○平木
参考人 それでは、ただいま
松阪市
大火の
概況を報告せよとのことでありますから、これに対して説明をさせていただきます。
去る年の十二月十六日、
松阪市湊町における第二
小学校から
火災を発生いたしまして、まことに時あたかも強風下にありまして大事に至り、皆様を非常にお騒がせいたしたことをおわび申し上げる次第であります。
当日は、すでに
湿度は四六%に達してお
つたわけであります。
風速も七メートルを突破いたしておりました
関係上、午前九時五分に
火災警報を発令したのでございます。その後夜になりましても、なおこの風がおさまりませんので、私ども全市に向
つて火の用心をしてくださいという警告を発してお
つたのでございます。私ども当日は相当おそくまで、大体私は八時ごろまで本部にお
つたわけなのでございます。なお私ども本部におきましては、
消防員は私以下三十三名でございます。
消防団員は三百十二名、本部におきましては普通自動車ポンプ二台と、タンク車一台とを用意しておるのでございます。
消防団におきましては、自動車ポンプが七台、ガソリン・ポンプが三台、オート三輪が一台、腕用ポンプを四台用意いたしておるのでございます。従
つて当日は
消防本部の勤務者以外に、非番員を一個班招集いたしまして警戒に当
つてお
つたような次第でありましたが、十時三十分ごろ、これは先ほど警察の方から申し上げられました時間に多少ずれがあるわけなのでございますが、この点を御了承願いたいと存じます。十時三十分ごろ発火いたしたものと推定をいたします。私ども本部の望楼におきまして、一応
火災であるのじやないかということの報告があ
つたわけなのでございます。これが十時三十九分ごろでございます。ちようどその
学校方面には松の湯というふろ屋がありまして、そのふろ屋の煙突からときどき火の粉を発しますので、これまたそれでないかと、かように躊躇をいたしたのでございましたが、付近が非常に赤くな
つて参りました
関係上、
火事なることを認めまして、本部第一線車は四十二分に出動をいたしまして、四十五分には着をいたしておるのでございます。なおそれと同時にサイレンを鳴らしまして、各分団に警報を発したような次第でございます。さつそくかけつけました
ところ、すでに
校舎の講堂、職員室、宿直室、小使室、あとに
校舎が三棟あるのでございますが、すでにこの三棟が半分くらいまでは火の海にな
つてお
つたわけなのでございます。もつともこの
ところには、最初発火いたしました場所は、ちようど講堂の横の
ところに四間に二間の物置が付着しておりまして、この物置には
学校の立木がたくさんありましたがため、
学校の児童が勉強するのに暗くて非常に悪か
つたがために、それを伐採をいたしましたしばが、大体五十把ぐらい積んであ
つたわけなのでございます。もつともこれはトタンぶきでありまして、そこに、相当大きな東でありましたので、大体四束をまつすぐにしてみますと五尺ぐらい、それが四間の間にずらりと並んであ
つたということなのでございます。従
つてこれに火が燃え移
つた関係上、見る見るうちに全
校舎に延焼したわけなのでございます。すでに
風速は、瞬間
風速十二メートルを突破いたしておりました
関係上、全
校舎に火が移
つたわけなのでございます。その
校舎は五間に六十五間のものが二本、二階建の
校舎であり、三十間に三間の
校舎が一棟あ
つたわけなのでございます。これが西北に向
つて立並んでおりました
関係上、ちようど煙突のような
状態になりまして、十二メートルの風にあおられました
関係上、非常に火は猛烈をきわめたわけなのでございますが、その
校舎の裏には、ちようど、湊町内の平生町と申しておりますが、そこには酒倉があり、しようゆの倉もあ
つたわけなのでございます。これがごく接近をいたしておりました
関係上、これにまず延焼をいたしたようなわけなのでございます。水利につきましては、ちようどその
学校の裏に愛宕川という細い川が一本あるだけでございまして、それには水が非常に少いので、運動場に側面暗渠をこしらえまして、そこに相当量の水が貯水されておるわけなのでございます。そのほかの貯水池と申しますると、それより約四百メートルぐらい離れた
ところに愛宕町の天神さんというものがあるのでございます。ここに三百石の貯水池があるのと、それから風上の方に裁判所があるわけでございますが、この裁判所にも三百石の貯水池がありますが、これとても、発火地点から考えますと、大体二町半ぐらいあるのでございます。そうした非常に水利の不便な箇所でもありますのと、十二メートルの風に追われました
関係上、私どももすでに到着いたしまして十分敢闘はいたしたわけなのでございますが、すでにその裏の長月町に延焼いたしました結果、すでに私どもの力では及ばないというので、警察電話をお願いたしまして、さつそく津市、山田市管内の自動車ポンプを持
つておる
ところに
応援をお願いしたわけなのであります。われわれが到着して放水いたしましたのが、四十五分でありますが、その後二十分の後には長月町に延焼いたしましたような次第でございます。その裏の平生町の酒蔵には十分後には延焼したというような次第でございまして、私ども本部のポンプは、すでに四十五分には第一線車、第二線車を放水しております。第三線車は一分遅れて放水をいたしております。その他、一分団、二分団、四分団は平生町裏側の愛宕川を利用いたしまして放水をいたしたのでございまするが、これがなかなか三台のポンプがかからなか
つたわけなのでございます。従
つて、三分団は天神さんの境内の貯水池にまわしたわけなのでございますが、すでにわれわれの力及ばなか
つたのでございます。そうしておりますうちに、その後十一時四十分には、それから約二町も隔てました
ところの武蔵野という大きな料理旅館の宅へ飛び火いたしまして、三分団のポンプでも
つて飛び火警戒に当
つてお
つたのでありますが、すでに愛宕町全体は火の粉の海というようなぐあいにな
つてお
つたわけなのであります。そのお向いの公安
委員長さんのお宅も、すでに飛び火でも
つて焼けてしま
つた。愛宕さんの前の
ところまですでに延焼してしま
つたというようなわけで、やむなく私ども転遷をしなければならぬというような
状況にな
つたのであります。この地区は平素から非常に水利の悪い
ところでありますがために、私ども頭痛の種とな
つてお
つたところでございますので、二十六年度に起債をも
つて貯水池をこしらえたくお願いしたのでございますが、不幸にしてその起債がいただけなか
つた関係上、貯水池を設置することができなか
つたのでございます。すでに
松阪市では第一次水道が敷設されたのでございまするが、これも殿町付近でございまして、まだ愛宕町の方には通
つておらなか
つた関係上、非常に水利が悪いという結果で、いよいよ転遷しなければならないというので、愛宕さんから大体五町隔たりました、ずつと風下に当る
ところに、名古須川という細い川があるのでございますが、これに対して転遷をいたしまして、自動車ポンプを三台中継いたしまして、ようやくタンク車から水が二本より出ないというような
状況であ
つたのでございます。このときには山田市、津市方面の自動車ポンプの
応援も得ましたので、この名古須川を利用いたしまして、三台をも
つて放水をしたわけなのでございます。なお津市からの
応援は、それからちよつと風上の丸信ビル——と申しますると、大体これより五町あるかと思いますが、そこまで水道が来ておりましたので、それからポンプ三台をも
つて現場に放水してもら
つたというわけなのでございます。当日は非常に風が強か
つたので、私どもの平素考えておりまするよりは大きなものであ
つたということと、水がなか
つたということによりまして、ああした大きな
火災をしでかしたということになるのでございます。私どもは、平素最小限度の機械をも
つて最高の力を発揮したい、かように思
つてお
つたのでございます。過去におきましては、おそらくこうしたことはないのでございます。私も
消防に携わることすでに二十七年になるわけなのでございまして、相当の
火事にもあ
つておるのでありますが、まず民家であれば壁もあります、また完全なる塀もあります。土蔵もあります
関係上、この防火壁を利用いたしまして、いかなる
火事でも最小限度に治めておるわけであります。最近に起りました
火災は、二月の五日に起
つたのでございます。これもちようど
火災の発生いたしましたときには、瞬間
風速十メートルを突破いたしておりまして、これは新町でありますために、商店街であ
つて非常に目抜きの場所でありますが、一時心配をいたしたのでございますが、何分にもこれは民家でありまして、今申し上げました通り土蔵、土塀というようなもので囲まれておりました
関係上、最小限度に、
出火の家とその他類焼四軒でとま
つたわけでございます。なるほど
罹災者は多いわけで、福西という家には十二世帯お
つたわけであります。これは元旅館でございます。その旅館の八畳の間
一つ、六畳の間
一つというような
ところに十二世帯お
つたわけで、
罹災者は非常に多い勘定にな
つておりますけれども、完全に焼けたのはこれなんです。こういうふうに私ども常にや
つておるのでございますけれども、
学校という大きな対象物、しかもその対象物が、
北西風にあおられると同時に、ちようどその
校舎が
北西に建
つてお
つた。それでまるきり一瞬にして火にな
つてしま
つた。われわれがこれに対抗する
態勢を整えるより火の方が早か
つた。それに対する完全な水がなか
つたというために、私どもの威力が完全に全うでき得なか
つたことを残念に思
つておる次第でございます。
次にそのあくる日の殿町における北
高等学校の
失火でございます。ちようど前日の
火災が午前の四時三十分ごろに
鎮火をいたしますとともに、あとの残火整理に私ども懸命にな
つてお
つたのでございますが、全
消防車が出動いたしまして、あちらにもこちらにも残火整理にかか
つておりまするときに、ホースもまだあちらに二本、こちらに二本というふうなぐあいに分散いたしまして、きりきり舞いをして残火整理をしておるときに、午後五時三十分ごろ
失火があ
つたのでございます。私ども火を
発見するや、さつそく現場にかけつけたわけなのでございます。すでに一台だけは本部の方へ引上げまして、あとの
態勢を整えてお
つたわけでありますが、ほとんどはこちらにお
つたわけであります。従
つて現場へ出かけるときにも、ホースを一度整理しなければならないというような点、また前日の
大火のために、非常にホースが破損し、中には機械も一台破損したというような結果、時刻が少し遅れたわけなのでございまするが、さつそくかけつけまして、放水したような次第でございます。しかし殿町の北高はちようど北公園の下にありまして、水道が通
つておりましても、その水道から近い
ところでも大体百メートル、遠い
ところが三百メートルというようなわけでございまして、非常に広大な
学校地域でありましたがために、これにも相当困難をいたしまして、当日もなお津、山田から
応援を
願つたというような次第でありまして、これは夜の九時半ごろに
鎮火いたしたような次第でございます。大体におきまして以上のような次第でございます。
その後私どもは、こうしたことが二度とないようにというので、ホースの修理、機械の修理を急ぎまして、ようやくにいたしまして元々通りに回復をいたしました。今後はいかなる
火災といえども善処したい、かように思
つておるのでございます。なお本年度におきましては、今後といえどもああした大きなものがあるものと思い、なお
松阪市は水道が現在できましたといえども、国家
消防庁の
調査によりますると、全国での水利
関係はゼロだ、こういうのでございます。大体八位くらいに考えておるような報告が参
つております。従
つて本年度はぜひ起債をいただいて、普通車を三台と、なお鉄骨製望楼庁舎もこしらえ、その他貯水槽も、水道ができても、なお五十ぐらいは市内にほしいというような考え方から、お願いをいたしたような次第でございます。
大体概略を申し上げた次第でございます。