○加藤(充)
委員 先ほど言いましたから、その根拠、理由については省きますが、こういうような段階にな
つて、
講和発効後、いわゆる占領法規違反の者に対してはて
恩赦がないということになりますればこれは結局において占領時代の厳粛な形が、
内容が、刑罰を受けておるという形で残存し存続していることを証明するものであ
つて、こういうようなところまで万々の処理が及ばなければ、
講和発効後完全
独立ということは、相な
つておらないということを証明するものである。これは国家主権の
立場からそう言えると思うのであります。私は、重大なる配慮が必要だというのは、一応納得いたしますが、それはあくまで国家主権の完全回復という
立場に立ちまして、その配慮は決して、いわゆる今まで占領していた米軍を中心にしたその筋の意向というようなものを
当局としては、無配慮というわけには行かないのかもしれませんが、しかしそこに重点を置いたものであ
つてはならないと強く感ずるのであります。
それからもう
一つ、
凶悪犯はいわゆる
ポ政令違反のものと一致するものがあるかどうかということについては、それは
木村法務総裁でなければ、今御
答弁に
なつた
当局の事務官としては言えないということでありましたけれ
ども、私はこれは明らかに
凶悪犯ではないのだから、
凶悪犯は従来
恩赦にしなかつたという根拠に立つならば、この面からも
ポ政令違反の者は、全面的に釈放するのが当然だということを申し上げたいと思います。そしてなおこの点についての御見解を承
つておきたいと思うのでありますが、私の聞知するこまかい範囲においても、軍事裁判にかかり、あるいはまた国内裁判にかかつた者もございます。その一、二の例を言いますと、和歌山県の串本で起きた
事件でありますが、あちらから、輸入食糧は押しつけ輸入にな
つておるのだというようなビラを書いて、
日本米はうまいのである、外米はまずいのである、しかも高いのである、こういうことでいいのかというような趣旨を書いたら、それはいわゆる反占領的だということで、CICその他の調べを受けまして、長いこと拘束を受けました。結果は、該当なしということで釈放されました。大阪へ連れられて来ましたが、地元の和歌山へ帰りましたところが、和歌山の地方検察庁で再び取調べられて、そして三百十一号か三百二十五号違反で起訴されたのです。
判決の結果四箇月で、一年
執行猶予で、
判決自体としてはきわめて軽微なものでありまするが、
判決が不当だということで、ただいま控訴中でありまするが、これなどはこれだけ見たところで
凶悪犯だとは言えないと思う。それからまたこれは軍事裁判にかけられた事例であります。これは時期が時期であつたために問題にな
つたのかもしれませんが、昨今では外人のしかも軍人の自動車強盗その他のいろいろな
凶悪犯が事例として
新聞に相当見えて来ておりますが、今から四、五年ほど前に、敦賀に上陸したある外国軍隊が、敦賀の婦女子に暴行をした。そのために敦賀では、とりわけ婦女子は戦々きようきようとして、女学校のごときは学校を休むように
なつたというようなビラをまいたのであります。そうしましたところが、これがいわゆる占領目的違反で、軍事裁判で相当重い罪を受けたのであります。国内裁判でも有罪の
判決を受けた者もございました。それからまたこれは奈良県で起きたことでありますが、ある同僚が被疑勾留を受けておりまして、被疑事実なし、釈放ということにな
つたので、それを出迎えに行きましたときに、たまたま奈良のCICの人に顔を合せて、明朝出て来いということであ
つたので、明朝出頭いたしまたところが、いろいろなことを聞きます。本籍、住所等々のことを聞き出しましたので、それは団規令等によ
つて、すでに届出済みであるし、どういうわけでそういうことをお調べになるのかということを
お尋ね返しましたところが、いわゆる供述を拒んだということで、これは大阪の軍事裁判に起訴されまして、一年という体刑と幾ばくかの罰金があつたと思うのであります。私
どもはこれらの事例を見まして、これは占領目的違反である、軍事裁判にかけられた、あるいはそういう罪名で
日本裁判で起訴されたとはいいまするけれ
ども、その中身からい
つて、
凶悪犯ということにはならない。殺人、暴行、強盗というようなものでは断じてないのであります。
凶悪犯という概念にはこれはまつたく当てはまらないと思うのであります。こういう
意味合いにおきましても、いわゆる
凶悪犯、従来
恩赦から除外されたという者とは違
つて、三百十一号、三百二十五号、ポ勅あるいは
ポ政令に違反したというようなもの
自体、占領法規違反のものは、こういう
意味でも具体的に検討して、いわゆる在来の
凶悪犯あるいは凶暴性を持つた
犯罪人、服役者ということには相ならないと思いますから、この一点からも、
当局はひとつこういうようなものについて全面的に釈放してやりたい、
恩赦をしてやりたいという気持があるのか、
恩赦すべからざるものであるという気持が強いのか、そういう点をいま少し聞かせてもらいたいと思うのであります。これは
日本の行刑方面を担当する、あるいは具体的な
日本の
独立主権の現われである司法権を担当する
日本の公務員の気構えとも関連して、これは
恩赦だけにかかわりませんけれ
ども、この際
お尋ねしておく必要があろうかと私は感ずるのであります。