○
吉河政府委員 最近の
わが国におきまする暴力的破
壞活動の実態の概況につきまして、概略御
説明をいたすことにいたします。
法務総裁の御
説明になりました通り、最近
わが国におきましては、あるいは
集団暴力により、あるいは
ゲリラ戰法により、
治安機関及び
税務署等を襲撃して、
暴行、
殺傷等の
犯罪をあえてする組織的な暴力主義的破
壞活動が
全国各地に頻発しているのでありますが、これらの
事件の概況と、これと
背後的関連の
疑いのある事実につき、客観的な資料に基いて申し上げます。
第一には、最近
全国各地に頻発する不穏な破
壞活動の概況につき申し上げます。
まず、
警察署、
税務署、
特審局、
検察庁等に対する
集団的襲撃暴行事件の、最近の
発生件数について申上げますと、昨年十二月二十四件、本年一月七件、二月四十一件、三月九十二件、
合計百六十四件とな
つており、なお四月は、二十四日現在までの間で、
合計三十四件に達しておりまして、年末の十二月を別といたしましても、本年一月以来急激に増加いたしております。
以上のうち特に暴力主義的破壞的な
行為として注目されるのは、
税務署に対する
放火並びにその未遂六件、
爆発物使用三件、警察官及び
派出所等に対する殺人、
強盗殺人並びに致傷四件、
放火並びにその未遂四件、
爆発物使用二件、傷害九件等の、きわめて悪質な
犯罪行為が頻発いたす傾向が見受けられるように
なつたことであります。
また
鉄道妨害事件について見ますと、
線路妨害、
運転機妨害、
信号通信妨害、その他の
妨害を合せて、昨年十一月五百五十七件、十二月五百十四件、本年一月四百六十四件、二月四百七十二件、
合計二千七件の多きに上
つており、
列車放火等の
悪質事犯が、本年二月、三月にはおのおの二件の発生を見ております。
次に
自由労働者関係の
職業安定所その他
官公庁等に対する
暴行、
公務執行妨害事件について見ますと、昨年十二月二十八件本年一月五件、二月六件、三月十八件、
合計五十七件とな
つており、これらの
事件は日本人及び
朝鮮人によ
つて行われたものであります。
次に
在日朝鮮人関係の、
政府機関に対する
不法事件の
発生状況を見ますと、十二月六件、二月二件、三月二十九件、
合計三十七件とな
つているのであります。
これら
事件のうち、最も悪質な組織的の破
壞活動の代表的なものについて述べますと、本年二月二十一日、
東京蒲田における反
植民地デーにからむ
集団暴行事件のごときは、ま
つたく組織的計画的な破
壞活動の事例として見るものであります。また同月二十三日
京都市内で開催された、
青年婦人統一懇談会主催の、再
軍備反対青年婦人大会にからむ
集団デモを利用して、一部破
壞的分子が
巡査派出所、
税務署等を襲撃した
事件のごときも、
事前に周到の計画を立て、
団体組織を基盤として行
つたものではないかとの
疑いを深めざるを得ないのであります。
次にこれら
事件の方法、手口を見まするに、第一に
犯行時間は
警戒手薄でであり、また
犯人祕匿に便利である夜間を利用して、單独犯は少く、三人以上の
隊組織で行われている。第二に
犯行のリーダーは、組織を基盤とする急進的な破
壞分子である
疑いのある人物が多く、かつ
攻撃目標地域外の人物の参加が非常に多いのであります。第三に、
攻撃方法は
攻撃、
遭遇戰を避けまして、
先制攻撃が非常に多い。第四に、
大衆行動の場合は
警官隊との
正面衡突を避けて、
陽動作戰を行い、間隙をついているというようなことであります。第五は
個人攻撃の場合、夜間など、誘い出しまたは帰途でやる。第六、
犯行目的に応じた
武器、凶器を使用して、その
目的効果を得んとしている。これらの
武器といたしましては、殺人には
ピストルその他の凶器、
放火には
火焔びんなどを投入、爆破には
爆薬裝置、
ダイナマイト、
妨害には、
犯行を確認されたり逮捕されることを
妨害するため、目つぶし、
催涙彈、
パンク針の類を使
つておる。次に脅迫につきましては、
文書の郵送、
貼付散布、投石、
類似行為、
人糞入りびん投入、
音響彈。次に
ピストルの
強奪事件は長野、練馬、
蒲田等に発生しております。次に
襲撃目標が一定しておりまして、
治安機関とその
所属個人または
税務署、鉄道、
米軍施設などが目標とされておりまして、昭和二十六年十二月から本年三月までの間、
手口別数は
催涙彈二個、
火焔びん三個、
人糞入りびん二個、
音響彈、
ピストル、
パンク針、羅針、
空気銃、つるはし、
カーバイド入りラムネびん、
ダイナマイト、爆薬、竹やり、
こん棒等のものが各一個などのことが指摘できるのであります。
以上によりまして明らかなごとく、今やこの種の破
壞的活動は、ますます組織的計画化し、特に本年三月に入
つてから急激に増加しており、今後もますます頻発する傾向が予想せられるのであります。
以上
攻撃方法並びに
攻撃目標のところに申し上ずました
火焔びんについてでありますが、最近「
栄養分析法、
厚生省試験所」と題するパンフレツトが配布されている事実がございます。その
内容は
時限爆彈、
火焔びん、
手榴彈、
催涙ガス彈等の
化学的製法を詳細に述べているのであります。右は一部破
壞的分子が破
壞活動に出る準備として、かような
文書を流布したものと認められるのであります。なお昨年十二月より本年四月までの間、
警察職員が拳銃を奪取された
事件は四件を数えて、一部破
壞分子の
家宅捜索に際しまして、
武器、
凶器等が多数押收されていまして、たとえば本年三月二十八日に執行いたしました「平和と
独立」紙の
発行停止に伴う
家宅捜索に際しましては、
刀剣類七十五振、拳銃七ちよう、拳銃、
小銃彈等四十発、
爆薬類三十四件等を押收いたしております。これは
国警本部よりの通報によりましても、明瞭なる事実であります。
以上の事実から徴するに、一部の破
壞分子が将来の破
壞活動に備え、
武器を收集しておる事実がうかがわれるのであります。
第二には、これら
事件の背後に流布されている
武裝暴動等の企図を
扇動する不穏な
出版物について御
説明します。これらの
不穏文書は、
中央地方を合すれば数百にも上りますが、その中で特に指摘いたしたいのは、昨年十一月十四日
連合軍司令官指令によりまして、
発制停止措置をとりました「
内外評論」、及び本年三月二十八日
同様停刊措置をと
つた「平和と
独立」であります。これらはいずれも
発行人、
発行所の記載のない
定期刊行物で、秘密に配布されているのでありますが、その
内容の主張より見て、急進的な
共産主義を信奉する者によ
つて発行されているものであるとの
疑いが濃厚であります。これらの
出版物には、昭和二十五年十月ころより、
武力革命の
必然性、
非合法活動の
必要性、
社会秩序の混乱、警察等
治安機関の内部撹乱、麻痺の唱道、革命的危機の急速な醸成等を主張した論文が掲載されているのであります。すなわちそのおもなものを
説明すれば次の通りであります。
(イ)
共産主義者と愛国者の新しい任
務——力には力をも
つて戰え(内外
評論特別号第四号)
(ロ) 高まる波を権力獲得の革命闘争へ
(平和と
独立第八号)
(ハ) 暴力には力で戰え、
共産主義者と
愛国者の新しい任務(同第九号)
(ニ) 権力獲得の
武力革命のために党を
ボルシエヴイーキ化せよ(同第十三号)
(ホ) 権力獲得のための革命的指導を
(同第十四号)
(ヘ)
共産主義者は蜂起をやり始めてい
るか(同第十五号)
等文の中には、左のような主張、
扇動の記事が見出されるのであります。すなわち「内外反動勢力を打倒するには、広汎な大衆の政治的動員と組織及び武力闘争が必要である。あらゆる形の人民武裝反抗闘争とその組織の積極的強化を進め、国家権力の機構を外部から強力的に破壞することによ
つてのみ、人民の解放が可能である。これら一切の闘争の指導は
共産主義者を先頭部隊とする権力闘争の観点で貫かねばならぬ」として、
武力革命の
必要性を唱道し、あるいは、「本質的に革命は、権力機構の許す合法のわく内で遂行することは絶対に不可能で、
非合法活動の全面的強化なしには、あらゆる闘争の前進と発展はない」として
非合法活動の強化を主張し、あるいは「支配機構の孤立と混乱動揺と麻痺をして大衆の革命的憤激を高める必要があり、武力蜂起には革命的危機の存在が前提となり、それには支配機構の動揺混乱、大衆の不満と憤りの激発及びこれらの條件を革命の勝利に導くボルシエヴイーキ的共産党の存在が必要である。今日の日本では、かかる革命的危機は明らかに成長しつつあるが、まだ成熟していない。
従つてわれわれの全努力は、これらの條件を急速に成長させ、成熟させることに向けられるべきである」と述べ、暴力革命の
必要性を具体的に強調しているのであります。
次いで昨年二月、これら破
壞分子の第四回全国協議会が開催されたと伝えられていますが、この四全協において、正式に軍事方針として武裝闘争の方針が決定されたと伝えられているのでありまして、「
内外評論」第十六号に記載されております。この「
内外評論の記事によれば、従来散発的にただいま申し上げたような非合法
出版物等に掲載されて来た武裝闘争に関する
意見をとりまとめ、さらにこれを発展させ、一つの方針として打ち出しているわけであります。
次いで昨年十月開催されたといわれる第五回全国協議会で決定されたと伝えられておりますが、「われわれは武裝の準備と
行動を開始しなければならない」と題する記事が「
内外評論」通巻第三十一号に登載されているのであります。並びに本年二月非合法に発行された「中核自衛隊の組織と戰術」等において、武裝闘争をさらに具体的に発展した形において明示しており、ことに後者においては、中核自衛隊の組織方法、その
行動特に
武器の入手方法及びその使用方法、軍事訓練、資金獲得方法等を具体的に指示しているほか、必要ある場合には特定人の殺害等の暴力の行使も避くべきではないと主張しているのであります。最近また「さくら貝」と題する
文書が軍事方針の理解と実践のための方針書として、地方ビユーロー、府県ビユーロー、軍事委員会の
責任者に配付されたといわれておりますが、同
文書は、第五回全国協議会の後に、従来の武裝闘争に関する方針書を一層明確に具体化せしめるため、実践の経験を累積検討したもののごとくであります。
なおこれらの不穏な
文書を総合するに、次のような恐るべき武裝革命への三段階の構想が述べられているのであります。まず革命の発展段階を三段階にわかち、第一段階においては、革命軍事委員会の指導統制のもとに中核自衛隊を組織して、これを中心としてあらゆる大衆闘争を権力に反抗することに意識化せしめて、これを抵抗自衛闘争に盛り上らしめること、すなわち武裝暴動の
必要性の唱道、そのための暴力行使の
扇動により、大衆を革命的闘争にかり立てる段階であ
つて、現在はちようどこの段階に当るとしておるのであります。第二段階においては、大衆をかり立て、抵抗自衛闘争をさらに発展せしめて、中核自衛隊の指導統制のもとに、パルチザンを組織せしめるものとし、最終段階である第三段階においては、大衆闘争は国民武裝蜂起と化し、抵抗自衛組織は人民軍に転化して、その中心部隊としてパルチザンが
行動し、指導部隊として中核自衛隊が
行動する段階で、この段階がすなわち総反撃の革命段階としているのであります。
従つて現段階においては、全国的に抵抗自衛組織と中核自衛隊の確立強化が緊急事とされて、着々と
全国各地にこれの結成を見つつあると伝えられ、前述の各非合法
出版物の記事を総合するに、抵抗自衛組織が百二十一、中核自衛隊が二十七、すでにその結成を見たことにな
つており、地域的には関東、近畿、九州、北海道等に多いとされているのみならず、各地において中核自衛隊の入隊宣誓文が発見されているのであります。
次に軍事組織について見まするに、これらの
文書には革命を闘い取るために、権力機関を倒す手段として軍事組織をつくり、武裝し
行動することが必要であるとし、そのためには、あらゆる手段が許されるので、この場合には通常の支配者の道徳は適用されず、またそれに影響されてはならないとしており、この軍事組織の指導、発展に当る者は、中央から地方府県地区に至る一連の軍事委員会で、その任務は、軍事組織の基本である中核自衛隊を発展させることによ
つて、パルチザン人民軍を組織して行くことにあるとされています。中核自衛隊は工場、部落、町、学校その他至るところに組織し、軍事組織の最も初歩的、基本的組織で、十人以内で一隊を組織し、五人ないし十人を小隊、二ないし三小隊をも
つて中隊、二ないし三中隊をも
つて大隊を編成することにな
つており、各隊には隊長のほか必ず一名の政治委員を置いて、軍政の一体と
なつた指揮指導のもとに遊撃戰を主任務とするものとされているのであります。
次に彼らの戰術についてでありますが、遊撃戰術の目的は、敵の弱点、間隙等を
攻撃し、その分散した力に対し、味方の集中した力で打撃を與えることにあ
つて、
攻撃のために結集し、
攻撃の後には大衆の中に解け込まなければならぬとし、敵の武裝力に対する直接的
攻撃を加えることが必要であるとし、また一面権力機関に対する内部工作を強調しているのであります。これが具体的実践として、いわゆるY工作対警工作が打ち出されていると疑われるところであります。
次に
攻撃のための使用
武器については、その主要な補給源を米軍、警察、その他武裝機関とし、直接これを襲
つて武器を奪わねばならぬことを指示しており、なお
武器としては、最初は必ずしも近代的
武器でなくともよく、刀、竹刀、くい、工作道具、農具、石、目つぶし等手当り次第に使用し、また
パンク針、催涙ガス彈、
手榴彈、爆破裝置等簡單なものは自製せよと指示しております。昨年十二月以降、今年三月に至る間に惹起された組織的
集団暴力事犯において使用された
武器の種類は、次のごときものであります。
催涙彈二、
音響彈一、
ピストル一、目つぶし二、
パンク針一、羅針一、
空気銃一、ガソリンびん——
火焔びん三、
カーバイド入りラムネびん一、
ダイナマイト一、爆薬一、竹やり一、こん棒一、
人糞入りびん二、つるはし一、スコツプ一、計十六種二十一点で、かくのごとき悪質破壞的な
内容を持
つた出版物がいかに配布されているかについては、
法務総裁の御
説明にもありました通り、全国的に相当広汎な秘密配布網を持
つていると認められるのであります。昭和二十五年八月「平和と
独立」、「
内外評論」の両紙誌が発行された当初は、その部数もきわめて少く、読者数も極限されたもののようでありました。しかるに翌昭和二十六年一月には、「平和と
独立」紙上に読者組織の擴大を指示する論文が掲載され、同年二月ごろからは読者の擴大を主張して、読者集団の組織化をも提唱しており、その印刷方法も独得な方法に切りかえられて、発行部数の急激な増加に即応することとしたもののようであります。「アカハタ」の後継紙同類紙発刊停止指令に基く捜索の結果、
全国各地の
共産主義者らの自宅あるいはアジトから、しばしば「平和と
独立」「
内外評論」を発見しており、本年三月二十八日「平和と独立」の停刊執行に伴い、全国二千三百余箇所の捜索の結果、「平和と
独立」二万四千六百四十二部、「
内外評論」四千九十九部を押收いたしております。これは
国警本部からの報告によりましても明瞭な事実であります。
以上により、「平和と
独立」及び「
内外評論」が全国的に相当広汎な配布網を持
つているものと認められるのであります。なお、右両紙誌はその輸送には、種々偽裝を施し、荷受人も偽名を用い、荷受人との
文書連絡には別のアジトを使用するなど、この秘密的方法は、きわめて巧妙であり、荷受け場所から読者に配布するにあた
つても、すべて手渡し主義をと
つている模様であります。
昨年二月に開催されたと称せられる第四回全国協議会において決定されたといわれる「組織問題について」と題する論文は、非合法組織活動についての詳細なる指示をしております。さらに昨年八月開催されたといわれる第二十回中央委員会、及び前に述べた第五回全国協議会にてこの問題は一層深く論議の上、推進されたといわれております。これらによると、すなわち非合法組織活動の目的は、党組織を秘密にし、合法舞台を活用しながら武裝革命を推進することにあるとなし、非合法組織の系統は、いわゆるビユーロー組織となし、中央より細胞に至るまで地方分権組織の單純化を主とし、中央と細胞との直結をねら
つているのであります。中央ビユーローは少数の幹部によ
つて構成され、ま
つたく秘匿されております。なお、中央指導の各地方ビユーローが確立せられ、その数は全国で六つにな
つていると疑われるのであります。
前述の捜索、押收による資料によれば、ビユーローは、Vの文字をも
つて表示されていることが認められるのであります。中央ビユーロー及び細胞はいずれも非合法機関紙の発行をなすことにな
つておりますが、さきに申しました「アカハタ」の後継紙同類紙の
発行停止指令によりまして行われた
発行停止処分中には、これら中央ビユーロー及び細胞の機関紙ではないかと疑われるものが含まれておるやに見受けられるのであります。なお非合法組織活動は、絶対秘密保持の原則に立
つているのでありまして、さきに「平和と
独立」及び「
内外評論」の配布関係の際にも申上げましたように、連絡の迅速正確を確保し、アジト印刷所等の確保のために技術活動を担当する組織、技術部すなわちテクと称するものが中央より細胞に至るまでこの原則に書いて行われているのであります。当局におきましては、さきに申上げましたようなV通達なる
文書をしばしば入手しておるのでありますが、それらによれば、Vにおきましては、種々の調査活動を下部に指令している事実がうかがわれるのでありまして、国内
治安機関に対する調査活動の一環として、「人民監視網」と称するようなものがつくられて、
治安機関の動静をビユーロー組織自体において調査をいたしておるというように疑われるのであります。
以上申し上げました事実から推測いたしますと、冒頭に申し上げましたような一連の暴力主義的破
壞活動と、内乱や武裝暴動の
必要性を主張し、その実現のための暴力の行使を
扇動するこれら不穏の
文書とは深い関連があり、いずれも全国的に秘密に組織されたと疑われるような
団体によ
つて、指導推進されているとの
疑いを深めざる得ないものであります。以上客観的な資料に基きまして事実を申し上げました。どうぞ御審議の資料に願います。