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加藤(充)
委員 多面にわたる法律の
改正なので少し筋立
つた質問は後日に残したいと思うのですが、今の北川
委員の
質問に関連して一、二点
お尋ねしてみたいと思うのであります。
今の保釈出所の制限の事由の説明の中にあ
つたお礼参りのことに関連してでありますが、政府は巧みにいわゆる町のならず者、暴力団というようなものが、えらくすごんでにやつと笑
つただけでもお礼参りの目的を果すのだというような形で、いかにも他人事のように
人権の保障のためにこの制約が妥当であるというようなことを言われているのですが、それは私はまことにずるいやり方だと思う。
証拠となるべき知識を持
つておる者、
犯罪の審判にあた
つて必要な知識を持
つておる者、こういうようなものは一体だれかということの実体を突き詰めて行けば、今私が申し上げたことがはつきりすると思うのであります。その前にこれは
証拠の問題ですが、
警察官だけが
被告人ないし
被疑者に
不利益な証人だという場合、簡単に言うと警官の証言だけで問題をきめてしまうというような事例が多いのであります。というのは、町の無頼漢自体も横すべりに圧力を一般の罪のない人に及ぼすことがあり得ますけれ
ども、あの連中に会うとよく正面に丸型のかつこうをしてこういうような記章の者に対しては——というのは
警察でしようが、権力者に対してはすこぶる弱いのであります。で問題はこれからというよりは、今までもそうですが、いろいろな形で今
猪俣委員も
言つていたように、
警察官が人民の信頼を得ていない。
警察官のやり方について、りつくではありません、感情的に
あとでいろいろひつぱり出されて、
警察側につくということを好ましくないと考えているのが一般の
国民感情であります。こういう場合にやむを得ないことかもしれませんけれ
ども、警官だけが
被疑者に反対側の証言、いわゆる
被告人に
不利益な証言になる、警官の証言だけで罪が判断されるような事例が多いのです。事案によ
つてまさしくそういうようなものが多くなる傾向にあると思う。そしてこれは法廷などに参加された経験のあらせられる
委員の方ならおわかりだろうし、
委員の方で弁護士などをおやりにな
つている方方が多いと思いますが、こういう経験をお持ちだろうと思います。大体においてその捜査方針に
従つて被疑者を陥れる
証拠の方法で立証をやる。そうして最近ではいわゆる新しい
刑事訴訟法の手続で立証の技術というものが非常に巧妙に勘案されるようにな
つて参りました。それで捜査方針、
従つて上司の命令
通りに
被告人を黒にして行く証言をことさらにやるわけです。反対
尋問すなわちクロス・エグザミネーシヨンでずいぶんこの弱点を突き上げることに成功いたします。成功いたすという技術上の問題よりも根がないのでありますから、すぐにくずれそうになるわけだ。それを技術で固めてくずれさせないようにして行くのですが、しかしその技術ではおおい切れないものがあ
つてくずれそうになる。そうしますとどうするかというと、これは
あとで証言しておる時期よりも前に私は記録をつく
つた。その記録にあることが確実である。今よりは確実な価値を持
つた目撃ないしは
意見というものがそこで述べられておる。それで私は手帳にその当時のことをメモしておきましたからそれを見させてください。
裁判所も
検察官もそういうことについてはオーケーにな
つて来る。そうして実際いまいましいという感じ、腹をえぐられるような思いで明らかにでつち上げのような
事件が警官だけの証言で黒にされておるという事例は幾多あるのであります。そういう傾向は多い。特に軍事
裁判の経験を占領下においていたしましたわれわれは、このこと痛憤おくあたわざるものを持
つている。こういうことを経験して参りましたときに、それではだれのところにしりを持
つて行くかということになりますと、やはり警官です。警官以外に
証拠はない。一般の人はかかり合いになることをおそれる。というのは、
被疑者に恨まれるようなことが恐しいよりも、フリーのときにな
つてしま
つて、警官のお手伝いをしてかかり合いになることは好ましくないという傾向が強い。こうな
つて来たときにま
つたく
被疑者を中心としたところの
国民感情の向うところは、その法廷に出て来て上司の命令
通りに、権力のままにその一定の黒を出さなければならぬという筋立てられた権力の方針の
通りに動いておるこの警官なんだ。こういう場合にな
つて来ると、さつき
言つたようにお礼参りの対象というものは、一般の人が迷惑だからというのではなくして、実はそういうふうな情ないことをや
つた警官である。
釈放された者がいろいろな非難を浴びせかけたり、
自分らが
被疑者をいじめて無理に黒にしたものが来やせぬかということに疑心暗鬼でも
つて恐れるのです。だからお礼参りの禁止で防衛されるのはむしろこういう堕落した警官なんです。検事局やあるいは上司の命令のままに動く末端の
警察官というようなものがこのことによ
つて保護されて行く。これはま
つたく戰争中にピカドンで手前だけは穴ぐらを掘り、白いものを着ておれば助かるとい
つたのと同じように、経かたびらを着せてからというような親心らしいもの——これは皮肉りなことになりますけれ
ども……。