○成田知巳君 私は、
日本社会党第二十三控室及び労働者農民党を代表いたしまして、ただいま上程にな
つております二
法案に対して
反対の意思を表明するものであります。
本
法律案は、形式的には、昨年十一月一日より
施行されております
ポ政令に基く出入国管理令を一部
改正し、
法律として
存続させんとするものでありますが、本
法律案の
内容はい
わが国へ、または
わが国よりの外国人の出入を管理するものとの名のもとに、実は吉田内閣が、かの一地方政権の名にも値しないところの台湾の蒋介石亡命政権と、朝鮮の李承晩亡国政権と——いたしまして、
日本に居留する朝鮮人、中国人を、強制送還という武器をも
つて、これらの腐敗堕落の政権の支配下に無理やりに押し込めようとする陰謀
法案であるということを、まず指摘するものであります。
本
法案を
審議いたしておりまして、私が思い出しましたことは、かの大正十二年の関東大震災のときに、阿鼻叫喚の騒乱の中で、時の
政府並びに軍部は、朝鮮人が暴動を起したとか、放火したとの、でたらめなデマを飛出しまして、罪のない幾万の朝鮮人を銃劍の先で突き殺した、あの残虐事であります。本
法案は、銃劍でこそ朝鮮人を殺すものではありませんが、
日本内地に居住する約六十万の朝鮮人と、四万の中国人を、戰乱のさ中の朝鮮に、あるいは治安の極度に乱れました台湾に、
法律の力によ
つて強制送還し、事実上これらの人々を死地におもむかしめんとするものでありまして、関東大震災当時の残虐
行為以上の———を
法律の名において行わんとしておるのであります。まさに朝鮮人等の大量——
法案と称しても決して過言ではございません。
政府は、
委員会の
質疑応答で、こう言
つております。
日本に長年平穏無事に住んで来た善良な朝鮮人、中国人を強制送還するような意図は持
つていない。ただいま、自由党の佐々木君もそういうことを言われた。しかしながら、
政府の言う善良とはいかなるものをさしておるかが問題であります。現に吉田内閣は、憲法に保障された労働者の基本的権利である罷業権を行使して、みずからの生活を守らんとする労働者諸君を、不逞の徒呼ばわりをしておるのであります。このような
政府の感覚をも
つてすれば、吉田内閣の相棒であり兄弟分である、あの蒋介石、李承晩政権に
反対する中国人、朝鮮人は、すべて好ましからざる人物、善良ならざる人物として強制送還に付せられることは、火を見るよりも明らかであります。(
拍手)
現在
日本に居住する朝鮮人、中国人は、ごく少数の例外を除きまして、終戰前から引続き
日本に住んで、
日本人と同様の生活をして、
日本人と結婚し、その間に子までなしている方が多数おられるのであります。
かくのごとき人々が、本
法律によれば、反蒋介石、反李承晩であるという事実だ事けで、南朝鮮または台湾に無理やりに強制送還されるような仕組みにな
つておるのであります。現に管理令二十四條によれば、一行政官であるところの外務
大臣が、
日本の利益または公安を害する
行為を行つたと認定しただけで強制送還されることにな
つておりますが、この條文の
適用いかんでは、現在
日本は李承晩政権を統一政権と認め、あるいは蒋介石政権と講和條約を取結ぼうとして、これと親善の交わりをしようとしておる。この李承晩政権、蒋介石政権に
反対する者は、直接、間接に
日本の利益を害するものであるとの解釈のもとに強制送還される場合が想像いたされるのであります。これは、ほんの一例でありまして、二十四條は、
政府の一方的認定で、好ましからざる人物を強制送還できるような、巧みな仕組みにな
つておるのであります。
さらに問題は、長年
日本に住居する朝鮮人、中国人が、従来
通り日本に永住しようと希望する場合、管理令の定むるところによりましで、入国管理庁長官に国籍証明書を提出して永住の許可申請をしなければなりません。しかるに、現在
日本に来ておる中国、朝鮮の代表部というのは、実は中国、朝鮮のすべての民衆の意思により認められ、中国、朝鮮の全域にわた
つて統治権を行使しておるところの正統
政府ではなくして、一地方政権にすぎない蒋政権、李承晩政権の代表部であります。これらの代表部に対しまして、現在
日本に居留する朝鮮人、中国人が国籍証明書の下付申請を行うはずもなく、たとい下付申請をなしたとしても、これらの代表部が、自分たちに
反対する人々に国籍証明書を出すはずがありません。朝鮮における北鮮、南鮮両政権の存在、中国における中共政権と蒋介石政権の対立という現実を無視いたしまして、一方の政権代表部の発行する国籍証明書を要求するということは、人権宣言にうたわれたところの国籍選択の自由を奪うところの暴挙であると同時に、不可能をしいるものであります。(
拍手)もし
政府にしてほんとうに長年
日本に居住する中国人、朝鮮人を
日本に永住せしめるという誠意を有するならば、現下の朝鮮、中国の政情に照しまして、なぜ簡明直截に、国籍証明書の添付なくとも、長年
日本に居住していたというこの事実の証明をも
つて永住許可を與えることをしないのでありましようか。岡崎
国務大臣は、長らく
日本に居住する朝鮮人、中国人には、当分の間国籍証明なくとも居住を認めるという便宜の
措置を考えイおる、こう言
つておられますが、もし真にこれを行う意思があるならば、なぜこれを
法律に明文化しないのでありましようか。問題がこの点に触れて参りますと、岡崎氏は言を左右にして、この私たちの当然の要求を拒否するのであります。この当然の要求を拒否するというところに、一つの隠されたる意図、すなわち在日朝鮮人、中国人に国籍証明書を要求し、これを提出せざる者を、外国人
登録法違反にひつかけまして、南鮮、台湾に強制送還せんとする意図が隠されておるといわれても、弁解の余地がないと思います。(
拍手)
今、改進党の山本君は、
政府の便宜処置を信用すると言われましたが、改進党の諸君はまことに———である。現に、あの安保條約の
審議の際に、改進党の諸君はどう言つたか。安保條約
審議の際に、
行政協定は
政府の善処を期待すると言つた。そう言
つて安保條約に
賛成した。ところが、現在
行政協定が発表せられるや、大いに
反対されておる。まことに———であるといわざるを得ないのであります。(
拍手)
さらにまた、岡崎
国務大臣は、便宜の処置として、国籍証明書はまつたく形式的、機械的な手続で、駐日代表部に申請さえすれば
簡單にとれるようにしたいと答えておられます。もし岡崎氏が、そんなことで問題が
解決されると、まじめに考えておるといたしましたならば、岡崎氏は、季政権あるいは蒋政権の駐日代表部と在日朝鮮人、中国人との
関係がいかなるものであるかについてまつたく無知であることを、みずから表明しておるものであります。
在日朝鮮人、中国人の大多数は、現在の駐日代表部を、にせ政権の出店であるとしか考えておりません。また事実その
通りなんです。そのために、現在においては、祖国の
独立を思い、祖国の統一を欲し、真に祖国を愛する朝鮮人、中国人は、これらの代表部から保護を受けていない。のみならず、あらゆる形で迫害さえも受けておるといわれております。こんな代表部に対して、どんなに
簡單な、機械的な手続にしろ、国籍証明書を求めて、容易に入手できるはずはありません。現に
日本政府自身でさえも、モスクワの経済
会議に出席のための旅券の申請、これはまつたく機械的、形式的手続であります。これに対しても旅券発行を拒否しておるではありませんか。(
拍手)聰明な岡崎氏が、この間の実情を知らないはずはなく、知
つているが、ためにするところがあ
つて、あえて知らないふりをしている。
本
法案が成立
施行されたあかつきには、現在
政府がいかに否定しようといたしましても、低い将来、在日の善良なる朝鮮人の多数が戰乱の南朝鮮に強制送還され、李承晩政権に
反対したという
理由で獄に投ぜられ、あるいは彈丸として朝鮮戰線に狩り出されることは明らかであります。まさに
政府は、本
法案の形で、大量の朝鮮人に——の宣告を與えんとしているのであります。(
拍手)この人道を無視した
政府のやり方に対しまして、今や朝鮮人の人たは、憤激その極に達しております。もし、これがため各地に騒擾が起きるというような不幸な
事態があつたならば、その責任はかか
つて吉田内閣並びに自由党の諸君にあるといわなければなりません。(
拍手)
今回のサンフランシスコ
平和條約の締結、さらに近く締結を予想されております日韓あるいは日台両條約は、いよいよ
日本をアジアの孤兒になそうとしております。この悲しむべき
事態のもとにおいて、
日本人がアジアの人々と友好
関係をとりもどし、善隣外交を行
つて行く道として残されておる、ただ一つの方法は、現在
日本に在住する中国人、朝鮮人を初めとするアジアの諸国民とお互いに手をとり合い、助け合い、お互いに深い信頼
関係において結ばれて行
つて、このようにして、つちかわれましたところの信頼
関係を基礎にして、初めて
日本人は将来アジアの民衆と広く手を握ることができるのであります。(
拍手)しかるに、
政府の自主性を喪失した政治、アジアを忘れた外交政策は、この唯一の残された道さえも、本
法案においてとざそうとしておるのであります。戰時中、時の軍閥内閣は日独伊軍事同盟を締結し、無謀なる太平洋
戰争に国民をかり立て、
日本を今日の亡国の悲境に陷れた。吉田内閣は、サンフランシスコ
平和條約の必然の結果として、日独伊軍事同盟にかわるに、李承晩政権、蒋介石政権と條約を結びまして、再び
日本を
戰争に陷れんとしております。まさに歴史は繰返さんとしておるといわなければなりません。
以上述べました
通り、本
法案は、この日韓、日合両條約に連なり、この両條約を背景に持ち、朝鮮人、中国を初めとするアジア人と
日本人を敵対
関係に陷れ、
日本人を永久にアジアの孤兒たらしめんとする
法案でありますがゆえに、私たちは断固
反対するものであります。(
拍手)