○深澤義守君 ただいま上程されました四
法律案に対しまして、
日本共産党を代表し反対の意見を述べるものであります。
本
法案が、日米
安全保障條約に基く
行政協定を
日本の税務行政の上に
実施するためのものであることは、言うまでもないのであります。日米
安全保障條約が、
アメリカのみの利益と安全の保障であり、
アメリカの
——————ための極東戰略上の必要から出発しているものであることも明らかであります。その結果といたしまして、わが国土は—
——アメリカの軍事基地となり、わが国の
政治も産業経済もこの線に沿
つて軍事的に再編成されつつあることもまた明らかな事実であります。
このたびの講和が、
国民が長く待望したところの独立ではなくして、完全に
アメリカの属国化することになり、
国民生活は、無権利と困窮のうちに、植民地的な奴隷状態に転落して行くことも、わが党があらゆる機会に指摘し、反対して来たところであります。
憲法を無視いたしまして、
国会の
審議にかけることなしに、
政府が独断的に
アメリカとの間にとりきめられたところの
行政協定が発表されるに及びまして、今までわが党が指摘し、反対して来たことが白日のもとに明らかになり、今や現実とな
つているのであります。心あるところの
国民は、これに対しまして非常な反対の意見を持
つております。すなわち、広汎なる治外法権を認めたこの
行政協定は、わが明治の先輩諸子が血を流してその撤廃のために鬪つたところの安政の條約以上の屈辱的なものであると、
国民の大部分が民族的な憤激をも
つて政府に抗議をしているのであります。
なお許すべからざることは、緊急非常事態に対しまして、その
措置については日米両国がただちに協議しなければならないとな
つているのでありますが、これは、清瀬一郎氏も批判している
通り、
米国が
日本に通告するということと実質において大差ないことになるおそれがあるのであります。それ以上に、現在の隷属
関係においては、ただ
アメリカから命令されるままに動くという結果になるということをおそれるのであります。
なお、一九五一年九月八日、アチソン長官と吉田
総理大臣との交換公文によりますれば、吉田
総理大臣は、
平和條約の効力発生の後に、国際連合の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には、その軍隊が
日本国内及びその
付近において行動することを許し、かつその行動を容易にすることを確認するの光栄を有しますというところの公文を
アメリカに対して出しているのであります。この事は、わが国が戰争に介入し、わが国土が戰場となることに対して、わが
国民は事前にみずかちの国家意思の決定を行うこともなく、
アメリカの一方的通告によ
つて戰争の中に引込まれて行く結果になるのであります。
また
総理大臣の公文は、国連に加盟するところの四十数箇国の軍隊が国連の行動に従事する場合は、
日本国内とその
付近に行動することの自由を確認したのであります。どこに
日本の独立があり、平和と安全の保障があるのでありましよう。あるものは、原爆戰争の危險と民族の破滅あるのみとわれわれは
考えるのであります。和解と信頼の講和と自主独立の幻想に惑わされた
国民は、今その本質を見きわめて、民族の怒りに燃えつつ、この売国的條約の改正あるいは破棄の決意を持ちつつあるのであります。わが国土と
国民を犠牲にする
法案を、次から次と製造いたしまして、與党の多数に物をいわせて成立させんとしているのでありますが、この四
法律案も、その売国
法案の片割れであるということをわれわれは
考えているのであります。
第一に
所得税等に関する
法律案でありますが、これは
日本に駐留する
合衆国軍隊の
構成員、
軍属またはこれらの者の
家族またはPX、食堂、社交クラブ等、
軍人用販売機関または
日本の
米軍基地を
建設する
契約工事者に対しまして、
所得税、
法人税、相続税、富裕税、
通行税、印紙税、
物品税、
揮発油税等を免除することになるのであります。わが国土に戰争をもたらす外国軍隊の即時撤退を要求するわが
国民の
立場から見ますれば、その災いをもたらす外国軍隊の駐留と、それに協力する再軍備のために多大の税金を
——され、
差押え、競売、更正決定等に苦しんでいるにもかかわらず、その
駐留軍に対する一切の税金を免除することは、まさに盗人に追銭のしわざといわざるを得ないのであります。
一つの例をあげますと、
駐留軍の
日本における基地
建設について、
合衆国政府と、
合衆国に居住する個人あるいは
法人との間に
契約ができた場合は、その
契約に塞いで、
日本における基地の
建設、維持、
運営の
事業から生ずる所得に対して
免税するのでありますその結果どうなるか。
日本の
所得税は
アメリカよりも相当高いために、基地
建設の一括した大
契約は、この形がとられることが予想されるのであります。
アメリカ国内において、
米国政府と
米国の
契約者と
契約する場合において、
アメリカの経済事情に基いて原価計算が行われ、
契約額が決定されることはいうまでもありません。その
契約者が
日本へ来て、その
契約工事を行うときに、
駐留軍の
権威をかさに着て、
アメリカの十分の一の低賃金で労働者が駆使され、不況に悩む
日本経済の滯貨が非常に安くたたき買いをされ、莫大なる利潤が
アメリカの大資本家の手に入ることは明らかであります。これに対して
日本は税金がとれないのみか、その工事費の半分は、
日本国民の血の出るような税金によ
つて分担されるのであります。経費は半分負担させられ、低賃金でこき使われ、商品は安く買いたたかれまして、さんざんもうけられたのに対して税金をかけることができない。このような
措置をどうして
日本人が
承知することができましようか。
第二に
関税等の
免税でありますが、
合衆国軍隊の公用に供するための輸入
物品に対してのみならず、
軍人、
軍属及びその
家族の私用品及び私用車両、その部品または
米国軍隊の軍事郵便局を通じて入る相当量の衣料及び家庭用品等に対しては、何ら具体的な
制限をつけることなしに
免税にしているのであります。すべてを税関当局の認定に、ゆだねているのでありますが、
駐留軍の
権威の前にまつたく無力である
日本の
政府は、結局において無
制限に
免税にするというおそれがあるのであります。
第三に
国有の
財産の
管理に関する
法案でありますが、
米軍の使用に供する必要があるときは無償で使用を許し、その返還にあた
つては、原状回復の請求権を放棄して補償の請求をしないことにな
つているのでありますが、
占領軍命令によ
つて、過去において、
日本全土において、農耕地、開拓地、採草地、山林等を一日一坪十銭以下の借上料によ
つて強制接收をされまして、現在その補償さえ未解決であります。神奈川県の追浜地区の再接收の問題や、横浜市の接收解除の陳情運動等を
考えますときに、
駐留軍の基地拡大を予想するこの
法案に対して、
日本国民は多大の不安を持たざるを得ないのであります。
大蔵委員会においても、
政府当局は、今後の被害者に対する補償の基準も明らかにできない。その
予算も明らかにできない。われわれは、
占領軍の接收
財産にも遡及いたしまして、被害者の生活保障のできるような補償を実行すべき
措置を
政府がただちに講ずべきであると
考えるのでありますが。そういう
考えは
政府には全然ない。
第四に
国税犯則取締法等の
特例でありますが、第三條において違法であつた場合においては、
米軍施設及び
区域内の
臨検または
差押えを行うときは、
米軍の承諾を受けて行うことができるということにな
つております。しかし、その後段において
米軍に嘱託して行うこともできると
規定いたしまして結局は龍頭蛇尾に終るところの伏線が敷かれているのであります。
安全保障條約が、
行政協定によ
つてその正体をはつきりさせられ、さらに
行政協定に基く
法律の施行によ
つて、
国民は身をも
つて講和の実体を体験するでありましよう。やがて民族の怒りは全
国民の大きな力とな
つて、一切の売国勢力に対して嚴粛に民族的な審判を下すときが近く来るということを、われわれは確信いたすのであります。
以上述べまして、
日本共産党の反対の討論にかえる次第でございます。(
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