○加藤(充)
委員 先ほどの御答弁の中に比較的
——というよりも地位の重い、
責任の重い者が釈放を受けたりするようなことがあ
つてはならない、不公平な処置があ
つてはならないというお言葉がありました。先般
法務委員会にフィリピン軍司令官としての黒田重徳という元中将が呼ばれたのであります。一説にフイリピンの戰犯釈放、減刑については比較的高級な職業的軍人に多か
つた、しかもその理由が、あそこの民族独立運動といいますか、フィリピン人の運動に対してこれを戰力に訴えていわゆる鎮圧せんとした。これにいろいろな意味で直接間接に協力、加担したというようなことで、これが高く買われて釈放、減刑を受けたんだということが、流説でございましよう、臆測もあるかもしれませんが、いろいろ言われております。その半面には、これは黒田さんの言葉にもあ
つたのですが、ほんとうに無辜の罪なき学徒動員の諸君あるいはまた職業軍人外の召集者というようなものがやはりたくさんお
つて、これは何とかしなければならないという話でありました。黒田さんを個人的に責めてもいたし方ありませんが、私は
最高の
責任者、これは單にその指揮命令を與える地位にあ
つたというものは、形式的なもので軽いとするのでは断じてなくて、こういうものの命令指揮のために今申し上げた人
たちが、実に泣くにも泣けない異郷の戰犯收容所、刑務所で服役をしている。これはやはり私はまつ先に釈放されなければならないと思う。そうしなければ戰犯の
責任追究ということ自体も徹底しない。何のために服役を仰せつけたのか私はわからぬと思う。戰犯裁判そのものの本質の効果の問題だと思うのでありまして、こういう点については、先ほど来重々各
委員から要望の点が強か
つたと思うのですが、答弁の中に、軍に監督にあ
つた者が軽いのだというような考え方は私は排除して行
つていただきたい、そうしなければ無事の気の毒な人は救われない。上に行くほど形式的な指揮監督、命令というような
責任はぼやかされてしまうおそれがある。それが問題じやないか、その半面に末端の命令に動かされて現場の仕事をや
つた人々の
責任が重くとられるようなことがあ
つてはならないと思うのであります。
それでこれは本
法案に直接
関係がございませんが、わずかの時間で関連のある行刑制度のことについて
お尋ねしておきますが、仮釈放審査規程というようなものが、そのままというようなことにはなりますまいが、第五條には、これは変なもので再犯のおそれのないものというような
條件が強くうたわれているのであります。こういう点は十分にしんしやくさるべきである。再軍備の方向に合せて、役に立つ者は釈放するというようなことが断じてあ
つてはならないと思うのであります。それで
お尋ねいたしますが、監獄法というものの適用で刑の執行を事実上やることなのでありましようが、いかんせんこれはかびくさいしろものでありますが、監獄法の改正というような問題についての
方針というか、それを承
つておきたい。というのは先般の巣鴨プリズンにおける処遇、これが特別なるものにもせよ、決して優遇されたものではございません。国際的水準からいいまして、これをむしろ一般の服役者の水準を高めて行くという方向に私どもは努力しなければならないのではないか。
もう
一つはこの独居拘禁の問題でございまするが、これはきわめて非人間的な、生物としての人間の本質にもとるものである。しかもこの国内法規について申し上げても、監獄法の処罰の点を見ましても、行刑累進処遇令ですか、そういうようなものの拘禁及び戒護の段から勘案いたしましても、特別戒護的な処遇であり、あるいは進んでは懲罰的な処遇であるのであります。しかもこれらの拘禁の期間というものは、短期間でなければ独居拘禁は許さないという制約つきのものであると信じます。しかるにいわゆる思想犯というものは、無期限に長期的にこの独居拘禁をさせられている。これは明らかに憲法十四條、こまかく言う必要もないほど、明らかにこれは差別的なものであ
つて、不当な二重の刑罰を科しているということになり、これは基本的人権を刑務所まで貫かれて、行刑制度、監獄法の改正というもの、あるいは実地の運営が徹しられないからであると思うのであります。先般私は、私どもの党の者で引例するのは多少あつかましいと思いますけれども、春日正一君に最後の面会をいたしました。そのときに彼が多年の独居拘禁の経験から訴えるところを御紹介してみたいと思うのでありますが、独居拘禁になりますと冬は寒くてとてもたまらぬという。実際上人間として、その他刑務所の物理的ないろいろな構造も勘案されて、その上に加わる処遇と一体になりまして、苦痛というものは雑居服役の二倍に
相当するということを訴えておりました。そしてその監獄法が新憲法下の行刑制度の中に大きく貫かれて改正されないということの結果は、警察の留置場の処遇にも反映いたしまして、先般の空襲警報下におきましても、監獄法のそれなりに適用運営されております刑務所や拘置所におきましては、直接の被害を受けたところは別でありますけれども、大体において待避、避難というような処遇も行われたが、うやむやの中に、何の法規にも準拠することができずに、ただ取扱いというような形で留置処遇されておりました者は、待避できるときに待避できず、避難できるときに避難する
機会を與えられずして、非常な非人道的な、残虐な被害を警察の留置場で受けたという事実は、私今時間がありませんからここで申し上げませんが、これは顯著なる事実であります。いろいろ申し上げたいことも
お尋ねしたいこともあるのですが、それらの諸点についてこの際関連のある
質疑といたしまして、監獄法の改正等に関する
方針を承
つておきたいと思います。