○今野武雄君 私は、
日本共産党を代表いたしまして、この
法案に断固
反対の意を表明するものであります。
一体、迫撃砲や、バズーカ砲を持
つており、そうして戰車訓練を行い、また山の木をどんどん痛めてしまうような、はげしい演習を
行つておるこの
警察予備隊が
軍隊でないというようなことは、世界中どこへ
行つても通じません。現に、最近
北海道の
警察予備隊を視察いたしましたAP特派員の報ずるところによ
つても、
予備隊員は、初めのうちは自分たちは
警察官のつもりで入
つて来たが、現在では
軍隊の人間だという自覚をはつきり持
つておるということを、異口同音に語
つておるのであります。またアメリカの政界あるいは一般の人々の間で論ぜられておるところも、全部これが
軍隊であるという上に立
つて論ぜられておるのであります。このような明白な事実を否定して、これが
軍隊でないと言い張る
自由党、吉田内閣は、まさに
日本人のみならず、世界中の人を瞞着するものでありまして、実に横着な、そしてばかばかしいものである。こういうことは、いやしくも
独立した判断力を持つ者にはできないのであ
つて、奴隷のみがあえてよくすることのできるものであるということができるわけであります。
現に、この
警察予備隊は、その出発点からいたしまして、アメリカの極東戰略作戦行動の申し子であつたのであります。と申しますのは、つまりこの
予備隊ができたときは、朝鮮
戰争のしよつぱなにアメリカが敗走して、いよいよこれはいかぬということにな
つて、その七月に、当時の最高司令官マツカーサー元帥が、急遽
日本政府に対して
警察予備隊をつくれ、こういうことを命じたわけであります。
しかしながら、この朝鮮戦争というものは一体何であるか。これは、
政府あるいは
自由党の
諸君は、口を開けば、これこそソ連の
侵略の証拠であるというようなことを言うけれども、あの当時の新聞をよく見た者は、だれもそんな言葉にはごまかされないわけです。あの当時、ごらんなさい、あの朝鮮に統一の機運がぐつと強くな
つて来た。その機会に、北鮮の方から韓国に対して、三名の外交官を派遣した。その外交官を、李承晩は理不盡にも捕えて、そして、これを殺して、道ばたに埋めてしまつた。このような事実に対して、憤激して立たないものが一体あるであろうか。しかも、そればかりじやない。すでに一年前から、李承晩はアメリカに対して武器を要求し、北伐を呼号しておつたわけです。そうして、あの朝鮮
戰争が始まる前には、アメリカのダレス氏が前線にでかけて、暫壕などを見まわ
つて、これならやれるということを大つぴらに言
つておるじやありませんか。これはまさにアメリカの——政策の最も露骨な現われであります。その手助けをさせるためにつまり
警察予備隊ができた。
この
性格は、今日の
警察予備隊の内部の
組織においてもはつきりしております。すなわち、訓練はすべてアメリカの軍事顧問団によ
つて行われておる。そればかりではなくして、この間も
大橋国務大臣がはつきりと証言したところによれば、武器は全部アメリカから借り、決して
日本独自には武器を持つことはできない。全部アメリカから借りて、それをアメリカの将校が保管してお
つて演習をするときには、一々かぎをアメリカの将校があけてその武器を渡し、演習が済めば、またその武器を納めて、アメリカの将校がまたかぎをかける。このような、まつたく
自主性のない
軍隊が
日本の
軍隊でないことは明らかであります。これはまさにアメリカの——である。しかも、われわれ
国民は、この売国吉田内閣のために、そのような
軍隊に対して金を拂わされておる。こんなばかげたことが一体あるであろうか。他にどこの国にも類例のないことであり、歴史にも類例のないことであります。
次に、このような
軍隊が何のために今度
増強されるか、この点も、われわれとしては見のがすことのできないものであります。今度の
行政協定の二十四條にもありますように、
日本の安全に対して危急な非常事態が生じた場合には両者で話合いをするといわれておりますが、一体
日本の安全にと
つて危急の事態とは、いかなる事態であるか。現に極東空軍は、あの横田その他から、毎日々々朝鮮爆撃に出かけている。そうしてまた、朝鮮に細菌をばらまいている。あの極東空軍は、現に
日本防衛空軍と名前をかえられておる。すなわち、あの朝鮮の
戰争こそ、
日本防衛のための戦争であるといわれておるのです。このために両者で話し合う。その話合いによ
つては、この
警察予備隊を朝鮮に使うことができる。そうして、現に朝鮮で使
つておるという幾多の確証があげられておるのであります。それゆえに、この
軍隊は決して
日本の
国民の
軍隊ではない。アメリカの——であり、しかもアメリカがアジアを——するための——であるということが、はつきり言えるわけであります。
従つて、この
警察予備隊の問題、徴兵の問題については、
国民の
反対の声、これはおそらく
自由党の
諸君の心をも打
つておるに違いない。
諸君のむすこさんだ
つて兵隊にとられるのがいやに違いない。にもかかわらず、この徴兵
反対の運動に対しては、武装警官がただちに出動して、そしてこれを彈圧する。東京でも、名古屋でも、その他全国各地において徴兵
反対の運動が起
つておりますが、これに対しては、アメリカの命令によ
つて、
日本のまつたく
自主性のない
警察力が
発動されておる。
このような
軍隊を一体どういうふうにして
募集しようとするのか。現に、現在の
警察予備隊員の中でも、九月以後継続して勤めようとする者は少いということを、
政府みずから認めております。それから
募集の成績も、初めから見ると、だんだんと落ちて来ている、こういうことを認めております。そこで、どういう
原因でこの
募集の成績が上らなくな
つておるかということを
政府に聞きましたところ、それは失業者が少く
なつたせいであううか、あるいは農村の過剰人口が少く
なつたせいであろうかというような、ばかな答弁を
政府委員はして、みずからの意図を暴露している。つまり、
政府は
予備隊をふやすためには、どうしても失業者をたくさんつくらなければならない。パンパンをふやすためにも、それは失業者をふやさなければならない。どちらにせよ、失業者をたくさんふやさなければ、こういうパンパン的な
軍隊はできないわけである。そういう政策をまずと
つておる。それでも足りないで、今度の
法案では、はつきりと強制的な徴兵制の第一歩を踏み出そうとしておるわけであります。
この徴兵制度は、総理大臣が
知事や
市町村長を
指揮監督してやるようにな
つております。この
指揮監督の
内容について
質問いたしましたところ、
大橋国務大臣は、これをぼやかしている。いや、これはポスターを張らせるだけであると言
つておる。ところが、
事務当局は、地方
行政委員会において、はつきりと、もしも、あるところが多く、あるところが足りない場合には、足りないところを督励して、そしてこの人員を出させることを
指揮監督というのだということを申しております。そうしてみれば、これは決して自由
意思に基く志願などではとうていあり得ないのであります。ちようど、あの所得税、自分々々の所得に基いて申告すべき所得税が、実は上からの割当数字によ
つて、か
つてに更正決定される。ああいう所得税と同じような悲惨な状態——税金をとるのにトラツクが出動しなければならない。こんな徴税があるか。それと同じように、人間狩りをしなければ徴兵ができない。そのような事態が待
つておるのであります。そのようなフアツショ的なやり方をや
つて、アメリカ帝国主義にサービスする吉田内閣に対しては、われわれは断固として、これこそ
国民の敵であると宣言せざるを得ないわけであります。(
拍手)
なお、この
行政協定によりまして、アメリカ軍とこの
警察予備隊が
協力することにな
つておるが、その
協力した演習なるものは、これは千葉県の習志野においてはどんどん行われて、昨年、アメリカ軍当局と
政府、農民の三者立会いの上で開拓地の境界をきめて、この境界を越えて演習しては困るという境界線をちやんとつくつたのに、そしてすでに農民が土地の登記を済ましておるのに、その境界線を侵して、
警察予備縁は演習地を拡大しようとしておるのであります。これは一体何であるか。
治安を守るたあの
警察予備隊と言われるけれども、この
治安を守るはずのものが、実は
日本国民の財産、人命を侵しておるという事実がどんどん出ておるということであります。(
拍手)これこそ、まさにみずから
治安を乱すものである。
日本を内乱状態に導き入れるための
警察予備隊であると言
つても、あえてさしつかえないのであります。
しかも、このような反
国民的な、売国的な
予備隊であればこそ、その内部が腐敗堕落しておるということは、
政府みずから発行しておる会計検査院の二十五年度の決算
報告によ
つても、必要のない
施設をするために、たくさんの金を使つたり、いろいろなごまかしをやる。あるいは、昨年も新聞をにぎわしましたが、繊維業者との醜
関係など、あるいは、くつ屋さんとの醜
関係、こういうような腐敗堕落の状態が現われておるのであります。このような
軍隊でも
つて国防ができるということを言うならば、これはもう笑うにたえたことでございます。これは、ただ金もうけの
手段にすぎない。蒋介石の
軍隊と同じような、金もうけのための
軍隊であるということが、はつきり言えるわけでございます。
多くの論者、
自由党も、改進党も、口を開けば自衛ということを言うけれども、自衛ということは、かくのごとき
方法によ
つて行うものでは決してありません。自衛とは一体何であるか。われわれは、われわれのおじいさんたちがやつたことを振り返ればよろしい。あの幕末に、
日本が外国の植民地になろうとしたときに、一体
日本国民はどうしたか。あの腰抜けの幕府を倒して、ほんとうに
国民が
一つにな
つて事に当つたために、
日本の
独立を全うすることができた。今われわれ
国民がなさなければならないのは、事ごとにアメリカの━にな
つて、そうして
日本の
国民を食い盡そうとしておるこの売国吉田内閣を、
国民の総力をも
つて打倒して、ほんとうに
国民の生活を守る。そういう
政府をつくり上げること、これこそが
日本の
国民の自衛の第一歩である。そのことをわれわれは申しまして、
反対の
討論を終ります。(
拍手)