○加藤(充)
委員 先ほどの「
用途に供する
目的」というようなものは強く希望するということ、こういうふうなものにならなければ
目的を持
つたと言われないと、こう言うのですが、しかし現在独立と平和と自由というふうなものを強く要望し、せめても講和條約の発効後これが実現されやしないかということで淡く期待をかけている
国民が相当多いのではないかと思うのです。
一般に今申し上げましたような民族的な感情を持つ者、
従つてそれを確保するために米軍の
駐留軍あるいは占領軍のすみやかなる撤退、即時撤退というふうなことを事実上希望している者は、
日本の
国民の中に相当多いし、またますます多く
なつて来るのではないか。決してこれはいやがらせでも何でもありませんが、先ほど来指摘しているように、
安全保障條約第三條に基く諸立法というようなものが各方面にその姿をほんとうに現わして参りました場合には、おそらく
国民の大多数というものは強く日米
安全保障條約あるいは日米
行政協定というふうなものに反撥をする。その撤回破棄を求める気持というものは、
国民的な感情とまで言い得るようなことが、当然予想されて参ります。そうすると、先ほどの答弁によれば、強く希望する
目的をも
つてというような場合においては、これは当然これにかかる、そうして先ほど来未必の故意のくんだりで、いろいろ私
どもの危惧あるいはこの
條文の
文字の配列の中に隠された意図を明らかにしましたけれ
ども、結局そういうことに
なつて来ると、
日本人の口にこの法律で手を当てて、刑罰をも
つて日本人の口をとざしてしまう、こういうような結果になるのではないか、こう思うのであります。これはほかの
委員の方も質問をしたと思うから私はその点については触れませんが、
新聞記者の方々やあるいは
一般に報道の仕事に携
つている者、こういうものでも、そのニュースをどうして入れたというようなことになると、これを不当なる
方法によ
つてということで彈圧する。あるいは記事の出し方についても、ほかの
新聞はそれを出さない、お前だけこういう記事を出している、こういうようなことになれば、この第
七條のいろいろな「
せん動」問題とも関連があり、同時に第六條のこの
規定の適用からい
つても、そういうことまできわめて大きな制限を受けて来る。まことに口もきけない、耳も開いておくわけにいかない。目もとじておかなければいけないというようなまことに恐ろしい状態が、この第六條、第
七條によ
つて現出されるのではないか。そうして繰返して言うようですが、そういうことによ
つて日本人の愛国心、愛国の言動というものを押えつけてしまう意図がこの中に隠されているし、またそういうことは決して考えておらないということに
なつても、この適用から見ればそういう結果になることは明らかだと思うのであります。
〔北川
委員長代理退席、
委員長着席〕
それで
お尋ねいたしますが、たとえば満洲、朝鮮の最近の細菌戰のニュースを
新聞雑誌が報道する、取上げるという場合、そういう報道があるけれ
ども、実はこれは一方的な宣伝であるというようなことを前書きをも
つてこれを報道しないと、これはさつき言
つたように
目的を持ち、あるいは不当な
方法で
探知したもの云々ということに
なつて、それをさらに
一般に漏らしたというようなことに
なつて参ると思うのですが、これは
ちようど
アメリカのマツカラン法に、登録団体というものが
新聞やラジオを利用するときは、私は共産党ないしは共産主義団体として登録中の者でありますというようなことをまずその冒頭に言わなければ、ラジオ等の使用が許されないということに
なつて参ると思うのですが、これでは明らかに
アメリカの大本営の下請的なニュース報道でなければ取上げない、旧
日本の戰争中のあの大本営発表の下請機関になり終つちや
つたあの報道陣営、報道機能というものが、今度あらためて
アメリカの大本営のニュースの下請報道機関ということに
なつてしまうと思うのであります。それを避けようと思えば、この宣伝はうそである、たとえば大阪あたりの国際
新聞が平壌の放送を登録いたします場合においては、一々平壌は何とかの傀儡政権であります。こういうようなことを言
つている。それはそれでいいが、それでは李承晩政権は
アメリカの傀儡政権であるということを言われているのでありまして、そういうことを書かないでも、平壌は一方の傀儡政権であるということだけを書かされるということになれば、ほんとうの真実を伝える報道の自由というものが、政治的なものでゆがめられて来てしまうということになる。こういうことになると思うのですがどうですか。
それからもう
一つは、第
七條の「
せん動した」云々であります。これは先日のあなたの
言葉によれば、共産党の壁
新聞だろう、こういうものを押えるつもりだ、これにかかるのだということを言
つた。これは正直なところ、ねらいはそうだと思う。しかしそれはねらいがそうだというところで明らかにこれは不当である。というのは、これは言論や思想の自由を制限するばかりでなく、学者の
研究や報告というようなもの、出版というようなものを「
せん動」ということで押える意図があるので、共産党の壁
新聞だけがねらいじやないと思う。というのは、たとえてみれば
アメリカ軍隊は戰争をやる気で来ているのです。しかるに平和を強く主張し、あるいはまた戰争は野蛮な人殺しであるという考え方を持
つている人々が、戰争というものはいわゆる死のマーチヤントと言われるような米国や
日本の軍事資本家というようなものの一部の利益になるにすぎない、しかも
日本が今度の戰争にいいかげんに加担するようなことになり、巻き込まれたということになれば、勝
つても負けてもえらい被害を受けるのは
日本の国土であり、
日本人だ、大体戰争というものは資本主義社会経済に随伴する現象である、資本主義社会経済というものがなくなりさえすれば不景気戰争というような惨忍なやり方をしなくても済むのだということを経済的に政治的に
研究する。そしてそれを著作として出版する、あるいはそのことを講演するということになると、そういうことがみなの耳に聞え、みなの目に触れるような状態になるのは当然なのですが、そうすればそういう
行動があ
つてもなくても、
扇動したという名目でそれらの連中が結局この法條につかまえられて行く。こういうようなことになると、東大のあの警官侵入
事件、思想の
調査や尾行や張込みを学者などにや
つたという意図、同時にまた特調が公安
調査官というようなものに拡充されて行く意図というものは、この
法案とま
つたく一体に
なつて、繰返して言うようであるが、
日本人の言論の自由、思想の自由
研究の自由というものが全部これできかなく
なつてしまうと思うのだが、そういうことになるこのような
法案を出すということ、立案するということは憲法に違反する不届きな
行為じやないか、この点について見解を明らかにしていただきたい。