○柏村
政府委員 去る六月二十五日に起りました騒擾
事件につきましては、ただいま御指摘のように、確かに警察側においては私は不手際があり、遺憾の点があり、反省すべき点が多かつたということを率直に申し上げなければならないと思うのであります。あの
事件につきましては、六月二十日ごろ大阪府の国警本部が、
朝鮮人約三千名ほどが、最初に集まりました池田市の待兼山に集合しまして、伊丹飛行場を襲撃するという情報を入手いたしてお
つたのであります。そういうことについて十分確度を確かめ、検討をするように努めておりたわけでありますが、たまたま六月二十一日に、これはたしか六月七日ごろと思いましたが、泉大津市におきまする旧朝連系と民団系との間の争いから暴行事犯がありまして、これの容疑者の逮捕に参りました際に、これを裏づけますようなビラを発見をいたして、ますますこの計画が事実確度の高いものであるというふうに
考えまして、これに対する警備計画についても、
現地において考究中であ
つたのであります。ところがこれは初め六月二十五日に集まるという情報であ
つたのでありますが、これが六月二十四日の午後八時から、反戰独立フアイヤー・ストームという名称で、
朝鮮人また学生等が相当数参集して行われるということが、その開催地でありますところの大阪大学の北分校のグランドを使用したいという許可願いが提出されましたことから、はつきりいたしたわけであります。そこで
現地の警察
当局としましては——あそこは池田市の管内にな
つておりますが、その南に豊中市警があるわけです。これは自治体警察が
二つ接続しておりますが、非常に豊中市に接近しました池田市の南端に、そのグランドがあるわけであります。そういうわけで、池田市並びに豊中市から、国警に対しても応援の要請がありまして、三者共同いたしまして検討しました結果、これに対する警備計画を一応立てたわけであります。それで豊中市の警察署を警備本部といたしまして、ここに待機部隊を置く、それから待兼山の
状況を警邏巡視する部隊を
派遣するというような
状況をも
つて、これに臨んだわけでありますが、その当時におきましては、これがあの騒擾
事件にわたりますような吹田まで行軍しまして、あそこで事を起すというような点については、承知いたしておらなかつたわけであります。それで、伊丹の飛行場またはその近所にあります
駐留軍の宿舎に対しての攻撃が行われるのではないかというような判断に基きまして、警備計画を立てたわけでありますが、当日六月二十四日の午後八時ころになりまして、
朝鮮人、学生、それに若干自由労働者等が入
つておつたようでありますが、これが三々五々集合して参りまして、午後十時ころには、約八百名ほどに
なつたということであります。それでこの集まつた者が——その前にちよつと関連いたしますので申し上げりておきますが、学校
当局としましては、このグランドを許可しないという方針で、不許可にいたしたわけでありますが、ただ学校
当局としては、あそこはよく子供や何か入
つて来るので、学校は許可しないが、そこに集まる者を黙認するような態度で臨もう、こういうふうな学校側の気持であつたようであります。ところがその八百名の参集者が、大体二隊にわかれまして、一隊は会場のグランドにかがり火をたいて気勢をあげる、他の一隊は待兼山——これは小さな山でありますが、その山中の竹林で竹やりの製造をしておるというような模様が見えたのでありますが、その後十時二十分ころに、突然待兼山とその近所にあります下河原部落並びに金木部落という三箇所から一斉に打上げ花火が上つたということから、これはいよいよ何か事を起こすのじやないかということで、注意をしてお
つたのでありますが、
駐留軍の方としては、自分の方は自分で武装して警戒するというようなことでありまして、一時この宿舎に向
つて攻撃するような態勢をとりましたのでありますが、照明燈をこうこうと照すとか、あるいは警戒措置が十分とられているようなことを見て取つたせいか、この攻撃態勢をくずしたわけであります。この攻撃を中止しまして、大部分の者が待兼山から下りまして、阪急電車の石橋驛という所に行進を始めたわけであります。それでこれらの者が午前二時半ころに驛長と
交渉をいたしまして、夜中に臨時電車を強引に出させておるわけであります。ところがそのときに視察をしておりました者の勧測では、ずいぶん一同疲れておる様子に見える、それで、もうわれわれは大阪に帰るのだから、大阪まで電車を出せ、こういう
交渉をしておりましたので、そこで今御指摘のような、不用意にも、大阪に帰るのであろうというような観測をしたわけであります。それから一方におきまして、まだ若干残
つておる部隊があるに違いない。これらが池田市または豊中市内において破壊
行動を起すおそれがあるからということで、そこに待機しておつた部隊がこのために釘づけにされたというような事情もあつたように聞いておるわけであります。ところがこの電車に乗りました者が、途中おりたがつた学生な
どもあつたようですが、指揮者がこれをおろさないで、服部驛というところに来ましたときに、停車を命じて一斎にここに下車して吹田の方に向つたわけです。ところが一方若干の残
つておつたと思われる部隊は、——これがむしろ私は精鋭部隊ではなかつたかと思いますが、これがその電車に乗らないで、夜間池田市からずつと東の方を
通りまして、途中笹川氏のうちなどを破壊したりして、これが別路の山道を
通りまして吹田操車場の方に向
つて行きまして、ちようど時間のしめし合せがそこについておつたものとみえまして、電車で来た部隊も、途中豊津という巡査派出所に火炎びんを投擲するなどの暴行をいたしつつ操車場の方に向いまして、操車場の北の地点におきましてこれが合流したように見られるのであります。ところが電車に乗りました部隊はあまり竹やり等は持参しておらなかつた。ところがこの合流点からあそこに何とかいう神社があるのでありますが、その神社のところまで来ましたときに、ほとんど大部分の者が、竹やりとかこん棒とか持
つておるというような
状況にこちらがぶつかつたわけであります。先ほど御指摘のように、それは朝の六時前でございますが、その際に国警の管区学校の生徒と、それから一部応援の自治隊警察の部隊とがこれを阻止するために出動してお
つたのでありますが、その際に十分な制御措置を講じ得なかつた。それで暴徒側が操車場に突入してしま
つて、約五十分間操車場の中を貨車などを探してデモ
つておつたという
状況であります。操車場ではそういう
状況でありましたが、別段の破壊行為はいたしておりません。操車場を出まして、その出がけにあそこの産業道路で、新聞にも出ておりましたクラーク准将の車に火炎びん、硫酸びん等を投げて危害を與えております。そしてこの部隊は産業道路を通
つて吹田の駅の方に向つた。それを先ほど申し上げました警備部隊があとから追尾するという形にな
つたのでありますが、その際に茨木市署からの応援隊を乗せた車が——これも反省すべき問題だと思いますが、その暴徒のわきを
通り抜けて、早くその先頭よりも先に
行つて、迎え撃つ態勢をとろうという意図であ
つたのではないかと思いますが、そのわきを
通り抜けようとしたときに、暴徒側から火炎びんを投げられ、そこで二十六名だつたと思いますが、二十六名のうち十六名が負傷をし、十名が逃げて民家に入つたりなんかして難を免れたというような
状況であつた。それでこれもまた先ほど申し上げました警備部隊が、うしろから追尾して
行つて、これを迎え撃つこともできずに、とうとう吹田駅の構内に入
つてしま
つて、そこで若干の検挙者を見ておりますけれ
ども、ちようどその時刻に下り列車が来たのを利用しまして、ほとんどこれに乗
つてのがれた。そのほかにものがれる際に竹やりとか火炎びんを投げつけるというようなことをいたしたわけであります。その後これらが大阪駅に着きましたが、ちようど出勤時のラツシユ・アワーでありまして、なかなか見わけがつかないということで、それだけの数のうち、十数名程度を逮捕したにすぎなかつたわけであります。その後の捜査におきまして、七月二十八日現在で容疑者百十三名の逮捕を見ているわけであります。先ほどこれについての観測と対策はどうかという御
質問でありましたが、概要はただいま申し上げた
通りで、その中にも私ときどき申し上げましたように、警察側の措置として確かに遺憾な点があつた、十分なる情報を入手し得ずに、これに対する措置が機動的に十分とられ得なかつたということは、まことに遺憾に存じておるわけであります。御承知のように大阪府下は中小と申しますか、むしろ小自治体が多くて、自治体の間を縫
つて国警の区域があるという
状況でありまして、これももちろん警察法に示されるように国警、自警の応援要請も
お互いにとり得るし、
お互いの
連絡協調によ
つて十分日ごろの訓練とそのときの情勢判断に誤りなければ、たとい機構的にわかれておりましても一致した警備措置がとれるわけでありますが、一応そういう努力はいたしたものの十分なる指揮系統の統一とか、時宜に即する機敏な機動的警備措置というものがとり得なかつたという
状況であります。これは制度上、もちろん機能的に
考えまして
考えなければならぬ点もあると思いますが、私
どもとしましてはほかのところで、これほどの
事案ではございませんが、これに類したような事態になり得る
状況において、初動においてこれを制圧する、あるいははつきり暴徒と目されるようなものの集合を事前に阻止し得るような措置はと
つておるところもたくさんあるのでありまして、非常に遺憾な例として御指摘を受けました点は、私
どもまさにその
通りと
考えまするが、この一
事例によ
つて、こうした
事案について警察はとうてい頼むに足りないということが起
つて来る、これも無理もないことかと思いますが、私
どもは決してそうは
考えておりません。また装備等について機動的に警備要員を配置すべき自動車であるとか、あるいは通信を正確にいたしますまた機動的にいたしますための通信機器の整備であるとか、そういうようなものについては、これはまだまだ十分でないという点を
考えますが、その他他人に
傷害を與えるような武器というようなものについては、決して現在の程度のもので阻止し得ないものではないというふうに
考えておるわけであります。むしろやり方の点について反省をし、訓練を積む場合においては、こうした
事案については現有の警察力をも
つてしても十分に対処し得るというふうに
考えておりますが、先ほど御指摘の点と関連しまして、私
どもとしましては、従来ややもすれば、警備というものが、むしろ対象が動かないものに対して、——暴徒と申しますか、取締りの対象に対して、どれだけの人数をどういう時間に繰り出して
行つて、これを円満に事態を納めるというような訓練が、むしろ重きを置かれておつたわけであります。先般の吹田騒擾
事件に見られましたように、夜間から翌朝にかけて、しかも非常に
相手方が機動的に動くような暴徒に対しては、十分に機動的な警備、訓練というものをしなければならない。これはつとにそういうことを
考えまして、国警はもちろん、自警との総合訓練等においても、そういうことに着意をいたして、実施をいたしておるわけであります。こういうことにつきましては、今後も十分に検討、研究をいたしまして、このような
事案の今後起らないように対処いたしたいと思うのであります。
余談でございますが、去る七月十四日におきまする京都市の警備措置、これは非常に事前の措置が周到に参りましたために、相当計画があつたわけでありますが、これを未然に防止することができた。また大阪の扇町プールにおきまする集会等については、これはむしろ主催者の方において、デモなりあるいは暴力行為というものをしないようにという非常な注意をされたというようなことがあつたわけでありますが、この際も従来の例から申しまして、相当騒ぎを起す可能性があるということで、警備配置は十分にいたしたわけであります。その警備配置が十分であつたためか、またはその際に集まつた主催者が賢明だつたためか、あの際は非常な主催者側の注意によ
つて事なきを得たわけであります。私はこうした集会とか会合が、ただいま参議院で御審議をいただいておりますが、この前御審議を願いました集団示威運動等の秩序保持に関する
法律の提案の趣旨からいたしましても、穏当な集会デモというようなものは、できるだけ自由にする。しかしながらこれが他人の生命、財産、自由というものに非常な影響、被害を及ぼすというようなものについては、十分にこれを取締ることができるように、また予防ができますように、心がけておるわけでありまして、この点は今後とも努めて参りたいと
考えておるわけであります。