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1952-02-29 第13回国会 衆議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十九日(金曜日)  議事日程 第十六号     午後一時開議  第一 両院法規委員会委員辞任の件  第二 裁判官訴追委員辞任の件  第三 弾劾裁判所裁判員辞任の件     —————————————   一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  日程第一 両院法規委員会委員辞任の件  両院法規委員会委員補欠選挙  日程第二 裁判官訴追委員辞任の件  裁判官訴追委員補欠選挙  日程第三 弾劾裁判所裁判員辞任の件  弾劾裁判所裁判員補欠選挙  国務大臣演説に対する質疑     午後四時十一分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第一につきお諮りいたします。両院法規委員会委員角田幸吉君、尾関義一君及び眞鍋勝君から、いずれも委員辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 林讓治

    議長林讓治君) つきましては、委員欠員を生じましたので、この際両院法規委員会委員補欠選挙を行います。     —————————————
  6. 福永健司

    福永健司君 両院法規委員会委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられことを望みます。
  7. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて議長は、両院法規委員会委員鍛冶良作君、押谷富三君及び中村又一君を指名いたします。      ————◇—————
  9. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第二につきお諮りいたします。裁判官訴追委員角田幸吉君から委員辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  11. 林讓治

    議長林讓治君) つきましては、委員欠員を生じましたので、この際裁判官訴追委員補欠選挙を行います。     —————————————
  12. 福永健司

    福永健司君 裁判官訴追委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  13. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて議長は、裁判官訴追委員高木松吉君を指名いたします。      ————◇—————
  15. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第三につきお諮りいたします。弾劾裁判所裁判員尾関義一君から裁判員辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  17. 林讓治

    議長林讓治君) つきましては、裁判員にはすでに一名の欠員がありますので、合わせて二名の欠員につき、この際弾劾裁判所裁判員補欠選挙を行います。     —————————————
  18. 福永健司

    福永健司君 弾劾裁判所裁判員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  19. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて議長は、弾劾裁判所裁判員角田幸吉君及び田中伊三次君を指名いたします。      ————◇—————
  21. 林讓治

    議長林讓治君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。佐々木盛雄君。     〔佐々木盛雄君登壇〕
  22. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私は、自由党を代表いたしまして、昨日本議場において岡崎国務大臣より報告になりました、日本アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定及びその交換公文に関連して緊急質疑を行わんとするものであります。  まず第一には、今国会を通じて論議の焦点となりました行政協定国会承認との関係であります。およそ日本国外国との間の条約は、憲法第七十三条の規定によりまして、内閣の行う事務として認められておるのでありまするが、しかし、同時に憲法第七十三条第三号の規定によつて、その条約は「事前に、時宜によつては事後に、国会承認を経ることを必要」とされておるのであります。これは国会国権最高機関であるとなす日本国憲法の鉄則に立つて当然のことでございます。しながら、今回の行政協定なるものは、安全保障条約第三条に基いて、アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその付近における配備を規律するために決定されたとりきめでありまするから、この安全保障条約第三条によつて日米両国行政当局者において必要なるとりきめを決定すべき権限を、わが国会安全保障条約審議の際にすでに委任したものと考えるのであります。  今回の安全保障条約に基く行政協定のごときとわきめの先例といたしましては、最近におきまては、一九四六年ワシントンにおける国際捕鯨取締条約がございます。この捕鯨取締条約の眼目といたしまするところは、いかなる種類の鯨を、いかなる時期に、いかなる地域でとることを禁止するかという点にあるのであります。しかしながら、これらのかんじんな点につきましては別に別表がありまして、この別表従つて場特定種類の鯨を、特定の時期に、特定地域でとることを禁止いたしておるのであります。この別表は毎年変更されるのであります。しかし、その変更につきましては、別に国会承認を今日まで求めたことはないのでありまするし、またその必要もないのであります。さらにまた、一九四七年バリにおける万国郵便条約におきましても、連合国の郵政府は、条約及び約定の施行に必要なる細目を施行協定で定めることになつておるわけであります。  かように、本条約国会承認することによつて、その条約実施に必要なるとりきめの権限国会行政府に委任いたしておりまする実例は、決して珍しいことではないのであります。第十二国会平和条約及び日米安全保障条約特別委員会において慎重なる審議が行われました際にも、安全保障条約に関する最も重要な論議は、まさにこの一点に集中されたのであります。特に野党側諸君は、安全保障条約第三条によれば、政府はいかなる行政とりきめも自由に決定し得ることになるから、政府はこの行政協定なるものを国会に提示して承認を求めるの用意があるかとの質疑を、当時、反覆強調いたしたのであります。これに対して、吉田首相は、いわゆる行政協定なるもののとりきめは、安全保障条約第三条によつて行政府に委任されておるのであるから、あらためて国会に提示して承認を得る必要はない、ただ、もし国民権利義務に関連する問題が生じたときは、その立法のために国会承認を求めるであろうと答弁いたしておるわけであります。  ゆえに、行政協定国会承認を要するものでないことは、野党諸君もその当時より千万承知のところでありまするのに、今日再びこの問題を持ち出すがごときことは、まさに三百代言的無理難題以外の何ものでもないのであります。(拍手従つて行政協定そのもの国会承認前提としないことはきわめて明確なところでありますが、われわれは、国会国権最高機関である立場から、国民権利義務に関する問題については、その立法にあたつて徹底的に審議検討しなければならないと信ずるのであります。ゆえに、行政協定に基く財政的措置につきましては、昭和二十七年度予算案審議にあたつて国会始まつて以来の活発なる論議が長時間にわたつて行われたのでありまするが、行政協定第二十七条第二項は、吉田首相がかつて第十二回国会において言明した通り国民義務を課する必要のある場合は別に立法措置をとることを規定いたしておるのであります。日本は、アメリカのごとく大統領に対して広汎なる権限を与えておるのとは、おのずから国情を異にいたしております。また新憲法の建前からいたしましても、これが立法措置については、政府国会を尊重し、いささかにても独裁、越権、行き過ぎ等のなきように留意すべきことはもとよりでありますが、これらの点に対する政府所信を承りたいと考えるのであります。(拍手)  次に、本国会を通じて最も真剣な論議が展開され、国民ひとしく注目の目をみはつたものは、裁判管轄権、なかんずく刑事裁判管轄権の問題であります。日本米国軍隊に対して治外法権を認めたのではないかとの疑問が一部国民の間に低迷しておるのではなかろうかと考えます。刑事裁判管轄権に関しましては、国際慣例といたしまして、アメリカとフイリピンとの間の基地協定と、北大西洋同盟当事国間の軍隊の地位に関する協定の二つを指摘することができると思います。今回の行政協定におきましては、アメリカ軍施設または区域内外を問わず、日本人はすべて日本裁判権に服し、アメリカ軍関係者はすべてアメリカ軍裁判権に服するという原則に立つておるのであります。これを北大西洋協定に比べますと、北大西洋協定におきましては、派遣国軍当局は、自国の軍法に服するものに対して裁判権を有する、駐在国当局は、自国法で処罰される犯罪については、駐在軍軍人軍属に対し裁判権を有するとの原則に立つております。そうして派遣国軍当局は、派遣国法律では処罰されるが、駐在国法律では処罰されない犯罪について専属的の裁判権を行使する、また駐在国当局は、自国法律では処罪されるが、派遣国法律では処罰されない犯罪について、駐在軍軍人軍属に対し専属的の裁判権を行使する。もし双方裁判権が重複しております場合には、犯罪種類によつて第一次の裁判権を有する国を定めております。これは、一国の軍隊が他国に駐在する場合に起る裁判権関係について、相互平等主義を徹底した、最も飛躍的な方式であると考えます。(拍手)  平和条約発効によつて祖国独立の喜びと誇りに躍働いたしておりますわれわれ日本国民にとつて、そうしてまたアメリカとの親善友好関係を念願するわれわれ日本国民にとつて北大西津協定方式日米間にも適用されることを要請するのは、けだし八千万国民共通の切実な叫びであると考えるのであります。(拍手行政協定におきましては、北大西洋協定効力発生すれば、ただちに行政協定北大西洋協定方式に改めることを米国は承諾しておりますし、また行政協定発効後一年たつてもなお北大西洋協定発効しない場合には、米国はあらためて日本との間に刑事裁判管轄権に関するとりきめを再検討することを約束しておりますから、今回の行政協定はまつたく暫定的なもので、きわめて近い将来に変更されることをわれわれは期待いたしおのでありまするが、しからば何ゆえに北大西洋協定方式をとり得なかつたかという事情について、交渉の経緯を説明されたいと思うのであります。(拍手)また、北大西洋協定効力発出見通しについても政府見解を伺いたいと思うのであります。  しかし、他方、今回の行政協定アメリカフィリピンとの基地協定に比較いたしますならば、日本立場は、フィリピンのそれよりもはるかに優位にあると思うのであります。米比協定におきましては、アメリカ軍は九十九年間、広大な地域フィリピンより借り受け、その地域内ではアメリカ統治の全権を握り、従つてその区域内でのフィリピン統治権は停止されているのであります。今回の行政協定におきましては、日本人は、施設内外を問わず、その犯した罪に対してアメリカ裁判権に服することは絶対にないのであります。そうして日本側は、施設または区域外においても米国軍人軍属等犯罪者を逮捕することができますし、またアメリカ側は、施設または区域内において日本人犯罪人を逮捕した場合は日本側に引渡すことになつております。ゆえに、米化協定に見るごとき治外法権的性格行政協定には全然含まれていないと考えるのであります。  さらにまた行政協定においては、日米双方は、各自の裁判所における刑事訴訟のために、証人及び証拠の提供や捜査を行うことについて互いに協力し、援助することを約束いたしておりますし、またアメリカ軍人軍属家族等日本の法令に違反した犯罪につきましてはアリ勇側が処罰することを誓つております。さらにまた、日本側アメリカ側裁判権放棄要請した場合に、アメリカ側はこれに好意的に考慮を与えることを規定しております。従つてアメリカ側日本側要請によつて裁判権放棄した場合には日本国裁判権を行使することができるわけでありますが、実際問題といたしまして、アメリカ側裁判権放棄という問題につきまして、両国政府の間に何らかの了解があるかどうかという点について承つておきたいと思うのであります。  従いまして、要は、この行政協定前文に示されましたことく、「日本国及びアメリカ合衆国は、安全保障条約に基く各自の義務を具体化し、且つ、両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する」との根本精神に立脚いたしまして双方が対処いたしますならば、刑事裁判管轄権に関連する諸問題も何らの支障なく取運び得るものと確信いたすわけでありますが、これらに対する政府見解を承つておきたいのであります。  次は民事裁判管轄権及び損害補償の問題であります。占領中において、占領軍に基因する事故、不法行為による日本国民被害は相当の数に上つておりますが、これが補償の方法が十分でなかつたために不満の原因ともなつております。そこで、公務執行中の場合並びに公務執行中でない場合における米国軍人軍属等が、作為または不作為によつて日本国民に与えた損害に対する補償については十分なる措置を講ぜられなければならぬと考えるわけでありまするが、これらの点についての政府見解を求めておく次第であります。  次に、アメリカ軍の使用する施設及び区域について政府見解を求めんとするものであります。まず今回の行政協定におきましては、アメリカ軍提供する施設及び区域は、アメリカフィリピン協定のごとく固定的かつ半永久的なものではなくして、アメリカ側にとつて必要性が随時検討され、その必要性がなくなつたものは、日本側へ随時返還されることになつております。従つて、いわゆる基地というような性格を持たないで、日本側必要性との関連上きわめて弾力性を持つたとりきめとなつておる点は、特に注目すべき特徴であろうと考えるわけであかますが、政府といたしましては、この特徴を遺憾なく活用すべきであると考えるのであります。これらに対する政府所信のぼどを承つておきたと思うのであります。  次に、現在占領軍の使用しております施設並びに区域日本側への返還の問題であります。日米安全保障条約並びに行政協定に基くアメリカ軍日本駐在は、決して占領状態継続ではないのでありまするが、ややともすれば、一部日米両国人脳理には、依然として占領状態継続を思わせるかのごとき錯覚が支配し、これがはからざる事態を誘発せしめる危険なしとは言い得き現状であります。従つて米国側をして従来の行きがかりを完全に払拭させるためにも、また日本人をして民族独立誇りを抱かしめるためにも、平和条約効力発生と同時に、ここに明確なる一線が面されなければならないのであります。このためには、独立回復の当然の結果として、大都市よりのアメリカ軍の撤収や、現在接収中の民間施設並びに教育、衛生等施設返還等が大幅に実施されなければならないと信ずるものであります。これらの点に関する見通しや、政府方針を承りたいのであります。  次に、行政協定に基いてアメリカ軍の使用する射撃場及び演習場等についてであります。今日まで、占領軍射撃場及び演習場等については、陸上、海上ともに、農林、水産等の部門におきまして、かなり被害発生しておつたのでありますが、今後は、かかる被害を最小限に食いとめるように対策を講じなければならないのであります。また、旧軍用地などにおきまする引揚者等開墾地が、その権利を十分尊重されるように措置を講じなければならぬと思いまするが、行政協定実施に臨む政府方針を承りたいと考えるのであります。次に、今日占領軍関係に従事する日本人労働者の数は二十数万に上つております。これらの労働者が、今後アメリカ軍関係の仕事に雇われました場合に、行政協定は彼らの基本的人権を尊重することを規定いたしておりまするが、それではその雇用関係は一体どうなるのか。また従来進駐軍雇用日本人労働者は、国家公務員法特別職の適用を受けまして罷業権団体交渉権等が禁止されておつたわけでありまするが、今後は日本労働法規との関係はどういうふうになるのかという点につきまして、政府所信を承りたいのであります。さらに米軍使用施設及び区域に関する交渉は、交換公文によりまして、まず予備作業班より行われ、次いで合同委員会に引継がれることになつておりまするが、ただいまの予備作業はどの程度に進捗しつつあるかという点を明らかにされたいのであります。  次に、緊急事態発生の場合の措置についてであります。行政協定第二十四条におきましては、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」と規定されております。これによつて見ますると、緊急事態が現実に発生した場合に、初めて、日米両国政府安全保障条約第一条の目的を達成するために、ただちに協議しなければならないのでありまするが、しかし安全保障条約第一条は、アメリカ軍の出動の目的を次の三つの場合に明確に規定いたしておるわけであります。すなわち、その第一は、極東における国際平和と安全維持のため、その第二は、外国による教唆または干渉によつて引起された日本国における大規模内乱騒擾を鎮圧するため、その第三は、日本国政府要請に応じて、外部からの武力攻撃に対して日本防衛するためであります。  しかして、その第一に規定されました極東の平和と安全の点から考えまするならば、今日極東におき零しては、朝鮮戦局を初め、戦争、内乱に、アジアの諸国は平和と安全を撹乱されておる実情でございます。しかも、赤化の脅威は大陸に、朝鮮に、樺太、千島に肉薄いたしておりまして、地図を按ずれば、今日ほど日本の周辺が外敵の脅威の前にさらされたことは、歴史始まつて以来かつてないのであります。さらに第二の、外国教唆または干渉による騒擾につきましては、一昨年二月のいわゆる野坂自己批判以来、中和革命の仮面を一擲して武力革命の戦術を露呈しつつあるところの日本共産党の最近における幾多の暴力事件発生を指摘しなければならないのであります。(拍手)第三の外部からの武力攻撃危険性については、第一の場合に指摘した通りであります。  ゆえに、今日の局面はすでに緊急事態の前夜にあると言つても決して過言ではないのであります。従つて緊急事態発生してから急遽両国政府間において対策をあらためて決定するのでは、時宜を失する憂いなしとしないのであります。ゆえに、両国政府はすみやかに、あらかじめ起るべき事態を想定し、その根本対策を決定しておく必要があると考えるわけでありまするが、政府は具体的にいかなる計画を持つておられるか。また北大西洋同盟におきましては統合参謀本部なるものが設定されておるわけでありまするが、共同措置をとる際の指揮権はどうなるのか等の点に関係いたしまして、政府所信をこの際明らかにされたいのであります。なお行政協定成否いかんは、一に合同委員会運営いかんにかかつておると思われまするが、政府はその代表委員の資格、その補助機関等についていかなる構想を持つておるか。また日米両国外交当局合同委員会とはいかなる関係となるかという点を承つておきたいのであります。  次には、アメリカ軍駐在に要する経費分担の問題であります。日本政府は、アメリカ軍の使用する施設及び区域提供する以外に一億五千五百万ドルの経費負担することになつておりますが、一体アメリカ軍負担はどうなるのか。日本における経費日米折半原則と聞いておりますが、これ以外にいがなる経費があるのか。アメリカ側負担の全貌を明もかにされたいのであります。日本側の毎年負担する一億五千五百万ドルは、行政協定第二十五条において、「定期的再検討の結果締結される新たな取極の効力発生の日までの間」と規定されております。これは将来日本自衛力増強により、日本に駐屯するアメリカ軍が減少し、撤退する場合のことを示したものと考えるのでありますが、日本側負担は将来どうなるのか。政府は、警察予備隊増設等による自衛力増強具体策と関連いたしまして、これに対していかなる方針を持つておられるかを承りたいのであります。  次に、日本側の一億五千五百万ドルの負担について、国民の一部には反対の声もありますが、日本安全保障条約前文にもありまするごとく、日本平和条約発効によつて独立を回復しましても、身に寸鉄を帯びない非武装国家として、遺憾ながら自衛権行使の有効な手段を持たないのであります。しかも、無責任なる軍国主義はまだ世界がら駆逐されていない危険にさらされておるのであります。そのために、日本祖国防衛暫定措置としてアメリカ軍日本駐留を希望したわけでありまするから、本来ならば、この経費日本側の責任において負担すべき筋合いのものであります。日本側は一文の負担もしない、まるまるアメリカ側負担させようとするがごときは、良識ある国民のとうてい考え得ないところであります。また今日、日本国内の一部には、二十万の軍隊をつくれというごとき再軍備論者もあります。しかして、かりにただいま二十箇師団の軍隊を創設するといたしますならば、大した科学兵器を装備することなくして、なおかつ一兆数千億円を要すると、軍事専門家は発表いたしております。この厖大な経費に比較いたしますならば、一億五千百万ドルは、邦貨換算わずかにに五百八十億にすぎないのでありまして、一面、一兆四千億円の大規模な再軍備論を主張しながら、他面、わずか五百八十億の経費分担に反対するがごときことは、まことに論理の一貫せざる詭弁といわざるを得ないのであります。しかも、アメリカ側は、日本側と折半する経費のほかに、軍の装備、給料、旅費、食糧、被服等の、おそらくは日本側負担に幾十倍する莫大なる経費負担することを考えますならば、日本はきわめて有利な立場にあるといわなければなりません。  次には、外電報道するところによりますと、米国国会並びに政府部内におきましては、行政協定の調印を講和条約批准前提条件としておるとの報道もありますが、外電報道とはおのずから別の立場から考えてみましても、今回の行政協定の円満なる成立は講和条約批准促進に拍車をかけるものと考えられるのであります。講和条約発効の時期等にも関連いたしまして、政府見解を求めておきたいと思うのであります。  次に、行政協定に附随して、秘密協定了解事項が行なわれるのではないかという向きもあり、はなはだしきに至つては、原爆基地提供説のごときもあるわけでありますが、政府はこの際その真相を明らかにすることによつて国民の誤解を一掃すべきであると考えます。  最後に、この行政協定を通覧して発見いたしまする特徴は、第一には、この協定はいつでも改正することができること、第一には、施設及び区域必要性については、常時検討して、日本側にいつでも返還できること、第三には、刑事裁判管轄権についてはアメリカ側が事実上放棄することができること、第四には、経費分担についても定期的に検討して変更ができること、第五には、緊急事態に対しては会議によつて措置し得ること、第六には、北大西洋協定には見られない合同委員会の制度によつて両国が万事を友好的に協議解決し得ること等の点にあるのでありまして、力の関係が決定的な支配力を持つた国際政局におきまして、今日の段階におきましては、行政協定をあまり固定的なものとせず、きわめて伸縮性を持つ弾力的なものとなし得たことは、日本側にとつて有利なものであると考えるわけでありまするが、平和条約の調印によつて日本独立の目近しとはいいながら、いまだ占領下の困難なる環境下に置かれております日本といたしましては、今回の行政協定は想像以上の収穫であつたことを考えるのであります。(拍手)  あるいは平和条約に反対し、あるいは安全保障条約に反対した共産党や一部の政党が、その付随とりきめである行政協定に反対したのは別に驚くこともないでありまして、われわれは、かくのごとき言動に対しましては、いささかも問題とするのではありませんがしかし、全権代表まではるばるサンフランシスコに送り、平和条約に調印し、安全保障条約に賛成した政党が、いよいよその条約実施の運びに至つてこれに反対するがごとき態度は、まことにもつて不可解千万といわなければなりません。政府は、現下の重大なる国際情勢にかんがみまして、本行政協定の持つ意義、内容を十分周知徹底せしめ、それによつて日米間にいささかにても不幸なる事態発生せざるよう留意いたしまするとともに、これが文字通り相互の利益と尊敬のきずなとなるように努力すべきでありまするが、これに対して政府はいかなる具体策を用意されておるかということをお伺いいたしまして、私の質疑を打切る次第であります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  23. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 佐々木君にお答えをいたします。  第一は、行政協定国会承認を必要としない根拠はどういう点にあるかということのようでありまするが、これはお説の通り、定全保障条約第三条に、アメリカ車の配備を規律する条件は両政府間の行政協定で決定する、こうなつておりますので、われわれは両政府間でこれはこめられることと考えております。なお、外国軍隊がある国に駐屯する例は過去においてもありまするし、現在においてもあるのであります。従いまして、これが配備を規律する条件は、これまた国際法及び国際慣例で認められておるのであります。政府は、かかる国際法及び国際慣例で認められておる範囲内で、かかる協定を結ぶことに努めたのであります。また行政府権限に属しないことにつきましては、二十七条の二項に特に明文を設けまして、国会審議を求める、こういうことにいたしておりまするから、さよう御了解を願いたいと思うのであります。  また行政協定中にある裁判管轄権につきましては、米比基地協定及び北大西洋条約に基く協定に比較してどういう点が違うか、また何ゆえ北大西洋条約方式を採用しなかつたかという点のお尋ねでございまするが、御承知のように、米比協定に基く裁判管轄権は、比島内にある、かなり大きな米国基地につきましては、この中では米国裁判権が排他的に行われる、従つてフィリピン人も、第三国人も、米国人も、いずれもこの基地内では米国裁判権に従うということになつております。従つて、これでは日本の国内に日本人に対しての日本裁判権の及ばないところが生じますので、われわれは、このいわゆる属地方式をとりませんで、属人的な方式とつたわけであります。この属人的な方式は、アメリカとイギリスの間に現に行われておる方式であります。北大西洋条約に基く協定は、これからさらに飛躍いたしておりまして、この施設区域の中では属人的に、アメリカ軍人軍属等アメリカ裁判権、その他の人々はイギリスの裁判権、こうなつておりまするし、その区域、設備外では原則としてその国の裁判権による、こうなつておりますが、不幸にして、いまだ北大西洋条約に基く協定効力発生しておりません。われわれも、交渉に当りましては、その北大西洋条約協定方式を採用いたしたいと考えまして、さよう先方にも話をいたしたのでありますが、これはいまだ効力発生していない、新しい例であるのでありまするし、現にアメリカとイギリス間におきまそも、この方式がいまだ採用に至つておらないのであります。従いまして、この方式ができ上るまでは、わわれわれは英米間に行われている協定に基いたものでありまして、この間何ら日本側に他国に比して不利な点はないと考えております。  北大西洋条約協定の批准はどうなつておるかということでありますが、ただいま申しました通り北大西洋協定はまつたく新しい慣例をつくらんとするものでありまして、米国内においては、いろいろこれに反対の意見があるようでありますので、まだいつできるか、見当はちよつとつきかねると考えております。  刑事裁判権について、日本側要請によつて米国側裁判権放棄する場合があるか、またこれは円満に行くかというお尋ねでありまするが、元来この協定は、両国間の好意と信頼に立つた協定でありますので、特に発表したもの以外は別に了解事項等はありませんけれども、私はこの点については必ず円満に行くものと信じておるのであります。  民事裁判管轄権及び損害補償についての措置は十分とられておるかというお尋ねでありまするが、これもただいま、国際法なり国際慣例なりで、外国に駐屯する他国の軍隊公務執行中の場合及び公務でない場合における、その国の国民に与える損害についてはいかにして補償するかということは、大体の原則はきまつております。今回の協定もこれにのつとつたものでありまして、公務執行中におきましての、かかる事件につきましては、政府がこれを審査いたしまして補償をすることにいたしております。また公務でない場合には、政府がこれを審査して、米国側にその損害額を通報することになつております。その場合、米国側ではこの通告を審査いたしまして、これを支払うかどうかをきめるわけでありまするが、もし被害者がそれをもつて満足な補償と考える場合は、これを支払うことになつております。しかし、係争が起るよう場合には、公務執行中といえども、あるいは公務執行でない場合はもちろんでありまするが、被害者が裁判所に訴えて、その解決を求めるような方法は、何ら毀損されておりません。  それから、施設及び区域必要性について随時検討することになつておるが、この点はどういうふうにやるかというお尋ねであります。これは協定で、合同委員会が将来においてはこれを決定することになつております。しかしながら、特に協定の第二条の第三項におきまして、米国側が不必要の施設及び区域返還することについて義務をつけております。でき得る限り検査をいたしまして、不必要となつたものはどしどし返還するよういたすつもりであります。  占領軍施設区域返還は、講和条約発効とともに、どういうふうにできるかというお話でありまするが、これは交換公文の中におきまして、特に明らかにした点でありまして、占領が終了すると同時に、徴発等に基く施設区域の使用はまた自然消滅する、そしてそのあとは新しい会議によつた施設及び区域のみが使用される、こういうことを特に明らかにいたしておるのであります。そこで、大都市等からはでき得る限り米軍の撤退を実現せよというお話でありますが、これは実情に応じて、日本の経済、産業にでき得るだけ支障を及ぼさないように、この施設区域を使用するというのが原則でありまするから、この趣旨に基きまして、今後適当に措置いたしたいと考えております。  また射撃場、演習場について、農林、水産の面に被害が多い、こういう点及び引揚者の開拓地の権利等を尊重すべしという御意見でありまするが、これはまことにごもつともな御意見であります。これは、予備作業班におきましても、あるいは今後できます合同委員会におきましても、農林関係者等もこの中に加えまして、これらの人々の権利、利益を十分考慮いたしたいと考えております。  なお、占領軍に雇用せられまする労務者についてのお尋ねであります。これは基本的人権を尊重されるということは当然でありますが、この雇用関係につきましては、本来は占領のときとかわりまして、日本に駐屯する軍隊でありまするから、この軍隊が必要とする労務者は、軍隊が直接に雇用するのが筋道であると考えております。しかしながら、組合等におきまして、言葉の関係、習慣の関係等もありまするから、直接雇用よりは、りくつに合わなくても、間接雇用の方が都合がいいという希望が強くありますならば、われわれは、しいて筋道を通すよりは、むしろその働いておる人々の都合を考える方がよろしいと思いまして、面接雇用もできるし、間接雇用もできる、両方に通じるように協定を設けておりまして、日本側の希望及び要求に基きまして、先方は適当に考慮することになつております。従いまして、間接雇用を希望する向きが非常に多数でありますれば間接雇用も採用しようと考えております。  なおこの労務者等に関する日本法律はどうなるのかと申しますと、これはもちろん、一般的にも協定の中に日本法律を尊重する義務をうたつておりまするが、労働者関係の項目におきましては、特にまた日本法律を尊重せらるべきことがはつきりと明文に書いてあります。従つて、今後とも日本法律は守られるということに御了承を願いたいのであります。なお、緊急事態発生についていろいろお話がありました。われわれも、日本の周辺に危険な状態がないとは決して考えておりません。しかしながら、こういうものは相対的なものでありまして、ただいまのところ、日本の周辺にも危険な状態はあるのでありまするけれども、同時に日本国内における米軍の駐屯によりまして、この危機はほとんどないように感じられている次第であります。いずれにしましても、こういうものは相対的なものであります。そこで、事前に何かこういう事態に対処する方針、方策をつくつておくべきではないか、こういうお話でありまするが、これはいろいろ先ほどお話のありました通り、北大西洋条約等の例も考えまして、われわれが、こちらでもアメリカ日本が一致しまして、しつかりした結合を示すことになりまして、外国からの無責任なる侵略等をあらかじめ阻止することが有益であろうと考えておりましたが、日本には現在軍隊もありませんし、なかなかさような協定をつくることは、やつてみますと困難であります。従いまして、こういう場合に処することは、現実に危険が起つた場合はもちろんのことでありますが、この危険が生ずるおそれがある場合にも、すみやかに両国政府の問で協議して適当な対策を講ずる、こういうことにいたしたいと思つて、今回の協定を作成した次第であります。  なお危険の問題につきましては、私もほかでも申しましたが、元来この協定及び安全保障条約は、かかる危険がないようにしたいというのが根本の方針であります。従いまして、米軍の駐屯によりまして、これが一種のいわゆるデターレント・パワーと申しますか、外国の侵略を阻止する力になることを期待しておりまして、従つて、平和な状態を日本の周辺に設定することを原則といたしております。従いまして、それ以外の危急な場合というのは、ほんの特別の場合とわれわれは考えているのであります。  また合同委員会についていろいろお話がありましたが、合同委員会の構成等につきましては、ただいま至急研究中であります。不日、この委員等も、また合同委員会の前にできます予備作業班の人員等も決定いたしたいと思います。合同委員会委員は、もちろん協定効力発生するとき、すなわち日本の独立が達成するときに任命さ知るものであります。そこで、合同委員会委員としてはどういう人が適当であるかという点につきましては、われわれの方でもいろいろ考えてはおりまするが、この協定の話合い中に、先方はどういう考えであろうかということも聞いてみましたが、先方としては、ただいまのところは比較的技術的な事項を取扱うものと思うので、それに適する人を充てたい、従つて、非常に地位の高い人でない場合が多いであろうというような意見のまうであります。  なお米軍の経費につきましては、わが方が合計しまして六百五十億の経費負担することは御承知の通りでありまするが、それ以外は、協定に基きまして、すべて米軍の負担となるわけであります。米国軍がいかなる種類軍隊を持つて来るか、そのやり方によりましては、予定よりもはるかに上まわる経費を必要とする場合もあると考えまするが、この六百五十億以上の額につきましては、これは米軍が全部負担することになつております。また将来日本自衛力が漸増した場合には米軍は漸減するであろうから、その負担は減るのではないかというお話でありまするが、われわれもさよう考えておりまして、この点は一応議事録に書いておいてあります。  また、行政協定の成立は平和条約批准促進に好影響があつたのではないかというお話でありまするが、これは直接には関係がないのであります。しかしながら、行政協定を通じまして、日本アメリカとの間の友好関係と申しますか、相互了解と申しますか、こういう点は非常に深まつたと考えております。従つて、間接的にはよい影響があつたと信じております。  さらに原爆基地とか、その他の秘密協定了解事項等が存在するかどうかというお話でありまするが、これはたびたび申しますように、今回の協定では、行政協定と、それに伴う交換公文が一通及び正式の議事録があるだけでありまして、その他には何ら秘密協定もなければ了解事項もないのであります。  さらに、行政協定の意義等を十分に周知徹底せしむる必要があると思うが、その具体案があるかというお話でありまするが、これは私もまことにお説の通りと考えておりますので、今後あらゆる手段を通じて国民の理解を深めたいと考えているのであります。(拍手
  24. 林讓治

    議長林讓治君) 松本瀧藏君。     〔松本瀧藏君登壇〕
  25. 松本瀧藏

    ○松本瀧藏君 私は、改進党を代表いたしまして、昨日政府の公表いたしました行政協定の内容について、六項目にわたつて質問をいたします。政府より、国民が納得する誠意ある御答弁を要求するものであります。(拍手)  最近わが国にとつて最も大きな問題は行政協定でありました。日本国民は、その内容につき心から心配し、真剣にその成り行きを見守つて来ました。それは申すまでもなく、この協定が実質的には日米安全保障条約の運営を決定し、ひいては対日講和条約そのものの性格決定にまで及ぶからであります。その結果は、独立後のわが国の政治にも、また国民生活にも大きな影響をもたらすことはいうまでもなく、わが国の国際的地位、さらに大切なことは、日米両国における今後の関係にも影響をもたらすことは、贅言を要しないことであります。(拍手)  私どもは、日本の運命が、日米両国間の平和と、対等、平等の観念と、友好親善関係にその基盤を求めなければならないことに対しては、何ら異議をはさむものではありません。ゆえに、日本国民の間に誤解を生じ、もつて日米関係に支障を来すことがあつてはと憂慮して、国会において、われわれは、その経過と、その交渉内容について、しつこく政府の説明を求めたゆえんであります。しかるに、政府の態度は、一部の技術的問題は別といたしまして、国民の最も知らんとしてるところの重要な問題に関しては言を左右にし、あるいは閣僚間、政府委員の間における答弁の矛盾等を暴露し、(拍手)さらに逃げ口上として、おきまり文句の、今は申し上げられる段階でないを連発したのであります。これは皆様、輿論がひとしく認ているところであります。(拍手)輿論諸君といえども、その内容を知らざりしことは、今週のラジオ討論会におきまして、増田幹事長の裁判権の及ぼす家族への見解に対するところの大きな誤りによつても、これがわかるのであります。(拍手)  そこで、まず最初にお尋ねいたしたいことは、政府の、かかる不誠意によつて、日来両国間の友好親善関係を不必要に害し、もつて一部における反米思想をも惹起せしめる因をつくつたではないかということであります。(拍手政府は、行政協力を単なる細目とりきめという事務的な手続であるかのごとく考え、国民感情を無視し、国会を軽視した態度は、不必要な誤解を生み、臆測を招き、決して日米友好関係にプラスになつたとは考えられないのであります。(拍手政府はこの問題をどう考えておるか、その見解をまずただしたいのであります。  第二にお尋ねしたいことは、この行政協定が、全体を通じて植民地化の懸念を国民に抱かせるのではないかという点であります。安全保障条約には基地という言葉が使われておりますが、行政協定には、基地という文字はなるほど一度も用いられていないことは事実であります。ダレス特使は、日米の将来を考慮し、基地あるいは治外法権的とりきめをしないことを約束したのであります。従つて行政協定交渉では、特使の約束した方針に忠実ならんとした努力は認められる気がいたします。基地という文句を避けたのも、その努力の結果であつたかもしれません。また、米軍の施設及び地域内で日本人犯罪を犯した場合でも、その裁判権日本側にあると規定したのも、その現われであるかもしれません。しかし、協定全体を読むと、頭を隠してしりを隠さざるかの感を抱かせるのであります。基地を設けなかつたことは、フィリピンの場合よりも日本が有利であつたと政府はいつております。しかし、米軍の使用する地域以外での犯罪は、日本立場の方がフィリピン以下であることをわれわれは忘れるわけに行かないのであります。(拍手)たとえば銀行ギャングなどは、フィリピンの場合であれば、フィリピン裁判所で裁判ができるが、日本ではその権利が与えられてないのであります。そればかりでなく、あの協定を呼んでみますると、アメリカ施設内におけるところの日本人犯罪は、その逮捕権も捜査権もないということは、フィリピンにおけるところの基地と何らかわりがないということを教えるのであります。政府はこの点をどう考えておるか、お聞きしておきたいのであります。  第三に質問したいことは、治外法権の問題であります。先週の外務委員会において、属人主義に治外法権があるかという質問に、政府委員は、土地に限るという意味の答弁をいたしました。一昨日の外務委員会において、私はこの質問を岡崎国務大臣にいたしましたときに、岡崎大臣は、治外法権というのはいろいろな場合があるので、一口に言えないと答弁されたのでありますが、決して土地のみに限定するというこの見解に拘泥しなかつたのであります。  諸君、私どもは、属人主義には属地主義以上の治外法権的のものがあることを発見するのであります。内外の国際法学者の見解によると、外国人が現に住んでいる国の法律下に立たないもの、特にその国の裁判管轄権に服さないものを、広義におきまして治外法権といつております。その例には、大使、公使並びに領事のごとき、いわゆるイミューニティ並びにスペシャル・プリヴィリッジを与えられおるものをさしておるのであります。学者の中には、これを狭義に解釈いたしまして、領事裁判権を認める場合のみを治外法権だという見解を述べておりますが、いずれにせよ、その中身は同一であり、属人主義にも治外法権が認められておるということには、まつたくかわりがないのであります。  行政協定の中で、この問題をはらむ裁判管轄権を拾つてみると、公用中、私用中を間わず、米国軍人並びに軍属は申すまでもなく、家族に至るまで、地域内外の別なく、全部裁判権米国側にあることを原則としておるのであります。しかるに、世界の先例を見るに、地域内は別のいたしまして、外にあつては、軍人軍属といえども駐留する国の裁判権に服することが大原則になつておるのであります。(拍手地域外における例外も、もちろんあります。それは、第一は公用中の軍人軍属、第二の場合は軍人軍属同士の事件、第三は派遣国の国家の安全、すなわち反逆罪であるとか、サボタージュであるとか、スパイ行為、職務上の秘密といつた、こういう問題、国家の安全に触れた問題、重大な罪に対してはこれは特例とされております。  従つて政府外国の先例にならつてと申しておりますが、しかし、外国の先例とても、最もきついといわれておるフィリピンの場合においても、外にあつての例外は、さきに述べました三つの場合に限られております。また英国とのとりきめの場合においては、派遣国家の安全の問題に触れたときのみ駐留軍側にその裁判権が認められておるのでありす。さらに北大西洋条約の間のとりきめは、公用中の軍人軍属と、軍人軍属同志事件に限られ、派遣国家の安全の問題は駐留国家の裁判権が及ぶことになつております。しかるに、皆さん、日本の場合は、さきの三つの場合のほかに全部が含まれておるのであります。しかし、重大事件については好意的に日本側裁判権に委譲する規定があると政府は申しております。それは、思うに駐留軍側が日本国家の安全の問題に触れた事件のことをいつておるのだろうと思うのでありますが、しかし、駐留国の安全の問題で駐留国の裁判権を認めない例は、近代国家間の協定では絶無であるということを、われわれはいわなければならないのであります。(拍手)なかんずく、地域外にあつて私用中の軍人軍属はもちろんのこと、その家族に至るまでその国の裁判権が及ばない協定は、それこそ外国に先例を見ないところであります。(「その通り拍手とこれでは、日本国の大切なる三権の一つであるところの司法権に制限を加えたことになり、国民感情は容易にこれを納得するものではないのであります。(拍手)この属人主義は、駐留軍の軍人軍属並びに家族の行くところ、日本国中至るところに治外法権的なものがつきまわるということを、われわれは忘れるわけに行かないのであります。(拍手)これは地域治外法権より広汎なるものであるといわざるを得ないのであります。  岡崎国務大臣は、昨日の説明の中で、この協定の中には治外法権的のものはないと断言された。この点について、国民の納得する説明を要求するものであります。(拍手)われわれ日本人は、かつての不平等条約に苦じんだ経験を有しており、日本人がこの問題についてはきわめて神経質であることを、政府交渉の過程において十分心得ていたかどうか疑問に思うのであります。この国民の良識と感情を米国側に誠意をもつて説明し、もつて先方にこれを理解せしむる努力を十分払わなかつたことは、政府の重大なる責任であるといわなければならないのであります(拍手)この協定の内容では、占領継続を印象づける以外に何ものもないのであります。私は政府にはつきり質問する。逮捕権を除いて、一体占領下といかなる点が異なるか、それを説明してもらいたいのであります。(拍手)  さらにお聞きするが、政府は独立日本にとつて、このとりきめはわが主権の抑制であると考えないか、あるいは行政府の司法権の侵害であると考えぬか、またもしこの協定が最初の原則であつた対等、平等の資格においてのとりきめであつたとしたならば、何ゆえに将来北大西洋条約に基く協定と同一内容に切りかえる必要があるかという点について、十分なる説明を求めるのであります。(拍手)  政府は、答弁に窮するたびごとに、われわれが頼んで、いてもらうのだから、と言つております、これほど日米両国民を欺瞞する言はないのであります。具体的な、現実的な、実証的なアメリカ人は、決してすき好んで日本に駐留するのではありません。ワシントンの高官の言をかりるまでもなく、日本との協定は、集団安全保障の精神にのつとり、ギヴ・アンド・テークの原則に立つべきものであり、対等、平等の資格と、相互信頼の精神によつてとりきめられたはずであるのであります。  次に、重大な質問でありまするが、緊急事態の際の米軍出動の規定についてであります。第二十四条にしたためてある非常事態発生のとき、その共同措置についてただちに協議しなければならないのこの条項は、あまりにも漠然とした協定であります。両国の協議によらなければならないということは、あたりまえのことであります。協議しないでできるはずはありません。これは考えようによりますとナンセンスであります。もし政府にセンスがあるというのであつたならば、巷間伝うるごとく、そこには重大な了解事項があるに違いない。この条項を見てもわかるごとく、行政協定は与えられた範囲を越えたものであり、国民もまた心から心配しておる点であります。われわれは、その協議の時期、機関、非常事態指揮権などの大切な問題が公表されていないことを遺憾に思うのであります。政府は、この問題に対し、非常事態はそう簡単には起らないと、委員会で何回も答えておるのであります。そのときになつてきめればよいのだと、安易な考えを披瀝して来ておるのであります。しかし、国民は、決してそのような安易な考えを持つていません。かかる重要な問題に関しては、うわさのごとく了解事項があると考えられるが、その事実をはつきり国民の前に明示されたい。依然としてあいまいな態度をとるならば、ここにおいても秘密外交のそしりを免れるわけには行かないのであります。(拍手)もし了解事項なしとするならば、別個にこの重要問題をとりきめることは当然のことであると思うのでありまするが、この重要問題に対して、政府はどう考えているか、もつと詳しい説明を要求するものであります。  次に承りたいことは、行政協定国会関係ついてであります。さきに、種々述べたところによつても明らかで、あるごとく、裁判権の問題といい、緊急措置の問題といい、われわれの期待したそれとはかなりの開きがあるばかりでなく、本協定の中には、安保条約第三条の軍隊の配備を規律する条件の範囲を逸脱せる条項が数々あり、しかも国家の主権、国民権利義務並びに基本的人権にも触れている点から見て、憲法第七十三条第三号の規定従つて、当然国会承認を求むべきであつたと思うが、何ゆえに政府はそれを避けたか、納得できる説明を要求するものであります。(拍手)  政府は、アメリカですら承認を必要としない事実をあげています。しかし、アメリカ憲法は、日本憲法とは異なり、エクゼキューティヴ・アグリーメントの制度が設けられており、場合によつては、大統領に与えられた権限によつて国会承認なくして国際間のとりきめができるようになつているのであります。また今回の協定内容は、米軍が日本国内に駐留する場合のみの協定であり、軍事同盟とは異なるのであります。日本軍が米国に駐留する場合はないのであります。従つて協定によつて日本のごとく国内法の修正あるいは米国の主権に触れる問題は起らず、憲法も違い、日本とまつたく事情の異なることを忘れるわけには行きません。(拍手)にもかかわらず、アメリカ国会は、事前に了解することを平和条約並びに安保条約批准の条件としているではありませんせか。一般の通念からいうならば、国会承認を不要とする政府間の協定は、電信、電話、郵便等の技術的問題の範囲であります。しかるに、大蔵省の関税問題、その他国内法に多くの修正をもたらさなければならないとりきめが多分に含まれている。このことは政府も認めておるところであります。繰返して申しますれば、なかんずく国家の主権、国民権利義務にまで触れているこの行政協定を、国会承認なしで、ただ数名の政府委員によつてのみとりきめるこの悪例は、護憲の精神からいつても許すことのできない事柄であります。(拍手)  城府は、あるいは協定という言葉で、行政協定を軽く見るかもしれません。しかし、世には、条約よりももつと重い国際協定もあれば、日本でかつて使つた条約以上の議定書なるものもあることを知るべきであります。北大西洋調印国の場合を見てもわかるごとく、北大西洋条約は、わずか十四条から成つている、五ページ足らずの簡単なとりきめであるにもかかわらず、軍隊の地位に関する別個の協議は、二十三ページから成る二十箇条という内容を持ち、日本の場合の簡単な安全保障条約に対し、二十九箇条の内容を持つ行政協定に類似するものであります。この北大西洋条約国の軍隊の地位に関する協定は、第十八条の規定に依り批准を必要とし、その効力発動も、四箇国が米国に批准書を寄託した三十日後になつているほどであります、日本の場合、その問題とする内容が、北大西洋協定の場合よりもきついものであるにもかかわらず、それを国会承認なくしてその効力発生せしむることは、日本国民とともに、われわれは理解に苦しむのであります。(拍手)もし、かかる悪例を残さんか、国内法に優先する国際協定政府がかつてに締結することによつて翼賛議会以上の制度を残すことになるが、政府はこの責任がとれるかどうか、これをお尋ねしておきたい。  最後に一言つけ加えておきたい。われわれ日本国民は、米国側の善意を疑わんとするものではありません。永久に日米友好親善関係を持続し、自由諸国とともに平和を守らんとするものであり、私はその意味におきまして、政府の態度があまりにも不誠意きわまつていたことを遺憾とするものであります。行政協定は、決して目的そのものではなかつたはずであります。すべてはこの協定とりきめによつて終るのではなくして、これが出発点であり、独立後、日米両国関係を層一層密接ならしむるところの手段であつたはずであります。(拍手)しかるに、今回政府とつた態度は、行政協定をつくることがその最終目的であるかの感を抱かせたのである。かくのごとき態度をとつたことは、まことに残念しごくであります。政府はこの協定を通じて日米相互の信頼を深め、もつて安全保障条約の運営を円滑ならしめるという終局の大目的を無視したその責任をもあわせてお尋ねして私の質問を打切ることにいたします。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  26. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。  交渉の経過内容につきましては、十分にでき得る限りのことをいたしております。すなわち、正式会談を開くこと十一回、その都度、話合いのきまりました項目と、その大体の内容は公表もいたしておりまするし、国会の本会議委員会においても、これをひろうしております。  植民地化ということをしきりに申されまして、日本協定が、比島のアメリカとの協定より不利益であるというお話でありまするが、私はさように考えていないことは、昨日報告の通りであります。要するに、ただいまでは、フィリピンのやつているような属地的の方式と、アメリカとイギリスのやつているような属人的の方式と二つしかないのでありまして、その属地的の方式と属人的の方式双方の、駐屯後に都合のいいものを集めたのが、大体言えば北大西洋条約協定であります。そこで、われわれは、終局の目的は、この北大西洋条約に基く協定ができた場合にはこれに加わるけれども、それまでの間は、属人か属地かどちらかの方式をとらざるを得ない。そこで属人的の方式とつたのであります。  治外法権ということについていろいろお話がありましたが、治外法権と一般にいわれておつても、この定義はいろいろありまして、一口に治外法権といつてこれを論ずるのは誤解を招くおそれがありまするから、私は実質的に協定の内容を見て御判断を願いたいと思うのであります。  そこで、元来治外法権と通常申しますものは、たとえば日本駐在する軍隊とか何とかいうものでなくして、一般の外国の居留民に対してこの国の法律裁判権を適用しない場合がまず原則的になつております。しかしながら、今回の協定は、アメリカの居留民に対しては何ら関係がないのでありまして、一般の居留民は当然日本法律に従い、日本裁判権に服するのであります。従つて軍隊に対するものにつきましては、先ほどから申すように、国際法にも規定があり、また国際慣習として成立しておる特権があるのでありまして、その範囲において、日本でも、駐屯の軍隊に対して日本における特権を認めておるのであります。  また裁判管轄権につきましては、先ほど申した通りであります。  日本法律は軍の所属員に対して尊重させるとか、あるいは軍の所属員は日本法律を尊重する義務があるとか、あるいは労働法等も適用されるとか、または施設区域も、徴発の方式を消滅して、今後は合意による協定に基く施設区域の使用、こういうふうに、占領中と占領後の独立した状況におきましては非常にたくさんの差があるのでありまして、決して占領の経続というものではないのであります。  緊急事態につきましては、昨日も申しました通りで、私も、これは当然の規定であつて、あえて特に必要というものではないと申しておるのでありすすが、ただ、これ以上に何も協定がないのだということを明らかにする消極的の意味において、ここに協定を明文化したのでございます。従つて、これ以上、了解事項とか秘密協定とかいうもののないことは、先ほど佐々木君にお答えした通りであります。  また、この協定を何ゆえ国会審議にかけないかというお話につきましては、これまた佐々木君から詳細に御質問がありまして、お答えをしておりまするから、それで御承知のことと思いまするが、念のためこれを繰返せば、一つは、安保条約の第三条に基いて、政府間に行政協定を結ぶということをいわれておりまするから、これによつて政府行政協定を結べる、こう考えております。また米国のお話もありましたが、米国大統領は、一般的にもこういう条約の委任がなくても行政協定は締結できる権限を持つておるかもしれませんが、わが国の場合は、こういう条約がありますので、その条約に基いて協定をつくつておるのであります。またその協定の内容は、駐留するアメリカ軍隊の配備を規律するものに限られております。ことに法律を要するもの等については、国会審議を求めることを明らかにいたしております。  また、こういう協定をつくることは悪い前例を残すではないかというお話でありますが、決して悪い前例は残さないと思います。それは、先ほど御説明した通り、われわれは一般的にこういう協定を結べると言つておるのではなくて、条約ができまして、その条約の条項に基いてこういう協定を結んでおるのでありますから、それ以上のことはしないのであります。従つて、これが前例となるといえば、何かはかにまた条約ができて、その条約で認められたときでなければ行政協定はつくらないのでありまするから、何ら前例になることはないと考えております。  日米関係をよくするということについての御意見にはまつたく御同感であります。どうぞ本協定を十分に御了解なすつて、この協定国民によく徹底させるように御協力を願いたいと考えておるのであります。(拍手
  27. 林讓治

    議長林讓治君) 鈴木義男君。     〔鈴木義男君登壇〕
  28. 鈴木義男

    ○鈴木義男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、八千万国民がひとしく聞かんと欲するところをたださんとするものであります。佐々木君は政府にかわつて御答弁になつたようでありまするが、(拍手)これは正反対の方面から承りたい。松本君の質問と重複するところがあります若干掘り下げて御質問いたしたいと存ずるのであります。  吉田首相は、口を開けば民主政治を云々するのでありますが、近時そのなすところを見まするに、ことごとく独断専行、かつての藩閥超然内閣の総理のなしたやり方とごうも違うところはないのであります。(拍手国民のひとしく痛憤するところであります。国民は、ぞつとする独占外交と呼んでおるのであります。われわれは、東条大将のそれのごとく、国家の将来を誤らずんば幸いであると感じている次第であります。(拍手)  およそ民主的政治家というものは、大切な国策を決定するには常に民論に聞き、国民とともに決するのでなければなりません。しかるに、国民を愚にし、国民の代表たる国会をつんぼさじきに置いて、国策の中でも最も大切なる国策たる、ある国と軍事同盟にも近き安全保障条約を結ぶとか、相わかれて対立しておる二つの政権の一つを選択して、これと交わりを締するとかいうような問題を、一言半句事前に相談することもなく、かつてに独断専決しておいて、黙つておれについて来いという態度は何事でありますか。(拍手)自由党の諸君にだけでも相談しておるのかというと、そうでもない。     〔議長退席、副議長着席〕 これもまた、つんぼさじきであります。思うに、三年前に獲得し絶対多数の上にあぐらをかいて、唯々諾々たる与党のある限り、どんな独断もまかり通ると、たかをくくつておるのではないかと疑うものであります。(拍手)しかし、三年前の多数は決して今日の多数ではありません。のみならず、私は最近、北海道から九州まで旅行する機会を得たのでありますが、国民は非常な不安にかられおることを見て来たのであります。安全保障条約とは、一種の軍事同盟にも似たものであります。総理とダレス氏との間にどういう話合いがあつたかは存じませんが、総理は、サンフランシスコにおいて、平和条約締結後数時間にして、ただ一人で調印して、同行の全権団すら相談にあずからなかつたといわれておる。いわんや、国民は、調印後、電波に乗つて初めてその内容を承知したのであります。そういうことでよろしいものでございましようか。  また中共か台湾政府かということは、少くともわが国の今後二、三十年の運命を決する重大事であります。軽軽に台湾政府を選ぶということは、閣僚にすら相談することなく、アメリカの首脳部に密約されておつたということが、昨年末発覚いたしたのであります。これはまつたく吉田個人の選択であつたのであります。イギリスの外務大臣イーデン氏は、国会において演説して、どちらを選ぶのがいいかは、日本としてはきわめて慎重にきわめなければならない問題であり、日本はあとで後悔するような約束はしない方が賢明だと述べたほどであります。かりに台湾政府を選ぶの余儀なしとするも、ああいうやり方で、はたしてよいものでありましようか。首相は、国民外交とは民主的外交というものを御承知なのでありましようか、またそういうものをどうお考えでありますか、この際これを承つておきたいのであります。  国民の多数は、この調子だと、どこに連れて行かれるのか、ちよつと見当がつかないので、非常な危惧の念を抱いておるのであります。できてしまつたものだからしかたがないという目で見ておる者もあるのでありますが、きわめて重大なる安全保障条約が、また法三章式のすこぶる簡単なものであります。これは原則をきめた作文のようなものでありまして、具体的に軍隊がどう動くのかということは、これでは少しもわからないのであります。すべては行政協定に讓つてある。ゆえに、行政協定なり、その他の協定というものは、本条約以上に大切なものであります。われわれは、一日も早くその内容を知りたいと思い、またわれわれの希望を織り込ませたいと思つて、非常に努力いたしたのであります。しかし遺憾ながら、政府は最後まで秘密主義で押し通したのであります。断片的に、ちらほらと示唆したことはありまするが、全貌を明らかにしたのは、昨日調印を済ませてから、ただ報告するという形でわれわれに示したのが初めてであります。国民の代表たる国会を愚にするもきわまれりと申さなけれればなりません。(拍手)そこで、第一に総理なり岡崎国務大臣に伺いたいのは、この行政協定安全保障条約の一部であるか、または付随するものであるかは別論といたしましても、この点についてすでに閣僚の問に答弁に食い違いがあつたことは御承知の通りでありまするが、この内容は、明らかに、国際的には日本と他の国との間の権利義務関係規定しておりまするし、国内的には国民権利義務に重大なる影響のあるとりきめであります。こういうとりきめは、われわれの常識では条約と呼ぶのであります。名前は何とつけても、実質は条約である。(拍手条約たる以上、憲法第七十三条の規定に基いて、事前または事後において国会承認を経ることを要するものと信ずるのでありますが、政府はその必要がないと御主張になるのでありますか。はたしてしからば、行政協定条約でないという根拠を、もつとはりきりとお示し願いたいのであります。  そもそも行政協定なるものは、アメリカの特殊の政治制度の上に出現した存在でありまして、他の国には、こういう観念はないのであります。他の国においては、みな条約として取扱われておるのであります。かの北大西洋条約に付随する行政協定は、その末条において、各国はそれぞれ憲法の定めるところによつて批准を経ることを要し、批准して初めて効力発生する旨がうたわれておるのであります。  アメリカは、条約の批准は、松本君も言われましたように、上院の三分の二以上の賛成という困難な条件があるのでありますから、ここに委任立法に類する協定の制度が採用されたのは、一応理由あることでありますが、わが国は両院とも過半数の賛成を得れば足りるのでありまして、批准をめんどうに思うべき何らの理由もないことであります。かく明々白々たる条約を、協定の名に隠れて国会承認を回避せんとするごときは、わが憲法運用の上に最大悪例を残すものと信ずるのであります。(拍手政府の責任、けだし軽からざるものありと断ずる次第であります。アメリカでは、行政協定は必ずしも上院の承認を得なくてもいいのだそうでありますが、それは形式だけのことであつて、実際は協定を示さなければ本条約の批准も容易しないということは、今回の交渉の経緯に徴して明らかであります。  二月一日の予算委員会において、わが党の西村委員の質問に対して、吉田首相は今回の行政協定は単なる予備交渉である、本交渉平和条約効力発生後に行われるであろうと答えたのであります。しかるに、二月十三日の予算委員会において、岡崎国務大臣は、今やつておる行政協定は、おそらく仮調印ということになるだろう、効力発生はずつと後のことであるというように答弁を変更したのであります。これは、そのころ外電によつて、合衆国の上院は、ちやんとでき上つた行政協定を提出するのでなければ本条約の批准をもしない意向であるということが伝えられたのと合致するのであります。同じころ、フラッドレー統合参謀本部議長も、行政協定の確定案を近く上院に提出する旨を証言したと、外電は伝えているのであります。かくて、二月下旬に入りますや、政府の答弁は三軽して、本交渉であるといい、本調印をするということになつたのであります。してみれば、アメリカ上院は、実際上これを審議の対象としておることは明らかである。ひとりわが国会だけがつんぼさじきということは、ただに遺憾なばかりでなく、憲法の運用上看過しがたい悪先例となることを憂えるものであります。(拍手)  のみならず、アメリカの法制の上でどうありましようとも、日本日本である。後にお尋ねするように、本協定には、日本国家並びに国民として実に重大な事項が数多く規定されておる。ゆえに、われわれは、かねてから、協定安全保障条約の一部であつて平和条約効力発生後に安保条約とともに締結せらるべきものと主張して来たのであります。従つて、この協定が起草せられますときには、その原案を国会に示して、国会の議決を経ることが正当であると信じておつたのである。しかるに、被占領下にありながらこの協定を結ぶということは、講和条約の和解と平等と寛大の精神に反するものと考えるのであります。いわんや、講和条約発効していけないけれども、調印後は日本を独立国とみなし、対等の立場において交渉するという約束であつたにもかかわらず、でき上つた協定を一読いたしますれば、そこに独立と対等のかけらすらも見出すことができないことは、実に痛恨のきわみであります。(拍手政府は、これあるがゆえに国会の議に付することを恐れたのではないかを疑うものであります。依然としてこれ占領の延長ではないか。(拍手)この点に対する政府所信を承りたいのであります。  第二にお伺いいたしたいことは、今回の行政協定は安保条約第三条に基く協定と銘打つてありますが、しからば安保条約の第三条には、アメリカ合衆国軍隊の配備を規律する条件を協定するとあるのでありまするから、軍の配備に関することにとどまるべきではないかと思うのでありますが、(拍手)この中には予算に関係あることが規定され、国民権利義務に関することが規定されておるのは協定の範囲を逸脱してはいないかということであります。(拍手)ことは相互裁判権の範囲などをきめることは、本来行政協定の予定するところではないはずでありまして、まつたく別個の条約をもつて定むべきものでないかと存ずるのでありますが、あらゆる重要なことが、国会承認を要せざる一片の協定なるもののうちに定められておるのを見るのであります。今後また協定の追加というような名のもに、どしどしこの種の重要なとりきめが行われるとしまするならば、まさに戦慄に値することであります。政府は、いかなる信念があつて、安保条約第三条の名のもとに、かかる広汎なとりきめを行つたのであるか。またそれは許されることと考えられるのでありまするか、承りたいのであります。  次に内容に入つてお尋ねいたしたいのでありまするが、それは無数にあります。時間の関係上、根本的な二、三の点にとどめまするが、まず行政協定第十八条第一項には、各当事者は——これはアメリカ日本という意味でありまするが、各当事者は、その軍隊の構成員の公務執行中にこうむつた負傷または死亡について互いに損害賠償請求権を放棄する趣旨が規定されておりまするが、アメリカ軍隊を持つておることはわかりまするが、日本軍隊を持つたことは、いまだ聞かないところであります。(拍手)これは単に翻訳の間違いなどと申せないことであります。世上すでに再軍備の安保条約というくらいでありまして、政府はしきりに再軍備を否認しつつも、すでに軍隊あるものとしての協定を結ぶに至つたゆえんではないかと存ずるのであります。(拍手)いわゆる頭隠してしり隠さずではないかということをお伺いいたします。(拍手)  次に治外法権についてお尋ねをいたしまするが、政府法律技術上の専門語を使うことによつてカモフラージュしようとするようであるが、これはごまかしというものである。一国内その法権の及ばない地域があれば、それが治外法権たることはもちろんでありまするが、(拍手)属人主義の名のもとに、かく広汎にわが裁判管轄権の及ばないものが、わが独立後の国内にたくさん存在するというのは、とりもなおさず、りつぱな常識的意味の治外法権であります。(拍手)そして、その数の多いこと、大規模に国内を闊歩する事実は、とうてい、かの安政条約の比ではないのであります。(拍手)それが単に軍人軍属にとどまらず、一切の私人にまで及ぶのであります。その数も何十万になるか、はかりがたい。われわれは、江東の富士銀行に三名の外国人強盗が現あれたことに対し、また神田に、よいのうちに三箇所を襲つた外国人強盗が現われたことに対し、占領治下とはいいながら、日本警察はこれを捕えることができない、捕えても、これをさばくことができないということについては、痛憤禁ぜるものがあるのであります。(拍手「その通りその通り」)われわれは、講和条約発効はすなわち完全なる独立の回復と信じ、圧迫を感じ、目ざわりになるもののなくなる日を、一日千秋の思いで待つたのであります。しかるに、再びかくのごとき無限の圧力を感ずるに至るのである。政府の責任や実に軽からざるものがあると信ずる、日本を軽蔑し、日本裁判権を信ぜるがゆえに、かくのごときことが起るのであります。(拍手)  協定は、近い将来、北大西洋条約協定効力発生のあかつきには、これと同一条件に改訂する用意があるとうたつたようでありますが、それなら、なぜ今ただちにその条件で協定を結ばなかつたのであるか。(拍手)たといわずかの間といえども、これら諸国と異つて、わが国を裁判管轄の点において属国、保護国にも類する不平等、劣等の地位に置いたということは、この政府の大責任であります。屈辱外交これよりはなはだしいものはないと存ずるのであります。(拍手)何ゆえに占領の終了を待つことができなかつたであるか。何ゆえにもう少し独立国らしいとりきめをすることができなかつたのであるか。責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)  次には、駐留軍の需品、工事、資材、労務の徴発、租税の免除等について、国内法における幾多の例外が規定されておるのでありますが、これはわが国の法秩序を乱し、経済界に悪影響を及ぼし、一部の業者を利するおそれあるものと信ずるのであります。どうして全面的に日本国法とその慣行に従つてやることができなかつたのであるか。  たとえば、協定第十二条第一項には「合衆国は、この協定目的のため又はこの協定で認められるところにより日本国で供給されるべき需品又は行われるべき工事のため、供給者又は工事を行う者の選択に関する制限を受けないで契約する権利を有する。」とありまするが、工事請負や物品納入については、わが国では詳細かつ厳格な選択規定があつて、公正を期しているのであります。しかるに、そういう制限を無視して、しかも直接やつてよろしいという規定である。なるほど、その第二項には、その調達が日本国の経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるものは、日本国当局の援助を得て調達することができるとありますが、不利なる影響を及ぼすかいなかの認定もすでに争いがあり、協議や援助では、とうてい所期の目的を達することはできないと存ずるのであります。こういう約束は、はなはだまずいと思う。  また、同条の第五項は労務の提供をきめたものでありますが、従来進駐軍に使われておつた労務者が、労働三法の圏外にあり、きわめて菲薄なる条件のもとに、奴隷労働に近い待遇にあつたことは周知の事実であります。(拍手)そこで、われわれはたびたび警告を発して他の労務者と同じ条件において働くことができるように協定せよと、政府並びにラスク氏に要望したのであります。幸いにこの点は取入れられたようでありまするが、しかし、例外を開くことができるように特則が設けてある。また第六項において規定しておりまするように、日本国の法令に服さない軍人軍属が主として日本労働者を使用するのであつて、これらは占領者意識が強く、日本法を知らないがゆえに、この基準を破ることも平気であるという欠点を持つのであります。何ゆえ、この点について、もつと明確に、日本政府が責任を持つてやるように規定しなかつたのであるか承りたい。  また、租税免除の特権が多過ぎるのであります。これは一方においてインフレの原因となり、他方に、いかに厳重に取締つても横に流れたり、有税物資と無税物資の混乱を避けることはできないのであつて、すこぶる遺憾であります。アメリカが援助的行為に出るのはけつこうでありまするが、援助は援助、経済秩序の維持はあくまでしなければならないと思いますが、何ゆえに、かかる特権を大幅に設定したのであるか承りたい。  また分担金の問題でありまするが、いかにアメリカの好意によるとはいいながら、朝鮮の休戦会談も進捗しつつあり、東洋の情勢は、今ただちに、しかく大規模軍隊の駐留を必要とするものとは思われないのでありますし、わが国としては、あくまで受身に立つておるのでありまするから、国内再建の方が先決問題である。防衛費の分担は、貧弱なるわが財政にとつて非常なる圧迫である。これをもつともつと少くして、国民の生活水準を高めるために使用べきであることを、われわれはつとに主張し来つたのでありまするが、政府は少しもこの点努力した形跡のないのは遺憾千万であります。第二十五条に一応のとりきめがなされておりますが、これには、購入する物資等について租税を課したり免除したりすることが暗黙に協定されておるやに承るのでありまするが、何ゆえに、はつきりこれを明文の上に表わさなかつたのであるか。二十五条の規定は、いかにむ恩恵的な口調で示されておりまするが、これが再建途上のわが国財政に一大がんとなることは、何人にも明らかなことであります。私どもは、政府の努力の足りないことについて、強くこれを糾弾するものであります。(拍手)明確な答弁を求めるものであります。  さらにいろいろ質問いたしたいのでありまするが、時間の関係上、すべては委員会の質問に護ります。  最後に、最も重大な問題について質問いたします。今回の行政協定に書いてあるようなことは、安全保障の問題としては比較的枝葉末節である。最も国民の関心を持つておることは、日本が東洋作戦の基地になるのであるかいなか、ことに原爆基地に予定されるのであるかいなか、内乱が起つた場合に、駐留軍は何人の指揮のもとに出動するのであるか、警察予備隊がこれを援助することが予定されるのであるが、これも駐留軍司令官のもとに活動するのであるか、この警察力の使用を誤つた場合に、何人が国会に対して責任を負うのであるか、外国軍統帥権の一部分に入るものとして、かつての参謀総長の帷幄上奏権のごとく、国会に対しての無責任的存在となるもりであるか、また安全保障条約には東洋の治安維持とうたわれておるのでありまするが、東洋の治安が乱れたと何人が認定し、何人が駐留軍の海外出動を決定するのであるか、その場合、わが警察予備隊——海上保安隊を含めて、この予備隊もこれに付従して出動を強制されるのではないか、これを決安するのは何人であるか、目下警察予備隊は、アメリカ軍人の将校、下士等によつて訓練されておるようでありまするが、独立後もアメリカ軍人による指導訓練が続いて行くにであるか、というような問題なのであります。(拍手)これらは、独立国においては主権の制限に関する重大問題であつて、保障条約そのもののうちに明記せらるべき条項でありまして、ー片の行政協定で取扱わるべき筋合いでないことはもちろんでありますが、これらの点に対して、政府はどういう方針を持ち、またどういう交渉をしたのであるか、この際国民の前に明らかにされる義務があると信ずるのであります。(拍手)  政府の説明によると、これら最も大切な問題は、具体的問題が起つたときに、駐留軍の司令官と日本政府の責任者または警察隊長との間に協議決定するというようなお話でありまするが、それでは、どろぼうを捕えてからなわをなうようなものであつて、とうてい間に合わないことはもちろん、あらかじめ基準や準則がありませんならば、これを決するものは、そのときの実力者ということになるのは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)さなきだに保護国待遇のわが国の現状であります。国民は実に深い危惧の念をもつてこれを見守つておるのであります。政府にいかなる対策があるのでありまするか承りたい。  一方、中ソ同盟条約のあることを忘れてはならないのであります。国内の治安を守り、不法なる侵略を防止するだけならば、中ソ同盟条約の発動も不可能でありまするから、多く憂うみに足りませんが、日本を作戦の基地として利用するがごとき形勢が露呈いたしまするならば、わが国が戦乱の渦中に省き込まれることは明らかであります。(拍手)その点に対する何ら明確な保障は見えておらないのであります。これに対して、政府はいかなる確信を持つて、いかなる対策実施せんとしておるのであるか、承りたいのであります。  最後に、この協定では、防衛実施するために日米合同委員会を設けることになつておるようであります。何人がその指導権を握るのであるか。複数の委員会というものは、常に意見の対立を予想しなければなりません。運営の規則は別に定めるというのでありますが、なぜ今これをきめておくことができないのでありましようか。日本が独立したものと仮定して、日本の安全を守るためにこの制度はできたはずであります。ゆえに、われわれとしては、最終決定権はいつでも日本政府の最高責任者になければならないはずだと信ずるのであります。そうでないならば、一種の保護国条約であります。政府はいかなる見解を持つておられるのであるか承りたい。  政府が政権に坐した後の態度を見るに、政権に恋々たるのあまり、寸を譲り、尺を譲り、今また丈を譲らんとしておるのであります。終戦後の政府はいずれも卑屈でなかつたとはいわれませんが、吉田内閣に至つてきわまれりといわなければなりません。(拍手)しかして、今回の行政協定において、その卑屈はクライマックスに達したのであります。(拍手)よろしく、かくのごとき内閣は、すみやかにその地位を去つて国民に陳謝すべきであることを提言して、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  29. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 御答弁をいたします。  第一に、この協定国会承認を求めないのはどういうわけかという、先ほどから佐々木君からも松本君からも繰返して問われたことと同様なことを御質問なさいましたから、趣旨は先ほどお答えした通りであります。米国方式日本方式は違う、こう言われますが、その通りであります。先ほども申した通りアメリカの大統領は、何事によらず、その権能の範囲内の行政協定は結べるのであります。われわれの方は、安保条約第三条によつて、この協定がつくられておるのであります。  それから総理が言われましたのは、言葉はどうか、私もはつきり今覚えておりませんが、要するに、この協定は、講和条約発効し、従つて安全保障条約効力発生したときに、その実施協定として、そのときに効力発生するのであるから、今では効力はないものであるという意味と考えております。  それから、はなはだこの協定は対等の立場に立つておらぬというお話でありまするが、私はまつたくそれとは別の意見を持つております。占領の延長ではないということは、先ほど申した通り、たとえばアメリカ軍人軍属等日本法律を尊重するのである。まだ施設区域等は、独立の日において、占領による徴発の方式はなくなつて、新たに合意によつて使用せられるのであるという点、あるいは今御指摘になりました労働関係についても日本法律が尊重されるのであるという点等をお考えになりましても、ただいまの状況とはまつたく違うということは御了解になると思います。(拍手)  それから十八条の一項につきまして、「その軍隊の構成員」ということがあるが、日本には軍人がないではないか、こういうお話でありますが、もう少し下までごらんになると、「その軍隊の構成員又はその文民たる政府職員」と書いてあります。われわれの方はこの「文民たる政府職員」ということになるのは当然であります。何となれば、この協定アメリカ軍隊及び軍隊の所属員に関する規定でありまするから、アメリカの文民たる政府職員は、この協定には何ら入らないのであつて、これはこちらの政府職員の方を意味しておるのであります。  それから治外権についていろいろお話がありましたが、これは先ほどお答えした通りでありまして、定義の問題は、いろいろの人がいろいろのことを言いますから、一々治外法権という名前で、内容を見ずに論ずるのは誤りであろうと思います。但し、安政条約のことをお引きになりましたから一言申し上げますが、安政条約と申しますのは、御承知の通り日本におる外国人、一般居留民に対して日本裁判権を及ぼさないという条約であります。今度の場合は、軍の所属員とされる者に対してのみの裁判権の問題でありまするから、安政条約とは全然性質を異にいたします。  また、北大西洋条約規定を今後適用するというなら、なぜ今やらなやかというお話につきましては、先ほどから二へんお答えいたしております。  それから税の免除その他につきましての御意見でありまするが、これはどこの例を見ましても、ある国に他国の軍隊が駐留しまするときは、これに関する税その他の関係の特権は認められておるのであります。わわれの場合におきましては、原則としては日本の産業経済に最も支障の少い方法をとるということにいたして、それに基いて各種の規定をいたしております。  労務者の問題につきましては、先ほども申した通り、直接雇用が原則であると私は考えております。しかしながら、組合等の希望があれば必ずしも筋道を通す必要はないのであろうと思つて、便宜的な措置も講じようとしておるのであります。  分担金などは、これをむしろ国内の産業その他の方面に入れた方がいいじやないかというお話でありまするが、あなたは安全保障条約に対しては反対をされましたから、そういうお考えになるかもしれましれませんが、われわれはやはり国際的に無責任なる軍国主義が跡を絶たねい現状においては相当の準備をしなければならないと考えて安全保障条約を結んだのであります。  合同委員会につきましては、先ほどからこれも二へんともお答えいたしましたが、要するにこの協定実施に関して日米間に協議決定する機関でありまして、この協定友好と信頼の観念に立つのでありますから、この合同委員会の話合いが必ずや円滑に行くものと考えております。  なおこの協定を結ぶにあたつで、政府ははなはだ卑屈な態度でやつておる、こういうお話でありまするが、これは全然お考え違いであろうと思います。現内閣は、決してさような態度をとつておりません。鈴木君が法務総裁であつた時分のことをお考えになれば、現内閣は雲泥の相違の態度をとつておると確信しております。(拍手
  30. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 林百郎君。     〔林百郎君登壇〕
  31. 林百郎

    ○林百郎君 私は、日本共産党を代表いたしまして、労働者や農民、また民族の独立と平和を心から望んでおる国民大衆にかわつて、このたび発表されました行政協定に対し、政府の責任をただそうとするものであります。  私がまず質問したい点は、政府は何ゆえ、占領下のもとで、しかも朝鮮動乱が今もつて解決を見ない今日、この協定を結んだのかという点であります。政府は、口を開けばアメリカと対等の立場におい交渉をされたと言つておるのでありますが、日本の政治経済の一切をあげて強力なアメリカ占領軍によつて掌握されておる現在、一体どこに対等の立場があると言えましようか。まずこの点について政府見解をただしたいのであります。世間では、吉田内閣をリツジウェイ。吉田政権と言つておるのであります。またリツジウェイと吉田内閣の関係を、馭者と馬車の関係だと言つておるのであります。このことは今日の吉田政府の置かれておる立場を最も端的に比喩しておると思うのであります。一体、占領下という、あたかもピストルを胸もとに突きつけられたにもひとしい状態のもとで、どこに対等の立場があるというのか、まずこれを説明されたいのであります。  さらに重大なことは、この占領軍は、現在の朝鮮においては作戦軍として軍事行動をしておるのであります。すなわち、極東における今日の情勢を見ますと、今やアメリカ軍朝鮮において重大な敗北を喫し、中華人民共和国による台湾の解放は近い日程に上り、仏印においてはハノイが危殆に瀕しておるというときに、アメリカによつては、この自己の頽勢を挽回して、新しい侵略の準備のために、一日も早く日本をその掌中に握りたいと焦慮しておることは明らかなのであります。(拍手)現にブラッドレーは、行政協定が対日講和批准より遅れるならば朝鮮の作戦に重大な支障を来すであろうと、アメリカ上院において証言しておるではありませんか。すなわち、今日の行政協定は、アメリカ帝国主義のアジア侵略計画の一環として、吉田政府日本アメリカに売り渡した身売り証文であると断ぜざるを得ないと思うのであります。(拍手)この点に対する政府見解を求めます。このことについては、すでにわが党がしばしば警告して来たところあります。以下、私は、この行政協定がいかに屈辱的なものであり、かつ米日の反動勢力による侵略的な意図によつてつくられておるものであるかという点を質問したいと思うのであります。  第一に、各党の代表の諸君から質問された裁判管轄権の問題についてでありますけれども、本協定によりますと、日本は、米国軍人軍属及びその家族に至るまで、基地内外を問わず、一切の裁判権放棄しておるのであります。元来、外国軍隊の駐屯に伴つて一国の裁判権が制限されておる場合の最も不利なとりきめですら、第一にはその裁判権の制限は基地内に限られること、第二は基地外においては公務執行中であること、第三は国家の安全に関する重大な犯罪である場合、この三つの場合に限られておるのであります。現にアメリカ・フイリィピンの協定ですら、基地外においては加害者と被害者ともに米軍人である場合、並びに公務執行中である場合、重大なアメリカの国家の安全に関する犯罪である場合以外は、原則としてフィリピン裁判権を持つておるのであります。従つて、本協定のごとく、基地外において、軍人軍属はもちろん、その家族に対してまで無条件に裁判権放棄しておるような例は、洋の東西を問わず、古今にその例を見ざる屈辱的なものであります。(拍手)  このことによつて明らかなことく、日本立場は——フィリピン以下の取扱いであり、まつたく被占領国の待遇以外の何ものでもないのであります。一体どこに政府の言う対等の立場があるというのでありましようか。心ある議員諸君は、明治のわれわれの先輩が、安政下田条約の締結以来、領事裁判の不平等条約に憤激して、その撤廃のために血を流して闘つて来た歴史を今日なお忘れ得ぬでありましよう。しかるに、このたびの行政協定は、安政条約にもまさる屈辱的なものであるということは、安政条約の領事裁判は、開港地の周辺一定の狭い地域と、そこに在住する少数の外人に限られていたのであります。しかるに、本協定によれば、数十万にも及ぶと思われるアリリカの軍人軍属、家族が、日本の国内の至るところを思うままに横行濶歩しているときに、これが犯罪に対してまつたく裁判管轄権を持たぬということは、明らかに日本の国土全体が、これに関する限りは、外人のための居留地であるのと何らかわりないのであります。(拍手)かかるとりきめをするからこそ、日本の官憲は、現に頻発する米兵のギャング、強盗、殺人犯人が日本人に向つてピストルを発射しておるのを目の前に見ながら、これに手を出すことすらできない現状なのであります。(拍手)元来、一国の国民が、自己の身体財産に不正な危害を加えられるときは、これに対して実力を行使しても、アメリカ人であろうと、だれであろうと、これを逮捕し、裁判にかけることは、民族固有の権利であります。しかるに政府は、この重大なる民族固有の権利すら放棄しておるのであります。政府は、国会国民を無視して、かかるとりきめをする権限を、一体いつ、だれかち与えられたのか、その根拠を明確にすることを要求したいのであります。第二に、私は、この協定によつて国民の生活が今後どのようになるかという点を質問してみたいと思うのであります。協定の第十二条によれば、アメリカ軍に使用されておる労働者の賃金、諸手当等の労働条件は日本国法令の定むるところによるとあるのであります。しかるに、今日、日本労働者、特に軍関係労働者は、労働法による保護をまつたく受けておらないのが現実でありまして、たとえばPD工場たる東日本重工下丸子工場では、労働者十数名が、軍の命令であると称して突如馘首され、日本人ガードにピストルを突きつけられて、工場から追い出されておるのであります。これに憤激した蒲田地区の労働者が抗議をしたのに対し、これまたピストルで撃たれて負傷者を出しておる状態であります。一体、このような労働者の奴隷状態が協定によつて依然米軍が駐屯し、しかもその米軍が作戦行動に従事ておるというのに、将来どのように具体的に改善される余地があるというのか、この点について、労働大臣の責任ある答弁を求めたいのであります。  その次に農民についてでありますけれども、現在、東京都下の東秋留村においては、米軍高射砲陣地に使用すると称して、耕作農民はもちろん、対当局に何ら事前のい了解なしに、ジープを走らせて、米軍の思うままに農地を農民から取上げ、しかも二年後の今日、なおその補償すらなされておらないのであります。(拍手)このようにして取上げられた土地は、すでに一万町歩に及ぶといわれておるのであります。しかも、本協定によると、今後もなおアメリカ軍の浴するままに農民から土地の取上げが行なわれることが許されておるのであります。これに対して、日本の農民はすでに、一寸の土地たりとも断じて手離さないと決意しており、なおこの国会の農林委員会においては、全会一致、軍用地のための土地取上げに絶対反対であるという決議をしておるのであります。  また横浜、神戸、佐世保等の諸港においては、日本人が商業の港として使用できる部分は、わずか港の一〇%から三〇%にすぎない状態であります。このため貿易は絶望状態にあるとして、関係各都市の市会において、米軍の港湾接収反対の悲壮な決議、陳情がなされ、自由党の地元議員すら、国会にこれを請願陳情しておる状態であります。政府は、この農民、市民の要求を蹂躙して、交換文書によれば、この土地の使用接収地の使用の継続を、両政府の話合いができない場合は依然として継続することができるというようなとりきめを、一体だれの承認によつて行つたのでありますか。米軍の接収地をただちに日本人の手元に返還し、今後絶対にかかる取上げを行わないということを保障することができるかどうか。農林大臣を初め、各担当大臣の責任ある答弁を求める次第であります。  さらに、鉄道、電信、電話施設アメリカ軍による使用については、協定の第三条によりますと、日本の交通、通信を不必要に防げるような方法で使用してはならないと書かれておるのであります。しかしながら、現実はどうでありますか。今日すでに鉄道主要幹線において、貨車の三五%は米軍の使用に供され、このため駅頭の滞貨は五百億円の巨額に達し、荷いたみ、値下がり、契約解除等のため、荷主は莫大な損害をこうむつておるのであります。また電信、電話に至つては、重要な諸施設が接収されて、東京・大阪間の電話回線の約三分の一、大阪・福岡間の回線の約二分の一が米軍専用となつて、このためこうむつておる国民の不便は実に甚大なるものがあるのであります、これに対して、運輸大臣並びに電通大臣は、今後依然として米軍が駐留するとき、しかもその継続使用をすでに認めておる際に、いかなる改善の方途があるというのか、責任ある答弁を求めたいと思うのであります。(拍手)さらに石炭、電力、燃料等の重要物資についても、今日米軍によつて、ほしいままに経済外の収奪がされておるのであります、北海道では、六千カロリー以上の良質炭は全部優先的に朝鮮作戦に使用され、このため、北海道道民は、この寒い冬空に暖房用石炭の欠乏に困窮し果てているのであります。しかも、これに対し、日本政府は、まつたくその対策放棄しておる実情であります。アメリカ軍と軍需工場の電力需用の増大のために、電力料金はまたまた大幅に値上げされようとしておるのであります。(拍手)これに対して、通産大臣は一体いかなる処置を国民のためにとろうとするのか、私は責任ある答弁を求めるのであります。(拍手)  しかも、驚くべきことは、このように日本の人民の生活を苦しめておる米軍の駐屯費を、さらに国民の苦しい増税によつてまかなおうとしているのは何ゆえであるか、外務委員会において、岡崎国務大臣は、防衛分担金の日本側負担額が少な過ぎてアメリカに申訳ないとの答弁をしておるのであります。この行政協定によつてアメリカ占領軍が依然として日本に駐留し、しかも作戦行動に従事する限り、今日のさんたんたる日本国民の生活は何ら改善されないのみか、ますますその苦痛ははなだしくなることは明らかであります。(拍手岡崎国務大臣は、何の根拠をもつて、安全保障諸費も含めて一千億以上の防衛分担金が、日本負担が少な過ぎて、アメリカ側にはなはだ申訳ないというがごとき買弁的な、無責任きわまる言辞を弄するのか、責任ある答弁を求めるのであります。(拍手)  私の質問の第三点は、行政協定の第二十三条に関してであります。この条項によりますと、アメリカ軍の財産並びに機密の安全及び保護を確保するために必要なる立法その他の措置をとる旨が規定されておるのであります。このことは、現在占領制度を維持するために日本国民に対して最も苛烈な弾圧を加えている団体等規正令または占領目的阻害行為処罰令その他の治安体制をそのまま今後も維持するのみか、さらにこれを強化するものとわれわれは考えるのであります。すなわち、この条項によつて、米軍司令官の指令、あるいはその指令の趣旨を日本人に遵守させるという名目のもとに、団体たると個人とを問わず、およそ戦争に反対し、平和を守る運動を、武装警官と警察予備隊を出動させて弾圧し、民族の独立、外国軍隊の撤退を求むる一切の愛国運動を、ピストルと牢獄をもつて脅かし、青年学生の徴兵反対運動に対しては、学園の自由を特高と警官のどろぐつで蹂躙し、労働者の軍需生産、軍需輸送を拒否する争議に対しては、死刑、無期の無実の罪をもつて威嚇し建設省発行の地図を持つていたということだけで軍事スパイの嫌疑をもつて拷問し軍事裁判にかけ、農民、漁民の土地取止げ、漁場取上げ反対の運動すら軍事裁判にかけ、戦争に反対する出版物を出版、所持していたということだけで、一日に何千箇所の家宅捜索が行われ、数千人の反戦論者が投獄され、秘密警察は復活し、平和を標榜する一切の言論、出版、集会の自由が弾圧されることは明らかだと思うのであります。(拍手)  このことは、まさに日本の国土と国民をあげ侵略戦争にかり立てるために、国民基本的人権を蹂躙し去るものだと思うであります。これによれば、アメリカ軍の利益と日本人の利益が相反するときは、日本人の利益は犠牲にしてもアメリカ軍の利益を守らなければならないことが、規格されておるのであります。一体、木村法務総裁は、国民基本的人権を保障するため、この行政協定にもかかわらず、いかなる処置を講じようとしているのか、責任ある答弁を求める次第であります。(拍手)  私の質問の第四点は、行政協定第二十四条、いわゆる非常事態についてであります。この協定によれば、急迫した脅威が生じた場合、日米両国は、日本区域の共同防衛のため必要なる共同措置をとり、ただちに協議するとあるのであります。これによりますと、いわゆる非常事態措置については、国民は何ら知ることが許されないのみか、まつたく政府に広大な白紙委任がなされ、政府は秘密理に、いかなる措置をもとり得るのであります。しかも、問題になる点は、アメリカは現在すでに非常事態を宣言しておるのであります。朝鮮においては軍事行動を現に起しておるのであります。アメリカにとつては、非常事態は将来のことではなくして、今日すなわち非常事態なのであります。従つて、本条項に基いて、アメリカは今日ただちにでも防衛のため必要なる共同措置と称し、一切の行政協定をすらほごにして、秘密理に、日本政府といかなるとりきめもできるのであります。(拍手)これこそ秘密協定といわずして何が秘密協定でありましようか。この点について、岡崎国務大臣の明確なる答弁を要求する次第であります。(拍手)  しからば、米日反動勢力は何ゆえにかかる秘密条項を必要とするのでありましよう。それは明らかに彼らの意図するものが、防衛に名をかりて、実は中ソ両国を———————アジアにおける新しい————————をたくらんでいるからであります。本条項にいう、日本区域における敵対行為またはその急迫した脅威とは、一体何をさすのでありましまうか。大山郁夫氏に平和賞を授与して、国賓の待遇で自国に招聘しようとしているのはソ同盟であります。世界平和評議会の決定による国際経済会議のモスクワ開催にあたつて日本人に対し、あらゆる便益と好意を供せんとしているのはソ同盟であります。日ソ両国間の貿易を真剣に呼びかけておるものソ同盟であります。全面講和と、中日両国友好親善と、日本の平和産業の無制限発展のため、中日貿易を誠意をもつて呼びかけておるのは、実に中華人民共和国ではありませんか。要するに、これらの諸国から日本への侵略の危険が微塵もないことは、このわずかな事実によつても明らかではありませんか。(拍手)しかるに、この平和の呼びかけに対して、東条政府のもとですら許されたソ同盟への旅券の下付を、法律に反してまで許さず、ソ同盟、中国に対して明らかに敵意を示しているのは、アメリカ帝国主義者の意を迎えることに汲々としている吉田政府そのものではありませんか。(拍手)  さらに、日本基地から朝鮮を爆撃し、朝鮮人民を何百万と殺戮しているのは実にアメリカの爆撃機であり、アメリカの大砲であり、アメリカの戦車ではありませんか。(拍手)中国領土、台湾を不法にも海上封鎖して侵略しているのは、アメリカの第七艦隊ではありませんか。(拍手)中ソ両国と何らの話合いもなくして、東支那海、北洋方面において、アメリカから払下げを受けた駆逐艦によつて護衛されつつ不法にも出漁しようとしておるのは、実に日本の武装船団ではありませんか。アジアにおいて不法な侵略的な意図を現に行いつつあるものがだれであり、これに協力しているものがだれであるかは明らかではありませんか。(拍手)かかる侵略の計画があるからこそ、国民の目をごまかすために、この行政協定の中にすら広汎な白紙委任を含めた秘密条項を必要として来るのであります。(拍手)  今や、吉田政府は、中国、ソ同盟を侵略するために、アメリカ帝国主義と公然と軍事同盟を結んでおるのであります。さらに、蒋介石、李承晩など、アジアの人民からまつたく見離されて、ただアメリカのかいらい亡命政権にすぎない政権と同盟を締結するために、日台、日韓の交渉を秘密裏に進めておるのであります。現に蒋介石は、日本の二十箇師団を含む六十箇師団の太平洋統一軍の結成を言明しており、これにより大陸への侵攻を呼号しておるのであります。トーマン、ダレス、シーボルトもまた日本の太平洋同盟への参加を強調していることは明らかであります。  今回の行政協定は、この侵略計画のために日本占領状態を恒久化するのみではなくして、さらにアメリカの思うままに日本の国土と国民を新しい侵略戦争にかり立てるためのとりきめにほかならないのであります。(拍手)かかる協定を、日本国民がどうして承認できると思いますか。この点について、政府の責任ある答弁を求めるのであります。かかる日本国民の意思に反した協定は当然に無効なものであつて、当然廃棄されるべきものであります。(拍手)もし政府が、あえてこれをがえんじないときは、国民民族独立の固有の権利に基いて、有力によつてでも、かかる売国的協定及び講和、安保の売国両条約を廃棄するであろうことを宣言して、私の質問を終わる次第であります。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  32. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 占領軍の武力のもとで締結される協定は対等でない、こういうお話でありまするが、共産党はあるいは占領軍の武力を恐れるかもしれないが、われわれは何らやましいとろがないので、全然そういう感じは持つておりません。まつたく平等の関係でこの協定を結んでおる。  なお、日本を無防備の真空状態に置かんとする共産党としては、あらゆる方法で日本の安全を守らんとする米軍にいやがらせを行なつて、これに退却してもらおうとするかもしれませんが、日米間の関係はますます緊密でありまするから、共産党の策動する余地はごうもないなおであります。  また、ソ同盟のことにつきまして、経済会議とか、スターリン賞とか、いろいろ言われましたが、私はまず三十数万の抑留民のことに話を転じていただきたいと思います。(拍手)  なお他の私に関する質問は、一切ばかばかしい宣伝でありますから、お答えはいたしません。(拍手)     〔国務大臣吉武惠市君登壇〕
  33. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。駐留関係に使用されまする労働者の労働条件は、本協定の十二条に規定されておりまするごとく、国内法規がいずれも適用されることになつておりますので、もちろんこれら遵守されるべきものと信じております。(拍手)     〔国務大臣高橋龍太郎君登壇〕
  34. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) お答えいたします。  二十六年度の石炭の生産は、予定をはるかに上まわつております。現在、月々貯炭は増加しておりますので、国民の消化に障害があるとは考えません。  また電気、電力の問題で、私を御指名になつて責任ある答弁をということでありましたが、これは私の所管ではありません。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  35. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 米駐留軍の安全維持に関する立法はどうするかという御質問でありまするが、それはただいま研究中であります。かりにうれを立法するにいたしましても、もとより憲法に定められた基本的人権はどこまでも尊重することは当然のことであります。(拍手)     〔国務大臣村上義一君登壇〕
  36. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お答えいたします。  進駐軍の専用する貨車が三五%に及んでおるというお話でありましたが、これは間違いでありまして、今、使用車は数パーセントにしかすぎないのであります。  滞貨が非常に多くて、民需を圧迫しておるという御意見でありましたが、それは当つておらぬと思うのでありまして、現に国鉄の在貨は、一時は、昨年の春、また夏ごろまでは、滞貨が二百万トン前後に及んでおりました。けれども、その後貨車の新造、列車の増発によりまして、現在の滞貨は百万トンを上下している程度でありまして、この程度は、現在一日約五十万トンの発送に対しまして、適度な在貨の数であるのであります。そういう次第でありますから、民需を圧迫しておるということは決してないと存じます。  また、今後条約効力発効後におきまして、駐留軍がいかに輸送の要請をするかということは、もとよりわかりませんけれども、大体今日の程度以上になることはないと考えられるのであります。なお、もとより発効後における輸送は、完全なるユマシヤル・ベースに立つて処理することに相なつております。(拍手
  37. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 成田知巳君。     〔成田知巳君登壇〕
  38. 成田知巳

    ○成田知巳君 以下私の質問いたしますことは、単に日本社会党第二十三控室代表としての質問ではなくして、今回の行政協定締結によりまして、いかんなく暴露されました、吉田内閣の独善秘密外交、売国的、買弁的外交政策の犠牲となりまして、その基本的人権を侵され、その独立さえも危うくされんとしおります日本国民が、憲法と国の独立を守り抜かんとする悲願のもとに、ひとしく政府に問いたださんとするところのものであります。政府の率直なる答弁を冒頭に要求いたします。  昭和二十七年度予算案の中心問題は、行政協定に基く、防衛分担金、安全保障諸費の審議にあつたことは申すまでもありません。しかるに、政府は、一昨日、本議場におきまして予算案が採決されるまで、予算案前提をなす、これと密接不可分の関係にある行政協定の内容を、ひた隠しに隠しまして、多数の力で、暴力的にこの予算案を通過させたのであります。しかして、予算案が通過するやいなや、待つていましたとばかり、行政協定の内容を昨日報告したのでありますが、政府の秘密主義と、国会審議権無視の態度は、世論の痛烈なる批判の的になつております。昨日発表できるものならば、一昨日その大綱を発表できないはずはありません。なぜに政府行政協定の全貌を国会に示さずして予算案の通過をはかつたか、まず責任をもて国民の前に明らかにすべきであります。  われわれ野党が、予算審議の際に、行政協定の内容、その交渉経過の発表を要求するや、政府は終始、外交は微妙であるとか、秘密を要するとか、目下交渉中であるとか言つて発表しなかつたのでありますが、昨日報告されましたその内容を見ますると、刑事裁判管轄権の問題、民事上の損害賠償請求権の問題、緊急事態における米軍出動の規定、米軍軍隊日本の公益事業及び公共の役務利用の条件等において、日本人基本的人権を侵し、日本の主権にはなはだしい制約を加えておることが明らかにされておるのであります。これによつて見ると、政府が事前に本協定の内容を国会に示さなかつたゆえんのものは、外交交渉は微妙であるとの口実のもとに、実は事前に本協定の内容が国民に知れれば、国民の一大反撃を買い、衆議院における予算審議に重大な支障を来すことをおそれて、ひた隠しに隠して来たのだと断ぜざるのを得ないのであります。(拍手)以下、二、三重要なる内容について質疑を展開いたしたいと存じます。  行政協定が、法理論として、その内容においても、その形式からいつても、憲法第七十三条の条約であることは、識者のひとしく認めるところであります。政府は、国会承認を要しない理由として、安保条約第三条をたてにいたしております。しかしながら、安保条約の第三条は、決して政府に、日本人権利義務に関する重要なる規定をも白紙一任し、包括委任する規定ではございません。これをこのように解釈するということは——たとえば佐々木君の先ほどの意見は、みずから国会議員たるの権能を放棄するものであり、戦時中の、あの悪法でありまするところの国家総動員法を是認する態度といわなければなりません。(拍手)佐々木氏の意見を聞いておりまして、私は、自由党の大先輩であり、佐々木君と同じ選挙区でありました故齋藤隆夫氏が、戦時中に、この国家総動員法を憲法違反なりとして、時の軍閥と、からだを張つて闘つた当時を思い起すのであります。現在地下で、自由党の諸君、あるいは後輩の佐々木君がこのような暴論を吐いているのを聞いて、はたして齋藤隆夫氏の感慨やいかなるものあるかを私は思い起すのであります。(拍手)  岡崎国務大臣は、アメリカにおいても行政協定は上院の承認を要しないゆえに、日本においても国会承認を要しないと、いかにもアメリカ人でもあるかのごとく説明しておられますが、アメリカアメリカであります。日本日本であります。日本人日本人立場で考え、日本法律憲法に準処して問題を処理すべきでありまして、本協定条約である以上、当然国会承認を経べきであります。先ほど、佐々木君は、学のあるところを示されまして、一九四六年の捕鯨条約とかなんとかいうものが国会承認を要しなかつたから、この行政協定国会承認を要しない、こういうことを言つておられますが、今回の行政協定は、日本人権利義務日本の国家の主権に関する重要な問題でありまして、決して鯨とは一緒ではございません。(拍手)  本協定と比較対照して、今問題になつておりますところの、かの北大西洋条約当事者間に結ばれた協定、すなわち一九五一年に署名された、軍隊の地位に関する北大西洋条約当事者間の協定内容であります。先ほど松本議員の指摘されたように、この協定は、なるほど名前はアグリーメント、すなわち協定という言葉を使つておりますが、その第十八条には、協定効力発生要件としてアメリカも含めた関係各国の批准を要することになつておるのでありまして、現にアメリカは、上院においてその批准手続がとられておることは、岡崎国務大臣も御承知の通りであります。上院の承認をとるということは、名は協定でありましても、実質的に条約の性質を有することを明らかに示しております。岡崎国務大臣アメリカの例にならおうというならば、今回の行政協定締結においても、当然そのよき先例にならつて国会承認を求むべきであります。特に今回の行政協定は、必要以上にアメリカ権利を与え、必要以上に日本義務を課しております。このような重要な行政協定日本に及ぼす影響を考慮いたしましたときに、当然国会承認を要すべきものと思うのでありますが、政府の所見を承りたいのであります。  大西洋条約協定に関連いたしまして、刑事裁判管轄権の問題に関し、別の観点からお尋ねいたしたいと思います。ただいま岡崎氏は、協定第十六条に、米国軍隊軍属’家族が日本の法令尊重の義務があるから、治外法権を認めたことにはならないと言つていらつしやいますが、日本に来た外国人が日本の法令を尊重しなければならないことは、あたりまえの話であります。問題は、日本法律に違反した者に対して、日本政府がいかにこれを逮捕処罰いたしまして、法律の遵守を公権力をもつて強制し得るかにあります。裁判管轄権日本になくして、どろしてこれが実効を期待することができるでありましようか。裁判管轄権の問題が治外法権の中心問題であることは申すまでもないのでありまして、政府治外法権を否定しようとしておりますが、この議論は、まさに馬をしかと言い、しかを馬と言う議論にひとしいものであります。(拍手)  この治外法権の問題に関連して一言お尋ねとたいことは、犯人の逮捕権の問題であります。今回の行政協定第十七条第三項a号によりますと、日本当局は、米軍の使用する施設及び区域外において、米軍軍人軍属、家族の犯罪について逮捕できることにはなつておりますが、この犯人逮捕にあたりまして、日本の警察官は正当防衛権を有するやいなや。たとえば、最近世間を驚愕させました、かのアリカ出兵によるところの富士銀行ギヤング事件のごとき場合において、犯人がピストルを突きつけ、逮捕に向つた警察官が生命の危険を感ずるような場合において、この急迫不正の侵害に対し、日本の警察官は正当防衛権の行使として、この犯人を射殺することができるかどうか。最近外国兵の物反り強盗が頻発しております実情にかんがみまして、木村法務総裁の責任ある答弁を承りたいのであります。(拍手)  次に、安保条約第三条によりますと、アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその付近における配備を規律する条件は、両国政府間の行政協定で決定するとありますが、今回の行政協定では、幾ばくの兵力量の米軍が日本に配備されるか、規定されておりません。また、第二十四条の緊急事態の場合の規定のごとく、両国政府で協議して兵力量を定めるというがごとき規定もございません。いかなる機関によつて、いかにして駐留兵力を決定しようといたしておるのでありますか。米軍使用の施設または区域を決定する機関にすぎない合同委員会で、かかる重要問題を決定することはできないはずであります。行政協定にこのことを定めなかりたのは、問題の重要性にかんがみまして、日米両国の新たな条約で定める意と解釈してさしつかえないかどうか、政府の所見を承りたいのであります。  次にお伺いするのは、緊急事態において米国軍隊が出動した場合の日本側の協力義務についてであります。この場合、両国政府は協議するとありますが、協議の機関はいかなる構成をとるものなりや。しかして、共同措置をとるとあるも、警察予備隊が協力した場合、その指揮権日米いずれの指揮官に属するや、明らかにされたいのであります。岡崎氏は、二十七日の衆議院外務委員会で、緊急事態が生じた場合、警察予備隊は米軍に緊密に連繋すると答えていらつしやるのでありますが、この連繋は、日本区域内においてのみの連繋か、あるいはまた米国軍隊が、極東の平和と安全を守るとの名のもとに海外へ出動する場合において、警察予備隊も海外に出動して連繋協力するのかどうか、明確にしていただきたいのであります。  しかして、黒を白と言い、白を黒と言うことのすきな政府は、今日まで、警察予備隊軍隊にあらずと、あたかも、よろいは衣であるというような論理を振りまわして来ておるのでありますが、一歩、いな百歩譲りまして、警察予備隊はそれ自体軍隊でないと仮定いたしましても、米軍の海外出動に協力した場合——、警察予備隊みずから海外に出動した場合はもちろんでありますが、たとい内地で協力するといたしましても、アメリカ軍隊の軍行動に密接に協力し、これと共同関係に立つことは、軍の一部として軍事行動をとるものでありますから、憲法第九条の戦力に該当し、憲法違反になると思うが、政府の所見を承りたいのであります。(拍手)  最後にただしておきたいことは、予算委員会その他で、政府行政協定を結び、外国軍隊を駐留せしめることは、共産主義の脅威に対抗するために必要であると、繰返し述べていらつしやいます。二十七日の毎日新聞紙に掲載された、行政協定を批判するという記事の中にも、増田自由党幹事長は、赤化防止のため今回の行政協定はぜひ必要だと強調いたしております。政府並びに自由党の諸君が、ことさらに共産主義の脅威国民に宣伝これ努めておることは、かくすることにまり、今回の行政協定の持つその違法性、売国性を国民の目から隠しおおわんとするためであります。赤化防止のために行政協定が必要などという、ばかげた議論に対しましては、私は、岡崎氏あるいは増田氏を初め、自由党の諸君の敬愛おくあたわざるアメリカ人、しかもアメリカの最高裁判所の判事ウイリアム・ダグラス氏が、二度のアジア視察旅行の後に語つた次の言葉を引用いたしまして、自由党の諸君の蒙を開きたいのであります。  ダグラス判事は、こう言つております。世界は現に、ドルの力だけでは買収されることのできないような革命のまつただ中にある。地中海から太平洋にわたるいずれの村落からも、胎動の響きをわれわれは聞くのであるが、これらの革命は、その起りからいつても共産主義的のものではない、また、たといソ連が戦争によつて屈服せしめられても、なくなるような革命ではないのである。(拍手)これらの革命は、永劫の昔から搾取され続けて来た、飢えたる人々によつて遂行されようとしているのである。そうして今世紀は、彼らが目ざめ、彼らが動き出す世紀である。われわれは、ソ連共産主義に反対するあらゆるグループを支持することに懸命であるが、その政策は、その意図とは逆に、共産主義をつちかい、栄えさすところの不平不満を生み出す結果となり、しかも腐敗堕落の政権、反動政権とわれわれが共同態勢に立つことになつてしまうのである。  ダグラス氏のいう腐敗堕落の反動政権が、どの政権であるかは、言わずして明らかであります。(拍手)ダグラス氏は、最後に、共産主義への闘いは、共産主義を生み出す条件との闘いでなければならぬと、含蓄ある言葉で結んでおります。この言葉は、まことに含蓄ある言葉であると同時に、平凡な真理でございます。共産主義の脅威に対し、外国軍隊の駐留を求めるというがごときは、ナンセンスを通り越して、逆に、いかに危険であるかは、このダグラス氏の言葉だけで十分であります。(拍手)  このダグラス氏の言葉を聞きまして、私たち、いな、国民が深き憂いを禁じ得ないのは、緊急非常事態の場合、日本当局が米軍に協力する条件が、行政協定には明記されずして、両国政府、すなわち米国と、ダグラス氏のいう腐敗堕落の政権、反動政権たる吉田内閣の協議に白紙委任されていることであります。  今回の行政協定が最後決定を見た二十六日の閣議に岡崎国務大臣が報告をしたとき、各閣僚からほとんど意見らしきものも出ず、ただ一回の報告で、満場一致オーケーであつたと、新聞は報道いたしております。かの戦時中に、平沼内閣は、日独伊軍事同盟締結にあたり、七十六回の閣議を開き、遂に意見の一致を見ずして、複雑怪奇という言葉を残して内閣総辞職を行つているのに比較いたしまして、まことに雲泥の相違があるといわなければなりません。(拍手)旧憲法下においてさえ、平沼内閣の閣僚は、日独伊軍事同盟の国家の安危に及ぼす影響を考え、これだけ真剣に問題と取組んだのであります。  新憲法下、吉田内閣は、かの日独伊軍事同盟と同様、いな、それ以上重大なる今回の行政協定を、ただ一回の閣議でオーケーとは、吉田内閣の閣僚諸君の血管の中には日本人の血が流れているのかどうか。吉田内閣の閣僚諸君には、日本人としての一片の情熱も、一片の気魄も持ち合せてないと断言せざるを得ないのであります。日本人の生命、財産に至大な関係を有し、精勢いかんによつて日本を戦争に巻き込む直接の原因にもなりかねないこの重大問題の決定を、このような売国的、反動的吉田政権に一任するととは、まさに気違いに刃物を持たす以上に危険きわまわないものであります。(拍手)  旧憲法においては、宣戦の布告、条約の締結の大権、統帥の大権は天皇にあつた。この大権を、軍閥、官僚が、天皇の名において、ほしいままに行使したために、その結果が今回の無謀なる太平洋戦争となり、遂に国を滅す結果になつたのであります。緊急状態における米軍出動に協力するの条件がその決定を吉田内閣に一任することは、吉田内閣の反動性、その買弁性から言つてアメリカにすべてを一任すると何ら異ならないのであります。そのことは、ちようど旧憲法下において、天皇の名のもとに、軍閥、官僚により、国民の意思とは無関係に、国民の知らない間に戦争が引起されたのと同様に、今度は、日本人の意思とは無関係に、日本人の知らない間に、外国の意見によつて日本が戦争に巻き込まれることになるのでありまして、私たちは深くこれを憂うるものであります。(拍手政府は、はたしてかかる危険なしと、良心に誓つて断言することができるやいなや、政府の考えを承りたいのであります。  以上、私は、今回の行政協定憲法に違反し、日本人基本的人権を侵害し、日本の独立をも危うくするものなることを指摘したのでありますが、私たちが、さきの国会で講和、安保両条約に反対したのは、実にこのことあるを予想したからであります。(拍手)不幸にして、私たちの予想は的中いたしました。この行政協定の内容を知つた国民は、今や憤激に燃えております。日本人の利益、日本人基本的人権を守るために、私たちの限りなく愛する祖国日本の独立を守るために、必ずやこの屈辱的な行政協定、安保条約の廃棄の一大国民運動が日本国内に燎原の火のごとく燃え上るでありましよう。(拍手)私たちは、これらの、真に日本の平和と独立をこいねがう人たちとともに、いな、その先頭に立つてこの闘いを闘い抜くことを最後に付言いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  39. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 協定の内容をひた隠しに隠したと言われまするが、これは隠したことは全然ないのは、先ほどから三べん答弁をいたしております。  なお、昨日午前、米国側から訓令が接到し、それによつて米国側は調印することができたということは、米国の代表かち申しておりまして、これは議事録に載つております。米国政府が、日本予算案が通るか通らないかを気にして訓令を出し渋つておつたとは、とうてい考えられないのであります。  それから、日本の主権の侵害であるということを、種々裁判権等について言われましたが、安全保障条約を締結いたしまして、軍隊日本に駐屯することを定めた以上は、その軍隊に対しましては、国際法及び国際の慣例に従つて、その範囲で特権を与えるのは当然でありまして、これは決して主権の侵害というべきものではないのであります。  なお、行政協定国会に諮ることなくやるということについて、アメリカアメリカであり、日本日本であるとおつしやつたのでありますが、私も、先ほど松本君の質問に対し、その通りお答えいたしておりまするから、これはまつたく同意見であります。  なお、北大西洋条約に基く例の軍隊の地位に関する協定には批准条項があるではないかと言われますが、これは性質が違うから批准条項があるのであります。日本の場合は行政協定でありまするから、アメリカもこれに対しては批准をいたしませんが、日本もしないというわけであります。  兵力量の点については、この規定がないと言われまするが、これは、米国日本及び日本の周辺を考えまして、これを合計した戦力で日本の安全を保障するに足るものを置くということになつております。われわれは、お互いに信頼を持つて、この言明を信じておるのであります。  なお警察予備隊等との間の指揮権の問題を言われ、かつ海外出動はないかというお話でありますが、海外出動は予備隊としては決してないということは、もはや十回以上国会で答えていると思います。  なお日本の国内もしくは日本に直接敵対行為発生するような場合は、これはもう日本の独立を危うくするような事態が起るのでありまするから、警察予備隊といわず、消防隊といわずわれわれ一般の国民といわず、たれでも日本防衛のために自衛の権利を使うのは当然であります。  なお、の安全保障条約を、共産党を恐れて結ぶということはおかしいではないかといつてアメリカの人の話を大分お話になりましたが、安全保障条約には、共産党を防ぐために条約を結ぶとは書てありません。無責任なる軍国主義がまだ跡を絶たないから条約を結ぶのであります。  なお、こういう緊急の事態に対する処置は吉田内閣に一任してないというお話でありますが、われわれも、何も吉田内閣だけに一任されているとは思いません。将来、いつのことかわかりませんが、社会党左派の方が内閣を組織されれば、やはりこの協定に基いて緊急事態に対する処置を一任されるのであります。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  40. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) アメリカ駐留軍の軍人軍属日本人に対して急迫不正の侵害を加えた場合、生命の危険を感じた場合におきましては、何人といえども、刑法三十六条の正当防衛権を行使するのであります。すなわち、日本人はその場合においても正当防衛権を行使するということは明白であります。(拍手
  41. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後七時十九分散会