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森山欽司君 私は、ここに、去る五月一日、
東京において
独立後初めて行われた第二十三回
中央メーデーについて惹起された
暴動事件につき、改進党を代表して
政府の
所信をただすものであります。
この
事件は、過去二十三回の
メーデーのうちで最も凄惨をきわめたものであり、特に
独立後わずか四日目にかくのごとき未
曽有の
不祥事件の
発生を見たことは、まことに遺憾かつ痛憤にたえないところであります。しかしながら、本
事件の是非はともかくとして、われわれは謙虚な心をも
つて、これを過去六年有余の長い
占領下の安易さにとかくなれた
政党並びに
国会に対する
一大警鐘とも聞くべきでありましよう。
さて、この
事件は、五全協以来の
日本共産党の
軍事方針による
計画的騒擾事件であると伝えられ、
革命の
予行演習ともいわれ、これを否定するものは、当の
共産党の
諸君以外に何人もないことは事実であります(
拍手)もし、しかりとすれば、祖国を異にする
共産党員の
諸君は、復刊された
アカハタによれば、この
事件について何ら責任を感じておらないのでありますから、その
諸君に対して、いまさら多くの言葉を費す必要はないのであります。ただ、ここにおられる
共産党の
議員諸君にして、一片のヒユーマニテイを持たれるならば、ただちにこの議場から退場されんことを勧告したいのであります。(
拍手)
なおまた、伝えられるところによると、
メーデーの
参加者のうち、一部の
自由労働者を除いて、
一般の
組織労働者の
諸君は、秩序ある
行動をとり、彼らの
破壊的陰謀に巻き込まれなか
つたのであります、私は、健全なる
労働運動の発達を心から望む一員として、これを不幸中の幸いとして喜ぶものであり、また
大衆の健全なる常識に敬意を表するものであります。けれども、このことは、この
メーデーを
計画し、実行した幹部
諸君の行き方の問題とはおのずから別個の問題であり、たとい
事件が形式上
メーデー終了後であ
つたとい
つても、その責任を免れることはできないのであります。総評、労鬪を中心とする
メーデー実行委員会は、最近の傾向の
通り、全労連系
組合や産別系
組合といえども單位
組合としての参加を容認したようでありますが、さらにこれを越えて、事実上
全学連や旧朝連系等の左翼
団体と共同歩調をとるに
至つたと観察されるのであります。これはまさに、去る三月二十日、かの
騒擾事件を惹起した、
京都における総評主催の彈圧法規粉砕総決起
大会と軌を一にするものであります。
すなわち、今回の
メーデーの中心スローガンには、再軍備反対、民族の
独立を鬪いとれということを掲げているが、これは本年の
メーデーを目前に控えた四月二十二日に発表された、ソ連
共産党から
日本国民あての
メーデー・スローガン、すなわち外国の占領に対し祖国の
独立を確立し、平和を擁護するため勇敢に鬪う
日本国民にあいさつを送る、これとまさに相呼応するものがあり、かく今日総評の主導権を握る人たちの考え方は、日共の割込み戰術に好個の機会と口実を與え、日共の
大衆路線の具体的な支持を示す危險があるのであり、それは、四月二十五日の総評機関紙において、
メーデー実行委員長であり、総評の政治部長であり、かつまた左派社会党の中央執行委員である島上善五郎氏が、この
統一メーデーは
労働者の祭典ではない、再軍備反対等の鬪争の勢ぞろいをする日だと、きわめて戰鬪的かつ政治的な言辞を吐いておられるのを見ても明らかであります。
さらに、そういう考え方に立
つて、今回の
メーデーにおいては、
共産党からの祝辞も受付けたばかりでなく、
会場の
内外に
極左分子の蠢動を見のがし、遂には日比谷における
騒擾事件の素因をなすに
至つたのであります。しかも、
メーデー実行委員会における
準備も、前々から、かかる
騒擾事件の危惧があ
つたにもかかわらず、單産間の代表演説のとりきめやスローガンに、きわめて政治的な安保條約、
行政協定の廃棄を入れるか入れないかなどに精力を注ぎ、かんじんの
共産党の割込みに対する真劍な
対策を何ら取上げなか
つたのであります。これはまさに
メーデーの責任者たちが負うべき社会的責任感の欠如を物語るものであります。(
拍手)しかも、この
メーデー実行委員会は、今回の
事件が解散後における
不祥事件であ
つて、実行委員会としては関知しないとの声明を出し、いささかも遺憾の意を表明しないばかりか、
警察官の発砲、
催涙弾の乱射が
事態を激化したとさえ公然唱えて恥じないのであります。かかる態度をわれわれは糾彈します。世論もまた、これをきびしく指彈しておるのであります。
しかも、さらに遺憾なことは、左派社会党もこれと同様の見解をとり、あたかも
共産党のごとく、この
事件はすべてが
政府の責任であると声明しているのであります。
労働者の
政党をも
つて自認し、今回の
メーデーにも赤色新党旗をかつぎ出して祝辞を送り、党主鈴木茂三郎君等が、ともにスクラムを組んで練り歩くという、あつぱれなる
労働者の
政党ぶりを見せられだことは、必ずしも惡いこととは申しませんが、それだけにまた、今回の
騒擾事件を釀成するに
至つた従来の行き方については、総評左派幹部とともに、その不明を天下に謝すべきであります。左派社会党が
共産党と真に行き方を異にするならば、
共産党との明確な一線を政策並びに
行動の上において具体的に明らかにする責任があることを銘記すべきであります。(
拍手)
さて、いずれにしても、今回の
事件と民主国家
独立の第一声を汚した
事件として、われわれは
国民とともに悲しむものでありますが、このすべての責任をもつぱら
政府にのみ帰することは、今日健全なる野党の良識をも
つてしては許されないと考えるものであります。けれども、なお責任の一半は明らかに政権を持
つているところの
政府にあるのであ
つて、
政府の負うべき当然の責任に対して、その追究を怠ることは、また健全なる野党として、
国民に対する責任を全うするゆえんではないのであります。特に今日あることは、さきに三月二十七日、本院において、わが党の小川半次君より、
京都騒擾事件に関する緊急
質問において、これを明確にして来たものでありまして、
木村法務総裁は「特審局、国警、自警、
検察庁が互いに緊密な連絡をとわまして、あらかじめかおうなことの起らないように、
情報を十分に收集いたしまして、万一過激なことが起
つたときには、断固としてこれを取締るという方針を持
つておるりであります。」と答え、また吉武
労働大臣は「この
メーデーにおいで左翼分子の蠢動なからしむべく協議を進めておる次第であります。」と言い、あるいは天野文部大臣は「大
学生につきましては、大学の学長に連絡をして、十分そういう点について
警戒をし、またそういうことの起らないようにいたす考えでございます。」ということをはつきり答弁しておきながら、遂に今回の
事件を惹起するに
至つたのであります。その責任たるや、まことに重大であります。(
拍手)
一体、今回の
事件の第一の
原因は、
講和発効後の
治安諸法規の空白にあります。マッカーサー
指令の消滅と、政令三百十五号の失効とによ
つて、
アカハタは堂々と復刊され、また追放制度の廃止によ
つて、地下にもぐ
つた共産党幹部らの政治
活動は一句自由にな
つたのであります。現に、昨年九月追放された岩田英一氏は、
メーデー会場に公々然と姿を現わし、この
騒擾事件の
指令を與えたと伝えられておるのであります。このように、彼らに
活動するすきを與えたことについての
政府の責任をどう考えておるのか。
私は、つい最近、四月二十六日の
労働委員会において、この問題について
政府の責任を追究したのでありますが、吉武
労働大臣は、きわめて楽観的な答弁をされておるのであります。また、その前日の四月二十五日の、行政観察委員会においても、
木村法務総裁は、この空白期間に対して応急
対策は十分持
つていると答弁されております。にもかかわらず、かかる
メーデー騒擾事件という
不祥事件を起した今日、これらの大臣方は責任を感じないままなのかどうか。
さらに、一昨五月四日のラジオの
国会討論会で、異常自由党の幹事長増田甲子七君は、現在の
警察制度のもとでは、内閣が
警察に対する全般的指揮権がないから、
治安の全面的責任は負えないなどと、驚くべき官僚的な、また政治家として無感覚な答弁をしておるのであります。
事件が起きる前は、
治安対策は万全なりと豪語していながら、
事件発生後においては、これを
警察法の不備に藉口して責任のがれをやろうとするような卑怯な態度を、まさが
政府においてもとられるとは思われないが、吉武
労働大臣の御心境を伺いたい。なお、主管大臣たる
法務総裁の明確な御答弁を願いたい。一体、かくのごごとき
暴動事件に関して、そのために設置された
警察予備隊——
政府は、これを
警察であ
つて軍隊ではないとしているから、なおいつそのこと、これは何をしていたのか、大橋
国務大臣の答弁を求めます。なおこれに関連して、
新聞紙上、
政府は
現行警察法の改正、ゼネスト禁止法を提案すると伝えられているが、それははたして事実か、提案するとすれば、本
国会に
提出するのかどうか、この点についても、この際明白に態度を示していただきたい。
さらに、この
事件の
原因の一つが、
政府が
メーデーに対して皇居前
広場の使用を禁止したことにあるという主張が、
労働組合ないし左翼
団体に多く見られるのであります。
極左分子は、皇居前
広場を使わせようと使わせまいと、やるだけはや
つたでありましようが、これは確かに一面の真理であります。ただ
政府が、昨年の
メーデーにおいては、皇居前
広場の使用禁止を、連台軍の
意思でもないものを、あたかも連合軍の
意思であるかのごとく裝い、その権威によ
つてこれを禁止しようというような、自主性をま
つたく喪失した醜態を演じたことは、天下周知の事実であります。そして、今年はまた、裁判所において、
政府の使用禁止は第一審で敗れるという、重ねての醜態を呈しております。
このように、
国民を欺き、また法を無視するがごとき
政府が、いかにして
国民大衆、特に
労働者の信頼と支持を得ることができようか。しかも、年一回の
労働者の祭典に
会場として使用せしめた神宮外苑は明らかに狹隘であ
つて、これが
会場混乱の一因をなしたことは認めねばならないのであります。従
つて、
暴動を誘発した一人は、少くとも皇居前
広場の使用を認めなか
つた労働大臣でもある厚生大臣吉武惠市君であるのであります。
労働大臣兼厚生大臣吉武惠市君は、もし官僚でないならば、いかだる責任をおとりになるのか。いさぎよく辞職するところの御
意思がないか。
今回の
メーデーの
事件は、先に述べだ
通り、小川半次君のみならず
メーデーの前日、自由党の内藤行政監察委員長より指摘され、また
治安当局も、
事前に
相当詳細に予見していたところであります。当日において、
警察がいち早く、
極左分子がこんな
行動に出るという
情報をつかんでいたことは、警視総監も率直に認めているところであります。しかるに、現実には、これに射する
対策が非常に不手際で、あのような大がかりな
騒擾に発展したのであります。それに、
東京のみならず、
全国各地に数十件の
不法事件の
発生を見るに至りました。
法務総裁……。