規定を置くべきではないか等の質疑に対し、政府からは、公務員の職権濫用については刑法第百九十三條以下に制裁規定があり、懲戒処分制度もあり、国家賠償法行政訴訟による取消し等の救済の道もあるが、さらに法務総裁の十分な監督によつて、いやしくも濫用のおそれのないよう万全の考慮を拂いたい旨の答弁があつたのであります。  かくして、五月十三日質疑打切り動議が提出せられ、採決の結果、多数をもつてこの動議は成立いたしました。  次いで、十五日、自由党及び改進党より本三法案に対する修正案が提出されたのであります。  自由党修正案要旨簡單に申し上げますると、破壞活動防止法案につきましては、第一に、公安審査委員会は、原案によれば書面審理方法をとつておるが、公安審査委員会は必要がある場合に職権をもつて必要な調査をすることができるように修正し、団体規制手続愼重にすることにいたしたのであります。第二に、暴力主義的破壞活動の定義、団体に対する解散指定等、不明確な点に所要改正を加え、趣旨の明瞭を期し、その他施行期日等字句修正をしたものであります。  次に公安調査庁法案公安審査委員会設置法案に対する修正について申し上げますると、破壞活動防止法案修正によりまして、公安審査委員会職権による必要な調査をする権能を認めましたので、庶務を、法務総裁官房でなく、單独の事務局を設けてつかさどらせることに改めんとするものであります。また公安審査委員会委員長及び委員は、原案では法務総裁が任命することになつておりますが、その職務重要性にかんがみまして、内閣総理大臣が任命することに改めんとするものであります。  次に改進党委員修正案要旨を申し上げますと、第一に、暴力主義的破壞活動及び罰則に関する規定中「せん動」及び「文書図画所持」を削除する点であります。第二は、団体規制は、検察官請求により、裁判所において非訟事件手続として裁判するように改めんとする等の点でございます。  さて、自由党、改進党より右修正案に対する趣旨弁明があり、かくして討論に入りました。自由党から、自由党修正案並び修正部分を除く原案賛成、改進党の修正案反対、改進党から、自由党修正案反対、改進党修正案並び修正部分を除く原案賛成日本社会党共産党社会党二十三控室及び社会民主党から、原案並びに両修正案反対、第三倶楽部から、自由党修正案賛成、改進党修正案反対のそれぞれ討論がありました。  討論を終了いたし、採決の結果、改進党提出修正案は多数をもつて否決せられ、自由党提出修正案及びこの修正部分を除く政府原案は三法案ともに多数をもつて可決せられたのであります。かくして、破壞活動防止法案公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の三法案修正議決された次第であります。(拍手)     ━━━━━━━━━━━━━━━━。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) なお三案中、破壞活動防止法案に対しては、中村又一君外二名から成規により修正案が提出されております。この際修正案趣旨弁明を許します。中村又一君。     〔中村又一登壇
  16. 中村又一

    中村又一君 私は、改進党を代表いたしまして、破壞活動防止法案に対する修正案を提案いたし、その理由を説明し、さらに公安調査庁設置法及び公安審査委員会設置法制定を必要としないゆえんを申し述べたいと存じます。  顧みまするに、四月二十八日をもつてわが国はいよいよ独立を回復いたしましたが、今後国内治安対策のすこぶる重要なことは多言を要せないのであります。しかして独立を回復したわれわれには、拘束するものに講和條約と日米安全保障條約があるのほか、だれはばかるところなく、是を是とする方針のもとに、法律案の取扱いのごときは善処すべきであると確信して疑わないのであります。  そこで、お断りいたしておきますが、わが改進党は、極右極左団体による暴力主義的破壞活動に対する取締り法規制定の必要はこれを認めるものであります。これは、今日の国際情勢下に置かれたわが国情の現実の姿から見まして、遺憾ながらやむを得ないことと申さなければなりません。しかしながら、かかる破壞活動に対する取締りは、検察庁及び警察機能並びに構成を充実強化することによつて対処することが最も効果的であり、系統立つたる筋道に立つものであり、巨大なる国費を最も有効に役立たしむるものであることを確信して疑わないのであります。従いまして、われわれの修正せんとする立場は、これを要約すれば次の通りであります。  公安審査委員会設置法及び公安調査庁設置法制定しない。破壞活動防止法制定するが、同法案を次のように修正する。一、公安審査委員会とあるのを地方裁判所とし、公安調査庁長官とあるのを検察官とする。不服申立てに対しては抗告の制度を設ける。二、地方裁判所の裁判の構成及び処分手続に関する細則は最高裁判所規則で定めるものとする。三、法務特別審査局を廃止するものとし、法務設置法所要改正を行う。四、以上に対応して検察庁及び警察を充実するものとする。五、警察機能さえ充実するならば、破壞活動防止法案中「せん動」、「所持」等の字句を設ける必要を見ないと思います。従つて、この字句を削除するものであります。  これがわれわれの修正案の立脚する要旨でありますが、この観点に立ちすして、破壞活動防止法案を次のように修正せんとするものであります。その案文はここにありまするが、長文でありまするから、これの朗読は省略して記録につづることのお許しを願つてねきます。  さて、この修正案につきまして諸君の御賛同を得るために、いささか説研を加えておきたいと思います。  われわれは、現内閣が昨年来この種の団体規制法律制定の必要を唱え、いわゆる大橋案を幾つか発表せられまして、最後の木村案政府原案として上れわれ法務委員会に示されたのでありまするが、これを検討して今日に至つたのであります。思うに、この法律ぐらい無理があり、評判の悪い法律案は、私ども長い間に見聞したことがないほどの実情であつたのであります。何ゆえにかように評判が悪いかということは、委員会における公聴会におきましても、皆様も御承知の通り、公述者二十人の中においてほとんど全部が反対反対しない者はこれの撤回の希望を述べ、わずかの人が修正賛成という公述をいたしたことによつても明らかであります。これすなわち、真の意味の破壞活動を取締るために最も有効で、しかもまた基本的人権を不当に侵害しないように明確に規定するというこの目的がこの法案に達成されていないという点であつたろうと思います。それは、従来の法務府の特別審査局活動及びその性格に対する不信用という事実及び国民の感覚が多分にこの官庁を無用の存在といたしまして、これが今後の存続に理解を持たぬという点であろうと思います。木村法務総裁は、私としましては、個人的に最も尊敬を拂つておる人物の一人でありますが、その言動に対しまして、常に注目を拂つておることも、もちろんであります。この木村法務総裁は、在野時代において、この特別審査局が国民に與えましたる感じをどのようにお考えになつてつたのであるか。最も大切なることは、在野時代のお考えを、そのまま在朝在野を通じて持たれまして、一貫したる大局的見地に立たれて事に対処せられんことを希望するのであります。  私どもは、ここに世論に聞き、また公聴会の公述に聞き、かつまた法務委員会において大いに論じ合いましたる結果が——政府答弁は、いたずらに取締りの必要を説くのみでありまして、何がゆえに検察庁及び警察のほうに公安調査庁とか公安審査委員会とかいうものの必要があるかを、私どもの納得し得るまで合理的に説明することができなかつたのであります。ただ今日、占領下の遺物とでもいうべきところの特別審査局が存在するのを足がかりといたしまして、これが看板をとりかえ、拡大し、法務府は近く法務省となるのでありまするが、これが外局としてより多くの人員と予算とをもつて、なわ張り的な機構を打立てようとしておるように見られるのであります。すなわち、公安調査庁の幹部は、やはり現職の検事をもつて充てられておるということに注目せなければならぬのであります。  かくのごとき政府の考えは、決して真に国を憂うる者のとるべき態度ではないと私は考えます。行政改革を常に口にいたしておりますところの現政府が、無用の新官庁をここに設置せらるるということは、ほとんど言語道断のやり方であると申し上げなければなりません。しかも検察庁もあります。これをさておいて、強制調査権も持たせぬところの公安調査官なる、わけのわからぬ官職をつくり上げまして、この調査に基いて、団体で申しますると死刑とも申すべき解散を、同じ法務総裁の下にある公安審査委員会という小さな機関によつて決定せしむるというがごとき構想は、実に兒戯にも類したものといわざるを得ないのであります。いかにも特別審査局的臭味をそのままに、現在の特審局をそのまま公安調査庁にそつくりと持つて行くということを政府委員は常に答弁いたしておるのでありますが、真の意味の破壞活動を取締る目的のために、どういう機関によつて、またどういうことがなされることが最も効果的であるかということを、一度白紙に返つて皆さんに考え直してもらわなければならぬというのが、われわれ修正案の態度であるのであります。同時に、基本的人権を侵害しないために、どういう機関による処分が最も公正で適当であるかということを根本的に考え直さなければならないと信ずるのであります。  しかも、この機会に、私は、ことに自由党の皆様にお訴えをいたしておきたいのは、この委員会というような制度の今後の存否こそ大きな問題でなかろうかと思います。これこそ、自由党といわず、改進党といわず、真劍に考えるべきところの大きな問題ではなかろうかと私は思う。(拍手)私は、相ともに、率直に、この切迫したる破壞活動に対する抜本的方策を検討いたしまして、これを樹立しなければならぬと思うております。よつて、私は、一面取締り機関の充実強化を考え、他面におきましては、団体規制のために、行政機関によらざる司法処分をもつて最も適切な措置であると断言せざるを得ないのであります。国民の利益を制限し、国民の利益を奪うが、ごとき処分というものは、この民主主義時代におきましては、努めて司法処分にまかすべきものであるということを私は確信いたしておるのであります。取締り機関の充実強化は、警察検察庁機能を強くすることが最も効果的であります。公安調査庁の、ごときを設けることは、いたずらに屋上屋を重ぬるばかりでなく、かえつて権限争いをなすところの弊を招き、巨大なる国費をむだに費し、少しも取締り機構の強化には相ならぬことと、かたく信ずるものであります。このことは、警察の幹部なり検察庁の幹部に意見を聞かれても、私はすぐわかることだと思つております。  過般の不祥事件があつたからこの法案は必要だという議論があるのでありますけれども、そんな簡單なものではありません。この破壞活動防止法案こそは、真に必要とすべき立法ではあります。この内容が充実されていないので、私ども修正案を強く主張するのでございまするが、法律は永遠の生命を持つものでありますから、ごく冷嚴なる態度において、こく冷静に事を運ばないと、ああいう不祥事件があつたからこの法律をつくるんだというような、そういう單純なことで立法するということは、われわれ国会議員として最も愼まなければならぬ態度であると申し上げておくのであります。  次に、政府公安審査委員会によつてなさんとする処分は、明らかに司法処分にゆだぬべき性質のものでありますが、木村法務総裁は、公安審査委員会を合理づけるために、しきりに準司法機関というような言葉をお使いになつております。準司法、すなわち司法に準ずると申されますが、何ゆえ司法そのものにこれを託せられないのでありましようか。この辺に現内閣法律的潔癖性の欠如をわれわれは疑わざるを得ないのであります。(拍手)わが改進党は、これを純粋に、検察官の申立てによつて地方裁判所の決定によつて行わねばならぬものと定めるとともに、当事者に対しましては不服申立ての道を開き、抗告制度を設けることを最も合憲的と考えたのでございます。  自由党は、皆様も御承知のごとく、今回の修正案によりまして、委員長及び委員の任命を法務総裁の手から放して内閣総理大臣の手に移すということが、いわゆる改善策だと主張いたしまするけれども、これは五十歩百歩であります。むしろ、私は、総理大臣のところに持つて行くということであるならば、法務総裁の手元に置いて堂々と法務総裁の立場において行政責任をとるべきであろうと考えております。しかし、それが不穏当であり、不合理であるがゆえに、わが党の修正案を主張いたしておるような次第であります。  さらに、われわれは、この「せん動」及び「所持」という文句を削除する修正案を出しておるのでございまするが、取締り機関の能率が高まり、そして十分なる取締り機構の強化がはかられますとするならば、「せん動」や「所持」の文句がなくても、この法律目的は完全に達し得ることを確信して疑いません。論より証拠、この法案を見てみますると、教唆犯のごときにおいても、独立罪としての建前をとつておるのであります。  皆さんも御承知の通り犯罪の段階には予備及び陰謀という段階があるのでありまするが、この予備陰謀、あるいはさらにこの教唆、かくのごとき犯罪行為というものは、重大犯にのみその刑罰を求めておるのであります。しかして、この教唆犯は、本案が成立しませんと、いくら教唆しても犯罪は成立せぬという建前をわが刑法はとつておるのであります。しかるに、今回は、いわゆる煽動という事実において、ただ紙切れを所持しておつたという——もつとも目的罪ではありますが、所持しておつたというばかりに、これを片つぱしから検挙できる。しかも、独立犯罪としてのとりきめをいたさんとしておるのであります。  ここに私は申すのである。このいわゆる教唆犯が独立罪としてありまする以上は、私どもの修正案通りせん動」及び「所持」の字句を除きましても、この原案の中には予備という点があり、あるいは教唆という点が残されておりますから、取締り機関の能率さえ高まつて参りまするならば、かかる国民がいやがるこの字句を残しておくという必要はどうであろうかという点で、これを削除するという方針をとつた次第でございます。(拍手)  以上申しました点により、細部の説明を省くことといたしまして、自由党の皆様に対しまして、虚心坦懷、従来の行きがかりを打捨てられまして、わが党の修正案に十分の御理解を賜わり、しかして国家の前途のために満腔の熱意をもつて本修正案の成立に協力あらんことをお願いいたしまして、修正案の説明にかえる次第であります。(拍手
  17. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) この際一言いたします。先刻の委員長報告の際、佐瀬委員長が最後に意見を附加した点は、議長から注意しようと存じましたが、委員長自身からこれを取消す旨の申出がありましたので、そのようにいたします。右御了承を願います。(拍手)  これより討論に入ります。山口好一君。     〔山口好一君登壇
  18. 山口好一

    ○山口好一君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま上程に相なりました破壞活動防止法案外二案並びにこれに対する自由党修正案及び改進党修正案に関しまして、自由党修正案賛成いたし、改進党修正案反対し、自由党修正案を除く政府原案賛成意見を表明するものであります。(拍手)次にその理由を申し上げたいと存じます。  わが日本は今や独立を獲得いたしまして、国民われわれは一致協力して今後平和国家、文化国家建設に向つて一路邁進をいたさなければならないその時期であります。しかるに、まことに遺憾ながら、現在の治安状態はいかがでありましようか。わが国内には、最近ひんぴんとして、かの団体組織による危險なる暴力主義的破壞活動が行われつつあるのであります。各種の文書により、武装暴動やゲリラ職法によつて……(発言する者あり)憲法やそのもとに成立した政府を倒すことの正当性または必然性を主張いたし……。     〔発言する者多し〕
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  20. 山口好一

    ○山口好一君(続) これを実行に移そうとする危險なる活動が現にされておるのであります。しかも、この活動は、国際的関連を有する団体組織をもちまして、実に根強き力をもつて展開されつつあることは、諸君熟知のところであります。(拍手)こうして、この暴力行為の結果するところ、あるいは列車の妨害となり、あるいは治安機関ないし税務署などの襲撃となつて放火、殺傷その他の極悪強烈なるところの犯罪が行われつつあるのであります。かくては、日本の治安はまつたく維持されないと言うも過言ではないのであります。  ある法務委員の一人は、現在の日本の治安状況はまつたく革命の一歩手前であるということを申しております。(発言する者あり)ほとんど毎日の新聞紙上に、この種暴力行為の記事を……。     〔発言する者多し〕
  21. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  22. 山口好一

    ○山口好一君(続) 見ないことはないような状態に相なりました。もしこのままに推移せんか、わが日本国民の生活の安定は決して望まれない。国家の再建は断じてこれをなし得ないことに相なるのであります。ここにおいて、われわれ日本人といたしましては、かかる暴力行為を何とか未然に防ぎとめなければならないということは、心ひそかに万人の希求するところであります。この要請に応じて提出いたされたのがこの破防法であります。しかるに、この破防法が、その名前におきまして暴力主義的破壞活動というような言葉を使い、あるいは破壞活動防止法案という、まことにいかめしい法案の名称でありまするがゆえに、ともすれば誤解を招くのであります。しかし、皆様がよくぐこの内容検討いたしますれば、必ずやそこに、旧治安維持法などとはまつたく異なるところの民主的な精神、民主的な手続、広く人権を尊重するところの精神が根底をなしておることを解し得ると思うのであります。何と申しましても、われわれ国民生活の安定の基礎治安の維持にあるのであります。治安の維持なくして、人権の尊重も、各種自由権の擁護も決してあり得ないのであります。憲法規定されておりまするところの公共の福祉とは何ぞといえば、まさに個人がその自由と権利を保有するに必要な社会的秩序、社会的利益こそこれであると考えるのであります。しかるに、本法案が国会に提出いたされまするや、最初は大いなる誤解を招きまして、いわゆる旧治安維持法の復活にあらざるやというような危惧の念を持たれまして、国民の権利、国民の自由がこれがために大いに侵害されるぞというようなデマも飛ばされ、また各種労働組合におきましても、この言を聞きましてストに及ばんとしたような状況が演ぜられたのであります。しかしながら、これをつぶさに検討いたしましたときに、どこに彼らが危惧するところの人権の侵害とか、あるいは内容とかいうことが見られるでありましようか。  私は、後に簡單にその点を御説明申し上げたいと存じておりまするが、今日われわれが、新聞紙上において、あるいは現実にこの目をもちまして、いろいろな暴力主義的破壞活動を見まするときに、それによつて——善良なる市民が、汽車の転覆によつて被害をこうむり、その生命、身体について非常な危害にさらされるというに至りましては、もはや、われわれはこれを坐視するに忍びないのであります。かかる治安立法制定いたすにあたりましては、われわれは、その治安立法を必要とするところの社会情勢をつぶさに検討いたさなければなりません。今日ほど、かくのごとき治安立法の必要を万人が要望する時期は私はないと思うのであります。(拍手)  なるほど、言論の自由、集会、結社の自由、あるいは学問の自由などは、まさに憲法において保障されるところの自由権でありまして、最もわれわれが尊重しなければならないところであります。しかしながら、それらの権利を享受し、それらの自由を擁護するためには、これを享受し得るところの環境がなければならないのであります。しかるに、現下のごとき、まことに憂うべき治安状況におきましては、われわれは、これらの自由を完全に享受することはとうてい不可能であります。この点床において、私は、どうしてもこの破壞活動防止法案をここに成立せしめまして、日本国民の大多数の幸福と安寧をこいねがわなければならないと深く信ずるものであります。(拍手)現実に、去る五月一日の、あのメーデーの悲惨事を見ましても、いかにかくのごとき治安立法が欠けておつたか、いかにその空白を利用されて、ああいうようなことになつたかということは、この実例が如実に示すのであります。(拍手)  本法案は、この意味におきましてまさに国民各自の自由権を守るたてであります。旧治安維持法は、たてにあらずして人を切るところの刃物であつたでありましようけれども、これはまつたく違うところの、国民の自由を守るたてであると私は確信いたすものであります。さりながら、治安立法は、その治安を維持する一面におきまして、必ず個人の自由なり権利なりが制約せられることは、やむを得ないことであります。  そこで、われわれ公務員としましては、この点に議論を集中いたしまして本法案内容検討いたしたのであります。本法案内容につきましては、先ほど委員長からも報告がございましたが、あの旧治安維持法などとは、その精神、内容手続などにおきましても全然異なるのであります。できるだけその濫用を避け、また人権の侵害などを最も少からしめることについて大いに考慮を拂われまして、すなわち、まず暴力主義的破壞活動なるものの観念を非常に最小限度にしぼつたのであります。すなわち、本法案の第三條におきまして、その観念としまして、最も危險なるところの行動についてこれを規定いたしておるのであります。たとえば内乱罪、騒擾罪、放火罪、殺人、強盗というような、まつたく凶悪な、その危害の大にして、かつ広きものをとりまして、これを暴力主義的破壞活動といたしたのであります。ゆえに、先ほど来、本法案につきましては、教唆も煽動も処罰せられる、まことに濫用のおそれが大であるということを申されておりまするけれども、普通の行動についての煽動、教唆処罰するのではないのであります。まつたく、かくのごとき治安維持上許すべからざるところの凶悪犯罪についてのみ、しかもこれを指示し、その決意を強く固めさせるべきところの教唆及び煽動についてのみこれを処罰せんとするものであります。(拍手)  しかして、本法濫用の点などにつきましては、委員諸君より、るるその憂慮するところが述べられましたが、これに対しましては、政府委員より懇切丁寧に、一々具体的に例をあげまして、この限度においてのみ適用するものであることを答えておるのであります。ことに共産党諸君より、自分の身を憂えましてか、まことにこまかなるところの、言論、出版などに関する質問をいたされましたが、政府委員はこれに対して懇切なる回答をいたされまして、諸君もそれで満足をいたした体であつたのであります。さらに学者、文人その他の、公聽会におきまするところの公述人の多くも、その学者的な、あるいは文人的な、あるいは弁護士としての立場から、ある点は賛成せられ、ある点は反対されたのでありましたが、私はこれを靜かに聞いておりまして、これらの学者、文人の方々の見方というものは、やはり自分の專門の、象牙の塔の中にこもつた見方であつて、よくその趣旨はわかるのであります。しかし、私をもつて言わしむるならば、眼前の小さなへびには注意をいたしておりますが、頭上に大きな口を開いておるところのうわばみを見ないうらみがあるということを感ずるのであります。(拍手)  われわれは、決してこの時勢を甘く見てはならないと思うのであります。現在の治安状況をば、甘くとつて見てはならないと思うのであります。まさに革命の前夜であります。この革命の前夜にあたりましては、ぜひとも破壞活動を断固排撃するところの治安立法がなければならないのであります。手近な例を引きましても、暴力主義的破壞活動によつて、まつたく罪なきところの婦女子が、あの電車、汽車に乘りまして、その生命を失うというようなことを、この目をもつてわれわれが見るときに、断じてこれを許すことができないのであります。     〔発言する者多し〕
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御靜粛に願います。
  24. 山口好一

    ○山口好一君(続) さらに、これはひとりわが日本の立法のみではありません。今日、文明国と呼ばれるところのいかなる国におきましても、アメリカにおきましても、ソ連におきましても、——アメリカのスミス法のごときは、その内容検討いたしますれば、この破防法よりもずつと嚴格な規定を置いておるのであります。ソ連の刑法叛逆罪の罰則を見ましたならば、これなどは、実に驚くべき人権蹂躪をなし、その自由を制限いたしておるのであります。(拍手)今次のこの破防法は、実に穏健にして民主的、この前の治安維持法の非難にこりまして、その苦い経験に徴しまして、まつたく民主的手続をもち、またできるだけその行為の範囲を縮小いたしまして、まつたく必要限度の程度にとどめ、人権をできるだけ広く尊重して制定いたされておりますることは、皆様が、あの旧治安維持法と今度の破防法とを並べまして、よくよく比較検討していただきまするならば、一目瞭然であります。(拍手)  さらに、今次のこの破防法の内容簡單に申し上げまするが、この暴力主義的破壞行為は、先ほど申しましたように、十箇條あまりの過激なる行動に制約をいたしておりましてしかも、これを処分するにあたりましては、公安調査庁というものが設けられまして、これによつて強制権を用いることなしに、任意の調査によつてその調査が行われるのであります。さらに、この強制権を用いざる調査によりまして、その決定をなすものは、まつたく別個の機関でありますところの公安審査委員会であります。  先ほど、改進党から、この点に関するところの修正案が提出いたされまして、これはむしろ純司法的処分であるがゆえに、検察庁に起訴させて、調査をさせまして、裁判所によつて決定をさすべきものであるという案が出たのであります。しかし、これはまつたく当らない議論であると私は思うのであります。この法案を見ますれば、半分は団体規制という行政処分であります。その後半は刑罰法規であります。すなわち、はつきりと行政処分刑罰法規とわけておるのであります。この行政処分は、まさに行政機関によつていたされることが、三権分立の原則からも最もふさわしいことなのであります。さらに、この行為は、実に暴力主義的な破壞行為が突発的に行われ、あるいはこれに対するところの対策というものは、これを急退いたさなければならないのでありまして、この点につきまして、行政処分をもつて、行政機関により、すみやかにこれを行わなければ、その実効を来さないのであります。かえつて暴力主義的な破壞活動によつて、してやられるというような結果にも相なるのであります。この改進党の修正案には、断じて賛成をすることはできないのであります。  さらにまた、同じ意味におきまして、「教唆」を残すけれども、「せん動」はこれを削除するというこの議論であります。この点につきましては、われわれも、ほんとうに熱心に検討いたしたいのであります。しかし、この「せん動」をもし削除いたしましたならば、本法案を設けました趣旨は没却されてしまいまして、この暴力主義的破壞活動を防ぐことがまつたくできないのであります。  由来、治安立法におきまして注意しなければならないことは、これによつて確保さるるところの利益と、これによつて制限を受けますところの個人の自由、権利と、これを比較考量いたして、その間に均衡を得せしめ、そうして、この自由を制約することが多くして、治安維持をかえつてそこなうような結果にならざるように留意せなければならないことでありまするが、この点につきましては、この破防法は、まつたく理想的な、民主的な立法と私は考えるものであります。  大体、わが党から出されましたところの修正案につきましては、先ほど来説明がありましたから、これを省略をいたします。要は、わが日本といたしまして、ここにようやく独立を獲得いたしまして、これからこそは、国民が真に一致協力して、その生活の安定をはかり、経済的にも、思想的にも、また政治的にも、がつちりと一丸となつて進まなければ、とうてい日本の再建はおぼつかないと思うのであります。決してなまやさしいことではありません。しかるに、ここに諸外国と連絡をとりまして、暴力を是認し——私は、この暴力だけは断固排撃しなければならないと信じておるのでありますが、この暴力を是認し、この暴力を容認してしかも多数を率いて、あの善良なる学生、純情なる学生までもこの中に引きずり込みまして、そうして治安を擬乱して、何とかしてこの社会を混乱に導いて破壊をしようというような無謀なる計略を立てまする団体に対しましては、断じてこれを許すことはできないのであります。(拍手)私は、何ゆえにかような法律を出さなければならないかというならば、さような暴力主義者が存在するからであります。(拍手)  現在暴力主義を是認し、信奉下るところの、さような人々は、すべからく反省をして、真にわれわれの自由を確保いたそうといたしますならば、暴力を断固しりぞけ、そうして、ほんとうに諸君の理論によつて諸君主義政策を貫こうとするならば、堂々と議論によつて、平和のうちにこれを解決することを、ぜひ心がけてもらいたいのであります。私は、この意味におきまして、日本がすみやかに平和国家、真の民主国家としての自覚のもとに立ち直り、暴力主義者がほんとうの平和主義者、ほんとうの民主主義者に立ち返られまして、こういうような法案が一日も早くなくなりまする日のすみやかに来らんことを念願いたしまして、私の討論を終りたいと存じます。(拍手
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 吉田安君。     〔吉田安君登壇
  26. 吉田安

    ○吉田安君 私は、改進党を代表いたしまして、改進党修正案に対してはどこまでもこれを堅持しつつ、自由党修正案並び政府提出の原案反対の意を表明するものであります。(拍手)  自由党修正案を見ますると、ほとんどその修正字句修正であり、小手先いぢりの修正にすぎないのであります。(拍手)これほどの大法案を、これほど世間の耳目を引いた法案を、二、三の字句修正あるいは條文の書きかえぐらいの程度で、これを修正したりというて得々んだる自由党諸君の気持が、私にはわからぬのであります。(拍手)この意味で、私は本案に対しましては、抜本的修正案をどこまでも堅持したいと思うのであります。  端的に申しますると、この法案をどこまでも貫いたならば、これほどの問題を、一行政官によつてその資料を収集させて、また一行政官によつてその証拠固めをやり、わずかなる当事者の弁明を聞いただけで、これをまた一つの行政官の機関であるところの審査委員会で決定してしまおうというのであります。こういうことにわれわれは反対するのであります。     〔副議長退席、議長着席〕  さらにまた、それに対して不平があれば裁判所に持つて行くからよくはないか、こうおつしやるのでありますが、その裁判所に持つて行つたときにはどうなるか。二十四條の第二項には、さような不服があるときには、行政事件訴訟特例法によつて救済の道がある、こうおつしやつておる。なるほど、その通りに違いありません。ところが、被害者の方からそれに対して不服の申立てをする。裁判所はこれを受理した、受理して、その処分の執行停止の要求があつたときにやろうとする。やろうとすると、驚くなかれ、総理大臣がそれをいやだといえば、裁判所は、なさんとするその司法権までも弾圧されるということになるのであります。(拍手)この点は、よく御注意を願いたい。裁判所は、否認権を行使せられたならば、せつかくの仮処分もできないのであります。こういうことで、一体どうなるか。せつかくの救済方法として認めたものも、こうしたことでは、とうていこれについての救済はできません。それで、その調査と決定までは行政処分でやるのでなくて、どこまでも司法処分でやらねばならぬというのが、わが改進党の拔本的修正の根本であります。(拍手)  私は、いま少しくそれを申してみまするならば、今山口君の賛成討論を聞いておると、まつたくこの法案をもつて民主的な、完全なる法案だとおつしやつておる。われわれもまた、今日この時代に、かような破壊的活動に対する取締り法案の必要は認めるのです。どこまでも認める。(「そうだろう」と呼ぶ者あり)認める。しかし、誤解もなさつてはいけません。これは認めるが、その内容に至つては、この法案は、今申しまするような事由のもとに、絶対に無條件賛成するわけには行かない。このことは、私は委員会においての総括的質問の際にも申し上げておいた。ところが、法務総裁木村さんは、何と考えられたか、あるところで、改進党の吉田君がこれには全面的に賛成であるから、ぼくは安心だとおつしやつたということでありますが、この時勢に、この世相の際に、かような法案をつくつて出そうということには賛成であるとは言つたのでありますが、この法案自体内容に対してまでも、全面的に、無條件賛成ということは、一言も言つていないのであります。(拍手)それは速記録をごらんになれば、よくわかることであります。  それで、まず私は、中村君の提出されたる修正案から申し上げてみましよう。ここに、この法案にいうところの破壊的活動がかりにあつたといたしましよう。さような活動があつたときに、これを規制する、団体規制しようとするときに、たれがその証拠を収集するかというと、公安調査庁なるものを設けて、その長官の指揮のもとに、公安調査官という一行政官がこれをやるのです。そうして、一方では、実際の破壊活動をやつたところの各人の行動に対しては、司法警察官がこれを調査する。でありますから、二本建で行くということになるでしよう。そうして、それを集めて、今度は審理官のところに持つて行く。そのとき、初めて審理官は関係者をそこに呼んで、何らかの弁明をさせるにすぎない。そうすると、その審理官は、そこででき上がつたものをどこに持つて行くかというと、公安調査庁長官請求によつて公安審査委員会へこれを持つて行く。公安審査委員会はまた、差出されただけの書類と証拠によつて、ただちにこれに決定を與える。私は、これほど危險ねものはまたとないと思うのであります。(拍手)まず調査官がいろいろのものを集める。今度は審理官がそれを審理する。それをまた審査委員会に持つて行く。ことごとくこれが一行政官の仕事です。しかも、驚くことには、原告の立場に立つその調査官なり、審理官と、これを受けて裁判をするその審査委員会が、同じ指揮系統の最高者たる法務総裁の指揮下にあるというに至つては、これは矛盾もはなはだしいものであると私は考える。(拍手)一方で原告官の立場にある人がそれをするのはよろしいけれども、いやしくもこれをやる以上は、司法裁判制度通りに、全然関係のない立場にある裁判所がこれを裁判するということが、今日の三権分立の建前からいつても当然であろと私は考える。(拍手)  ところが、それを自由党諸君がどう修正なさつたかと申しますると、その修正は、そういうことではいかぬからというて、きのうまでは、いや、これを総理府のうちに置こうとか、あるいは裁判所内部もどうであろうかというようなことをおのおの考えてみられた。考えてはみられたが、内部のどういう関係か、あえて知る由もありませんが、それを、ただ同じ法務総裁のもとに置いて、ただ特別に一つの独立したる事務局をつくつて、これでごまかそうというわけだ。一体、事務局とほなんです。ただ事務を処理するだけのものじやありませんか。そういうものを置いて、それでけつこうじやないかというに至つては、おおよそ字句修正にすぎないと、あえて私が申し上げたのは、そこなんです。(拍手)  あるいはまた、この三條にこういうことがあるでしよう。第三條の一のロ号に、「この号イに規定する行為の教唆若しくはせん動をなし、又はこの号イに規定する行為の実現を容易なら」めるため、その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画を印刷し、領布し、公然掲示し、若しくは頒布し若しくは公然掲示する目的をもつて所持する」云々とある。これでは、この煽動とまぎらわしいから、これを書流しにせずして、「この号イに規定する行為」ということだけ行を改めたのであります。自由党修正案はこれをただ読み流しに読んでも、行を改めて書いてみて、印刷に付して読んでみても、どつちも意味は少しもかわつていない。かわつていないのを、あえてそうなさろうということが、私の言う小手先いじりの字句修正にすぎない。こういうことになつて来るのであります。  そういうことを考えましたときに、大まかに申しましても、私はこの自由党修正案にはもちろん賛成はできたいと同時に、この原案に対しても賛成ができないのであります。  もう少しく詳しいことを申してみますならば、この二十四條でもつて規制処分を受けた団体はどうすればよろしいかというと、たとえば、ある新聞社が規制された。六箇月以内は団体活動ができない。新聞の発行もできたいというような処分を受けた。これではたまらぬからといつて、そのときはどうするかといえば、それは裁判所に救済を求めよという。だから、裁判所に救済を求めて不服の訴えをなす。なすけれども、規制処分命令が出ておるから、六箇月の間は新聞の活動ができません。できませんから、さらに裁判所に訴えて、その処分の執行停止を解いてもらいたいと、こう言う。そうすると、裁判所愼重審議の結果、これは申立人の言うことがほんとうだ、こういうことで取返しのつかない損害を與えても気の毒だから、この行政処分による執行停止を解除してやろう、裁判所がこういう気持になつて、その判決をしようとすると、総理大臣が、行政事件訴訟特例法第十條第二項の但書によつて、ちよつと待て、そういうことをしては困る、こう言われると、遺憾ながら裁判所はそれをやることができない。やることができないということになれば、一行政官の総元締である総理大臣の手によつて、司法権の活動までもあえて干犯するという、三権分立の建前から恐ろしい結果を招来するということを、まずわれわれは考えてみなければなりません。(拍手)ある委員はこう言う。そんなことの問題には触れずして、今度は——現総理大臣は、私も尊敬する総理大臣である。ところが、誤つた総理大臣がかりに出ましよう。出て、そういうことをやられた場合はどうなるのです。これは三権分立が破壊するのはもちろん、一総理大臣によつてフアツシヨ政治が実現するというおそれが、ここに生ずるのであります。これはいかぬことです。  こういう大体論のもとにおいて、わが改進党は、いわゆる公安調査庁を設置する法案にも反対従つて今日ある特審局はこれも反対、そうして今の公安審査委員会を同じ屋根の下に置くことも反対という拔本的なる修正案を出したのであります。でありますから、破壊活動があつたならば、それを検察庁の手に渡し、あるいは司法警察の手に渡して、この司法警察あるいは検察庁の手によつてこれを十分調査いたした上、これが犯罪なりとするときに初めて司法裁判所に提訴することが今日の立憲政治の建前でなくちやならぬ、私はこう考える。(拍手)なぜ、それをあえてなさらぬか。なぜ、さようなことに反対をなさるか。そうすると、行政処分司法処分とが混淆するおそれがあるとおつしやるが、それは決してさようなことはないのである。  しかも、この公安調査庁を設置し、そうして審査委員会なるものを設置すると、初めの予算が十億を要するということを聞いている。諸君、現政府は、行政機構の改革、なかなかやりにくいところの行政整理もあえてやつて、仕事の簡素化をはかり、費用の軽減をはかり、よつてつて国民の負担を軽減しようということを言うておられる。その言葉はまことにけつこうです。そうなくちやならない、という口の下に、また特審局を昇格して、これを公安調査庁になし、一方にまた同じ行政官をもつて公安審査委員会をつくろうというがごとき、屋上屋を重ねて国費を濫費するということは、その点から、言つても、今日の日本の経済状態から、われわれは反響ざるを得ないのであります。(拍手)私は、さような観点からいたしましても、これに反対したい。のみならず、公安調査庁のやること、あるいは審査委員会のやることは、今日の検察庁及び警察で事は足りると思います。しかしながら、それでも事が足りないというならば、検察にさらに一段の筋金を入れて、ほんとうに活動能力の整備される警察をつくることが、今日公安調査庁をつくり、たくさんの人を、ここでまたたくさんの金をかけて養うよりも、はるかに私は策の得たものだ、かように考えるのであります。  これは大体の私のわくでありますが、さらにこれにしさいに入つてみるならば、今度はいわゆる教唆あるいは煽動犯までも——煽動を、しかも独立罪として処罰しようという。一体、なぜこれが一般刑法においてやれないか、私はこう思う。なるほど、煽動というものは一般刑法にはありません。一般刑法にはないけれども、今日まで相当に騒擾罪なるものが繰返して行われたことを歴史は示しておる。そのときに何か不自由を感じたかといえば、現行の刑法によつを事は足れりと私は考えておる。しかも、教唆犯のごときは、御承知の通り、これは刑法総則によつて、正犯に準じて処罰することができますから、これも何ら独立罪として処罰する必要はあえてないではないか。煽動に至つてもまた同然であります。さようなものを、煽動罪を認めてまでもこれを処罰せんとすることは、今日の世相からして行き過ぎの感をまぬがれない、かように私は存ずるのであります。  政府並びに自由党は、法律さえつくつたならばそれで事足れり、治安は維持されるとお思いになる二とが万々一あつたとするならば、これは思わざるもはなはだしい愚論であると私は考える。一体、世の中は、法はなきにしかず、法律はないのが一番いい、けれども、やむを得ない。でありまするから、ただ治安維持、治安維持ということで、いたずらに民心を惑わすがごとき法律をつくつて、それによつて治安の維持は足れりと思うならば、これは間違いである。まずその前において、さようなことの起らないように、経済の面からも、生活の面からも、思想善導の点に力を注ぐことが、今日まさに平和となり、国家独立しました以上は、最も大事なことであると、私はかように考えるのであります。(拍手)  この法案の第二條を見ると、われわれが心配しておるように、立案者の側にあつても、政府の側にあつても、よほど心配しておる。なぜならば、そういうことをするとき、人権蹂躙をしないように気をつけろ、あまり深入りをしてはならぬぞということが、この法案の第二條に明らかに書いてある。それほど恐ろしい、それほど警戒せねばならぬ法案をつくつてそうしてそれによつて取締りを断行して治安維持をやろうということは、思わざるもはなはだしいものでありましてそこにこそ、いわゆる世間みなの人が反対すみように、憲法保障しておりまするところの人権、自由を侵害するおそれがあるとまでも極論されておるのであります。  さような点をかれこれ勘案いたしますると、ほんとう抜本的にわれわれ改進党が提出いたしましたるこの修正案こそ、私はまれに見る完全なる修正案である、かように考える。(拍手)私は、自由党を除いたる他の社会党その他共産党諸君まで、この改進党の修正案こそ時代に即し、一歩前進したる、ほんとうの適法なる修正案と、かように考えるのでありますから、どうぞ自由党諸君も、もう少しくゆたかな気持を持つて、このわれわれの修正案賛成され、いさぎよく原案を放棄されることを私は絶叫いたしまして、私の意見とする次第であります。(拍手
  27. 林讓治

    議長(林讓治君) 熊本虎三君。     〔熊本虎三君登壇
  28. 熊本虎三

    ○熊本虎三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております破壊活動防止法案並びに他の二案、さらに提案されております修正案反対意見を開陳するものであります。(拍手)  本法案に対しましては、さきにわが党は数回にわたつて撤回を要求したのでありますが、政府はこれに応ぜず、強硬に提案したのでございます。そこで、わが党といたしましては、各代表が委員会においてあらゆる角度から本法案の反動性並びに危険性を指摘いたしまして、政府並びに與党の反省を促したのでありますが、政府並びに與党は、メーデーに突発いたしましたる一部分子の騒擾事件を幸いとして、しやにむに委員会を通過せしめ、本会議に持ち込まれましたることは、言語道断といわなければなりません。(拍手)  そもそも憲婆おいてわれわれが與えられました権利並びに自由の中で最も尊重すべきものは、言論及び集会、出版、結社等の自由であることは、何人も異論のないところであります。(拍手)終戰後は、戰時中の軍部の無謀なる言論の弾圧からようやく解除されまして、わが国民は明朗な気分を味わい、民主主義が長足の進歩を途げましたことは、ともどもに欣快としたところであります。(拍手)しかしながら、わが国の民主主義はいまだ幼稚園程度のものでございまして、これからますますその暢達に力をいたさなければならない次第でございます。しかるに、この破防法といい、集団示威取締法といい、民主主義成長の第一要件たる言論、出版、集会等の自由を大幅に制限するおそれある法律が再び登場するに至りますることは、まことに痛恨のきわみといわなければなりません。(拍手)  政府は、この法律で取締るものは暴力主義的破壊団体であつて、それは内乱とか、騒擾とか、放火、殺人、強盗、公務執行妨害等を集団的に行つた場合だけであつて、危険性がないかのごとく強弁するのでありますが、実際は、内乱についても予備陰謀、箒助を罰することはもちろん、それらの教唆、煽動までも処罰するのであります。また、それらの実現を容易ならしめるために、実現の正当性必要性を主張した文書図画を印刷し、頒布し、掲示し、またはその目的をもつて單に所持しているだけでも罰するから、これを濫用するときは実に恐るべき問題が惹起するのであります。(拍手)  また騒擾、公務執行妨害についても、予備陰謀はもちろん、それの教唆、煽動も罰するのであつて、これまた縛ろうとすれば、いかなるものでも縛ることができるもので、刑法規定を見ても、政府を顛覆し、邦土を潜窃し、さらに朝憲を紊乱する行為をいうのでありますが、もちろん朝憲とは封建的な言葉で、現在に適切でないものでありますけれども、要するに歴代政府の打倒を意味すると判例において解釈されております。しかし、これを広義に解釈するならば、現政府を倒さんがために演説し、文書を頒布すれば、この法で取締ることは容易であります。  かの治安維持法立法当時は、国体を変革し、私有財産の否認を目的とする結社を禁じ、真にマルクス、レーニン主義の実行的共産主義者でなければこれに触れることがないと、かたく約束しながら、その後の実際の適用の実演を見ると、単なる自由主義者である測合栄治郎教授、社会民主主義の理論家でしがなかつた大内、美濃部の教授寺も、あるいはキリスト教の牧師も、大理教の信徒等に至るまで、立法当時思いも及ばなかつた人々が数多く縛られておるのでございます。(拍手)かの悪法により、権力によつて多くの人々を検挙し、さらに重要なことは、この治安持維法をたてに国民の言論を封殺し、ようやく成長し始めた自由を抑圧し、ただひたむきに日本を警察国家または軍国国家へ追いやつたことでありよす。かつて満州事変から世界戦争への突入も、それぞれ政治的、経済的原因があつたにいたしましても、常々治女維持法で国民をおどしつけながら問題は進められたのであります。  この破防法もまた、政府は厳格なる態度で教唆、煽動に限ると言つているのでありますが、検挙するときは、時の政府の手足たる検察当局でなすのでありますから、これを政略的に活用しないと何人も保証することができないのであります。(拍手本法言論、出版等に與える脅威は最も恐るべきものがあり、少しく進歩的な過激な議論は常に政府転覆の扇動をもつて問われる危険があるのであり、一たび類似の文章がこの法律によつて忌誤に触れることがありとしますならば、諸種の論設に対し事前の検閲はしないことにはなつておりますが、またしようとしてもできないのではありますが、筆をとる者が一齊に警戒し、萎縮することは、これは断じていなめない事実であり、活濃なる言論を抑圧されることは言うまでもありません。われわれは、かくのごとき法律の存在それ自身が国民生活の明朗性を忘却するがために排斥するゆえんであることを、御承知願いたいのであります。  特に悪質なる資本家が本法に便乗して、不当労働行為等に拍車をかけることは想像にかたくないのでありまして、その暴挙に対する正当なる労働者の抗議運動に対して、あるいは出先官憲の行き過ぎとなり、ひいては騒擾もしくは公務執行妨害等にひつかけて、極端なる弾圧を行うことは、火を見るよりも明らかな事実であると思わなければなりません。(拍手)戦前のごとく、暴虐資本家の走狗となり、正常なる労働運動を弾圧する結果となるのであります。  さらに、戰時中、治安維持法が全日本の合法的な労働組合解散せしめ、産業報国会を強要し、一切の労働階級の発言権と行動権を剥奪して、完全に奴隷化せしめた事実はあまりにも明白であり、本法実施後、再びかくのごとき不安なしと、だれが一体保証するのでありましよう。(拍手)過般の早大重件等を見ましても、まことに危險千万であると言わなければなりません。(拍手)  もちろん、わが党は、民主主義を否定し、暴力革命を是認するものではなく、暴力をもつて社会秩序を破壊しようとするいかなる行動に対しても徹底的に反対すると同時に、また治安態勢確立には強い関心と熱意を持つものでありますが、しかし、わが党は、国民を圧殺し、民主主義を窒息せしめ、道義の頽廃と文化の破壊を招来するおそれが顯著であり、国民をして絶望の淵に神吟せしめることを恐れるがゆえに、本法案に対しましては絶対に反対をいたす次第でございます。(拍手)  最後に、私は、政府並びに自由党諸君に対して一言警告を申し上げておきたいと存じます。(拍手)それは、もちろんわが日本社会党といえども、凶悪なる暴力行為はあくまでも否定するものであることは、先刻申し上げた通りであります。しかしながら、單に暴には暴をもつてするという近視眼的な対策は、それは決してよき対策にあらずして、その根源を究明し、これを改革する能力なきものは政治ではありません。英国は、御承知の通り共産党に対しましても、その他の極左運動団体に対しましても、法的には何らの制約をしていないにもかかわりませず、過ぐる五月九日、各新聞が発表をいたしましたことく、全英国の市会選挙の結果は、三千数百名中、共産党は一名の当選者も出しておらないのであります。これは何を物語るか。言うまでもなく、それは英国における労働党が、終戦後、社会主義的財政経済政策を遂行し、全国民の負担と受益の均衡化に努力したからであります。現吉田内閣のごとく、民主主義政治を逆転せしめ、一部少数の大資本家の擁護に汲々として、勤労大衆圧迫の反動政治を強行するところ、社会不安の好ましからざる事態はますます激化するのであります。單に破防法、労働三法、ゼネスト禁止法等によつて弾圧を強行せんとするならば、ますます国家社会を不安のどん底に追い込むであろうことを警告申し上げ、私の反対討論を終りといたします。(拍手
  29. 林讓治

    議長(林讓治君) 加藤充君。     〔加藤充君登壇
  30. 加藤充

    ○加藤充君 日本共産党は、本三法案の撤回を要求します。日本共産党は、本三法案並びに修正両案に絶対反対であります。  政府は、平和條約発効後の治安維持のために本法案を提出したというのであります。しかし、政府治安維持というものは、一体どんなものであるか。今般の日米両條約及び行政協定は、中ソ両国を敵視し、日本が米国の防衛の強力な一翼となり、米国が共産主義国と戦う場合に、米国の忠実なる肉弾となるべきことを日本に押しつけたものであります。日本は日本民族の手にもどされませんでした。米国軍隊による日本占領は、絶対権力と広汎な治外法権を持つた駐留軍の名のもとに継続されております。占領による財政、金融、貿易、外国為替、産業及び自然資源に対する管理と支配は、事実そのままに存続されております。これは経済の非軍事化、民主主義勢力の助長及び平和経済の再開という連合国間の協定、ポツダム宣言及び極東委員会の諸決定に明らかに反したものであります。(拍手)これは、広汎かつ強力なること歴史上未曽有といわれておる。今日全世界の平和への意思と努力に対し、公然と背を向けたものであります。またこれは、日本国民の意思と希望と生活をまつ向から踏みにじつた、不法不当のものであります。(拍手)  日本の再軍備は軍需工業を発展させたかもしれないが、民間産業は操短させられ、社会保障制度は縮減されられ、増税と生活必需物資の値上りを招きました。勤労大衆には最低生活費さえ與えられず、人殺し、戦争商人、少数の内外独占資本の利潤は、朝鮮干渉戰争と、気違いじみた軍拡のために厖大な額に達したのではありませんか。日米両條約と行政協定は、実はこれら少数の日米反動の取引にすぎなかつたものであります。(拍手)  日本の労働者は、大小無数の米軍基地に取巻かれた軍事工場で、銃口の監視のもと、文字通り奴隷の労働を強制されております。日本の農民は、飛行場、練兵場、兵舎、軍事道路のために農耕地を奪われ、日本の漁民は漁場への立入りを禁止され、小河内村のごとく、軍需用発電所建設のために湖底に沈められるものも続出しているではありませんか。(拍手)職にあぶれて血液を売る行列が長々と続いております。パンパンの氾濫、これすら暗い影であるのにさらにその陰には、戰争等で夫と死別した女性が約五百万人おる。そのうちの四百二十万人は平均二人以上の子持ちである。この母子世帶の多くは、わずかばかりの生活保護法も適用されず、極度の貧困にさらされております。子供の日、母の日に、千枚張つて四十円、一日やつと四、五十円の紙のこいのぼりの内職に忙がしい母と子のあることを忘れてはなりますまい。これが、占領七年と講和発効後の日本と日本人の実情であります。これが米日反動の公共の実情である。これに文句を言わせないことが、かれらの治安維持なのであります。(拍手)この残忍な秩序を警察国家の弾圧で強制するのが、すなわちこの法案の本質であります。(拍手)  この法案は、日本の憲法的原理を蹂躙し、国家を私物化し、国民の基本的権利を圧殺して、国民を奴隷化せんとするものであり、明白なフアシズム独裁の法的宣言である。平和と自由と生活に対する公然たる挑戦であります。(拍手)秩序紊乱及びその害悪を未然に防がんためという理由で、血液循環系統の発見者セルヴエートや、地動説の学者ブルーノを処刑した異端糺問所、宗教裁判所の再現であります。「犯罪刑罰」の著者大学教授ヴエツカリヤをして、「私は殉教者とならずに真理を保護したかつた」と告白させたのと同じ方法によりまして、思想、学問及び表現の自由に対する許すべからざる侵害であります。  諸君、明治二十四年の湖南事件を想起したまえ。あらゆる言論、集会を禁止し、学術講演会において刑法第百十六條の講義をすることすら禁じました。法律の解釈は、あるいはしからん。しかれども、法律国家よりも重大なることなしとの閣議決定で、時の裁判長兒島判事を圧迫しました。読者は、この法律濫用を恐れております。濫用に対する有効なる保障のないことを指摘しております。しかし、諸君、この法自体一切の濫用を合法化したものである。反政府言論と行動は、言葉の最も広い意味で破壊的だと認定され、解釈されることは必定であります。まさに法制化された無法律状態の実現をねらつたものこそがこの法案であり、歴史的に証明された、これはフアシストの手口であります。  政府は、明治四十年の刑法、旧帝国憲法的観念を引出して、政治的自由を押えんとしております。旧憲法では、政府は主権者天皇の信任によつて成立した。だから、これを転覆するがごときは内乱罪とされたのである。しかるに、今日主権者は国民である。政府は、主権者たる国民の信託によつて国政を行うものにすぎないのであります。国民の信託による国政の保障として、国民の政治的自由があるのであります。そうして、その中核をなす思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由は、不可分にして不可侵の基本的人権として憲法保障されているゆえんであります。政府にして国民の福祉に背を向けるならば、その政府を打倒し、その政府の変革を求め、そのために大いなる国民運動を起すことは当然の権利であります。そして、この反政府翻争が遂に政権を獲得し、新政府を組織するところに政治の進歩があるのであります。万一、單なる多数決の力で、憲法上に明記されているいかなる権利でも、これを少数者から奪うようなことがあるならば、道義上の見地から革命を肯定せざるを得なくなるであろうというのは、諸君諸君のすきなアメリカのリンカーンの主張であります。  今次の大戰中、ペタン政府は、ただ占領軍当局の命令を従順に伝達執行するだけであつた。警察機関が、その政府の重要な部門となりまして、そしてナチの秘密警察に協力、下請けいたしまして、およそ疑わしい男女を追究し、どこの監獄も超満員の状態でありました。フランス国民は、完全にその保護から見捨てられました。フランス国民のレジスタンスは、ドイツ占領軍からの解放のための闘争であり、売国、反動のペタン政府に対する広汎な国民解放の運動でありました。そして、同時に、それはフランス民族とフランス国民の生活権の擁護の運動でもあつたのであります。ドイツ軍とペタン政府の軍事警察的抑圧は強められ、新聞やビラの配布者すらが武器で射殺されるようになりました。そこで、愛国の新聞、愛国のビラの配付者までが、やむなく自己の防衛のために、進んでは相手を攻撃するために武装せざるを得なくなつたのであります。レジスタンスは、決して多数の組織ではあする同情者はきわめて広汎多数でありました。フランスの共産党が、このレジスタンスの中核、先頭に立つたのであります。この巨大なる国民運動となつた実力抵抗がなかつたならば、フランスは遂にナチスの侵略と支配を撃退し、独立を回復し得なかつたことは明らかでありましよう。  また、中国に対する侵略、植民地化は、一八四二年の中・英南京條約に始まつた。帝国主義諸国は治外法権制度をしき、自国軍隊を駐屯させる権利を獲得し、中国が国家として維持しなければならない重要点は、諸外国との條約によつて次々に売り渡されて行きました。外国人が中国の主人公となりまして、中国の国土において、中国人は人間として取扱われなかつたのであります。中国の独立と、中国人民の解放の思想と行動は次々に圧殺されました。国民党蒋政権も、これら侵略者からまた莫大な資金と兵器を支給された上、中国人民の愛国運動を弾圧し、帝国と腐敗と圧制の限りを盡しました。しかし、中国共産党を中核に結集された愛国運動は遂に勝利し、中国の独立を回復させ、中国人民を解放することができたのであります。  フランス国民のこのレジスタンス及び中国人民の反帝、反戦の運動は、まさに愛国の行動である。そして、その犠牲者は愛国者でありました。これこそ、売り渡された祖国を自国民の手にとりもどし、破壊された祖国の秩序と生活を再建し、新しい秩序を建設したものであります。これこそ、食い荒され、死滅しかかつた民族の生命を、革命という行動によつて更生させた、民族的一大事業であつたのであります。  本法案は、平和と独立、自由と生活の愛国運動を弾圧せんとする心のである。かかる不名誉な法律を持たねばならない国は植民地である。かかる法律を提案する吉田自由党政府は、いわゆる傀儡政府であり、かかる法案賛成する者は、いわゆる——でありましよう。国民と歴史は必ずこれを断罪し、この断罪をもつてこれに必ず報いることでありましよう。第二十三回メーデーは、隷属と再軍備の講和並びに安保両條約に反対、行政協定破棄、破防法粉砕、植民地的賃金と再軍備反対、そうしてその元凶吉田内閣打倒、真に日本国民の一致した要求をスローガンに決定いたしました。この示威におびえて武力を使用し、数名を撃ち殺し、数百名を傷害いたしました。五月八日には、数百名の武装警官が早稻田大学に踏み込み、無抵抗の学生に攻撃を加え、百数十名に重軽傷を負わせて、乱暴、残忍の限りを盡しました。かかる残虐は、世界に悪名高き日本警察史上にも前例のない鬼畜行為である。まさに植民地警察の実態であります。本法案を早くも地で行つたものであり、生活と自由と権利を守り、吉田政府を打倒し、アメリカ帝国主義者の日本支配に対して闘い抜く行動なくて、日本の独立と新しい秩序を打立てることはできません。いかなる悪法をつくり出そうとも、金石をもまた貫き通す日本国民のこの運動を圧殺することはできるものでは絶対にありません。  かつて、日本の支配者とその一味は、治安の名のもとにあらゆる抑圧法令をつくり、秘密警察、憲兵政治によつて、日本人民を卑屈な、非人間的な存在に突き落し、はずべき侵略戰争にかり立てました。今日、同じ人間が来国反動勢力と一体となり、治安を口にして、日本国土と国民を再び戦争と圧制の中に追い込まんと企てているのであります。昨年七月、特審局長吉河は米国に呼びつけられ、米国の連邦調査局の職務活動の見習いをさせられました。條約発効の日、初代駐日米国大使としてロバート・マーフイー氏が赴任しました。彼は、北アフリカのローレンスという異名をとり、ハリ在勤当時も、フランスの諜報機関や右翼陣営にまで手を延ばした男である。彼はフランス人を混乱の中に投げ込み、敗戰国民の間に不信と恐愕の念を植えつけた男であるというのは、世界の政治評論家の言葉であります。この事実は、特審局改め公安調査庁を、米国連邦調査局のひもつき下請機関とするものであります。  最後に、再び日本国民の名において平和を求める世界十五億の平和愛好者の名において、本法案の撤回を強く要求して反対討論を終ります。(拍手)     〔発言する者多く、議場騒然〕
  31. 林讓治

    議長(林讓治君) 法案賛成する出は——でありましよう云々のうち、——の言葉は不穏当と思いますから、お取消しを願います。——加藤充君、お取消しになりませんか。——加藤君、お取消しになりませんか。——加藤君はお取消しになりませんから、議長はその言葉の取消しを命じます。  猪俣浩三君。     〔猪俣浩三君登壇
  32. 猪俣浩三

    ○猪俣浩三君 私は、日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、原案並びに修正案反対の意を表します。  基本的人権の擁護と治安保障とをいかに調和するかは、世界的の悩みであります。これは、片方を重視いたしまするならば片方は侵害される。この調和点に対しましては、政治家の最も頭を悩まさなければならない点でございます。その意味におきまして、この治安立法をいたしまするには最も用意周到にかからなければなりません。  この第一の用意といたしましては、どうしても治安を維持するために、いわゆる公共の福祉のために、最低限の基本的人権を押えなければならぬという、そういう輿論を一般に沸き立たせなければなりません。この用意のもとに立案せらるべきものであります。第二は、この法律ができますると、これは政府当局の説明のいかんにかかわらず、法律そのものは生きて、世の中に飛び出します。これを施行いたしまする者は一般の官僚諸君でありまするがゆえに、この下部機構の行政官が自由を尊重するという観念がございませんと、この治案立法は実に人権抑圧の法律と転化するのでございます。(拍手)  そこで、アメリカにも治安立法はございます。国内安全保障法、俗にマツカラン法と称するものがございまするが、これは一九五〇年九月二十二日に国会を通過し、成立いたしたものでございます。但し、このマツカラン法は、モザイツク立法だと称せられまするがごとく、多数の、長い間審議未了になりました法案を集大成したものでございます。この一部をなしておりまするムント・ニクソン法なるものは、一九四八年の一月にアメリカの下院に提出せられたものでありまするが、これが審議未了になりまして、そのまま審議を継続されました。これが二年八箇月を経過いたしまして初めて法律と相なつたのでございますがゆえに、このマツカラン法は、審議を始めましてからおよそ二年八箇月を経過しているはずであります。  なお、その以前に非米活動委員会なるものがありまして、共産主義活動に対しまして徹底的な調査をいたしました。これが十年間活動いたしておりました。しかのみならず、一九五〇年、このマツカラン法ができるころには、各州からいわゆる共産主義活動取締りに関する法案が提出せられまして、その数が三十八も出たというのであります。かようにいたしまして、しかも一九五〇年九月と申しまするならば、朝鮮事変が六月に起つております。かような戦時立法といたしまして、輿論にこたえてこれができ上つたものである。  かような、戦時中、国家非常時に際し、しかも二年数箇月を費して成立いたしましたるこの法案に対しまして、時の行政庁の長官でありまするトルーマンは、国会に拒否の教書、反対の教書を送つたのであります。その反対理由の最大なるものは、この法案は共産主義活動をなす者を取締るようになつておるけれども、しかし、これは必ずや善良なる市民、われらの立場に立つ者の自由を剥奪する結果になる危険性があるがゆえに、これは断固として反対するということを、国会に教書として送りました。この行政庁の長官でありますところのトルーマン氏の、自由を守らんとする烈々たる気魂に、われわれは頭が下るのである。  かような行政庁の長官が上にありまして、長い間の用意周到のうちにつくりますることが、治安立法をしてその光輝を放たしめるゆえんではないかと考えますが、はたしてしからば、今日の破壊活動防止法案はいかなる用意があつて、しかもごの行政庁の長官初め、その下部の官僚たちが、どういう気魄があるでございましようか。アメリカにおきましては、大統領がこの気魄を持つております。この自由——市民の自由をどこまでも守らなければならぬという気魄を持つておりますがゆえに、それに見ならいますところの下部機構は、一齊にこの点につきましては注意するでございましよう。日本の現状はどうでございましよう。過去の官僚が、一体人民に対するいかなる態度をとつて来たか。治安維持法が施行せられてから二十年間、これは世界的に有名な、まつたくの血の歴史であります。人民弾圧の歴史である。これを取扱いました官僚どもが、一体どういうふうにわれわれの自由を抑圧して来ましたか、これは思い出してもぞつとする程度のものである。  しからば、終戰前のこの官僚は、みな改心して、りつぱになつたと、こう言い切ることができましようか。いないなしからず、この警察官その他の諸君は、また続々として元気をとりもどして、この終戰以前の魂をまたむき出しにしておる。その最も明白なる例証は、去る日の早稻田大学の学生殴打事件である。暴力行動事件であります。いかにあの当時の警察官が勇敢に無抵抗の学生の頭をたち割つたか、驚くべきものがある。(拍手)かような元気をとりもどして参りました。  しかも、いわゆる内閣総理大臣たる吉田茂氏は、おそらくこの破壊活動防止法の成立を一日千秋の思いで待つていらつしやる一人だと考える。(拍手)トルーマンとの差異、天地雲泥の差異がある。一体、こういう長官をいただき、しかも、ただいまの論議をみましても、自由党諸君が熱心にこれを提案しておる。かような状態から考えますると、この防止法案が生れて、ひとり立ちした際には、いかなる危險性が起るか、思い半ばに過ぐるものがあると存ずるのであります。  本案内容につきましての一番の欠陷は、いわゆる行政処分規定刑罰規定とを同じ法案の中に混淆させておる点でありまして、これがために、法案全体がはなはだ不明確であり、はなはだわかりにくくなつているのであります。私どもは、もし破壊活動団体規制が必要だといたしますならば、これは単行法といたしまして、その破壊活動関係いたしましたる個人の刑事責任につきましては、刑法改正にまつべきものであることを主張したのでありまするが、いれられない。この一本に、ごつちやまぜになつております。それがために、いろいろの欠点が出ているのでありますが、今一つ一つそれを指摘するの煩にたえません。  一体、こういう方法をなぜとつたか、なぜ刑事責任については刑法改正しなかつたのであろうか、その点については、はなはだ疑問がある。それは、おそらく政府の考えといたしましては、この法案刑法改正に持つて行くと、はなはだ都合の悪いことができる。たとえば、刑法の百十三條、放火予備罪の処罰規定を見ますると、放火予備につきましては二年以下の懲役に処す、なお情状によつてはその刑を免除することが書いてございまするが、しかるに、それに政治上の主義施策を推進し、支持し、または反対する活動が加わると、これが五年以下の懲役及び薬鍋に処するということになるのであります。そうすると、これを刑法に並べて書きますと、あまりに明白になつてしまう。片や政治上の文句が入つて来ると、いきなり二年が五年にはね上る。政治上の主義施策を推進し、支持し、または反対するという、われわれの政治活動を抑圧するところの法案であるということが明白に出て来まするから、これをごまかすために、この法案に書いたのではないかと思われるのであります。  かような点がありまするのみならず、未遂でも、あるいは予備陰謀でも、特別の必要のありまするときは、特に刑法に條文があるのであります。一般的には、未遂、予備陰謀というものは処罰しない。しかるに、本案に至りましては、予備陰謀から未遂、新たに煽動ということまでもつくり出して、これを一切処罰するというように、いわゆるナチスの拡張共同正犯論という、フアツシヨの政権保持の刑法理論をまねたと思われる思想から、こういう教唆とか、その他幇助、こういうものをみな独立犯罪として——刑法においては、これは独立犯罪じやございません。教唆いたしましても、教唆された人間が犯罪を犯さないならば、その教唆犯は成立しないのでございまするが、教唆しただけで、教唆された人間が犯罪をいたしませんでも、みんなこれを独立犯罪として処罰するような、こういう規定にいたしました。広く、ある行為につきまして、たくさん網をかけてみんなふんじばることができるような規定にしておるのであります。  なお本案につきまして最大の欠点は、人権保護の保障がないことである。たとえば、第二條規制基準というのがありますが……。     〔発言する者多し〕
  33. 林讓治

    議長(林讓治君) 静粛に願います。
  34. 猪俣浩三

    ○猪俣浩三君(続) さような規制基準に反しました処罰に対して、すなわち職権濫用に対して、いかなる保障があるかと申しますと、何も書いてない。そして、この第二條のごときは訓示規定でありまして、これに違反いたしましても処罰のしようがない。刑法職権濫用罪があると申しますけれども、あれは個別的な犯罪でありまして昨今の早稻田大学の殴打事件のように、一人の指揮官によつて集団的に破壊活動をやつた警察官に対しては何らの規定がないということに相なるのであります。(拍手)  かようにして、人民の破壊活動に対してはその団体規制することを規定しておるにかかわらず、職権濫用によりまして破壊活動をやりましたこういう集団に対しましては何らの規定もなく、それに対しましての保障がないということでありまして、実に職権濫用の危険が生れると存ずるのであります。かような意味におきまして、私どもはこれに反対しなければならぬ。  支那の古い言葉に、法匪という言葉があります。法律によりまして、いわゆる人民を押えつける、支配階級の政権を保持するために、やたらに法律をつくつて人民を押えつける、こういうものを、人民の側から、法律上の匪賊だということで、法匪という言葉で呼んでいる。さすが文字の国でありますから、まことに適切な言葉だと思いますが、こういうように輿論がみな反対しておる。公聽会において、どういう現状であつたか。十八人の公述人のうち、賛成したと思われる者はたつた一人だ。しかも、その人は、特審局に協力して、この法案をつくることにいろいろ相談にあずかつた人だそうだ。その一人が賛成してあとの五人は修正意見であり、他の十二人は全部反対であります。しかも、労働組合を初めとして、あるいは日本学術会議、あるいは日本文芸懇話会、あるいは新聞協会、その他二十有余の文化団体が、ことごとくこれに反対いたしております。こういう際に、諸君が多数を頼みまして、こういう法律案をつくり出しますならば、これは支那の言葉にありまする法匪ということになる。  どうぞ自由党及び現政府は、法匪というようなそしりから免れるために、これには反対していただきたいと存じます。(拍手
  35. 林讓治

    議長(林讓治君) これにて討論は終局いたしました。採決につき一言いたします。まず破壊活動防止法案につき採決し、次に公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の両案を一括して採決いたします。  これより採決に入ります。まず破壊活動防止法案に対する中村又一君外二名提出の修正案につき採決いたします。中村又一君外二名提出の修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  36. 林讓治

    議長(林讓治君) 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に破壊活動防止法案につき採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君は白票、反対諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  37. 林讓治

    議長(林讓治君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  38. 林讓治

    議長(林讓治君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 二百九十七   可とする者(白票)  百九十四     〔拍手〕   否とする者(青票)    百三     〔拍手
  39. 林讓治

    議長(林讓治君) 右の結果、破壊活動防止法案委員長報告通り決しました。(拍手)     —————————————     〔参照〕  破壊活動防止法案委員長報告通り決するを可とする議員の氏名    阿左美廣治君  逢澤  寛君    足立 篤郎君  安倍 俊吾君    青木 孝義君  青木  正君    青柳 一郎君  淺香 忠雄君    淺利 三朗君  天野 公義君    新井 京太君  有田 二郎君    井手 光治君  飯塚 定輔君    池田正之輔君  池見 茂隆君    石田 博英君  石原 圓吉君    石原  登君  稻田 直道君    今村 忠助君  今村長太郎君    岩本 信行君  宇田  恒君    宇野秀次郎君  内海 安吉君    江崎 真澄君  江田斗米吉君   江花  靜君  小笠原八十美君    小川原政信君  小澤佐重喜君    小高 熹郎君  小渕 光平君    尾崎 末吉君  尾関 義一君    越智  茂君  大石 武一君    大泉 寛三君  大上  司君    大西 禎夫君  大野 伴睦君    大橋 武夫君  岡延右エ門君    岡崎 勝男君  岡田 五郎君    岡西 明貞君  岡野 清豪君   岡村利右衞門君  岡村又十郎君    押谷 富三君  加藤隆太郎君    鹿野 彦吉君  角田 幸吉君    甲木  保君  門脇勝太郎君    上林山榮吉君  川村善八郎君    川本 末治君  河原伊三郎君    菅家 喜六君  木村 公平君    菊地 義郎君  北川 定務君    北澤 直吉君  金原 舜二君    倉石 忠雄君  栗山長次郎君    黒澤富次郎君  小金 義照君    小平 久雄君  小西 寅松君    小山 長規君  近藤 鶴代君    佐久間 徹君  佐々木盛雄君    佐瀬 昌三君  佐藤 榮作君    佐藤 重遠君  佐藤 親弘君    坂田 英一君  坂本  寛君    清水 逸平君  篠田 弘作君    島田 末信君  島村 一郎君    首藤 新八君  庄司 一郎君    周東 英雄君  鈴木 明良君    鈴木 善幸君  關内 正一君    關谷 勝利君  千賀 康治君    田口長治郎君  田嶋 好文君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 啓一君  田中 重彌君    田中 彰治君  田中  元君    田中不破三君  田中 萬逸君    田中  豊君  多武良哲三君    高木  章君  高木 松吉君    高塩 三郎君  高田 弥市君    高橋 英吉君  高橋 權六君    高間 松吉君  竹尾  弌君    橘  直治君  玉置 信一君    玉置  寛君  塚田十一郎君    塚原 俊郎君  辻  寛一君    圓谷 光衞君  坪内 八郎君    坪川 信三君  寺島隆太郎君    苫米地英俊君  奈良 治二君    内藤  隆君  中野 武雄君    中村  清君  中村 幸八君    仲内 憲治君  永井 要造君    永田  節君  長野 長廣君    夏堀源三郎君  二階堂 進君    西村 英一君  西村 直己君    西村 久之君  野村專太郎君    橋本 龍伍君  花村 四郎君    原 健三郎君  原田 雪松君    平井 義一君  平澤 長吉君    平島 良一君  廣川 弘禪君    福井  勇君  福田 篤泰君    福田  一君  福永 一臣君    福永 健司君  藤井 平治君    淵上房太郎君  船越  弘君    古島 義英君  降旗 徳弥君    保利  茂君  星島 二郎君    堀川 恭平君  本多 市郎君    本間 俊一君  眞鍋  勝君    牧野 寛索君  増田甲子七君    益谷 秀次君  松井 豊吉君    松浦 東介君  松木  弘君    松田 鐵藏君  松本 一郎君    松本 善壽君  丸山 直友君    三池  信君  三浦寅之助君    水谷  昇君  南  良雄君    宮幡  靖君  宮原幸三郎君    守島 伍郎君  森 幸太郎君    八木 一郎君  山口 好一君    山口六郎次君  山崎  猛君    山村新治郎君  山本 久雄君    吉田吉太郎君  吉武 惠市君    龍野喜一郎君  若林 義孝君    渡邊 良夫君  亘  四郎君  否とする議員の氏名    荒木萬壽夫君  有田 喜一君    石田 一松君  井出一太郎君    稻葉  修君  今井  耕君    小川 半次君  大西 正男君    金子與重郎君  川崎 秀二君    小林 運美君  小林 信一君    小松 勇次君  笹森 順造君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    清藤 唯七君  園田  直君    床次 徳二君  中村 寅太君    橋本 金一君  畠山 重勇君    早川  崇君  原   彪君    平川 篤雄君  藤田 義光君    船田 享二君  増田 連也君    松谷天光光君  三木 武夫君    村瀬 宜親君  森山 欽司君    山本 利壽君  吉田  安君  早稲田柳右エ門君  淺沼稻次郎君    井上 良二君  石井 繁丸君    石川金次郎君  今澄  勇君    受田 新吉君  大矢 省三君    岡  良一君  加藤 鐐造君    川島 欽次君  熊本 虎三君    佐竹 新市君  鈴木 義男君    田万 廣文君  堤 ツルヨ君    戸叶 里子君  土井 直作君    西村 榮一君  前田榮之助君    前田 種男君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松岡 駒吉君    松本 七郎君  三宅 正一君    水谷長三郎君  門司  亮君    山口シヅエ君  井之口政雄君    池田 峰雄君  江崎 一治君    加藤  充君  風早八十二君    柄澤登志子君  苅田アサノ君    木村  榮君  田島 ひで君    田代 文久君  田中 堯平君    高田 富之君  竹村奈良一君    立花 敏男君  中西伊之助君    梨木作次郎君  林  百郎君    深澤 義守君  山口 武秀君    横田甚太郎君  米原  昶君    渡部 義通君  足鹿  覺君    青野 武一君  猪俣 浩三君    稻村 順三君  上林與市郎君    久保田鶴松君  鈴木茂三郎君    田中織之進君  成田 知巳君    八百板 正君  石野 久男君    岡田 春夫君  黒田 寿男君    中原 健次君  小平  忠君    寺崎  覺君  小林  進君    佐竹 晴記君     —————————————
  40. 林讓治

    議長(林讓治君) 次に公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  41. 林讓治

    議長(林讓治君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告通り決しました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十一分散会