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1952-03-26 第13回国会 衆議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十六日(水曜日)     午後二時十五分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       高橋 英吉君    高木 松吉君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    加藤  充君       田万 廣文君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         総理府事務官         (地方自治庁財         政課長)    奥野 誠亮君         法務政務次官  龍野喜一郎君         検     事         (法務検務局         長)      岡原 昌男君         検     事         (法務民事局         長)      村上 朝一君  委員外出席者         検     事         (法務民事局         第二課長)   阿川 清道君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十六日  委員田廣文辞任につき、その補欠として  大矢省三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大矢省三辞任につき、その補欠として田  万廣文君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する  件に基く法務関係命令措置に関する法律  案(内閣提出第一八号)  工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法  律案内閣提出第三三号)  住民登録法施行法案鍛冶良作君外三名提出、  衆法第六号)
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  住民登録法施行法案議題といたします。提出者より提案趣旨説明を聴取いたします。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ただいま議題と相なりました住民登録法施行法案につきまして提案理由説明いたします。  昭和二十六年六月八日法律第二百十八号をもつて公布されました住民登録法は、本年七月一日までの間において、政令で定める目から施行されることとなつておりますが、同法におきましては、その施行の際、市町村住民について最初になされる登録に関しましては規定が設けられていないのであります。これは同法施行の際の最初登録につきましては、別に施行法を制定して、これにおいて最初登録に関する規定を設ける趣旨であつたからであります。ただいま議題となつております住民登録法施行法案は、この施行法相当するものでありまして住民登録法施行の際現に市町村区域内に住所を有するものについてすべき最初登録に関して住民登録法の特例を定め、その完全な実施をはかろうとするものであります。  申すまでもなく、住民登録法市町村においてその住民全部を登録することによつて住民居住関係を公証し、その日常生活利便をはかるとともに、常時人口の状況を明らかにし、各種行政事務の適正で簡易な処理に資することを目的とするものであります。従いまして国民の利便並びに地方自治及び国政全般に及ぼす影響の重大性にかんがみまするときは、同法施行の当初における最初登録を的確に実施し、市町村住民全部を漏れなく正確に登録することが必要であります。けだし最初登録住民登録制度基礎となるものでありまして、その成果のいかんは、その後における制度の運用を左右すると申しても過言ではないからであります。  この法律案は昨年九月二十一日の本委員会の決議に基きまして立案し、一齊調査をもつてこれを行わんとするものであります。ただいま申し上げましたように、最初登録の正確を期することを眼目としているのでありますが、その内容中おもなる点を申し上げますると、第一に、市町村は、住民登録法施行の際、その区域内に住所を有する者については住民票を、本籍を有する者については、戸籍附票作製すべきものとしていることであります。第二に、住民登録法施行の際、市町村区域内に住所を有する者について、世帶主その他の者に住民票記載事項につき届出義務を課するとともに、市町村届出の励行及び住民票記載の正確をはかるため、住民票記載事項を各世帶について調査すべきものとしていることであります。  第三に、住所地本籍地とを異にする者につきましては、戸籍附票作製を可能にするとともに住民票記載の正確を期するため、住所地本籍地市町村住民票記載事項に関し相互に通知をすることとしていることであります。  第四に、最初住民票作製に関し市町村事務を補助させるため、市町村においては調査員を置くべきものとしていることであります。  第五に、住民登録法施行に伴い寄留法を廃止するほか、その他の関係法律所要の改正を加えることとしていることであります。  以上簡單でありますが、この法律案提案理由及びその内容の概略を説明いたしました。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。  なお本案についての逐條説明書資料として各委員のお手元に配付したのでありますが、これを速記録にとどめるよう委員長においておとりはからい願います。
  4. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいま提出者より申し出がありました通り資料として配付されました本案逐條説明書会議録にとどめるようとりはからいたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさようとりはからいます。  次に本案に対する質疑に入ります。質疑通告がありますので順次これを許します。北川定務君。
  6. 北川定務

    北川委員 一点だけお伺いいたしたいと思いまするが、この住民登録法施行せられますにつきまして、これの管掌者であるところの市町村は、相当経費がかかるものと思うのであります。この施行に伴う経費につきましては、いかなる措置を講ぜられるものか伺いたいと存じます。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私から説明するより、その点に対して関係当局と緊密なる連絡をとつておられた立案者にひとつ説明を聞いた方がいいかと思います。
  8. 阿川清道

    阿川説明員 お尋ねの点につきましては、さき住民登録法を御審議の際及び客年九月五日、当委員会住民登録法施行に関する小委員会におきまして、法務府及び地方財政委員会の係官から説明申し上げましたように、住民登録は、市町村におきましてその住民を正確に把握することによつて各種行政事務処理に活用することを目的とする制度でありますことにかんがみまして、事務性質上、市町村固有事務として市町村処理するものであることが、住民登録法二條に明確にされておるのでありまして、市町村はそのみずからの負担においてこの事務処理することを要するのであります。従いまして平年度におきまする本制度実施のために必要な経費は、市町村負担といたしまして、その負担の均衡は平衡交付金制度によつて調整されるべきものだと考えておるのであります。この点を明確にいたしまするために、本法案の附則第九項におきまして、地方財政平衡交付金法の一部を改正することといたしたのでありまして、平衡交付金の額につきましては、地方財政委員会におきまして目下検討を進めているところであります。住民登録法施行の当初なすべき最初登録に要する一齊調査等経費は、いわば市町村にとりましては臨時の経費でありまするので、これに要する経費は、国庫で負担する建前で、昭和二十七年度法務予算におきまして、住民登録制度実施に要する経費として三億六千万円が計上されております。そのうち二億七千三百四十八万円が市町村に対する補助金に充てられているのであります。
  9. 北川定務

    北川委員 最初施行せられます場合の予算措置は、ただいまの御説明でわかつたのでありまするが、市町村には調査員などを置かれるようでありまするし、二十七年以後におきましてもやはり相当経費を要するのではないかと思うのでありまするが、その点につきまして法務府の御計画説明していただきたいと思います。
  10. 阿川清道

    阿川説明員 住民登録制度は、現行寄留及び世帶台帳制度の長をとり、その短を捨てて、これを統合した制度でありますことは、さき住民登録法審議の際及びその後の住民登録法施行に関する小委員会におきまして、政府委員から説明もあつたところでありますが、この制度実施後における市町村の平年度経常費につきましては、その事務量から見まして、ほぼ現行寄留及び世帶台帳事務経費の合計に匹敵するものと思うのであります。従いまして本制度実施によりまして市町村は特に財政的負担の点において増加を見ることはないと考えておるのであります。法務府におきましても、昭和二十四年度以来、全国の市町村につきまして調査をいたし、慎重に検討いたしておるのでありますが、平衡交付金の額の算定につきましては目下地方財政委員会におきましてこれを検討いたしておるところであります。
  11. 佐瀬昌三

  12. 加藤充

    加藤(充)委員 この法案基本法提案理由説明の中では、各種行政事務の適正かつ簡易なる処理に資するということになつて通つたのであります。今地方財政負担の問題で平衡交付金関連質疑応答されたのであります。これは選挙や教育、徴税、衛生、統計、生活保護、その他住民居住関係証明などのために、今までいろいろな制度があつたのを、これ一本にまとめて住民登録に切りかえるというのですが、その際に国家財政的な見地から、これが節約になるのかならぬのか。私はならぬと思うのですが、その面からの御説明を承りたいと思います。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどから説明のあつた通り、今までこれに類似したるものに要しておりました費用は、寄留事務に関するものと世帶台帳と、この二本がなくなるわけでありまして、この二本に関しましても約二十億使われておつたのであります。従いましてこれだけの金があればたいていこの事務はやつて行けるもの、かように考えまして、経費の点においてはあまり余裕はないかもしれませんが、損にはなりません。しかしそのほかにおいてずいぶんいろいろな便宜のあることだけは、国家にとつて有利になるもの、かように考えております。
  14. 加藤充

    加藤(充)委員 私はこの前のときに、多分鍛冶君からだと思うのですが、えらい得になるということで、しかじか、かくかくだということで数字も示されて御説明があつたのであります。それを得にならないと今居直られますと、どうもだまされたような気がしてならない。得になる面を財政上じやなしに言われたけれども、必ずしも明確にされない。得になる点というのは一体どの点でありましようか。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 経費においても今までよりか簡略になると思いますが、この制度ひとり寄留世帶台帳だけじやないのですから……。
  16. 加藤充

    加藤(充)委員 何ですか。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは参考書類についておりますからひとつこれでごらんください。例をあげますれば、一番大きなのは選挙人名簿調製学齢簿調製農業委員会その他の基礎になるもの、それからその他の証明等につきましても、これ一本で間に合うことになるのであります。一々あげればこの通りたくさんあります。たいへん国家のために有利になるものと心得てわれわれは提案に賛成したわけであります。
  18. 加藤充

    加藤(充)委員 仕事の面で説明がありましたけれども、私の方ではどうも国の財政の点から見て節約にならないと思つております。しかしかくの通り仕事簡素化されるというのですが、簡素化されるということになりますと、それは首切りになりますか。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 人事に関することは別で、これがあれば仕事が楽になる、しやすくなるというだけで、首切りを予想しておるのではありません。
  20. 加藤充

    加藤(充)委員 仕事が楽になるということですが、今までこういう仕事をやつてつてそんなにそつはなかつたので、よつぽど積極的な意味がなければこの制度施行というものに賛成がしきれないし、それを提案する合理的な根拠にもならないと思うのです。大した利得がないのに首切りが出て来るというのであれば、私どもは賛成できないのですが、首切りを予想しないというだけでは、首を切られる人の身になつてみれば安心ができませんけれども、いかがなものでしようか。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さようなことは予想もしておりません。
  22. 加藤充

    加藤(充)委員 予算上大して得がないという話なので、それで首切りの問題に質疑が延びて行つたのですが、現在地方行政事務の七割以上もが国の委任事務であり、これが同時に地方自治体事務の上から見ての点では公務員の非常な労働強化になりますし、また財政面から言えば地方財政のほとんど崩壊状態に近い現状の大きな原因になつていると思うのですが、この点について首切りが予想されないとなれば、事務がよほど簡素化されるということの保証ができますか。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その通りです。たいへんな簡素化になります。今言われたような国の委任事務はそのままやらなければなりませんが、それをやるについては——これは町村へ行つてみたらわかるが、たいへんなものがある、そういうものを寄せないとできないが、それがこれ一本で間に合うということになるのですから、その点労働強化ではなしに、あべこべに労働簡素化になることは間違いない。
  24. 加藤充

    加藤(充)委員 たいへんな簡素化になるということになれば、自由党の方針としては事務行政簡素化伴つて人員の整理というのがついてまわるのですが、その点の保証をあなたは引受けられますか。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 仕事がしやすくなるということが、簡素化ということであります。そのために人員が余ろうとは今日考えておりません。しかしやつてみていらぬものがおつたら、それは各町村でしかるべくおやりになつていいことで、そこまでわれわれ干渉もし、また保証もする限りではなかろうと思う。
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 他に御質疑はありませんか。
  27. 北川定務

    北川委員 住民登録法施行に伴いまして、これが経費平衡交付金によつてまかなわれるというのでありまするが、昭和二十七年度経常費として相当額市町村はまかなわなければならないと思うのであります。その点につきまして政府はいかように措置をしておられるかを伺いたいと思います。
  28. 岡野清豪

    岡野国務大臣 住民登録実施されますならば、それに流用し得るように予備の金が十億ばかりとつてございます。それによつてつて行きたいと思います。
  29. 奥野誠亮

    奥野政府委員 少し他の部分にもわたりまして御説明しておきたいと思います。住民登録に要します費用のうちで、臨時的な費用は全部国費でまかなわれるものとわれわれは考えておるわけでございます。経常的なものとしましては、本年七月から実施される、その場合は今大臣からお話がありましたように、十億内外のものを市町村基準財政分に追加して参りたい、かように考えておるわけであります。元来この制度実施できましたならば、それだけ財政需要がふえるというものではありません。あるいは世帶台帳作製がいらなくなりますし、あるいは寄留事務がなくなりますとかいうふうな関係から、地方団体所要財源全体としては、増減は少くともないのではないかというふうに考えまして、地方財政計画の上では、これがために特に財源を追加しなければならないというような措置はしていないわけであります。しかしながら、昭和二十七年度におきまして、個々の市町村の必要な財政需要計算します場合に、地方財政平衡交付金の面におきましても、たとえば世帶台帳作製不要になるわけなんだから、ある程度産業経済部面において財政需要額を削除するというような問題もあるわけでございますけれども、そういうことをいたしませんで、今までに算定いたして参りました財政需要額のほかに、十億内外のものを新たに追加したい、かような措置をとりたいと考えておるわけでございます。
  30. 加藤充

    加藤(充)委員 そういう点におきまして、地方負担というものがまかない切れなかつた場合においては、これは本質的にいえば、地方財政法等の押しつけ、侵害になると思いますが、そういうようなことがないと予想されるか。もし起きたら政府責任をどうするか。
  31. 奥野誠亮

    奥野政府委員 臨時的な経費につきましては、すでに国の予算に計上されておりますので、それを御検討いただきまして、まかなえるかどうかという御判断をいただけばよろしいかと思つております。われわれといたしましては、法務府からお話がございますので、おそらくそれで足りるように記載事項でありますとか、あるいは取扱いなんかについて指示がなされるものと考えておるわけであります。またそれ以外の経常的な経費につきましては、先ほど申し上げましたように、人によりましては、むしろ地方負担が減少するのだというふうな説をなされる方もありますけれども、さしあたり市町村に対しまして交付すべき地方財政平衡交付金計算にあたりましては、今までの財政需要を別に減額いたしませんで、十億内外のものをそのままプラスして参るというような措置をとつておりますので、大体まかなえるものと確信しておる次第であります。しかしながら、将来いろいろな事情の変更もございましようが、法律によつて義務づけられた経費でありますので、それらが円滑に行われまするように、ぜひ必要な財政措置を講じて行かなければならないと考えております。あるいは、むしろこれよりも減るのではないかというような場合も生ずるかもしれませんし、ある場合にはもつと増額しなければならない場合も生ずるかもしれませんけれども、それぞれに応じまして、あるいは経費のかからないように、あるいは財源を増減するというような彈力ある措置は、当然法律の制定に伴いまして講じて行くべきものと考えておるわけでございます。
  32. 加藤充

    加藤(充)委員 先ほど、提案者としての鍛冶委員と応答をやつたのですが、地方行政事務、それから地方財政というようなものが、国の委任事務のために崩壊状態にあり、非常にきゆうくつになつておるということなんです。今度の住民登録法施行につきましても、いろいろ事務的な面からも、財政的な面からも、その点に対する危惧というようなもの、あるいは財政的な増額要求というようなものが非常にたくさん来ておると思うのであります。平衡交付金性質上、計算はそうなると言つてみたところで、これだけの重い財政負担を背負い込まされている地方自治体としましては、これを実行するということのために、ほかの必要でないようなところに事務がしわ寄せになつて行く、あるいは別の方面ではそれが粗略に扱われて、財源がそこに充当されて行かない。ここで事務的にも財政的にも、この仕事でよけい食い込むということになれば、平衡交付金というトータルの額としては動かないにいたしましても、実際上の運営から見れば、これは実質においてたいへんな事務上の干渉であり、あるいは財政上の干渉であり、負担強化である。その点地方には絶対にそういう迷惑をかけないという、またそういうことについて地方から要望が上つて来た場合には、それは必ず補償するという、責任ある答弁が得られなければ、私は納得しかねるのですが、どうなりますか。
  33. 奥野誠亮

    奥野政府委員 今お話のように、臨時的な経費につきまして、これでまかなえるかどうか不安だというような地方団体側意見が出ておるのでございます。しかしながら、こういう問題につきましては、法務府におかれましても、十分にまかなえるような方法を講じていただけるものだというふうにわれわれは考えておるわけでございます。また場合によつては、将来必要な措置もとられるはずのものだろうというふうに考えておるわけでございます。また経常的な経費の面につきましてはしばしば他の行政費が節減されるというふうに言われておりますし、また現に世帶台帳その他の面からも考えられるわけでありますので、将来これの運営をどうやつて行くかという問題とも深い関連を持つている問題だろうと思います。そういう考え方で措置をして行きたいと思います。
  34. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 暫時休憩いたします。     午後二時五十八分休憩      ————◇—————     午後三時三十八分開議
  35. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  住民登録法施行法案議題とし、本案に対する質疑を続行いたします。他に御質疑はございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なければ本案に対する質疑はこれをもつて終結いたし、ただちに本案討論に付します。討論通告がありますので、これを許します。加藤充君。
  37. 加藤充

    加藤(充)委員 住民登録法案が上程されましたときには、私ども委員会においても本会議においても反対意見を述べておいたのであります。本法案はその施行法ということになつておるのであります。従いまして表面から見るといまさら何をか言わんやの感なきにしもあらざるがごとく見える。しかし本法案の意図するものは、わが党があの際に指摘した通りのものだということがはつきり出て来たと思うのであります。その点の指摘をいたして、本法案反対意見とするものであります。  昨年九月にサンフフンシスコ條約でいわゆる二條約が締結され、そしてやがて批准になつて、このたび問題になつたあの日米行政協定というものが発表されたのであります。このコースは昨年初めにダレス氏が来日以来明確にされた道でありまして、結局このたびの日米行政協定、そしてその基本日本の政治的、経済的、軍事的隷属をきめたものでありまして、この行政協定を結ぶために、サンフランシス二條約の締結があり、そしてそのためにダレス氏が昨年初めに来日せられたというのが事の本体だと思うのであります。さらに沿革をたどれば、一昨年朝鮮に戰争が起りました直後に、マツカーサーの考案に基き占領命令として出されたところに従いまして、ポ政令による警察予備隊の設置が強行されたのであります。そして今日になりますと、本年の十月から警察予備隊保安隊あるいは防衛隊、衣を脱ぎ捨てたはつきりした公然たる軍隊というものに脱皮しようとしているものであります。  本法案基本法でありました住民登録法は、昨年の三月三十一日に本会議を通過しました。以上の背景のもとに住民登録法が誕生し、そして本年の七月一日からの施行期日がきめられ、そしてそれに基く本施行法がここに姿を出して来る。私はそういうような歴史的な沿革内容を考えますときに、本法案軍事的徴兵、徴用の法律である、憲法に違反する法律であると考えるものであります。皆さんは行政協定のとりわけ十八條、二十四條をよく身にしみて吟味されたことがあるか。これは安保條約の前文に、アメリカ日本国が「直接及び間接侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」ということがあつて、これは実際はアメリカ日本に対する再軍備要求であります。ですからそれを締結し、行政協定を結んだ以上は、警察予備隊はいわゆる間接侵略に対するものであつて、こういうようなことでは、條約が有効適法なものであるかどうかは別問題といたしまして、政府立場に立てば、明らかにこれは約束の半分も果しておらないということになるのであります。すなわち條約の履行の立場からいえば、この間接侵略ばかりではなく直接の侵略、すなわち外国軍隊と交戰をするために、漸増的にもせよ何にもせよ、持たなければならない。こういうふうな結論になつて行きますし、そういう義務負担を背負い込んだのであります。平和條約の五條の規定によれば、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を與え」云々とあります。かように両條約と行政協定日本の再軍備海外派遣を義務づけている。これはまことに明瞭であります。行政協定二十四條をどうして運用し、実際に移して行くか。ここに住民登録法がどうしても必要なのである。いろいろ各般の行政事務簡素化というようなことも、ある部分には起るかもしれませんけれども、それは本法案のねらいではございません。とりわけ十二條などによりまして、日本の経済力あるいは労力というようなものが直接調達という形になつて行きまするならば、労務の提供は徴用以外の何ものでもありません。こういうふうなときに、人的資源のそれぞれの確保というものは、まさにこの第一義的な眼目のために要望されるのである。この法案はそれにこたえ、それを実施するためなのであります。第二点は、本法案はスパイ法であるということであります。條文はちよつと記憶いたしませんが、行政協定の中に、この協定あるいはその基本になる條約の目的とする精神ということが書いてあります。これははつきり言えば反共であります。ここに反共のための警察あるいはその他の処置が必要になつて参る。これは巧妙な、りつぱな、目的をカモフラージュいたしまして、実際はその役割を果すものであります。第三点は、住民票とか住民登録とかいうふうなものは、これは日本人が日本政府によつて、はだ身につけておかなければならぬというようなものでありましようか。過ぐる第二次世界大戰のときにナチスに支配され、その国の政府、ナチスに身売りをいたしたあのぺタンを首班とするヴイシー政府のもとに強行されたものは、この種の住民登録の証明であり、はだ身離さず持たなければ良民たるの待遇と保護を受けることができなかつた。中国に侵略した日本が何をやつたか、良民証の発行をやつたのであります。     〔「簡單にしろ」「恥を知れ」と呼ぶ者あり〕 こういう意味合いにおきまして、私どもは絶対にこの法案に賛成するわけには行かないのであります。今恥だと言うが、これはなまいきなことを言つたらなまいきに聞えるかもわからないが、この問題は日本の民族と日本の国民を戰争の中につつ込む癌となるということを近く歴史が証明することを断言して、私は討論を終ります。
  38. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 討論は以上をもつて終局いたしました。よつて本案に対する採決を行います。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  39. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。     —————————————
  41. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を行います。質疑通告がありますので、順次これを許します。押谷富三君。
  42. 押谷富三

    ○押谷委員 本法律案について二、三点質問をいたしたいと思います。  まず第一点は、現行工場抵当法は明治三十八年に制定されたものでありまして、当時は抵当権については保全抵当権のことしかわからなかつたのでありますが、第一次世界戰争のころから投資抵当権のことが重要視されるに至つたのであります。工場抵当法は大した改正もなしに今日に至つておるのでありますが、終戰後英米のフローテイング・チヤージあるいはゼネラル・モーゲージに比較いたしますと、いかにもこの法律は古くさい、大陸法の性質をもつているものでありまして、中小企業の金融の方法としては時代に遅れておると言わなければなりません。しかしこういう古い法律の一部改正でも、それだけ前進するわけでありますから、今回の改正には一応賛成ではありますが、将来こういう方向に向つて大改正をする必要があると思うのであります。この点について政府意見を伺いたいと思います。
  43. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 工場抵当法は、ただいま御指摘がありました通り、きわめて古い法律でありまして、その後大なる改正も行われておりませんために、現在の経済事情に照しまして不備な点が多くあるのであります。たとえば工場の範囲につきまして、また財産処分の手続につきまして検討を要する問題があるのであります。さらにまたただいま押谷委員からお話がございました通り、英米のフローテイング・チヤージなり、ゼネラル・モーゲージの制度を導入してはどうかというような財界方面の要望もありますので、財団抵当制度全般にわたりまして、政府部内においてただいま研究中でございます。なるべく早い機会に研究の成果を得まして立案をいたしたいと考えておる次第でございます。
  44. 押谷富三

    ○押谷委員 次にお尋ねいたしたいのは、第一條の第二項の規定に「営業ノ為電気又ハ瓦斯ノ供給ノ目的二使用スル場所ハ之ヲ工場ト看做ス」とありますが、この規定はあまりに狭い解釈でありまして。現状に合わないものと思うのであります。たとえば最近のテレビジヨン放送事業や民間ラジオの事業のごときは送信施設に多額の投資を要する関係から、社債募集の必要が起ります。その際現行法では工場財団は認められないということになりまりす。またその他水道事業におきましても同様であります。本規定はもつと広くこれが適用できまするように改正をいたしてはどうかと考えるのですが、この点の御意見を伺いたいと思います。
  45. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 工場抵当法の第一條におきまして工場の定義をあげてございますが、本来の工場であるところの物の製造、加工等の目的に使用する場所のほかに、第二項におきまして、電気またはガスの供給の目的に使用する場所にこれを拡張しているのであります。なるほど御指摘の通り、この規定は現在の経済事情から見ますと狭いのでありまして、民間放送施設のごときも現に問題になつているのでありますが、現行法の解釈といたしましては、適用が困難なのであります。そこで財団抵当制度目的でありますところの一つの企業を組織しております物的設備を、企業を組織したまま、つまり企業組織から解体しないで、最も有利に担保化すために、これを單一の担保物として、すなわち財団として担保制度を設けることは、いわゆる工場と称せられるものだけに限らないのでありまして、その他あらゆる企業について検討を要するのであります。この点も先ほど申し上げましたように、財団抵当制度の全般的な改正の一つの問題として取上げて研究いたしている次第であります。
  46. 押谷富三

    ○押谷委員 次に第八條の三項及び第十條の改正で、工場財団の存続期間を一箇月延長いたしまして三箇月としているのでありますが、それはいかなる根拠によるかという一点であります。財界及び金融界では三箇月では短かいがら六箇月くらいにしてほしいと現在要望いたしております。すなわち現在会社が工場財団抵当で社債を発行しようといたしまするには、日本銀行内の起債協議会が金額、銘柄、発行期日等を統制いたしているので、社債募集手続が非常に遅れることがありまして、財団の存続期間が三箇月では足らないような実情が多いのであります。なお財界ではかかる場合、往々にしてあるいは社内の便宜的な仮想債券をつくつて、抵当権を設定して、期間による財団の消滅を防いでいる実情を聞いているのであります。かくのごとき不明朗な方法を排除するためにも、六箇月くらいに延長してやる必要があると思うのでありますが、この点につきましての御意見を伺いたいと思います。
  47. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 現行法におきましては、工場財団は設定されましてから二箇月以内に抵当権の登記がなされませんと効力を失うことになつております。工場財団を設定する手続といたしまして第二十四條におきまして第三者保護のために一箇月ないし三箇月の期間を定めて公告をするという手続があるのでありまして、現在これは実際の運用上は、一箇月でやつておるようでありますが、財団設定の登記に少くとも一月半ないし全国に工場が散在しておりますような場合には、二月前後かかる実情なのであります。そこである時期に社債を発行することを予想いたしまして財団設定の登記に着手いたしましても、一月半ないし二月前に予測いたしました金融市場の状況が、そのときになりましてかわりまして、御指摘の通り社債の発行が困難になることがあるのであります。そこで現行法におきましては、二月以内に抵当権の設定登記をしないと効力を失うことになつておりますので、二月までのずれでありますならば、現行法でまかなえるわけでありますが、最近の金融市場の状況から申しますと、二月ではやや短きに失するきらいがあるのであります。これを一箇月延長したわけであります。三箇月でも短い、もつと長くしてはどうかということは、経団連あたりを通じて実業界に対しての意見を聞きました際にも出たのでありますが、よく調べてみますと、この工場財団の設定を登記いたします際には、財団を組成するすべての不動産につきまして、登記面と実際とをまず合致させる必要があるのであります。そこで建物の増築とか、土地の地目変換とかいうことがありました場合に、その登記をせずに放置してありますと、いよいよ財団を設定しようという際に、これらの変更登記等をやる必要がありますので、本来の財団設定に必要な先ほど申しました一月半ないし二月の期間だけでは足りないのでありまして、さらにその場合いわゆる前提となる登記のために数箇月の期間を要するわけであります。かように数箇月前から準備に着手しなければならぬといたしますと、先ほど申しましたような社債発行の予定時期と、現実に発行し得る時期とのずれが三箇月以上になることも考えられるのでありますが、不動産につきまして変更を生じましたときには、その都度変更の登記をする建前になつておりますので、これを怠らずにやつておれば、財団設定の登記そのものは一月半ないし二月でできるわけであります。この一月半ないし二月で財団設定の登記ができるという前提に立つて考えますと、現行法の二月の期間を三月に延ばすだけで十分ではないかという結論に達しましたので、この二箇月を一箇月だけ延長する案にいたした次第であります。
  48. 押谷富三

    ○押谷委員 次に財団の分割と合併の関係でありますが、第四十二條の二の改正で財団の分割を認めたことはまことに妥当だと考えます。しかしこの分割の場合に抵当権を消滅させずに分割し得るようにしてほしいというのが、実業界の要望であります。たとえば多角経営の大会社では工場長が責任者となつて独立採算制をとつているものが多いのであります。従つてその融資関係におきましても、工場單位で財団が組織されることになるような場合があります。こういう場合に抵当権を消滅させて分割させることは、手数と費用の上から実情に沿わないものがあると考えるのであります。また四十二條の三の但書で財団の合併を認める規定がありますが、まことにこれもけつこうだと考えます。しかしこの合併も結局は追加担保のための合併ということになつて、あまりに抵当権者のみの利益をはかり過ぎるきらいがあります。事業会社や銀行業者、主として社債取扱業者は、同一の抵当権者が二つ以上の財団に抵当権を設定してある場合のごときは、合併できるようにしてほしいというのが、大体実業界の希望でありますが、こういう希望に対して適当な時期に考えられるお考えをお持ちになつているかどうかということを伺いたいと思うのであります。
  49. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 ただいまお述べになりましたような財界方面の希望は、かねがね私どもも聞いておるのであります。財団の分割を必要といたしますおもな場合は、債務が減少いたしまして、財団の担保価値に余剰を生じて来た場合に、現行法でやりますと、第二順位以下の抵当権を設定するか、あるいは財団から分離して別個の財団を新たに設定するという手続もいるわけでありますので、この担保価値の余剰に相当する部分だけを分離して、これを新たな抵当権の目的に供することを考えたわけであります。抵当権のついたまま財団を分割するということはその意味におきましては実益のないことでありますし、また各財団がそれぞれ抵当債務の全部の担保となるわけで、財団所有者にとつて格別そのような場合の分割が必要であるとも考えられませんでしたので、一応この案におきましては分割した財団の一つについては、抵当権が消滅する場合だけに限つて立案をいたしたわけであります。合併の場合について申し上げますと、これは抵当権が二個以上の財団について存在しております場合、あるいは差押えの登記とか、その他所有権の登記以外の登記がついております財団を合併いたしますと二つ以上の抵当権の間の順位の問題その他きわめて複雑な法律関係を生じますので、今回の改正におきましては、財団一個だけについて抵当権のある場合は特別といたしまして、二個以上について抵当権のついておるものについては、合併を認めないということで立案をいたしたのであります。将来この法律案の成立後、実施の状況によりまして財団制度全般を検討する際には、さらにこの点もあわせて考究いたしたいと考えております。
  50. 押谷富三

    ○押谷委員 最後に四十九條の処罰の規定関係でありますが、工場財団に属する動産を讓渡の目的で他人に引渡した。これは一年以下の懲役または十万円以下の罰金に処することになつております。この規定で、工場財団に属する動産を讓渡する目的で他人に引渡した場合においては、その動産の所有権はどこへ行さますか。抵当権はどうなるか。その点を伺いたいと思つております。
  51. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 抵当権は原則として存続するわけであります。動産を善意の第三者に讓渡いたしました場合、民法百九十二條の即時取得の適用があるかどうかにつきましては、解釈上やや疑問はあるのでございますが、即時取得の適用があるものと解釈いたしております。従いましてその場合におきましては、抵当権は消滅することになるのであります。
  52. 押谷富三

    ○押谷委員 これはいろいろ議論のあるところだと考えますが、民法の百九十二條は、所有者がこれを第三者に売つたような場合、ただいま申し上げた工場財団に属するものを他人に讓渡した場合がただちにこれに適用されるかどうかということは、私は法律解釈上重大な疑義があると思つております。従つてただちに抵当権がその部分に限つて消滅して行くという解釈につきましても相当異議があるのでありますが、いずれにいたしましても、この点については特に御考慮を願わなければならないことは、單に考え方によりますと、自分のもので工場財団に属する動産を他人に讓渡した場合に、ただちにそのものは所有権が第三者に移つてつて、抵当権が消滅するという解釈になりますと、この工場財団の権利というものが非常に弱いものになつて来るのではないかと考えます。従いましてこれは相当重大な一点でありますから、この点についての解釈もある程度まで統一をする必要があると思いますが、私はそうはとつておらないのです。これは、所有権もまた抵当権も正確な意味においては移転はしないものである、抵当権も消滅はしておらないものであるというように一応の解釈を下しているのであり、かつまたこの工場財団の関係は工場抵当登記簿に記載されているのでありますから、その登記簿に記載されていることを第三者に公示される方法があるにかかわらず、ほしいままに自分が所有者から買い受けて、それで善意、平穏、公然、無過失というこの條件に当てはまるかということについても、重大な異議があると思うのであります。こういうことを特に御考慮を願いたいのですが、私が解釈をするようにただちに所有権は移転をしない、抵当権は消滅しないとなると、この処罰はたいへん重きに過ぎはしないかと考えるのでありますが、いずれにいたしましてもこういう処罰規定が抵当関係から非常に重過ぎるのではないかという感じがいたしますが、その点について御意見を伺うとともに、将来大改正をせられるときにはこの種の條文には重大な考慮を携われたいことを希望いたします。
  53. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 財団の組成現在における動産を第三者に讓渡いたしました場合の法律効果につきましては別といたしまして、少くとも抵当権者の追求が著しく困難になることは事実なのであります。それで財団の構成要素であるものを不当に処分する行為に対して罰則をもつて臨み、財団の抵当価格を維持しようとずる思想は、もとより工場抵当法ばかりでなく、これを準用しております鉱業財団、漁業財団、港湾運送事業財団についてはもとより、別系統に属します鉄道抵当、企業抵当等についても同様罰則があるのであります。かような行為を処罰するかどうかという点につきまして問題があると思うのでありますが、このたびの改正におきましては他の立法例にならつたわけであります。何分この四十九條、五十條の罰則の規定は旧刑法時代の罰則でありまして、きわめて不適当な表現になつておりますので、新しい形の立法に改めた次第であります。なお御意見のありました点は、将来改正の際において十分考慮して行きたいと考えております。
  54. 佐瀬昌三

  55. 加藤充

    加藤(充)委員 私は簡單な質問を二点ほどいたします。実はこれは委員会の性格上いたし方ないと思うのですが、法律のいじり方だけをやつたのでは、実体的な法案審議ということとほど遠いものであり、実際上の審議をしないにひとしいという結果になり終ることをおそれるのであります。従いましてただ法律上どうなるというような説明じやなくして、この改正を基本的に要望する日本の経済あるいはとりわけ企業金融の問題などについてこれを明らかにして、その上に立つた法案審議がやはり本格的なものであろう、私はそういう要望もしておいたのですが、そのはからいがされなかつたことをまことに遺憾と思います。これは押谷委員からも質疑がありました抵当権者本位に改正するということは、企業本位に改正するということとは違うのであります。もちろん企業資金と企業の運営ということとはなかなかむずかしい関係を持ちますから、一概に簡單に割切ることはできないにいたしましても、今指摘しました抵当権者、債権者本位に改正するか、企業をあくまで擁護し、これを保持するという立場で改正するか。こうなつて来ますと、同じ條文でいろいろな意見がわかれて来ると思います。本法案の価値評価も違つて参ると思うのであります。先般株式会社法の改正があつて、各種の優先株その他社債募集等についていろいろな便宜がはかられた反面には、取締役会等の権限の改正もありました。こういうことを私が言うのは本案関係がないように見えますけれども、最近独占企業の集排法が廃止され、旧独占財閥資本の復活というものが出て参ります。それと関連していろいろ今問題がありますけれども、長い目で見れば、それらと結合した外資の動静というようなことが今頭に浮かぶのであります。そういうふうな運の全体の見通し、状態の中で、この改正がどういう結果をもたらして行くか。これは單に企業の問題でなくて、深く広く日本の民主的な再建に関係を持つ基底的な問題であります。そういう意味合いで一部改正ではありますけれども、この企業金融の重要な点としての金融担保制度の改正というものは軽視してはならない重要なものを持つている。こういう説明なり、質問が委員会でなされなかつたのは、審議が不十分だつたと言わなければなりません。まことに残念だと思うのです。押谷委員が先ほど質疑した傾向を、私ども工場抵当法の中でも、あるいは鉱業抵当法の中でも見届けるのでありまして、企業本位に考えたものというより、いわゆる金貸し資本を中心に考えた改正であると考えますが、その点をひとつ説明願いたいと思います。
  56. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 この法案による改正は抵当権者ないし債権者本位の改正とは考えておらないのでありまして、財団所有者が財団を最も有効に担保として利用し得るようにという趣旨において改正をいたしたのであります。
  57. 加藤充

    加藤(充)委員 一々こまかいことを質問してもしかたがありませんから、これだけの質問をいたします。鉱業抵当法というものの問題ですが、鉱業権が歴史的に国民的な沿革を持つて、外国資本等、外国人の所有の対象にならなかつたものであるという点から見て、また先ほど私なりにあげました諸点との関連で重要だと思いますので、鉱業抵当法部分についてだけ質問いたします。この租鉱権を鉱業抵当権の対象にした事由、これはなるほどいろいろ説明されておりまするけれども、これでは不十分でありますので、いま少し具体的な事例についてひとつ説明願いたいと思います。
  58. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 鉱業抵当法の改正の第二條の二として入つておりますのは、租鉱権を鉱業抵当権の目的とするという意味ではないのでありまして、採掘権を鉱業財団の組成物件とするという意味なのであります。すなわち鉱業抵当法において準用しております工場抵当法規定によりますと、他人の権利の目的であるものは財団の組成物件となることができないのでありますが、租鉱権の目的たる採掘権が鉱業抵当権の目的となりましても、鉱業の企業としての価値にはほとんど影響がないという実情から見まして、租鉱権の目的であつても鉱業財団に属せしめてよろしい。またすでに鉱業財団に属しております採掘権も、抵当権者の同意があれば租鉱権の目的とすることができるということを規定しただけであります。租鉱権自体を鉱業抵当権の目的とする意味ではないのであります。
  59. 加藤充

    加藤(充)委員 あなたの方からお配りを受けました鉱業抵当法の改正の説明の終りの方に、「租鉱権の目的たる採掘権を鉱業財団に属せしめることは無條件に、鉱業財団に属する採掘権に租鉱権を設定することは、抵当権者の保護を図る意味において、その承諾を條件として、これを認めることとした」というのでありますが、これはまだ審議が不十分でありますから、その点を先ほど来重々申しておるので、まだ明確になつておりませんけれども、どうもこういう点について企業と金貸し資本との関係で、やはり抵当権者本位に考えているところがあると思うのです。大体産業資本とそれから金融資本と区別したりすることは、運営上は区別したりすることはできないけれども、こういうような見方は許されると思うのでありまして、われわれはとりわけ民族産業あるいは平和産業というようなものを極力防衛し、育成し、これを発展させなければならないのであつて、その背後に国際的な連繋を持つた銀行資本や金融資本の言うがままに、今申し上げました産業あるいは産業資本家がそれに引ずられて、非常な不利益になつて行くというようなことになるのでは、改正では断じてあり得ないと思うのであります。そういう点を憂えてわれわれはこの法案審議に参加しておるつもりでありますが、先ほど指摘しました点はいかがにお考えになりましようか。
  60. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 抵当権者の保護をはかる意味において、承諾を條件としたということは、租鉱権の設定は通常は採掘権の価値にほとんど影響がないのでありますが、租鉱権の内容いかんによつては採掘権の価値に相当影響を及ぼす場合もあり得る。そこですでに抵当権の目的になつております採掘権に租鉱権を設定するという場合には、抵当権者の同意を要件とすることが当然であるというふうに考えるのであります。
  61. 加藤充

    加藤(充)委員 どうも鉱業権なり、あるいは鉱業抵当法なりが、現場においてどういうふうに作用するか、それから租鉱権の目的たる採掘権を当然に、無條件に鉱業財団に所属せしめるという事柄はどういう実情なのか、御説明ではわかりかねますが、法務府のあなたに聞くのも無理だと思いますから、私はやめます。
  62. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければこれをもつて質疑は終局いたします。  次に本案討論に付すべきでありまするが、討論通告がありませんので、討論は省略し、ただちに原案を採決に付します。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  63. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました議案に関する報告書の作成の件に関しては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさようとりはからいます。     —————————————
  65. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案議題といたします。  質疑を行います。質疑通告がありますので、順次これを許します。押谷富三君。
  66. 押谷富三

    ○押谷委員 まず最初にお伺いしたいと思いますのは、この勅令は昭和二十二年に公布されたものでありまするが、すでに今日までに五箇年を経過いたしております。その間における勅令九号違反として摘発されました事件は何件くらいあるかということを承りたいとともに、今日現在この勅令九号の対象ともなるべき女性でありますが、集娼、散娼を通じて全国におよそ何名くらいあるか、御調査が遂げられておりますならば承りたいと思います。
  67. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 最初のお尋ねの本勅令の違反事件でございますが、昭和二十二年以来昨年の九月末までに至る件数は、全国を通じまして合計約六千三百件と相なつております。こまかい内訳等は別に資料として御配付いたしたはずでございますけれども、概数を申し述べますと、うち起訴が約二千件、その他は不起訴、中止、移送と相なつております。  なお勅令九号の適用を受けるに至る女性の数でございますが、この点につきましては、実はいろいろな方面から統計を求めてみたのでありますが、なかなか正確な数が得られませんので、種々の事情を参酌しまして私どもは大体集娼、散娼を通じまして約十五万と踏んでおります。但しこの点につきましてはいろいろな見方によりまして数が相当つておるようでございます。
  68. 押谷富三

    ○押谷委員 この勅令九号はそのねらいが那辺にあるか、非常に疑問の多い勅令でありますが、まずお尋ねをいたしたいのは、第一條に「困惑させて売淫をさせた者」、困惑という言葉が使われておりますが、大体予定されておる、想像されております困惑の意味、あるいはその困惑の原因を承りたいと思うのであります。
  69. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 第一條のこの困惑という文字は、相当解釈上疑念があつたのでありますが、最近に至りましてほぼその点の解釈が一定して来まして、運用上も次のようなことに相なつております。と申しますのは、大体前段にかぶつております「暴行又は脅迫によらないで」というのが第一要件に重なつております。これは要するに刑法の強制猥褻あるいは二百二十三條の強制罪に該当しない程度のもの、つまり程度が低いもの、そして婦女の自由なる意思判断を拘束するような強制方法を用いて婦女に売淫をさせるような行為、かように抽象的でありますが解釈いたしております。
  70. 押谷富三

    ○押谷委員 この困惑の原因に、ただいま抽象的な御説明は伺つたのでありますが、前借というような関係、あるいは親類、縁者というような関係、かような関係から売淫をしいるというようなことが困惑のうちに入るかどうかを伺いたいと思います。
  71. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 具体的な事案の内容によつても違つて参るかと思いますけれども、單なるそれだけではなりませんので、それに若干強く強制するようなところが加わつて、初めてその困惑を利用したということに相なると存じます。
  72. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  73. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めてください。  本日はこの程度にとどめ、明二十七日午後一時より会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会      ————◇—————