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1952-02-05 第13回国会 衆議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月五日(火曜日)  議事日程 第九号     午後一時開議  第一 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案内閣提出)  第二 昭和二十五年度昭和二十六年度衆議院予備金支出の件(承諾を求める件)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  防衛対策に関する緊急質問鈴木義男提出)  日程第一 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案内閣提出)  日程第二 昭和二十五年度、昭和二十六年度衆議院予備金支出の件(承諾を求める件)     午後二時三十八分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 福永健司

    ○福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、鈴木義男提出防衛対策に関する緊急質問をこの際許可せられんことを望みます。
  4. 林讓治

    議長林讓治君) 福江君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  防衛対策に関する緊急質問を許可いたします。鈴木義男君。     〔鈴木義男登壇
  6. 鈴木義男

    鈴木義男君 私は、日本社会党代表して、八千万国民がひとしく危惧の念を抱いておる防衛対策について質問せんとするものであります。  第一に、現行憲法のもとで、政府警察予備隊を廃して防衛隊または保安隊なるものを置かんとしているというのはほんとうであるか、そういうことを合法的にやれると思つておられるかどうかということであります。本論に入る前に、厳粛に承つておかなければならないことがあります。それは、政府憲法第九條にいう戦力というものをどう解するのであるかということであり、次には警察軍隊とをどう区別して考えておられるかということであります。  吉田首相は、口を開けば、まるでばかの一つ覚えのように、再軍備は断じていたしませんと仰せられるのである。また、二千億円くらいて軍備などというと世界の識者から笑われるぞと仰せられたのであります。しかし、今日の警察予備隊が、ピストルのほかに小銃機関銃バズーカ砲まで操縦しておることは周知の事案である。さらに政府の最近明らかにした構想によれば、予備隊保安隊に切りかえるときには、この上さらに重装備武装をさせるというのである。海上保安隊の方では、三インチ砲を積んだ駆逐艦数隻を装備させるというのであります。それでもなおこれは警察であつて軍隊ではないと言われるのでありましようか。(拍手)  今の憲法ができるとき、第九條に「陸海空軍」と例示し、それでもなお足りないとして「その他の戦力」とつけ加えたのは、深い意味があつたのであります。第一次大戦後、ドイツ軍備を極度に制限されたのでありまするが、ドイツ軍閥の残党は再び復讐をもくろみ、警察隊の名のもとに要員を充実し、これに軍事的訓練を施し、一旦緩急あらば一夜のうちに数十箇師団の軍隊にかわる可能性のある戦力を用意したことは、著名な歴史的事実であります。ヒトラーが利用したのは、この戦力であつたのであります。イタリアの独裁者ムソリーニは、また別の形の戦力を用意したことも、顕著な事実であります。そこて、日本もまた一切の武力を放棄したと称しながら、このひそみにならうことをおそれて、当時の総司令部は、政府原案のうちに特にこの言葉を入れることを要請し、われわれも、まことにもつともであると信じ、かく規定したのであります。ゆえに、三百代言的にはどう言われ得るつとしましても、憲法精神は、わが国においては、陸海空軍と名のつくものはもちろん、その他名前は何であつても、重装備武装を持つたものの存在はこれを許さないということであると信ずるのであります。(拍手)それでもなお総理を初め木村大橋その他の各大臣は、戦力というのは軍と名をつけたものに限るとお考えでありまするか、お伺いいたしたいのであります。そもそも警察軍隊とはどこが違うのかといえば、法律の教科書をひもとくまでもなく、その存在目的が違い、従つてその組織装備指揮命令の系統が異なることは、三才の兒童でも知つていることであります。警察なるものは、あくまで国内治安確保のみを目的とするものであります。強窃盗を捕え、個別的な集団的暴力行為を鎭圧し、政府転覆陰謀等を検挙するのがそのレーゾン・デートルであります。従つて、人民の側で持つておる種類凶器の抵抗を排除するに必要なる、その凶器に匹敵する武器以上のものを持つことは許されないのであります。また警察は、武器を持つたからといつて、みだりにこれを使用し得るものではない。緊急状態の場合でも、正当防衛の範囲を越えて、みだりに国民を殺傷することは許されないことであります。たといそれが共産党の暴動でありましても、共産党が戦車を持たないのに、その集団に向つてバズーカ砲を発射するがごときことは許されないことであります。(「ヒヤヒヤ」)  一方、軍隊は、第一に外敵に対して存在するものであり、例外的に、警察力では及ばない内乱の大規模化に際して、その補助として使用されるものであることも、何人も知るところであります。今日の警察予備隊が、すでにこの範疇に属することは公知の事実でありますのに、目下政府の企図しておる保安隊至つては、軍隊たること寸毫も疑う余地のないものであります。(拍手)もし、しからずと言うならば、政府考えておられる警察軍隊との区別はどういうものであるか、何人にもわかるようにお示しを願いたいのであります。(拍手)  今日までの総理並びに閣僚説明によりますると、ポツダム政令による予備隊期限の来るのを幸いとし、近く保安隊設置法案提出して、これが編成がえをし、人員を増加し、装備を重くして、外敵の侵攻にも備えるというのであるが、一切の交戦権すら否定しておる憲法改正することなくして、そういうことができるとお考えになつておられるのでありまするか伺いたい。  吉田首相は、秘密独裁外交を得意として、西南諸島信託統治の問題にしても、この防衛力漸増の問題にしても、ことに日本の国策上最も重大な選択である中国と中共との和平の問題にしても、国会が開会中であり、また開こうと思えばいつでも召集することができるにもかかわらず、こうも国民代表意思に問うことなく、総理一人の意思できめて、米国当局、ことにダレス氏等に言質を與え、国民をして事後に承認するの余儀なきに至らしめておるのでありまするが、これをもつて立憲政治家態度であると信ぜられるのであるか伺いたい。米国当局は、平和條約調印後は、その効力発生前といえども、日本を事実上主権回復せるものとして取扱つて、自主的に独立国として諸事対等に交渉に当らしめるということを明らかにしておるのである。しかるに、かくのごとき態度というものは、あまりにも卑屈ではないか。  大橋国務大臣説明によれば、保安隊には小銃機関銃バズーカ砲はもちろん、大砲、戦車まて與えるというのである。海上においては、大砲装備した軍艦をも備えるというのである。新聞紙の伝うるところによれば、行く行く三十万にもふやすつもりであるというのである。バズーカ砲を何のために使うかといえば、人間の集団を殺傷するために使うというのである。世界のどこに、こんなべらぼうな警察がありますか。(拍手)  木村法務総裁は、委員会において、原子兵器ジエツト機のような強力な兵器を持たなければ、今日の御時勢では、もはや軍隊とはいわれないのだと定義されたようであります。国民を愚にするもはなはだしいといわなければならぬ。そういうものが軍隊の要素ならば、世界には、三、四箇国を除いては軍隊なしということになるのである。(拍手)からすをさぎというのは、まさにこのことであります。もう少しまじめに答えられんことを希望いたします。  また総理大臣は、二千億円くらいで軍備などというと笑われるぞと言われたのであるが、金額の多寡は問題ではないはずである。現政府のように、武器は全部アメリカから拝借することにきめておる場合には、二千億円あれば、りつぱに軍隊はできるのである。総理は顧みて他を言う名人であります。私は、現内閣閣僚のうち比較的良心があると信ぜられる天野文部大臣に、保安隊を何と考えられるか、正直な御見解を承りたいと存ずるのであります。(拍手)  ことに大橋国務相の御言明によれば、今度の保安隊設置法では、任意の退職を許さぬ、また勤務を終つた人員応召義務規定したいということでありまするが、こういうことは国民基本加入権の制限でありまして、はなはだしく自由意思を抑制することである。兵役義務に類する義務憲法規定せずしてできることでありましようか。政府は、口を開けば国民遵法精神を説き、やみ取引を厳罰に処すると申しておるのでありまするが、政府みずから、白晝公然憲法を正面から蹂躙し、やみ軍隊をつくろうとしておる。法を破り、国会を無視する元凶はだれよりも政府自身であるという印象を八千万国民は抱いておると思う。(拍手国民道徳を乱る、これよりはなはだしきはないといわなければなりません。われわれは、まず何よりも政府に正直であれと求めるものであります。また将来この保安隊に勤める人々にしても、この性格の不明瞭な、ぬえ的存往にその一身をささげるということは、はなはだしくその自尊心を傷つけることでありまして、正しき勇気信念とを持つて挺身することを不可能ならしめるのではないかをおそれるものであります。  思うに、このやみ軍隊設置というものは、日米安全保障條約の前文——これも事前に何らわれわれに諮かることなく、総理の独断で約束したものではありまするが、この前文の中に、日本自衛力漸増を期待するということがうたつてあるので、総理アメリカに対してつくることを約束した結果生れて来るものと想像するのであります。しからば、総理は、ちやんとした構想を用意しておるものと推察いたします。單に今秋の三万五千の増員だけにとどまらず、漸を追うて増強して三十万に達するとか、四十万に達するとか、一定の計画があるに相違ないと信じます。これこそ、国民代表として、われわれのあずかり聞かんと欲するところであります。こそこそと少しずつふやして行く、国民批判をおそれて、目立たないように、小出しにやるのではないか、そういうやり方は、決して正しいやり方ではない。かかる重大問題は、常にそのときどきの政治的、財政的、さらに国際的状況に照して、確たる批判に耐えるものでなければならないと信ずるのであります。  私は、この際、自由党の諸君の、国政の最高機関としての矜恃に訴えたいのであります。もう少し諸君はイニシアチーヴがなければならないと思う。つんぼさじきに置かれて、たた独裁的秘密取引——そして一日々々と既成事実がつくられて行く、この既成事実に事後承諾を與えるだけが仕事でありまするならば、二百八十余名の議員諸君の絶対多数は一種のかかしにすぎないのではないかと言われても、弁解の辞がないのではないかと存する次第であります。(拍手)  さらに、われわれにはもう一つ納得の行かないことがある。吉田首相は、予算委員会において、目下ラスク氏との間に進められておる行政協定予備交渉にすぎない、ほんとう協定はおそらく両條約の効力発生後に成立するものと思うという答弁をされたのであります。してみれば、行政協定はまたまつたく不確定のものであります。しかるに、一方においては、明年度予算防衛費安全保障費として、細目を示すことができないまま一千二百億という厖大な額を計上して、われわれに審議を求めておるのである。かくのごときは国会審議権を軽視するものであつて、不都合千万といわなければなりません。(拍手)のみならず、また大橋国務相の言うところによれば、保安隊の経費は予備隊予算でまかなつて、それが不足のときには、この防衛費または安全保障費のうちから流用するというのであります。これも実にふしぎである。防衛費安全保障費は、安全保障條約並びに行政協定に基いて、米国軍駐留に関して必要とされる費目と解しておるのでありまするが、そしてこの行政協定では、警察にせよ、軍隊にせよ、わが国防衛力の供出ないし共助というものを期待しないというように承つているのでありまするが、こういうことは非常な矛盾であり、許すべからざることと存ずるのであります。この点、明確に承つておきたいのであります。  最後にいま一つ承りたいことは、安全保障條約には、米国軍駐留はひとり日本の安全のためだけでなく、東洋の安全のためにも、というふうにうたつてあるのであります。間接侵略によつてわが国内乱が起つた場合には、日本政府要求によつてのみ駐留軍は出動することが明記されておるのでありまするが、東洋に騒乱が起つた場合、日本にある駐留軍日本以外の領域に出動する場合に、これに日本政府はあずかるのか、あずからないのか、明瞭でないのであります。(拍手)こういう場合、米国の認定によつてわが国意思を排除して出動するのでありましようか。どうもそうとれる。そうすれば、わが国は完全なる米国軍軍事基地として東洋の作戦に使用されることになるのではないかと存ずるのであります。行政協定をとりきめるに際して、政府はこの点についてどう対処されんとするのであるか、承りたいのであります。また保安隊は、こういう場合、国外には派遣しない、求められても拒絶するということでありまするが、そういう事態が起りますれば、交戦国の反撃というものを予想しなければなりません。その際、保安隊は手をこまねいて見ておるのでありましようか。こういう場合か最もデリケートな場合と思うのでありまするが、政府はいかなる心構えを持つておられるか承りたいのであります。  お聞きしたいことは山ほどありまするが、時間の関係上省略いたします。  要するに、保安隊一種軍隊であるということは、いかなる詭弁をもつてしても欺くわけには行かないのでありまして、そういうものを設けることは、憲法規定と正面衝突するのであります。政府がひそかにアメリカに約束した手前、どうしても重装備保安隊をつくるつもりだというならば、われわれはにわかに賛成の側に立つわけには行かないのでありまして、すべからく憲法改正を広く国民の輿論に問うことこそ、まずこれに先行すべき道と信ずるのであります。それだけの勇気信念もなくして、脱法行為で当面を糊塗せんとするがごときは、まことに唾棄すべき卑劣なる行為と言うをはばかりません。(拍手政府に向つて猛反省を促す次第であります。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 鈴木君にお答えいたします。いわゆる保安隊は、国内治安秩序維持目的を有するものでありまして、戦争をする目的のものではありません。(拍手憲法第九條のいわゆる戦力限界いかんの問題でありますが、鈴木君は私の言をはなはだしく誤解されておると思うのであります。私は決して原子爆弾ジエツト機を持たなければ軍隊ではないと言つたわけではありません。現在の戦争においては、原子爆弾あるいはジエツト機を使用されるような場合もある、またこれを現案に持つておる国があるのである、かような有力兵器を持つておるような軍隊に対して、日本のいわゆる保安隊なるものは、いわゆる鎧袖一触である、こんなものはとうてい問題にならない、この意味において、保安隊装備編成などは、いささかもつて戦争なんかの役に立たないのであるから、ただただ内地治安維持目的にのみ使用されるものであつて軍隊ではない、いわゆる憲法第九條第二項の戦力に該当しない、とこう申したのであります。軍隊はいわゆる戦争目的とするものであります。警察内地治安維持に当る目的でもつて創設さるべきものであります。保安隊は、まつたく内地治安維持のためにこれを設けるものでありまして、決して軍隊ではないということを申し上げるのであります。(拍手)     〔国務大臣大橋武夫登壇
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊の隊員は二年の予定で応募せしめておりましたので、十月には一応採用期限が切れるのでございます。しかしながら、内外の情勢考えますると、この種の機構はなおわが国におきまして存続せしむることが必要と認められまするから、その際に、二箇年間の経験にかんがみまして、予備隊の本来の使命でありまする国内治安確保のために必要な規定を整備いたしまして、でき得る限り能率的な組織として再編成いたしたいと存ずるのでございます。その際に名称等につきましても適当に考えたいと存じます。  また装備の点について御質問があつたのでございまするが、国内治安確保いたしますることを使命といたしまする予備隊が、国内治安確保のため必要なる装備を備えることは当然であると考えておるのでございます。(拍手)  また、海外に対して要請されても派遣をすることはない、こう申しました点につきまして、そういう場合に、国内における保安隊は手をこまねいて海外の動乱をながめているのであるか、こういう御質問があつたのでございまするが、東洋におきましてさような事態か発生いたしましたるときこそ、国内治安のために保安隊はいよいよ万全の備えを国内においていたすべきものと考える次第でございます。(拍手)     〔国務大臣天野貞祐登壇
  9. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 警察予備隊存在理由は、国内治安確保し、秩序維持するものでありますから、軍隊ではないと私は考えております。(拍手
  10. 林讓治

    議長林讓治君) 岡崎国務大臣はただいま欠席しておられますので、答弁は別の機会に承ることといたします。      ————◇—————  第一 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案内閣提出
  11. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第一、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長佐瀬昌三君。     〔佐瀬昌三登壇
  12. 佐瀬昌三

    佐瀬昌三君 ただいま議題となりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず政府提案理由及び法案の要旨を申し上げます。  先般平和條約が調印され、近くその効力が発生いたし、国民待望主権回復の日も目前に迫つておりまするので、独立に伴う国内法制の整備という観点から、いわゆるポツダム緊急勅令と、これに基く諸種ポ政令につき適当なる処理をいたす必要を生じたのであります。御承知の通り昭和二十年九月、わが国の降伏後における諸情勢に即応して、当時の憲法第八條に基く緊急勅令として、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件という勅令第五百四十二号が制定され、連合国最高司令官のなす要求にかかわる事項を実施するため、特に必要なる場合には、命令をもつて所要の定めをなす、しかも必要なる罰則を設けることができるという旨の規定が設けられたのであります。このポツダム緊急勅令は、当時の憲法に基き、第八十九回帝国議会において、いわゆる事後承諾を得、法律としての効力を持つて現在に至つたのであります。このポツダム緊急勅令に基いて多数の委任命令、いわゆるポ政令が出されたのでありまするが、現在その効力を有しているものは勅令政令府令省令等を合せて百四十一数件に相なつており、なおこのほかに、既存の法令廃止した命令で、その附則がなお効力を有しておるものが若干あるのであります。ところで、占領終止と、わが国主権回復に伴い、このポツダム緊急勅令及びこれに基く諸種ポ政令をいかに処理すべきかでありまするが、まずポツダム緊急勅令は、占領終止に伴い。連合国最高司令官存在しなくなる以上は、当然廃止措置をとるべきものと考えるのであります。  次に、ポツダム緊急勅令に基く各個ポ政令措置については、これを二種類にわけて申し上げるのが妥当であると存じます。すなわち第一は、命令内容連合国軍存在を前提としているもの及び占領終止後将来に存続させることを不適当とするものであり、第二は、内容上将来に向つて存続させることを適当とするものであります。前者についてはこの際廃止手続をとるべきものであり、後者については、内容に従い全面改正を行うもの、また一部改正を行うもの及びそのまま存続するものと三つに区別して措置すべきものと考えられるのであります。そこで、これらの個々のポ政令の処置につきましては、右に述べました廃止存続等措置を、おおむね各府、各省別にとりまとめ、ポツダム命令措置に関する法律案として別途提案することといたし、なお全面改正を要するポ政令につきましては、別に單独の法律案として提案する考えなのであります。要するに、以上が勅令第五百四十二号及びポ政令措置に関する政府方針の大要であります。  次に本法案内容を簡単に申し上げますと、第一に、基本法令たるポツダム緊急勅令を、平和條約の最初効力発生の日限りこれを廃止することを明らかにいたし、第二に、このポツダム緊急勅令に基く諸種ポ政令は、法律廃止または存続措置がとられない限り、平和條約の最初効力発生の日から百八十日間を限り法律としての効力を有するものとすると定めておるのであります。第三に、この法律は過去においてポ政令をもつて他の法律または命令を改廃した効果に何ら影響がない旨の規定を設けておるのであります。  さて本委員会におきましては、以上申し上げました政府提案理由及び法律案につきまして活発なる質疑応答がかわされたのでありまするが、そのおもなるものについて申し上げることといたします。  まず第一に、勅令第五百四十二号は元来憲法違反であり、当然無効のものであるから、これをあらためて廃止する意義も必要もないのではないかという質疑があつたのであります。これに対しましては、政府から、すでに憲法解釈最終権限を有する最高裁判所の判決が示す通りに、同勅令憲法違反ではないから、もちろん有効であるが、占領の終了後は事実上その効力を発動する余地がなくなるので、この際これを明瞭にするため廃止手続をとつた次第である旨の答弁があつたのであります。  第二に、諸種ポ政令有効無効論をめぐつて委員から質疑がなされたのでありますが、中でも、政府はこれらポ政令は何らの措置をとらない場合でも平和條発効後依然有効であるとの見解をとるのであるか、あるいはまた無効であるとの見解をとるのであるかという質疑に対しまして、政府から、同命令の條約発効後の効力については理論上有効無効の二つの議論があるので、政府はこの事情を考慮して、この際これを立法的に解決しておくことが最も妥当な措置であると考え、本法律案提出した次第である旨の答弁があつたのであります。  第三の質疑は、ポ政令廃止または存続整理方針についてでございます。すなわち、これらの諸命令廃止または存続するにあたり、各個命令の表題のみを一括して掲げ、その内容たる條文法案の中に示さない方法は、きわめて非民主的であり、不親切なるやり方である、従つてよろしく命令内容たる條文を全部法案に盛り、この際国会の判断を受けるべきではないかという質疑があつたのでありますが、これに対して政府からは、いわゆるポ政令は官報をもつてすでに国民一般に周知されているものであり、一方また政府事務能力の上からしても、一々内容を書きおろすことはきわめて困難なる事情にあるとの答弁があつたのであります。  第四に、平和條約の発効前に廃止または存続等措置ができない命令効力存続期間を何ゆえ百八十日と限つたかという質疑があつたのでありますが、これに対しましては、政府から、存続または廃止措置はすべてこの国会の継続中に終了したい、しかし国会における愼重な審議には相当の時間を要するものと思われるが、いかに長くも百八十日あれば十分であろうとの理由からこの規定を設けたのであるとの答弁かあつたのであります。  さて本法案は、昨年十二月十三日、政府より提案理由説明を聞き、引続き質疑を続けて参つたのてありますが、本委員会におきましては、二月四日質疑を終り、討論に入りましたところ、自由党から賛成の、日本社会党及び共産党から反対の討論があり、採決の結果、多数をもつて政府原案通り可決された次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手
  13. 林讓治

    議長林讓治君) 討論の通告があります。順次これを許します。田万廣文君。     〔田万廣文君登壇
  14. 田万廣文

    ○田万廣文君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま議題となりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案に対しまして反対の意思を表明するものであります。  本法案におきまして処理されようとしているポツダム緊急勅令、すなわち勅令第五百四十二号及びこれに基くポツダム命令は、申すまでもなく敗戦に占領期間中に制定されました、いわゆる変態時における所産でございまして、国権の最高機関たる国会において、国民の自主的自由な意思に基いて立法化されたものではございません。今や平和條約が調印され、その発効を目前に控えて、国民はひとしく長き占領のきずなから解放される日の一日も早からんことを念願し、自由国家としての再出発に多大の希望をつないでおるのであります。かかる切実なる国民感情を、われわれは絶対に無視することはできないのでございます。かかる実情から申しましても、平和條発効と同時に、占領期間中に変態的につくられました衣類は一度さつぱりぬぎ捨てまして、われわれの自由な意思による、われわれの手による衣類を求めてやまないのでございます。(拍手)この国民的要望に対し、われわれはその率直なる国民の気持を取上げ、その意思従つて進むことが民主主義国家の姿でなければなりません。これに反するすべてのものは反動的であり、反対されねばならぬのでございます。かかる意味から、勅令第五百四十二号はもちろんのこと、これを根幹として生れましたるポツダム命令は、すべて平和條約の発効と同時に、すなわち独立国となつたその瞬間に全部消滅されねばならぬことは、当然のことと申さねばなりません。  本法案中、第一項におきまして、勅令第五百四十二号は平和條約の効力発生と同時に消滅するとうたつておりますのは、けだし自然のことではございましようが、この第二項の点、すなわち第一項において消滅するといつておる勅令第五百四十二号から派生したところの命令は、別に法律廃止または存続に関する措置がなされない場合においては、この法律施行の日から起算してなお百八十日間に限り法律としての効力を有するものとするというこの條項は、幹が枯れてなくなつてしまうのに、これにくつついているところの枝葉が生きて残るという前代未聞の考え方でございます。社会常識から申しても、また法律上から申しましても、とうてい理解のできないところでございます。またこれをたとえれば、当然死亡した人間を、なお六箇月間生きているという擬制をつくるものでありまして、大きな欺瞞がその中に含まれていることに気づくのでございます。この欺瞞をあえて強行せんとする政府の真意はどこにあるかといえば、この六箇月の期間を利用いたしまして、団体等規正法等一連の反動的作為をなさんとするものであることは明瞭であります。頭隠してしり隠さずとは、けだしこの法律案のごときものをさすものでございましよう。  占領状態において変態的に生れました諸命令を、平和條発効と同時に一応消滅さす、しかる後に存続さすべきものは民主的に国会にかけるという考え方をとるべきであるにかかわらず、その方法をあえてとらないで、命令を簡単に法律化そうとするところに、吉田内閣の非民主的性格がはつきり浮び上つて参るのでございます。(拍手)食糧確保臨時措置令並びに警察予備隊令等の、国民生活に重大なる関係を有する一切のものを、占領政策に便乗して政令で処理したところの吉田内閣やり方、またこれを支援したところの自由党の反動的、非民主的な行き方と何らかわらない、この姿のはつきりした証明をしている本法案に対しましては、強く反対を表明せざるを得ないのでございます。(拍手
  15. 林讓治

    議長林讓治君) 田中堯平君。     〔田中堯平君登壇
  16. 田中堯平

    ○田中堯平君 私は、日本共産党代表いたしまして、ただいま議題となつている案件に対し反対の意見を述べるものであります。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件、すなわち昭和二十年勅令第五百四十二号は、旧憲法第八條による緊急勅令であり、広汎な委任立法を許し、ほとんど無制限に国民の権利を蹂躙するものでありました。ゆえに、新憲法の九十八條に徴するも、明らかに違憲無効の勅令であるのであります。この不法なる勅令五百四十二号に基いて、あまたの、おびたたしい数のポツダム政令なるものが発布され、そのために国民の痛苦と犠牲は甚大なるものかあつたのであります。わけても勤労階級のこうむつた犠牲は、筆舌に盡しがたいものがあるのであります。  その中から二、三の例を拾つて見ただけでも、たとえば政令二百一号は公務員から争議権を剥奪し、また団体等規正令は言論、結社、政治運動等に対して重大なる抑庄を加え、また出入国管理令は他民族に対して理不盡なる弾圧を加え、また政令三百二十五号は無数の新聞、機関紙その他刊行物を発禁処分に付し、かつ幾万の愛国者を逮捕、投獄をしたのてあります。そのうち幾百人は、いまなお獄中に呻吟しておるような次第、しかも政府は、この処罰は将来に向つても継続すると言つておるのであります。さらにまた食糧確保臨時措置令は、国会審議権を無視して農民を今日の窮状に追い込み、また警察予備隊令は、国民、ことに開会中のこの国会を完全に無視して、外国の傭兵的日本軍備の基礎をつくり、吉田政府は、今日もなお再軍備にあらずと、どこにも適用しない強弁を振りまわしながら、着々としてその拡充強化に狂奔をし、徴兵制度さえも計画しておるではありませんか。かくして、内には国民を塗炭の苦しみに暗れ、外には世界、ことに東洋の友邦諸民族の疑惑と不信を買つている次第、まことに勅令第五百四十二号のその害悪は、数え来れば実に枚挙にいとまがないのであります。  そもそもポツダム宣言は、日本に対して、わが国に対して平和と独立と民主主義を要求しておるのに、そのポツダム宣言そのものの受諾に伴い発する命令に関する件、すなわち本件勅令が、かくも平和と独立の反対の方向と非民主主義の方向に日本を推進しようとは、何とこれは皮肉なことでありましようか。平和と民主主義の劍は、反動諸政府、ことに吉田政府の手によつて、もののみごとに、悪魔の血に飢えた劍に変じたのであります。  勅令第五百四十二号が本来違憲であり無効であることは、しばらくおくといたしましても、これが占領制度に伴う勅令であつてみれば、占領制度の終焉とともにこの勅令が失効すべきであることは、少数の形式論理をもてあそぶ者は別として、今日万人の確信するところであります。一般の国民感情としましても、政府の宣伝するがごとく條約発効とともに独立日本となるのであるなら、占領治下の勅令五百四十二号並びにこれに基くポツダム政令はきれいさつぱりと廃止して、七箇年にわたる重苦しい、じめじめした気分から解放されたいと思うのが、これ偽らざる国民感情であります。(拍手)  しかるに、本法案は、あたかもこの国民感情に応ずるもののごとく、その第一條においては勅令五百四十二号を廃止すると明言しておりながら、その第二條以下においては、巧みに正反対のことを規定しておるのであります。すなわち第二條では、親法たる勅令五百四十二号は廃止されても、それに基く子法であるポツダム諸政令は生き残つておることを前提として、別に法律をもつて廃止または存続に関する措置をすることを規定しております。その措置のなされない部分は、すべて百八十日の間法律としての効力を有するという規定になつておる。その廃止存続の区別、選択につきましても、まつたく政府の気ままかつてなる判断により、要するに売国的なる少数特権者を擁護し、一般国民大衆に対しては依然たる抑圧と、いな、それ以上のますます強化される弾圧を残そうとするのであります。政府は、本伝案をもつて国民怨嗟の的であつた勅令五百四十二号を廃止するかのごとく見せかけ、実はこれを継続せんとする、まつたくのペテンを企てておるのであります。  勅令五百四十二号並びにこれに基くあまたのポツダム政令は、この際全面的に廃止すべきであります。もし、どうしても残さなければならない制度ありとするならば、これまでのように超憲法的な圧力による押しつけの命令ではなしに、独立日本であるならば、新たに国民国会に聞き、愼重審議の上、自主的なる立法を行わなければなりません。しかるに、政府は、この措置を回避して、百数十のポツダム政令を、その題目だけを並べて、十ぱ一からげに、これは存続、これは廃止と、簡單に片づけておる。これては、国民は何のことやらさつぱりわからぬ。国民が戸惑つておる間に、政府はさつさとこの法案を通過せしめ、国民がこの法案の重大性を認識するころには、りつぱに占領制度の実質的な継続と強化の態勢を整えておこうとする陰謀が本法案であります。(拍手)平和と独立を獲得するのだと国民をだまして、サンフランンスコ両條約に調印批准をして国を売り渡した吉田政府は、その売国作業の一環として本法案提出したのであります。日本共産党は、もちろん、かかる法案に賛成することはできません。(拍手
  17. 林讓治

    議長林讓治君) これにて討論は終局いたしました。採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立]
  18. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。よつて本案に委員長報告の通り可決いたしました。(拍手
  19. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第二、昭和二十五年度、昭和二十六年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員長石田博英君。     〔石田博英君登壇
  20. 石田博英

    ○石田博英君 ただいま議題に供せられました昭和二十五年度及び昭和二十六年度衆議院の予備金支出の件について御説明いたします。  昭和二十五年度衆議院予備金のうち、昭和二十五年十二月九日までに支出された分については、すでに前の常会において御承諾を得ておりますからこれを除き、今回御承諾を得る分は、その後支出いたされました六百三十万七十四百八円と、昭和二十六年度衆議院予備金のうちから昭和二十六年十二月九日までに支出された五十一万六千円てあります。これらの予備金は、支出後常会の初めに御報告をして御承諾を求めることになつております。  その費途は、予備金支出の報告書に詳記してあります通り昭和二十五年度分の方は、在職中逝去されました議員の遺族に対して贈つた弔慰金と、故議長幣原喜重郎君の葬儀執行に要した経費並びに議案類印刷費の予算に不足を生じ、これが補足のため支出された経費であります。また同二十六年度分は、在職中逝去された議員の遺族に対して贈つた弔慰金であります。  以上はいずれもその都度議院運営委員会の承認を経て支出されたものでありますから、御承諾あらんことを希望いたします。
  21. 林讓治

    議長林讓治君) 本件は承諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて承諾するに決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十九分散会