○今野武雄君
日本共産党といたしましては、第一のポツダム政令の廃止に関する件については
賛成でございますが、第二、第三の、
統計法及び
教育委員会法の一部を改正する
法律案並びに
恩給法の
特例に関する件の
措置に関する
法律案に対しては、これは
自由党吉田
内閣が国民の敵であるということを示すはつきりとした証拠として
反対いたすものであります。(
拍手)
第一の、
統計法及び
教育委員会法の一部を改正するということは、
法案とすればごく簡単なことでありまして、何でもないことのようであります。形式的には何でもないことであります。形式的には何でもないことのようである。しかしながら、その
内容とするところは容易ならざるものを含んでおるのでございます。元来、この統計というものは、物事を客観的に明らかにするというのなら、これはだれにと
つても文句はないわけであります。国民の税金によ
つて政府が運営されている。その
政府が、その税金を使
つていろいろの統計をつく
つて、それを国民の使用に供するというなら、だれも文句を言うはずはないのでございます。しかるに、この吉田
内閣は、このような統計のとり方それ自身に対しても、売国政治の道具としてこれをや
つている。そのことは、証拠歴然として、学界においてもはつきりと証拠立てられておるのであります。一例をあげますならば、この労働者の賃金をきめる
基礎になるものは消費者
価格指数である。CPIと称せられるものでごます。ところが、このCPIなるものの仕組みは、国民の生活が苦しくなればCPIは下
つて、そうしてそれを
理由にして再び賃金を下げる。そうして、ますます国民生活を苦しくさせる。特に労働者の生活を苦しくさせる。こういうような意味を持つた数字でございます。
ここで、こう申しただけではわかりませんから、ごく適切な例を一つあげますと、たとえば一九四八年の十月には、このCPIがぐんと下
つておるのであります。そうして、いかにもそのころの消費者
価格というものが横ばい状態を呈しているようなありさまである。そういうことを名として、
政府は賃金の給与水準の
引上げを渋
つて参つたわけでございます。ところが、なぜCPIが下つたかということを調べてみますと、一九四八年十月という月は、主食の配給がほとんどいもであ
つたのです。だから、配給値段というものが安い。そうなると、消費者
価格指数が下るという仕組みにな
つているのです。そうすれば、そういうような生活
内容が低下する。それによ
つて指数が下る。それによ
つて今度は賃金を上げない。こういうようなことになるのでありますから、これはもう実に冷酷な、ごまかしの数字といわざるを得ないわけでございます。
そのほか、失業者の実態につきましても、
政府は統計の取り方を戦後三べんもかえておりまするが、その取り方につきましても、実にひどいごまかしである。たとえば、浮浪児でも、あるいは停車場や列車の中で、いまだにモク拾いとい
つてタバコの吸殻を拾
つて歩いている連中でも、全部失業者の中には入らないような、そういう統計をと
つて、そうして失業者の数をごまかしておる。あるいは農民について申し上げれば、例の作報でありますが、これは農民ははつきり敵であると言
つている。
アメリカの手先だと言
つている。
こういうような数字の詐欺をや
つて、そうして国民生活を圧迫する。労働者や農民を圧迫する。こういう売国政治の道具にするための統計、これは吉田
内閣の政策であるのみならず、先ごろ
日本にも来朝した、
アメリカ大統領
予算局の次長のライス博士は、大統領に対する
報告の中で、統計を通じて
日本を支配するという言葉を使
つておりますが、かようなごまかし、かような国民の首を絞めるようなことに、われわれ国民としては一銭も税金を使いたくない。だから、そういうような統計はやめて、ほんとうに客観的な、われわれ国民に参考になるような、そういう統計をつくることに切りかえたらば、われわれとしては文句はないわけであります。
特に、今度教育
委員会でこの統計を扱いまして、そうして産業教育
調査ということをやるのでありますが、この
内容を聞いてみますと、実習施設がないから、産業教育をやるのに工場で実習させるという。これは、戦時中の、あの学徒動員を思わせるものがあるばかりでなく、特にその実体を備えて来つつあるわけであります。今回の
行政協定にもはつきりしているような、この戦争に対する協力、それが学校にも現われて、そうして学徒動員をもう一ぺんやる。このようにして、
日本の国の教育をめちやめちやにしてしまう。そのための
調査ということをやるわけでありますら、これに対しては、もちろん
賛成できないわけでございます。
次に
恩給法の問題でありますが、この件は、やはり吉田
内閣の冷酷な、厚顔無恥な性格をはつきり表わしているわけであります。
政府の説明によりますると、今まで軍人軍属の恩給をストップしておつたが、これを復活すると、受給資格者が七百万人もできるというのです。この七百万人といえば、その中には、もちろん戦犯や、あるいは高級将校も入るかもしれないけれども、そんな者はわずかである。大部分の人は、一銭五厘でかり出されて、そうして天皇の名によ
つてアジアの大陸でも
つてさんざん苦労をなめたり、死ぬような思いをして来た人間である。その人たちに対して、今までは権利をストリップして来たのでございます。そうしておいて、それを復活すれば二千億円の金がかかるとい
つて、そんな金は出せないから、つまり国家財政上困るから一年間延ばそうというのです。
ほかの
措置は、予備隊のことだ
つて何だ
つて、みな講和発効に先立
つて、どんどん手ぎわのいい
措置を講じている。再軍備のことになると手ぎわがいいが、一旦国民の生活のことになると
——今までに
審議会なんかつくるならつく
つて置くべきである。それを、いまさらにな
つて審議会をつく
つて、一年間延ばそうというのですが、一千億の金がかかるというけれども、戦争に使う二千億の金があるなら、これはむしろ恩給受給者にくれてやつた方がどれくらいいいかわからない。そうすれば、みんなその人たちの生活がゆたかになるばかりでなく、生活物資を買うから、
日本の平和産業はそれだけやはりよくなるわけなのです。再軍備のために使う金がいるから、そこで金がやれないというのが本筋なんだ。ところが、そう言つたんじやどうもぐあいが悪いから、
審議会をつく
つて一年間待とう。そうしてその
審議会においては、何とかごまかして金をやらないで、この間のお燈明代じやないけれども、金をやらないで、そして何とか名目を立てて、警察予備隊の募集や何かにもさしつかえないようにしよう、こういうずるい根性でやるわけなんです。
そういことに対して、われわれとしては絶対に
反対であります。平和の名において
反対であります。そして、われわれとしては、この恩給受給者の中には気の毒な人がたくさんある、そういう人に対する暫定
措置を一刻も早くやらなければならない、一年間も延ばすことはない、このことを主張いたしまして、私の
反対討論を終ることといたします。(
拍手)