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加藤(充)
委員 住民登録法案が上程されましたときには、私
どもは
委員会においても本
会議においても
反対の
意見を述べておいたのであります。本
法案はその
施行法ということにな
つておるのであります。従いまして表面から見るといまさら何をか言わんやの感なきにしもあらざるがごとく見える。しかし本
法案の意図するものは、わが党があの際に指摘した
通りのものだということがはつきり出て来たと思うのであります。その点の指摘をいたして、本
法案の
反対の
意見とするものであります。
昨年九月に
サンフフンシスコ條約でいわゆる
二條約が締結され、そしてやがて批准にな
つて、このたび問題に
なつたあの
日米行政協定というものが発表されたのであります。このコースは昨年初めに
ダレス氏が来日以来明確にされた道でありまして、結局このたびの
日米行政協定、そしてその
基本は
日本の政治的、経済的、
軍事的隷属をきめたものでありまして、この
行政協定を結ぶために、
サンフランシス二條約の締結があり、そしてそのために
ダレス氏が昨年初めに来日せられたというのが事の本体だと思うのであります。さらに
沿革をたどれば、一昨年朝鮮に戰争が起りました直後に、マツカーサーの考案に基き
占領命令として出されたところに従いまして、
ポ政令による
警察予備隊の設置が強行されたのであります。そして今日になりますと、本年の十月から
警察予備隊は
保安隊あるいは
防衛隊、衣を脱ぎ捨てたはつきりした公然たる
軍隊というものに脱皮しようとしているものであります。
本
法案の
基本法でありました
住民登録法は、昨年の三月三十一日に本
会議を通過しました。以上の背景のもとに
住民登録法が誕生し、そして本年の七月一日からの
施行期日がきめられ、そしてそれに基く本
施行法がここに姿を出して来る。私はそういうような歴史的な
沿革と
内容を考えますときに、本
法案は
軍事的徴兵、徴用の
法律である、憲法に違反する
法律であると考えるものであります。皆さんは
行政協定のとりわけ十八條、二十四條をよく身にしみて吟味されたことがあるか。これは
安保條約の前文に、
アメリカは
日本国が「直接及び
間接の
侵略に対する自国の
防衛のため漸増的に自ら
責任を負うことを期待する。」ということがあ
つて、これは実際は
アメリカの
日本に対する再
軍備の
要求であります。ですからそれを締結し、
行政協定を結んだ以上は、
警察予備隊はいわゆる
間接の
侵略に対するものであ
つて、こういうようなことでは、條約が有効適法なものであるかどうかは別問題といたしまして、
政府の
立場に立てば、明らかにこれは約束の半分も果しておらないということになるのであります。すなわち條約の履行の
立場からいえば、この
間接の
侵略ばかりではなく直接の
侵略、すなわち
外国軍隊と交戰をするために、漸増的にもせよ何にもせよ、持たなければならない。こういうふうな結論にな
つて行きますし、そういう
義務負担を背負い込んだのであります。
平和條約の五條の
規定によれば、「
国際連合が憲章に従
つてとるいかなる行動についても
国際連合にあらゆる援助を與え」云々とあります。かように両條約と
行政協定は
日本の再
軍備と
海外派遣を義務づけている。これはまことに明瞭であります。
行政協定二十四條をどうして運用し、実際に移して行くか。ここに
住民登録法がどうしても必要なのである。いろいろ各般の
行政事務の
簡素化というようなことも、ある
部分には起るかもしれませんけれ
ども、それは本
法案のねらいではございません。とりわけ十
二條などによりまして、
日本の経済力あるいは労力というようなものが直接調達という形にな
つて行きまするならば、労務の提供は徴用以外の何ものでもありません。こういうふうなときに、人的資源のそれぞれの確保というものは、まさにこの第一義的な眼目のために要望されるのである。この
法案はそれにこたえ、それを
実施するためなのであります。第二点は、本
法案はスパイ法であるということであります。條文はちよつと記憶いたしませんが、
行政協定の中に、この協定あるいはその
基本になる條約の
目的とする精神ということが書いてあります。これははつきり言えば反共であります。ここに反共のための警察あるいはその他の処置が必要にな
つて参る。これは巧妙な、りつぱな、
目的をカモフラージュいたしまして、実際はその役割を果すものであります。第三点は、
住民票とか
住民登録とかいうふうなものは、これは
日本人が
日本の
政府によ
つて、はだ身につけておかなければならぬというようなものでありましようか。過ぐる第二次世界大戰のときにナチスに支配され、その国の
政府、ナチスに身売りをいたしたあのぺタンを首班とするヴイシー
政府のもとに強行されたものは、この種の
住民登録の証明であり、はだ身離さず持たなければ良民たるの待遇と保護を受けることができなかつた。中国に
侵略した
日本が何をやつたか、良民証の発行をや
つたのであります。
〔「簡單にしろ」「恥を知れ」と呼ぶ者あり〕
こういう意味合いにおきまして、私
どもは絶対にこの
法案に賛成するわけには行かないのであります。今恥だと言うが、これはなまいきなことを言つたらなまいきに聞えるかもわからないが、この問題は
日本の民族と
日本の国民を戰争の中につつ込む癌となるということを近く歴史が証明することを断言して、私は
討論を終ります。