○田中(堯)
委員 今六條が問題にな
つてお
つたのですから、私はこの六條を先に重点に
質問します。その前に、昨日加藤
委員から相当詳しく
質問したけれ
ども、何らそれらしい
答弁がなか
つたのですが、われわれはこの
法案を見て、実際はま
つたくたまげておる。あなた方の立場では、アメリカが
日本に駐留をして、そうして
日本の安全を保障してくれるのであるから、アメリカの安全を保障する
意味で軍機保護もしてやらなければならないし、その他の
犯罪検挙、
証拠收集の協力もしてやらなきやならぬというふうに
考えておられる。それは
答弁の中にもいろいろ出ておりますが、この
刑事特別法案解説書の中にも随所にそういう
文句が現われておる。試みに一節を読んでみると、この
機密問題についての政府の
説明書ですが、「たとえ新聞雑誌などとしても報道を差し控えるのが、
日本の安全を保障するため駐留している
合衆国軍隊に対する
日本人としての義務であり、従
つて言論の自由の保障もそこには限界があると
考えるべきであろうと思う。」
云々、これに似たような
趣旨のことが随所に思想として現われております。ところがこれはあなた方だけが
考えるので、実際は、国際情勢や国内情勢をごらんなさい。なるほど形の上ではアメリカ駐留軍が
日本の安全を保障するために、しかも
日本側の要請に基いて、迷惑ながらも駐留してやるぞという形にな
つておる。しかし今日このようなとぼけたことをだれも信用しておりません。事実は、アメリカ国のアジアに対する侵略計画を実施するために、どうでもこうでも
日本をアメリカ軍の前進基地としなければならぬ。それゆえに
日本国民が、国家がどんなに迷惑をこうむろうとも、とにかく
日本列島だけは放棄できない。ここを先途と、アジアの足場を固めなければならぬ。ことに朝鮮では失敗をし、台湾方面でも危くな
つて来た。東南アジア方面でもうまく行かぬ。けれ
ども日本列島だけは何としても確保しようという意図から出て、あらゆる無理をしながら、大急ぎに急いでサンフランシスコの両條約を結んだり、あるいはこれに基く
行政協定などをつくり、さらにまたこのような本
法案が国内立法の形で出て来ておる。これは実際
日本人としての良識を持
つておる人なら、たといあなた方でもわかるはずなんだ、新聞雑誌、あるいはラジオをお聞きにならぬわけはない。世界情勢が曲りなりにも入らぬわけはない。それなのに、ぼくはどうしてこういうふうに平然として、アメリカの味方をするということが、この際正義であり、アメリカ軍の安全を保障してやることこそ、
日本の利益に一致するということをしやあしやあとして
答弁ができ、また文章ができるのかと思えば、ふしぎでしようがない。私は国際情勢をもう二、三分ほど申し上げたい。実際、今
日本に侵略の危機なぞありますか。だれが
日本を攻めると言うのです。さつきも猪俣
委員も
ちよつと口にしてお
つたけれ
ども、まあ、去年の終りごろから、大分切迫してお
つた世界の戰争危機というものも遠のきつつあるじやありませんか。遠のきつつある。モスクワの経済
会議をごらんにな
つても、アメリカは不承知だ
つたらしいが、それでもアメリカから十二人も参加しておるし、英国、フランスはもちろん、世界四十数箇国から五百人という代表が集ま
つて、そうして今、世界の貿易がとだえてお
つて、必要もないのに反感嫉視しておる、これをひとつ経済の面から打通して行こうじやないかという平和的な意図をも
つてモスクワで国際経済
会議を開いた。その結果は、た
つた一週間余りの
会議で、中共と英国のごときは一千万ポンドに上るようれな厖大なる貿易とりきがめ調印されておるじやありませんか。全世界を通じて何億米ドルという大きな取引が、た
つた一週間のうちに取結ばれておる。そのようにしてアメリカがいかに自国の世界支配を実現しようとして
日本を基地にし、あるいは西ドイツを基地にし一生懸命や
つてみたところで、もう戰争機運は遠のいて世界の人類は戰争をきら
つておる。何とかしてもう戰争を避けて仲よく貿易もやろうし、文化の交流もやろうという
意思にな
つておる。だからスターリンをごらんなさい。ごく最近外国新聞記者の
質問に答えて、もう世界戰争の危機は二、三年前に比べて大分遠のいておるという
意味のことを
言つておる。彼はは
つたりでも何んでもありやしない。彼の
言葉は昔からは
つたりは一言もありません。国内の軍擴経済に行き悩みを生じてあたふたしているような国を笑殺しておるのじやないか。戰争なんかできやしない。それなのに敵が来る赤の侵略が来るから国を防がなければならぬということで、いりもしない
軍隊を導入して、それを保護してやるというようなばかげた立法措置をする。この一條一句といえ
ども審議する不名誉さえも拒否したい。けれ
どもいやしくも法務
委員として、法務
委員会にかか
つた以上そういうてただあぐらをかいておるわけにいかぬから、しかたなく各
條文について審議をして行きますが、そういう心組みでやるのでひとつ十分
前提を了承しておいていただきたい。
そこで第六條ですが、軍
機密の問題これは大分猪俣
委員がわれわれの
質問したいことを聞いておりますので、重複は一切避けます。もつとももう少しつつ込んで聞かなければならない点もあるので聞きますが、第一に
合衆国の
軍隊の安全という件であります。これは
説明書を見ると、主として外敵
関係が考慮されておる規定であるようであります。ところでアメリカ
軍隊の安全については、あなた方のお
考えによれば、盛におすきな
言葉で言われておるところの間接侵略、そういうものがあるはずでしよう。そうすると第六條の「
合衆国軍隊の安全を害すべき
用途に供する
目的をも
つて」というこの相手方に、間接侵略の主体がなり得るかどうかということ、これをまずお尋ねします。