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1952-07-30 第13回国会 衆議院 法務委員会 第74号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月三十日(水曜日)     午後三時十六分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君       角田 幸吉君    北川 定務君       花村 四郎君    松木  弘君       眞鍋  勝君    大西 正男君       加藤  充君    世耕 弘一君       佐竹 晴記君  出席政府委員         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  柏村 信雄君         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (検務局長)  岡原 昌男君         外務事務官         (條約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月二十九日  委員柄澤登志子君辞任につき、その補欠として  加藤充君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会審査に関する件  国連軍との協定における裁判管轄権に関する件  検察行政及び国内治安に関する件     —————————————
  2. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、理事である私が委員長の職務を行います。  まず閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案土地定屋調査士法の一部を改正する法律案法務検察行政及び国内治安に関する件、裁判所司法行政に関する件、人権擁護に関する件、法廷秩序破壊集団暴行等に関する件、接収不動産賃借権に関する件、及び交通輸送犯罪に関する件につきまして、閉会中もなお審査をいたしたい旨議長に申し出るに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  なお、申出の事件につき多少の変更ある場合、申出書の作成、及び提出手続につきましては委員長に御一任願うに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 御異議なしと認め、御一任願うに決しました。  なおこれらの事件閉会審査のため本委員会に付託されました場合には、その審査のため、各地に委員派遣することとし、派遣委員の数並びに氏名、派遣の期間及び派遣地の決定につきましては、委員各位とも後ほど協議願うことにいたしたいと存じますが、委員派遣承認申請書作成並びに提出手続とともに委員長に御一任願うに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 次に、国連軍との協定における裁判管轄権に関する件について調査を行います。発言の通告がありますから、これを許します。北川定務君。
  7. 北川定務

    北川委員 私は英連邦を主とする濠洲カナダニュージーランド等日本駐留しておりまする国連軍犯罪状況、並びにこれらのものの管轄等につきまして、政府委員質問をせんとするものであります。  講和條約が発効いたしましてすでに二箇月以上に相なりまするが、いまだにこれらの駐留軍日本国との間に條約または協定が締結せられておりませんために、駐留地でありまする岩国や呉におきましては、駐留軍に属する人々犯罪が頻発いたしておるのであります。そしてこれらの人々管轄権がはつきりしておらないために、ようやくこれらの地方の社会的不安が醸成されんとしておるのであります。この地におきまする犯罪発生件数、並びにその種類、検挙率犯罪処置方法等につきまして、まず岡原検務局長にお伺いいたしたいと思います。
  8. 岡原昌男

    岡原政府委員 お尋ねの呉地区におきます英濠軍等犯罪につきましては、現地からの報告によりますると、すでに百件になんなんとする事件が四月二十九日以降発生いたしております。その犯罪内容は、罪名として一応掲げられておるところは、強姦であるとか、あるいは暴行傷害詐欺窃盗といつたような事件大半でございます。その内容は、暴行事件はおおむね夜間飲み屋等に入つて、何か気にさわることがあつてなぐつた。それから傷害はそれでけがをさせたというような事件が多いようであります。それからなお強姦等につきましては、私どもといたしましてもその罪質の重大なのにかんがみまして、その事案内容について深く検討いたしましたのでありますが、数件報告されておりますその大半が、いわゆるパンパンを被害者とするものでございまして、その内容等について必ずしも強姦であるか、あるいは和姦であるか、その点の犯罪容疑がはつきりしないという案件が多いようでございます。なお窃盗等につきましては、どうしてこういうふうにわずか三千円や千円や、あるいはせいぜい一万円くらいの品物を盗むのかというふうなことで疑問を持ちまして、いろいろ調査をいたしましたところが、現地給與が非常に悪いためにさようなことになるのだというふうな説明がございました。なお中にはわずか百円、二百円の自動車の乗逃げ詐欺といつたような案件も多いのであります。これらを通観いたしまして、検挙率はたいへんよろしゆうございます。大体現行犯でつかまつております。ただ問題になりますると、ほとんど大半事件が弁償いたしまして、当事者間に話合いがついておりますので、一般日本人の場合においても、諸般の事件で千円ないし一万円くらいの事件起訴猶予になる事件が多いのでございます。そういうふうな関係もございまして、検察庁におきましては、今まで起訴猶予にしておつた案件が多いわけであります。犯罪概況は大体そのようなことであります。
  9. 北川定務

    北川委員 これらの犯罪取扱いにつきまして、法務府では五月十七日に軍施設以外で公務中以外に行われた犯罪については日本側で逮捕し、通常の刑事手続によるというような通達をしておられるとのことでありますが、その通りでありますか。
  10. 岡原昌男

    岡原政府委員 その通りでございます。
  11. 北川定務

    北川委員 講和発効後における駐留軍の立場はむろん占領中と異なりまして、特別の條約や協定のない限り、全部が日本裁判権に服するのではないかと思うのでありますが、法務府の見解についてさらに伺いたいと思います。
  12. 岡原昌男

    岡原政府委員 現在国連軍の性格がどのようであるかということにつきましては、若干の疑念はありますけれども、私どもといたしましては従来の国際公法原則に従いまして、この裁判管轄権も定むべきもの考えまして、さような通達をいたした次第でございます。
  13. 北川定務

    北川委員 現在日本駐留しております連合軍イギリス、濠州、カナダニュージーランドであると思うのでありますが、そのほかにも駐留しておる連合軍がありましようか。またこれらの駐留しておる軍隊もしくは家族の数及び駐留しておる場所について條約局長に伺いたいと思います。
  14. 下田武三

    下田政府委員 日本におります国連軍国別の数につきましては、ただいまおつしやいました英連邦を含めて十六箇国ございます。フランス、ギリシヤ、トルコ、フイリピン、ただいまリストを持つておりませんが、一九五〇年七月七日の安保理事会の決議に応じまして、朝鮮における作戦行動参加しました国、そういう国は、休養のためあるいは移動の際日本に来ることがございまして、数は少うございますが、国としては、ただいまおつしやいました英連邦以外にも十二、三箇国あるわけでございます。しからばこれらの国連軍の数はどれほどあるかという点でございますが、目下国連軍との交渉におきまして、日本側は従来的確な数の通報に接しておらなかつたのでありますが、そういうことでは困るというので、的確な数の提示を求めておりますが、まだ先方から提出して参りません。従いまして推測以外のことはできない次第でございます。
  15. 北川定務

    北川委員 これらの国連軍平和條約第六條によりまして、講和発効後すみやかに本国に撤退することに相なつております。少くとも九十日以内に本国に撤退することに相なつておるはずであります。しかるに今なおわが国駐留しておるのは、いかなる條約もしくは国際慣例によるものであるかを伺いたいと思います。
  16. 下田武三

    下田政府委員 国連軍日本におります法律的根拠につきましては、まず第一に平和條約の第五條で、日本国際連合の活動にあらゆる便宜を供與するという義務を負つております。次に安全保障條約と同時に交換されました吉田総理大臣アチソン国務長官の間の公文におきまして、日本朝鮮における国際連合行動参加する軍隊に対し、日本内においては日本近傍において連合国側が支持をなすことを許容し、かつこれを容易にしてやるということを申しております。この二つが今日国連軍日本におります法律的根拠、そういうように考えております。
  17. 北川定務

    北川委員 国連軍日本駐留している目的は、朝鮮動乱に対応するためであるという説と、日本に対する共産勢力を防止するために駐留しておるという説があるようでありますが、外務省ではいかなるお考えでございましようか。
  18. 下田武三

    下田政府委員 日本に対する外部的勢力に起因する日本国内治安の問題は、これは国連軍の問題とは全然別個の問題でありまして、安全保障條約第一條の問題でございます。従いまして、いわゆる駐留軍というのは、英語ではセキユリテイ・フオースと言つておりますが、日本治安関係のあるのはこの駐留軍でございまして、国連軍の方は、政治的に見ますれば、なるほど一時国連軍釜山関頭に迫られましたときに、山口県その他で起りました不安を想起いたしましても、事実問題といたしましては、朝鮮で作戦しておる軍隊は、日本の安全に寄與はいたしておりますが、法律的にはこれは明確に日本の安全のための駐留軍とは区別すべきだと考えております。
  19. 北川定務

    北川委員 講和発効と同時に、これらの駐留軍日米間の行政協定のごとく、裁判管轄権等について特殊の約束がないのでありまして、先ほど検務局長が申されましたように、国際慣例によつて取扱つていると申されておるのでありまするが、はなはだその取扱いについて明確を欠いているようであります。たとえば講和発効後の五月四日に、カナダ兵三名が日本人に対して強盗を働いた。その事件カナダ裁判所が審判しておると聞いておるのでありますが、かように駐留軍との間に條約や協定がないために、法律上の紛淆を来し、社会治安を乱しておるという事実があるようでありますが、外務当局におかれましても、もとより御存じのことと思うのであります。これらにつきまして條約局長の、その取扱いに対する御意見を伺いたいと思います。
  20. 下田武三

    下田政府委員 先ほど検務局長のおつしやいました通り外国軍隊が存在する場合に、これに対する刑事裁判管轄権行使につきましては、一定の国際法上の原則並びに国際慣例がございます。ただ御指摘のように、ことに法務府がその当事者であられるのですが、非常に困難を感じておりますのは、その国際法原則あるいは国際慣例自体が、非常に不明確であるからでございます。私ども従来習つております国際法原則によりますると、たとえて申しますと、軍隊施設内の刑事事件、あるいは軍隊公務遂行中の刑事事件、あるいは軍隊の安全に関する刑事事件軍隊所属者の身体あるいは財産に対する事件、また被害者加害者とも軍隊所属者である事件、そういうのが軍隊側裁判管轄権があると認められておる事例であります。そういうように私ども国際法で勉強いたします際に学んで参つたのでありますが、最近の実例を見ますと、これは昔なかつたことでありますが、現実に敵対行為が行われておらないにもかかわらず、外国軍隊が長くよその国に駐留している。ヨーロツパでも、北大西洋條約に基きまして、長く駐留しておる。非常に変則的な事態が起きておりますことと、米国を主流とするのでありますが、軍隊所属者に対しては、属人主義と申しますか、その軍隊所属者である身分について軍律がついてまわる。その軍律というのは、特殊な軍事裁判だけでありませんで、普通刑法に規定されておりますような犯罪は、ことごとく軍律自体でも規定している。そういう広汎な内容の軍法を施行しまして、しかもその軍人が外国におります場合、その身分について裁判管轄権軍隊所属部の方に及ぶという考えが、非常に強くなつて参りまして、ヨーロッパにおきましても、英国英国におります米国軍隊裁判管轄権につきまして、アメリカ軍がそういう広汎な裁判管轄を行うことを認めているような次第でございます。従いまして、私どもが二十数年前に国際法の教科書で習いました通りのことを、今日そのまま国連軍の場合に押し通そうといたしましても、なかなか困難な点があるのでございます。目下行われております国連軍交渉を、一日も早く妥結いたしたいと存じますが、この協定が成立いたします間は、現実問題といたしまして、なかなか国連軍所属者に対する刑事裁判管轄権行使について困難が存することは、現在の国際法国際慣例が確立しておりません点から、あるいはやむを得ないと存ずるのであります。
  21. 北川定務

    北川委員 條約局長お話によりますれば、これらの駐留軍わが国との間に、協定が進められているとのことでありますが、この協定進歩状況について伺いたいと思います。また講和発効後、当然これらの国との間にはかような問題が惹起することは予想されておつたのでありますが、何ゆえに今日まで協定が遅れたかということの、御説明を願いたいと思います。
  22. 下田武三

    下田政府委員 下交渉下話は、講和発効前からつとに行つてつたのでございますが、双方の代表が一堂に会して行うという形の交渉は。七月三日でありましたか、七月の初旬に初めて第一回が行われまして、今日まで七回正式の会議法務府初め大蔵省その他の関係各省の方々の御参加を得まして、今日までやつておるのでありますが、そのほかに連日分科会と申しますか、技術委員会と申しますか、もう少し掘り下げました議論をいたしますための会議を、ほとんど連日やつております。できる限りの速度をもつて交渉を進めたいと思つておりますが、何分相手方のあることでありまして、しかも相手方が多数の国でありますために、なかなか日本側で一方的に希望するように進捗いたしませんのは遺憾に存じます。とにかく現在の交渉の段階は、連日議論しておるという状態でございますので、なるべく早く妥結いたしたいと存じております。
  23. 北川定務

    北川委員 これらの駐留軍との間の條約または協定は、日米間における行政協定とはその趣を異にしておると思うのであります。すなわち米国日本駐留いたしておりますのは、日本の安全を保持するためであると思うのでありますが、アメリカを除くその他の連合軍日本における駐留は、この目的と同様ではないと思うのであります。従いましてこれらの條約の内容について、ことに裁判権の問題につきましては、国会で、日米協定については、属人主義をとつておることについて、かなり非難もありましたし、また一般国民非難をいたしておるようであります。日本アメリカを除く駐留軍との間の裁判管轄権の問題につきましては、北大西洋條約と同様の趣旨において締結せられるのが相当ではないかと思うのでありますが、條約局長のこの点に関する御意見を伺いたいと思います。
  24. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの交渉で、問題の刑事裁判管轄権状況がどうなつておりますかということは、事交渉中に属しますので、申し上げる自由を有しないのでございます。ただいまお話の当然北大西洋條約の方式で行くべきだという御意見でございましたが、実は北大西洋参加国お互いに、フランス軍がベルギー、オランダにもおりますし、また英軍がフランスに来ておるというふうに、すべての国が軍隊を持ち、またその軍隊お互いに行きつもどりつしておる関係でございまして、多少軍備なきわが国軍備を有する連合国側と、地位の相対性がございません点が、やはり大きな差異でありますので、必ずしも北大西洋條約そのままの方式が当てはまるかどうかという点は、多少の区別をつけて考える必要があるかと存じます。
  25. 北川定務

    北川委員 日米協定について管轄権の問題が属人主義であるために、かなり大きな非難を受けておる事実に徴しまして、どうしても今回の協定北大西洋條約にのつとつて属地主義にしていただきたいという希望が、おそらく国民全般希望ではないかと思うのであります。どうかその線に沿うて御協定を願いたいと思うのであります。  さらに伺いたいのは、この條約もしくは協定は、国会の同意を得られるつもりであるか、それとも政府の権限だけで締結されるつもりであるか、その点を伺いたいと思います。
  26. 下田武三

    下田政府委員 もちろん国会承認を仰いでから発効するようになる協定と思います。
  27. 北川定務

    北川委員 協定もしくは條約が今日まで締結せられておらないために、駐留地における大きな社会不安を讓成している現状でありまして、一日もすみやかにこれらの協定が締結せられて、法的秩序が回復せられますことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  28. 大西正男

    大西(正)委員 関連して……。あとから参りましたので、あるいは質疑応答があつたかもわかりませんが、実は新聞紙をただいま所持しておりませんが、この二十日前後であつたと思います。神戸検察庁国連軍将兵二名を起訴しておる事件があるようでありまして、それに対して、外務省関係から神戸検事正に対して公訴を取下げてもらいたいというふうな交渉があつたやの新聞記事を私は見たのでありますが、そういう事実がありましようか、お伺いしたいと思います。
  29. 岡原昌男

    岡原政府委員 神戸裁判所強盗事件で二人の英国兵起訴せられておるのは事実でございます。この点に関して今お話のようなことがあつたということはまだ聞いておりません。
  30. 大西正男

    大西(正)委員 その新聞紙を私は切り抜いてありますが、きよう実はこういう問題とは知りませんでしたから、持つて来ておりませんが、大阪毎日か朝日かどちらかであります。まだお聞きになつておりませんでしたら、至急にお調べの上御答弁願いたいと思います。外務当局ではそういう事実はございませんでしようか。
  31. 下田武三

    下田政府委員 神戸英水兵事件は、実はただいま日英間で交渉中の問題でありまして、私ども当初の報告法務府の方からちようだいいたしまして、その後密接に検務局長並びに検務局長指揮丁におられる当局外務省連絡をとつております。ただ当初私どむの報告では、現地日本側官憲英国領事との間の連絡も悪かつたそうで、非常に意思の疏通を欠いておるように見受けられましたので、連絡係意味で一事務官現地外務省から派遣いたしております。しかしこれはいろいろ言葉の不通、習慣の相違等のために、誤解から事件が意外に大事にならないために、それを防ぐための連絡係行つた事務官でございまして、別にそれ以上の意味は持つていないと了解しております。
  32. 大西正男

    大西(正)委員 その事務官をおつかわしになつたのは、起訴後でございましようか、起訴前にそういう派遣をされたのでありましようか。
  33. 下田武三

    下田政府委員 たしか起訴後だと記憶しております。
  34. 大西正男

    大西(正)委員 そこで、その新聞紙によりますと、起訴後に外務省から派遣をされて役人が検察庁に来て、そうして公訴の取下げをしてもらいたいという交渉をした。ところが神戸検事正は断固としてこれをはねつけた、こういう事実が信頼すべき新聞紙に報道されておるのであります。そこで今のお話によりますと、起訴後に行かれたのでありますから、あるいはそういう事実があり得たのではないかという感じが私どもはいたすのであります。もしかりにそういうことがあるとすれば、何といいますか、話は大きいのでありますけれども、かつて大津事件のにおいを持つのでありまして、はなはだ遺憾にたえない事案だと、かように思うのであります。これはひとつ法務当局におかれましても十分御調査の上で責任ある御回答を願いたいと思います。
  35. 加藤充

    加藤(充)委員 今の二委員質疑に関連して二点ほど質問いたしますが、先ほど裁判管轄の問題については国際慣例がない、もしくは不明確だ、困つておるのだというようなことが言われた。しかもそれには戦時中のヨーロツパ諸国と、それからアメリとのいろいろな軍事協定まがいの條約協定などに基いた事例があるので扱いにくい、こう言われたのですが、私はそれであるならば、国際慣例がない、もしくはあつて日本の具体的な場合に適用するものとして不明確であるということであるならば、どうして先般締結された日米講和條約等に基いた、いわゆる講和條約の規定の通りにやらないのか。困つたということはわかるけれども、それでは條約の明文というようなものが死んでしまうと思う。この点が一つ。  それからいろいろ折衝しておりまして急にまとまらないのが遺憾である。とりわけ七月二十六日あたりまでにまとまらなかつたことはきわめて遺憾である。こう言うのですが、それではまとまらないのであるのに、ずるずるべつたりということになれば、これは言葉がきわめて世俗的な言葉になりますが、日本としては時をかせがれてしまつているのであります。最初にお尋ねした点に関連して、毅然たる態度というようなものがないために、国民はえらい迷惑をこうなつていると思う。この点をまずまつ先にお尋ねしたい。  ついでに第二点としましては、先ほど大西委員がお尋ねした神戸地方裁判所に係属中のイギリス関係水兵刑事事件について、外務省事務官派遣された。ところがその理由が、大事になると困る、あるいは大事になることを配慮して事務官派遣されたというのであるが、どういう点で大事になるというのか。大事になるという根拠、判断の基礎を伺わなければ御説明にならないと思うのであります。以上の二点を明確に御答弁願いたい。
  36. 下田武三

    下田政府委員 第一つ国際法並びに国際慣例が不明確であるならば、よろしくわが方の見解によつて処理すべきではないかという御説でありますが、この点私ども考えでは、国際法でいわゆる純然たる国内事項渉外事項という二つのカテゴリーがございますが、普通一般外国人日本法令の完全な適用を受けること、また日本裁判所の完全な管轄権にあることを承知の上で来ておるのであります。従いまして一般外国人に対して完全に日本側日本法令を適用し、日本側裁判管轄権行使するのは、完全なる国内問題でございます。国際法上で渉外事項と申しますのは、軍隊あるいは外交官でございますとか、一国の威厳なり栄誉を代表してそれぞれの特殊の使命を持つて外国に存在するもの、これの取扱い自体がすでに渉外問題であります。私、軍隊所属員として外国におりましたことはございませんが、外交官といたしまして、モスコー戦時中足かけ三年行つておりました。大使館で雇つております日本人運転手、これは外交官リストにも載らない、国際法上は特権を認められていないものでございますが、この運転手大使館外モスコー市内事件を起しましたことがありますが、外交官特権を有せざるにもかかわらず、かつ大使館構内でない一般市内でありましたにもかかわらず、ソ連当局はこれの取締りについて御異存はないかということを聞いて来ております。それはなぜかと申しますと、とりもなおさず大使館所属員取扱いは、ソ連国内問題としてソ連側の一方的取扱いを許さないものであるとソ連当局が認めたからにほかならないのであります。この意味におきまして、神戸における英水兵事件も、これも軍艦乗組員でありまして、日本側純然たる国内問題として一方的に処理することはできないものだと思うのであります。なぜこれが大事——大事と申しましたことはあるいは不適当かもしれませんが、当該軍艦は、終戦後初めての親善訪問神戸港にしに参りまして、知事市長艦長が招待し、これに対しまして、日本側知事市長艦長以下の高級士官を招待し返した。終戦後初めての親善訪問で非常にうまく行にておつたのでありますが、遺憾ながらその乗組員が酔つぱらいまして、自動車の運転手の首を締め、持つていた金をとるという事件を起しました。先方もせつかくの親善訪問が台なしになつたといつて非常に嘆いておるのでありますが、先方の主張は協定ができるまでは先方の考え、つまり軍隊所属員は、第一義的に軍隊所属国で裁判するのであるという主張を持つておるのであります。日本は必ずしもその主張を受入れるわけには行きませんが、とにかく先方がそういう主張をしておるという事実から、この問題は国際法上のいわゆる渉外事項になるわけであります。従いまして外務省が一事務官派遣しましたのも、この国際法上の渉外事項であるからでありまして、従つてせつかくの親善訪問の趣意を全うして、なるべく円満に解決してやろうという微意から出たのにすぎないのであります。さようでございまするから、決して司法権に干渉しようとか、あるいは政治的にこの事件を取扱おうとかいう考えではなくて、ごく事務的に穏便にはかろうという意味連絡係は参つたのでありまするから、さよう御承知願いたいと思います。
  37. 加藤充

    加藤(充)委員 親善はけつこうだが、親善や安全保障の押しつけは迷惑しごくであります。大西委員が言われたように、渉外関係にもせよ起訴された問題以後になつてそういうふうなことになると、私は今の渉外事項だというような説明だけでは済まされない問題が残るのですが、これはあとからの問敦にいたします。ただもう一つ、ついでだからお尋ねしますが、今ソ同盟にあなたが行かれた当時のことを言われたが、そのときは、いろいろ條約ないし協定、申合せ等によつて、あなたがソ同盟におるということは法的な根拠があつた。今の場合、私ども問題にしているのは、法的根拠が明確でない、押しかけ女房みたいなものじやないか、こういうことが言われる。そしていわゆる押しかけ女房みたいに来ている連中が犯罪を犯したり何かしたりしたときにどうするかということで、裁判管轄権の問題があつたのでありまして、あなたの御説明では、前提がまだ明確にされていない。何でもかんでも、こつちの都合が悪くても、承知なしに外国軍隊がやつて来る。そうしかつてなことをして犯罪を犯すというような場合と、一定の話合いに基いて外国軍隊外国駐留する場合のいろいろな犯罪とは、いろいろ国際慣例上も、外国の国家を代表する云々とか、威厳の云々とかいうようなことで問題になる余地がございましようが、そういうのは明らかにカテゴリーが別だと思うのです。その点ひとつ承りたい。  それからもう一つ、これは国連軍としてであるのか占領軍としてであるのか、イギリスその他の——あなたの言葉で言えばほか十四、五箇国の外国軍隊の性格の問題に関連してであります。呉地区においては、英連邦軍が放送をやつていると私どもは聞いておるのでありまするが、それは占領軍として放送をやり続けて来たのだろうと私は思うのですが、今になつてみて、占領軍がなくなつたということになれば、国連軍にもせよ何にもせよ、一般的な日本国内における外国の放送というものは、放送に関する日本の法制によつては、それを適法化せしめる根拠は私はないと思うのであります。ここまで具体的な問題において、呉あたりに現実におる英連邦軍というものは、国連軍なのか、あるいは占領軍なのか、そういう点を今の問題と関連して明確にお答え願いたいと思います。
  38. 下田武三

    下田政府委員 第一点の、先ほどのモスクワの例でありますが、当時日ソ間には、外交官特権に関して何らの條約も協定もございませんので、両国官憲とも自国にある相手方外交官、領事館の取扱いは、両国官憲の解するところの国際法原則一般慣例に従つてつたのでありまして、その点におきまして、今の英水兵事件と同様の建前にあつたわけであります。なお何らの協定なくして呉地区に存在する英連邦軍というお言葉がございましたが、先ほど申し上げましたように、平和條約第五條並びに吉田・アチソン交換公文によつて、先方としては根拠をもつて日本に存在しておる、そういう建前でおるわけであります。政府といたしましても、根拠なくして日本国内にかつてに存在する軍隊とは決して考えておりません。  なお放送の点でございまするが、これは私事実をつまびらかにいたしませんが、軍隊の存在します以上、無線施設を使いまして短波放送を行うことは、通常認められておることでありまして、これも別に意とするに介しないのではないかと思います。
  39. 加藤充

    加藤(充)委員 いや、それはどつちでやつているのかということで、どつちかでやつているのだろう、外国軍隊駐留する限りにおいては、いわゆる放送もかつてだと認めねばならぬというのですが、今までやつて来たのは、少くともそれは占領軍として法的な解釈をやつて来たのだろうと思うのですが、それでは今度は占領軍ではなくして、国連軍として、この放送をやつてるものだというような切りかえをあなたの方でやつたのですか。
  40. 下田武三

    下田政府委員 英連邦軍は、実は平和條約の規定によりますと、七月二十六日までは、平和発効後九十日間はわれわれは占領軍だと言い得た地位にあつたわけでありまするが、講和発効と同時に、自発的にもう占領軍とは先方の方から考えなくなりまして、安保理事会の決議に基いて、朝鮮の国連作戦に参加しておる国連軍、そういうように向うの方から、講和発効と同時に頭の切りかえをやつておりまして、従いまして七月二十六日前から、もうすでに占領軍というものはなくなつたとお考えになつていいと思うのであります。
  41. 加藤充

    加藤(充)委員 どうも桂馬のふんどしみたいで、こつちでかからなければあつちでかかるというようなことで、非常に不明確で不愉快ですが、講和條約の第六條に基いて、占領期間中に提供した諸施設というものは、講和発効後九十日以内に必ず明け渡すというようなことにもなつておると思うのでありまるが、こういう点もずるずるべつたりに、相かわらずそれが引続き提供されて使用されておるというようなことのけじめがつかない、これは一体どういうものなのか。それを桂馬のふんどしにならないような説明を承りたい。
  42. 下田武三

    下田政府委員 先ほども申しましたように、吉田・アチソン交換公文におきまして、朝鮮における国連の行動参加する軍隊が、日本内及び日本近傍において、その軍隊の支持——英語でサポートと申しております。サポートをなすことを日本は許容し、かつこれを容易にしてやるという義務を明確に負つておるのでございます。従いましてサポートということでありますと非常に範囲が広うございまして、無線通信を行うこともサポートの一つでございましようし、傷病兵の療治のために日本に送つて来て、日本の病院に入るということもサポートの一つでございましよう。従いまして、この朝鮮で作戦を行つております軍隊のサポートのために、必要な施設は提供する義務を、すでに吉田・アチソン交換公文によつてつておる次第でございます。
  43. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 ちよつと加藤君に御注意申し上げますが、関連質問はなるべく簡單にしていただきまして、あとの質問通告がございますから……。
  44. 加藤充

    加藤(充)委員 一点だけで……。たいへん長くなつて恐縮に存じますが、そうするとあなたの御答弁によりますれば、吉田首相の交換公文とやらによれば、協定というものはやつた方がましだけれども、明確にすべき点は明確にしておく必要があるということであるが、そういう意味協定の締結というものは、必要というよりも意味があると思うけれども、交換公文がある以上は、協定というものがなくてもしかたがない。絶対必要というわけには参らぬ、こういう性格のものだというふうに、どうも御説明、御答弁が聞えるのであります。何せ吉田首相の交換公文があるのだ。それにはサポートという広範な意味言葉が規定されている。そういうような論法だと、いわゆる国連軍との、あるいは一般的に言つて米国軍隊関係以外の駐留軍軍隊との間のこの平和保障に関する協定というものは必ずしも必要はない、こういうふうに聞き届けなければならなくなりますが、そうなると吉田首相の交換公文とやらはどえらいものになつてしまう。もう手も足も出ない、息もつけないようなものにならざるを得ない。とんでもないことだと思うのですが、その点を最後にひとつ明確にしておきたいと思う。
  45. 下田武三

    下田政府委員 吉田・アチソン交換公文は包括的な表現で、ただいま御指摘のように、先方がむちやを言い出しましたら、非常に大きな要求が来るかもしれません。しかしながら協定が必要とする理由は、早い話が刑事裁判管轄権の問題にいたしましても、協定でこまかく規定いたしますれば、おのずから日本側裁判管轄権の範囲も明確になります。もしこれがありませんと、先方がそれは国際法上の渉外事項だといつて日本側で自由にやることを許さない場合でも、協定で明確に線を画すれば、その線の以内のことは日本側がもつぱら自由にその協定の規定に従つて裁判管轄権行使できる、そういうふうに非常に便利になつて参ります。従いまして、協定を結んでも結ばなくても同じだということはないのでありまして、必要を非常に痛感しておるわけであります。
  46. 加藤充

    加藤(充)委員 最後に一点ですが、英連邦軍あたりでむちやを言わなかつたら、吉田首相の交換公文によるいわゆるサポートという趣旨で波瀾なしに円満に行けるのだということで、むちやをされるようなことがあつては困るし、むちやをやられても、サポートという一札をとられている限りはどうにもならぬから、やはり具体的な協定が必要なんだ、こう言われるのですが、その点は一応わかりますが、それでは最後に渉外事項だ、何だかんだと言つて協定もないのに、英関係の水兵の醉つぱらいにもせよ、親善関係に押しかけたにもせよ、町で犯罪を起した者を、おれの方にまわせといつて、新聞に報道されているように、とやかくのしりを持ちかけて来るということは、サポートという言葉を中心にした英連邦関係のむちやだというふうにお考えになりますか。
  47. 下田武三

    下田政府委員 先方の言い分としましては、軍艦の乗組員なんかが押えられますと、軍艦自体の行動にも支障を来すという、軍隊のエフエクテイヴと申しますか、そういうようなことを申しておるような事実でございまして、先方はやはり日本側がどういう態度に出るかわからぬという点に不安を感じておりますし、こちらとしても範囲が明確に線が引かれませんとやはり不安でありますので、特に政府当局といたしましては、日常の取扱いにこまかい基準がございませんことには非常にむずかしくなるのであります。その点で協定が締結される必要性は十分あると存じております。     —————————————
  48. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 次に、検察行政及び国内治安に関する調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。世耕弘一君。
  49. 世耕弘一

    世耕委員 国際関係について私も関連して二、三お聞きしたいのですが、ただいま條約局長から国際公法に関する御説明がありましたので拝聴いたしましたが、また北川委員から、属地主義並びに属人主義についての見解も明らかにしたようであります。私は別な観点から属地主義でも、あるいは属人主義でも、相手が上品な相手なら、どつちでもよい。相手が下品なものならばここに問題が発生して来る、こういうふうに考えたい。国際法を解釈する場合でも、この見解をとることが一番必要ではないか。その意味において、ただいま局長さんからお話なつ軍隊の素質について、少額の金額のどろぼうをする、窃盗を働く、あるいは泥酔して乱暴を働く、強盗強姦をやる、かようなことは、訓練を受けた軍隊のあり方かどうかということをわれわれは疑うのです。尊敬すべき軍隊か。尊敬すべき軍隊ならば、国際公法上大いに尊敬してわれわれは折衝に当らなくちやならぬけれども、相手がどろぼうの常習犯であり、下等な、訓練を受けない軍隊であるとするならば、相当の報復的手段をとつて、しかるべき外交交渉をするのが順序でないか、私はかように考える。これは出過ぎたかもしらぬが、こういう点について條約局長はどういうふうにお考えになつているか。今手元にあるその資料をひもといて見ますと、特に英連邦軍隊カナダから来たもの、濠州から来たものがほとんど大部分であります。これを見まして露骨に批評いたしますと、これは軍隊じやあるまい。少くとも訓練ある軍隊であれば、かくのごとき犯罪を二箇月八十八件も発生するということはあり得ないことじやないか、しかもなお国際公法にうたわれた正式の権利をもつてわれわれが尊重して交渉する必要があるかどうか、これは交渉の焦点じやないか。  もう一つは、これは裁判所側にも、あるいは検察側にも私は要求しておきたいと思うが、かくのごとき犯罪を上長のものは承知しているかどうか。できれば、かような犯罪を発生している実情を、外交交渉本国政府なり、あるいは最高司令官なりに通達して反省を求めるということも、友好関係を結ぶ上において緊要なことでないか、私はかように考えるのであるが、その点についての御見解と、さようなことが今後なお繰返されるようなことがあつたら、親善であるべき駐留軍がかえつて両国の国民感情を阻害して、親善であるべき結果が逆な効果を来し、ここに大きな外交親善の害をなすものである、かような見地から、私は真剣な、公平な態度で批判し、これを相手方通達して反省を求めると同時に、特にかような事件に対しては日本裁判権を確立するように要求する機会をつかむことが必要じやないか、この点に関しまして外務省及び検察、司法関係の御答弁が願いたいと思います。
  50. 下田武三

    下田政府委員 呉地区におきまして英濠軍関係犯罪の多いのは事実でございまして、まことに私ども遺憾に思つておりますが、ただこれをならず者の軍隊というふうに見ますのもまた酷でありまして、御承知のように、呉は濠州、ニュージーランド、マレー、シンガポール方面から参ります英連邦軍の出入り口になつておりますし、また帰る場合にはここから出て参りますので、非常に入れかわり立ちかわり参りまして、延人員にいたしますと非常な数になるわけでおります。また港でございますから、どうしても慮安のための遊興施設もございますので、ために醉つぱらつて事件を起すというような傾向も、よそよりも多くなりがちと思います。もとより私ども外務省の人間といたしましてこれを傍観しているわけではないのでありまして、再三にわたり事実をあげて先方の反省を促し、また先方におきましても最高司令官が再三嚴重なる布告を隊内に発しまして、麾下将兵を戒めておるのであります。現に行つております交渉中におきましても、犯罪の多い事実は忌憚なく数字をあげて先方に遠慮せずに実情をぶつつけております。なお初めにおつしやいました属人主義でも属地主義でもいいではないかという点でございますが、属人主義属地主義という言葉は必ずしも正確な言葉でございませんので、属地主義と普通いわれますと、日本が中国に持つておりましたようなある地域を限つての租借地でありますとか、専管居留地、またアメリカがフイリツピンで持つておりますような基地、その基地の近傍にわたつての治外法権——必ずしも属地主義がいいとはいえないと思うのであります。従いまして仰せのごとく属人主義属地主義のいい点をとりましてわが方になるべく都合のいい協定交渉に持つて参りたい、そういうふうに考えております。
  51. 岡原昌男

    岡原政府委員 検察庁におきましては、現地の警察並びに現地の軍当局と密接な連絡をとりまして、先般も事犯の防止並びに検挙についての打合せをしたという報告が参つております。それでこの種事犯の絶滅を期しておるのでありますが、何分にも今申したような事情でやはり若干の犯罪は免れないようでございました。われわれといたしましては先ほども申し上げました通り、一応現行犯その他を逮捕いたしまして、事犯の内容いかんによりまして処理しておるのでございます。ただいまのところ非常に重大で、つまり神戸起訴しました案件のように、確証を得てあがつたというふうなものがございませんので、呉地区においては起訴をいたした件はありませんけれども、方針といたしましては同様に取扱つておるわけでございます。
  52. 世耕弘一

    世耕委員 なお二点ばかり條約局長関係りにお尋ねいたしますが、富士銀行事件、いわゆるギヤング事件の裁判がございました。あれはフランスの兵隊も入つておつたようでありますが、在廷証人として申請後またどこかに行つてしまつた、新聞の報道によると仏印の方へ渡つてしまつたということですが、渡るときに外務省に何か交渉があつてつたのか、あるいは本国でどういう処罰を受ける手続になるのか、そういう情報関係が入手されたか、あるいはなおそういう点についてどういう処置をとろうと考えておられるか、これは外務省と裁判当局にお尋ねいたしたい。  なおもう一つ、先ほど條約局長からのお話では、再三注意を喚起しておいたということはけつこうでありますが、注意を喚起してもなお改まらないような結果が犯罪件数によつて了承できるのであります。さような場合には報復手段ということが外交手段の中でできるはずであります。さような点において報復手段というような勇気のある処置をとつたことがこれまであるかどうか、こういうような事例があればお示しを願いたい。
  53. 下田武三

    下田政府委員 フランス兵の富士銀行ギャング事件は、講和発効前の占領継続中の事件でございますが、外務省は直接この事件には関係いたしませんでした。従いましてその後どうなつたかにつきましても通報を受けておりませんが、占領後の現在といたしまして、フランスは目下日本軍事裁判所を持つておりません。軍事裁判所を持つていない国の兵士の取扱いにつきましても、ただいまの交渉で問題といたしまして、富士銀行事件のようなことが発生しないように、犯人がどこへ行つてどこへ消えたのかというような事態が発生しないように協定を結びたいと思つております。  第二の報復措置のことでありますが、報復措置等ということは私は考えるべきではないと存じます。ヨーロツパからはるばるそれぞれの国が高い船賃を出してあるいは飛行機賃を出して——現に私オランダから先ほど帰つて参りましたが、飛行機の大半の乗客はオランダの兵隊でございます。朝鮮におりますオランダ兵と交代のために、オランダ本国から、地球の反対からオランダ政府が高い飛行機賃を佛つて派遣しておるのであります。私は同じ飛行場から立ちまして、見ておりますが、お母さんは涙を出して泣いておるのであります。これを相手の立場になつて考えてやるということが必要だと私ども思うのであります。かりに日本の若人が地球の反対側のオランダあるいはベルギーの安全に一番大きく寄與するようなところで死んで行ゆつつあるという立場になつたことを考えますと——現在彼らの目から見ますと、この朝鮮作戦で一番大きな利益を得ておるのは日本だということは輿論のひとしく認めておるところであります。従いましてこれは日本の立場からいたしまして、その所属軍隊の一部にならず者がおつたというために軽々に報復ということは考えるべきでないと私どもつております。
  54. 世耕弘一

    世耕委員 あなたのその気持は私もよくわかるのです。遠いところへわざわざ来てくれれわれを守る仕事の大半をその人たちがやつてくださるというその行為は、あなたのおつしやる通り、私も深く感謝し敬意を拂う、しかし友好と国家の権威を保つということとを混同してはいかぬ、その点をあなたは明確を欠いておるのじやないかと思う。この点の見解を明らかにする必要がある、お礼はお礼、感謝は感謝、けれども感謝のために屈辱をみずから忍ばなければならぬということは国際公法上から考えてもないでしよう、外交の上から見てもないと私は思う。言うべきことは言い、行うべきことは行い、感謝すべきことは感謝するというふうに明確な線があつてしかるべきです。日本人はややもするとおべつかを使う、おべつかを使うことが感謝のような感じに誤解される、あなたも外国に長くおられた、私も少しは外国で遊んだ、外国人の心理状態はどういうものであるかぐらいのことは了承いたしますが、権利と義務と同時に儀礼だけは私は明確にする必要があると思う。そういうような見解で外交をなさると、日本人というものは案外つまらぬやつだといつてむしろ侮辱的な考えを向うに持たれるのじやないかとかように私は考える。私はあえて相手方に報復手段を奨励するものではございません、言うてもきかなけば一発食らわせる、そうすれば反省するだろう、それはいわゆる好意の鉄槌である、これくらいのことはやつてよい。あなたは先ほど軍隊がないからどうもいかぬ、日本の外交はこれまで軍隊の背景でやつておつた、そういう形勢があつた、だから今軍隊がないからさびしかろう、こういう皮肉も言えるわけであります。私たちもそれについて痛切に感ずるが、軍隊のない場合の外交ということもまたここに味のある外交ができるだろう、それは外交官の腹、度胸だ。正義感だ。かくのごとき踏みつけた外人の行為に対しては断固として人権を守り、日本人の威儀を尊重せしむるということが私は必要だ、かように考えるのであります。なおこれはあげ足をとるわけじやございませんが、あなたは軍隊が必要だと言われるなら、再軍備に御賛成でございましようか。あつた方がいいというふうにどうも私は見える。私は再軍備に賛成ですよ。どうもあなたのおつしやるのはそういうところへ落ちそうですから……。  お帰りになるのをお急ぎになるようですから、もう点だけ伺つておきます。権利義務に関する国際的な覚書交換というのは勢い期間が短くても、おのずから国家国民の権利義務に大きな影響を及ぼすのでありますから、これは非常に慎重を期さなくちやならぬと思う。それについて先ほどお話がありましたが、七月二十七日がちようど、九十日間でこのアチソン・吉田の覚書交換が終了すると思いますが、なおこれを継続なさる御意思がありますか。それとも何かの方法で打切りになさいますか。この点最後に御返答願つておきたいと思います。
  55. 下田武三

    下田政府委員 九十日間で終止いたしますのは占領が終止いたしますのでありまして、吉田・アチソンの交換公文は九十日の期間とは何ら関係なく続く効力を持つております。
  56. 世耕弘一

    世耕委員 先ほどの富士銀行のギヤングで本国へ逃げたという兵隊のことですが、情報をまだ得ていないということですが、先ほど加藤君の話により、あるいは大西君の話によると、今回の事件でこれは国際関係を刺激するから円満に行くようにというので、外務省から事務官を派して調査されたということはまことに時宜に適したことと思うのでありますが、例のこういうような事件で逃げたのもなるべく国際間に円満な処理のできるように御協力なさる御意思があるかどうか。やつてあげた方が司法関係、裁判関係は円滑に行つて、同時に日本の国威も発揚すると思いますが、その点はお考えいかがですか。
  57. 下田武三

    下田政府委員 外務省の中央から現地に裁判に関係のある事件で人を派するということは私はみだりにすべきことではないと思つております。ただなぜ派遣したかと申しますと、ここにおります英国大使が現地英国領事から受けた報告と、私どもが本部から受けております報告と非常に違うのであります。これは言葉関係もございましようが、事柄の真相を外務省としてつかみ得ませんので、連絡がかりの意味において派遣いたしましたので、これはあくまで例外でありまして、これは外務省といたしましてもみだりにすべきことではないと思つております。
  58. 世耕弘一

    世耕委員 もう一つ今思い出しましたから申しますが、先ほど北川君のお話の中で、最近外交交渉をやつているが、その交渉内容は今のところ発表できぬ、こういうようなことをおつしやつたが、これは私はやつぱり非民主的の秘密外交であつて、中間報告的なものを少くとも国民なり議会に私はすべきだと思う。そのうちの何割かは特に外交交渉の進行上に支障を来すということはあり得ることだと思いますが、平和を基礎にして今日交渉しているときに、国民報告もできないような外交交渉は私は今日の時代ないだろうと思う。その点はあなたのお考えを改める必要があるのじやないか。全貌を明示されなくても、実はこういう経過になつている、こういうふうに至つている、あるいは相手側はがんこで文句を言うて一向に応じないとか、あるいは非常に協調的態度で平和的に進行している、くらいのことはにおわしたつて私はかまわぬと思う。ただただいま折衝中でありますから一切報告相ならぬということはあなたにも似合わぬ。あなたは最近ヨーロツパから帰つて来られて非常に非民主的だとはなはだ遺憾に思う。明晰なあなたの頭でこれはちよつ改めていただたいと思うが、最後にお考えだけ言つお帰りください。
  59. 下田武三

    下田政府委員 私が申し上げられませんと申したのは、実は先ほど問題になりました刑事裁判管轄権に関する現在の案の内容について申し上げましたので、これは当然双方にそれぞれ原案がございまして、おちつくところは双方とも原案よりは讓歩したところにおちつくわけでございますが、交渉の途中にその案をばらしますことは、相手国に対する信義の問題といたしまして許しませんので、ただお話のようにごもつともでございますが、交渉の模様は先ほど申し上げましたような回数また手続でやつておりまするが、大体日本におります軍隊に関して起る問題は、日米行政協定の問題と同じような問題でございまして、従つて今までの会議では問題を何と申しますかざるでふるい落しまして、簡單にざるの穴から落ちるものどんどん落しまして、ざるの穴を通りにくい大きな問題だけを拾い集めまして、それを目下専門委員会で検討しておりますが、大体のふるいわけは一通り済んだ状況にございます。今最も困難な事項につきまして掘り下げた議論をいたしている状況でございます。
  60. 大西正男

    大西(正)委員 今の問題に関連をいたしまして、国連軍との協定ができるまで、たとえばただいまおつしやいました渉外事項などという問題についても協定ができることによつて明確になる、従つて非常にやりよくなる、ごもつともなお話でございますが、その協定ができるまでの政府の方針といいますか、政府は一体どういう方針で国連軍将兵犯罪に対しては臨んでおられるか。方針があるのか、ないのか、これをお聞きしたいと思います。
  61. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほど北川さんからお話のございました通り、私ども関係としましては国連軍の将兵に対する関係においては行政協定のような明確な線が出ておりません。従いまして、一般国際公法原則に従つて処理するほか方法がないというようなことからいたしまして、国際公法上ほぼ明確な線についてはもちろん現地にも指示してございますけれども、実際問題が起きた場合にはやはり具体的にいろいろ問題が起り得るのであります。従つてその都度報告を受けて外務省当局とも連絡いたして処理する、かような方法をとつております。
  62. 大西正男

    大西(正)委員 それで今の神戸の問題でありますが、神戸の問題については法務当局一般的な方針をあらかじめ現地に指示してやつて、その指示に基いて現地がやつたものか。あるいはまた具体的事件報告があつて、その報告に基いて神戸の具体的事件もかように処理せよというあらためての具体的指示があつてなさつたものかどうか。
  63. 岡原昌男

    岡原政府委員 神戸事件につきましては当時現地の方から連絡、電信が参りまして、事態急を要する。事案きわめて明瞭である。それから現地の領事に——領事というふうに報告を受けましたが、あとで詳細に調べましたら副領事でございましたが、連絡がありまして、もし身柄をこちらへもらえるならば英国側で裁判をしたいが、もらえなければやむを得ないということで、現地で話合いがついたというような状況のもとに起訴したのでございます。
  64. 大西正男

    大西(正)委員 その点について條約局長お話では、英国側から入手した情報と法務府から入手した情報とでは非常に違つておる、ただいまこういう御答弁であつたように思いますが、それに関して、どういうように違つてつたのでしようか。そしてまたこういう事件については外務当局としてはどういう方針で臨むべきだとお考えになつておるか、それをひとつ
  65. 下田武三

    下田政府委員 ただいま検務局長からお話がありましたように、最初の報告は、現地ですでに英国領事館側と話ができて起訴したということで、私ども当然のことと思つております。その後こまかいところで、英国大使館側が誤つた報告を受けておるのではないかという節が見えましたので、真相を現地で見るために事務官派遣したのであります。今後の方針といたしましては、私ども事件が起りましたら法務府と密接な連絡をいたしまして、足並をそろえて対外的に処理して行きたい、そう存ずるわけであります。
  66. 大西正男

    大西(正)委員 そこで今後の問題としてこういう場合は、国際法上いろいろ議論はございましようが、日本政府としてはどういう御意見を持つておられるか、どういう説に従つてやろうとなさるのでありましようか、それをひとつ
  67. 下田武三

    下田政府委員 政府としてという立場には私ございませんが、事務当局といたしましては先ほど岡原局長が言われましたように、大体国際法原則、慣例を基準といたしまして——ただ遺憾ながらそれが明確でないために、一律に処理し得ない場合には関係国と協議いたしまして処理して行きたい、そういうように考えております。
  68. 大西正男

    大西(正)委員 関係国と話合いをして処理するとおつしやいますけれども、立ちらに何らかの確固とした意見かあつて——先方はもちろん自国に有利なように取扱いをしようというのが当然のことでありますから、向うの意見ばかり聞いておれば問題はございませんが、こちらに確固たる意見があつて、そうしてその意見が衝突した場合に、どうなるかこうなるかの問題もございましようが、その場合にその前提として、事務当局としてはこういう場合には日本には裁判権があるのだという意見のもとに処理されるのか、そこはどうなつておるのか、日本側意見はあるのかないのか、それを伺いたい。
  69. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申し上げましたように、国際法原則では、先方の軍隊施設内の刑事事件軍隊の安全ある心は軍隊所属の財産に関する事件軍隊所属者の身体、生命あるいはその財産に関する罪、加害者、被害者ともに軍隊所属者である事件軍隊所属員公務遂行中に行われた事件というのは、いずれの国際法の本を見ましても、多数説は軍隊の所属国に管轄権があるというふうに書いてございます。それ以外の点は先ほど申し上げましたように非常に身分に重きを置きまして、軍人であればどこにあろうとも軍隊所属国が管轄するという主張もあるのでありますが、日本側といたしましては国際法の多数説が明確に認めるものだけはその方に管轄権があつてもしかたがないが、それ以外のものは当然所在地国の管轄権に従うべきだという主張をいたしておるのであります。これは現在の交渉でもそういう主張をいたしておるのであります。しからば現在の段階でその主張通り処理し得るかと申しますと、現在協定のない段階では、先ほど申しました国際法上の渉外事項の範疇に入つておる事件につきましては、日本は一方的な意見を押しつけられますので、従つて日本側見解はどうであろうと、明確な線が引かれるのは協定を待たなければできない、そう思つております。
  70. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 その点は佐藤法制意見長官に……。
  71. 大西正男

    大西(正)委員 あとでお聞きします。今例をあげました神戸事件神戸市内かどうか知りませんが、日本の国権の及ぶ範囲内において、そして公務の執行中でなしに酔つぱらつて日本人に対して暴行を働いたというのですから、もちろんこれは日本の国に裁判権があるのだと私ども考えております。だからそういう御方針のように伺いましたから私はその点は満足をいたしますが、しからば、そういう御方針ならばそういうことを行為の上に表わしていただかないと国民は非常に心配するのであります。国際間の問題であるから円満に解決しようというお気持はけつこうであります。しかしながら国連に協力するとかなんとかいうことにいたしましても、犯罪を認容するということがサポートの内容になるものではありませんから、そういう意味から申しまして国民の心配しておるこういろ事件については、日本の態度を明確に行為の上に表わしていただきたいのであります。従つてもし神戸事件新聞紙の報道しておるがごとくに、検察庁が一度起訴した問題を、外務当局が陰で取下げの交渉に当つたなどということが事実であるとすれば、まことに遺憾にたえないことだと思うのであります。こつちが明確な、しつかりした腰を持つて臨んでこそ初めて正しい協定もできるだろうと思うのであります。アメリカとの日米安全保障條約に基く行政協定は、人によると安政の條約よりもつとひどいと言つておりますが、それはともかくといたしまして、この日米安全保障條約に基く行政協定が、われわれ国民とうてい満足を買えないものであるということ、そしてまた世界に例のない、いわば屈辱的協定であるということは否定できないと思うのであります。そういう意味において今度の国連との協定内容がどうなるかということは、これは日本国民にとりまして非常な関心事であるといわなければなりません。そういう意味で、先ほど世耕委員が仰せられたように、それはお互いに礼節を盡さなければなりませんけれども、そうかといつて、おべつかをしてそうして犯罪を認容することまでサポートしなければならぬ、そんなことは、これはむしろ外国日本国民との親善関係がその点からくずれて行くおそれが多分にあると思うのであります。そういう意味で、もし神戸事件外務当局がそういう交渉をされたとするならば、われわれは外務当局国連軍との協定に対する腹構え、覚悟というものに対して非常な疑問と危惧を抱かざるを得ない。従つてこの点はひとつ政府において十分に腰をきめて、そうして確固とした意見を持つて、その意見のもとに相手国と交渉していただきたい、こういうことを特にお願いしておきたいと思います。  最後に神戸事件の具体的問題としまして、こういつた事案については佐藤長官は一体どういうふうに取扱うべきものだとお考えになつておりますか。
  72. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私ども考えておりまするところも、先ほど下田局長が、日本側の主張するところはかようかくかくのところを根本としておるということを申し存まして、われわれの理解する国際法原則というものによつて押し通して行きたいという気持はもとより同様であります。従いましてただいま神戸事件等における検察庁の態度と申しますか、そういうところにもそれが私は現われておるのであろうと存じますし、また一方、なかなかこの協定ができ上らないというのも、あるいはまたそこに一つの支障があるのだというふうに御観察いただけるものでないかというふうに思つておるわけであります。
  73. 大西正男

    大西(正)委員 そういうことをお尋ねしたのではないのでありまして、こういう事件は一体どう取扱うべきものであるか、協定のない間はどこに裁判権があるのだというふうにお考えでございましようか。
  74. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その点も先ほど條約局長が申しましたように、国際法原則ということを基本にせざるを得ない。そういうふうになりますと、下田君があげました例の多数説によつてさえも、どうしても派遣国側の裁判権に属する、多数説によつてもそうなつておるというものは、これはやむを得ませんけれども、それ以外のもので、当然受入国の方の裁判権に属するものというものがあるわけでありますから、そのものについては強力にその態度をもつて臨んで主張を続けて行きたいということであります。
  75. 大西正男

    大西(正)委員 神戸事件についてま……。
  76. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 実は私は検察の方の事件を具体的に存じませんけれども、どうも先ほど下田君が多数説をもつてする向う側の裁判権に属するというものでもないらしいので、純粋の、個人的の犯罪行為であるというふうに見受けられますから、これは今の検察庁とつた態度というものは正しい態度であろうと私は考えております。
  77. 加藤充

    加藤(充)委員 さつき問題になつたアチソン・吉田交換公文によるサポートという一札ですが、サポートするという一札をとられているということ、そういう文書に基いて国連軍に対する協力義務というものができたということになれば、さつき言つたように、特約ということがあつて国際法上の原則というようなことが、こういうような特約で除外されたということになるのか。原則に従つたものであつて原則を排除した意味合いでのいわゆるサポートという文字が使われたんじやないか、そういうような点はどうお考えになりますか。
  78. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ちようど下田君がお答え申し上げておりますときに私中座いたしておりまして、その終りがけにこつちへもどつて来たわけでありますが、サポートという言葉を、ただいま御懸念のように、それほど強くはわれわれは読んでおらないわけであります。その点は御心配ないのではないかと思います。
  79. 加藤充

    加藤(充)委員 だけれども、これは道義上の問題になるかも知らぬけれども、サポートという言葉でやつていれば、向うが言つて来てもそれはサポートではないかということになつて来ればいたし方がないような話を下田局長はやつておられる。しかしむちやはやるまいという信頼に立たなければしかたがないのである。だからやはり具体的な協定というものをとりきめまする必要がそのゆえにもあるのだというふうにお話を私どもつたのであります。実を言うと、さつき言つたような意味合いでサポートという特約があつたとするならば、協定というようなものはすでにもう必要がなくなつて来るのではないか。少くとも必要というのは、何といいますか、事実上の必要というのと法理法制上の必要というのとは別個になつて来て、法律上必要がない、事実上にはあつた方が便利だという必要性はあつても、少くとも相手方の立場に立てば具体的にそういうものをとりきめる必要がないのではないか、一札とつているのではないかという話をしたのでありますが、その点必ずしも明確な答弁が得られなかつたように私は聞いたのであります。そうすると、ここでお尋ねしておきますが、サポートするというのは、やはり国際法上の原理、原則あるいは慣行をも含めて、そういうものに従つた意味合いのサポートである、こういうふうに理解して、それ以上の意味合いでなんでもかんでも文句なしの——この言葉はおかしいのですが、まあ広い意味で、すべてがサポートではないかという押しつけはされないでも済むのである、協定意味合い、條約の意味合いというものはそういうものである、こういうふうに理解してもよろしゆうございますか。
  80. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまのお尋ねを翻訳してみますと、要点は、本来国際法上の原則で、たとえば外国軍隊にはこれこれの特権が認められておるということが一つありまして、それをこのサポートという字によつてさらに上まわつて、向うの言いなりほうだいの特典を自由にとらせる——それほどとは思いませんが、少くともそういう方向の御懸念だと存じますが、私どもは全然そんなことは考えていませんということを申し上げておきます。
  81. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると国際法上の原理、原則というものは、先ほどの刑事裁判管轄権の中に明らかに確立されている面だけをこちらが主張するというのに、何で外務省が——すでに裁判所がそういう紛争が巻き起つていることを一定の手続をとつた後に、特別な配慮をしなければならぬのか。事務官派遣というようなことは、それはやればやつただけ、無意味なことではないかもしれないが、そういう心配をなぜしなければならぬのか。それをあなたに聞くのは無理かもしれぬが、サポートという一札をとられている以上は、そこに何か外務当局は疑念を持つておるのではないか。
  82. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 サポートという言葉は非常にサポートされているように見えますが、私どもはそれほどサポートしておりません。先ほど條約局長が言われたように、国際法上の原則といつても、第一條、第二條というふうにあればそれがなくなるのでしようが、その條文がありませんから、やはりお互いの話合いが出て来るというのが真相であろうと思います。     —————————————
  83. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 では、検察行政及び国内治安に関する件について調査を行います。世耕弘一君。
  84. 世耕弘一

    世耕委員 私、治安関係について二、三点、簡單にお尋ねをいたしたいと思います。検務局長にお尋ねいたします。吹田市の騒擾事件数日前にこの騒擾計画があつて、すでに国警並びに自治警がその計画のあることを承知しながら、ずいぶん不手ぎわな結果になつた。私の手元にある資料を土台にして申し上げますると、かなり大仕掛な軍隊行動の指揮のもとに、列車襲撃を計画しておる。しかもその騒擾を防ぐために出動していた警察官が、しかも完全武装しながら、むしろ袋だたきにあつて、持つている鉄砲を取上げられた、こういう醜態を暴露しているのです。こんなに国警は弱いのか、自治警はだらしないのか、こういう国民の声が実は起つておる。もう警察頼むに足らず、これでは自警団を組織しなければならぬというふうになりつつあるのです。あなあなた方はこれについて、どういうふうな御観察と対策をお考えになつておるのか。聞くところによると、鉄道公安関係はかなり敏捷に活動して、大きな被害を未然に食いとめたということも聞いておる。もしそうだとするならば、国警はもつと本職の職域を発揮して、この事件を未然に防ぐことができたのではないか、どこに手落ちがあつたか、この点をこの際詳しく御説明が願いたいと思います。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 去る六月二十五日に起りました騒擾事件につきましては、ただいま御指摘のように、確かに警察側においては私は不手際があり、遺憾の点があり、反省すべき点が多かつたということを率直に申し上げなければならないと思うのであります。あの事件につきましては、六月二十日ごろ大阪府の国警本部が、朝鮮人約三千名ほどが、最初に集まりました池田市の待兼山に集合しまして、伊丹飛行場を襲撃するという情報を入手いたしておつたのであります。そういうことについて十分確度を確かめ、検討をするように努めておりたわけでありますが、たまたま六月二十一日に、これはたしか六月七日ごろと思いましたが、泉大津市におきまする旧朝連系と民団系との間の争いから暴行事犯がありまして、これの容疑者の逮捕に参りました際に、これを裏づけますようなビラを発見をいたして、ますますこの計画が事実確度の高いものであるというふうに考えまして、これに対する警備計画についても、現地において考究中であつたのであります。ところがこれは初め六月二十五日に集まるという情報であつたのでありますが、これが六月二十四日の午後八時から、反戰独立フアイヤー・ストームという名称で、朝鮮人また学生等が相当数参集して行われるということが、その開催地でありますところの大阪大学の北分校のグランドを使用したいという許可願いが提出されましたことから、はつきりいたしたわけであります。そこで現地の警察当局としましては——あそこは池田市の管内になつておりますが、その南に豊中市警があるわけです。これは自治体警察が二つ接続しておりますが、非常に豊中市に接近しました池田市の南端に、そのグランドがあるわけであります。そういうわけで、池田市並びに豊中市から、国警に対しても応援の要請がありまして、三者共同いたしまして検討しました結果、これに対する警備計画を一応立てたわけであります。それで豊中市の警察署を警備本部といたしまして、ここに待機部隊を置く、それから待兼山の状況を警邏巡視する部隊を派遣するというような状況をもつて、これに臨んだわけでありますが、その当時におきましては、これがあの騒擾事件にわたりますような吹田まで行軍しまして、あそこで事を起すというような点については、承知いたしておらなかつたわけであります。それで、伊丹の飛行場またはその近所にあります駐留軍の宿舎に対しての攻撃が行われるのではないかというような判断に基きまして、警備計画を立てたわけでありますが、当日六月二十四日の午後八時ころになりまして、朝鮮人、学生、それに若干自由労働者等が入つておつたようでありますが、これが三々五々集合して参りまして、午後十時ころには、約八百名ほどになつたということであります。それでこの集まつた者が——その前にちよつと関連いたしますので申し上げりておきますが、学校当局としましては、このグランドを許可しないという方針で、不許可にいたしたわけでありますが、ただ学校当局としては、あそこはよく子供や何か入つて来るので、学校は許可しないが、そこに集まる者を黙認するような態度で臨もう、こういうふうな学校側の気持であつたようであります。ところがその八百名の参集者が、大体二隊にわかれまして、一隊は会場のグランドにかがり火をたいて気勢をあげる、他の一隊は待兼山——これは小さな山でありますが、その山中の竹林で竹やりの製造をしておるというような模様が見えたのでありますが、その後十時二十分ころに、突然待兼山とその近所にあります下河原部落並びに金木部落という三箇所から一斉に打上げ花火が上つたということから、これはいよいよ何か事を起こすのじやないかということで、注意をしておつたのでありますが、駐留軍の方としては、自分の方は自分で武装して警戒するというようなことでありまして、一時この宿舎に向つて攻撃するような態勢をとりましたのでありますが、照明燈をこうこうと照すとか、あるいは警戒措置が十分とられているようなことを見て取つたせいか、この攻撃態勢をくずしたわけであります。この攻撃を中止しまして、大部分の者が待兼山から下りまして、阪急電車の石橋驛という所に行進を始めたわけであります。それでこれらの者が午前二時半ころに驛長と交渉をいたしまして、夜中に臨時電車を強引に出させておるわけであります。ところがそのときに視察をしておりました者の勧測では、ずいぶん一同疲れておる様子に見える、それで、もうわれわれは大阪に帰るのだから、大阪まで電車を出せ、こういう交渉をしておりましたので、そこで今御指摘のような、不用意にも、大阪に帰るのであろうというような観測をしたわけであります。それから一方におきまして、まだ若干残つておる部隊があるに違いない。これらが池田市または豊中市内において破壊行動を起すおそれがあるからということで、そこに待機しておつた部隊がこのために釘づけにされたというような事情もあつたように聞いておるわけであります。ところがこの電車に乗りました者が、途中おりたがつた学生などもあつたようですが、指揮者がこれをおろさないで、服部驛というところに来ましたときに、停車を命じて一斎にここに下車して吹田の方に向つたわけです。ところが一方若干の残つておつたと思われる部隊は、——これがむしろ私は精鋭部隊ではなかつたかと思いますが、これがその電車に乗らないで、夜間池田市からずつと東の方を通りまして、途中笹川氏のうちなどを破壊したりして、これが別路の山道を通りまして吹田操車場の方に向つて行きまして、ちようど時間のしめし合せがそこについておつたものとみえまして、電車で来た部隊も、途中豊津という巡査派出所に火炎びんを投擲するなどの暴行をいたしつつ操車場の方に向いまして、操車場の北の地点におきましてこれが合流したように見られるのであります。ところが電車に乗りました部隊はあまり竹やり等は持参しておらなかつた。ところがこの合流点からあそこに何とかいう神社があるのでありますが、その神社のところまで来ましたときに、ほとんど大部分の者が、竹やりとかこん棒とか持つておるというような状況にこちらがぶつかつたわけであります。先ほど御指摘のように、それは朝の六時前でございますが、その際に国警の管区学校の生徒と、それから一部応援の自治隊警察の部隊とがこれを阻止するために出動しておつたのでありますが、その際に十分な制御措置を講じ得なかつた。それで暴徒側が操車場に突入してしまつて、約五十分間操車場の中を貨車などを探してデモつておつたという状況であります。操車場ではそういう状況でありましたが、別段の破壊行為はいたしておりません。操車場を出まして、その出がけにあそこの産業道路で、新聞にも出ておりましたクラーク准将の車に火炎びん、硫酸びん等を投げて危害を與えております。そしてこの部隊は産業道路を通つて吹田の駅の方に向つた。それを先ほど申し上げました警備部隊があとから追尾するという形になつたのでありますが、その際に茨木市署からの応援隊を乗せた車が——これも反省すべき問題だと思いますが、その暴徒のわきを通り抜けて、早くその先頭よりも先に行つて、迎え撃つ態勢をとろうという意図であつたのではないかと思いますが、そのわきを通り抜けようとしたときに、暴徒側から火炎びんを投げられ、そこで二十六名だつたと思いますが、二十六名のうち十六名が負傷をし、十名が逃げて民家に入つたりなんかして難を免れたというような状況であつた。それでこれもまた先ほど申し上げました警備部隊が、うしろから追尾して行つて、これを迎え撃つこともできずに、とうとう吹田駅の構内に入つてしまつて、そこで若干の検挙者を見ておりますけれども、ちようどその時刻に下り列車が来たのを利用しまして、ほとんどこれに乗つてのがれた。そのほかにものがれる際に竹やりとか火炎びんを投げつけるというようなことをいたしたわけであります。その後これらが大阪駅に着きましたが、ちようど出勤時のラツシユ・アワーでありまして、なかなか見わけがつかないということで、それだけの数のうち、十数名程度を逮捕したにすぎなかつたわけであります。その後の捜査におきまして、七月二十八日現在で容疑者百十三名の逮捕を見ているわけであります。先ほどこれについての観測と対策はどうかという御質問でありましたが、概要はただいま申し上げた通りで、その中にも私ときどき申し上げましたように、警察側の措置として確かに遺憾な点があつた、十分なる情報を入手し得ずに、これに対する措置が機動的に十分とられ得なかつたということは、まことに遺憾に存じておるわけであります。御承知のように大阪府下は中小と申しますか、むしろ小自治体が多くて、自治体の間を縫つて国警の区域があるという状況でありまして、これももちろん警察法に示されるように国警、自警の応援要請もお互いにとり得るし、お互い連絡協調によつて十分日ごろの訓練とそのときの情勢判断に誤りなければ、たとい機構的にわかれておりましても一致した警備措置がとれるわけでありますが、一応そういう努力はいたしたものの十分なる指揮系統の統一とか、時宜に即する機敏な機動的警備措置というものがとり得なかつたという状況であります。これは制度上、もちろん機能的に考えまして考えなければならぬ点もあると思いますが、私どもとしましてはほかのところで、これほどの事案ではございませんが、これに類したような事態になり得る状況において、初動においてこれを制圧する、あるいははつきり暴徒と目されるようなものの集合を事前に阻止し得るような措置はとつておるところもたくさんあるのでありまして、非常に遺憾な例として御指摘を受けました点は、私どもまさにその通り考えまするが、この一事例によつて、こうした事案について警察はとうてい頼むに足りないということが起つて来る、これも無理もないことかと思いますが、私どもは決してそうは考えておりません。また装備等について機動的に警備要員を配置すべき自動車であるとか、あるいは通信を正確にいたしますまた機動的にいたしますための通信機器の整備であるとか、そういうようなものについては、これはまだまだ十分でないという点を考えますが、その他他人に傷害を與えるような武器というようなものについては、決して現在の程度のもので阻止し得ないものではないというふうに考えておるわけであります。むしろやり方の点について反省をし、訓練を積む場合においては、こうした事案については現有の警察力をもつてしても十分に対処し得るというふうに考えておりますが、先ほど御指摘の点と関連しまして、私どもとしましては、従来ややもすれば、警備というものが、むしろ対象が動かないものに対して、——暴徒と申しますか、取締りの対象に対して、どれだけの人数をどういう時間に繰り出して行つて、これを円満に事態を納めるというような訓練が、むしろ重きを置かれておつたわけであります。先般の吹田騒擾事件に見られましたように、夜間から翌朝にかけて、しかも非常に相手方が機動的に動くような暴徒に対しては、十分に機動的な警備、訓練というものをしなければならない。これはつとにそういうことを考えまして、国警はもちろん、自警との総合訓練等においても、そういうことに着意をいたして、実施をいたしておるわけであります。こういうことにつきましては、今後も十分に検討、研究をいたしまして、このような事案の今後起らないように対処いたしたいと思うのであります。  余談でございますが、去る七月十四日におきまする京都市の警備措置、これは非常に事前の措置が周到に参りましたために、相当計画があつたわけでありますが、これを未然に防止することができた。また大阪の扇町プールにおきまする集会等については、これはむしろ主催者の方において、デモなりあるいは暴力行為というものをしないようにという非常な注意をされたというようなことがあつたわけでありますが、この際も従来の例から申しまして、相当騒ぎを起す可能性があるということで、警備配置は十分にいたしたわけであります。その警備配置が十分であつたためか、またはその際に集まつた主催者が賢明だつたためか、あの際は非常な主催者側の注意によつて事なきを得たわけであります。私はこうした集会とか会合が、ただいま参議院で御審議をいただいておりますが、この前御審議を願いました集団示威運動等の秩序保持に関する法律の提案の趣旨からいたしましても、穏当な集会デモというようなものは、できるだけ自由にする。しかしながらこれが他人の生命、財産、自由というものに非常な影響、被害を及ぼすというようなものについては、十分にこれを取締ることができるように、また予防ができますように、心がけておるわけでありまして、この点は今後とも努めて参りたいと考えておるわけであります。
  86. 世耕弘一

    世耕委員 詳しく御説明願いまして感謝いたしますが、警察の不手ぎわが如実に暴露されているということを申し上げるよりしかたがないと思います。なおこの際お尋ねしておきたいのは、私の手元にある資料によりますと、暴徒が約一千人、それに出動した警官が六百七十人近く、かれこれ七百人、千人の暴徒に対して警察官が七百人出て、しかもこの不始末ということになれば、これは数の上からでも、国民から批判されるのじやないかと思う。しかも当日は武装していたはずです。ピストルをどうしたのか、何のために使うのか、これを自由に使用することができなかつたら、警察官自身の生命すらさらさなければならぬということになる。他人の生命を保護するというどころじやない。警察官自身の生命すら保護できぬというような結果になるのだから、むしろピストルをさような場合には大胆に公正に使用する訓練と心構えを、ふだんから、教えておく必要があるのじやないか。なおこの事件に関連して、警察官が直接傷害を受けた者が約四十人になつております。相当な事件であつたということは、この負傷状況から見てわかる。またそのけがの大部分は火炎びんによるやけどが中心であつたとするならば、火炎びんに対する対策が、当然出動の場合に考えられなければならぬ。ことに暴徒の横を通過するのに、火炎びんの飛ぶくらいのことは指揮者が心がけて、その用意をさせなければならぬはずである。この点がお祭り騒ぎのような気持の感が抜けないのではないか、真劍さが欠けているということが、国民から指摘されても、いたし方がないのじやないか。  もう一つは、国警、自治警の指揮系統が明確を欠いておりはせぬか。この点がかえつて事態を大きく発展せしめたのではないか、かように考えるのであります。  なお当日大阪の警察本部からも出動しておつたようでありますが、事件が約一時間近くもみ合つたようでありまして、ラヂオ・カーの活動もなくてはならぬと思いますが、何台活動して、どういう情報を本部と連絡をしたかどうか。どうも最近の警察は機動部隊の活動が非常は緩慢である。せつかくの科学兵器が無用に帰してしまうではないか。それを今度は暴徒に逆用されているきらいが非常に多いと思います。こういう点は、十二分に活用することをふだんから訓練する必要がある。もしそのために費用が足りないならば、国家に要求してもいいじやないか。これは一面私は国家治安の対策であり、同時にそういう暴動によつて起る損害を考えてみるならば、微々たる費用であるのじやないか、かように考えるのであります。この点をお聞きしておきたい。  それから最後にもう二点だけ、時間を省略する意味においてお尋ねしておきますが、最近民間に不良朝鮮人を送還しろ、こういう声を至るところで聞くのであります。私は今議会の最初の予算委員会で、朝鮮人という名称を付することはどうかと思いますが、朝鮮出身の人たちでわれわれと同様に戰争に参加して、ある人は子供を失い、ある人は両手を失い、ある人は戰死した人もあり、遺家族となつている人もあるから、こういうようなわれわれと苦楽をともにしたような人たちに対しては、日本人同様、あるいはそれ以上の気持で優遇して行がなければならぬ。そういう手落ちがあつては相ならぬ。しかしながらわれわれの生活を破壊するような不逞なやからに対しては、断固たる措置をとる必要があるのじやないかということを、実は話しておいたのであります。最近は特に火炎びん事件やその他のいろいろな事件が発生して、送還でき得なければ、ある場所に隔離したらいいじやないか。かつて戰争中に、アメリカ日本人を隔離した例かあります。これは日本人が騒動を起したものでもなければ、火炎びんを投げたのでもなかつたけれども、隔離された例があります。隔離するには金がかかろうと思うけれども、こういう方法も国民の強い声となつて最近高まつて来ておりますが、治安の確保の意味からこういう点をどういうふうに考えておられるか。これは法務当局からもあわせて承つておきたい。  それから最後に申し上げたいのは、過般和歌山県で起つた事件であります。西川県議が酔つぱらつて差別言辞を弄したということが発展して行つて、和歌山県下金高等学校、中学校が三日間にわたつてストライキをやつたことはすでに法務府も御承知だと思いますが、この事件はあまり内容が発表されておりませんが、その爆発した連中が議事堂に乗り込んで、そして議事堂を占領して、議事堂の中で演説をやつておる。まつたく県議会を占領したという形をとつておるのでありますが、かくのごとき事態は、一県下の問題でありますけれども、私は重大な問題として慎重に取扱う必要があるのではないかと思う。想像したくないことでありますが、こういうことを許すならば、国会もおのずからやがてそういうはめに陷る危険性なしとは言えないのでありまして、さようなことに対してどれほど調査を進めておるか。また法務当局はそれに対してどういうふうに調査を進めておられるか。これに従つて人権蹂躙の問題も起つているようである。県会議員の辞職問題にからんで、それも強制的辞職問題からいろいろな派生問題が起つておりますが、これをどういうふうに処理するか、こういうことも明確にしておかないと、次次に実は和歌山県内に起つております。この三点だけ御回答を願つて、私の質問を終ることにいたします。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 最初にお語いただきました一千名、これは私どものその後得ております報告によりますと、大体八百人であります。これに対して六百余名出ておるわけであります。御指摘のように、この数をもつて警備措置がとられないということはまつたく警察の手落ちであるということは申さねばならぬと思いますが、先ほども申し上げましたように、非常な広い地域に向うが機動的に動いた。ところがいろいろの心配があつて部隊が分断されて、これがくぎづけになつておつた。また大したことはないというので、応援部隊の到着が遅かつたというようなことで、六百の部隊が一つの指揮のもとに統制ある警備配置措置に出なかつたことが中心的な欠陷であつたと私は考えているのでありまして、御指摘の点私どももその通りであるというふうに考えているわけでありますが、これは先ほど申し上げましたような訓練と指揮系統の統一化——これは別に制度的にということをわれわれは言うわけではございませんので、制度的にできますれば、もちろんそれに越したことはございませんでしようが、今は非常事態のとき以外は制度的以外の話合いで、日ごろからそういう気持がありますれば、こういう事態に対して当然指揮能力ある者によつて統一した指揮をとるというようなことはなされなければならないことでありますし、なし得ることであると考えておりますので、こういう点はお話のような方法でさらに訓練を進めて参りたい。拳銃の訓練につきましても御指摘の通りでありまして、拳銃はみだりに放つべきではないことはもちろんでありますが、警察官の正当防衛または他人の生命身体がまつたく危害に瀕しておるというような場合にはやむを得ず発射することは当然あり得ることでありますし、そういうときに、時機を失せず、また間違いなく行使する場合には有効適切にやるという方法は、十分訓練を今後積んで行く必要があると思います。  ラジオ・カーについてのお尋ねでありますが、この点も私どもその後いろいろ検討いたしまして、遺憾の点を発見しておりますが、大阪府にただいまたしか七台か八台行つておる。もつとも当日は先ほど申しました泉大津の方の各所において、若干様相は違いますが、不穏な情報がございましたので、必ずしもこの北の方面にのみ集中することはできなかつたと思いますが、この際実際に使用いたしましたのは、ラジオ・カー二台を使つておるのであります。これで本部との連絡をとり、指揮をとる重要な通信機関にしておつた。この点の運用も十分とは言えません。事前の訓練も足りなかつたと思います。もつとも初歩的にもその見張りであるとか、検問であるとか、こういうようなときに当然とられるようなことも適時適所に必ずしもとられていなかつた。これは国警を含み、自警を含んだものでありますから、決して自警の悪口を言うという意味でなくして、私どう警察の反省として申し上げておるわけでありますが、この吹田騒擾事件については反省すべき問題があるように考えておるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、必ずしもこれが全国的にこういう状況であるということでもございませんし、この吹田騒擾事件の経験というものが、その後の警察の指揮、また準備の周到性というようなものに非常な参考になつておることも私は見のがすことはできないことと思つておるわけであります。  費用の点について非常にありがたいお言葉でありまして現在出動費等についても、すでにことしは非常に多くの事案がありましたために、第一・四半期におきまして、一年間に出動するであろうと考えました七、八割というものを出動させているような状況でありまして、これらも追加予算等については、事務当局としましても政府当局に対して御配慮を願うように目下考えているわけであります。  最後の二つの問題、一つは、不良朝鮮人の送還問題でございますが、これは当然政府において確固たる方針をとつていただかなければならない問題だと思いますが、私は朝鮮人が近ごろいろいろなこと起すといことにつきましては、そう一概に言い切ることは非常に間違いを起す元ではないかというふうに考えているのでありまして、彼らを扇動し、こうした破壊行動に出る企図をいたしている者はきわめて少数であろうと考えております。     〔田嶋(好)委員長代理退席、委員   長着席〕 その他の人々に対しては、先ほど御指摘のありましたように、教育問題であるとか、あるいは民生問題等について、今度は外国人なつたということだけで、すぐに一般外国人と同じような措置をとることはむしろ不適当であつて、やはりかつて同胞として一緒であつたことを考えるならば、それ相当の配慮を必要とするものと思う。私はこうした政治的な論はいたすべきでないと思いますが、治安の見地からそういうふうに考えております。しかしながら一部どうしても反省しない矯激分子については、御指摘のような隔離手段、あるいは送還手段をとることも適当な処置と考えられるというふうに考えているわけであります。これはしかしながら政府当局において十分これについての手当、根本方針をきめていただいた上で、私どもそれに従つて必要なる警察措置を講じて参りたいというふうに考えるわけであります。和歌山県に起りました議事堂占拠の事案等は、この前広島に起りました公判廷からの被疑者奪還事件等と同様に、非常な重要な問題だと考えておるわけでありまして、これらにつきましては、警察も確かに手落ちの点、不用意な点があつたかと思いますが、やはりそうした関係機関というものが、常時警察当局とも連絡を緊密にしていただいて、こうしたことについての警察要請なり、あるいはある場合においてこの範囲においては警察にまかせるというような態度をとつていただくと、非常にやりいい、やりいいと申しては語弊がありますが、最小の犠牲をもつて最大の効果を上げ得るというふうなことになるのではないかと考えておるわけであります。
  88. 世耕弘一

    世耕委員 なお最後にお尋ねしておきますが、騒擾による警察官の死亡あるいは負傷等に関してどういうふうな手当をしておるか、あるいは死亡後の家族に対しての手当、これはやはり警察官がそういう事態に出動する場合の志気にも影響することと思いますから、当然あなた方はお考えになつておるだろうが、そういう点についてお尋ねしておきたいと思うのです。  それから近ごろ共産党とは言いませんけれども、こういう暴動を起す連中は、なかなか巧妙で、頭がいいのです。そうして警察の裏々を行つております。だから今度は大丈夫々々々といつて、いい経験だと言つているうちに、ぽかんと来ておる、今度はあなた方がつかまるような事態が起るかもわからない。だからよほど先へ行かないと、後へついて歩いておつたんではえらい目にあいますよということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、余談ではありますが、先ほどラジオカーの活用について、特に御注意を申し上げたつもりでありますが、歩兵が用いる簡單に使用のでる電波兵器がございます。金もかかりません。相当優秀なものがあるのです。そんなものも御利用なさることが、結局少数の部隊によつてよく多数の暴動を未然に防ぎ、また移動も感知することができるというふうに考えておりますが、そういうふうなものはお買いになりましたか、もし買つてなかつたらこういうものを御利用なさることが非常にけつこうだと思います。そうすればけが人も少い暴動も重ねることもなし、国家の損失も補い得られる。科学兵器を十二分に活用することをまずお考えつて未然に防いでもらいたい。今お話の京都でありましたか、そういう敵の裏をかいて、もうだめだ、どういう計画をしても優秀な警察でも手が出ないというところまで行かないと、私はほんとうの警察官の使命が果せないのじやないか、またわれわれ国民としてもまくらを高くして寝られない、こういう結論が出て来るのでありますが、この点についての御所信を承ればけつこうだと思います。
  89. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 最初の警察官がこれら暴徒等の襲撃によりまして死亡または負傷をいたしましたような場合につきまして、従来制度上恩給の加算であるとかというものはあつたわけでありますが、最近こういうものの頻発する情勢にかんがみまして、先般警察官救慰金制度というものを設けまして、最高百万円を限度とする範囲において支給するようにいたしました。これは後顧の憂いなく任に赴くというための一つの方策として考えられたものでございます。  それから第二点の相手のやり方が巧妙になつて来るということは、まことにその通りでございまして、後手々々と参りますと御指摘のように取返しのつかないような事案も起り得ると考えまして、この点は十分研究を進めております。またラジオ・カーのほかに、いわゆる携帶用の無電機につきましては、その必要を痛感しておりまして、現在のところまだこれを使用はいたしておりませんが、近くこれらを使用し得るように、これも事務的に話を進めまた政府当局にも御考慮を願うようにいたしておるわけであります。
  90. 加藤充

    加藤(充)委員 先ほどの御報告中に何と言いましたか、反戰独立キャンプ・ストームという事件の立て方があつたわけなのですが、あれは私ども聞いておりますのには、伊丹基地粉碎反職独立の夕べという催しものがあつて、それからデモ行進が始まつたことが発端だというのですが、キャンプ・ストームというようなことは、私は初耳なのですが、どういうことなんでしようか、大体先ほど警察は手落ちだつたというのですが、それであとからばかりついておつてはいけない、こういうお話であつたのですが、私どもあの勾留理由の開示公判などで、事実上警察の取調べなどに基いてはつきりした事実関係というものは、警察があとについておる間は問題はなかつたようであります。今のお言葉にも少しそれはやり方が誤つたのかもしれぬとあなたがお認めになつたように、どこかの自治警のやつが来て、そうして急いで列をつつ切つてやろうとしたときに、何が火炎ぴんとやらが飛んだというのですが、まずはそういう状態のようであります。大体あれは騒擾事件と名づけるのが妥当であるかどうか、騒ぎをかえて大きくしてしまつたのではないかという一般の良識の見解、従つて私はそういう問題をなぜ最初に出したかというと、騒擾事件の対策、それに基いた警察の運営というようなことになつて来ますと、初めの出発が非常に誤るのである、この点を明確にするために、今のような問題を出してみたのですが、地方の人たちは警察がうしろについておる、デモ隊が進んで行く、もちろん明るくなつてからでありますが、何の不安気もなしにとにかく警察の行進と、デモ隊の行進とが町の中を歩いて行つた、何の不安もなく見送つて行つたというのであります。ところが先申し上げたように、脇から突然出て来て、違つた行動をとりかけたものだから、そこで火炎びんが飛んだというようなことであります。現に騒擾罪というようなものに被疑逮捕されておりましたけれども、釈放されなければならなくなつた一人の学生がおりましたが、それの逮捕というものは勾留必要なしということであるいは勾留理由が不当だということで、釈放になつてたらいまわし的に今度はさらに別の逮捕状で逮捕されたのですが、その逮捕状の名前は罪名被疑事件は結局業務妨害だ、吹田の操車場に入つたか入らぬかという問題の被疑事件で逮捕されたのであります。もちろん警察の立場としては火炎ぴんとやらが投げられたというようなこと、吹田の操車場に入つたというようなことはこれは別個に立てられるべきであり、その理由が検事局の勾留理由の交付請求の中にも業務妨害というような形で認められておるのでありまして、こういうようなものは、私は本質的に何ら騒擾事件じやないのじやないか、もちろん派生的に出て来た問題はそれとして価値判断を受け、それに対してはあなた方の立場で対策もとられる必要があるかもしれないのだが、鬼面人を驚かすような形で騒擾事件だというようなことをあなた方が宣伝するから、それだけの騒ぎを起し、警察は手ぬかりじやないかというような形の反撃が出て来て、世耕君のような質問にもなつて現われているのじやないか、こう思うのですが、その点をまず承りたい。
  91. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 フアイヤー・ストームという名称は、現地からの報告を受けまして私ども申し上げておるので、おそらく間違いないと思いますが、フアイヤー・ストームといつても、結局かがり火をたいて、いわゆる学生がストームをするといような印象づけだつたのかもしれません。しかしそういう名前がある。また今お話のように伊丹飛行場粉碎というような名前も使つたかもしれませんが、そういう名前の問題、あまり実質との関連は大したことはないのじやないかと思います。それから警察があとからついて行けば問題はなかつたが、変なことをするから問題が起るのだとおつしやいましたが、警察が何もついていないのに、大阪へ帰るといつて電車を出させて、服部へ着いてから、みな吹田操車場に向うというようなことは、これは警察が同行したから向つたというような問題ではないかと思いますし、豊津の巡査派出所に火炎びんを投げておるとかいうようなことも、そこで巡査が制止したとか威嚇したというようなことではなくて、その際巡査は警邏中で、そこにいなかつた。いない派出所に火災びんを投げておる。それから何もそういう計画がないならば、竹やりや火炎びんを持つて歩く必要はないので、堂々と市中を行進すればいいものを、竹やりや火炎びんを持つて歩く。また吹田操車場に入りまして、幸いにして貨車が見つからなかつたからよかつたのでありますが、もし駐留軍の貨車があつたら、これに火炎びんを投擲して焼いておつたであろうということは、推測にかたくないのであります。また駐留軍のクラーク准将が出勤の途上、自動車で通るのに火炎びんを投げるということも挑発されたから投げたというようにお考えになることは、私は少しおかしいのではないかというふうに考えるのでありまして、私どもはやはりたとえば先ほど申しました扇町プールにおける賢明なる主催者の指導というようなやり方をとつていただく限りにおいて、警察がそれでもなおかつ同行するというようなことは毛頭考えておらないのでありまして、ただいま加藤さんのお話のように、ああいう火炎びんを持つたり、竹やりを持つたりしておる、それから途中で派出所に暴行を加える、それから通り過ぎる警察官に火炎びんを投げるというようなこともやむを得ないのだ、むしろ是認するのだというような指導層の態度がもしありとすると、やはり大きい問題をあとに残すのではないかというふうに私は考えるのでありまして、やはり警察はあの六・二五の騒擾事件等に見られるような暴徒に対しては、もつと適切周到な警備計画と時宜に適した措置というものが必要であるというふうに考えておるのであります。騒擾事件、騒擾事件とわれわれが宣伝するから、かえつて警察が非難されるようになるということは、ちよつと私には了解いたしかねるわけであります。
  92. 加藤充

    加藤(充)委員 あなたは吹田操車場と言えばいいのを、キャンプ・フアイヤー・ストームなどと言うから、どうもおかしくなるので、私も混乱するのでありますが、大体これは何も威たけ高になつてあなたと論争するつもりもないが、実際だれもおらぬ派出所や交番に火炎びんを投げ込んで行くというような事柄が、どれだけの意味を持つか持たぬかということはさておいて、そんなつまらぬところへでも火炎びんをぶつつけて気持を出してやろうかというような気持があるということだな。クラーク准将とやらが自動車に乗つて、火炎びんか何かの被害を受けたというのですが、これははつきり言うが、占領軍ですね。今の米軍、駐留軍も警察も、いま少し謙虚になつて日本人の気持にもなつてみたらどうだといわざるを得ない。警察というものは、外人ではないけれども反省が足りないのだ。つまりだれが見てもつまらぬようなところに火炎びんをぶつつけて、快哉を叫ぶというようなものは、話にはなるかもしらぬけれども、どれだけの意味があるかというような問題を考えれば、君たちにもいろいろ言分があるかもしらぬけれども、そういう部分的な問題を見れば、おれたちにも感概必ずしもないとは言い切れぬ。あなたの気持だつたら兒戯に類すると言うかもしらぬが、そんなところへも火炎びんをぶち込まれるということ、それだけで国民感情というか民族感情というか日本人の気持がほつとしたというような気持があるという事実を、あなたたちは深く反省してみなければいけないと思う。その反省が足りないでおつて、そうして暴徒が……というようなかつてな呼ばわり方をして、火炎びんを——派出所といつても何もいないのだからおそらくそれは小さい掘立小屋類似の交番所みたいなものだと思うのだが、その中に火炎びんが投げられた、それだけを重要に思われるかもしらぬが、それだつたら警察というものを無規したということだけに威たけ高になつていた昔の警察の復活と同じ根性をあなたたちが持つておる、こういうことになると思う。それから朝鮮人の送還の問題について、ひとつどもは明らかにして、あなたたちが考えているようなやり方では問題は片づかぬということを言い、またそういうふうなやり方では対策を間違つておるということを一言申し上げたいのだが、反省しないのはけしからぬというやり方ですね。あなたたちは何を反省しろというのです。大体先ほどの下田條約局長とやらの話によつても、最近のことらしいが、オランダ兵の例を引けば、オランダの飛行場で老婆と泣き別れして、飛行機で送られて来ているオランダ兵がおる。はるばる地球の裏から朝鮮へ送られているのだ、その気持を思えば、神戸あたりに来て、たまたま故国を離れた国連軍の兵隊が酒に酔つぱらつて強盗強姦を働いても、いきなりそれを厳罰に処せというようなことや、あるいは日本裁判管轄に属するのだというような強い主張については、少しは相手の気持をおもんぱかつてやれという気持になるということをさつき言われたが、しかし地球の裏の方からはるばる朝鮮の方に押しかけられて来て、朝鮮には南も北もありませんよ。日本から飛んで行つた飛行機によつて、数時間後にはたくさんの朝鮮人が殺傷されているということ自体、何のためにそういうことが起きているか。日本なんかに基地がなかつたら、よほどいいと思うに違いない。それから日本人つて、報復爆撃か何か知らぬけれども、防空演習などやつて脅かされる必要はない。それから伊丹の基地の周辺に行きましたら、こういうことがある。これは歯の抜けたおじいさんですが、三反歩ほど土地がやつと残つていて、それが今度の百町歩ほどの擴張で取上げられる。せがれはどうしたことで死んだのか知らぬけれども、孫を三人抱えておる。それで、あの周辺ではパンパン宿をしたり飲み屋をやつてもうけている人があるので、わしもそれをやろうとは思うけれども、三反歩ほどの上地が取上げられて、何かその人の計算では五、六万円か十万円足らずの金しかもらえないので、資本が足りないし、孫が大きくなつたので、そんなまねもできない。まつたく百町歩の基地の擴張は困つたものだということを言つているのです。その人は、必ずしもあの伊丹基地粉砕反戦独立の夕といつて朝鮮人も日本人も集まつたあのデモ行進や、それからいろいろな派生的な事故が起きたあの問題について、理解と支持を示している人ではないのですが、そういうことを現場で言つているお百姓の人がおつたのを私たちは見て来ておるのです。あなた方は警察の取締りに出て来るやつに火炎びんをぶつけたのがけしからぬというけれども日本国民や朝鮮人が、おのがじしの利益というものを考えれば、一体にならざるを得ないようなことになつている。それに反省して行けということになれば、ちようどお前たちの先祖は天照大神だ、お前たちの先祖は神功皇后である、お前たちの先祖は豊臣秀吉だというようなことを言つて日本をありがたく思えといつた戦争中の思想善導というか、朝鮮人に対する扱いと同じで、三韓征伐の神功皇后や、朝鮮征伐の豊臣秀吉をお前たちの先祖だというように朝鮮人に押しつけたつて、押しつける方が無理だ。反省をしろということが大体無理だ。こんなことを言う必要はないと思うけれども、あなた方は憲法にほおかむりしてこそこそやらなければならぬような不始末をやつてつて、何を反省しろというのか。反省しなければ送つてしまうというような警察のこれからの方針で行かれるならば、これはますますはげしくなりますよ。たとえばあなたは七・一五の大阪の扇町公園のやり方は非常にうまく行つたというのだが、あれは実は警察が整理をやつたからではない。むしろ事態の性質もあり、あんなときに乱暴したりとて、こつちが火炎びんだ、竹やりだというばかなことをやるのは至らないことであつて、そういうばかげたことをやるべきではないという主催者側の話が通つて、中には、実を言うと、あなた方は警察官を八千人も動員されて、交番という交番には、生命の保証をしないから集まるな、それからふろ屋にまでビラが張られて、同じように、生命の保証がないから集まるなといつて、バリケードを築いて、当日その公園の入口には、一メートル間隔よりもつと狭い間隔で警官が並んだりして、ずいぶんばかげたことをやつた。それに対する憤激はずいぶんあつた。だから、何くそという気持の者も出て来たけれども、結局警察官と張り合うほどばかなものはないということを証明しようじやないかということになつてあれは治まつたのであります。ところが四百五十万円も一ぺんに金を使つちやつて、上半期でもう八割ほど使つたから、あと何とか金を出してくれといつて、七・一五の大阪の扇町公園の催しのように警察が金を使えば平穏に済むのだという考え方が根本的に間違いじやないかと思う。  それからもう一つ聞いておかなければならぬのですが、先ほど泉大津で何かはかのことの手入れがあつたときに、六月二十四日、五日のあのキャンプ・フアイヤー・ストームとかいうような計画があつたというのですが、それほど具体的にキャンプ・フアイヤー・ストームというような計画があるという情報が入るのだつたら、人のいない間に電車が走らされたり、人のいない間に複声粛々夜河を渡るみたいに、どこに行つたかわからなくなつてしまうというようなことは、これは情報がなかつたからしかたがないというのなら、一掬掬すべき点もあるが、しかしながら情報が入つてつて、夜明けの早い夏の朝のことです。どこへ行つたかわからぬというようなことで不始末をしたのは、私はどうも解せないと思う。あなた方はそういうようなときに手落ちがないということを宣伝し、あるいはいろいろな彈圧の態勢を整えるために、情報が入つているというようなことを言うのであるが、情報でないものを情報が入つたなんということを言わなければならぬから、実は泉大津ですでに数日前に情報が入つておりましたというようなことを言わざるを得なくなるのではないですか。  私は最後にお尋ねしておきたいが、破防法の実施とやらに伴つて、八月一日に大量的に共産党員、あるいは党の支持者、あるいは日ごろマークしておつた好ましからざる人間のところに家宅捜索をやつて大いに気勢をあげなければならないという、そういう計画を持つているという情報が私の方に逆情報で入つて来ているのであるが、一体こんなことをやつて、もう一回世耕委員から攻撃されなければならないような、ばかげた大騒ぎをやるつもりなのかどうか。情報がそれほどはつきりしものだつたら——発表の時期でないと言われるかもしれぬけれども、しかしそれくらいのことについては大体発表して、自信のあるところを明らかにしてください。
  93. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 個々の警察官について反省すべき事項が全然ないということは私は申しませんが、しかしながらそれだからといいまして、不法を犯す者を、これは社会情勢がそうなんだから、ああいう犯し方は大目に見なければいかぬというような考え方はとり得ないと私は考えます。  それから強制送還の問題であります。これは先ほど申しましたように、政府がおきめになることでありまして、私どもはその方針に基いて取締りを実施して行くほかしかたがないのでありますが、先ほど反省しないものと申しましたのは、何も神功皇后を先祖とするということを反省しろというような意味で申したのではなくて、破壊活動をあくまでもやるということについて反省がない者は、やはり法に照して処断しなければならないという意味で申し上げたのであります。それから費用の点でありますが、費用をかければかけるほど警備措置がよくなるというふうに私は何も申しているのではなくて、現実にああした暴力事犯が非常に多かつたので、やむを得ず費用がかかつた。そのために今後もしやはりこれも反省せずして今までのごとき事態がひんぴんと起るようであれば、費用もよけいいるということを申しているわけであります。何か警備措置につきまして、先ほどは騒擾々々と宣伝するから警備措置が足りなかつたというふうに非難をされるのだ、あれでいいのだという意味でおつしやいましたが、ただいまは、泉大津のビラというのはむしろでつち上げであつて、そういうものが入つているのに、ああした電車を走らせた者を把握していないということは手落ちでないかという御意見でありますが、やはりああした電車を動かすということの不当であるということもお認めのようでありますが、それを把握し盡さなかつたということについては、私はやはり手落ちがあつたというふうに反省をいたしているわけであります。  最後に、破防法関係で八月一日に大量捜索をするという情報を入手しておられるそうでありますが、こういう情報にあまり御心配にならない方がいいのではないかというふうに考えます。
  94. 加藤充

    加藤(充)委員 最後に一点だけ——扇町公園でやられたいわゆる七・一五の日本共産党創立三十周年記念の夕には、先ほど一例を申し上げましたように、ばかげたほどの大動員がされた。それできのうあたり地方行政委員会に大阪の警視庁から、費用がなくなつたから何とかしてもらいたいというようなことで、あのときにがかつた費用は一体何ぼだと聞いたら、四百五十万円かかつたと言う。さつき言いましたように、あなた方があとについて来ておれば問題がない、そんなことを私は言いましたけれども、そんなことは信用できるかといえば、それだけですが、実は扇町公園のあのときも四百五十万円もかけなくつたつて済む。それをかけてしまつて金がないからというが、あなた方の金じやない。国民の血税なんだから、そういうような考え方は私はどうもおかしいと思う。間違つておると思う。  それからもう一つは、私はその電車を動かしたことが手落ちだとかなんとか言うのではなくて、情報がはつきり入つておるのに何にもできなかつた。鞭声粛々夜河を渡る式に、夜明けの早い六月の末ごろに明るくなつてみなければわからなかつたということは、ばかげているじやないかというのです。あれだけ手配をしてラジオ、・カーを何台か走らせたということの中に、私はそのばかさかげんを指摘しておるのであつて、あなたが言つたように認めたとか、警察を鞭撻してくれておおきにというような意味合いで言つているのではありません。  それからもう一つ、あのピストルの問題について大分世耕委員から気合いをかけられたようですが、あれはとんでもないことが起きているようですよ。あなたには報告しないかもしらぬけれども、事実です。私どもの調べたところでは、みんな汽車の中へ乗り込んでしまつた。そうしたらいましくしくなつたのかどうか知らぬけれども、汽車を目がけてピストルを撃ちかけて来た。汽車の中へ入つて来て、ピストルを撃ち出して来たから一部の人間が外へ出た。そうするとそれを打つ、ける、なぐる、ピストルでけがする人も出て来ておる。これなんかはどうもけんか過ぎての棒ちぎれで、もう必要がなくなつたときにいまいましいからぶつ放せという考え方です。またぶつ放さなければ腰の朱ざやが泣くという犬糞的なぶつ放しじやないかと思う。しかもこのために逮捕されて何ら起訴もされなかつたと、私の調査ではなつておりますが、阪大の学生であつたかは、ひざの関節のところをぶち抜かれて、まつたくのかたわにされて出て来ておる。これも騒擾に参加したというのであるからしかたがないとあなた方は言うかもしれぬけれども、そういう人間がやられておる。それからもう一つ、ピストルで忘れてはならないことは、これは阪大の一学生ですが、警察がピストルをぶつ放したり何かするものだから、一緒に乗つたが外に出た。そうしたところが袋だたきになつてしまつた。そうして吹田の市警に連れて行かれた。門の両側に武装した警官が並んでいて、両側から打つ、ける、なげを、やつと中へ連れ込まれた。ところが今度は裏庭へ連れて行かれて、そしてける、なぐる。さすがにその行き過ぎた暴状を見られては困ると思うような人が来たらしいのです。これはあるいは警察の中の上の人かもしれぬ。その人のかつこうなどはさだかではありませんが、一時やめられて留置所の近所へ連れ込まれた。その人がいなくなつたと思われる時刻にまたひつぱり出され、ぶつたりけつたりされた。私は、今度保釈になつて出て来て、二十五日の晝に会いましたけれども、まるつきり耳が聞えない。もつとも初めから耳がよかつたのじやなくて、多少は悪かつたようですが、あの程度に聞えなくなつたら学生はおしまいです。しかもその人は指を痛めつけられて、指の神経がぴくぴくして痛いと言つています。今はよくなつたといつても、まだ神経が切れていると思われるというのですが、当日から数日後に会いに行つた弁護人がまつたくびつくりするほど両眼が充血し、今になつてまでも傷のフイルム見るよう目がちらちらして困つているようです。これなんかは明らかに警察へひつぱられて行つて、まるで包囲された中でほんとうにぶつたたかれて、そういうような肉体的傷害を受けてしまつたのである。これは警察が正当防衛のためにやつたというようなことでは断じて許されないのです。これは一、二の事例ですが、具体的にあげろといえば何ぼでもまだあげられます。あなた方はあき家の交番所に火炎びんをぶつつけた、これはえらいこつちやということばかり宣伝されるが、実際にそういうふうな人権蹂躙の事実、しかも警察へ検束してしまつてから後の許すべからざる人権蹂躙の事実がある。ピストルを発射した状況や現場がどういうことになつておつたかということは、さつきの長たらしい報告の中に一つも出ないのはけしからぬと思うのだが、そういう報告をあなた方は聞いているか、聞いていなかつたらば、私の言つたのはうそじやないのだから、もう一ぺん徹底的に調べてもらいたい。ぶんなぐつたり場合によつたらピストルで射殺してしまうというような志気高揚をしてはいかぬ。警察の行き方は金をかけるごとばかりが能じやないのです。あなた方の報告の中に反省的なことがなされてないということだけを見ても、一方的な報告だと思うが、そういう点をひとつ最後にただしておきたい。また要望しておきたいと思います。
  95. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 拳銃の発射につきましては、私の聞いておりますのは、先ほど申し上げましたつつ切ろうとした自動車に火災びんを投げつけて十六名負傷した。そのうち六名は重傷で、昏睡状態に陷つておる者から二挺の拳銃を奪つております。おそらくこの拳銃であろうと思うのですが、暴徒側から駅において発射されておる事実がある。これに対して応射したという事実は聞いておりますが、ただいま大分詳細にお述べになりましたようなことについては、私は報告を受けておらないのであります。  それから扇町プールにおける集会に対して警察が非常にばかばかしい警戒をやつた、これは従来の経験からして、あの程度の警備措置をとらないと何が起るかわからぬということで、予防的な措置を大阪市警がとつたのであろうと思うのでありますが、ああいう警備がばかばかしいという常識になるほど、やはりああした集会の指導者が賢明であつていただきたいと私は念願しておるわけであります。
  96. 加藤充

    加藤(充)委員 しかしそういうようなやり方で万全の対策を立てたてた、そのためにそう混乱も起きなかつたんだという口実で、予算や人員のべらぼうな浪費をやつたという責任が一つもあなた方には問題にならない。これじや万全の策を立てるといつても、その立て方が今言つたように内容的に検討されて来なければ、これは役人や警察がやりほうだいというとの裏返しと同じなんだ。四百五十万円かけて、もう早々に国会にかけつけて、装備費とかなんとか理由にしておるかもしれぬけれども、金がないから頼むという状態になつて来て血税を使う。この対策の立て過ぎということがやはり問題にならなければ私はいかぬと思うのですが、その点はどうですか。
  97. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 必要以上に金を使うということは、これは貧乏な国はもちろんのことでありますし、どんなところでも適当なことではないと思う。ただ従来の経験で、万全を期さなければならないような苦い経験を持つておるということから、大阪市警はそうした警備措置をとつたのであろうと思います。大阪市警のことでございますから、私もどこにどう警察官を配置したというこまかい観察をしておりませんが、そういうことにならずに済むという常識になるように、ひとつ御指導をいただきたいと思います。
  98. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員長 他に御質疑がなければ、本日はこれをもつて散会いたします。     午後六時二十一分散会