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1952-04-25 第13回国会 衆議院 法務委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十五日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君 理事 鈴木 義男君       安部 俊吾君    角田 幸吉君       北川 定務君    高橋 英吉君       花村 四郎君    古島 義英君       松木  弘君    眞鍋  勝君       吉田  安君    加藤  充君       田中 堯平君    猪俣 浩三君       世耕 弘一君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         法務政務次官  龍野喜一郎君         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 清原 邦一君         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         検     事         (法務特別審         査局次長)   關   之君         検     事         (法務特別審         査局次長)   吉橋 敏夫君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  破壞活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き破壞活動防止案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、以上三案を一括議題として質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。角田幸吉君。
  3. 角田幸吉

    角田委員 まず第一にお伺いいたしたいのは、このただいま議題になつております破壞活動防止法案臨時法的性格を持つものであるか、恒久法的な性格を持つものであるか、この点を承りたいのであります。
  4. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。昨日法務総裁からも御答弁がありました通り恒久法典たる刑法の改正はゆゆしい問題であります。本法案現下事態に対処して、暴力主義的な破壞活動危險を防止することを目的とするものでありまして、臨時法たる性質を持つものであります。
  5. 角田幸吉

    角田委員 では臨時法的な性格を持つといたしますと、現下の情勢といたしまして、臨時法的な性格を持つこの法案提出しなければならない理由を、簡單に御説明願いたいと思うのであります。
  6. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 その点は昨日以来質疑問題点になつておるのでありますが、具体的な事情については政府から後刻あらためて資料提出していただいて、資料に基いて説明を願うことになつております。従つてこの際は一般的な説明として、政府委員の御説明を願いたいと思います。
  7. 角田幸吉

    角田委員 それではそれは後刻承ることにいたしまして、次に移ります。  次にお尋ねを申し上げたいのは、この法案におきまして、教唆扇動とを独立罪としておるのであります。このことから危險性があるのかないのかということを認定いたします上において、これはきわめて重要な問題を含むと思うのであります。たとえば取締り当局におきましては、非常に危險性があるという認定で教唆扇動取締ろうとしておりましても、国民が、あるいは一般がいやそんなことは大したことはない、こういうこともあり得るのでありますが、この点についてはどういうお考えのもとに独立罪としたか、この点を承りたいのであります。
  8. 關之

    關政府委員 お答えいたします。現行刑法その他の規定以外に予備、教唆扇動等の新たなる犯罪をこの法案において一部の行為について設定しているわけであります。その分につきましては現行刑法を若干拡張したことに相なるわけであります。そこでこの点につきましては第三條第一項の第一号及び第二号に掲げるがごとき刑法犯罪行為教唆扇動現下事態にかんがみましてきわめて危險性がある。それはこれをこのまま放任いたしますれば恐るべき実害がそこに発生する、それをその実害発生するまで手をこまねいてこれを見ておるということは、公共の安全の確保上忍び得ないことである。この点だけはこの危險性重大性にかんがみて、新たなる犯罪類型を設置しなければならない、かよう考えて設定したわけであります。
  9. 角田幸吉

    角田委員 そこで疑いが起つて参りますことは、こういうことを宣伝をすることは国家社会のためになる、こう信じまして今の行動に入るのでありますが、その際において、この取締りをする公安調査庁に、こういう書類を出して正しい政治をやろうと思うということでこの程度のことが犯罪になりましようか、なりませんかと言つて伺いを立てるようなことができますか、できませんか、この点を伺いたい。
  10. 關之

    關政府委員 行政上の建前といたしますれば、任意にさような点をお尋ねになりまして、その内容がこの法案扇動に当るやいなやというようなことをお尋ねになれば、もちろん好意的にできるだけの見解は御参考までに申し上げることに努めるべきだと思うのであります。問題は今お尋ねような場合でありますが、こういう文書が出ておる、これははなはだ危險なことであるというよう文書自体を、正当なるところの憲法のもとの政治運用に資したい、そういうお気持であるならば、これは内乱の実現を容易ならしめる意図はもちろんないわけであります。またそのこと自体扇動教唆には私どもならないものであろうと考えておるのであります。
  11. 角田幸吉

    角田委員 お話を承るともつとものように思うのでありますが、どうも今の政治をこういうふうにかえて行つた方がよろしい、そのためにはこういう文書あるいはこういう宣伝方法によつて是正した方がよろしい、こう考えまして、そうして今のようなものを持つて相談に行くと、公安調査庁においては、それがいいとか悪いとか、こういうことになる。ところが取締りが将来きびしくなつて行きますと、そういうことがたくさん行われて行きはしないか、そうすると、それがだんだんに憲法検閲を禁止しておりますところにひつかかりはしないか、こういうことが私は憲法論として問題になると思うので、もう少しその辺について、一体どういうお考えのもとにやつてつたか、そしてまたそういうことについて、どういう審議をなさつてつたか、少し詳しくお尋ねをしたいのであります。
  12. 關之

    關政府委員 憲法におきまして禁止されておる検閲は、私どもとしましては、要するに言論、特に出版一般に公表される事前に、官憲においてこれを調査するということにほかならないと思うのであります。そこでこの法案におきましては、その憲法の大原則は絶対に尊重しなければならないということを、一つ基本考えとして持つて行つたのであります。それでお尋ねような場合は、たとえば今お尋ねような疑問におきまして、ある弁護士の方に、これはこの法案のどこに当るか当らないかというようお尋ねをする場合もあるだろうと思います。またそういうものを公安調査庁におきまして御相談にあずかつたときに、そういうことはいけないということを申し上げかねるので、親切に自分の方の見解を申し上げるごとに相なろうと思うのであります。しかしながら、今のお尋ねの、憲法検閲制度の問題もありまして、さようなことの違反の起らないようによく注意しつつ、その点は慎重な考慮のもとに行つて行きたい、かよう考えておるわけであります。
  13. 角田幸吉

    角田委員 そこで憲法検閲禁止というものは、強制的にやつてはいけないが、任意的にはどういう相談をたくさんやつてもよろしい、こういうふうに憲法規定を御解釈になるのかどうか。任意であれば、ほとんど慣例的に見て行つてもよろしいのだ、強制的でさえなければよろしいのだ、こういうふうに憲法規定をお考えになるのかどうか、はつきり承つておきたい。
  14. 關之

    關政府委員 その点は、たとえてみますれば、ある経済法令がありまして、その違反につきまして、当該主管官庁に、このことは違反になるやいなやを業者の方から尋ねて行く、その場合に、そういうことはいかぬというようなことではなくて、やはり役所としましては、できるだけ親切にお話するということは考えられるのであります。ですから、この法制の実施につきましても、一般の方々からお尋ねがありますれば、お答えをする、もちろんこちらから、そういうことは事前相談しろとか、あるいは前もつてどもの方に相談してもらわなければ困るとか、そういうことになりますと、その建前がくずれて参りまして、憲法検閲の問題にも関連する問題にも相なると思うのであります。どこまでも建前としましては、先方の自由な御意思でもつて相談があれば、そこはできるだけ親切にお答えする、そこに一線があると思うのであります。どうしてもおれの方へ相談しなければいけない、あるいは事前に見せなければいけない、そういうことに相なりますと、今お尋ねような御心配が生ずるのでありますが、あくまでも先方から相談に来ればお話する、そこに法律上明らかなる一線があるだろうと私ども考えておるのであります。
  15. 角田幸吉

    角田委員 わかりました。ただ、こういうものについて、相談機関ようなものを置く意思があるかどうか、この点だけを承つておきたい。
  16. 關之

    關政府委員 さよう機関を公式に置くよう考えはございません。そういうものを置きますと、今お尋ねような問題があるわけでありけすから、一にそれは一般皆様方の自発的な御意思にまかして、そうして私の方の業務の余暇におきまして、親切にお答えいたしたい、こういうことに相なると思うのであります。
  17. 角田幸吉

    角田委員 それでは、そのことにつきましては、相談をするようなものを置かないということで、ひとつやつていただきたいことを、この機会に要望しておきます。  その次に承りたいのは、これは意見長官もおいでになるといいと思うのでありますが、法務当局は、国家行政事務司法事務というものを、どういうふうな観念のもとに、これを分解して取扱おうとしておるか、これは学問的にも実際的にも、きわめてむずかしい問題でありますが、どうしても、この法案を見て参りますと、法務当局行政行為司法行為というものをどういうふうな分解のもとに考えておるかということをお尋ね申し上げませんと、各論に入つて十分審議を盡されないと思いますから、この点をひとつ承りたいと思います。
  18. 關之

    關政府委員 お答えいたします。きわめて重要な問題でありまして、意見長官の方からお答えいたすようにお願いいたします。
  19. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 後刻意見長官出席の上答弁するそうでありますから、その先の質疑を続行していただきたいと思います。
  20. 角田幸吉

    角田委員 このことが実は各論に入つて行くについても重要だと思うのであります。団体規制いたしますのに、最後の規制権限公安審査委員会にゆだねておるのでありますが、これが行政機関として動いて行く、そこで私はあと意見長官から承りたいと思うのでありますが、一体治安維持というものは、行政府責任であるのか、あるいは裁判所責任であるのか、こういうことによつてこの問題をきめて行かなければならぬ、こう思いますので、治安維持というものが行政官庁責任であるのか、それとも裁判所責任であるのか、これは憲法上からお尋ねを申し上げておきたいと思います。
  21. 吉河光貞

    吉河政府委員 簡單にお答えいたします。この法案規定されておりまする破壞的団体に対する規則処分、これはその本質上行政上の保安措置に該当するわけでありまして、非常に抽象的な観念から申し上げますと、学説によりますれば、これは行政内容一つの重大な部分をなす検察の観念に入るというふうにも説かれております。かようなわけで本来この種措置行政行為として行われるのが妥当ではないか。特にこの法案規定されまするような、将来暴力主義的な破壞活動が行われる危險を現認しまして、これを基礎に団体に対して規制をかけるというよう措置は、その内容から見ましても行政手続をもつて行われるのが妥当である。また行政手続をもつて行われるためには、その手続があくまで基本人権を尊重した手続によつて法律規定のもとに行われなければならないというようなわけで、この法案におきましては、特に公安調査庁におきまして、規制をする前にあらかじめ特に定められた審理手続によりまして、公安調査庁が集めたあらゆる証拠並びにその証拠に基く事実について、すべてこれを当事者に公開しまして、意見弁解を聞き、また有利な証拠提出を求めるというよう審理をいたすことになつております。行政行為としてこの種規制措置をすることは妥当であると考えております。
  22. 角田幸吉

    角田委員 ただいまの御答弁は、私の質問には答えられていないのであります。そこでもう一度その点に触れてお尋ねを申し上げたいのでありますが、公安審査委員会は、この法律規定によりまして規制する場合、団体解散をすることができるのであります。これは考えようによりましては、法人の死刑の宣言と同じことであります。それからそれらの役職員期限つきの追放ともいわれるような、行動を禁止されておる。その他人権に及ぼすところの影響があるのでありますが、これはそういうことをやることは行政行為としてはいかぬじやないか、もし行政行為としてできるとするとならば、別の観点から憲法的に御説明がなければ納得の行かない問題がありますので、もう一度その問題について承りたいのであります。
  23. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なおその点はかなり重要な問題でありますから、他の法令において行政処分によつて法人団体解散措置が先例としてあるかどうか、その点をあわせて御説明願いたいと思います。
  24. 關之

    關政府委員 その点につきましてはかよう考えておるわけであります。お尋ねのごとく、この法案各種措置が、憲法の保障する基本的人権に重大なる影響があることはお尋ね通りであります。それと同時に、この法案の終局のねらいとするところのものは、さよう措置によつて公共の安全、国家の当面の治安確保するという重大なる点にあるわけであります。そこでその比較考量におきまして、治安確保ということはこれは行政権が全責任を持つて行うべきことである。そうして行政権が全責任を持つて行う措置を、司法権が後日適法なりや違法なりやを判断する。これがこの法案に関する限り、行政司法との権限の分担上妥当なところである、かよう考えたのであります。要するに治安の保持、公共の安全の確保という当面の責任者行政権である。その行政権作用としてこのことを行う。そうしてその違法なりや適法なりやを裁判所において御審判願う、これが憲法建前に沿うこの法案基本的な考え方であるわけであります。  なおただいま委員長からのお指示の点でございますが、現行法におきましても、法人についての解散制度各種立法例にあるわけであります。それによりますと、たとえてみますれば、すでに御存じのことと思うのでありますが、民法におけるところの許可法人の取消しであるとか、あるいは商法、民法を通じての会社の強制解散制度であるとかいうような、すでに各種法人解散という制度があるわけであります。これもすでに與えられたる法人格を剥奪する意味において、きわめて重大なる人権制限になる制度であるわけであります。ところがそれがあるいは純粋なるところの行政権作用として行い、あるいは裁判所の非訟事件をもつて行い、さまざまなこれに制度があるわけでありまして、それらの手続と本法案規定されたごとき手続を比較したしますと、本法案手続はきわめて適法手続でありまして、準司法的に、すべての意見弁解を聞いて、そうしてすべての証拠提出して、きわめて適法人権を保障するところのすべての道を盡しているわけでありまして、要するに問題の要点は、いかにして人権の保障の道を盡して制限を加えるかという点に相なると私は思うのであります。さよう意味で本法案におきまするこの手続は、現行法人解散とか各種制度に比較いたしましても、きわめて慎重な手続規定してあるものであると考えるのであります。
  25. 角田幸吉

    角田委員 私の質問に対して今のはやや納得のできるところがありますが、それを総合して考えまして、私はこう受取つたのでありますが、間違いがあるかどうかをもう一度お尋ねしたいのであります。  治安維持はこれは行政的なものであつて、そうしてこれは内閣にその責任がある。内閣にその責任があるとすれば、治安維持をする必要から裁判所ではなしに、そういう解散行動までしなければその任務が果せないというところに、こういう場合の解散権というものは行政府で持つべきものである、こういうお考えのもとに答えられた、こういうふうに私は納得したのでありますが、さように私が了解してよろしいかどうか、もう一度承りたいのであります。
  26. 關之

    關政府委員 そのように御理解していただいてけつこうと思うのであります。さよう考えまして法律の立案の根拠といたしたわけであります。
  27. 角田幸吉

    角田委員 それでは私の與えられた時間がありますので、あと各論に入りました際に承ることにして、意見長官から先刻の問題をお尋ねすることを留保して、質問を終ります。
  28. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 その点は後刻説明を願うことにいたします。  この際特審局長において発言を求められておりますので、これを許可いたします。吉河政府委員
  29. 吉河光貞

    吉河政府委員 最近のわが国におきまする暴力的破壞活動の実態の概況につきまして、概略御説明をいたすことにいたします。  法務総裁の御説明になりました通り、最近わが国におきましては、あるいは集団暴力により、あるいはゲリラ戰法により、治安機関及び税務署等を襲撃して、暴行殺傷等犯罪をあえてする組織的な暴力主義的破壞活動全国各地に頻発しているのでありますが、これらの事件の概況と、これと背後的関連疑いのある事実につき、客観的な資料に基いて申し上げます。  第一には、最近全国各地に頻発する不穏な破壞活動の概況につき申し上げます。  まず、警察署税務署特審局検察庁等に対する集団的襲撃暴行事件の、最近の発生件数について申上げますと、昨年十二月二十四件、本年一月七件、二月四十一件、三月九十二件、合計百六十四件となつており、なお四月は、二十四日現在までの間で、合計三十四件に達しておりまして、年末の十二月を別といたしましても、本年一月以来急激に増加いたしております。  以上のうち特に暴力主義的破壞的な行為として注目されるのは、税務署に対する放火並びにその未遂六件、爆発物使用三件、警察官及び派出所等に対する殺人、強盗殺人並びに致傷四件、放火並びにその未遂四件、爆発物使用二件、傷害九件等の、きわめて悪質な犯罪行為が頻発いたす傾向が見受けられるようになつたことであります。  また鉄道妨害事件について見ますと、線路妨害運転機妨害信号通信妨害、その他の妨害を合せて、昨年十一月五百五十七件、十二月五百十四件、本年一月四百六十四件、二月四百七十二件、合計二千七件の多きに上つており、列車放火等悪質事犯が、本年二月、三月にはおのおの二件の発生を見ております。  次に自由労働者関係職業安定所その他官公庁等に対する暴行公務執行妨害事件について見ますと、昨年十二月二十八件本年一月五件、二月六件、三月十八件、合計五十七件となつており、これらの事件は日本人及び朝鮮人によつて行われたものであります。  次に在日朝鮮人関係の、政府機関に対する不法事件発生状況を見ますと、十二月六件、二月二件、三月二十九件、合計三十七件となつているのであります。  これら事件のうち、最も悪質な組織的の破壞活動の代表的なものについて述べますと、本年二月二十一日、東京蒲田における反植民地デーにからむ集団暴行事件のごときは、まつたく組織的計画的な破壞活動の事例として見るものであります。また同月二十三日京都市内で開催された、青年婦人統一懇談会主催の、再軍備反対青年婦人大会にからむ集団デモを利用して、一部破壞的分子巡査派出所税務署等を襲撃した事件のごときも、事前に周到の計画を立て、団体組織を基盤として行つたものではないかとの疑いを深めざるを得ないのであります。  次にこれら事件の方法、手口を見まするに、第一に犯行時間は警戒手薄でであり、また犯人祕匿に便利である夜間を利用して、單独犯は少く、三人以上の隊組織で行われている。第二に犯行のリーダーは、組織を基盤とする急進的な破壞分子である疑いのある人物が多く、かつ攻撃目標地域外の人物の参加が非常に多いのであります。第三に、攻撃方法攻撃遭遇戰を避けまして、先制攻撃が非常に多い。第四に、大衆行動の場合は警官隊との正面衡突を避けて、陽動作戰を行い、間隙をついているというようなことであります。第五は個人攻撃の場合、夜間など、誘い出しまたは帰途でやる。第六、犯行目的に応じた武器、凶器を使用して、その目的効果を得んとしている。これらの武器といたしましては、殺人にはピストルその他の凶器、放火には火焔びんなどを投入、爆破には爆薬裝置ダイナマイト妨害には、犯行を確認されたり逮捕されることを妨害するため、目つぶし、催涙彈パンク針の類を使つておる。次に脅迫につきましては、文書の郵送、貼付散布、投石、類似行為人糞入りびん投入音響彈。次にピストル強奪事件は長野、練馬、蒲田等に発生しております。次に襲撃目標が一定しておりまして、治安機関とその所属個人または税務署、鉄道、米軍施設などが目標とされておりまして、昭和二十六年十二月から本年三月までの間、手口別数催涙彈二個火焔びん三個、人糞入りびん二個、音響彈ピストルパンク針、羅針、空気銃、つるはし、カーバイド入りラムネびんダイナマイト、爆薬、竹やり、こん棒等のものが各一個などのことが指摘できるのであります。  以上によりまして明らかなごとく、今やこの種の破壞的活動は、ますます組織的計画化し、特に本年三月に入つてから急激に増加しており、今後もますます頻発する傾向が予想せられるのであります。  以上攻撃方法並びに攻撃目標のところに申し上ずました火焔びんについてでありますが、最近「栄養分析法厚生省試験所」と題するパンフレツトが配布されている事実がございます。その内容時限爆彈火焔びん手榴彈催涙ガス彈等化学的製法を詳細に述べているのであります。右は一部破壞的分子が破壞活動に出る準備として、かような文書を流布したものと認められるのであります。なお昨年十二月より本年四月までの間、警察職員が拳銃を奪取された事件は四件を数えて、一部破壞分子家宅捜索に際しまして、武器凶器等が多数押收されていまして、たとえば本年三月二十八日に執行いたしました「平和と独立」紙の発行停止に伴う家宅捜索に際しましては、刀剣類七十五振、拳銃七ちよう、拳銃、小銃彈等四十発、爆薬類三十四件等を押收いたしております。これは国警本部よりの通報によりましても、明瞭なる事実であります。  以上の事実から徴するに、一部の破壞分子が将来の破壞活動に備え、武器を收集しておる事実がうかがわれるのであります。  第二には、これら事件の背後に流布されている武裝暴動等の企図を扇動する不穏な出版物について御説明します。これらの不穏文書は、中央地方を合すれば数百にも上りますが、その中で特に指摘いたしたいのは、昨年十一月十四日連合軍司令官指令によりまして、発制停止措置をとりました「内外評論」、及び本年三月二十八日同様停刊措置をとつた「平和と独立」であります。これらはいずれも発行人発行所の記載のない定期刊行物で、秘密に配布されているのでありますが、その内容の主張より見て、急進的な共産主義を信奉する者によつて発行されているものであるとの疑いが濃厚であります。これらの出版物には、昭和二十五年十月ころより、武力革命必然性非合法活動必要性社会秩序の混乱、警察等治安機関の内部撹乱、麻痺の唱道、革命的危機の急速な醸成等を主張した論文が掲載されているのであります。すなわちそのおもなものを説明すれば次の通りであります。 (イ) 共産主義者と愛国者の新しい任  務——力には力をもつて戰え(内外  評論特別号第四号) (ロ) 高まる波を権力獲得の革命闘争へ  (平和と独立第八号) (ハ) 暴力には力で戰え、共産主義者と  愛国者の新しい任務(同第九号) (ニ) 権力獲得の武力革命のために党を  ボルシエヴイーキ化せよ(同第十三号) (ホ) 権力獲得のための革命的指導を  (同第十四号) (ヘ) 共産主義者は蜂起をやり始めてい  るか(同第十五号) 等文の中には、左のような主張、扇動の記事が見出されるのであります。すなわち「内外反動勢力を打倒するには、広汎な大衆の政治的動員と組織及び武力闘争が必要である。あらゆる形の人民武裝反抗闘争とその組織の積極的強化を進め、国家権力の機構を外部から強力的に破壞することによつてのみ、人民の解放が可能である。これら一切の闘争の指導は共産主義者を先頭部隊とする権力闘争の観点で貫かねばならぬ」として、武力革命必要性を唱道し、あるいは、「本質的に革命は、権力機構の許す合法のわく内で遂行することは絶対に不可能で、非合法活動の全面的強化なしには、あらゆる闘争の前進と発展はない」として非合法活動の強化を主張し、あるいは「支配機構の孤立と混乱動揺と麻痺をして大衆の革命的憤激を高める必要があり、武力蜂起には革命的危機の存在が前提となり、それには支配機構の動揺混乱、大衆の不満と憤りの激発及びこれらの條件を革命の勝利に導くボルシエヴイーキ的共産党の存在が必要である。今日の日本では、かかる革命的危機は明らかに成長しつつあるが、まだ成熟していない。従つてわれわれの全努力は、これらの條件を急速に成長させ、成熟させることに向けられるべきである」と述べ、暴力革命の必要性を具体的に強調しているのであります。  次いで昨年二月、これら破壞分子の第四回全国協議会が開催されたと伝えられていますが、この四全協において、正式に軍事方針として武裝闘争の方針が決定されたと伝えられているのでありまして、「内外評論」第十六号に記載されております。この「内外評論の記事によれば、従来散発的にただいま申し上げたような非合法出版物等に掲載されて来た武裝闘争に関する意見をとりまとめ、さらにこれを発展させ、一つの方針として打ち出しているわけであります。  次いで昨年十月開催されたといわれる第五回全国協議会で決定されたと伝えられておりますが、「われわれは武裝の準備と行動を開始しなければならない」と題する記事が「内外評論」通巻第三十一号に登載されているのであります。並びに本年二月非合法に発行された「中核自衛隊の組織と戰術」等において、武裝闘争をさらに具体的に発展した形において明示しており、ことに後者においては、中核自衛隊の組織方法、その行動特に武器の入手方法及びその使用方法、軍事訓練、資金獲得方法等を具体的に指示しているほか、必要ある場合には特定人の殺害等の暴力の行使も避くべきではないと主張しているのであります。最近また「さくら貝」と題する文書が軍事方針の理解と実践のための方針書として、地方ビユーロー、府県ビユーロー、軍事委員会の責任者に配付されたといわれておりますが、同文書は、第五回全国協議会の後に、従来の武裝闘争に関する方針書を一層明確に具体化せしめるため、実践の経験を累積検討したもののごとくであります。  なおこれらの不穏な文書を総合するに、次のような恐るべき武裝革命への三段階の構想が述べられているのであります。まず革命の発展段階を三段階にわかち、第一段階においては、革命軍事委員会の指導統制のもとに中核自衛隊を組織して、これを中心としてあらゆる大衆闘争を権力に反抗することに意識化せしめて、これを抵抗自衛闘争に盛り上らしめること、すなわち武裝暴動の必要性の唱道、そのための暴力行使の扇動により、大衆を革命的闘争にかり立てる段階であつて、現在はちようどこの段階に当るとしておるのであります。第二段階においては、大衆をかり立て、抵抗自衛闘争をさらに発展せしめて、中核自衛隊の指導統制のもとに、パルチザンを組織せしめるものとし、最終段階である第三段階においては、大衆闘争は国民武裝蜂起と化し、抵抗自衛組織は人民軍に転化して、その中心部隊としてパルチザンが行動し、指導部隊として中核自衛隊が行動する段階で、この段階がすなわち総反撃の革命段階としているのであります。従つて現段階においては、全国的に抵抗自衛組織と中核自衛隊の確立強化が緊急事とされて、着々と全国各地にこれの結成を見つつあると伝えられ、前述の各非合法出版物の記事を総合するに、抵抗自衛組織が百二十一、中核自衛隊が二十七、すでにその結成を見たことになつており、地域的には関東、近畿、九州、北海道等に多いとされているのみならず、各地において中核自衛隊の入隊宣誓文が発見されているのであります。  次に軍事組織について見まするに、これらの文書には革命を闘い取るために、権力機関を倒す手段として軍事組織をつくり、武裝し行動することが必要であるとし、そのためには、あらゆる手段が許されるので、この場合には通常の支配者の道徳は適用されず、またそれに影響されてはならないとしており、この軍事組織の指導、発展に当る者は、中央から地方府県地区に至る一連の軍事委員会で、その任務は、軍事組織の基本である中核自衛隊を発展させることによつて、パルチザン人民軍を組織して行くことにあるとされています。中核自衛隊は工場、部落、町、学校その他至るところに組織し、軍事組織の最も初歩的、基本的組織で、十人以内で一隊を組織し、五人ないし十人を小隊、二ないし三小隊をもつて中隊、二ないし三中隊をもつて大隊を編成することになつており、各隊には隊長のほか必ず一名の政治委員を置いて、軍政の一体となつた指揮指導のもとに遊撃戰を主任務とするものとされているのであります。  次に彼らの戰術についてでありますが、遊撃戰術の目的は、敵の弱点、間隙等を攻撃し、その分散した力に対し、味方の集中した力で打撃を與えることにあつて攻撃のために結集し、攻撃の後には大衆の中に解け込まなければならぬとし、敵の武裝力に対する直接的攻撃を加えることが必要であるとし、また一面権力機関に対する内部工作を強調しているのであります。これが具体的実践として、いわゆるY工作対警工作が打ち出されていると疑われるところであります。  次に攻撃のための使用武器については、その主要な補給源を米軍、警察、その他武裝機関とし、直接これを襲つて武器を奪わねばならぬことを指示しており、なお武器としては、最初は必ずしも近代的武器でなくともよく、刀、竹刀、くい、工作道具、農具、石、目つぶし等手当り次第に使用し、またパンク針、催涙ガス彈、手榴彈、爆破裝置等簡單なものは自製せよと指示しております。昨年十二月以降、今年三月に至る間に惹起された組織的集団暴力事犯において使用された武器の種類は、次のごときものであります。催涙彈二、音響彈一、ピストル一、目つぶし二、パンク針一、羅針一、空気銃一、ガソリンびん——火焔びん三、カーバイド入りラムネびん一、ダイナマイト一、爆薬一、竹やり一、こん棒一、人糞入りびん二、つるはし一、スコツプ一、計十六種二十一点で、かくのごとき悪質破壞的な内容を持つた出版物がいかに配布されているかについては、法務総裁の御説明にもありました通り、全国的に相当広汎な秘密配布網を持つていると認められるのであります。昭和二十五年八月「平和と独立」、「内外評論」の両紙誌が発行された当初は、その部数もきわめて少く、読者数も極限されたもののようでありました。しかるに翌昭和二十六年一月には、「平和と独立」紙上に読者組織の擴大を指示する論文が掲載され、同年二月ごろからは読者の擴大を主張して、読者集団の組織化をも提唱しており、その印刷方法も独得な方法に切りかえられて、発行部数の急激な増加に即応することとしたもののようであります。「アカハタ」の後継紙同類紙発刊停止指令に基く捜索の結果、全国各地共産主義者らの自宅あるいはアジトから、しばしば「平和と独立」「内外評論」を発見しており、本年三月二十八日「平和と独立」の停刊執行に伴い、全国二千三百余箇所の捜索の結果、「平和と独立」二万四千六百四十二部、「内外評論」四千九十九部を押收いたしております。これは国警本部からの報告によりましても明瞭な事実であります。  以上により、「平和と独立」及び「内外評論」が全国的に相当広汎な配布網を持つているものと認められるのであります。なお、右両紙誌はその輸送には、種々偽裝を施し、荷受人も偽名を用い、荷受人との文書連絡には別のアジトを使用するなど、この秘密的方法は、きわめて巧妙であり、荷受け場所から読者に配布するにあたつても、すべて手渡し主義をとつている模様であります。  昨年二月に開催されたと称せられる第四回全国協議会において決定されたといわれる「組織問題について」と題する論文は、非合法組織活動についての詳細なる指示をしております。さらに昨年八月開催されたといわれる第二十回中央委員会、及び前に述べた第五回全国協議会にてこの問題は一層深く論議の上、推進されたといわれております。これらによると、すなわち非合法組織活動の目的は、党組織を秘密にし、合法舞台を活用しながら武裝革命を推進することにあるとなし、非合法組織の系統は、いわゆるビユーロー組織となし、中央より細胞に至るまで地方分権組織の單純化を主とし、中央と細胞との直結をねらつているのであります。中央ビユーローは少数の幹部によつて構成され、まつたく秘匿されております。なお、中央指導の各地方ビユーローが確立せられ、その数は全国で六つになつていると疑われるのであります。  前述の捜索、押收による資料によれば、ビユーローは、Vの文字をもつて表示されていることが認められるのであります。中央ビユーロー及び細胞はいずれも非合法機関紙の発行をなすことになつておりますが、さきに申しました「アカハタ」の後継紙同類紙の発行停止指令によりまして行われた発行停止処分中には、これら中央ビユーロー及び細胞の機関紙ではないかと疑われるものが含まれておるやに見受けられるのであります。なお非合法組織活動は、絶対秘密保持の原則に立つているのでありまして、さきに「平和と独立」及び「内外評論」の配布関係の際にも申上げましたように、連絡の迅速正確を確保し、アジト印刷所等の確保のために技術活動を担当する組織、技術部すなわちテクと称するものが中央より細胞に至るまでこの原則に書いて行われているのであります。当局におきましては、さきに申上げましたようなV通達なる文書をしばしば入手しておるのでありますが、それらによれば、Vにおきましては、種々の調査活動を下部に指令している事実がうかがわれるのでありまして、国内治安機関に対する調査活動の一環として、「人民監視網」と称するようなものがつくられて、治安機関の動静をビユーロー組織自体において調査をいたしておるというように疑われるのであります。  以上申し上げました事実から推測いたしますと、冒頭に申し上げましたような一連の暴力主義的破壞活動と、内乱や武裝暴動の必要性を主張し、その実現のための暴力の行使を扇動するこれら不穏の文書とは深い関連があり、いずれも全国的に秘密に組織されたと疑われるような団体によつて、指導推進されているとの疑いを深めざる得ないものであります。以上客観的な資料に基きまして事実を申し上げました。どうぞ御審議の資料に願います。
  30. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの破壞活動に関する古河特審局長の報告は、法案審議上また一般治安対策上国会としても注目すべきものがあると思います。もとより政府はその調査の方法等にお  いて十分責任を持たれるものと信じますけれども、一応その点をただしておきたいと思います。
  31. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま申しました概況の御説明は、すべて客観的な文書資料に基いて申し上げたものであります。また事件につきましては、実際に行われた事件についての報告であります。特審局あるいは政府の主観的な判断は一つも入つておりません。
  32. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田嶋好文君。
  33. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 昨日私が質問をいたしたことに対しまして、ただいま吉河特審局長から詳細にわたり資料による御説明をいただきまして、この点に対する内容ははつきりいたして参つたような気がいたします。ただ昨日の質問に関連いたしまして一言だけお確かめをいたしておきたいと思いますことは、今の御説明によりまして、この法案は、講和を控えた今日つくらなければならない客観的事情があるということは、ほぼ明らかになつように思います。しかし御説明内容を聞いておりますと、この資料をもつていたしますならば、もはや疑いもなく、かかる行動は日本共産党の破壞活動に関連するものであると断言していいような気持がいたすのでございますが、この資料のみでは、なお日本共産党がこういうよう背後におるのだということが明らかにならないという現在の特審局のお考え、この点をお確かめをいたしまして、私の昨日からのこの質問を終らしていただきます。
  34. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。ただいま御質問になりました日本共産党のこの種暴力主義的破壞活動組織的実体との関連につきましては、私どもといたしましても、関係治安機関と密接な協力のもとに鋭意調査を進めておるような次第でありますが、最終の結論にはまだ達しておりません。
  35. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時から再開いたします。暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。花村四郎君。
  37. 花村四郎

    ○花村委員 私は総論的な質問を一、二点簡單にいたしまして、詳細なる点につきましては、各論に讓りたいと思います。  そこで一般質問としてだんだん進んで参つたのでありますが、どうも政府当局の答弁をお聞きしておりましても、その答弁のうちで、最も必要と思われる点に対しまして、どうもはつきりしない点があると申し上げてよろしいと思う。何か足のかゆいところを靴下の上からかくような感じがいたすのでありますが、もう少し率直に大膽に事実をありのままに答弁を願いたいということを特にお願いをいたしておく次第であります。  そこで今日の時局にかんがみまして、治安維持の面においてほとんどすべての国民が不安の感に打たれておりますることは事実でございます。しかもこの治安維持に関する問題は、政府の手のみによつてよくすることは不可能である。やはり一般国民の協力に待つにあらずんばその成果をあげ得ないことは明瞭であります。でありまするから、こういう意味におきましても、政府の意のあるところを国民にはつきりと知らしめて国民の協力を求めるという態度に出でなければならないと思うのであります。そこで政府から渡されました参考資料を大体拜見いたしたのでありまするが、この資料によつてすらわれわれは戰慄を感ずる次第でございまして、あらゆる方途をもつてこの暴力主義的な破壞行動を起さんとしつつある、いな起しつつある共産党の姿がありのままに見らるるがごとき感じがいたすのであります。  そこで本法案は暴力主義的破壞活動をする団体を対象としております立法の精神から申しまするならば、そうあるべきことで、これは何らふしぎはないのであります。しかしこういう重大なる法案を立法いたしまするについては、現実にどういう団体がどういう暴力主義的な破壞活動をしておるのであるかということをはつきりとらえて、それに対処する意味の立法であると認められるのでなければならないと私は思うのである。そこで本日渡されたこのもろもろの資料その他今日までわれわれが見聞し、あるいは体験をいたしました共産党の暴力的破壞活動といつたような眼に余る行動をなしつつある共産党を対象として、この法案がつくられるようなことに相なつたろうと思うのでありますが、この点をはつきり法務総裁から御答弁を願つて、国民にこの重大なる法案をつくるゆえんのものは、こういう危險きわまる団体を対象として今日考えなければならないところへ来ておるのであるということを、この委員会を通じてはつきりさせるということが、要するに国民の協力を得る唯一の道であると存じますので、その点をはつきり伺つておきたいと思うのであります。
  38. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。花村委員の仰せのごとく国内の治安をいかに維持して行くかということは、ただ政府のみの力でできるものではなく、国民もともどもこの実体を把握して、政府と協力して日本の治安維持すべきであるという点はきわめて同感であります。そうしてこの破壞活動防止法案のねらいはどこにあるのか、その実体を示せという御議論であります。これもいかにももつともなことであると思います。そこで今日いかなる暴力的破壞活動行つておる団体がありやいなやということであります。今朝政府委員よりその点については詳細に説明したようであります。私は不幸にして他の委員会に出席しておりましたが、その資料によりまして、現下いかなる団体が暴力的破壞活動を行わんとしておるか、また実行の緒についておるかということは、きわめて明瞭になつたかと思うのであります。なおこの法案の趣旨とするところは、講和條約発行後の事態にかんがみまして、およそその思想の右たると左たるとを問わず、いやしくも暴力をもつて治安を乱さんとする者に対しては、断固として抑圧しなければならぬ、これは国民も同感であろうと考えております。要は現在かよう団体があるかどうかということでありますが、今朝の資料によりまして、委員はもちろんのこと、この委員各位を通じまして日本全国民はこれを注視したことであろうと私は確信して疑いません。なお現在さよう団体行動に出でざるものも、将来においてこれを規制して行く必要が十分にあろうと考えております。すでに、例を申してみますれば、過去におきましても何々団体というような名でもつてテロ行為を行うことを目的とするよう団体が出て来ておる事実も、御承知の通りであります。すべていかなる団体といえども、いやしくも暴力的破壞活動をせんとするものは、日本の治安維持の面から見まして捨てておくことはできないのであります。この法案によりましてすべてさよう団体規制して行きたい、こう考えておる次第であります。
  39. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、結局政府団体としてのねらいは共産党である、こうはつきりお聞きしてよろしゆうございますか。
  40. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま申し上げました通り、ただ單に日本共産党ということのみを目的としておるのではありません。すべて広い意味におきまして、いかなる団体といえども、暴力をもつて内乱を企図したり、騒擾を扇動したりするようなものは、すべてこれによつて規制して行きたいこう考えております。
  41. 花村四郎

    ○花村委員 その点は先ほどから申し上げましたようにわかつておるのであります。もちろん本立法の対象が団体にありますることは、條文にも明瞭に相なつておるのでありまするけれども、その団体のうちで、今日この暴力主義的破壞活動をしておる団体と認めなければならない団体は、共産党なりとこうはつきり承つてよろしゆうございますか。あるいはこれを否認なさるのですか。
  42. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は絶対にさような否認はいたしません。日本共産党がそのような破壞活動行つておるとするならば、私はこの法案によつておそらく規制せらるべきものと考えております。しかしはたして日本共産党がただいま現在においてかような破壞活動を行つたかということについては目下調査中でありまするが、およそ今日まで資料によりまして御想像はつくことだろうと私は考えております。
  43. 花村四郎

    ○花村委員 どうもあまりはつきりしないようでありまするが、もう少しこれははつきりさしていただく方がいいと思いますが、またこれは審議半ばにおいてもう少しこの点をはつきりするように御考慮を願いたいという注文をいたしておきます。  それから各国で共産党の破壞活動に関するそれぞれの立法例が出ておるようでありまするが、その立法例の主なるものをお漏らし願えればけつこうだと存じます。
  44. 關之

    關政府委員 印刷いたしました資料は後刻お手元へお届けいたしますが、それに先立ちまして、簡單に要点を御紹介いたします。  今概しての問題で申し上げますると、かような破壞活動に対してどう対処するか、どういう法的処置を講ずるかということが、すべての国を通じての一般的な問題であるわけであります。それでかつてなかつた国が、新たにかかる破壞活動取締りの法規を制定するというような段階になつているわけであります。そこでこれらの外国の資料につきましては、日本が過去におきましてこういうような事情でありまして、外国との各種の文献の取引ができない関係上、確定的に調査することは不可能であつたのでありまするが、今日まで手に入りました諸資料によりまして申し上げますと、大体次のようなことを申し上げることができると思うのであります。  南米を中心とし、そうして南アフリカないしは東亜の附近の国におきましては、かかる破壞的団体の結社禁止自体行つている立法例が多いのであります。そうして次にはこれらの結社自体を刑事罰として処罰するという点が一点と、その以外におきましては、各種行政措置をもつてこれに対処するということが第二段の考え方になるのであります。そこでさきの刑事罰の規定といたしましては、まずその結社を禁止するという形が一つの類型である。そうしてこの種の主義を陰で扇動する、ないしはその主義の実現のために教唆をするとか、あるいは相手方を使嗾するとか、あるいは相手方をあおるとかいう各種行為を、全部一律に処分しておる立法例が多く考えられるのであります。そしてかような刑事罰を新たに設定するのほかに、行政措置といたしまして、概括的な問題としては、まず破壞的分子の入国を拒否する。そして国内に滞在しておりまする外国人である破壞分子の国外退去を強制する、これがまず外わくになるわけであります。そうしまして次には、公職から追放し、あるいは特定の機関、重要産業に対する就職を禁止する、このよう行政措置をとるのであります。そうしましてその次には、特定団体の指定、解散、あるいはその種団体の発行しておる印刷物の発行の停止処分ないしはその団体の構成員に対しまして特定行為を禁止するというような各般の処置がとられておるわけであります。これらは各国のその主権の実情であるとかあるいは憲法の関係であるとか、あるいは法制の慣習であるとかいういろいろの関係によりましては各国さまざまでありまして、今申し上げた点は大体通じてこのようなことが言えるというようなことに相なるわけであります。  そこで次に一、二の立法例を取下げまして、御説明をしてみたいと思うのであります。  まず申し上げたいのはアメリカでありますが、アメリカにおきましては、現在この種破壞活動に対する立法例といたしましては、二つのものがあるわけであります。第一は、第一次大戰の当時制定されたスミス法と称するものであります。これは暴力を手段として政府を転覆し、——その政府とは州または国定両方を指しておりますが、そのよう政府を転覆することの必要性ないしは正当性を唱道する、人に教える、あるいはその必要を人に説く、それを宣伝するというよう各種のこまかいいろいろの用語を使いまして、一切そういう活動が禁止されておるのであります。同時にそれは自分がそういうことをやることはいけない、人にやらせることもいけない、同時にさような結社をつくることを禁止しておるわけであります。これが第一次の、アメリカ国内のスミス法の概要であるわけであります。  次には、昨年多くの論議を経まして制定されましたアメリカ合衆国の国内安全保障法というのがあるわけであります。これは大体といたしまして、外国の支配を受ける全体主義的独裁制を合衆国内に樹立する、そういう運動はいけない、こういう一本の線を打出しておるわけであります、そしてその前文を読んでみますと、外国の支配を受けて、合衆国内に全体主義的独裁制を樹立するというアイデアは世界的規模を持つて活動する共産主義であるというふうにその法律の前文に書いてあるわけであります。要するに今日アメリカにおきましては、そのスミス法の基本理念はやはり国際的背景を持つ共産主義の破壞的活動を防止するということに相なるわけであります。  そこでこの法案ではどういうことを規定しているかと申し上げますと、第一は、外国よりの指導、支配による合衆国内に全体主義的独裁制を樹立することに寄與する行為をなすために団結、共謀、またはとりきめをなすこと、かようなことを一切禁止して、それに、相当なる刑を持つているわけであります。そしてまた公務員などの特定の地位にある者が秘密を他に漏らすとか、かようなことがこの法案規定されてあるわけであります。アメリカといたしましては、すでに前に申し上げたように、スミス法という一つ法律的根拠があるわけでありまして、それ以上にこの法律各種の罰則を明確に規定する必要はあまりないというふうに考えたと思われまするが、刑事的な規定はそれだけであります。現に問題を起しまして約二年間の裁判の結果、有罪の判決を受けたのでありまするが、アメリカ共産党の指導者十一名に対するものは、先ほど申し上げたスミス法によつて処分されているわけであります。アメリカの国内において、合衆国を暴力によつて、これを破壞するというそのことが、共産主義者十一名の幹部の、それは共謀したものであるというふうな犯罪事実になつておるわけであります。この国内安全保障法の行政的な措置といたしましては、どういう規定があるかと申し上げますれば、これはまず第一に、全体主義的独裁制を主張する団体は、全部登録しなければならないということに相なつておるのであります。その登録は自発的な登録を促し、その登録をしない場合には、委員会においてこれを強制して、そして登録をする。一たび登録をいたしますと、すべてのその活動におきまして、非常な制限を受けるわけであります。たとえてみますならば、ラジオの放送をするのにも、自分はこういう団体の者である、郵便を出すのにも、自分はこういう団体の者であるというふうに、全部に団体の表示をしなければいけないという制限を受けるわけであります。かようなことが、一つ行政的な措置となつておるわけであります。さらに注意いたすべきことには、大統領が、国内安全保障法によりまして、非常事態の宣言をした場合には、破壞的分子は、裁判所でない司法省職員の令状によつて緊急拘束することができると、緊急拘束の規定が入つております。かようなことが、アメリカにおける今日の破壞活動取締りに関する法律の一端であるわけであります。  次は、最近ごく新しくできたものとして、南アフリカ連邦にできているもので、その題目としては、共産主義抑圧法ということになつておるわけであります。これはまず第一に、南アフリカ共産党を、非合法として、法律自体において解散を命じておるわけであります。そしてその党に対する同調団体は、司法大臣の指定によつて解散されることになつておるわけであります。この部分は、純然たる行政行為によつて解散を指定するということに相なつておるわけでありまして、そして制限事項といたしましては、非合法団体の構成員となつてはならない。そしてまたすべてのものにその団体であることの表示することあるいはその団体に利益を供與する一切のことを禁止すること、ないしはその団体の構成員であつた者に対して、労働組合の幹部になつてはならないとか、各種の要求を司法大臣がなし得ることになつておるのであります。またこの法律におきましては、非常に強力な調査上の権限を與えておりまして、裁判所の令状によらずに、必要な箇所に立ち入つて調査することができるというよう規定になつておるのであります。あるいは各種出版物その他に対して、司法大臣の命令によつてこれをさしとめをすることができるというような、そしてまた不法団体として宣告された団体の財産は、国家に没收されるという規定が入つておるわけであります。かようなものが、南アフリカ連邦の、共産主義抑圧法の概要であるわけであります。最近の立法としては、今申し上げたようなものがありまして、その他各国におきましても、先ほど申し上げたようなことに相なつておるわけであります。  なおこの席で御説明いたしたい点は、かような自由主義国家群においては、さよう規定を持つているのでありますが、これに対してソビエト・ロシヤにおきましても、やはり同種の規定がここにあるということを御紹介いたしたいと思うのであります。ソビエト連邦におきましては、御承知のごとき国家体制でありまして、その刑法規定の中に、叛逆罪という規定が一本入つておるのであります。その規定を見てみますと、大体日本の條文としては、内乱というような條項にあたるところではありますが、その内容といたしましては、要するに反革命的、反政府的な一切の言動、集会というようなものに対して、銃殺というような重い刑罰をもつて臨み、さらに必要によつては財産の没收、国外追放、あるいは、長期にわたる労働というよう規定がその中に織り込まれているわけであります。またこれらの規定は、他の国に比較を見ない峻烈なものであると、私ども考えているわけであります。  さらにはきわめて特殊な事態でありまして、御参考にならないかもしれませんが、中国共産党治下におきましては、これまたきわめて峻烈、苛酷なる反革命取締りの立法が制定されているわけであります。懲治反革命條例というものが出ておりまして、その中を見てみますと、現行刑事法の根本原則を根本から否定した立法があるのであります。第一には罪刑法定主義を根本から否定しているのであります。たとえてみますと、反革命的なことをやつて、條文にあたらないものは、最も近い條文によつてこれを処罰していいということがうたわれておるのであります。第二には、現在の刑法は御承知のごとくに、刑罰の不遡及、刑罰が制定されたときより遡及しないというのが原則でありますが、この懲治條例の中には、いつまでさかのぼつてもよろしい。十年も、二十年も、いかなる時代にさかのぼつても、反革命分子を処分してよろしい。その行為が、その人の一生にさかのぼるというような趣旨に解される規定があるのであります。このよう規定に基きまして、軍律をもつて厳格に処断する。しかもその裁判なるものは、きわめて特殊な、いわゆる人民裁判と称する特殊な形態をもちまして、大衆的な討議にかけて、感情を注いで、そこで裁判をするというよう立法例になつていると思います。  概要は以上の通りでありまして、これらの点はいずれ後刻立法の資料として御提出いたしたいと考えております。
  45. 花村四郎

    ○花村委員 諸外国の立法例にかんがみ、また日本の現実をながめる場合において、本法案が、むしろおそきに失した感があるのでありますが、遅ればせながら本法案提出せられましたことは、まことにけつこうだと存じます。  それで最後にもう一点お尋ねしたいことは、朝鮮人の、最近の暴力的破壞行為であります。朝鮮人が、わが国に六十五万人余りおると称せられ、北鮮系は四十数万だといわれておるのでありますが、これらの者のうち、多くが最近日本のあらゆるところにおいて、暴力的破壞行為をいたしておりますことは、周知の事実でございます。そこでこういう問題が起きておりますことは、單にこれらの者の自発的行為とは認められない。背後に北鮮人、あるいは北鮮人民共和国との間に血縁的な、また主義的なつながりがあると思われるばかりでなくして、この点に関しましては、やはりその背後には、共産党が大いに指示しておるものがあると認めてよかろうと思うのでありますが、近来各所に頻発するこの朝鮮人に対する問題に関して、政府はどうお考えになつておられますか、この点もはつきりと御意見を承りたいと思います。
  46. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。朝鮮人が各所で破壞的行動に出ておるこの現実は、日本国民みな周知の通りであります。われわれもはなはだ心配しておるところであります。これが背後関係がどうかという御質問でありますが、背後関係に至つては、まだ十分な資料は得ていないのであります。しかしこれらの問題について、どう対処すべきかということにつきましては、なかなか容易ならぬ問題であろうと私は考えております。もちろん内地在留の朝鮮人のうちでも、非常に善良な人、もあるのであります。一部において非常に尖鋭な分子があつて、それらの者の活動によつて、善良なる分子が迷惑をこうむつておるというこの事実は、また見のがすことができないのであります。最も尖鋭な分子に対して、われわれ日本政府におきましても、法規の規定するところによつて、厳重にこれに対処して行きたいと思つております。ただその背後関係いかんということについては、今遺憾ながら確証は得ていないという事情であります。
  47. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 吉田安君。
  48. 吉田安

    ○吉田(安)委員 国が独立を眼前に控えまして、国内治安の現状を考えまするときに、万難を排して今回の暴力主義的破壞活動防止法案提出されましたことは、政府としてけだし当然のことであると思うのであります。まつたく今日暴力主義的なる破壞活動の恐怖を感ずることは、これは決して政府のみではありません。善良なる国民は、すべて有形無形にこのような恐怖を感じておるのであります。もう少しつつ込んで申しますれば、国家の前途をまつたく憂いておるのであります。これは日本国民でありまする以上は、当然のことであると思います。さような時期にあたりまして、本法案提出されましたことは、これはむしろその労を私どもは多といたします。同時にまた、前法務総裁大橋君の時代に立案されつつありました、あの団規法の内容に比較いたしますと、今回の法案が、大分あれを緩和されたことと存じておるのでありまして、この点は、本法案が前団規法の成案よりも、一歩民主的な進歩であるとして、この点も喜んでおるような次第であります。しかしながら、いずれの時代でありましても、かよう治安立法というものは、非常に困難なものであるに相違ありません。ややもいたしますと、これが人権の蹂躪となりまして、かえつて悪法呼ばわりをされるということは、かつて治安維持法のそれのようなものでありまして、この点はよほど立案当時に注意する必要があることは、言をまたないのであります。同時にまた立案当時は、まつたくこれは必要な法案だとして立案し、それが一たび法律になりますると、その運用いかんによりまして、まつたくの必要な善法が、悪法に一変することもありがちなことでありまして、かようなことを考えますると、その治安対策を考え、これを立案するときには、十分慎重にかつ冷静にやらねばならぬことだと存じます。その対策に急なるのあまりに、あるいはまた立法技術の点などに、あまりにとらわれ過ぎますと、せつかくねらいはりつぱでありましても、それが村正の殺人劍にもなりかねないということを、私は痛感いたすのであります。さような点からこの法案考えてみますると、前に申し上げました通りに、これはほんとうに待つてつた法案であり、これを正面からながめますと、まつたく降魔の劍であると同町に、ややもすると、村正の殺人劍になりはせぬかということを心配いたすのであります。それで私はこの際法務総裁に伺いたいと思うのでありますが、はたしてこれは、立案者の総裁といたされましては、降魔の劍であると考えるかどうか。また御心中にはいわゆるこれはうつかりすると村正の殺人劍になりはしないかどうかという点についての、忌憚のない御所見をまず伺つておきたいと思います。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。この法案作成にあたりまして、われわれとして一番考慮を拂つた点は、いわゆる憲法に保障されておりまする基本的人権を守りつつ、国家治安のため、暴力的破壞活動を行わんとする団体規制して行くということであります。それでこの法案を実施するにあたつて、これがきわめて民主的に行われることを要するのでありまするから、それにつきましての構想として、権力の集中を避けたのであります。要するにこの規制措置を行わんとするに、その調査、請求の権限をどこに持たせるか、しこうしてこの規制の決定をどこに持たせるかということについて、特別の考慮を拂つたのであります。すなわち規制の調査、請求につきましては、法務府の外局でありまする公安調査庁においてこれをつかさどらしめ、そうして規制の決定は、これも法務府の外局でありまする公安審査委員会に與える。しかもその決定にあたりまして、十分に民主的に行われるように、その委員の構成につきましては、国会の承認を得て、法務総裁が任命する。この委員の人選とあたりましては、言論界とか、あるいは労働関係者とか、あるいは法曹界からというように、各方面の人を選定いたしまして、国会の御承認のもとにこれを任命するというよう方法をとつておるのであります。しこうしてこの決定に対して、最後的に異議があつた場合には、いわゆる裁判所の判断をまつ、こういう方法をとつておりますので、いきなり行政府において規制処分を、何らの異議に付せずしてやるということを差控えて、きわめて民主的な考えのもとに、これを構成したした次第であります。
  50. 吉田安

    ○吉田(安)委員 法案を見ますと、法案自体はまことにりつぱにできておると思います。ただいま総裁のおつしやつた通りに、捜査をする機関とこれを決定する機関を、全然別個の独立なる機関をもつてなされたことは、これは十分了承ができるのであります。しかしながらそのおつしやるところの捜査の方面及びその決定の方面、ことに捜査の第一線に立つ、いわゆる規制の第  一線に立つ者がいわゆる調査官である。行政官である。最後の断を下すものも、やはり行政府にあるところの行政官と申しますか、そうしてその処分は行政処分である。かようなことになつております。その調査、その捜査、その処分に対して不満であるという場合には、その訴訟の道を開きまして裁判でするということになつております。その建前はまことにけつこうのように存ぜられるのであります。しかしながら、ややもすると人権蹂躙になりはしないかといういわゆる違憲問題も叫ばれようとするこの法案におきまして、さような重大な、捜査から処分までを一括して、別個ではありますけれども、一行政官にまかせるというところに、私は非常なる危險を感ずるのであります。同時にまた、その決定に対して不服があれば裁判が許されておりまするが、その裁判も、いきなり司法裁判に付するというのではなくて、いわゆる行政手続によつてこれをやらぬばならぬということになつておるのでありまして、そうすると、この行政手続によつてみますと、行政事件訴訟特例法の第十條には、いやだと言えば、総理大臣の拒否権がある。その拒否権が存在しておりまする以上は、これはせつかくのりつぱな組織ではありますけれども、結局この二十四條によりまして、訴訟の道は一切が空文に終るというような心配があるのであります。同時にまた、捜査権を持つておる調査官がこれを犯罪があるとして調べますが、これに対する防禦側に立つ方の権限というものは、きわめて薄弱のよう考えるのであります。でありまするから、私どもといたしましては、いやしくもこれを立法する以上は、それでたくさんであるかどうか。いわゆる捜査、処分する方はそれでいいかもしれませんが、これを受ける方の立場から考えますると、一方的に流れがちであつて、そうしてその防禦の方面、権利の主張の方面が、一般訴訟と比較いたしまして、非常に薄弱のよう考えるのであります。大きな目的を持つておりますこの法案でありまするけれども、はたしてそれで十分であるかどうか、われわれとしては非常な危惧の念を抱くのでありますが、大臣としましては、これを出されました以上は、これで十分なりという御信念のもとに出されたとは存じますけれども、この点もう一ぺんあらためて直接に大臣よりお考えを承つておきたいと思うのであります。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。今の御懸念につきましては、この法案について十分に考慮を拂つておるのであります。そこでまず申し上げたいのは、これについていかに弁明の余地を與えておるかという点でありまするが、それは当法案第十三條におきまして、「当該団体役職員、構成員及び代理人は、五人以内に限り、弁明の期日に出頭して、公安調査庁長官の指定する公安調査庁の職員に対し、事実及び証拠につき意見を述べ、並びに有利な証拠提出することができる。」こういう規定を設けておるのであります。いわゆる弁明をし得ると同時に、自分に有利な証拠提出することができる。その次に第十四條におきまして、「当該団体は、五人以内の立会人を選任することができる。」この立会人の監視のもとにこの調査をするわけであります。しかも「弁明の朝日には、立会人及び新聞、通信又は放送の事業の取材業務に従事する者は、手続を傍聴することができる。」かようにきわめて民主的にこの事件を取扱わせることになつておる次第であります。しかもこの公安調査庁長官の請求がありますると、先刻申し上げました委員会において、すべての書類に基く調査をいたしまして、そうしてこれを決定をする段階になるのであります。しかもその委員は、公安審査委員会設置法第三條にきわめて明らかに規定しておるのでありまするが、いわゆる委員会は、独立してその職権を行う、何人の拘束も受けず、何人にも影響されずして、独自の見解のもとに公平な決定を下させるようになつております。しかもその決定に対して異議があれば、これは通常裁判所へ提訴することができるのであります。しかもこの通常裁判所において提訴するのは、普通は特別裁判所に持つて行くようなとりはからいになつておるのを往々見受けるのでありますが、これは第一審から最高裁判所まで持つ行けるようになつております。しかもその審理にあたりましては、急速にやらせる。これは特別に規定を設けまして、ほかの事件の順序にかかわらず、その事件については特に迅速に審理して、百日以内に結審までさせようという方法をとつておる次第であります。しかも、総理大臣というお言葉が出たのでありまするが、これは裁判所において仮処分決定をしたときの場合であります。裁判は仮処分にかかわらず進行して行くわけでありまして、しかも今申し上げました通り、きわめて短期間のうちに審理をして、これを終了させるという建前をとつておりますから、その点についての御懸念はないものと私考えております。
  52. 吉田安

    ○吉田(安)委員 御答弁を聞いておりますと、まことにりつぱな法案よう考えられて参るのでありますが、ただいまの二十四條の行政事件訴訟特例法によるというのですが、これは仮処分のときだとおつしやるが、この仮処分のときが大事なんです。だから、これは一朝決定しますと、その決定は停止する方法がない、そのまま進行しておりますから、団体解散を受けたというときには非常に迷惑する。だからそういうときに訴訟を開いてやらねばならない。ところがそういう場合に拒否権が発動されるということになりますと、何らその目的を達することができない、かような恐ろしさを招来するのであります。従つて、これはあとでまた逐條審議のときにも問題になることだと存じますが、こういう点がこの法案一つの大きな欠陷ではないか、かように私は存ずるのであります。十條以下にいろいろ調査の方法、それからその決定に至るまでの手続は詳細に書いてありますが、これだけのことではわれわれはまだその防禦の方法が実は薄弱であるという理由のもとに御意見を承つておる次第であります。そこは一方では不十分だといい、一方では十分だということになれば、平行線を引くだけでありまして、これは逐條審議のときに讓ることといたしたいと思うのであります。  さらに私はこれが濫用ということなんです。午前中にもいろいろその質問もありましたし、前日もその点が非常に問題になつておるのでありまするが、この濫用を防ぐことができまするならば、これはまことにけつこうなことだと存じます。しかしながら、今言うようなことで行政官的身分のものがこれを調査するというようなことになり、そうして裁判は今言うたようなことであつて、そうしてなるほど決定請求権の機関と、それからこれを決定する機関は別個の機関でありまするが、お気の毒であるけれども、それはやはり司法府の外局であつて、その元締めは司法大臣である。ここに私は権利の濫用ということを考えますると、かつてのことを考えます。たとえば、かつてあの行政執行法でごときは、あれを立法するときはまことにけつこうだとして立法したに違いない。けれども一たびこれができ上りますと、あの行政執行法が濫用せられましたことは、今日から考えましてもまつたく全身はだえにあわを生ずるようなことを感ずるのでありまして、この法案も一たびその運用がよろしきを得なかつたとしますとたいへんなことになる。ことに政治的な野心があるものがかようなものを濫用するということになると、これはどこまで進展して行くか、ほとんど想像がつかないということにも、極端に言えば言えないことはないのであります。これによつて他を圧迫するとか、あるいは独裁フアツショにまでもこれを持つて行けぬことはないというようなにおいのする法案だと、あえて言うてもさしつかえないと思います。かような点が、先日来ここに一たびこの法案審議が始まりますと、共産党の諸君からうるさいほどのやじが飛んでおる。そういう点を心配されておられるのではないだろうか、かように存ずるのであります。この点で私さらにお尋ねいたしたいと思いますることは、先刻角田委員から、この法案は臨時的なものであるか、恒久的なものであるかというお尋ねをいたしておつたのでありますが、特審局長でありましたか、これは臨時的なものであるかのごとき御答弁を承つておるのでありまするが、幸いに総裁御出席でありまするから総裁御自身から、この法案のあり方、いわゆる臨時的なものであるか、恒久的のものであるかをひとつ伺つておきたいと思うのであります。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この法案は決して臨時的のものではないのであります。つまり特審局長の言われたのは、刑法は恒久的のものだ、この意味において、あるいは臨時的というお考えが新たに浮かんだのかもわかりませんが、これは決して臨時にかよう法案をつくつたという意味のものではありません。どこまでも恒久的な法案であるということを申し上げておきます。
  54. 吉田安

    ○吉田(安)委員 臨時的でなくして、恒久的なものだという御意見であります。その点はよくわかるのでありまするが、だれも言うことでありますが、これは一般刑法でもつて取締ることはできないものであろうか。なるほど破壞活動の定義といいますか、その範囲といいますか、本法案ではこれを列挙主義に並べておるのでありまして、一見、あの列挙された内乱罪以下の行動に当るものは犯罪になる。従つて、さようなことをやつたそれぞれの人は、刑法によつて処罰することは明らかであります。ただ現行刑法では、この法案のねらいとするいわゆる団体に対する規制、これがどうしてもできないのだということでありまするが、これは私今日の立法技術からいたしましたならば、多少時間はかかりましても、現行刑法を改正して、そうしてそういうことまでも包括して規制の対象、取締りの対象にすることができないことは断じてないと思うのであります。目新しくかようなものを出されますから、いろいろ神経をとがらかすこともなりはしないかと思うのであります。これが恒久的のものであるとするならば、むしろ一面恒久的な一般原則法たる刑法があるのでありますから、これを改正されてしかるべきでなかつたか、かように思うのであります。従つて将来かようなことに関係しますから、一般刑法を改正なさるというがごときことは、これは法務総裁だけの御意見ではもちろんいけないことでありましようが、総裁としては、一般刑法を改正してかようなことに持つて行くという御意思がありやなしや、その点を承つておきたいと思うのであります。
  55. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。この法案は、暴力的破壞活動団体規制して行く、そうしてそのもとに行われた犯罪行為の処罰を補整して行く、この二点であります。団体規制は、これはどこまでも行政処分で行うことと考えております。刑法でまかない得るものではない。この補整の点につきましては、もちろんただいま仰せのよう刑法改正という問題がありますが、この基本法であります刑法はなかなか容易に改正さるべきものではないのでありまして、どこまでもこの団体行政規制目的とする法案と相まつて、さよう行為に対する処罰を補整して行くということが、本案の目的であるのであります。
  56. 吉田安

    ○吉田(安)委員 その点は了承いたします。  さらにお尋ねをいたしますことは、この法案が、結局組織力によるところの暴力的破壞活動をねらいとするということははつきりいたしたことであつて、まことにけつこうだと存ずるのであります。しかるにここに私どもが不可解千万に思いますことは、一たびこの法案が成案になつて、そうして近くこれを国会に提出するぞということになりますと、その以前に全国の労働組合とここにはしなくも一つの交渉が起りまして、労組の方では、これが提案にならないようにとして阻止運動が始まつて、そうしてどちらから言い出されたことであるか存じませんが、まさに提案されようとする際に、一方当局と労組の代表者との折衝交渉が始まつたのであります。その折衝交渉が遂にある点に行つて妥結ができませずして、提案になるということになると、恐るべし、ああした前後二回にわたるところの、法案阻止の政治的ストライキが敢行されたのでありますが、これは善良なる国民の立場から考えますと、私はまことに国家の不祥事だと思う。ああいうことで幾百万の勤労階級の諸君が、その職場を放棄して政府に迫る、国会を取巻く、その職場放棄の結果、また幾百万という人たちが、足をとられ、その他の障害を受けて、その迷惑、その損害というものは、これはほとんどはかり知るべからざるものであるのであります。そういうことを考えますと、なぜさようなことまでも犠牲にして、労働組合の諸君がこの法案阻止に蹶起せねばならなかつたかということであるのでありまして、今日のわが国各種の労組の諸君は、もちろん本法案のねらいとするよう団体でないことはこれはもう人みな確信するのであります。敗戰後のこの民主主義国家を労働方面においてその一翼をになつて、そうして日本を完全な民主主義国家に発展させようとする勤労者の団結でなければならぬと私は思うのでありまして、またさよう信頼をしておるのでありますから、この法案規制の対象となることは、この法案自体がそういうことになつておるし、政府がしよつちゆう弁明しておるにもかかわらず、ああいうふうな問題を惹起するということは、これはどういうところにその原因があるのか。私といたしましては、私の、労働組合をながめた單純なる頭をもつてしては、正常なる頭をもつてしてはその解釈に苦しむのでありまして、しかもこの法案をまだ提案される前に労働大臣も官房長官までも出て、そうしてその折衝に当られたのが、なおかつ双方了解ができずして二回に及ぶあの大ストライキをやつて、そうして国力を消耗し、国民に迷惑をかける、それでもなおやらねばならぬということは一体それはどこに理由があるか。静かにこれは国会の成行きを見守つても私はよくはなかつたかと思うのであります。それがそういうふうにできないということにはどこにそれの欠陷があるのか。法案自体に欠陥があつてのことか。あるいはまたこれを説かれる法務総裁、労働大臣あるいは官房長官あたりの熱意が足らなかつたためであるか。その他に言うに言われないところの原因が胚胎しておるのであるかどうか。直接その交渉に当られました法務総裁なり、あるいは幸いに御出席を願つております労働大臣なりから、この点を私は遠慮ないところをひとつ承つておきたいと思うのであります。
  57. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。この法案について労働組合が阻止運動をされた、これはもう私は実に意外に思つておるのであります。この法案はまつたく労働組合を対象としておるものではないのでありまして、およそ日本の労働組合で内乱を企図したり、あるいは騒擾を企図したり、そういうようなことはわれわれは想像もしないのであります。正常なる労働組合は、これはこの法案の趣旨を十分に理解をされまして、さよう行動に出られるものでないことを私は確信しております。不幸にいたしましていわゆる十二日のストがあつたのであります。私はその前に一回労働大臣とともにこの法案説明をいわゆる総評の組合幹部とした限り、十分われわれの意のあるところを了解されたと思つてつたのでありますが、しかし結局ああいうようなことになつたのであります。まつたく意外に考えております。私といたしましては、今後この法案目的とするところは、そうしてその内容その他を十分に理解してもらえれば、その間の疑問はすべて氷解されて、われわれの意のあるところは十分理解できるものとこう考えておる次第であります。
  58. 吉田安

    ○吉田(安)委員 大臣みずから意外に思われたというお話でありまするが、われわれもまつたく意外であるのであります。どうしてそれが両方から話せばわかるはずなのに、しかも労組の代表者の諸君は千軍万馬のつわものの諸君であつて、お話になればこれはわからなければならぬすずのものだと私は考える。どうしてそれがわからないかということについて各大臣もお考えなつたことだと思いますが、われわれの考えからいうと、何かそこに背後的関係がありはしないか。あるいはまたもう一歩入り込んで行けば、その内部に共産分子がたくさんおつて、そうしてそういうことに持つて行くのではないか、こういうことも考えるのでありますが、さようなことについて御遠慮のないところを私どもは承りたいのであります。何も花村君が言つた通りに共産党に対してどうこういうのではないのでありますが、今日の日本の共産党、いわゆる合法共産党はさようなことは私はないと信ずる。またあつてはならない。それがあるならば今日ただいまからでもそういうものは解散させてもよろしい。私はさよう考える。何がゆえにそうすのか。今日の共産党、われわれの同僚である共産党は合法的共産党である、公党である。公党がさようなことをやるべき筋合いのもので断じてないことは、これは国民ひとしく承服しなければならないことである。それをやるというに至つては、いかに国会におい議員の発言は自由であるといつてもこれは慎まなければならない。日本国内において合法的政党を組織している以上はさよなことはあるべきことでない。それをあえてやる、しかもさいぜんあの資料特審局長からお出しになつたのだから、ああしたことはかりにも日本共産党のさしがねによつやつているということならば、私は真正面から今日ただいまより共産党ととつ組んで私ども国家のために働かなければならい。しかし私どもはそうでないと思う。今日の合法共産党はそういうものでない。ほんとうに日本の民主主義が発展してりつぱな国になることにわれわれとともに努められていると思う。ただ政策がときに違うから反対するものである。日本を破壞する、内乱を起すということをされるのが日本共産党の使命でないことを私は確信する。しかしながらそれがそうでなくして、やはり今心配しているようなことであるというならば、われわれはどこまでも政府とともにこれと闘わなければならぬことは、これは日本国民として当然です。しかしながらそうじやない、そうでないが、共産主義者——この共産主義者はまた別なのだが、その共産主義者の諸君が日本のこのりつぱな正常なる団体行動をなしている各種団体に潜入して、誤つた道に導き入れようとする形勢がないかどうか、そういう二とについての遠慮のない御答弁を承りたいと思うのであります。
  59. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は日本の労働組合は共産主義者に何らリードされているものとは考えません。しかしながらその内部に相当数の危險分子が入つていることの疑いがあるのであります。しかしてこの法案阻止につきまして、それらの人に支配されておつたかどうかということについては、私はここで言明することはできないのであります。少くとも危險な分子が労働組合の中に入つているということは、これは事実でありましよう。しかし賢明なる組合指導者はさようなものに動かされるというようなことは私は考えられない。またさようになつては相ならぬことであります。ないことを希望する次第であります。
  60. 吉田安

    ○吉田(安)委員 さらにお尋ねいたします。元にもどるようでありまするが、いわゆる法案提出の際に労組の代表者と会われたことであります。これが私ははたしてよかつたかどうかということを懸念する。ねらいがほかにあるとするならば、一体何を好んで政府当局はこの成案ができた、近く法案提出するからというて、これを正常な何も心配のないはずの労働団体の幹部に向つて会見を申し込まれて、そうしてそういうことを協議されるか。そういうことをなさるからああした人たちがやはりそこに疑懼の念を生ずるであろうし、また慎重をとられたということは、決してこれを責めるわけではありません。けれどもそういうことがありましたために、かえつて団体を刺激してああしたことに追い込んだのではないか、こう考えるのであります。聞くところによりますと、あの会見はどちらから申し込んだかといえば政府側から申し込まれた、こういうことを聞くのであります。はたしてそういうことが事実であるかどうか、この際お伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  61. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私は労働組合の幹部に面会を求めたことはありません。ただ法案の解釈について説明をしてもらいたいということの要請があつたものでありますから、私はその席上へ臨んで疑問とするところの氷解に努めたのであります。私からさような会見を申し込んだ事実はありません。
  62. 吉田安

    ○吉田(安)委員 法務総裁はさようなことはないとおつしやるのでありますが、労働大臣にその点の有無をお尋ねしておきます。
  63. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えを申し上げます。実はこの法律が出るということになりまして、労働組合側といたしましては、どうしてもこの法律は撤回させる、ストライキを行つてもやるという意思を決定しておつたのであります。そこで今吉田さんのお話のように、政府はこの法律は何も正常な組合活動を抑制する意思はないのだから、堂々と決定したらそれですぐ出したらどうかという御意見でございますが、もちろんこの法律は、正常なる労働組合を対象としていないことは明瞭であります。しかしながら、組合がそれに反対するというのは誤解があるであろう、趣旨がよくわからないのではなかろうか。それならば、私は、組合の幹部を呼んでよく説明する努力を拂うべきではないか、かように存じまして、四月の五日の日に法務総裁に話して、幹部を私が呼びますから、あなた御足労だけれども来てよく説明してもらえぬか、そして組合がどう言つているかということも聞いてもらいたい。それで四月の五日の朝でございましたが、私の部屋に組合の幹部を呼びまして、そして法務総裁にも来ていただいて、詳しく法の趣旨を説明してもらつたのであります。私はストライキを決定している組合に対して、その誤解を解くために努力を拂うことは当然ではなかろうか、かように存ずるわけであります。なおその後組合側といたしましては、それでも納得をしそうにございません。そこで私どもといたしましては、この法律が正常な組合活動を対象にしていないことは明瞭であるけれども、講和独立を目の前に控えて、もしこのままほうつておくならばおそらくストライキに入るであろう。それは日本の今日の状態から見て決して好ましいことではない。なるほどそのストライキは政治ストであつて違法には違いないけれども、違法な政治ストではあるけれども、それをほうつておけば自然に入つて来る。これは、私どもとして未然に防止する努力は最後まで拂うべきだと考えまして、閣内においてもその意見を述べて、組合が心配している点があるならば、できるだけ自分の方が改めてもこれを修正して提案すべきではなかろうか、かよう考えまして、あれが、四月の十一日でございましたかの閣議に三つの原則を掲げまして——その原則はおそらくごらんになつたでございましようが、第一は、この法律は労働組合の正常な行為制限し、またはこれに介入するように適用するようなことがあつてはならないということを法文にはつきり書こうではないか、これが第一点であります。なおこの法律規制の対象についても、不必要な危惧の念を與えないように検討しようじやないか。第二の点は、この法律に基く行政処分の違法なものに対する救済規定について考えようじやないか。第三は、この法律公安審査委員会の委員に労働組合の代表もまじえたらどうか。この三点を提案いたしまして閣議の了解を得ましたから、その日に官房長官からこれを声明していただいた。私といたしましては、午後になりまして、この点を、もう一度組合の幹部を呼んで政府考えているところを述べて、そうして独立を前にしての組合の態度として切に自重をしてくれということを組合に要望したのであります。その点の事情ひとつ御了察をお願いしたいと思います。
  64. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これをもつて暫時休憩いたします。     午後二時三十五分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議
  65. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を継続いたします。吉田安君。
  66. 吉田安

    ○吉田(安)委員 簡單に一、二点お尋ねいたします。  一体労働組合の諸君が、政府当局と数日、数回にわたつて懇談をされましても、なお納得ができないということは、その原因がどこにあるかということにつきましては、休憩前にそれぞれ御答弁を伺つたのでありますが、そのほかに何か労働対策について、私はえらい欠陥がありはしないか、将来日本はまだまだ治安立法についてはいろいろなものがこれから出て来ることだと存じます。国際的に非常に複雑、微妙、怪奇という状態でありますから、将来もこの法案だけではたしていいかということさえも、実は心配されるのであります。そういうたびごとに、いわゆる正常なる労働団体が、そうしたことで職場を離れて、国民の損害、不利益、迷惑までも無視してああしたことをやられるというのでは、これはたいへんなことであつて国家としては迷惑千万であり、民主国家の発展を阻害することだ、かように存ぜられるのであります。その団体の中にいまわしき分子がありはしないか、あるいは肯景に共産主義的な団体のいわゆる扇動、使嗾がありはしないかというようなことも考えられるのでありますが、もう一つ掘り下げて考えますると日本の労働組合というものは、終戰後新憲法下に認められたに過ぎないのでありまして、その育成途上がまだ短時間であります。従つて完全に行つていないことはもちろんでありまするが、今回のごときことが繰返されるということは迷惑でありまするから、やはりこれは政府の労働対策のその政策の面において至らないところが十分ありはしないか。願わくば、こういう治安立法というようなことが起りまする際には、動働組合はもう少しく静かにあつてほしいものだと私は思うのであります。それができないということは、やはりそこに労働政策の面において重大なる欠陥があると思う。こういうことにつきまして、当面の責任者であられる吉武労働大臣はいかなる御対策をお持ちになつておるか、この機会に承つておきたいと思うのであります。
  67. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話のごとく、日本の労働組合のあり方についてでありますが、終戰直後には、にわかにできました組合でありましたために、その中にはいろいろな分子があり、またみんなの知らない間に一部の極端な者の指導に動かされたという事実はあるのであります。しかし過去七年の間に組合もだんだんと成長いたしまして、私どもの見るところにおきましては、今日の組合におきましては、まず健全なる組合として発展しつつあるものだと考えております。ただ、これは政府の対策というお話もありますが、私どもは終始、日本の労働組合というものは、ほんとうに組合主義の上に立脚して、労働者の労働條件の維持向上というものに専心努力をされるというように、もちろん指導いたしております。しかし組合は、ただ私どもが申しましたからといつて簡單にすぐそうなるべきものでございませんで、要は組合員の自覚と自主的な自制にまたなければならぬと思うのであります。幸いにして私どもの見るところでは、一時の困離なときにおける組合のあり方とは大分かわりつつある、かように実は存じております。
  68. 吉田安

    ○吉田(安)委員 対策のお持ちがあるかという意味お尋ねしたのでありますが、それに対する御答弁はそれておると存じます。しかし今ここでただちに対策いかんということを追究いたしましても、これは無理と存じますが、幸いに労働大臣はかつて労働次官であつたし、また日本を代表して国際労働会議にも行かれたやに聞いておりまして、この方面については相当の権威者であると私は考える。従つて吉武君御在任中にひとつ画期的な労働対策を打立てていただきたい。こういうことが労働組合に対しても、あるいはまた国家に対しても幸いなことと存じます。どうぞひとつそういう点で、労働対策については十分なる御精進をお願いしたい。近くはまた労働法の改正案なども提出されるそうでありますが、そういうことにつきましても、これまた直接労働組合に対する法律の改正でありますから、神経をとがらすことまた当然だと思いますから、そういうことも十分ひとつ御考慮、御精進をお願いしておきたいと思うのであります。  次に、私は、法務総裁がおさしつかえでお見えになつておりませんが、幸い意見長官が見えておりますから、法案について一、二お尋ねをいたしておきます。  この法案を手にしましたときに、十條以下で私が思いましたことは、これは特審局が一歩昇格して擴大強化されるということに一言をもつて盡きるのであります。私どもから考えますると、今政府行政機構の改革をやる、行政整理をやらなければならない、なるべく人員を減らせ、そうして国民の負担を軽減しろ、これは常識であり、相場であります。さような際に、またこの法案のごときことになりますと、そこにいろいろの設備が行われて、人的にも物的にも擴大強化され、従つてその経済面に対しましても、国民の負担はさらに附加されるというようなことにも相なるのであります。これが一つ。それからもう一つは、なるほど当然刑罰法規の対象となる行動については一般刑法で罰する一面、団体に対しては、その取締り規制方法がないからということで、この十條以下の方法によつてこれをやろう、こういう建前でありまするが、団体に対する解散の決定であるとか、あるいは六箇月を下らない範囲におけるところのその活動の停止であるとかいうようなことも、やはり一つの刑罰であるというふうに私は考えるのでありまして、いわんや個人々々の行動、こういうことを捜査し、こういうことを調査し、そうして検事の起訴に値するがごとき、公安調査庁長官が請求状一本出して、それに基いて公安審査委員会がその適否を判断するというようなことを行政面ばかりにまかせるというところに、この法案の行き過ぎがあり、危險がおもんばかられるのであります。こういうことをせずして、むしろ従来の検察の方面を強化する、整備する、あるいはまたその流れをくむ警察機構を整備する、これを強化する、それによつてこういう目的を達成することはできないものであるかどうか。そうすることが、三権分立の建前から行きましても適当なことであつて行政官の行動権限をかように広めるということはいかがであるか、かように存ずるのであります。その点につきまして、意見長官の御意見を承つておきたいと思います。
  69. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お尋ねの点は、純粹の法律問題と申しますよりも、実体問題に触れるところが大きいように存じます。その点については、なお特審局の方なり、他の政府委員からお答え申し上げますが、機構の問題にもお触れになりました。これも同様でございます。後に詳しい御説明をすると思いますが、この特審関係そのものの機構は、端的に申しますれば、委員会と事務部局を対立させようという形から申しまして、この外局の形というものが、最も自然ではないかということが申し得ると存じます。内部の増員とか、施設の増強とかは、それほど大きなものをここで予想はされておらないと私は承知しております。  それか次に規制の処分につきましていろいろお尋ねがございましたが、私はここにあげてありますような事柄は、その実体から申しまして、これは決して刑罰ではない。刑罰という趣旨では適切ではないということから、單なる行政的の措置、保安的な措置の性質のものと考えております。またその方が正しい考え方であろうと存じます。そこでその措置行政部の権限においてやるということになつておりますところから、しからばその行政部内における手続というものは、憲法の精神に格遵して、できるだけこれが慎重に、間違いなく適正な結果を得るように運ばれなければならぬ。そういう観点から、ここにくどいほどの手続規定を設けておるわけでございます。その事前の調査についてだれを使うか、公安調査庁の役人が全部背負つてその調査をするのがいいのか、あるいは検察官を使うのがいいのか、あるいは警察官を使うのがいいのかということは、私の今申し上げた筋から申しますと、むしろ手段の問題と考えるわけでございます。これは立法政策の問題として、一番能率の上るようなものをお使いになるのが適当であるという判断をするほかはない、かように存ずるのであります。
  70. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣浩三君。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務総裁質問があるのでありますが、これは法務総裁がお見えになりましてからいたすことにいたしまして、政府委員の方々に伺うことにいたします。  この法案につきまして幾多の問題があり。労働組合、あるいは新聞協会、その他文化人から反対の輿論が形成されておりますことは、法務府の諸君も御存じのことだと思うのでありますが、それは一にかかつて、この法案それ自体に反対というよりも、この法案が一旦法律として成立した後におけるいわゆる濫用に対する危惧の念であります。これは日本の官憲に対する一般大衆の不信から来ておることだと存ずるのであります。また過去の幾多の実例は、いかに政府答弁を懇切丁寧にいたしましても、一旦法律として出現した以上は、法そのものが生きものとなつて、これを取扱います下級の第一線の官僚がいかに残酷無比なる行動をやつたかということは、過去の治安法、あるいは軍機保護法、国防保安法、その他治安関係に関しまする幾多の法律の適用に当りまして、その証拠をあげろと申しますならば、無数に証拠があげられる。さればそのことにつきましての保障、担保というものが十二分にありませんければ、正当の行為に対しては適用しないというただ口先だけのお答えでは、満足できない。そこで先般来政府当局の御説明を聞くならば、憲法に保障されましたる言論の自由、その他の基本的人権に対しましては極力これを擁護するものであることを言明せられております。そこでさような趣旨のもとにこの法律が適用されるというのでありますが、この法律の第二條にさよう規定があるようであります。この規定は一体訓示規定でありますか、強行規定でありますか、お伺いいたします。
  72. 吉河光貞

    吉河政府委員 事務当局からお答えいたします。本法案の第二條は、この法案による破壞的団体規制及び規制のための調査に関する基準を定めたものであります。第一項は個々の国民の観点から、第二項は団体の観点から、規制及び規制のための調査が、本来の目的を逸脱しないよう規定したものであります。この法案の冒頭に特にかよう規定を設けましたのは、法案性格、使命が、国民の人権に関するところが多いからであります。これを要するに、規制及び規制のための基準を定めたものであります。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はそんなことを聞いたのではありません。これが訓示規定であるか、強行規定であるかというのでありますが、なお具体的に質問いたします。しからば、この第二條に違反いたしまして、われ大衆の基本的人権を侵害いたしたる者がありとするならば、すなわちさような官憲がありとするならば、これは刑法の第二十五章の「涜職の罪」の各條文が適用になるものであるやいなや、あるいはそれ以上の何か保障を皆さんが考えておつたのであるかどうか、伺います。
  74. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。もし濫用が現存する行政規定または刑事規定に触れますときには、当然処断されなければならないものでありまして、本法案には、規制及び規制のための調査に関する基準が、第二條で明らかに規定されておるのでありますから、当面の公務員の職権濫用につきましては、国家公務員法の制度もございます。また刑法第百九十三條に規定する職権濫用罪の規定もございます。濫用がまた職務を違法ならしめるような場合におきましては、国家賠償法による賠償の問題もあり、また当該処分が訴訟によつて取消されることとなるわけであります。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は今の答弁では満足できないのであります。いやしくも権利濫用でありまするならば、警察あるいは検察、あるいは地方公安調査官、この人たちは一定の組織を持ち、一定の権力を持ち、あるいはまた警察官のごときは武器を持つておる組織団体であると申さねばなりません。民間人の組織団体が破壞行動をやりました際には、嚴重なる取締り規定が特に刑法以外に本法として制定せられておる。しからば、対等の意味におきまして、もしこの組織団体である警察あるいは調査官その他の諸君の濫用がある場合には、これは破壞活動でありまして、かよう基本的人権を破壞するような活動をなした者に対しましては、つり合い上、やはりそれに対する制裁を的確にここに規定すべきものではないか、これを規定せずして、ただ訓示規定みたいな條文を置いただけでは、安心ができない。それは私は資料として後ほど要求したいのでありますが、一体刑法第百九十三條、四條なんというものが、いかように適用されておるか。過去の犯罪統計におきまして、ほとんど例がない。ことに治安維持法が施行せられておつた時分には、警察や監獄で殺された人間が数々ある。しかるにもかかわらず、権利の濫用なりとして処罰せられたる公務員の数というものは、実に驚くべきほど少い。それほど人権が守られておつたか、権利の濫用がなかつたかと申すならば、ほとんど世界周知の事実である。かような状況から考えまして、今の特審局長答弁のごときは、これは兒戯に類する答弁である。こんなものは保障になりません。もし刑法において処罰できないといたしまして、こういう特別法を考えて提案される以上は、そのつり合い上、この権利を濫用した者に対する担保といたしまして、ここに確固たる制裁を置くべきものではないか、何ゆえにそれを欠いたのであるか、これは法務総裁に、場合によつては再質問したいと思いまするが、特審局長の御意見を承りたい。
  76. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。濫用の点につきましては、身柄の拘束された場合に起きる事態がきわめて多いと考えておるのでありますが、この法案におきましては、調査は何らの強制権も持たず、任意の調査をもつて行われ、しかも調査員に対しましては、その識見を高めるということが何よりも大事であると考えまして、特別な研修機関を設けまして、十分なる教育をいたしたいと考えております。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 さよう答弁は、はなはだ諸君のかつてな解釈かもしれません。われわれが言うのは、この法律案を出す以上は、均衡を保つ意味におきまして、この第二條の精神に違反した者は、ことごとく処罰してもらいたい、そういう意味なんであります。ただ收容して身体に傷害を加えたなんていうことは意味なさぬ。そんなものは問題にならないのであるが、ここには一般労働組合その他の団体の諸君がやつた行為に対しましては、水も漏らさぬような処罰規定があるのであります。しかるに権利の濫用をした、この第二條の精神に反する行為をした公務員に対しては、何らの制裁規定がないということは、はなはだ片手落ちではないか。さればここに、労働組合その他の人たちの非常に不満を持つ根源がある。もし諸君が真に国民の権利義務を尊重し、基本的人権を尊重するならば、まず第一に、その点を考えるべきものである。ただ人民を縛ることばかり先に考え、それに対して水も漏らさぬように、苦心さんたんして法案をつくり上げ、そうしてこういうまやかしのような訓示規定を置いてごまかそうとしたつてだめであります。この規定の精神に違反いたしまするならば、どういう制裁があるか、これをはつきりしてもらいたい。身体の自由を拘束したというような問題じやない。この第二條の一項二項の原則、これは嚴として守らなければ、諸君は労働組合をごまかしたことになる。しからば嚴としてこれを下部官僚に守らせるに、いかなる担保がありますか、それを説明してください。
  78. 吉河光貞

    吉河政府委員 事務当局といたしましては、先ほども申し上げましたように、公務員は幾多の懲戒制度その他の刑罰法規の適用もあるので、これをもつてまかなうことができると考えます。また長官が責任をもつて部下を監督することによりまして、その監用の防止に努めたいと考えております。
  79. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはなお法務総裁質問することにいたします。今この第二條の精神を犯した、いわゆるこの法律違反者、それに対する制裁が何も規定してない。これがこの法律の根本的欠陷である。その規定しない根底には、ただ人民を縛ることのみに急にして、国民のいわゆる基本的人権を擁護する熱意が、政府当局、立案者に欠けておるからである。かようなことでは、幾多の人権蹂躙問題が発生するだろうと思う。これは実にこの法の一大欠陥であります。これについてはなお大臣に質問することにいたしまして、なおこの第二條の精神に違反せられ、不当なる官僚によりまして彈圧せられます個人あるいは団体の救済保障、こういうことについてどういう規定があるか、箇條をひとつ言つていただきたい。
  80. 關之

    關政府委員 お答えいたします。公安調査庁の職員が職権を濫用した場合にどういう処罰があるか、これは前に局長がお答えしたことに関しまして、立法上交叉した点を第一にお答えいたします。刑法百九十三條ないし百九十四條の涜職の罪でありますが、百九十三條は一般的な公務員の場合でありまして、百九十四條から百九十六條までは特別な、身柄を拘束し得る権限を持つ公務員について規定されておるのであります。これらの規定の趣旨を考えまして、全然、強制調査権でない、任意の調査権を持つだけの公務員に対しまして、同様の規定を設けることは、刑法などの趣旨から見ていかがかと思いまして、特にここに入れるのを削除した次第であります。第一点はさようであります。  次に全体的にどういうような保障があるかということでございますが、これは私どもとして、その点については特に慎重な考慮を沸つた次第でありまして、第一には、第三條の暴力主義的破壞活動の概念をどういうふうに規定するか、この点が第一の基本問題になるわけであります。これをあいまいにいたしますれば、それはどういうふうにも解釈適用されることに相なるわけであります。これを厳格に規定したという点が、お尋ねの第一の点だろうと思つて、従来努力した点であります。そこですべて第三條第一項の行為は、刑法に現に規定してあるわけであります。このように、この法において、新しい概念は一つもありません。すべて刑法に載つておる規定でありまして、刑法の慣例により、あるいは学説によつて確定しておる行為であります。その予備、陰謀、教唆扇動等も、すべてこれは法令規定ある言葉ないし慣用語でありまして、そういうふうにがつちりといたしますれば、その概念に現われたそれだけの行為によつて、まずそれが幅広く解釈されるということは全然ない、それはすでに裁判所においてきめられたことであるから、それによつて解釈する、こういうことになります。  第二点に考慮いたしましたのは、第四條と第六條の規定に相なるわけであります。この第二條の精神は、第四と第六條の規制処分の中に十分に取入れておるのであります。これをごらんいただきますればわかることと思いますが、要するに一回破壞活動をした団体がありまして、それだけではこの規制にはかからない、それが継続または反覆しまして、将来において同様な破壞活動をするという明らかな危險がある、それがしかも十分に立証されるというような條件でしぼりまして、ことさらに但書におきまして、「相当な限度を越えてはならない」と規定いたしております。私どもは実際的には四條、六條の実体規定の中に、このような考慮が十分に拂われてある、かよう考えておるわけであります。  次には第十條以下の規制手続でございます。これにつきましてごらんいただけばわかるように、第十條から十七條の趣旨であります。そして十分なる審理さらに審査の決定をいたします場合には、その決定書のあらゆる証拠というものを、こちらでもつて謄本を相手方にお渡しいたしまして、そうして相手方の弁解を十分に聞き、さらに決定書を委員会に送付する場合には、その決定書を当該団体に送つて、さらに直接当該団体から意見弁解が委員会に送達される、かような構成になつております。次には調査権の問題であります。調査権につきましては、これは……。
  81. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの説明ようなことは私ども読んでいます。そんなことを聞いているのではない。あなたの説明したようなことを前提として、それがそれだけで十分保障されるというなら、なぜ第二條を置くのですが。私どもの言うのは、今あなたの説明したような條項を頭に入れておいて、なおこの二條を置いたのだから、この第二條の精神に違反したようなものに対しては制裁規定がないじやないか、それが第一点である。なおまた違反して規制せられた者に対しては、いかなる救済方法があるのかということです。すでにこの法律が発動して、そうして基本的人権が権利の濫用において侵害せられた場合に、それがまつたく権利の濫用であつて、第二條の精神に違反した活動であるということが認められた場合に、どういう救済規定があるのかということをお尋ねしているのだ。あなたのは法案説明だ。法案をつくるまでに、あなた方が、この基本的人権の侵害と公共の福祉との調和をはかられたことはわかります。今説明を聞いてわかります。私はそれを言つているのではない。そういう調和の結果できたとしても、なお権利濫用の場合があるがゆえに、そういう場合にいかなる救済規定があるかということなんです。よく質問を聞いて答弁してもらいたい。もう一ぺん重ねて言います。この法律ができたとして、しかるに二條の精神に違反してここに無辜の民が罰せられるような場合において、その規制した公務員がいかなる制裁を受けるのであるかというのが、第一点の質問つた。これに対しては、十分な答弁を得られない。第二点は、その権利の濫用において規制せられた団体、個人に、いかなる救済方法があるかということをお尋ねしているのです。
  82. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。先ほど来御説明通り、第二條は規制並びに規制のための調査の基準を示したものでありまして、ただいま御質問よう権限の濫用が行われた場合におきましては、それぞれ先ほど御説明申し上げましたよう制度に従いまして、できると考えております。
  83. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、刑法の百九十三條、四條は特別の構成要件がある。この第二條の精神に違反した公務員であつても、刑法規定に当てはまらないものが出て来る。そうすると、それに対しては何らの処分、制裁方法考えなかつたか。国民を処罰することに対しては、詳細なる研究をしながら、これを濫用した者に対しては、何らの考慮を拂わない。私の質問に対して的確な答弁ができないところでも、それはわかつている。それがそもそもこの法案の重大欠点なんだ。それに対して国民に安心さしてもらわなければならない。この権利の濫用した者に対して決定的の制裁を規定しておかぬと、諸君はここでいいかげんな答弁をなさつておるけれども、一旦できてしまつたら、下の張り切つておりますところの警察官、調査官、そういう人間がいかにこれを活用するか、過去の経験において、われわれはほんとうにいやというほど思い知らされておることなんで、ここに労働組合その他の文化団体が反対しておるところの重大な点がある。それに対して政府は、何らの保障をしておらぬ。担保がない。これが最大欠陷であるのだが、どういう担保があるのかということを聞いているのだが、満足な答弁を得られない。一体不当に規制せられた団体やなんかが、どういう方法で救済せられるのであるか、国民を処罰するのもよろしかろう、そういう事実があれば、ほうつておくわけに行きますまい。しかし無実の罪に泣く者を一人でもつくることは、法治国民としての恥であります。用意周到なる法案をつくる以上は、そういうことに対して頭を働かさなければいけない。どういうところにそれがあるのか、重ねてお尋ねいたします。
  84. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。本法案による処分の違法につきましては、先ほど来御説明申し上げました通り国家賠償法による救済もあり、なお話訟によつて争われることになつておるのであります。
  85. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 訴訟によつて争うとなつておるのでありますが、いわゆる公安、審査委員会において行動制限せられ、あるいは解散を命ぜられたそのものが正式な訴訟を起しましても、その訴訟がいつ果てるやらわからぬ。諸君は二十四條かにおいて百日以内に裁判しなければならないという規定でもつて十分だとお考えになつているかしらぬが、しからばお尋ねします。百日以内に裁判しなかつたならば、その裁判はどうなる。百日を越えた裁判はどうなるのであるか。
  86. 吉河光貞

    吉河政府委員 これは百日以内に裁判が完結しなかつた場合にはどうなるというよう規定ではございません。裁判所としてでき得る限り努力をいたしまして、百日以内に完結するように努めるということに相なつておるのであります。私は部外漢でよく存じませんが、裁判所におかれましても、最近は訴訟の促進ということに非常な努力を拂われておるやに承つておるような次第であります。
  87. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 諸君は処罰方面については用意周到にやるが、さて救済方面については実にあいまいだ。第二も訓示規定だかなんだかさつぱりわからぬ。また第二十四條の三項ですか、これだつて百日以内にその裁判をするように努めなければならぬ、こんな規定を置いて一体どれだけの効力があるか、裁判官が判決に熟したと思わなければ——その自由なる心証において裁判をすることは憲法が保障しておる。百日たつて、ところがまだ裁判するに熟せぬ、判決するに熟さないと裁判官が認めたならば裁判することはできない。もしまた百日の期間内に判決しなければならない、そういう判決でなければ無効だということになるならば、これは司法権に対する重大な問題になります。裁判官の良心的な判断というものに対する重大な制限になる。さればこの二十四條の三項のごときは有名無実なものだ。何も救済にならぬ。そして一審に不服で検事がまた上訴するということになれば、今の最高裁判所の機能をもつてするならば十年はかかるであろう。そういうことをやつてつて何もこれは保障にならぬ。一体この調査官あるいは公安審査委員会行政処分に対して、規制行為に対して、その規制せられた者の救済はどこに書いてあるか、このほかにありますか。一旦解散を命ぜられてしまつたならば、それつきりなんです。裁判をやればいいといつても、これはいつ果てるやらわからぬ。その間一切活動はできない。団体も個人も一切沈黙を守らなければならぬ。しかもそれが第二條の精神に反してやられた場合にどういうことになるのか。これに対する救済もない。こういう一方的な法案というものであるがゆえに、一般大衆は信用しないのです。どこかにもつとありますか。刑事補償制度もあるというようなことでは、解散を命じたよう団体はどうなるか。解散を命ぜられて数箇月の間活動のできなかつたよう団体、それがたといあとで無効のものであつたということになつて天下晴れてみたところが、これは非常の基本的人権の抑圧ということになる。一体どういう方法をとればいいのですか。それについてあなた方はやはり人民の規制せられる側にも立つて、頭を働かして法律をつくつてもらわなければ納まらぬです。しかしそれに対してあなた方が答弁できないならしかたがない。  そこでなお私どもが、くどいようでありますけれども、そうして苦労をなさつておるところの政府委員に対しましてはなはだ礼を失した激越な言葉を用いるようになりますのも、われわれは過去の経験を考え、そうして将来の日本の民主化を憂えるためであります。これがアメリカの行政官のように、御存じのように、今政府委員説明されたアメリカのマツカラン法にしても、あるいはタフト・ハートレー法にいたしましても、行政官の長官であるトルーマン大統領はいずれも拒否をしておる。そうしてこれは基本的人権を抑圧するものなりという詳細なる教書を発表して拒否をしておる。行政の長官がうこいう態度でありますから、下の行政官がみなそれにならつて、一応権利の濫用のごときことは想像されない。同じ内容のものでありましても、日本では非常に危險性がある。時の行政府が率先してこういう法律を提示するとするならば実に危險がある、そういう意味において、私どもは実に遺憾であります。この救済的な問題につきまして、もつと慎重に考慮してもらいたい。  それから第四條の問題でありますが、この四條と第三條の規定と、あるいは第六條、この規定考えて見ますと、これは憲法第二十一條に禁止せられております検閲制度が復活するのじやないかというおそれがある。なぜならば、第三條によるならば、要するに「その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画を印刷し、頒布し、公然掲示し、若しくは頒布し若しくは公然掲示する目的をもつて所持すること。」その次には「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、左に掲げる行為の一をなすこと。」というふうに規定して、そうして第四條には、団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つた団体が将来行うであろうことによつて規制する、こうなつておる。そうすると、この団体がこういう文書によるところの、第三條に触れる行為をやつたものもやはり規制せられる、破壞的活動団体となるのでありますから、その団体がまたこういうことをやるかやらぬかというようなことになりますと、結局この間におきまして調査官の活動が始まる、ここに検閲制度というものがどうしても行われるということは、実際上としてこの三條、四條を発動する限り当然起つて来る。憲法二十一條に検閲制度を禁止した、これは申すまでもなく言論の自由を保障いたした條文でありますが、これとどういうふうに調和して解釈されるのであるか、お尋ねいたします。     〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席)
  88. 關之

    關政府委員 お尋ね憲法第二十一條の検閲につきましては、出版等の行われる事前に官憲においてこれを調査する、そういう趣旨であると私どもは存じております。つきまして、今のお尋ねの点でありまするがこの法案におきましては、その将来の可能性、将来のおそれということを一応基準の要件とはしておりまするが、それがために、すべて将来出版されるおそれをもつて調査するとかいうようなことは全然いたすべからざるものであり、いたす考えもないわけであります。すべてさようなことをせず、任意の調査によつてような可能性を立証してこれをもつて基準の條件とする、さよう考えておるわけであります。
  89. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなた方は調査という項目を一章にして、調査という詳細な項目を設けておる。そうしてしかも将来破壞活動をやろうとする推定を得なければならない。そうしなければ規制できない。この詳細な調査権を規定しておるのみならず、現在行われた犯罪行為の結果を処罰するのが刑法の大原則である。犯罪の処罰の大原則であるのに、将来の、まだ発現せざる、結果の発生せざるものをすでに規制するということは、これは法治主義の一大変革であります。かよう刑法の大原則に反した條文を置いておる。そうしてこの詳細な広汎な調査権と、この将来を規制するという法治主義のまるで変則とを結合して考えるならば、あるいはひそかに、あるいは大ぴらに文書その他のものを検閲する、調べるということがどうしても私どもはあり得ることだと考える。そういうことを絶対にしないという方法が一体ありますか。しないで一体調査のできる方法がありますか。いろいろ新聞紙や機関紙やいろいろの文書、そういうものを調査して、そこで初めてこれは破壞活動をなおやるであろうという推定が出るはずなんです。ある結果から処罰するというならわかるが、将来のことを処罰せんとするのでありますから、検閲というものがどうしても、検閲という言葉じやないにしても、調査という言葉であつても、いわゆる憲法の禁止している検閲と同じ働きを調査官がするであろうことは、もう火を見るよりも明らかです。それをしないで調査できる方法がありますか。その確信をお尋ねします。
  90. 關之

    關政府委員 この第四條及び第六條におきましては、明らかに将来の可能性を條件として規定しているわけであります。そこでこの法案は、要するに将来の危險性のある実害行為が起るという、その危險性を除去するということがこの法案建前になるわけであります。そこでその可能性の認定をどうするかという問題が一つの問題になるわけであります。それにつきましては、すでにこれは現行法におきましても、各種立法例がそこにあるわけであります。たとえてみまするならば、少年法において、将来犯罪を犯す少年を少年院に收容するものであるとか、あるいはその他十数の立法例を私どもは数えることができるわけであります。さような次第でありまして、その将来の可能性というものにつきましては、それらの立法例におきましても、すでに用いられている考え方であるわけであります。そこでその認定をどうするか。これはもとより重大な問題ではありまするが、そのためにこの第四條、第六條におきましては、一回すでにやつた。それが「継続又は反覆して」、この考え方は、大体この団体がこのようなことをやる一つ性格を帶びる。そこで過去のことも一応判断の資料になりましようし、さらにまた現在において同じような方針を堅持しておる、その方針を撤回しない、各種の材料によりまして、その将来の可能性は合理的に一応認定ができる、かように私どもは確信している次第であります。
  91. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、憲法二十一條に禁止してある検閲制度というものは、絶対に復活させるのじやないという十二分なる確信をお持ちであると承つてよろしいですか。
  92. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問通りであります。強制的に事前出版物の納本を命じて、これを検討し発行を禁止する、あるいは許可するというようなことは絶対にするつもりはありません。また事実上さよう規定に近づくよう行動、たとえば破壞的な団体に対しまして出版物一切を持つて来い、持つて来なければ困るぞというようなことをこちらから申し出て、そういうふうなことを干渉するようなことは絶対にするつもりはないのであります。御了承願いたいと思います。
  93. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 労働組合その他の団体に対しまして、その事務局なりをたずねて、その機関紙や何かを調査するというようなことを絶対しないと、こう承つていいのか。持つて来いと言わぬということは今あなたの答弁でわかつた。しかし自分で出かけて行つて調査するのならどうか。そういうこともやるのかやらぬのか。
  94. 吉河光貞

    吉河政府委員 さようなことはするつもりはございません。一般に頒布されているものを見るのは自由でありますが……。
  95. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおこの団体規制というようなことは、行政権によつて行う司法作用だと思いますが、本法の立て方を冷静に考えますると、ここに公安調査庁長官というものがあつて、これが第三章の規定によつていわゆる請求権を持つ。これのみ請求権を持つ。これは政府機関であることは間違いないと思う。そこで結局この破壞活動をした団体を追究するのは政府機関の人で握られているということが第一の前提である。次にそれを審判決定いたしまするのが公安審査委員会というものでありますが、この公安審査委員会というものの性格は何でありますか。
  96. 吉河光貞

    吉河政府委員 行政機関でございます。
  97. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、政府公安調査庁長官というものは、どういう人がなるか、あるいは国務大臣がなるか、そこはわわりませんが、政府機関が請求権を持つて、そういうこれを審査するのも政府機関である。行政作用としてやるのであるから、それもいたし方ないかもしれませんが、それだけに実にここに危險性発生すると思うのであります。しかもその中でも公安調査庁長官というものは、まつたくの政府直属の長官である。公安審査委員会というものは、多少独立したよう機関に相なつておりますが、その権限からいうと、まつたく逆になつておるのじやないかと私には思われる。公安調査庁長官のところには、規制を受けられる要するに被告が、いろいろの証拠意見を出すことができるとなつておるのであるが、公安審査委員会には証拠の申出ができない。そうしてまたこれは公開もしない。いやしくも行政権作用であるといたしましても、こういう裁判作用、審判作用というものをする際には、なるべく裁判所手続というものを準用し、その精神に沿つた動き方をいたしませんと、そこに弊害ができる。審判するのであります。処分するのであります。そこでせつかく公安審査委員会というようなものをつくりながら、この審査員会の活動というものははなはだ奇怪である。この規制を受けんとする人たちの証拠申出も、手続もなし、公開の手続もなし、純然たる書面審理で事を決定しようとしておる。これはどういうわけでこういうことをやられたか、はなはだ審判の原則に反する。ここにはなはだ秘密裁判のにおいがするのであります。こういう規定というものは変則だと思う。公安調査庁長官に対しまして証拠が出せるならば、何がゆえに裁判官たる地位にある公安審査委員会に対して証拠を出せないか、ことに公安調査庁に出します証拠も、彼らの一方的認定によつて不要だと思えば、その証拠を取上げないことができる。こういう規定に相なつておるのであつて、非常に証拠制限せられておると思うのでありますが、いわんや公安審査委員会には何らの新たなる証拠提出もできないということはどういうわけであるか。  なおついでにお尋ねしますが、この公安審査委員会は、法文には独立して職権を行うようなことが書いてあるけれども証拠の收集も調査も何も、委員会としてはやる手続が書いてない。これでは何もできません。ただ公安調査庁長官から送られて来た書類だけを見て審判するという立て方になつておる。そうすると、この公安審査委員会というものは、まつた政府の言いのがれのごまかしの委員会であつて、中身は何もないのじやないか。アメリカの国内安全保障法の第十三條を読んでみましても、アメリカの破壞活動取締委員会というものは、あらゆる調査ができることになつておる。しかるに日本の委員会は職権調査は書いてない。これは職権調査ができるのであるか、できないのであるか、法文上から明らかでないと思います。そうするとこれはどういう結果を来しますか。公安調査庁長官というものは政府の一機関である。これに意見証拠を出せといつても、気に入らぬ証拠ははねのけることができる。そしてそういう政府の一機関がつくり上げた文書だけを委員会に送る。委員会はただその文書だけを見て判定する。しかもその委員会の任免権は法務総裁にある。しかもその任にたえないと思えば、法務総裁が首を切ることができる委員会だ。そうすると、一体この委員会は中正な判断をする能力があると見るべきかどうか、その点について説明を願います。
  98. 關之

    關政府委員 法務総裁のもとに公安調査庁長官と公安審査委員会を相対立さしたこのシステムでありますが、これは現行法立法例から申しますと、海難審判の制度がちようどこれに該当するものであります。そこで先刻法制意見長官の申されたごとく、この団体規制の事務は行政事務である、従つて行政権において行うべきものであるというふうに私ども考えております。そしてこれをどういう機関で構成するかという問題につきましましては、この原案に盛るがごとき制度がきわめて妥当であるという結論に到達したのであります。  さてお尋ねの次の問題といたしまして、しからば公安審査委員会においては、書面審理ではないか、証拠公安調査庁長官の一方的なものだけしかそこに出せないではないかというお尋ねだと思いますが、この点につきましては、公安調査庁長官の一方的な証拠だけではないわけでありまして、十分に相手方も出し得るというシステムになつておるわけであります。まず証拠の方から申しますと、この法案におきましては、十三條によりまして、意見を陳述し、証拠の全部が提出できるわけであります。そうしまして、その次に十五條に不必要な証拠についての規定がありますけれども、この不必要と申しますのは、民事訴訟その他の規定の大体の考え方がこれにあたるわけであります。それはこの訴訟が、この事件……。
  99. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の言うておるのは公安調査庁のことではないのもす。公安審査委員会のことだ。
  100. 關之

    關政府委員 どうぞもう少しお待ちを願いたいと思います。そういたしまして、その次にそこで証拠が出せることになりまして、さらに一切のこちらの証提は向うにお渡しする、これが第十七條に規定してあるわけであります。そしてその次には、公安調査庁長官が処分の請求をいたしますと、その請求書の写しを向うに渡すわけであります。向うに写しを渡しますと、それに基きまして当該団体は第二十條によつて意見書を出すことができるわけであります。これは二十條の四項に規定してあります。この意見書には、もちろんその自分の意見と、これを立証する一切の証拠提出して、委員会に直接自分の意見、自分の証拠として出せることに相なつておるわけであります。さようなわけでありまして、当該団体意見、弁明、証拠はすべて公正に委員会に提出ができるというシステムになつておるわけであります。そこで、かようなシステムになつておりまするから、あらためて委員会においてそれ以上審判というようなことはする必要がなかろう。特に行政簡素化の趣旨もありますし、事件の敏速な処理という建前からいいまして、かようなシステムで人権の保障の点も十分に考えられるのではないかと考えて、かよう制度をとつたわけであります。
  101. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今のあなたの説明は條文からすぐ出て来ないのだが、第二十條の四項には、「当該団体は、第一項の通知があつた日から十四日以内に、処分の請求に対する意見書を公安審査委員会提出することができる。」ということがある。これは意見書です。証拠ということは書いてない。そうして二十一條には、「公安審査委員会は、公安調査庁長官が提出した処分請求書、証拠及び調書並びに当該団体提出した意見書」と書いてあつて、当該団体提出した証拠というものはない。どこへその証拠というものは入るのですか。当該団体公安審査委員会に出す証拠というものは第何條なんですか。この二十條の四項の「処分の請求に対する意見書」という中には証拠も入つているという意味ですか。そこがわからぬ。
  102. 關之

    關政府委員 私どもは、この意見書の中には、証拠を添付して自分の意見を述べることができる、さよう考え証拠提出できるものと考えております。
  103. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それははなはだ不都合だと思う。それならそれのようになぜ條文を書かないのか。——最初の約束通り法務総裁がお見えになりましたから、私の質問はこれで留保しておきます。
  104. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 鈴木義男君。
  105. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 本件については、わが党としては質問いたしたいことが非常にたくさんあるのでありますが、今日は総括的質問ということでありますから、できるだけ総括的な点についてだけ質問をいたしまして、詳しいことはまた後日逐條の審議の際に讓りたいと思います。なお私が質問ようと思つておりましたこととほとんど同じことを、ただいま猪俣委員から御質問が事務当局に対してあつたのでありますが、私は特に責任ある法務総裁から、後日のために同じ点についてはつきりした言明をこの席において得ておきたいために、ごく簡單に繰返す点があることをお許し願いたいのであります。  まず第一は、この法案の第二條に「この法律による規制及び規制のための調査は、前條に規定する目的を達成するために必要且つ相当な限度においてのみ行うべきであつて、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。」とありますが、立案者、ことに政府として、ほんとうに誠心誠意御実行になるつもりで御提出なつたであるかどうかということを、まず承りたいのであります。
  106. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この二條にかよう規定を設けましたのは、この法案の実施にあたつて、いやしくも憲法規定されております基本的人権その他労働組合の正常なる活動を規制するものではない、また、さようなことがあつてはならぬという原則を示したものでありまして、政府といたしましては、この法案実施にあたりまして、この線に沿つて万全を期したい、こう考えております。
  107. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 もしこの條文を、訓示規定にせよ、命令規定にせよ、実行されるといたしまするならば、この法律それ自身が矛盾して来るということに相なるように思うのでありまして、これは同じ法律の中に、矛盾律を侵して規定しておるとしか思えないのであります。今猪俣委員から詳しく御指摘になりましたから、その点は省略しておきますが、しからばこの第二條の規定違反して規制を行つたというような場合に、その責任者に対して、いかなる制裁を加える処置をとられるのであるかということを承りたい。
  108. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。もしもかような事犯が起つた場合におきましては、それぞれ、あるいは刑法の職務の濫用に関する規定に基く処罰もありましようし、また公務員としての処罰規定もあり、あるいは懲戒といつたよう規定もありますから、これらの規定の適用におきまして万全を期したい、こう考えております。
  109. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 これは後日のために承つておくのであります。そこで憲法第二十一條は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」ということになつておるのでありますが、結社の自由ということを、政府はどういうふうにお考えになつておるのでありましようか。いかなる場合でも、日本国民は結社を構成する自由を持つておると思うのでありまするが、政府は、憲法にかくのごとく規定してあるにもかかわらず、好ましくない結社は、これを禁止する自由を持つておるとお考えになつておるのでありましようか。
  110. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。今鈴木委員から仰せになつように、憲法においては、結社の自由を規定しておるのであります。従いまして、政府において好ましからざる結社はこれを禁止するとか、あるいは解散させるとかいうようなことは、絶対にあり得ないと私は考えます。
  111. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 ところがこの法律は、終局の目的は、政府から見て好ましくない結社を解散させ、少くともその活動を制限することを目的としておることは、一見明瞭であります。この点が憲法違反でないというならば、その根拠を明確に御説明つておきたいのであります。
  112. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。憲法規定されておりまする基本的人権といえども、これは憲法第十二條によりまして、ある種の制限を受けておるのであります。いわゆる公共の福祉に反するようなことがあつてはならないのであります。本法に規定しておりまする団体解散と申すのは、いわゆる国家基本秩序を破壞せんとする、また破壞した団体を言うのであります。かよう団体は保護さるべきものでない、これは憲法第十二條の規定から明瞭であろうと考えております。
  113. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 公共の福祉という議論が出て来ますると、これは非常に重大であり、かつ根本的な議論になり、あまりに抽象的な問題になりまするから、ここで総裁と論争しようとは思わぬのであります。憲法公共の福祉というものを、しかくむやみに濫用することを許すという趣旨において規定したのではないと、われわれは了解いたしておるのであります。具体的に真に国民生活の上に許しがたい害悪が現われました場合に、初めて発動し得るものでありまして、あらかじめそういう場合を予想して、一定の行政処分規定し、あるいは刑罰を規定するがごときことは、憲法の予想せざるところであると思うのであります。それは議論になりますから省略をいたしまして、次にこれも猪俣委員から事務当局に質問がありましたから、ただ簡單に一点だけ確かめておくのでありまするが、憲法第二十一條の第二項は、「検閲は、これをしてはならない。」とはつきり検閲を禁じておるわけであります。そこである意味において、これは例外を許可を許さないと私は考えるのでありまするが、しかしこの法律を実施して行きまする場合には、事前検閲ということは行われないかもしれませんが、実質上はきわめて厳格な検閲が行われることになる。そしてそれが言論界に及ぼす影響というものは、きわめて深甚なものがあると予想されるのでありますが、そのことに対して政府としては、少しも実質的検閲を行うと同じよう影響をこの法律の施行によつてもたらさない、こうお考えになるのでありましようか、承りたいのであります。
  114. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。むろんこの法律におきましては、事前検閲はどこにも認めていないのであります。ただ日本の基本社会秩序を破壞しようといつたような意図のもとに、ある種の出版物が出され、その事実が発見された場合において、初めてこれが問題となるのであります。
  115. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 本法が必要になつた理由として、午前中いろいろな実例を提出されたのでありまするが、そういうものだけでなく、しかも左右問わずということになつておるのでありますから、実際危險なる破壞活動が行われておる実例を、もつと具体的なものについて承知いたしたかつたのでありますけれども、近時一部の者の破壞活動として伝えられておるもののうちには、やや誇張されて伝えられておるものがあるのではないか。その誇張するものがどこにあるかは、また問題でありますけれども政府においてかくのごとき法律を通過させることに便せんがために、必要以上に誇大に宣伝するようなことがないかということを承りたいのであります。     〔鍛冶委員長代理退席、山口(好)   委員長代理着席〕 これは先日行われた、ある学生と警官との衝突事件であります。これは東大の事件ではないのであります。そのことが新聞記事に載つておりまして、学生が大いに警官にいどんだために、乱闘になつて検挙されたというふうに伝えられておつたのでありますが、その場におつた新聞記者が私に語つたところによると、見ておつたところでは、完全に逆である。警官の方で大いに学生を挑発して、そして縛るように努力したのである。それじやなぜそう書かないのか。その書いたのでは警視庁にお出入りがとめられるのである。こういうことを申したのであります。そういうことは、あまり高いところにおられる方はちよつとおわかりにならぬかもしれないのでありますが、しばしば事実と逆なことが報道されるというようなことがあるのでありまして、そういう点について、総裁としてはここに提出された資料がことごとく事実に即したものであるという御信念であるかどうか、承つておきたいのであります。
  116. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。報道がしばしば事実と矛盾しておることがある。これは善意の矛盾もございましようし、悪意の矛盾もございましようから、一概に言えないのであります。しかしながら事の真相というものは、あらゆる面からこれを検討いたしますると、およそわかるのであります。そこで今朝提出しました資料は各方面からのいろいろの調査をした結果、これが真実なりと信じて、かように諸君のごらんに供したわけであります。なおこれはあるいはそのうち間違つたことはあるかもわかりませんが、しかし大体において真実性はあると考えておる次第であります。
  117. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 これはこの法案審議する資料として承りたいのでありますが、即答していただくのは無理かもしれないから、もし無理であれば、適当にあとでもよろしゆうございますから、事務当局なり、総裁から御提出を願いたいのであります。廃止になりました元の治安維持法、これも改正になりましてから非常に詳細になつて、分化したわけでありますが、最後の治安維持法をさすのであります。第五條「第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議若ハ煽動ヲ為シ又ハ其ノ目的タル事項ヲ宣伝シ其ノ他其ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ徴役ニ処ス」、第六條「第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行其ノ他生命、身体又ハ財産ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス」、それから第十一條「前條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議ヲ為シ又ハ其ノ目的タル事項ノ実行ヲ煽動シタル者ハ」——いわゆる私有財産制度の廃止について扇動したる者は「七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」、第十二條「第十條ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行其ノ他生命、身体又ハ財産ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」、こういう二つずつの規定、これはあたかも本法案の骨子とする扇動を処罰しようとしていることに似ているのであります。むろんこの旧治安維持法におきましては、結社を組織したる者は死刑、無期、七年以上の懲役というような重いことになつているのであります。情を知りて加入したる者、集団を指導したる者、そういう者は重く処罰せられ、これに座したる者の非常に多いことはよく存じているのでありますが、こういうよう協議、扇動宣伝ということによつて処罰せられ、検挙せられたる者がどれくらいあるかを承りたいのであります。
  118. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。ただいま資料はございませんので、いずれ調査して申し上げたいと存じますが、しかし終戰前の治安維持法関係の資料はほとんど残つていないような状態でありまして、できる限り集めて提出いたしたいと思います。
  119. 山口好一

    ○山口(好)委員長代理 法務総裁行政監察委員会の証人として今証人台に立つことになつているそうです。  それでは暫時休憩いたします。     午後四時三十六分休憩      ————◇—————     午後五時四十九分開議
  120. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑に入ります。鈴木義兄君。
  121. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 次にこの法律が一旦制定されましこそれが濫用されるということをわれわれは一番遺憾に思うのでありますが、占領治下において一番われわれが濫用されそ被害をこうむつているものは、いわゆる占領目的違反ということであろうと思うのであります。これくらいわかつたようでわからない概念はないわけでありまして、いろいろな事例が占領目的違反署の名のもとに処罰され、いろいろな制限を受け制裁を受けたことは御承知の通りであります。旧治安維持法では、目的遂行のためにする行為、そうして教唆扇動、協議、宣伝などという言葉が非常に濫用されて、実に涙ぐましいような犠牲者がたくさんできたことは私の親しく体験しているところであります。今度は教唆扇動というこの概念が濫用されるのではないかということを一番おそれるわけであります。つまらないポスターを張つたとか、レポをやつたとかいうようなことが、みな、いわゆる目的遂行助成行為ということでやられたのでありまするが、しまいには弁護することまで目的遂行罪でやろうとした形跡があるのであります。私は相当共産主義者の弁護をいたしまして、河上博士であるとか大塚教授であるとかいろいろな人を弁護いたしたのでありまするが、そううい場合に、警保局長から、あまり共産主義者の弁護をしないように、すると検挙せざるを得ないことになるからという警告を受けたことがあるのであります。私自身の立場というものが共産主義でないことは、その当時も今もかわりがないのでありまして、しかもそれでもなお共産主義の助成行為として私を検挙しようという。むろん私はそれに屈せず弁護を続けたのでありまするけれども、真に戰慄すべきことであります。こういうことを考えてみると、教唆扇動がいかに将来濫用されるかということはよく見えるよう考えるのであります。そこで総裁にお伺いいたしておきたいのは、扇動とか教唆とか宣伝とかいうこの概念は、どういうふうに理解され区別して考えておられるのであるかということをお尋ねいたしておきたいのであります。
  122. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その点につきましては逐條審議のときに詳細政府委員から御説明申し上げることといたしまするが、これは御承知の通り、私が鈴木君に申し上げるまでもなく、教唆はある特定人を対象にしているのであり、扇動は、ある多数の者に対して、ある行為の実行の意思を挑発するために行われる行為行動であります。この行動が最も危險性を帶びているものと私は考えておるのであります。ことに内乱の扇動をするというよう行為は、これは国家治安の見地から許すべからざることであると考えております。ただいま鈴木委員から治安維持法のときのお話を承りましたが、われわれも友人につきその他についてそのために苦しんだ幾多の事例があるのであります。その当時の治安維持法の取扱い方とこのたびの法案の趣旨、目的は全然別個の観点からやつたので、きわめてその対象は限定されておるのでありまして、かような見地からいたしまして、決して再び治安維持法のもとに行われたようなことは起り得ないとわれわれは考えておるのであります。
  123. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 その形式的な法律解釈を承つたのでありまするが、むろん教唆が特定人に対するものであり、扇動がある特定人に対するものであるということはわかつておりまするけれども、一人の人間に影響を與えてもやはりこれは扇動であるということは大審院判例の示すところであります。ゆえに、実は教唆といいい、扇動といい、しかく明瞭な区別を実際にはつけがたいのであります。私はむしろ教唆だけで論じて必要にして十分でないかと思うのでありまするが、とにかくこういうあいまいな言葉というものは非常に危險である、こう考えるのであります。そうしていわゆるデモンストレーシヨン、示威活動、集会、出版、そうして結社の解散までこの法律によつてできることになつておるわけでありまするが、こういうことは一体行政処分でやり得ることであるかということが一つの大きな疑問であると思うのであります。政府はどういう根拠に基いて、こういういわば団体人格の消滅、死刑を言い渡すようなことが司法処分でなく行政処分でやれるというのであるか承りたいのでおります。
  124. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 行政処分解散をできるやいなやという御質問ように承るのでありまするが、これは政府行政権の発動として、国家治安面から見たる処置でありまして、決して政府においてなし得ない事項ではないと私は考えております。ことに——これは逐條審議のときに申し上げたいのでありますが、これまでの法律のもとにおきましても、種々な観点から団体解散行政処分等でやつている実例があるのであります。政府治安責任に当つている以上は、かよう危險団体に対して行政措置をとり得るものとわれわれは確信しております。
  125. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 この点も非常に根本的問題でありまして、議論をすると長くなりますから避けますけれども、三権分立の建前に立つて考えるときに、行政処分にはおのずから守るべき節度があるはずであると思うのであります。かくのごとき行為まで行政処分でなすということは行き過ぎであると私は考えるのであります。とにかくこういう行政処分、いわゆる公安審査委員会の決定に基いて集会の活動が禁ぜられ、出版が禁ぜられ、結社も解散され、あるいは役職員の活動を停止せられるというようなことになりますると、その被処分者の社会的影響というものは、ほとんど刑罰を受けた者と異ならないのでありまして、その後実際に就職をするとか、あるいは他の健全なる活動をいたしますのにも社会が相手にしないのであります。その事実は、レツド・パージによつてやめさせられた者が、いかなる道に走つてどういう行動をなしておるかということを少しく御調査になればただちにわかることであります。古い話でありますけれども、今村力三郎弁護士の「法廷五十年」の中に「芻言」という文章が納められておりまするが、あの中に難波大助事件の真相を説明して難波大助があらゆる機会に合法的な正しい労働運動、社会運動をやろうとしておつたけれども、いかなる集会に行つても、いかなるデモンストレーシヨンに参加しても、最初から禁ぜられ、け散らされ、検束されて、何らの発言も許されないということから、直接行動に出ずるほかはないということに断固たる決意をなした。そして最後までその決意をかえなかつたことは、あの記録に明らかなるところでおりまするが、あれと同じ心境に多くの者を追いやるのでありまして、これくらい私は行政政策としてま刑事政策としても危險なものはないと思うのであります。こういう点に対して、軽々に行政処分をもつてそういう活動の制限をすることが、かえつて公共の福祉に害があるものではないかとおそれるのでありますが、政府はいかにお考えでありますか。
  126. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は鈴木委員とまつたく見地を異にいたしておるのであります。かよう団体に対する規制行政処置でやるべきものだと確信しております。しかもこの行政処置に対して不服があつた場合において、初めて裁判所はこれに関與し、裁判所が最終的に決定をなされるということが、三権分立の趣旨にまつたく適合したものと深く信じている次第であります。ただいま今村力三郎先生のお話を聞きましたが、私の最も尊敬せる先輩でありまして、あの方の書物を私も読んでおります。しかしあのときの労働運動彈圧は——私はこれをしいて彈圧と申します、はなはだ不都合であつたと私は考えておるのでありますが、今日の労働組合運動においては、さような点は毛頭も心配はないのであります。どうぞ労働組合が自覚いたしまして、そうしてまた政府もこれに対してできるだけ助長をはかつておるのでありますから、さようなときと今日のときとは、まつたく隔世の感がいたします。本法案の趣旨とするところは、まつた国家基本秩序を乱そうとする団体そのもものを規制ようとするものでありまして、労働問題について毛頭も阻止する考えのないことは、この法案全体を通じて一貫しておるのであります。
  127. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 りくつだけ言うとあれでありまするから、一つの例を申し上げまするが、中日友好協会というのがあります。私もその会員の一人であります。たとい主義は異なりましても中国と日本は隣保の関係にありまして、常に密接に交際もし、その国内事情もよく調査し、研究し、理解しておらなければならぬという建前から、相互に文化の交流をはかつておる団体でありまするが、団体の二、三の主事あるいは役員が、北京で発行される新聞を日本に持つて参りまして、各官庁、経済団体その他に二、三百部配布しておつたのであります。これによつて現在の中共の事情というものがよくわかつて、われわれとしては、これを多としておつたのであります。たまたまその中にマツカーサー元帥を誹誇する記事があつた、そういうものを配布したというために、占領目的違反の罪に問われまして、軍事裁判に付せられ、ただいま監獄に入つておるわけであります。われわれはその人を救出するために運動をいたしておりまするが、そういうふうなことは、ちよつと常識から考えたならば、あり得べからざることと思うのであります。マツカーサー元帥は専制者ではないはずであります。末端忠勤をぬきんでる者は、それをあえてやるのであります。それをマツカーサー元帥の尊厳を冒涜したというようなことでやつた。これと同じことで、かくのごとき法律が実施せられまする場合に、吉田茂の尊厳を冒涜したということで、末端忠勤をぬきんでんとする者が、諸種の出版物等に臨むことがないと保障することは、私はむずかしいと思います。現にそういう兆候が多々見えておるのでありまして、その点について十分政府の戒慎を促しておきたいと思うのであります。  そこでいま少し事例をあげて考えてみたいのでありますが、戰時中に行われておりました言論、出版、集会、結社等臨時取締法というのがあります。あるいは軍機保護法、国防保安法というのがありまして、精神的には今回の刑事特別法とともに、この破防法と一連のつながりがあるように私は見るのでありまするが、戰時中どういうことが行われたかと言いますると、虚偽の事実を流布した罪ということで幾多の者がやられたのであります。その中には、たとえば有名なアメリカのコレスポンデントでヤングという人、この人のお父さんはカリフォルニアで大の親日家であり、むすこも長く日本におつて、日本の理解者であり、日本をよく世界に伝えるために努力しておつた人であります。たまたま戰時中日本軍が南京において営んだ暴虐の行為、婦女子をはずかしめた行為、あるいは非武裝都市である重慶を爆撃したという事実を書いて郵便に付して送ろうとした。その郵便を開いて見て、ヤング氏を陸軍刑法違反で起訴したのであります。私弁護の任に当つたので事案をよく存じているのでありますが、遂に有罪に処せられた。ヤング氏はアメリカに帰つてから新聞の上に書いておりますが、日本の裁判所というところはおもしろいところで、真実を述べ、真実を書くと、それが虚偽という認定を受けるのである。自分は南京の事情と重慶の爆撃の跡をこの目で見て来たことを述べたのであるが、そういうことは日本陸軍に限つてやらないことである、虚偽の事実を流布したものであるということでやられた、こういつて感想を書いておつたのでありますが、非常にはずかしく私は感じたのであります。またある法学博士は五、大人集まつた晩餐の席上で、大本営はうそばかり発表している、アメリカは二十九隻の戰艦しか持つておらないのに、大本営は今日も一隻、今日も二隻というように戰艦を撃沈したという報告をして、合計するとアメリカの持つていない戰艦をたくさん撃沈したことになつているということを語りましたために、軍機保護法、言論集会等の取締法に触れまして、懲役二年の求刑を受けた。ある高名なる紳士は、隣組の会の席上で東條大将の頭が少しおかしいぞ、敵はB二九という最新式の武器で空からガソリンに火を放つてまいてよこすのに、バケツと竹槍でこれに向えということを訓練するのは、ちとどうかしているということを申したために、憲兵隊に拉致せられて、これまた懲役一年、いずれも私が親しく関與した問題であります。こういうことは、今考えればほとんどこつけいに近いものでありますが、大まじめな顔をしてこれが嚴然と裁判されておつたということを考えますと、私た本法が健全に運用されることを信ずることができない気持がいたすのであります。ことに私自身の戰慄すべき経験を語るをお許しくださるならば、二年ほど前に、ある青年が私をたずねて参りまして、非常に緊張した面持をもつて、私は吉田首相を殺そうと思うが許してくれますかという相談を受けたのであります。それは、私の演説に感奮興起して、今の内閣は持てる者の代表者であり、資本主義の番頭であつて、とうてい勤労者と無産者の代表者ではないということを聞いた、今のよう内閣がある限り、われわれの幸福はもたらされない、それは要するに吉田総理がおるからだ、あれを倒せば、この内閣は倒れる、そういう意味でひとつやろうと思うが、どうだろうか。これは大まじめで、精神異常者ではないのであります。相談を受けて私は驚いたのであります。懇々と、われわれの主張する吉田内閣打倒ということは、そういう意味でない、肉体的に一人の人を殺すというようなことでなくして、政権を交代させるという意味であることを説明いたしまして、選挙の都度だんだん投票を獲得して、合法的に進むほかはないのであるということを説明した結果、彼は反省をいたしまして、今静かに農村で農事に復事いたしておりますが、実に危うかつた。しかしその当時かりにそういうことが行われるようなことがあつたとしても、私は法律的におそらくは罪を問われることはなかつたと思う。私は決して殺人教唆したつもりはないのである。けれどもこういう法律ができて来ますと、この教唆扇動しというのでありますから、共産党はもちろん、われわれ社会党も常に反動吉田内閣の打倒を叫んでおるわけでありまして、結局そういうことを教唆する団体があるから、そういうものが現われるのであるというロジツクが成り立つのである。そんなことをただいま申せば、おそらくお笑いになるだけだろうと思いますが、後日この法律がそういうふうに活用されるときがないということは、ただいま戰時中の若干の実例を申し上げただけでも、申すことはできると思うのでありまして、その点を大いにひとつ政府として御反省を願いたいと思うのであります。そういう点について、いかなる用意があるかということをお尋ねいたしたいのでありますが、時間がかかりますから省略いたしまして、できるだけ質問を簡略に切り上げたいと思います。  そこで内乱罪の予備、陰謀、そしてその教唆、それから——えらいむずかしいことにだんだんなつて来るのでありますが、まず内乱罪における、政府の転覆とか邦土の潜窃ということはわかりますが、朝憲の紊乱ということについては、政府はどういうふうに御解釈になつておるのでありましようか。それを承つて質問を進めたいと存じます。
  128. 吉河光貞

    吉河政府委員 総裁にかわりましてお答えいたします。私どもといたしましては、朝憲の紊乱の朝憲の観念は、国家統治の基本組織というふうに解釈いたしております。
  129. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それは判例に書いてある通りでありまして、判例ならそうでありますが、国家統治の大本というものは、結局憲法であり、また現在の政府が動いておる姿であるわけでありまして、政府に対しての一種の反抗運動というようなものは、広義において、内乱罪の中に入れられるおそれが十分にあると思うのであります。それでこの第三條の第一項等を見ますと、教唆扇動そしてその行為の実現を容易ならしめるため、その実現の正当性もしくは必要性を主張した文書等を印刷し、頒布し云々ということになつておるのであります。そうするとこの法律は一見したところ、どういうふうに御説明になりましても、一部の共産党の非合法化ということを企図しておる、表門から共産党を非合法化せずに、裏門から非合法化しようとしておるように見受けるのでありますが、一体それははたしてこの法律によつて目的を達し得るか、そういう自信があつておやりになつておるかということを伺いたいのであります。現在、徳田君以下共産党の幹部諸君が、地下にもぐつておるといわれておるのでありますが、それを地上に連れて来ることができない、そういう状態において、こういう法律をもつて、共産党の一部の非合法化——全面的ではないから一部と申すのでありますが、そういう目的がはたして達せられるか、こういうことについて政府の所見を承りたいのであります。
  130. 吉河光貞

    吉河政府委員 総裁にかわりまして、簡單に御答弁申し上げます。本法案におきましては、特に朝憲紊乱を内容とする内乱罪の規定につきましては、特定の内閣の更迭を主張するがごとき行為は、絶対に含まれない。内閣制度一般の廃止というようなことが、朝憲紊乱の観念に入るものと存じております。またこの法案は、特に日本共産党そのものを対象として立案されたのではないのでありまして、先般法務総裁からも御答弁がございました通り、あくまで暴力主義的な破壞活動を行う団体危險を防止するために立案されたものであります。この法案の構造がきわめて複雑でございますので、はたして実効が上るかという御質問でございますが、現在民主的な日本憲法のもとにおきましては、この法案の構造によつて、極端な暴力主義的破壞活動危險を防止しなければならない、あくまでそれがためには、実際証拠の收集等についても、基本人権を侵害することなく、十分に注意して努力するつもりであります。
  131. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 とかく議論になるので避けたいと思いますけれども、私は共産党の非合法化ということは、言うべくして行うことができないし、反対であります。またたとい直接全面的にはそれを目的としておらないと仰せられましても、一部においてそれを目的としておることは、疑いがないのでありまして、この法律は決して所期の目的を達するものではない。むしろこういうたくさんの規定をいたしまして、そうして破壞活動なるものを——あまり破壞とも見られないものもありますが、ことに言論活動などについて彈圧を加えますならば、この法によつて公安審査委員会などに付議せられて行政処分を受けたいということが、英雄気取りになり、志士気取りになつて、むしろ志願する者を続出させるおそれがあるとさえ、私は警告をいたしておきます。アメリカで禁酒法を制定いたしましたときに、それまで酒を飲まなかつた学生が続々酒を飲んで、そして警官がこれをアレストしようとするのをたくみに逃げて、そうして、どうだ、うまくやつたろうといつて、自慢する学生か非常にふえたということは、私がアメリカを通りましたときに親しく見、かつ聞いたところでありまするが、それに以たものが起つて来るということを警告せざるを得ないのであります。ゆえにこういう法律は、所期の目的よりは副作用の方が大きいということに十分にひとつ御留意を願いたいと思います。  なお質問を端折りまして、公安審査委員というものを設けられるようでありまするが、これをどういう基準、心持でお選びになるおつもりでおられるか、もし構想があるならば承つておきたいのであります。
  132. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 委員会の構想を申し上げます。委員は国家公安委員と同じように、言論界、労働関係界、法曹界、宗教界、実業界、この方面から出ていただこう、こういう考え方であります。
  133. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それは各論的になりますから他の機会に讓りますけれども、同一政党の者が三人以上あつてはいけないというふうになつておりますが、三人以上といえば、二人まではいいことになりまして、もしこれを政党的色彩のある者が任命されるということになりますると、たとえば自由党系、改進党系で四人を占めることができるわけでありまして、かりに中立の者一人を加えましても、その委員会の性格というものは、もつて察するに足りるわけであります。そういう点についてわれわれは深き危惧の念を持つておるということを申し上げておきます。  時間が遅くなりましたから、こまかい質問は全部逐條の際に讓りますが、われわれは破壞活動あるいは暴力というものには全然これに反対し排斥することはもちろんであります。そのために刑法各條の強化をしなければならぬかもしれないのでありまするが、しかしこういう特別立法というものは非常に危險である、副作用の方が恐しい、ことに行政処分をもつてすることはますます危險である、こういう点を特に高調し指摘いたしまして、私の質問を終つておきます。
  134. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十六日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会