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1952-02-23 第13回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十三日(土曜日)     午後零時一分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君    理事 田万 廣文君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       高橋 英吉君    花村 四郎君       松木  弘君    眞鍋  勝君       田中 堯平君    加藤  充君       猪俣 浩三君    佐竹 晴記君  出席政府委員         検     事         (法務府特別審         査局長)    吉河 光貞君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月二十一日  委員牧野寛索君辞任につき、その補欠として高  木松吉君が議長の指名で委員に選任された。 同日  国民手帳制定に関する陳情書  (第五  八七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察行政及び国内治安に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  検察行政及び国内治安に関する件について調査を進めます。  この際お諮りいたします。本件について警視総監田中榮一君を参考人として、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 異議なければ、さように決定いたします。  発言の通告がありますから、順次これを許します。押谷富三君。
  4. 押谷富三

    押谷委員 私はここに御出席をいただきました警視総監に、これから申し上げる三点についてお尋ねをいたしたいと存ずるものであります。その第一点は、去る二十一日都内各所において行いました日共尖鋭分子によつてなされた集団的かつ波状的な擾乱関係についてお尋ねをいたしたいと存ずるのであります。その次に学園の自由、大学の自治と治安責任関係について、東大内において行われた事件についてお尋ねをし、第三点は、先般富士銀行を襲いましたギヤング事件についての捜査の関係をお伺いをいたしたいと存ずることの三点であります。  まず第一点について、去る二十一日に東京都内各所において日共があばれました関係でありますが、この関係お尋ねいたしますが、日本共産党尖鋭分子で反植民地デーといつたような催しを各所に行いまして、その際の参加団体がいろいろ各所において集団的な暴行を働いたのでありますが、その関係は背後に日共からの指令があつてなされたものであるかどうか。この点をまず第一にお伺いをいたしたいと存じます。
  5. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの点につきまして私からお答え申し上げます。  去る二十一日全国的に行われました反植民地デーデモの実際の様相をいろいろ検討いたしてみますると、日本共産党において秘密文書として発行しております「球根栽培法」というものがあるのであります。この「球根栽培法」の第三十六号の内容を拝見してみますと、われわれは武装の準備と行動を開始しなければならないということが前提になつておりまして、全国中核自衛隊がいわゆる軍事行動一環といたしましてこの反植民地デーを利用いたしまして、随所に行動を起しまして相当不法な示威行進集団示威運動等を開催したように考えられるのであります。しかしながら私どもはその現象から見ておることでありまして、はたしてこれが確実に日本共産党が指示したものであるかどうかというような証拠等は今のところまだ見出し得ないのでありますが、現在のその結果から見た点から申しますると、まさに「球根栽培法」に指示しておるところの、われわれは行動を開始しなければならない、武装して行動を開始しなけばならないというようなその根本方針に準じて、しかもその遊撃作戰並びにその戰術等におきましても、これの原理をそのままに履行しておるようにも考えられるのであります。
  6. 押谷富三

    押谷委員 二十一日の騒乱関係はことごとく対象警察官あるいは交番警察署に置いておるのでありますが、こういう警察対象とした一つ騒乱は、その以前にかつて行われました北海道白鳥事件あるいは長野における警察集団暴行事件、あるいは練馬巡査殺し事件等一つの関連を持つておると思うのでありますが、こういう関係について警視総監はどうお考えになつておりますか。
  7. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。現在の階段におきまして北海道白鳥警部殺害事件並びに印藤巡査殺害事件等は、私どもは明らかにこれは思想的背景を持つた犯罪であるということが考えられるのであります。  それから今回二十一日に集団不法行為が行われたのでありますが、この「球根栽培法」の中にもすでに労働者はいろいろな形で敵の武器を持ち出しており、大衆闘争の中でこれを意識的に計画すれば必ずとれることが明らかとなつておる、また札つきの反動警察官等を襲い武器を奪うこともできる、われわれはこれを行わなければならない、こういうことをはつきり言つておるのであります。そうしてその使用する武器につきましては必ずしも近代的なものでなくともよろしい、大衆の持つている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹やりや簡單につくることもできる武器も使用することができる。特に敵を襲撃するために必要な——敵というのは、これはおそらく警察官を指しておるものと考えられるのでありますが、敵を襲撃するために必要な輸送軍用自動車パンク針手榴彈爆発物等のような簡單なものはただちに製作することが必要である。かように「球根栽培法」にはいつておるのでありますが、今回の集団暴行事件はこれを地のままに行つておりまして、明らかに国家権力に対する一つ反抗であるというようにその行動様相から見てはつきり言えるのであります。何にも罪のない警察官が忠実に警邏をしておる。その一人の若い警察官警邏さしておる者を、数百名の者が取囲んで打つ、なぐる、あまつさえ武器まで——拳銃まで取上げるということは、これは明らかに権力に対する一つ反抗であると「球根栽培法」にいつておるところの方針をそのままに行つたのではないかというように私は考えるのであります。
  8. 押谷富三

    押谷委員 この二十一日の集団暴行参加をいたしました人たち組織あるいはその組合種類等がおわかりでありましたら承りたいと思うのであります。
  9. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。大体におきまして、今回集団暴行に関與いたしました人々の属する組合は、あるいは電業社日本鉛並びに日本機器株式会社等の労組が中心になりまして、あるいはそのほかの外郭団体、また一部朝鮮人参加しているやにも聞いておるのであります。それからこれらの人々は、いずれも私は共産党言つている軍事行動一環としての中核自衛隊組織の一員であるのではないかということも考えられるのであります。
  10. 押谷富三

    押谷委員 この「球根栽培法」に書かれてあります指令そのものを実行したごとく見受けられる今回のこの集団暴行につきまして、最も参考となるべきは、当時この暴徒において用いました武器だと考えますが、その武器はどういうようなものであつたか承りたいと思うのであります。
  11. 田中榮一

    田中参考人 先ほど申し述べましたごとく、今回の暴徒の使用いたしました武器というものは、必ずしも近代的なものではないのでありまして、いわゆる大衆のつくり得る、また大衆が利用し得るものを適宜利用しておるということであります。この中に特に敵を襲撃するために必要な輸送車用パンク針手榴彈爆破装置等のような簡單なものとなつておりますが、きわめて簡單なものを使用しておつたのであります。
  12. 押谷富三

    押谷委員 警視総監、今お手元にお持ちのものがありましたら参考のために拝見したいと思います。
  13. 田中榮一

    田中参考人 ただいま御要請がございましたのでここに二、三御参考までに持つてつたのでありますが、これがいわゆるパンク針というものでありまして、小さな板にくぎを打ちまして、そうしてこれを路上に置きますと、たとえば警察官輸送して参りまする際、途中において輸送用自動車がパンクする、あるいは場合によつてはこれを踏んで足に刺してけがをするというようなものであります。二十一日の日にこれを多数ばらまきまして、中にはこれを警察官にぶつけておるのであります。これは多数警察の方に押収しております。  それからいま一つは「球根栽培法」に手榴彈というようなものを書いてありまするが、当時暴徒は原爆ということを言つてつたそうでありますが、これはとうがらしでありまして、これを破けやすい袋に入れて、取締り警察官にまつこうからぶつけまして、そうして目つぶしを食わせるということになるのであります。それからいま一つは卵のからでありますが、この中にとうがらしを入れまして、この入口をふさいで、そしてこれを警察官の顔面に向つてたたきつける、こういうものであります。  それから成増付近におきまして一部暴徒が起りまして、無許可集団示威運動をなさんといたした際に、これはただちに取締り警察官が参りまして、警告を発し、これを解散させ、東上電車池袋に引返させたのでありまするが、その際に小びんの中に液体が入つておりまして、これを上から投げますと、警察官にすぐ発見されるものでありますから、みんなの下から投げたというような一つ戰術をとりまして、これは催涙ガスでありまして、これをまきますと一種の白い煙が出まして、これによつて少くとも十メートルくらい離れておる者が涙が出て、まともにものを見ることができないというような、いわゆる催涙彈ではございませんが、催涙液体のようなものを使用いたしておりまして、これはただいま警視庁鑑識課において科学的な分析をいたしまして、近くその液体名称等も明瞭に公表できる時期があるであろうと考えております。
  14. 押谷富三

    押谷委員 それだけですか。
  15. 田中榮一

    田中参考人 なおここに当時のいろいろな惨状の写真もございますので、ごらん願いたいと思います。
  16. 押谷富三

    押谷委員 この武器の中で一つの特徴をなしますものは、今総監の御説明にありました催涙ガス液体だと思います。これは昨年末大阪の東成警察朝鮮人暴徒が襲いました際に用いましたものも、サイダーびんに入れた催涙ガス液体であつた。それを三箇投げつけて、署内には、いることができないような状況なつたということが、調査の結果明らかになつておりますが、そのときに用いたのは駆虫薬であつて、非常に入手のしやすいものであると聞いておつたのであります。今回用いましたその催涙ガスを発生する液体の性格なり、あるいはその入手径路等、まだ調査中であれば明らかにすることはできませんが、御調査の結果はまた適当な機会にお知らせを願いたいと思います。  それから少し順序はかわりましたが、この暴徒の数とこれに対して当られました動員警察官の数はどうなつておりますか。
  17. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。大体二十一日に各所で無許可デモが行われたのでありまするが、正確な数字はちよつと申し上げかねるのであります。池袋成増付近に集合した集団は大体二百名ぐらいではないかと考えております。それから本富士警察署に、これは学生でございますが、学生が、二、三回にわたりまして延べ百五十名ほど押しかけております。それから澁谷警察署には当日四回ほど波状攻撃の来襲がありまして、これはやはり東大学生が主体になりまして、付近やじうまも若干加わつたように聞いておりまするが、約三十名ぐらいが二回、六十名が一回、それから第四回目のは外部の人もまじつて大体六百名くらい警察へ押しかけて来たと考えております。それから電業社付近に集まりました集団はまず四百名以内であろうと考えれば間違いなかろうと考えます。それから当日これに使用しました警察官は、出たり入つたりいたしておりますので、正確な数字は今ここに資料を持つておりませんのでわからないが、まず千五百名くらいではないかと考えております。正確な数字が御必要ならばまた後ほどお示しいたします。
  18. 押谷富三

    押谷委員 千数百名の警察官がこれの鎭圧に向われておるのでありますが、こういう警察官が出動しなければならぬような重大な事態を生じたということは、あらかじめ何かの情報警視庁においては入手しておられたのですか。
  19. 田中榮一

    田中参考人 二十一日のこの反植民地化デーにおきましては、全国的にもいろいろデモあるいは集会等があるということは常に特審局国警並びに全国の自警から前々から連絡はとれておりまして、もちろん警視庁からも相当な資料を各方面にも出しまして、相互に警戒をいたしておつたのであります。それからまた警視庁におきましても、それぞれ事前警視庁予備隊等を最も適当な箇所に配置をいたしまして、事前警戒に当つてつたのであります。
  20. 押谷富三

    押谷委員 事前情報入手して、かようなこともあるであろうという警戒がなされ、そして千数百名の警察官が出動しておられたにもかかわらず、当日の都内状況は、暴徒のために二人の警察官があるいはたたかれたり手錠をかけられたり目隠しをされたり、はなはだしきはピストルをとられたり、あるいは交番をこわされたり電話をこわされたりしたような実害が各所に行われておるのであります。これは警察警備の手薄かあるいは手違いか、何かそこに原因がなければならぬと思うのであります。当日の警備模様からして、こういう結果を見たことは私どもは遺憾だと考えておるのでありますが、総監はこの点についていかがお考えになつておられますか。
  21. 田中榮一

    田中参考人 まことにごもつともな御質問でございます。大体ほかの方のデモ取締りにつきましては、私どもといたしましては何ら事故もなく取締りができたのでありまするが、この電業社付近デモ取締りにつきましては、現場が非常に込み入つたところでございまして、もちろんその付近には警戒職員等十分配置をいたし、それぞれ情勢を察知するに必要なる人員を配置させまして、その行動について監視をしておつたのでありますが、甲斐巡査の襲撃をされたのはまつたく突発的な瞬間的なできごとでありまして、しかもそれからすぐ各方面集団が二分されて急速に行進いたしましたので、警察といたしましてはこれを追撃するというような態勢で行つたわけであります。もちろん今回のこの取締りにつきましては、警視庁といたしましては万全を盡したはずであるのでありますが、一部においてかような不祥事を起しましたことはまことに申訳ないことでありまして、今後こういうことにつきましては警察としてもさらに十分に警戒をいたしまして、万遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。
  22. 押谷富三

    押谷委員 今後十分御注意をいただきまして万全を期せられたいと思うのであります。そこで当日暴徒のために奪われたピストルでありますが、これはまだ発見をされておらないようであります。今後も今の「球根栽培法」の指示に従つて彼らは警察官武器をねらうということはあり得るのでありますが、過去において警察官ピストルを奪われたような事実があるか、またあればその数はどれくらいであるかをお聞きかせ願いたいと思います。
  23. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。従来警察官拳銃を奪われた数は、今手元資料を持つておりませんので、正確な数字を申し上げかねるのでありますが、ときに警察官派出所等において休憩中に、外の何者かに盗まれたようなことが一、二回あるのであります。それからまた寮におきまして一回拳銃を盗まれたというようなことも承知いたしております。しかしこれらの拳銃はいずれも昨年春以前のものでありまして、私の想像としては、これは單なる物取りまたはそうした拳銃を奪取して他へやみで転売して金にかえるというような目的のもとにとつたのではないかとも考えられるのであります。昨年の十二月二十六日練馬署管内におきまして印藤巡査が多数の暴漢に襲われまして惨殺せられ、しかも拳銃を奪取されたのでありますが、これと今回甲斐巡査が多数の暴徒に取囲まれて拳銃を奪取された、この二件につきましては私は單に物取りのしわざではない、ある一つ目的を持つた犯行である、言葉をかえて申しますならば、いわゆる思想的背景を持つた犯行であろうということを考えざるを得ないのであります。
  24. 押谷富三

    押谷委員 大体明らかになつたと思いますが、二十一日の警察警備模様、あるいは当日の集団デモ参加した暴徒行動などを、もし警視庁からお持ちになりました図面で御説明がいただければたいへん幸いだと思いますので、図面によりまして総監から当日の模様を御説明願いたいと思います。
  25. 田中榮一

    田中参考人 それではここにきわめて簡單略図を持つて参りましたので、その略図につきまして、ひとつ御説明をいたしたいと思います。  これは今回の南部地区におきまする集団暴行事件の全体の見取図であります。これが大森警察署、これが蒲田警察署でありまして、ちようどこの両警察署の境界がねらわれているという結果になつたのであります。ここに電業社という会社がございますが、ここは昨年レツド・パージの事件がありまして、工場従業員が相当騒いだのでありまするが、ここでは警察官暴徒に追い詰められまして、やむを得ず発砲をいたしておるというような事故を起した工場であります。それからこの日本教具従業員思想が相当はげしい工場でありまして、ちようど三時ころから、ぼつぼつこの梅屋敷の方面、あるいはこちらの方面から、バスを利用したり、徒歩で来たりして、大体九十名くらいの者が日本教具工場の中へ集まつていろいろ協議をしておつたようであります。そしてこの大森警察署付近には、一組ないし二組くらいのピケが立つてつたというような情報も来たのであります。それからこの日本教具に大体九十名以内の労働者が集まつて、四時半ないし五時ころに至りまして、これが逐次こちらの方向へ行くというような情報が入つて来たのであります。しかしながら電業社は当日電休日でありまして、工場の中には従業員はあまり入つていなかつたそうであります。そしてこちらからも行き、こちらからも行つて、三々五々全然わからぬような方法で、逐次ここに集まつてつたような形勢があるのであります。  これは電業社のこの図を大きくしたところであります。大体五時半ごろになりますると、この電業社の前に萩中中学校がありまして、そのグランドの少し向うに都営住宅があつたのでありますが、あるいはこの都営住宅の陰に相当隠れておつたのではないか。あるいはこの辺のいろいろなところに隠れておつて、それが大体出て来たときにただちにここで隊をつくつたのであります。その隊は少くも前衛、本隊、パルチザン、後衛というような一つ部隊組織になりまして、四列縦隊になつたところを見届けております。そこで問題の五時四十五分ころでありますか、ここに北糀谷という交番があるのであります。この交番で数名の警察官が義もし、またいろいろ情勢の判断をしておつたのでありますが、油科部長甲斐巡査に、お前は時間になつたらパトロールに行つて来いと言つたのであります。この甲斐巡査というのは、大体この辺をパトロールしている巡査でありまして、この辺が彼の受持区域でありますが、時間になつたからお前は当然警戒にというよりも、むしろ警邏に行かなくてはならぬというので、警邏に出したわけであります。これは一定の時間内に警邏をいたしませんと、警邏規則に反するのであります。ところがここは非常に地域が広いために、自転車警邏ということになつておりまして、徒歩でなくして自転車警邏する建前であります。そこで甲斐巡査自分警邏路線に沿いましてこう来まして、この集まつているというところを通つて向うに通り越そうとしたところが、そこで一団の群衆に取囲まれまして、貴様は何しに来たというようなことで、もう一言も二言も言わせぬうちにいきなりやられた。巡査自分拳銃をとられるのをかばうために、右の手をこうやつた瞬間に、左があいたものですから、こちらからすぐ手錠をとられまして、それですぐガチヤンとはめられてしまつた。はめられてしまつてから、なぐる、けるの暴行がありまして、遂に拳銃をとられて、彼は右の関節をいためまして、ようやく危急をひとりで脱してここから走つて参りました。そのうちに四百名以内、三百五、六十名くらいの集団は、一つはこちらへ約二百名くらい、こちらへ百名ないし百五十名くらいの二つにわかれまして、非常に早い走るような速度でこれに行きまして、まず連絡用街頭電話を破壊しまして、これからこう行つてこの交番行つたのであります。同時に甲斐巡査は、さらにまた自転車でここまで来て、街頭電話をかけようとしたところが、もうこわされておりましたので、さらに急いでこれを走り去つてここに来たのであります。そしてここでこの警察官と合流したのでありますが、ここに来たときにはもう大勢の者が相当来ておつたそうであります。暴徒はここで窓ガラスを破壊したり、非常な暴行をいたしました。そしてやむを得ず警察官は十発ほど威嚇発砲したものでありますから、集団はちりちりに散りまして、あるいはこちらに行く者、あるいはこちらに帰る者というように、ここでほとんど解散してしまつたのであります。それから一部の二百名くらいの集団は、これは非常な早い、ほとんどかけ足のような速度でこう行つたのであります。一方甲斐巡査手錠をはめられたままでありますから、付近を通りがかりの十七になる女の子に、ここにかぎが入つているから、これであけてくれというようなことで、かぎ女の子に出さしてあけてもらつた。それで自由になつたものですから、すぐ街頭電話に来たのですが、街頭電話はだめです。警察電話暴徒がすでに切つてしまつて、破壊されておりましたので連絡もつかぬのであります。それですぐ付近藤本というお宅に行きまて、自分はかくかくの状態になつているということを、すぐ蒲田警察署に報告してもらいたいということを言つたのであります。そうしてその藤本という主婦に警察電話してもらつたのであります。警察ではただちに警察署長以下四十五名が自動車、トラックに乗りまして、電業社の辺に来たのであります。ここで降りてみたところが一人もいない。さてどこへ行つたのであろうということで、やむを得ませんから、多分こちらには来てないだろう。だからこちらに来てなければこちらとこちらに違いないということで、ずつと追いかけて行きまして、ここまで来たのでありますが、もうそのときは影も形もない。そこで通行人または民家の人にいろいろ聞きながらあとを追いかけて行つたところが、約三百名くらいの——こちらから行つたものが合流しておりますので、約三百名のものと正面衝突をしたのであります。ここで追撃の四十五名と三百名が乱闘を起しまして、そして交通主任左頸部に深さ骨膜に達する傷を負い、またそのほか目つぶしを食つたりしましたが、ここでは絶対に発砲はしなかつたのであります。ここで約三、四人を逮捕した。そうして暴徒は全部こつちへ逃げまして、そしてその辺まで来ましてこつちへ行く考あるいは電車に乗つて逃げてしまうというふうに大分逃走しました。それで大森警察署予備隊がおつたのでありますが、この予備隊が出まして——ここでさらに五名ほど検挙いたしております——ただちに京浜電車のこういう駅に予備隊が張りまして、そしていろいろ乗降客職務質問身体検査をして、何か持つてないかということを見てとうがらしなんかを入れておつたり、あるいは衣類がよごれていたような者を何名か逮捕したような状態でありました。これはきわめて瞬間的な行動でありまして、「球根栽培法」にも書いてある遊撃作戰というものを、ちようどこのあたりで展開しているということがはつきりわかるのであります。従つて今度のこの集団不法示威運動は、「球根栽培法」のいわゆる戰略、戰術従つてとられたものであろうということで、何らかの指導によつてなされたものであるということがここに一応うなずかれるのであります。
  26. 押谷富三

    押谷委員 ただいま詳細な御説明によりまして、今回の都内の共産尖鋭分子によつてなされました暴動が非常に組織化されて、しかも大仕掛になされたのであつて、まさに共産党の暴力革命の前夜を思わしめるものがあります。(「その通り」「ばかを言つてら」と呼ぶ者あり)かような共産党行動は今後ますます激化される傾向あるのでありますから、国家治安の重責にあられる警視総監並びにその以下の警察官諸君の、治安維持のための一段の御努力、御配慮をお願いする次第であります。  第一の問題はこれくらいにいたしまして、次に大学の自治、学園の自由と国家治安の確保の関係についてお尋ねをいたします。去る二十日東大に起りました警察官つるし上げ事件を初めといたしまして、昨日はまた目黒区の駒場の東大教養学部内において、同じく二名の警察官がつるし上げを受けております。また渋谷警察署においても多数の東大学生によりまして、デモ的な行動が起されておるのであります。これらについてまず、二十日の東大に起つた警官のつるし上げ事件、駒場に起りました。パトロール中の巡査に謝罪文を書かしめた事件及び澁谷の警察署において起りました東大学生との折衝の経過、この真相を第一に承りたいと存じます。
  27. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。反植民地デーを利用いたしました学生運動は、大体二つにわかつてお話した方がいいと思うのであります。一つは本富士警察署管内の東大構内に起つた事件であります。一つは澁谷駅頭における東大学生を中心とした、いわゆる不法集会並びに不法示威運動の取締りから起つた事件であります。  前者の方は去る二月二十日午後六時三十分ころ、東六二十五番教室におきまして約三百五十名が集合いたしまして——この集合した人々の大部分、約二百名が東大学生であり、その残り百五十名が一応一般人と認められるのであります。この会合は東大学生演劇部のポポロ劇団が、福島県の松川事件の劇を開催したものでありまして、これは学校当局が、当初演劇部ポポロ劇団の劇の研究であるという名目で、何ら支障はなかろうという見解から許可せられたのでありまして、従つて途中からこれがある特殊の政治的目的を持つた集会に性質が変更して来たというようなことを、学校当局からも承つておるのであります。そこで午後五時四十分ごろ、警備係の四人の警察官行つてみたのであります。御承知のように東大の構内は何人といえども、またいついかなる時期においても、自由に出入ができるのでありまして、いわばまずメーンストリートは普通の道路のようなことになつておるのであります。そこで警備係の巡査はそのポポロ劇団のところへ行きましてよく状況を見ましたところが、入場料三十円で一般に公開されておるという事実を了承いたしましたので、一般のお客と同様に入場料三十円を支拂つて入場いたしたのであります。ところが警備係の巡査でありますので学生の中に顏見知りの者も若干おつたせいでありましたが、午後七時三十分ごろその学生に発見されて、お前は本富士署の警察官ではないかということから、約四十名の学生に取巻かれまして、会場内でいろいろ面責されたのであります。その際に警察官としては、会場を見たところ女、子供も入つておるではないか、三十円抑えばだれでも入れるのだから、観衆の一人として入るのは何ら支障ないでないかというので、いろいろ弁明したのでありますが、何分にも興奮し、いきり立つた若い学生のことでありますので、いろいろ問題大きくなつてつたのであります。このことを守衛から報告を受けました斯波厚生部長は、会場に行つて学生をなだめた結果、学生側は、警察官が不法侵入して申訳がなかつたというわび状に署名をすれば、警察手帳を返還すると回答したのであります。事は前後いたしまするが、その前に暴行を受けまして、警察手帳を取上げられてしまつたのであります。あるいは頭を机の上にやつたり、ネクタイを絞め上げたり、手をねじ上げたり、多数の者でありますから、抵抗したのでありますが、どうすることもできない、まつたく抵抗不能の状態に陷りまして、遂に警察官の最も貴重なる警察手帳を、これらの暴力行為をした学生に取上げられてしまつたのであります。警察官としては、ぜひその警察手帳を返還してほしいということを要請したのでありまするが、学生は断じて返さないのであります。そこで斯波厚生部長が中に入りましていろいろ交渉いたしました結果、斯波厚生部長が、じやとにかくこの書いたものに署名捺印してくれ、そうしたら自分が責任を持つて警察手帳をあなたにお返ししますからと、こういうことで警察官は、ただ警察手帳ほしさの一念によつて、その学生の書いた、いわゆる自分は構内に不法に侵入して申訳なかつた、という書面にやむを得ず署名捺印をしたのであります。そこで警察手帳を返してほしいと言つたところが、学生は断じてその警察手帳を返すことを拒否いたしまして、それを取上げたままになつたのであります。そしてようやく九時五十分ごろ全部が解散をしたのであります。  この警察手帳を奪われたということは、そのやり方がまつたく暴力行為によつてつたのでありまして、普通からいえば、まるで銀行のギャングと同じように、強盗事件のような結果になつたのであります。警察といたしましては、事を非常に重視いたしまとて、ただちにその面のわかつておる学生、特に暴行をしたと認められる面のわかつておる学生の氏名がわかつておりまするので、ただちに令状をとりまして、二十一日——ちようど目が悪く、反植民地デーであつたのでありまするが、その首謀者福井俊平並びにいま一人の二名に対して、暴力行為等処罰に関する法律違反として地方裁判所の逮捕状を請求して、これに基きまして、午後四時二十五分東大内時計台の下で容疑者福井俊平を検挙いたしたのであります。いま一人は、あいにく姿を見せないので、まだ未逮捕になつております。これを本署に連行しようとして門外に出たところが、約四百名の学生がスクラムを組んでこれを妨害いたしたのであります。ちようど警戒員が若干配置してありましたので——私服十八名並びに制服二十三名の警戒員でこれを阻止いたしまして、異常なく連行、本署に留置をしたのであります。これを留置いたしまするや、さつそく学生並びに大学当局を代表しまして、法学部の尾高教授、厚生部の根本事務官並びに文学部の安島、法学部の大野という学生が最初署長と面会し、検挙理由をただし、その他について種々抗議を持つて来たのであります。午後七時二十分ころ、さらに東大生約六十名が来署したので、警戒員がこれに警告を発して解散させたのであります。午後九時三十分、代表四名は毛布三枚の差入れを依頼して、これは円満に解散したのであります。その後さらに警察等に押しかけておるような事実はないのであります。  次に澁谷駅頭における学生デモ取締りでありますが、これは十八日ごろからやはり東大学生を中心としたいわゆる全学連都学連の連中が、最初駅の構内におきまして、再軍備反対、徴兵反対のスローガンを掲げまして、アジ演説をやつてつたのでありまして、これは駅の管理者として駅長が当然かかるところで政談演説をやることは困るからただちに退去しろということで、警察官の応援を求めまして、一応駅構内から駅の外へ退去を命じたのであります。ところがハチ公の銅像付近におきましてさらに演説を始め、またインターを歌うというような相当過激ないわゆる不許可の不法なる無届の集会並びに示威運動を開催いたしましたので、これを警告を発し解散せしめたのであります。その後何回も同様なことを繰返しますので、やむを得ず去る二月二十日の集会デモのときには六名を検挙いたしたのであります。ところが六名を検挙したために東大の教養学部の学生が中心になりまして反植民地デーの二十一日、最初は三十名、第二回は三十名、第三回には六十名、最後に午後七時半から八時半ごろの間には五百名の学生集団をなし、またそれに若干の付近やじうま等も加わりまして、まず六百名内外の群集が警察署の前に蝟集しまして、六名の検挙された人々の即時釈放、署長に面会、差入れの件について申入れがあつたのであります。そこで署長は第一の点は、これを拒否し、第二の点は、署長として面会して、よく事の次第を話して納得せしめようとしたのですが、なかなか納得しない、第三の点は、気持よく署長としても万全の措置を講じて、できるだけのことをするからということを約したのでありますが、第一の即時釈放を拒否いたしましたためになかなか帰らないのであります。そうして品々に警察の横暴を叫び、あるいはまたいろいろな不当な言葉を口走りまして、デモをやりますので、やむを得ず予備隊を招集してこれを解散させたのであります。大体九時、ごろにはほとんど全部解散いたしまして、その後何ら事故もなかつたのであります。さらにその後澁谷警察の方には東大学生は今のところ押しかけたような事実はございません。右の六名につきましては、検事が出ましてただいま事件を取調べ中であります。  なお申し落しましたが、二十一日の最後の波状攻撃の第四回のデモのときに、何回響いたしましてもなかなか学生が解散いたしませんので、やむを得ず公安條例の違反ということによりまして、二十三名を一応検挙したのであります。ところが学生課長が代表して来られまして、明日試験があるということでありまするので、学生のことでもありますし、署長としましては、住所、姓名を聞いたところが、すらすらいずれも答えましたので、もし必要があるならばまた後に取調べをするということで、一応身柄だけはこれを全部釈放いたしまして、ただいま六名だけの者を、検事が出てこれを厳重に取調べをいたしておるような次第でございます。
  28. 押谷富三

    押谷委員 大体の真相は明らかになりましたが、この各種の事件のうち、大学内において警察官が大学内へ入つたからというので、これをとがめ立てをいたしましてつるし上げをする、あるいは暴行を働いて警察手帳を取上げるとか、謝罪文に署名させるという事実の関係でありますが、これらの問題は、その発端は、何といつても大学の自治、大学の自由という立場から、警察官が大学へ入つてはならないのである。こういう一つの彼らに観念がありまして、それを侵した警察官にあやまちがあつた、だからこれを責めるのであるというのが、大学側のおおむねの言い分だと考えられるのであります。かつて京都大学事件について当委員会において調査をいたしました際の結論としても、大学の自治、学園の自由はもとよりこれを認むるものであるけれども、大学内といえどもその治安の最後の責任は警察官でなければならぬという結論がすでに出ているのであります。しかるにもかかわらず、今日なお大学の方では、大学の治安、大学内におけるすべてのことは大学内で自治的に解決するので警察のごやつかいにはならないというような態度が、いまなお改められないのでありますが、その根本の理由は、かつて警視総監と文部省の間に、あるいは大学の間になされました交渉から、次官通達というものが出ておる、この次官通達は決して法律でもなければ、命令でもございません、單なる通達にすぎないのでありますが、これを金科玉條のように、これだけあつたら何事も警察を押え得るがごとく誤解をいたしまして、それによつて警察の侵入を拒まんとするのが今日の大学の態度だと思います。そこで次官通達というものについて、これは総監も御関係に相なつたことと存じますから、次官通達の経過をひとつこの際御説明を願いたいと思います。
  29. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。この次官通達のことにつきましては、これは実は昭和二十五年六月に都の公安條例を制定いたしまする際に、学校構内における集会、示威運動等をどういうふうに取扱うかということにつきましていろいろ研究いたしたのであります。文部省ともいろいろと折衝いたしました結果、学校構内というものは一つの学園である。学園であるがゆえに、集会等につきましては、学校の自治権というものをなるべく認めて、そうして学校長の責任においてこれを取締つていただくことが、学生その他に及ぼす心理上の影響もよいであろうし、また学校長が学生、生徒、職員の統制をする上からも、こうしたことが適当ではないかというような考えからいたしまして、「集会、集団行進及び集団示威運動に関する都條例の学校構内における適用について」という一つの申合せをいたしたのであります。これに基きますと、学校の構内で行われる集会、集団行進または集団示威運動でも、一般公衆が自由に参加し得る状態のものは、これは條例の規定に掲げてある公共の場所における集会、集団行進、集団示威運動であるとみなしまして、名称、性格のいかんを問わず、許可の申請を必要といたしたのであります。しかしながらこれは学校でありますので、あくまで学校長を立てまして、許可申請にあたつては、必ず学校長を経由せしめるという措置をとつておるのであります。それからさらに、純然たる学校構内の会合あるいは学生集会、学校職員の懇談会、講演会、PTAの会合、卒業生懇談会、研究会、これらの集会につきましては、直接間接に学校に関係のある会合でありまするので、これらにつきましては、一応学校の校長の職権において、学校管理上の立場から許可、不許可を決定することにいたしまして、警察上の、いわゆる公安條例に基くところの許可、不許可というものは、この際には適用しないということにいたしたのであります。それから、学校構内における集会、集団行進、集団示威運動取締りについては、当該学校長が措置することを建前とし、要請があつた場合警察がこれに協力するということになつております。取締りについては一応当該学校長が措置することを建前とするということになつておりますので、必要があるならば、もし学校長の許可した集会でいろいろ治安上憂慮すべき現象が起つて来たという場合においては、学校長が警察に出動を要請したときには警察が出る、こういう建前をとつておるのであります。
  30. 押谷富三

    押谷委員 この次官通達があるがゆえに、学校当局も、また学生も、大学はあたかも外国の使節のいる大使館か公使館のように、治外法権のごとく、すべての警察権をここから追いやろうというような考え方を持つているようでありまして、そこに今回の問題、あやまちも、私は出発をいたしておるのではないかと考えております。この二十日の警察官のつるし上げ事件について、警察官東大の中に入つて観劇をした、入場料を拂つたという関係について、あるいはまた昨日の警察官がパトロールに大学の構内に入つたという関係については、入つたこと自体については警視総監はどうお考えになつておりますか。
  31. 田中榮一

    田中参考人 今私が説明いたしました次官通達の内容をなすものは、警視総監と文部省次官との一つの行政協定のようなものでありまして、これは現公安條例の範囲内において行政協定をしているようなものであります。従つてさらにこの行政協定の上にあるものは公安條例でありますので、最後の学校構内における治安の責任、警備の責任というものは、私はやはり條例の根拠に基きまして警察が当然責任を負う、従つてもし学校構内において不法な集会、不法な示威運動がかりに行われておるとした場合において、それが学校当局が許可したものであろうがなかろうが、とにかく一応学校構内において公安條例の認めることのできない集会、集団行進、集団示威運動等が行われておりましたならば、警察は当然自己の職権によつて適当な措置を講ずる権限は、私はあるものと考えておるのであります。この点につきましては、昨年京都大学事件においても同様な見解を申し述べたのでありまして、私はあくまで学校構内における最後の警備上の取締りの責任につきましては、公安條例の規定の根拠に基いて警察側にありということを申したものであります。従つて学校当局の言われる学園の自由というものは、いわゆる学問追求の自由でありまして、学校構内に物理的に入る入らぬという問題とは別個の問題であろうと私は考えておるのであります。それから本郷の東大並びに目黒区駒場にあります東大の構内は、通り抜けのできる一般民衆の自由に通行できる通路になつております。それから中に民間人も居住いたしております。従つて一昨年でありましたか、東大の構内に一般民衆の殺人事件も起つておるようなこともあつたのであります。それから一般の窃盗であるとか、あるいはいろいろな、いわゆる刑事上の不法行為等がしばしば行われるのであります。ことに目黒駒場の東大の構内には、ただいま飯場がありまして、あそこには労務者が多数居住をいたしております。それから鉄材、木材その他多数の資材物件等がそのまま放置されております。かような関係から、これは全部一般民衆の自由に通行し得る通路になつておりますので、警察といたしましては、これは警邏管内に設定いたしまして常時制服の警邏員を派遣いたしまして、犯罪防止に現在当つております。従いまして、私は学校構内でも自由に一般民衆が通行し、また車馬が通行し得る道路を持つた大学構内は、犯罪防止の点から申しましても、一般の制服警察官警邏できるものという解釈をとつておるのであります。
  32. 押谷富三

    押谷委員 当該警察官が大学構内に入つたことについて、正しいものであるという見方につきましての警視総監の御意見がございましたが、これについて参議院の文部委員会における岩間委員質問に対して文部大臣は、学園といえども警察の出入りはさしつかえないものである。入つて治安を守るべきものであるという、これを認めた答弁がありました。しかるにこの同じ事実について、矢内原東大総長の言明いたしました新聞記事によりますと、これまで警察の了解事項として、学内問題は学校で処理するという慣習があるのに、これを破つてつて来たことはけしからぬ、こういうような一つの嚴重抗議をするという言葉が使われているのであります。次にまた学生が暴力を加えたという事実は認めないが、多少の行き過ぎがある。学生らしき理性的な行動を希望する。警察手帳は早く返還するように努力する。こういうようなことも言つております。第三に、検挙された学生を早く釈放してほしい。今後も学生を刺激しないようにしてほしいと、まず抗議を言い、学生を刺激しないようにという注文を警察につけまして、この問題の発端からの全部の責任を警察に負わして、大学側はさらに反省をする色は見せておりません。この点を私は非常に遺憾に考えているのでありますが、一体こういうような考え方を大学が持つている以上、今後も同じようなことが繰返されるのではないかと思います。学校側は法律でもなければ、命令でもない、單に行政官吏の間において申し合せをしたにすぎない次官通達を非常に重要なものとして、これを金科玉條として、これによつてすべての警察を追いやろうとする態度をもつて臨んでいる。また警察方面においては、あくまでも正しい日本の国家治安を守るという重要な立場から、学園内といえども警察がパトロールもすれば、あるいは必要があれば立ち入つて適当な警察行動に出るという考えをお持ちになる。勢いここに衝突をすることを免れないと思うのでありますが、この次官通達について、今後さらに折衝をして、これについて根本的に申合せをかえる必要があるのではないかと考えるのでありますが、警視総監はこの次官通達についての今後の処置についてどうお考えになつているかを伺いたいと思います。
  33. 田中榮一

    田中参考人 これを制定いたしますときに、公安條例の趣旨を十分に説明し、御納得を願つて協定をいたしたつもりでありまして、現在のような、われわれから考えてまことに非常識と思うような解釈を大学当局においておとりになるようでありまするならば、今後の学校構内の治安維持の上からいいまして、とうていこれを認めることができないのであります。ことに将来学校当局の言われるような趣旨で行かれると、結局学校構内は取締りの盲点になる。学校構内であつたならばいかなることでもできる、こういうことになりますと、取締り上非常に危険であり、また憂慮すべき結果になると私は考えますので、少くとも学校当局が、われわれが見てきわめて非常識であると思われる、かような解釈をあくまでおとりになるようでありまするならば、われわれとしてはこの次官通達というものをまた元通り白紙に返して、公安條例をそのまま適用するということに行かざるを得なくなるのではないかと考えるのであります。必ずしもこれがいいか悪いかということは別問題としまして、学校当局のまじめな態度を私どもは希望いたしておる次第であります。もとよりわれわれは学園の自由というものはできるだけ尊重し、また当然尊重せねばならぬものと考えておりますので、学校当局の反省を私どもとしましては切に願つてやまない次第でございます。
  34. 押谷富三

    押谷委員 当日学生のとつた警察官に対する態度でありますが、あるいは謝罪文に署名をさせるとか、暴行、脅迫を用いて警察手帳を奪い取つたということは、これは刑法犯罪のいわゆる強盗に該当する事案じやないかと考えます。また駒場においてなされました謝罪文の署名もやはり刑法犯罪で、強要罪にも当るものだと考えますが、これらの学生のとつた処置に対して、警視庁としてはこれを刑法犯罪として処置をせられる考えがあるかどうかをお伺いします。
  35. 田中榮一

    田中参考人 もちろん本郷の東大構内、教室内におきまする警察手帳奪取の事件は、これは暴力行為のもとに、まつたく無抵抗の状態において警察手帳を奪取いたしておりますので、仰せのごとく、これは刑法上から申しますと、形式的には確かにいわゆる強盗事件に該当いたすものと考えておりますし、また目黒の駒場構内におきまする警察官の脅迫された行為は、これまた多数の威力によりまして本人をまつたく無抵抗の状態において書類に署名さしたといういわゆる脅迫罪、暴行罪にも該当いたすものと私は考えております。ただいま本郷本富士警察署におきましては、前者の件につきましては、それぞれ事件を立てるべく進めております。また後者の件につきましては、十分調査いたしまして、処置いたしたいと考えております。
  36. 押谷富三

    押谷委員 最近学生間における思想が共産主義的な傾向が非常に濃厚でありまして、大学内に共産党の細胞がすでにできておるというようなことも相当私どもは耳にいたしております。東大内における日共組織について、あるいは特審局かち伺うのが正しいのかもわかりませんが、警視総監として御承知ならば、東大内における日本共産党組織活動について、御承知のところをお聞かせ願いたいと思います。
  37. 田中榮一

    田中参考人 もちろん私は東大内におけるいわゆるフラクのあることは十分に承知しておりますが、ちようど吉河特審局長がおいでになりますので、むしろ特審局長からお答えを願つた方が、正確なお答えができるかと思います。
  38. 押谷富三

    押谷委員 ただいまの点を、ちようど吉河特審局長がお見えになつておりますから、特審局長からお伺いしたいと思います。
  39. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御指名によりまして簡單にお答えします。団体等規正令による政治団体の届出としまして、学内における日本共産党の細胞も一般には届け出られております。現在その届出に現われたところを簡單に申しますと、東大関係といたしましては、東京大学教養学部細胞なるものが存在しておりましたが、これは昭和二十五年六月九日付をもつて解散届を出しております。次に東大第二工学部細胞というものが現存しております。それから東大細胞はかつて存在しておりましたが、二十五年の五月十日付をもちまして解散届をしております。かような次第で、現在東大関係の細胞としましては、届出をしているものは東大第二工学部細胞のみであります。これに関連しまして、全国の学校内に同様の細胞が結成せられておるのでありますが、現在届け出られておるのは七十四団体、構成員四百七十四名となつております。
  40. 押谷富三

    押谷委員 東大内における日本共産党組織も明らかになりましたが、最近の傾向は、これらの組織が、特に先ほど言われました国家治安の盲点というものがもし大学の学内であるというような事態になりまするならば、それは国家治安の立場からゆゆしい問題だと考えます。ともすれば大学の方では、警察官は何だか目のかたきのように考えるのでありまして、先般当委員会において京都大学事件を調べました際にも、学校当局からは、学生警察を見ると、目のかたきのように神経をとがらして、ただちに騒ぎ出すというような言葉が出ております。また警察方面では、学生だとちよつと遠慮をするような形になつておりまして、そこに文部次官の通達がある、こういうようなことで学生を甘やかす、また学校当局も学生行動に寛大に過ぎる。また一面学校が、自治あるいは学園の自由というようなところから、治安の盲点という形になつて来ることを私は非常に憂慮いたしております。先般の澁谷の警察においてなされました学生の示威運動につきましても、警察側は二十三名の者をただちに帰すという約束をするとか、あるいは学生の要求を相当無理と聞いても聞き入れるという傾向にあることを遺憾に存じております。今日の国家事態からしまして、特に治安の重要性から考えて、警察は毅然たる態度を持つて、かような盲点のないように、堂々たる態度で治安に盡瘁せられんことを望んでやみません。  次に先ほど申しました第三点の富士銀行ギャング事件について、捜査の関係をお伺いいたしたいと存ずるものであります。先般都民を驚愕させました米軍だと考えられます人、こういう者によつてなされました白書の銀行ギャング事件は、その後捜査は一向はかばかしく参つておらぬようであります。白書の銀行ギャングでありますから、人相も服装もすべて明らかになつておるはずであります。また自動車で逃走をいたしておるのでありますから、捜査の足取り等も当然簡單に探られなければならぬ状況に置かれているはずでありますが、これが今日なおはかばかしく捜査されておらない、成果を上げておらないということは、それが米兵であるがゆえに、三国人であるがゆえに捜査に困難を来しておるのであるという事実があれば、今後の日本といたしましても、現在の段階においても、ゆゆしき問題だと考えられるのであります。アメリカ兵であろうと考えられまする二名の者、一人は日本人かあるいは日系米人であろうといわれますこの三名によつてなされたのであるが、国籍が違うから、外国人であるから、逮捕、捜査に非常に不便を来しておるというような関係にあるのではないかと一部憂慮されておるのであります。こういうアメリカ兵の関係についての捜査あるいは逮捕並びにそれについての抽象的な御見解と、富士銀行のギャングに対する捜査の経過をお聞かせ願いたいと思います。
  41. 田中榮一

    田中参考人 去る二月十八日午後三時十五分ごろ、富士銀行千住支店におきまして、軍人の服装をした米人二名と日系米人または日本人風の男一人とが、拳銃を擬しまして行員を脅迫しまして、行金二百八十四万八千円という大金を奪取して、ジープで逃げ、また途中車を高級車に乗りかえて、ただいま遁走中でございます。事件発生と同時に、ただちに警視庁管内はもちろんのこと、関係府県には全部緊急に手配をいたしまして大体人相、風体及び自動車の種類、特徴、そうしたものを手配いたしまして、ただいま全国の国警並びに自警等が警視庁に協力しまして、鋭意捜査中でございます。また御承知のように軍人の服装をした白人でありますので、これが本ものの軍人であるか、またあるいはそうでなくて、單に一応白人が軍服のようなものを着ているのであるか、それがまだ実は十分に確認をされていないのでありまして、かような点からいろいろ捜査の面につきましては苦心を重ねているのであります。現に民事、刑事裁判権の行使に関しましては、昭和二十五年十月十八日付で連合国総司令部から日本政府あてのメモランダムがございます。このメモランダムの線に沿いまして、現在日本の警察官は法律執行に当つておるのであります。これによりますると、原則といたしまして各国連合国軍隊の構成員、それから連合国人にして占領軍に公に付属する者、またはこれに随伴して占領軍用務に服する者、それから公務を帯びて日本に在留する連合国人、以上の者に随伴する直近の家族及び被扶養者、これらにつきましては——いわゆる軍人軍属の類でありますが、この軍人軍属及びその家族、かようなものの逮捕につきましては二つの制限があるのであります。その二つの制限と申しますのは、第一は占領軍警察官が、これはMPのことでありますが、MPもしくはCIDが逮捕の現場に現に居合せない場合、それから第二は身一体に対する危害または財産に対する重大な損害を含む犯行あるいは犯行のおそれのある場合、かかる場合におきましては、いわゆる急迫不正の犯罪と認めまして、いわゆる現行犯という立場におきまして、日本の警察官といえども、これを逮捕することができる。もし逮捕した場合には、占領軍要員はただちにもよりの占領軍当局に身柄を引渡さなくてはならない、かような制限が付されておるのであります。従いまして現在犯行を犯しました者は、多分軍人であろうと思うのでありますが、これもはたして軍人であるかどうかということが確認をされておりませんので、これは現在憲兵当局、占領軍警察当局、すなわちMPあるいはCIDと合同捜査の形をとりまして現在捜査をいたしております。連合軍警察当局は、全国の連合軍警察当局にやはり同じような手配をいたしまして、それぞれ督励されて、日本警察と協力のもとに、目下鋭意捜査中でございます。従いまして両者緊密な連絡のもとに捜査いたしておりますので、捜査の面におきましては支障を来すことはないのでありますが、今申しましたような面におきまして、現にかりにその者がそこにおつたといたしましても、日本の警察官ではただちにつかまえることができない。何となれば、富士銀行において犯行を犯したときには、いわゆる現行犯でございますが、すでに逃走いたしますると、これは現行犯という解釈ができないのでありまして、いわゆる非現行犯、容疑者ということになりますので、これが逮捕につきましてはなかなか困難でありまして、かりにもしそれが正規の軍人でありました場合におきましては、一応そういう人物に似よつたものがおつた場合には、これをMPまたはCIDに連絡をとり、そのMPまたはCIDによつて逮捕してもらう、その場合警察は十分にこれを監視するというようなことになるのであります。いわゆる軍人、軍属でないということが明瞭になりました場合には、もちろんこれは令状によりまして日本警察官が即時逮捕することができるのであります。ただ現在ではそれがシヴイリアンであるか、あるいは軍人であるか、軍属であるかということが明瞭でありませんので、この点につきましては、現在占領軍警察当局におかれましても、鋭意いろいろな方面からその実在する人物につきまして、あるいは写真等によりましていろいろその人物の確認を行つておるような次第でございまして、もし確認をされたならば、さらに捜査が容易になるのではないかということも考えられるのであります。
  42. 押谷富三

    押谷委員 この富士銀行のギヤングの相手方でありますが、これが軍人、軍属であれば、メモランダムによりまして、今言われた通りの経過を経なければならぬとも考えられますが、もしそうでなければ逮捕状によつて逮捕するということになるのではないか、こういうお考えですが、現在の場合、今日ただいまその被疑者とおぼしきものを発見したときには、警視庁はどういうような態度でそれをお取扱いになるのですか。もし今それがここにおつたといたしますならば、どう扱われますか、お伺いいたします。
  43. 田中榮一

    田中参考人 もし現実にその犯行をした犯人とおぼしき者が、現在そこに居合せたという場合におきましては、それが軍人、軍属でありまする場合は、ただちにMPもしくはCIDに連絡をとり、警察としてはその行動を十分に監視いたしまして逃走を防いで、そうして占領軍当局の手によつて逮捕するはかなかろうと考えております。またそうでないシヴイリアンであるということがはつきりいたしました場合におきましては、令状をただちにとりまして、これを日本警察の手によつて逮捕する、かようなことにいたしたいと考えております。
  44. 押谷富三

    押谷委員 これは手続の問題ですから、あまり議論をする必要はないと思うのでありますけれども、こういう場合において、もし軍人、軍属でなければ緊急逮捕というようなものがあるのですから、これからぼつぼつ逮捕状を求めて、逮捕に向うというようななまぬるい考え方をもつては、こういうものはつかまえられないと私は考えます。またそういうことが一つの障害になりまして、こういうような重大犯罪人を捜査をする、つかまえることが遅れるということになるのではないかと思いますが、手続の問題につきましては、それぞれ専門家でありますから御如才ないと思いますが、アメリカの国籍を持つている者であるというような関係から、こういう重大犯人の逮捕が非常に遅れるということは、国際的にも大きな影響があり、国内的にも国民の大きな不安のもとでありますから、格段とこういうところに御配慮いただきまして、せいぜい逮捕を早くしてもらうように御盡力をお願いいたします。
  45. 田中榮一

    田中参考人 一言申し落しましたのでここに付言いたしたいと思います。今仰せのように、現実にその場におつて日本警察官が逮捕できないということはまことに残念でもあり、また犯人を逃走させるおそれが多分にありますので、私といたしましては、ただちに憲兵司令官のもとに参りまして、できれば包括的に今回の事件の犯人容疑者逮捕につきましては、特別に日本警察に捜査並びに逮捕権を與えてもらいたい。できれば貴官の命令によつて、われわれはこれを落したいと思うからということを実は申し述べて参つたのでありますが、占領軍当局といたしましては、十分研究はするけれども、まずメモランダムの線に沿うて一応日本警察官は努力してほしい。われわれは十分その点は了として研究しておこう、こういう答えでありましたので、私はそれによつて実は帰つて来たのでありますが、私といたしましては、できればその容疑者については、たとい軍人、軍属であろうが何であろうが、今回の点につきましては、ぜひ日本の警察の手によつて逮捕したいから、逮捕の権限をぜひ付與してもらいたいということを実は言つたのでありますが、まだお聞届けがないのでありまして、現在の法規の範囲内において十分にひとつ運営をうまくいたしまして、一日も早く解決するように努力いたしたいと考えております。
  46. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどの押谷委員質問に関連して総監にお聞きしたいのです。東大学生の問題ですが、講堂内へ警官が入つたということに非常に神経をとがらしておるところを見ますと、警察官に見られては困ることを何が企てておつたんじやないかと推測されるのですが、いかなることをやろうとしておつたものですか、おわかりの程度でいいからお聞きしたい。
  47. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。私はその劇の内容等は十分わからないのでありますが、東大ポポロ劇団において松川事件を取上げて実演しておつた、こういうことであります。松川事件と申しますのは、御承知のように、福島県におきましてある一部の者が共同謀議いたしまして機関車を転覆し、同僚を殺しておるという事件でありまして、これらはまつた思想的背景のある犯罪である。その思想的背景のある犯罪を劇に仕組んでやつておるということは、一般の治安の上からいいましてもおもしろくない事件ではないか。そこでおそらく当日入場しました警察官はそういうことも大体予期いたしまして、幸い入場料を拂えば入れるのでありますから、入場料を拂つて一般の観衆として入つた。別に何ら制止もしません。ただ一応見ておつたのでありまして、私どもとしましては今回のことはまことに今仰せのように、何か警察官に見せてはならぬことを見られたためにああいう暴行をやつたんじやないか、かように私は考えております。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 次に承りたいのは、学生部長だとおつしやつたが、手帳を責任を持つて返す、こう言いながら返されなかつた。名前を一応はつきり承りたいし、これはどうも学生部長としてその職責におれない重大なことだと思うが、今日どのようなことを言つておりますか、どういう態度をとつておりますか、これを承りたい。
  49. 田中榮一

    田中参考人 ただいまお尋ね学生部長と申しましたのは私の誤りでありまして、斯波という厚生部長であります。この斯波という厚生部長さんが警察手帳の件もあり、責任を持つから署名するようにというお話で、警察官としては斯波厚生部長をまつたく信頼しまして、ただ警察手帳の返還を希望するあまり実はその書類に署名捺印をいたしまして、そうしてさてそれではお約束の警察手帳をぜひ返してほしい、こう言つたところが学生は言を左右にして返さなかつた、こういうことであります。そうしてその後斯波厚生部長も自分として中に入つた関係もありますので、警察手帳の返還には相当努力しておるものと私は信じておりますが、しかし今のところ現実に返つて来ないことはまことに遺憾にたえないと考えております。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大学の部長ということになれば教育上の重大なる責任を持つておる人だろうと思う。その部長たるものが学生が暴力をもつて警察官の重要なる警察手帳を取上げたというような、まことにゆゆしき問題があるにもかかわらず、いかなる手段とはいいながら学生の要求されるわび状に判を押さなければ返してもらえぬということは、まことにあわれむべきことだと私は思う。これに対してここであなたと議論したつてしようがない。あなた方としてもかようなことが繰返されるということになればたいへんだから、相当のお考えをもつておられてしかるべきであろうと思うのであります。これが一つ。  その次に釈放のために抗議を申し込んで来たときに、大学教授が入つていたと先ほどのお言葉にありましたが、それは何という教授で、法学部と言われたようだつたが、何部であつて、しこうしてどういう抗議をして行つたのか、その抗議の内容をつまびらかに聞かしてもらいたい。
  51. 田中榮一

    田中参考人 第一の件でありますが、これは私ども警察官の教養の点からまことに遺憾な次第でありまして、警察官としましては不法奪取された警察手帳でありますから、その警察手帳を、何ら署名する必要もなく、まつこうからこれが返還をあくまで要求すべきが至当であつた考えております。私はあえて警察官をかばう意味ではないのでありますが、警察官といたしましては、御承知のように、警察手帳を紛失した者に対しては非常に厳重なる罰則を科し、また厳重に処分いたしております。ことに警察官の手帳にはいろいろ重要なことも記載されおりますし、こうしたものが他人の手に渡るということはいろいろの点からおもしろくない。かような考えから警察手帳の紛失、亡失、毀損につきましては相当厳重な処分をいたしております。当時三人の警察官としては、是が非でも警察手帳を返してほしい、ことに先ほど説明いたしましたように、多数の者から暴力行為を加えられ、ある程度脅迫をされたという状態において、不法に侵入したことは申訳なかつたというその書類に判を押したのじやないかと私はかように考えておる次第であります。この点につきましては、今後私どもとしましても、警察官個々の教養について、こうした点を十分に注意させたいと実は本日警察署長会議を開催いたしまして、こうした警察官個々の心構えを十分に反省するようにということを私からも指示して参つたところであります。  それからその後——昨日でありましたか、午前中に尾高教授——尾高教授は何部に属するか、私は存じ上げておらないのでありますが、尾高教授と今一人私に面会に参つたのであります。私はあいにくちようど会議をしておりましたので、教授にはお目にかかれなかつたのでありますが、教授の言い分は、早く検挙された学生を帰してほしい、そうしたならば警察手帳を返すように努力しよう、こういうことであつたそうでありますから、警視庁としてはそれは通じやないか、まず警察手帳を持つて来た上でひとつ何分寛大な措置を願いたいというならば話がわかるけれども、さきに検挙した者を返せ、そうしたならば警察手帳を返すということではこれはまつたく逆であるから、警視庁側としては教授の言い分に対してこれをお断りした次第であります。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはあなたに面会を求めての話だが、私の言うのは本富士警察に来て釈放を要求した、そのときにどういうことを言つて——先ほどのでは抗議に来たというお話であつたが、どういう抗議をしたか、これは重大だと思うから、その抗議の内容を聞きたいのです。
  53. 田中榮一

    田中参考人 これは概要でありますが、尾高さんはかようなことを言つておられます。「今日のような警察の措置は私はまだかつて聞いたことがない。」それに対して署長は「あなたがそのように言われるならば私も言いますが、私も警察官が学内で暴行を受けたということはいまだかつて聞いたことがない。」それから尾高教授が「私は一応学生が署へ行くというからついて来たが、学校としては追つて正式にお話したい。」学生代表の安島という学生が「逮捕の理由をお聞かせください。」署長は「暴力行為等処罰に関する法律第一條第一項による容疑者として逮捕いたしました。」安島「もう一人逮捕状が出ているというが、だれですか。」署長「それは言えない。」安島「勾留されている者を釈放してもらいたい。」署長「それはできない。」——大体こんなようなことで、この尾高教授は学生について来ただけでありまして、別に大したことは言つていないと思うのであります。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私が特に聞かんとするのは、先ほど押谷委員から言われた通り、近ごろの大学教授などには、学園の自由ということをはき違えて、かような場合でも、学校みずからが処置する、警察が処置すべきものでないという思想があるようですから、こういう思想から来たものではないかと思つて聞いたのであります。  それからその次に、先ほど押谷委員が言われたが、矢内原総長から——これは新聞に出ているようなことだと重大でありますが、あなた方に対して直接何か言われたことはありませんか。警察に対して何か談話なり交渉なり、もしくは一般に対して言われたことに対しての新聞記事ではなくて、あなた方が入手しておりまする内容がわかればここで明白にしてもらいたい。
  55. 田中榮一

    田中参考人 私は直接まだ矢内原総長とも会つておりませんし、また警察当局が直接矢内原総長から承つていることはありません。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはその程度にしまして、この「球根栽培法」について承りたいのですが、先ほどあなたのお言葉を聞いておりますると、共産党が発行しておる「球根栽培法」と言われておりますが、これは間違いありませんか。
  57. 田中榮一

    田中参考人 その「球根栽培法」は共産党員の持つてつたものを警視庁が押収令状によつて取上げたものであります。従つてそれは一部でなくして、多数配付の目的を持つてつたものでありますから、これは私は共産党から出た文書であると認定してさしつかえないのではないかと思います。
  58. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはまことに重大なものでありまするが、どこで発行をしたかということは、印刷所その他を調べてみればわかるはずでありまするが、わからないですか。もしわからぬとすれば、これは吉河特審局長でもよろしい。こんなことくらいわからぬければたいへんだろうと思いますが、わかつておれば聞かせてもらいたい。わからぬとすれば、それは極力ひとつ、それこそ草の根わけても明らかにしてもらわなければならぬと思います。
  59. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 「球根栽培法」と申すものは、御承知の通り偽装の表題でありまして、何も球根の栽培がその中に書かれているわけではございません。ものによりましては、その裏面に「内外評論」という本来の名前が出ております。この「内外評論」は、私どもといたしましては、昨年十一月下旬、「アカハタ」の同類紙として一回発刊停止の処分をして来たものでありますが、その後も引続き「球根栽培法」として出ております。現在その印刷、編集、発行、配布網等につきましては鋭意調査中でございます。
  60. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 「アカハタ」の同類紙ということになれば、「アカハタ」はりつぱに共産党の発行物でありますから、共産党の発行したるものと解釈してさしつかえないと思いますが、その点はいかがですか。
  61. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 現在指令の解釈といたしましては、同類紙、後継紙は特定団体の機関紙であることを必要としないという解釈になつておりまして、「球根栽培法」が日本共産党から発行されているという点につきましては、まだ私ども確認いたしておりません。
  62. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはまことに重大なことでありまするから、單なる推測ではいかぬと思います。鋭意御研究願いたいと思います。  それから先ほども見せられた暴徒の使つた武器ですが、これは相当の数であつたと思いますが、これはどこでつくつて、どういうことでやつてつたかという根拠がおわかりになりそうなものですが、まだおわかりになりませんか。
  63. 田中榮一

    田中参考人 今見せましたもののつくつた場所とか使用方法とかいう点でございますが、今のところ、関係者のおも立つた者を検挙いたしまして、目下取調中でありまして、この取調べが進展をいたしましたならば、ああしたものがどこでつくられ、どういうように使われたか。また実際取締りに従事いたしました警察官で、それによつてけがをした者もありますから、これらのことを調査いたしましたならば、逐次明瞭になるだろうと考えております。
  64. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この「球根栽培法」に中核自衛隊の使用する武器としていろいろなものが書いてありますが、容易に入手できるという前提でそういう武器を使つて実際行動をやれということになるわけです。その武器について、北海道では鉱山用のダイナマイトが失われた事件で大きなものがあつたと聞いておりますが、あなた方の管内でかような危険なものが失われたという事実はございませんでしようか。
  65. 田中榮一

    田中参考人 警視庁の管内といたしましては、ダイナマイトその他いわゆる爆発物が盗難あるいは失われたということは実はないのでありまして、たとえば警視庁としましては、ダイナマイトによつて人を傷つけたというようなことを知りましたので、どこから入手したかということを筋をたどつて調査したことがあります。この調べによりますると、ある県のある石山をハッパをかける際に使つたものが他へ流れて来たということを聞いております。いま一つは、昨年熱海のある旅館で若い男女がダイナマイトで心中をした事件がございましたが、これも警視庁といたしましては、このダイナマイトの出所がどこであつたということに非常に関心を持ちまして、熱海まで出張しましていろいろ調べたのでありますが、これもやはり多少第三者を経てはおるようでありますが、鉱山関係の労務者から流れておるということも大体わかつた次第であります。
  66. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ひとりダイナマイトだけではありませんが、火薬、劇薬物がなくなるというような事件はございませんか。
  67. 田中榮一

    田中参考人 その他の事件につきましては、今私は聞いておりません。ただ警察官拳銃が最近とられたということはございまするが、そのほか危険物等がとられたということは、私はまだ聞いておらないのであります。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたの管内になければ仕合せですが、北海道なんかではずいぶんある。そしてこれがために人心に不安を與えることまことに至大なものがございます。ことに今「球根栽培法」などを見ますと、これはりつぱな暴力行為の挑発であります。かようなことが企てられ、しかもこれが実行に移されておるということになれば、今後どういうことになるかというのは、われわれだけではありません、この内容を知つた者はことごとく不安を感ずるのは当然であります。これらに対して不安をなからしむるのがあなた方の大責任であると思う。私が具体的に申さぬでも、万全の策をとつてもらわなければならぬことは当然でありますが、それと同時に、かような重大なることを指令している根本がわからぬということになつては、これは国家のためにまことに情ないことである。おそらくまだわからぬとおつしやつても、鋭意捜査中であると思いまするが、いかなる犠牲を拂つても、この出所、発行所を明白にしてもらわなくちやならぬ。また特審局その他においても重大なる責任のあることと思いますから、鋭意明白にせられてわれわれに報告し、国民の前に明らかにせられることの一日もすみやかなることを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  69. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田万君。
  70. 田万廣文

    ○田万委員 ギャング事件に関連してちよつとお尋ねします。捜査の方法については、いろいろ御協議なさつていると思いますが、海外に逃亡というような点はお考えになつておられぬのですか、どうですか。新聞なんかの発表によれが、相当金を持つているから温泉なんか遊びまわつているのではないかというような、非常にのんびりしたことを言つておるが、相当な金をとつてすぐ温泉に行くようなばかな者はない。反対の方向に飛ぶのじやないかという考えすらわれわれはするのですが、海外に逃亡というような点については、どういう予想をされておりますか。
  71. 田中榮一

    田中参考人 そういうことも一応考えられると思うのであります。この点につきましては、C・I・Dにおきましても相当こまかい捜査をしておりまして、あらゆる面に手配をしておられるようであります。もちろん海外に渡航する場合におきましては相当厳重な手続が必要でありますから、そういう際にチェックできるのじやないか、こういうふうに考えております。
  72. 田万廣文

    ○田万委員 先ほど警視総監のお話で愉快に思つたことが一つあるのです。それは今回のギャング事件につきまして、メモランダムはあるけれども、相手方が何人であろうが逮捕権を獲得したいという意思を持つて相手方と交渉されたというお話ですが、これは事実ですね。
  73. 田中榮一

    田中参考人 そうでございます。
  74. 田万廣文

    ○田万委員 私ども国会に席を持つ者のみならず、国民的な感情において、近く行政協定もでき上るというような情勢にあり、まだ平和條約が発効しておらない占領されている日本の国ではあるけれども、近く独立国になる能力を備えておる日本との交渉において、いつまでも古いメモランダム・ケースというようなものにとらわれておることが、アメリカの立場において、国際関係において非常にプラスになるかマイナスになるかということを考えるときに、プラスよりもむしろマイナスの面があるのじやないかと思う。アメリカにも相当な有識者がおられることと思いますし、今度のギャング事件は一ギャング事件というだけでなしに、大きな国際的な関係において考えるべき必要があろうと思います。この事件だけでも絶対に逮捕権を獲得するということを私は非常に念願しておるのであるが、幸い先ほどあなたからそういう話を伺つて愉快に感じたのであります。相手方と交渉した際にどういう理由でメモランダム・ケースを継続して行かなければならないというお話があつたか、それをはつきり承りたいと思います。
  75. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。これは最高司令官の日本政府に対するメモランダムでありますので、單に出先官憲である憲兵司令官として、ただちにこれ以外に出て解釈はできないわけであります。従つて憲兵司令官としては十分に考慮して研究してみよう、こういう御回答でありました。ただこれは……。ちよつと速記をとめてください。
  76. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  77. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。猪俣浩三君。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 東大学生の十八日の澁谷駅頭における問題、二十日の東六二十五番教室における問題につきましてちよつとお尋ねいたしたいと思います。今るる御説明を聞いておりますと、東大学生にも行き違いがあつたやに思われます。しかし事ここに至ります点につきまして、警察取締りにも事を誘発する原因があつたと思われるからお尋ねするのであります。澁谷の駅頭におきまする東大学生の問題でありますが、それは東大学生が澁谷の駅頭で再軍備反対、徴兵反対の街頭演説をしたいということを再三再四澁谷警察署に申し出ているにかかわらずこれを許さない。それだけならばよいけれども、そういうふうに東大学生の平和問題に対する運動に対しては許さないでおきながら、同じその構内におきまして清水何がしと称する、フアツシヨ団体の男だと思いますが、これが百万人再軍備促進せよという、大々的演説を毎日やつておる。この演説に刺激されまして東大生が憤概して、自分たちは平和を守る、徴兵反対の演説をやらなければならぬ、ああいうふうな演説をやらかされておつたのでは民衆は迷うから、街頭演説あるいは署名運動を許してもらいたいということを申し込んだにかかわらず、一方は堂々とやらしておいて一方はやらせない、それはどういうわけでありますか、それをお聞かせ願いたい。
  79. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの御質問でありまするが、私も今の許可、不許可の点につきましては、具体的にまだ報告を受けておりませんが、東大生の街頭演説につきましては、街頭演説そのものならばそれでいいのでありまするが、その内容にいろいろ人心を撹乱し、社会不安を醸成する内容を多分に持つておりまして——これは澁谷の警察官が、無届けの演説をやつております際にその内容を聞いておりますと、きわめて不穏当な、現在の社会人心を刺激し、社会不安を醸成するような内容が絶えずあるのでありまして、かような趣旨から、再軍備反対あるいは徴兵反対ということだけでなくして、それ以外の点を考慮いたしまして不許可にしたものであろうと思うのであります。それからその清水某の百万人軍備促進せよということでありますが、もちろんこれらのものにいたしましても、内容において非常に社会人心を刺激し、秩序を破壊するような点がありまするならば、当然これは不許可になるものと考えている次第であります。
  80. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたはそういう説明をするけれども、そこに原因があるのです。一方の純真な学生が、兵隊にとられることに反対することは当然だと思う。そういう演説をしたいという慾望を起した原因は、清水亘の極端な再軍備論なんだ。そこでここに特審局長がおられるから、清水亘という人物がどういう人物であるか、おわかりであろうと思うから御説明願いたい。極端な再軍備論をやつておる。一体憲法はわれわれに何を要求しております。国家の根本法である憲法に違反する言動をなす者こそが、ほんとうに秩序を乱すものであると私は考える。そうするとこの現在のデリケートな国際情勢におきまして、ことにアジア諸国の現在の状況をにらみ合せまして、日本の憲法九條に違反するような言動を大衆の中で街頭演説としてやるということは、これこそ不都合千万なことなのだ。そういうことは堂々とやらしておいて、それに刺激せられましたる学生が、平和愛好、徴兵反対ということになると、その内容が不穏当だ、こういうことではこれは公平な取締りを欠くじやありませんか。憲法に違反する言動はやつてもさしつかえないのですか。ぼくはその方が重大問題だと思う。憲法を守れという話と、憲法に違反するようなことを勧める話と、どちらが現在の秩序を守るゆえんでありますか。警察官は憲法九條の精神を敷衍せんとする者の方が秩序を乱し、憲法九條に反するような言動をする者が正しいことだ、こういうふうにお考えになつて、かような差別待遇をなさつたのであるかどうか、それを承りたい。
  81. 田中榮一

    田中参考人 猪俣委員の御趣旨はよくわかるのでありますが、先ほど御説明いたしましたごとくに、学生の街頭演説そのものにつきましては、私どもは何らさしつかえないと思うのでありますが、ただその内容の点において、きわめて不穏当な点がありますので、この点において不許可にしたいことは先ほど御説明した通りであります。以上の答弁をもつて御了承願いたいと思います。
  82. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、平和問題及び徴兵反対問題というのであるが、その内容が不穏当だということは、一体いかなる内容でありますか。どういうところが不穏当で、一方を許可したにかかわらず一方を許可しないのであるか。私はおそらく彼らがまいたと思われる、全国の皆さんに訴えるという、東京大学教養学部徴兵拒否全学平和大会という文書を手に入れておりますが、不穏なことでも何でもない。平和を守りたい、再軍備に反対だ、自分たちは銃をとりたくないということは当然過ぎることじやありませんか。これはどういう内容を彼らが言うたというのでありますか。また許可なさらぬならば言う内容がわからぬはずであるが、その前に何か公認せられざる演説か何かで非常に不穏当な箇所があつたから、またああいうことを言うのだろうと思つて許可しなかつたという趣旨に解せられますが、一体どんな内容を言つたということがあなたの方に報告せられておりますか。それをお聞かせ願いたい。言論の自由の問題と関連して私はこれは重大な問題だと思う。
  83. 田中榮一

    田中参考人 東大学生の街頭演説は実は前からありまして、地元警察といたしましても——私は今内容云々と申し上げましたけれども、あの街頭演説の様子を見ておりますと、いたずらに多数の者が集まりまして、街頭演説をするというよりは、むしろそこにおいて不法な示威運動を起し、それが一般の多数の人心を非常に刺激をし、また御承知のようにあそこは雑沓しておるところでありますので、非常に交通にも支障を来す、かような趣旨でも不許可にしたのであろうと私は考えるわけであります。私は今その不許可の具体的な理由その他につきましては、実はまだ十分報告を受けておりませんので、はつきりお答えすることはできませんが、私の想像するところでは今お答えしたようなことで不許可にしたものではないかと考える次第であります。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは想像でものを言つておられるようでありますが、想像ではしかたがないのでありますから、いずれ澁谷警察署を詳細に御調査願いたい。そうして、清水亘なる人物が演説をやつてつて、それに憤激いたしました学生が立ち上つたのであるから、この清水亘なる人物がいかなる内容の演説をやつておるか、それを調べてもらいたい。原因が奈辺にあるかということを為政者としては考えなければならぬ。ただ学生が集まつて騒ぐから全部これを弾圧する。それでは物事は治まりません。治安が安定いたしません。みずから原因をまいて、そしてただ弾圧だけ考えるということがフアツシヨ政治の本体である。だからどういう内容を清水亘なる人物が言うておつたか。そしてそれを聞いた平和論者がそれに憤激することが当然であるかどうか。何がゆえに清水亘のこういう演説を許して、それに憤激いたしました学生の演説を許さないか。今日の答弁では明確を欠いておりますから、もつと具体的な事実につきまして御答弁を願いたい。  それからいま一つ。あなたは先ほど自由党諸君の質問に対しましては詳細に報告をなさつたが、どうも報告漏れの点があるのじやないかと思う。澁谷警察署に二十三人ですか、検挙いたした際でありますが、学生に非常に重傷を負わしておる。西川という学生の後頭部をこん棒でなぐつて深さ五センチの骨膜に達するところの傷を負わした。これは後頭部であるからおそらく逃げるやつをなぐつたのだろうと思う。かような報告をなぜなさらぬのか。この学生は教養学部の二十前後のまだほんとうに紅顔の美少年なんだ。こういう学生の後頭部をなぐりつけてかような傷を負わしたということは一つも報告なさらない。これは知つてつたのか知らぬのであるか。知つてつて報告なさらなかつたのか。かような事実があるならばその加害者は何人であるか、それを捜査なさつたか、人権擁護の意味におきましてこれをお尋ねいたします。
  85. 田中榮一

    田中参考人 警察の方からはそういうことにつきまして全然報告もありませんし、また現場には多数の新聞社の方々もおられたはずでありまするので、もしそういうことがあれば、これは当然報道されるのではないかと考えられまするが、私はそういうことはいまだ全然報告を受けておりません。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私も自分で実際に現場を現認したのではありませんが、教養学部の学生が昨日二人私のところに参りまして、涙ながらにこの話をいたしました。私はそれを真実なりと認定いたしたのであります。しかしこれは報告なされていないからよく事情はわかりませんが、診断書も出ておるそうであります。きよう実は持つて来るという約束のものが、私が控室におらぬためにまごついているのかと思います。私の質問がイの一番になるのだと思つてずつと待つておりましたが、なかなか番が来なくてしまいになつてしまつたのですが、これはいずれ私の方で証拠として出しますが、あなたの方でも御調査願いたい。  それから東大の二十五番教室の問題でありますが、実は私の次男坊も東大行つておるのであります。このポポロ劇団とかいう妙な名前の劇団でありますが、あれが何か劇をやるのだが、職員と学生だけしか入られない建前になつておる。もちろん私のむすこはそれに入らぬでいたらしいのであるが、これは学校の職員と学生だけに見せるのだということだつたそうであります。ただ学生でもやはり三十円拂わせるというのであります。そこで、警察官は制服を着て入つたのではない。平服を着て入つておる。この人間を発覚できた。そこに一つの原因がある。この三人はしよつ中東大の中をうろうろやつておる。毎日のように行つている人物であります。顔をみんな知られてしまつた。そこで私はあなたにお聞きしたい。それは、治安維持もいいが、こういうふうに二人なり三人なりの人が普通の服を着て、こういう学園の中をしよつちゆう歩いておるようなことを一体あなたが指令しているのか。警察がさような方針をとつておるのか。毎日そうであります。それだから学生にすぐ顏がわかる。それがちやんと中に入り込んでいるから激昂するのです。治安確保のためには中まで入り込まぬだつてよろしいでしよう。これは太平洋戰争以前における特高警察そつくりなものができ上つてそうして彼らの集団がこそこそ話をしていれば、そこに行つて聞き耳を立てる。国会の中にも入つておるというのでありまするから、これは容易ならぬ問題だと思うのですが、これはまたあとまわしといたしましてこういうスパイ政策と申しますか、昔の特高と同じことを今やり出して来ておる。これに対する反感であります。治安に名をかりて昔の特高のようなことを今やり出しておる。ただ、一般の人間も入れるのであり、たまたまその警察官がそこへ立ち会つたのなら学生が顔を知つている道理がありません。常々不断に行つているので、またあいつらが来ておるというふうに顔を覚えられた人物である。それがその教室の中でも、学生の催しの中まで入り込んでいる。自由党の諸君は大いにあたりまえのようなことを言いまするけれども、私は実に不愉快です。もちろん学園といえども治外法権ではありますまい。しかし、学生を犯罪人のように考えて、どういう思想を持つているかというようなことで、猟犬が鼻をならすようなかつこうでかぎまわつて歩いておる。これが特高精神です。これは終戰後なくしたはずなんです。これがまた復活している。あらゆるものが復活いたしましたが、一番先に活溌に復活したのはこの特高警察です。これに対する学生の反撃であります。その学生の心持を考えてみなければならぬと私は思う、そうして、いたずらに起さぬでいい事件を起したりして、お互いが犠牲を拂わせられる。そこであなたにお聞きするが一体東大の中にこういうきまつた人間がほとんど毎日のように入つておるのですか、おらぬのですか。
  87. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。これはもう猪俣委員よく御承知のことでありますので、私から今さら申し上げるのは蛇足と思いまするが、話の順序として申し上げたいと思うのでありますが、公案條例には、公共の場所における集会は許可を受けねばならぬということになつております。そこで先ほど私が押谷委員の御質問に対してお答えいたしましたごとくに、学校の校内で行われる集会、集団行進または集団示威運動に一般公衆が自由に参加し得る状態のものは、公共の場所における集会、集団行進、集団示威運動として名称、性格のいかんを問わず許可の申請を必要とする、こういうことになつております。従つてその学校の校内、たといそれが二十五番教室のものであろうが、一般の者が自由に出入し得るということになりますると、これは公共の場所における集会ということになります。これは当然許可を受けねばならぬ集会に性格がなつて来るわけであります。そこで学校々内におきましては再三再四外部の者の集まるいろいろな関係の会合がございます。そこで公安條例の許可権を持つておる公安委員会としましては、この会合を十分視察して、公安條例の規定が的確に適用されているかどうかということを見る権限は当然なければならぬ。それでなければ不許可の集合はいかなるときでも行われるのであります。そこで従来もいろいろな集会にはたして外部の者が入つておるかおらぬかということを知るために、ときどきのぞくところもあるのであります。しかしながら場合によつてはそのときに傍聴を許されたり、あるいは警察官が傍聽しておつて、君ちよつと都合が悪いから出てくれたまえという場合には、警察官はいつも気持よく承知しましたと言つて出ておるのであります。従来東大におきましていろいろな会合がありまして、警備上必要な措置をとるために警察官が中に入る。その際に、君ちよつと話の都合上ぐあいが悪いから出てくれたまえというときには、警備警察官は承知しましたと言つて気持よく出ておる。今まで何回もそういうことがあるのであります。いまだかつてそうしたトラブルが起つたことはないのであります。これは学生もよく了解しておるし、警察官もよく立場を考えて、両者了解のもとに実はやつて来たのであります。当日は警察官も三十円拂つてつておるのでありますから、これは客であります。三十円拂つた以上は、その反対給付の劇を見るという権利は持つておるのだと思います。そこで警察官は三十円拂つてつたというところから劇を見せてくれ、こういつたことからいろいろいきさつがあつたのではないかと考えております。しかしあの際にも、よく両者が話し合つて、実はこういうことだからということでやれば、警察官にしたところで決してそれまでがんばるということはなかつただろうと思うのであります。ただ多少両者の言葉の行き違いか何か、そういうことからこういうことになつたと考えておりまするが、さようなことで従来は何らトラブルなく過しておるのであります。その点だけひとつ御了承願いたいと思います。
  88. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで従来トラブルのないものがどうしてかようなトラブルが起きたかという原因について、私はあなたにお尋ねしたのです。それは、これが職員と学生だけの集会であつたのかどうかということが問題です。私が聞いたところによれば、一般外部の人を入れない集会であつた。そこで三十円拂つてつたと申しても、なぜそのときに、私は本富士署の警察官だが入れてくれと言つて入らなかつたか。つまりスパイ者のような感情が純真な学生に非常にいやがられるのです。徹底的にいやがるのです。スパイじやないかという感じであります。だからもし一般に入れる集会であつたといたしましても、元来が警察官であり治安維持のためで来ているものなら、目的を明らかにしなければいかぬ。それをこつそり平服を着て入り、そうしてスパイのような印象を学生に與えるということが、これがいけないのです。それから第二に、すぐ顔を見ればおまわりであることがわかるように、そういう連中がしよつちゆう大学の付近を、何か物をかぐようなかつこうでまわつて歩いていやしないか、これが反感を持たれた一つ、これらが両々相まつてお互いに非常識のようなことになつた。そこであなたに伺う。それは、集会届が出て、許可するかしないかの決定が公安委員会にあるとするならば、あるいはそういうことに対して調査することの必要はありましようけれども、何というか、まるで秘密探偵のようなかつこうで、そうして物をかぎわけるようなかつこうで、大学の中にうろついておることがよくないのだ。調べるなら堂々と調べたらよろしい。そういう昔の特高警察のような働きをやれば、人心がみんな萎縮してしまいます。東條内閣時代のような造言飛語罪でみんなひつぱる、話ができない、どこに何者が聞き耳を立てているかわからぬというようなことになれば、あなた方が最も排斥するロシヤの秘密警察みたいなことになつて来る。それをまた日本が始めるような印象を学生は與えられている。だからそういうようなことに対しては注意しなければならぬと思うのです。だからそういうふうな本富士署の、制服ではない、普通の服を着た人が、しよつちゆう大学の構内を、一体パトロールをやつておるものかどうか、それがあなたの命令であるかどうか、それをお尋ねしているのです。
  89. 田中榮一

    田中参考人 最初の御質問私答弁漏れをいたしましたので、申し上げますが、当時の何はあるいは職員と学生に限られておつたかもしれませんが、しかし実際は職員と学生だけでなくして、一般の婦人、子供も全部来た者はどしどし入れておつたそうであります。それで警備係の巡査も、当然これは一般公衆の一人として入場できるものというような考えから、三十円を拂つてつたのであります。  それから学校構内における今の警察官警備でありまするが、これは必要によつて警備巡査を派遣いたしておるのであります。また私服も派遣しております。それから一般構内の警邏勤務につきましては、先ほども私から説明いたしましたごとくに、学校構内というのは一般の通路と同様なことになつておりまして、一般の公衆も立ち寄る、車馬も自由に通行し得る状態になつております。従つて過去におきましてそこで殺人犯罪も行われ、一般の刑法犯がしばしば行われておるのであります。かような見地から、当然これは、いろいろ防犯上、警邏警察官を派遣することが必要である、かような純防犯上の立場から、現在私服、制服警察官警邏線を設定して派遣いたして、警邏をさしておるような次第であります。
  90. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実はその問題について、あなたにもつとお聞きしたいことはたくさんあるのですが、きようは少しのどを痛めているので、これで打切りたいと思います。  とにかく現在のこの日本の危機に際しまして、警察と大学の学生正面衝突しておるような空気は実にいやだと思う。あなた方、そういう弾圧することに興味を持つ人たちにあまりおだて上げられて、昔の特高警察をつくり上げないように、これは警視総監にも、そこにおいでになつておりまする吉河さんにもお願いいたしておきます。そういう事情では治安は守れません。なお吉河さんに、さつき私が申しました清水亘という人物は、どういう人物でありますか、あなた調査が進んでおりますかどうか、お聞きしたい。
  91. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 詳しい学歴や思想その他の内容については、現在資料も持ち合せておりません。特に清水さん個人の思想傾向を調べたことはございません。ただ御質問の通り、最近団体等規正令二條に禁止されているような侵略的な対外行動を鼓吹するとか、あるいは暴力主義的な傾向を助長するとかいうような客観的な言動につきましては、そういうような違反の疑いがある場合におきましては、その内容を調査してしかるべく処分を講ずるようにいたしております。清水亘氏の名前は私個人として聞いたことがございますが、ただいま申し上げたような状況でございます。なお澁谷街頭における演説の内容につきましても、もしさような疑いがあるとすれば、私どもとしても十分調査するつもりであります。
  92. 田中堯平

    田中(堯)委員 先ほどから自由党の押谷君なり鍛冶君からの質疑、それから田中総監特審局長吉河氏の答弁をずつと聞いておりますと、何のことはない、要するに今いろいろと騒擾事件があちこちにある。これは共産党思想的背景をなし、おそらくこれが指導しておるであろうというようなことで、まるでやおちよ質問、やおちよう答弁である。そこで私はたいへんけしからぬという角度からお尋ねをします。第一に特審局長、あなたは今清水なる人物のことはよく調べておらぬと答えられた。昨年秋以来あそこの澁谷の駅の前では、ほとんど毎日のように侵略主義的な再軍備とか徴兵というようなことを鼓吹するような演説が持たれておる。それを澁谷警察もまた警視庁もその他の治安機関も、まつたく見て見ぬふりをしている。私どもから見れば、裏からこれは指導はどうか知らぬが、大いにやれという激励ぐらいしているんじやないかと思う。それくらいに片一方はやらしておる。ところが今猪俣委員も指摘したように、実際にはこういうふうなめちやくちやな煽動が行われる。これに刺激をされて教養学部の学生諸君が立ち上つたのであります。あなたの方では清水某は知らぬということであるが、あの団体だけでございません、その他のいろいろな団体があそこで反動演説をやつておるが、お調べになつておりますか、どうですか。
  93. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御質問にお答えいたします。軍備と申しますか、再軍備と申しますか、その必要、不必要を公正に論議することにつきましては、別に団体等規正令におきましては禁止しておりません。団体等規正令におきましては、二條で侵略的な対外軍事行動を主張するよう言動を取締つておるので、ございまして、さような疑いのある場合におきましては、私どもとしてもこれを調査して処分するという建前でございます。
  94. 田中堯平

    田中(堯)委員 あなたの方では団体等規正令に当つておる疑いがないから、それで調べなかつたという答弁でございますか、あるかないかそれも調ベなかつたということですか。
  95. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 私といたしましては、ただいま清水亘氏の具体的な個人の経歴その他についてはお答えする資料を持つていません。次に私がそういう違反について疑いがあるということ、並びにそういう事態について調査しているということにつきましては、まだ部下からも報告も聞いておりませんです。
  96. 田中堯平

    田中(堯)委員 それでは次にひとつ警視総監お尋ねしますが、二十日の東六二十五号教室で行われた芝居の件です。このとき四名の本富士の警備員が私服で行つたということでしたが、これ自身はどうなんですか。あらかじめ本富士警察署なりあるいは警視庁なりの指令が出たというような関係があるのでありますか、ただ随意に四人が入つて行つたのでありますか。
  97. 田中榮一

    田中参考人 さような個々の警察官行動につきましては、もとより警視庁からは指令を出しておりません。これはその警察官が必要によつて行つたのであろうというふうに承知いたしております。
  98. 田中堯平

    田中(堯)委員 そこで私は治安の根本的な問題についてお尋ねしたいと思う。今お聞きしたように澁谷の駅で昨年秋から繰返し、繰返し反動的な、挑発的な、軍国主義的な演説が行われておる事実、これはだれも知つております。場合によつて自動車を持つて来て、トラックの上からも演説をやつておる。こういう大仕掛なものに対して何も知らぬ顔をしておる。これは治安には何の関係もない、治安上困つた問題ではないという見解であるらしい。従つてこれは調べない。それから今度は東大の方の問題、たかが芝居をやつております。しかもポポロ劇団なるものはちやんと会則もつくつて学生及び職員以外には入らせぬことになつておる。当日は特別のことで家族が若干入つておるというわけだ。そこへ家族のようなふりをして、私服をつけて行つた。こういうものを弾圧しなければ治安に害があるから様子を聞いて来いということになる。この二つのことから何が出て来るかというと、あなた方が治安考えておられるのは一体何か、何が治安か。あつちこつちで陳情団が何か少し乱暴な言葉を吐いたとか、手を振り、足を振りやつたとか、あるいは目つぶしを投げたとか投げぬとかいうことだけをあなた方は治安対象としておられる。けれども今失業者は一千万人もおるし、年末になつてもち代も出ないので職安闘争というものがあつちでもこつちでも起きた。学生諸君はまたぞろ徴兵制度をしかれて一体おれらはどうなるか、わだつみの声の二の舞いをやりたくないというのは切実な声であります。行政協定なるものがおそらく旬日のうちに調印になるかもしれないが、それによると、結局おそらく徴兵というような制度が生れて来るでありましよう。大橋国務相は任意退職ということは認めるということを言つておるけれども、しかし増原長官はそれは認めないと言つておる。任意退職を認めないといえば、これは明らかに徴兵になる。それだけでありません。現にこの学生の騒擾事件の前からどういうことが本郷あたりで行われておつたか。あそこではまつたく徴兵ポスターとでもいいましようか、予備隊幹部を募集するにつき志願をしてくれというポスターがあちこち張りめぐらされておる。今日米合作によつて、いろいろと若い者やら、労働者やら、あるいは農民というものにとつては死ぬか生きるかの大きな問題がここに起きておる。飯が食えぬ、どうするかという問題、この上兵隊にとられてまたぞろ鉄砲玉のえじきになる。しかもこれは日本のための戰争でも何でもない。よその国のために戰争しなければならぬ。これはだれだつて憤慨します。そういうことで演説をやつたり、戰争反対を叫ぶものなら、これは治安に害ありというて、目の色をかえて弾圧なさる。ところが一生懸命再軍備と外国の戰争のお手伝いをするような方向へ運動するならば、治安上大層ぐあいがいいといつて見ておられる。私はそのような治安考え方じやいかぬ。現にごらんなさい。もうすでに銀行ギャングの事件が起きておる。そうすると、同じようなものをまねする日本人も出て、あちこちで銀行ギャングのまねをやり始めておる。あるいはごく最近では、これも御承知の通り、からすと間違えて日本の十九になる女の子をアメリカ人がピストルで打つておるではありませんか。からすと間違えるなんてべらぼうな話がありますか。これは数え来れば限りもない。そういうふうに片一方の者がやたらと治安をかき乱すような問題が起つても、あなた方は、それはなるほど大いにこれを逮捕すべく協力しておるとかいう答弁ではあつたけれども、一向にこれに対してはほんとうに身の入つた仕事をしておらぬ。そうして片一方の勤労大衆学生などほんとうの愛国心に満ちた人々が立ち上るというと、治安上害ありといつて押えられる。そこで私がお尋ねしたいというのは、あなた方のこれからの大方針として、これらの下から盛り上つて来る大衆の要求を、これは單なるあなた方の装備や人数やを増して押えつけるということだけで片がつくとお考えですか、どうですか、それをまず伺いたい。
  99. 田中榮一

    田中参考人 御質問の要点がちよつとわからないのですが、要するにわれわれの警察制度その他は、結論より言うと、盛り上る力を弾圧するだけの組織だ、こういうような御趣旨のように聞いたのですが、絶対にそうではないのでありまして、警察はいわゆる国家の治安、社会の治安の保障制度でありまして、犯罪が行われているのも、これは治安が乱れるもとであります。それからまた、いろいろの不法なデモが行われるのも、これも治安の乱れるもとであります。また不法な集会が行われ、社会人心が動乱する、これも治安が乱れるもとであります。かようなものに対しまして、警察は防犯的な立場から、あるいは治安維持の立場から、適切な措置を講じ、もしそれらの者が法律を無視して不法越軌の行為をしたときには、犯罪がそこに行われるのでありますから、法律と秩序を維持する建前から、これに対して適当な措置を講ずる。これが警察並びに治安機関の任務だろうと考えております。
  100. 田中堯平

    田中(堯)委員 私はそういうふうな形式的な答弁を要求しているのではないのです。今現実に日本の治安ということが問題になつているのであるが、現在、治安言つても、ただ困つた者がわいわい騒ぐということだけを押えるのが治安かと聞いているわけです。あなた方の治安という観念がはつきり一方に偏しているから、それが間違いでないかということを聞いているわけです。しかしそれは論争になるだけで、その点はまたあとで聞くことにしまして、今矢つぎばやにあちこちで騒擾事件が起きておりますが、これを共産党にくつつけようとしている。今警視総監の答弁にもあつたように「球根栽培法」ですか、そういうものがどうも共産党の刊行物であるらしい。しかもその中には、今度の騒擾事件みたいなものを使嗾しているような筋合いが出ているという説明であつた。そこでお聞きしたい。いやしくも警視総監ともあろう者が、責任をもつての発言を聞きたい。大体「球根栽培法」なるものが、これは共産党の刊行物であり、あるいは指令書、方針書にかわるようなものであるというふうに、あなたは断定をしておられますか。第一問としてまずそれを聞きたい。
  101. 田中榮一

    田中参考人 お答えします。「球根栽培法」が共産党から発行せられたものかどうかというのは、それを実際にやつておられる今の吉河特審局長のお答えによつておわかりと思うのでありますが、私どもはこの「球根栽培法」の内容を拝見しまして、これが共産党から出たとは申し上げかねるのでありますが、これらの文句を見ますと、こういうことも書いてあります。「わが党は最近新聞綱領および五全協の決定を全党の討議にうつしこれを成功的に闘いぬいた経験をもつている。」こういうことで、「わが党」とか、そうした文句を書いてありますが、党というのは共産党だけではありませんから、ほかにもあろうと思いますが、しかし五全協というのは、今のところ共産党以外にはたしかなかつたと私は記憶しておるのであります。そういう点から、私はこれは共産党員がつくつたものではないかという疑いを持つているわけであります。
  102. 田中堯平

    田中(堯)委員 單なる疑いだと言う。あなたの最初の発言では、共産党の刊行物であると私は認めると、たしかに認めるとかいうような発言であつた。しかもそれに載つていることが今度の騒擾事件に現われているから云々ということであつた。そこでその次にお尋ねするのは、それならその「球根栽培法」に載つている、あなたがさつき読んだ何とか何とかで中核自衛隊が云々というような問題もあつたが、そういうような文言が今度の騒擾事件に現われたという何か具体的な証拠がありますか。あなたはさつき、私はそれは共産党の作業であると思うというふうな発言をした。あなたは何か確たる証拠を持つて言つているのか。これは共産党指令、この「球根栽培法」なら「球根栽培法」なるものの指令に基いてやつたことであるという、一つの証拠なり、あるいは証拠まで行かないにしても、それに近いものをお持ちですか。
  103. 田中榮一

    田中参考人 現在の暴動といいますか、騒擾事件の個々のいろいろな点を考えますると、私はこの「球根栽培法」の指示しているような行動を具体的にやつておるように見えるのであります。ですから私は「球根栽培法」によつてつたのではないかということを申し上げたのであります。
  104. 田中堯平

    田中(堯)委員 こつちが聞けば、最初は私はそう思うと言つてつたのが、今度は、ではないかと思われるというふうに、次第に言葉じりがかわつて来る。証拠のない証拠、自信のない証拠であります。そういうふうに証拠もないのに、何でもかんでも共産党がやつたんだ、だから共産党をたたきつけてしまえというので、団規法を今にも上程しようというために、與党自由党の議員と一生懸命やおちよう問答をやつて、何でもかでもこれを近いうちにやらなければならぬということに国民の気持を持つて行かなければならぬというので、まつたく陰謀的な質疑応答が行われている。はなはだ遺憾であります。あなた方も日本人であつてみれば、日本が真に独立をして民生ゆたかな国になるということを希望しない者はないはずだ、われわれ共産党はそれを考えているにすぎない。それがいつの間にか暴力を働き火をつけるものは、ことごとく共産党のしわざとされている。松阪市の問題でも、共産党がやつたという想定のもとにこの委員会でも調べてみた、何が共産党のやつたものか、かえつて共産党は救済対策のために一生懸命活動したという事実が現われている。少しも思想的背景はない。また最近の白鳥事件を洗つてごらんなさい。だれがやつたかびつくりしますよ。あるいは松川事件、あれも継目板一枚といつて第一審判決はやつているが、それではどうしてもレールがはずれないために列車は転覆しない。どうしても二枚にしなければならぬというので、第二審には二枚ということを言つて来ている。これによつて、一切の審理がそれに基いて行われている赤間調書なるものは、根本からでんぐり返ることになつているが、そういうふうにしてこれも、あれは共産党がやつたんだという宣伝も、おそらくは近いうちにだめになるだろう。そういうふうに、何でもかでもみな共産党がやつたという。下山事件のときもあなたは責任者だ。あのときだつて、最初は共産党がやつたという宣伝を盛んにやつた。やつてはおりませんよ。だれがやつたか御存じでしよう。そういうことで、もつと日本人であるならば、真に日本民族を解放して、独立日本をつくつて、民生ゆたかな国にしようじやないかという真心を持つべきじやないか。これで質問をやめます。
  105. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。次の会議は公報をもつてお知らせいたします。     午後二時五十八分散会