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赤松勇君 私は、
日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、再
軍備及び中国との講和に関する
政府の
外交方針について
質問をしたいと思うのでございます。
昨十四日正午、丸の内ユニオン・クラブにおいて、
ダレス大使は、平等な主権国の協力と題して演説をされまして中立と非武装は過去のものであると断定し、さらに
武装兵力の援助と便益をいつでも提供しなければならないと、
国連憲章原則を繰返して、このような原則は対日平和條約に織り込まれ、日米
安全保障條約にも反映されたと強調し、まず便宜の供與を
日本の義務として要求されたのであります。
かかることは、すでに両條約批准の際に明白に予測されたことでございまするが、当時、
吉田内閣
総理大臣は、憲法は改正しない、再
軍備は経済上、社会上の條件からやらないと言
つておられたのでございます。
ダレス大使の構想はもちろん、両條約のたどる道は、明らかに
日本の再
軍備の道であります。四年前、連合国の指導によりまして、非武装、中立の平和憲法を制定し、国際紛争に武力を用いることを永久に放棄することをば決意いたしました
日本人は、今や再び銃をとるかとらないかという重大な関頭に立たされているのでございます。この点につきまして、
政府はどのように考えておるのであるか。もし
政府が、伝えられるように、警察予備隊の量的な、または質的な増強によ
つて再
軍備の実を上げて行くとするならば、
国民の目をくらまし、ひそかに憲法を侵すことになるとわれわれは考えるのであります。この際
あらためて
政府の警察予備隊に対する
態度及び施策を問いたいと思うのでございます。
次に私が
政府にお尋ねしたいことは、中国との講和を、中共
政府と国府のいずれに求めんとしておるかという点であります。われわれが今日までしばしば指摘いたしました
通り、
日本国民は、第二次大戰によ
つて中国
国民に
與えた、はかり知れない大きな犠牲に対しまして、重大なる
責任を感じております。それゆえにこそ、中国
国民と
日本とは一日も早く友好を回復し、アジアの隣人として共存共栄の道が切り開かれることをば希望してきたのでございますが、
吉田内閣は中国を講和から除外した米英原案なるものを批准したのでございす。われわれは、このことをば心から遺憾としておるのでございます。
世界の一部では、かかる事態は中国が毛政権と蒋政権にわかれておるためであると、その
責任を中国自体に帰せしめようとしておるのでございます。そして、分裂した中国を各国の利益に
従つて支援し、中
国民衆の最大の不幸を招きつつあるばかりでなく、アジアの不安の最大の原因をつくりつつあるかに見えるのでございます。しかしながら、アジアに生活し、アジアに繁栄の基礎を持ち、アジアの平和を守らなければならない
日本といたしましては、こうした諸国の
態度とは根本的に異
なつたものがなければならないと私
どもは考えておるのでございます。われわれは、まず二つの中国の悩みを他人事として考えるわけには参りません。中
国民衆が一つの政権を持ち、統一と平和が中国にもたらされるであろうことを、われわれは切に希望してやみません。この統一と平和に貢献せんとする
態度こそが
日本の
態度でなければならぬのであります。また、われわれ
日本のとるべき
態度は、アジア平和の見地からなされるべきものであると、私
どもはかたく信じております。
アジアは総じて、世界歴史始ま
つて以来の不幸に今見舞われておる。朝鮮の三十八度線、仏印のホー・チミン対パオ・ダイの争い、あるいは台湾と本土と二分された中国、こうした二つのアジアと、その中にかもし出されるアジア民衆の不幸は、はたしてアジア自体の
責任であるかどうかということをもわれわれは反省してみなければなりません。私
どもは、断じてそうとは思わない。数世紀にわた
つての西欧諸国の植民地政策、極度に窮乏したアジアをめぐ
つて今日の米ソの対立がアジアの不幸を生み、アジアの不幸を増大しておるのでございます。アジアの民衆には
責任はない。アジアの平和を危機に陷れる一切の支配をアジアから駆逐することがアジア民衆の真の心であると私
どもは信じておるのでございます。
それゆえに、アジアの
日本は、真の隣人として中
国民衆に対する
態度、政策は独自のものでなければなりません。その一つは、明らかにアジアの恒久平和と、アジア民衆の真の和解であります。アジア
民族の統一、アジア
民族の平和と和解、このことに貢献する外交政策が、とりもなおさず
日本の外交政策の根本義でなければならないと確信しておるのでございます。しかるに、世上
吉田内閣はいち早く国府と講和を締結せんとしておるやに伝えられておるのでございますが、もとよりわれわれは、国府を
日本の敵とする必要はない。友好を回復することに
反対する理由は何ら発見することもできない。問題は、国府を承認し、これと講和を締結することによ
つて、中国の統一とアジアの平和に及ぼす重大なる悪
影響を考えなければならないのでございます。
この際特に私が
国会を通して明白にしておきたいことは、アメリカ合衆国は、あるいはその戰略的目的から国府との提携を希望するでございましよう。しかし、それはアメリカの戰略的目的であ
つて、アジアにある
日本の條件と理想とは全然別個のものであるということを明らかにしなければなりません。
日本の恒久的繁栄と平和の見地から
日本が独自の方策を持つことは、
日本の当然の自由であり、当然の権利であるとわれわれ思うのでございます。中
国民衆の圧倒的多数が中共
政府を支持しているこの事実は、すでに世界が承認しつつあるのであります。現にその最たるものはイギリスであります。思想と外交を混同してはなりません。民衆が選び、民衆が決定する
政府が、たといわれわれの思想と根本的に異なるものがあるといたしましても、われわれ外国人は、それに干渉する何らの権利もないのでございます。ましてや
日本の
態度は、そこに好惡があ
つては断じてならぬのであります。こうした
日本の根本的
態度が、
日本の経済的利益を越えて重要であります。
政府は、この中国に対して今後いかに対処して行こうとされるのであるか、この際われわれは
政府の明確なる
答弁を煩わしたい。
なお、ただいま参
議院の
議院運営委員会におきましては、
吉田総理の
出席を要求いたしまして、さらに
自然休会に
反対して、十七日再び
国会を開いて
吉田総理の
出席を要求しておるようでございます。
また私
どもは、過
日本院に対しまして、平和憲法擁護、再
軍備反対に関する
決議案を、成田知巳君外七名の名において
提出いたしました。すなわち
政府は、戰争放棄の新憲法擁護の方針を宣明し再
軍備に対する
国民不安を一掃すべし。
理由
内外
情勢の緊迫に藉口し世上軽々に再
軍備を口にし、平和憲法の改正等も論議する考があることは、誠に遺憾である。
この際
政府は、よろしく戰争放棄を明示してある新憲法の精神に基き、再
軍備の非なるゆえんを宣明し、再
軍備反対、中和憲法護持の確乎不抜の大方針を天下に明示すべきである。
この
決議案を私
どもは
運営委員会に
提出をいたしまして、ただいま
委員会に付託されておる。
今や、
国会のみなならず全
国民は、このことにつきまして、
吉田内閣の明確なる
外交方針を鮮明にすべきことを強く要求しておるのでございます。(
拍手)この際、この
国会並びに
国民の要望にこたえて、
吉田内閣はすみやかに中共承認に関する
外交方針並びに平和憲法をあくまで護持するのであるかどうか。もし警察予備隊を、量的にも質的にも軍隊化するといたしますならば、これこそ平和憲法を侵害するものであり、破壊するものであると断ぜざるを得ないのでございます。か
つて、新憲法制定のあの
国会におきまして、現にこの議政壇上におきまして、われわれは平和憲法の擁護をば全世界に宣明し、この憲法を通しまして、平和確保の宣言を行
つたのでございます。
情勢の変化によ
つて国是をゆるがせにすることは、断じて許されません。すみやかに
政府は、この点について、内外に対し大胆率直に
外交方針を明示されんことを要求いたしまして、私の
緊急質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣益谷秀次君
登壇〕