○加藤(充)
委員 特別のはからいだそうなので、えらい恩に着て発言を処女のごとくおとなしく簡單にやります。
先般来の審議で、
暴力主義的破壊活動は取締られなければならない、こういうことが繰返し言われて参
つたのであります。審議が続けられましたけれ
ども、防衛さるべき
実体すなわち国家社会の
基本的秩序とは何だ、これの
憲法的な究明は依然として不十分であります。答弁はこのことの根本問題について少しも触れておりません。
政治的
活動の自由、こういう点は、新しい
憲法のもとにおいて主権在民の原則の中では嚴として貫かれなければならない問題であ
つて、その考から見れば、内乱罪、
政府転覆の罪というようなものは、存続の余地が論理的に
憲法制度的にあり得ないと思うのであります。騒擾罪と反
政府的な
政治活動とを混雑させて、騒擾罪が許されるというような御答弁であ
つたが、これはごまかしもはなはだしいと思う。私はこのことについては、一、二前に触れましたから、その次の問題について最後に
お尋ねしたいと思うのであります。
政府は公安
調査庁、公安審査
委員会と、
調査機関と決定
機関とをわけておいた、こういうんだがら、何らさしつかえない、これで民主
主義的だ、こういうのであります。しかし先ほど来申し上げましたような主権在民あるいは民主的な原則に立脚いたしますときに、こういうような重々問題になりますような機構制度を持つということその持たれた機構制度は重々配慮され、問題になりまするような機能を持つということ、こういうような問題は、それ
自体憲法違反ではないか、しかもその基礎になりますのは、
行政処分にこういうような問題をまかせてしまうということ、ここに問題があると思うのであります。でこれは断じて合憲的かつ民主
主義的な
方法ではないと思うのだが、これはどうか、この一点。
それからついでですから
お尋ねいたしますが、こういう攻撃非難に対して、
政府はきわめてずるく賢く立ちまわりまして、第二條の規定を持
つておるのであります。しかし私はここで具体的な事例を引いて第二條がインチキであるということを指摘し、
政府の確たる答弁を求めるものですります。これは先般
新聞記事に出ていましたように、二十九日夜十時半ごろ、学生風の男が新宿の東京生命グラウンド附近でアジビラを張
つてお
つた。ところがパトロールの巡査二名のうち一名の発射したピストルによ
つて、そのうちの岡田宗太郎君が命中弾を受けて銃傷を受けたという事実であります。これはおそらく軽
犯罪法などに基いて、街頭でビラを張
つたりしちやいかぬというようなことになるのではないかと思うのであります。ところが軽
犯罪法の第四條には、「この
法律の適用にあた
つて国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の
目的を逸脱して他の
目的のためにこれを濫用するようなことがあ
つてはならない。」と、明文にうたわれております。ところが街頭をごらんなさい、少しイデオロギー的なビラであるということになれば、ピストルを乱射してまで、生命を奪
つてまで、パトロールの警察官が
暴力の限りを盡しておりますが、ストリツプであるとか、あるいは見るにたえぬ、聞くにたえぬような各種の
出版物や印刷物は、氾濫するように張られまわ
つております。こういう事実から見て、第二條のこの規定の精神と、今指摘しました軽
犯罪法第四條の規定の精神とを、われわれの得心の行くまで
——特審局の得心じやなくして、われわれの得心の行くところまでひとつ
説明をしてもらいたいと思う。
それからもう
一つ。五月五日の毎日
新聞の記事です。「米軍捕虜、細菌戦を自供、平壤放送、四日夜の平壤放送は去る一月十三日に共産軍の捕虜とな
つた米空軍の二中尉が米軍の細菌戰実施の真相を自供したと述べ、自供書の全文を発表した。」こういうようなものがあ
つたあとへ、注として、「平壤放送は共産政権の傀儡放送で、本記事はこの事実を念頭に入れて評価さるべきである」こういう注がついておるのであります。毎日
新聞は日本の大
新聞であります。結局これは前に出た刑事特別法
——アメリカの軍機保護法を日本に適用するというあの
法律、これに基くものであると思うのですが、しかし
破壊活動防止とやらのこの
法案が通過すれば、こういうような言論出版その他
報道の場面まで、たいへんな影響を受けて、おそらくすべての
新聞が気のきいたことを書けば、今指摘したような注を一々つけなければならない。うかつには書けぬ。じやなければ事前に審査を求めて行くというような、事前検閲の制度が実現されて行くと思うのです。こういうようなやり方は、母法といわれる
マツカラン法にありますけれ
ども、しかしそのこと
自体は、
アメリカにおいても、事前検閲制度の尤たるものとして、
憲法違反、人権蹂躙、民主
主義の原則に反するということで問題にな
つてお
つて、まだ
裁判所方面の判決や判断はないと聞くが、この点について
お尋ねしたいと思う。