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1952-02-08 第13回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月八日(金曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君       安部 俊吾君    角田 幸吉君       鍛冶 良作君    高橋 英吉君       花村 四郎君    松木  弘君       吉田  安君    加藤  充君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君  出席政府委員         法務政務次官  龍野喜一郎君         刑 政 長 官 草鹿淺之介君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月六日  戦争犯罪者減刑等に関する請願(庄司一郎君  紹介)(第四四四号) の審査を本委員会に付託された。 同月七日  戦犯者助命減刑外地服役者内地送還に関  する陳情書  (第三〇一号)  売春取締に対する法制整備に関する陳情書  (第三一四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する  件     ―――――――――――――
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件について調査を進めたいと存じます。質疑の通告がありますので、これを許します。田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私は先般法務総裁の御出席をお願いし、かつ警察に関係あるところの法務当局の御出席を求めまして、具体的事案につきまして、それぞれおただしをいたしました。本日また資料の提供を受けたのであります。この資料並びに先般の当委員の質問に対するお答えによりまして、全貌がはつきりいたしたのでございますが、講和條約締結後、独立国家としての日本の前途に対しましては、治安上相当考えなければならない問題があると思います。しかしこれに対する立法的処置につきましては、われわれ国会といたしましては、その対策とにらみ合せまして、非常に大きな関心を持つておるものであります。法案内容に対しまして、その内容が適切妥当なることを望むがためであることはもちろんでございます。治安立法に対する構想は、木村法務総裁前任者でございますところの大橋法務総裁からは、われわれ委員会といたしまして一応構想内容を承ることができ、その構想によりまして、治安立法が進められて行くものであるという輪郭だけを今日まで知つて参つたのでございます。しかし新しく就任されました木村法務総裁からは、これが構想につきましていまだ一度も承つておりません。また内容も知らされておりません。しかし新聞上におきましては、われわれ国会議員の知らない間におきまして、また国会委員会において発表されない問題に対しまして、木村法務総裁構想というものがある程度公にされておるのであります。私たちはこれらの行き方に対しまして遺憾の意を表示しなければならないことになるかもしれませんが、しかし法務総裁において、これを発表していない、構想を漏らしていないということになれば、事はまた別問題であります。しかし法務総裁片鱗すら示さないことが新聞紙上に載るということそれ自体も、現在の輿論機関の行き方からいたしまして、私たちは納得のできないことでありまして、そこらあたりに、委員会自体といたしましても、法務総裁に対しまして、一つの釈明を求めなければならないところの立場にもあるのであります。申すまでもなく治安立法というものは、前の十二臨時国会以来委員会では重大な関心を寄せ、これに対しましてわれわれは考えて参つております。またわが党の内部におきましても、これに対しましては相当研究もして参つたつもりであります。しかし前国会においては遺憾ながらこれが提出されなかつた。今度の国会においても、新聞報道によりますと、国会再開早々ただちにこの問題が上程されるのではないかというような報道すらあつたのでございますが、今日に至るまでまだこれが片鱗すら示されない。のみならず昨日あたり新聞によりますと、まだ内容について政府内に非常な意見食い違いがあるというようなことすら報道せられているのでありまして、唯一の立法機関であり、国民に対して責任をとらなければならないわれわれ委員会立場委員会責任上も、これをただ、そうかということで政府の動きをじつとながめながら進んで行くことは、時期的にも許されないことであります。またこの構想いかんによりましては、吉田内閣の生命にまでも影響するのではないかと、私は与党の議員の一人として憂えているものであります。この場合木村総裁におかれましては、前総裁において一応構想を明らかにされておる点もございますので、われわれ国会の意のあるところをおくみとりくださいまして、現在考えられておりますところの治安立法構想をここで明らかにすることをお願いしたいのであります。なお構想につきましては、いかなる内容を含むものであるか、ある点までお考えができておると思いますので、それらの点もあわせて御説明を願いたい。よろしくお願いいたします。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私が自分構想を公表した事実は毛頭もありません。断言いたします。大橋構想なるものは新聞紙上によく流布されているのであります。大橋君がはたしてこれを公表したかどうかを私は関知しないのでありまするが、少くとも新聞紙上に現われております大橋構想なるものと、私のたまたま描いておる構想とは、相当距離があるのではないかと考えております。私は正常なる団体活動を毫も規正する意思はありません。ただ講和條約発効後の国内状態に対処いたしまして、暴力的、破壊的不法団体活動を何とかして規正して行きたいということを考えております。この構想のもとに今案を練りつつあるのでございまするが、再思三考、この問題を研究いたしまするとなかなか容易ではないのであります。まだ結論には到達いたしておりません。至急到達いたしたいと苦慮いたしておるのであります。事国家の将来に関係することでありまするから、よほど慎重に研究しなければいけないと考えまして、部内を督励して今せつかく研鑽中であります。なお繰返して申しますが、まだ成文をつくり上げるに至つておりません。それと、これと付随いたしまする内地司法機構につきましては、どうしても警察機能を能力化しなければならない。これが根本問題と考えております。現在の特審局国警、自警、この調整をいかにしてやるか、この連絡をいかによりよくするか、これが問題であります。これも御承知通り警察法はなかなか解しにくい点がいろいろありますので、これを明らかにいたしまして、ぜひとも警察機能の十分なる発揮ができ得るようにと、今構想中でありまするが、これまた大きな問題でありまして、なかなか容易でありません。まだ結論を得ておりません。従つて今日この際私が具体的に何とも申し上げることができぬことを御了承願いたい。いずれ成文を得ましたら各位の御審議を十分にお願いして、りつぱな治安立法をつくりたいと考えております。
  5. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 一応輪郭は了承いたしましたが、一体その構想に基きまして、法務総裁治安立法に関する立法措置を、一本の体系によつて立てようとしておられるのでございますか。個個的な法令をつくつて——たとえばスト禁止法、これは新聞で言われておりますから一例をあげましたが、スト禁止法とか、団体等規正令をそのまま、ポ政令の消滅によつて新しく出す、こういうふうな個々的な法規として提出するお考えでありますか。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私のただいまの構想は、いわゆる団体等規正令にかおるべき法律を作成いたしたい、こう考えております。そうして治安機構につきましては、別に警察法改正等処置をとつて進めたい、こう考えております。
  7. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 団体等規正令の話が出ましたので内容についてお尋ねいたしまするが、団体等規正法は現在の団体等規正令の形において出そうとの構想でございますか、それとも団体等規正令という形をすつかりぬぎ捨ててしまつて、全然新しい構想で、先ほど申されましたような暴力的、破壊的分子に対する対策を立てようとするのか、この点をひとつ……。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。団体等規正令は御承知通り廃止さるべきものであります。それにかわるべき法案として新しく今作成中でありまするが、前の団体等規正令とはよほどその内容を異にすると考えてくださつてしかるべきと思います。名前もかえて行きたい、こう考えます。
  9. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 非常にけつこうなことだと思うのでありますが、その異なるというのは、団体等規正令よりも厳格にしようとするのでございましようか、厳格でなくて、今の団体等規正令よりももう少し寛大な点も考えられるようなお考えでありましようか。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 考え方によりましてやわらかくも見えますしかたくも見えましようが、これは主として正常なる団体活動を規正するものではない、こう申し上げます。ただ破壊的不法団体活動を規正して行こう、こういう趣旨であります。
  11. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 大橋総裁のときにスト禁止法というようなことが新聞に漏れました。これが現在新聞紙上ではなおかつその言葉通りに、スト禁止法というようなことで呼ばれておりますが、この点に関しては国民も非常に関心を持つております。現法務総裁はこのスト禁止法というようなものをお出しになるお考えがございましようか、その点も承つておきたいと思います。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は正常なる組合活動を毫も規正する意思はありません。申すまでもなく、労資協調で進まなければ今後の日本の再建はおぼつかない。私はどこまでも労働者を尊重して行きたい。従つて正常なる労働組合については、いかなる労働運動といえどもこれを規正して行くということは考えておりません。ただしかし労働組合が、争議行為に名をかりて不法破壊活動をしようということになれば、これは別問題であると御承知を願いたい。
  13. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 大橋法務総裁構想と現法務総裁構想が相当かけ離れておるという事実が、先ほど法務総裁が言われましたように、あることが委員会もわかりましたが、これはぜひともいい意味においてのかけ離れであることを望むものであります。講和後の日本独立を完成して行くためには、やわらかく行くためには、やわらかく行き過ぎてはまた困難を伴いますが、強く行き過ぎても困難を伴う場合がありますので、ひとつ大きく御研究願つてりつぱに独立国家としての体面を保ち、りつぱに治安の保たれて、国民が安心してついて行けます立法をお立てくださいますことをお願いしてやみません。委員会といたしましてもその線について極力努力をいたします。  なおこの機会にお聞きいたしておきますが、先ほど急いで出すと言われましたが、新聞では今月の二十日ごろ治安立法の提出があるのじやないかというようなことが報道されておりす。総裁といたしましては時期をいつごろにお考えになつておりましようか、この点を伺いたいと思います。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 なるたけ早く成案を得たいと思いますが、まだ時期的にははつきりいたしません。従つて二十日前後ということは私は確言いたしかねるのであります。さよう御承知を願います。
  15. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次に治安に関する機構、これも相当新聞報道されております。この機構に対しては大橋法務総裁と現木村法務総裁の間に非常に意見食い違いがある。しかも両者の間には何か感情的にも変なものができているのではないかというようなことすら見られると伝えられておりまして、委員会としても非常に心配をいたして遺憾にも考えておるのでありますが、機構についての法務総裁の御構想をひとつお漏らし願いたい。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 大橋君と私の感情の行き違いは毛頭もありません。断言いたします。ただ私はりつぱな成案を得るために、前法務総裁でありし大橋君、ただいま国警を管轄しております担当の大橋君の意見を十分に聞き入れて、取るべきものは取り入れ、また取入るべからざるものは取入れないという構想のもとに、今せつかく案を練つておるのであります。繰返して申し上げますが、私と大橋君との間に決して感情の行き違いもなければ、また考えの全然相違するというような点はありません。
  17. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 もう一回、くどいようでありますがお伺いいたしますが、機構はどのような機構ですか。警察機構特審機構法務府の機構予備隊あたり機構、これをどのような構想でお進めになつておりますか。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は警察のあり方を、要するに日本内地警察力をいかに能率的に発揮せしめるかということの構想のもとにやつておるのであります。従つてこれは警察法改正を伴うことを要するのであります。これはなかなか容易な内部事情があります。従つて今私はこういうぐあいに持つ行くというような具体的な案はまだ固まらないのであります。せつかくただいま構想を練りつつある次第であります。さよう御承知を願います。
  19. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 新聞に発表したことがないという先ほどの答えでございましたから、この点からお聞きするのは無理かと思いますが、新聞報道によりわれわれの承るところによりますと、木村法務総裁警察機構特審機構法務府の所管とするというふうなお考えのように——これは言つたことがないというのですからそれをただすのじやないのですが——報道されておりますが、そこらあたりはいかようにお考えになつておりますか。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それも一案であろうと考えております。しかしまた別にこれを切り離してやるということも一案であります。それはどの点が完全に行くかということについては、なかなか容易に結論を得ないのであります。率直に申し上げますると、いろいろな考え方があるのでありますが、今お読みになつ考え方一つ考え方かと私は考えております。しかしそれがはたして今の警察実情沿つて、いいかどうかということも、多々疑問の点がありまするので、せつかくあらゆる方面から検討して、今慎重に考慮中であるということを御了承願います。
  21. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 治安委員会のような構想報道されておりますが、この点は……。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はまだ治安委員会をつくろうという考えは持つておりません。
  23. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 講和條約の效力発生によりまして、恩赦特赦が行われるという報道があります。これにつきましては、前国会におきまして当委員会において大橋法務総裁お尋ねをいたし、大橋法務総裁法務府としての意見を承つたのでございますが、大橋法務総裁が前国会におきましてこれに対する構想を述べた。その構想が、新しく法務総裁が就任された今日、変更されておりましようか、あの大橋法務総裁が言われたような体系において、現法務総裁恩赦大赦を行おうといたしておられましようか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は講和発效後日本、これは新しく出発する日本でありますから、この機会国民的喜びをひとしくわかちたいと考えております。従つて大赦特赦についてはでき得る限り広範囲にやろうという点については、大橋君と意見を一にするものであります。
  25. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私まだ恩赦特赦の点につきましても、法務総裁お尋ねいたしたいと思いますが、時間がないようでございますから、次の機会に留保いたします。  それでは続きまして、私はこの恩赦特赦の関係について当局にただしたいと存じます。前国会におきまして、当委員会委員であります押谷委員から、大橋法務総裁に対してお尋ねをいたしました。そのときに大橋法務総裁は具体的な内容を示しまして、統制違反とか、選挙違反とかいう具体的な内容を示しまして委員会に御答弁があつたのでありますが、あの大橋法務総裁の答えられました具体的内容というものは、現在の法務府におきましても踏襲せられておりましようか、構想に変更のある点がありましようか、そこをひとつ御答弁を願いたいと思います。
  26. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 具体的な点につきましては、これはもう申すまでもなく御承知のことと思いますが、恩赦内閣でやりますので、今日どうきまつておるということは、具体的にはまだわかりません。但し従来のたびたびありました恩赦の例によりまして、ある程度の具体的なことも推察できるわけであります。今度の恩赦につきまして法務府としての考えは、今日までかわつておりません。
  27. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは大橋法務総裁の今国会答弁されたことは、その通りだ、こういうことに了解してよろしゆうございますか。
  28. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 その通りでございます。
  29. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そういたしますと、あの当時お尋ねいたしました点から漏れておりました点を一、二確かめますが、最近新聞紙上で、女の死刑 山本廣子さんの死刑に対する助命嘆願とでも申しますか、寛大にしてやつてくれという嘆願が、婦人会あたりから相当活発に展開されているようであります。これは報道によりますと、殺人強盗はまつたく残酷なものであり、裁判所としてこれに対して何ら酌量、減刑の余地がなかつたものであるというような報道が見られるのであります。してみると、これは相当凶悪な犯罪だと考えざるを得ないのでございますが、凶悪犯罪に対しても、今後の講和効力発生による恩赦はお考えになつておりましようか、またいたすべきだと考えておりましようか、お尋ねいたします。
  30. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 従来の例によりますと、いわゆる凶悪犯に対しましては、治安上その他の考慮からいたしまして、恩赦にしないのが例になつております。今度の期待されておりますところの講和恩赦につきましても、おそらく原則的には従来とかわらないような考え方がとられるのではないかと思うのでありますが、ただ一概に凶悪犯という名称のもとに呼ばれております、この罪名がそうでありまして、個個の内容に立ち入りますと、あるいは非常に事情の気の毒なものがあつたりいたしますので、個々事案につきまして具体的にいろいろな点を検討して、そのような事情の特にあります者につきましては、個別的に減刑するということによつて、あるいは罪一等を減ぜられるというような結果が起きる場合があるのではないかとも思われます。
  31. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そうしますと、個々について検討した場合、今問題になつておりますところの女死刑囚というものは、これは男の死刑囚と比較して女だからというような個々的な事情も生れるかもしれません。憲法においては性の区別をいたさないことになつております。その建前から言うと、男女平等ということになるのでございますが、また女なるがゆえにこうした社会的な問題を引起して騒ぐ、こういうような事情伴つたようなものに対しまして、他の凶悪犯と区別して取扱うというような考えがありましようか、また今までにも、そうした実例において差別をして取扱つたことがあるか、ここをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  32. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 仰せ通り恩赦適用につきましては、性別によつて差別をすべきものではないと考えます。従いまして判決が確定いたしまして後に、主観的あるいは客観的の事情の変化のない場合に、恩赦適用は差控える、これが恩赦の普通の例になつております。従来仰せのような、山本廣子に対するような問題がありましたかどうか、古い報告を調査いたしたのでありますが、最近においてはございません。大正年間の分が焼けておりますので、これもよくわかりませんが、女に対する死刑執行のあつたということは、大正十年に名古屋で一名、昭和七年廣島に一名、昭和十年廣島に一名、そのほか昭和十四、五年ごろ前橋刑務所に一名、これだけを今日の資料から知り得るのでありますが、山本廣子のように女の死刑囚に対していろいろな考えがあつたかどうかということはないようであります。
  33. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 山本廣子の具体的な問題でございますが、これは相当社会問題化したようにも考えられます。こういうように社会問題化して参りました事件に対しましては、法務府としてはどういうようなお取扱いをいたしておりましようか。大いに実情調査するとか、その他こうした陳情を聞いてやるために、これを大きく研究するとかいつたようなことでもやつておりましようか。ただ新聞紙上の社会問題、三面記事をにぎわす一つ事案、こういつたような形において新聞のみを見てやつておるのでございましようか。死刑囚に対する法務府の取扱い実情をひとつお聞かせ願いたい。
  34. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答えいたします。山本廣子事件は昨年七月上告が棄却になりまして確定いたしております。その後本人から昨年の十一月恩赦減刑嘆願がございます。なおそれについて刑務所長意見が付してございました。刑務所長の見るところでは、その後本人から刑務所においていろいろ申すところを聞き、また本人刑務所内の態度等から見て、恩赦に浴せしめていいのではないか、こういう意見もございましたので、現在中央委員会恩赦課におきまして慎重にこれを調査しております。特にこれについて輿論を促すとかいうようなことは全然やつておりません。
  35. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 山本廣子に限らず、死刑囚死刑執行というものが、戦後は特に期間的に長いように私は見受けるのでございますが、死刑執行が非常に長引くということは、何か特別な事情でもございましようか。手続上そうなるのでございましようか、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  36. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 現在死刑判決が確定いたしまして、未執行でおります者は約七十件余りかあると思います。これは御承知のように新法の事件でありますと、判決確定執行まで六箇月という期間が定められております。ところが今日ありますのは、まだ旧法事件が相当ありますので、まだ七八十件というような数が残つておりますが、これは数字から申しますと、特に多く残つておるということはないように聞いております。
  37. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 死刑執行する囚人を助けてやる、これは人間の考え方といたしまして同情的に私は当然生れる考えだと思います。しかし凶悪なる犯罪を犯して、そして社会秩序を撹乱し、しかも殺された人の家族の心情、これを考えるときに、また理解しがたい矛盾した感じも生れるのであります。こうしたものをよくにらみ合せて行くところに、やはり私たちは今度のありがたい恩赦目的達成意味があろうと思います。もちろん私は個々事件についてつまびらかにするものではないのでございまして、個々事件について言うことはできないのでございますが、どうかそうした意味死刑囚凶悪犯罪に対する恩赦というようなことは、普通の事案よりももつと具体的なる資料、熱心なる調査の上に立ちまして、結果の誤らないような方法において処置がとられることを希望してやみません。  最後にこの山本廣子の問題に対しまして、婦人会あたりが立ち上つて助命運動をしておる。これはもちろんまじめな運動とも思うのでありますが、この婦人会運動が起きた原因というようなことがおわかりになつておりますればひとつお知らせ願いたい。その動機は刑務所所長あたりが話しかけた、それから新聞の想像によりますと、教誨師あたりがやはりそれの糸口をつくつたというようなふうにも見られないとも限りませんが、まじめな婦人運動であつてほしいと思いますがために、この点を御調査になつてお知りになつておりますれば、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  38. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいま仰せのような恩赦については一般被害者感情、その他あらゆる面から十分に検討しなければならぬという御説明はまことにごもつともで、私どももさようなつもりで今日までいたして参りましたし、今後も参りたいと思います。山本廣子事件につきまして婦人会運動が起つておるということにつきましては、実は私どももまだ事実を知らないのでございます。三、四個人的にあるいは近親あるいは新聞記事等を読んで、自分はこう感じておるというような意味で助命を嘆願する書面が参つておることは事実でございます。一つはたしか牧師の方で、本人に洗礼をさしてやりたい、そうして助命をしてもらいたいというようなことがありましたが、広く一般に婦人会運動が起つておるということは知らないのでございます。またさようなことが刑務所の方から漏れたというようなことも、まださような事実を存じておりません。ただ私どもは一般の人気に投じて、非常な慎重を期さなければならない恩赦の事務をさようなことでいたすべきでない、さように思いまして、今日までいたしておりますし、また今後もさようにいたすべきものと考えております。
  39. 加藤充

    ○加藤(充)委員 木村さんはきようまた参りますか。——今のことに関連して木村法務総裁が先ほど説明しました治安機構並びに治安立法についていろいろお尋ねしたいことがあるのでありますが、本人が席をはずしたままなので今田嶋君の質問いたしました範囲に関連して、一、二質問いたします。  先ほど恩赦の対象の問題で、凶悪犯については恩赦しないのが従来の例であつた、先ほど木村法務総裁は破壊的、暴力的行為ということを言つたのですが、あなたの言われた凶悪犯というのは、破壊的、暴力的と木村さんが言われたようなものとの関連は、いかがになりましようか。これは破壊的、暴力的という言葉自体が一般的、抽象的でわからないのですが……。
  40. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 私先ほど申し上げました凶悪犯というのは、従来取扱いました例に基いて申し上げたものでありますから、先ほど法務総裁の言われた破壊的というのとは、考えは違つておると思います。
  41. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでいわゆる占領法規、ポ政令違反の問題で、裁判中ないしは服役中の者、あるいは取調べ中の者が多々あるのであります。それでお尋ねしますが、三百十一号あるいは三百二十五号で、占領目的に有害なる行為をいたしたという理由で、服役あるいは裁判中の者などは、恩赦の関係ではどういうお心組みでありますか。
  42. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 内閣でどういうふうにおきめになるかよくわれわれはわかりませんので、われわれといたしましては、そのへんはまだよくわかりません。
  43. 加藤充

    ○加藤(充)委員 新憲法になりまして、恩赦という言葉自体、それから恩赦という中身自体恩赦の主体というようなことが、旧憲法時代と違つて、十分に検討される必要があると思うのであります。要点は国民主権という立場に立つて、それに対応したような意味で、気の毒な人たちを釈放して、自由を与えてやるというふうに、制度も考え方も切り改めらるべきであると思うのでありますが、それはさておきまして、先ほど申し上げましたような三百十一号あるいは三百二十五号違反というのは、特別な局部の問題でありまして、いわゆるポ政令、占領法規違反というようなものは、二百にも近いほどのものが現存しておりまして、これにはいろいろな罰則、制裁を盛つたものがあると思うのであります。そしてその関係するものは非常に広いのであります。日本人がかかつておるのであります。そこで私は三百十一号、あるいは三百二十五号の事例をとつてお尋ねしたのでありますけれども国民感情といたしましては、国民主権の立場で重要視しなければならないと思うのであります。それでその感情からすれば、やはり占領法規というものは占領中のものである。国民意思をそんたくせずに、あるいは国民意思まで無視して、占領軍の権威ある命令として押しつけられたものもあるのであります。こういうようなものに対しては、講和回復ということが、いやしくも言われている限りにおきましては、全部釈放すべき者である。気の毒な者であるという気持すら、国民は持つておるのであります。そこでそういう点から見れば、私どもは、先ほど言いました恩赦というものの基本的な考え方の変遷ということからいたしましても、占領法規違反というようなことで、気の毒に服役している者には、新しい問題ではありましようが、この際全面的に、講和発効と同時に釈放すべきのが至当だと思いますけれども、この点の御意見はいかがでございますか。     〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕
  44. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 ただいま恩赦に関する基本的な考えを申し述べられたのでありますが、その点は、新憲法下われわれもことごとく同感でございます。しかしながら、この恩赦に関する具体的な問題を例示しての御質問でございますが、御承知通り恩赦内容は、これは非常に重大なる影響を持つております関係上、コンクリートになるまではこれを外部に漏らすということは、いたずらなる摩擦を引起す関係もありますが、せんだつても大臣から述べられたと思いますし、私も申しましたが、今度の恩赦の範囲は相当広範囲にいたしたいという方針のもとに、目下研究調査中であります。従いまして、ただいま例示の問題について、それではどうするということにつきましては、むろん今日の新憲法下におきまして、特に国民代表である国会方面の意見は十分に反映すべきであると思いますので、御意見、御議論の点は、われわれはあくまでもこれを尊重しつつ、しかも適当な恩赦の実施をいたしたいというような考えを持つておるのであります。
  45. 加藤充

    ○加藤(充)委員 先ほど言いましたから、その根拠、理由については省きますが、こういうような段階になつて講和発効後、いわゆる占領法規違反の者に対してはて恩赦がないということになりますればこれは結局において占領時代の厳粛な形が、内容が、刑罰を受けておるという形で残存し存続していることを証明するものであつて、こういうようなところまで万々の処理が及ばなければ、講和発効後完全独立ということは、相なつておらないということを証明するものである。これは国家主権の立場からそう言えると思うのであります。私は、重大なる配慮が必要だというのは、一応納得いたしますが、それはあくまで国家主権の完全回復という立場に立ちまして、その配慮は決して、いわゆる今まで占領していた米軍を中心にしたその筋の意向というようなものを当局としては、無配慮というわけには行かないのかもしれませんが、しかしそこに重点を置いたものであつてはならないと強く感ずるのであります。  それからもう一つ凶悪犯はいわゆるポ政令違反のものと一致するものがあるかどうかということについては、それは木村法務総裁でなければ、今御答弁なつ当局の事務官としては言えないということでありましたけれども、私はこれは明らかに凶悪犯ではないのだから、凶悪犯は従来恩赦にしなかつたという根拠に立つならば、この面からもポ政令違反の者は、全面的に釈放するのが当然だということを申し上げたいと思います。そしてなおこの点についての御見解を承つておきたいと思うのでありますが、私の聞知するこまかい範囲においても、軍事裁判にかかり、あるいはまた国内裁判にかかつた者もございます。その一、二の例を言いますと、和歌山県の串本で起きた事件でありますが、あちらから、輸入食糧は押しつけ輸入になつておるのだというようなビラを書いて、日本米はうまいのである、外米はまずいのである、しかも高いのである、こういうことでいいのかというような趣旨を書いたら、それはいわゆる反占領的だということで、CICその他の調べを受けまして、長いこと拘束を受けました。結果は、該当なしということで釈放されました。大阪へ連れられて来ましたが、地元の和歌山へ帰りましたところが、和歌山の地方検察庁で再び取調べられて、そして三百十一号か三百二十五号違反で起訴されたのです。判決の結果四箇月で、一年執行猶予で、判決自体としてはきわめて軽微なものでありまするが、判決が不当だということで、ただいま控訴中でありまするが、これなどはこれだけ見たところで凶悪犯だとは言えないと思う。それからまたこれは軍事裁判にかけられた事例であります。これは時期が時期であつたために問題になつたのかもしれませんが、昨今では外人のしかも軍人の自動車強盗その他のいろいろな凶悪犯が事例として新聞に相当見えて来ておりますが、今から四、五年ほど前に、敦賀に上陸したある外国軍隊が、敦賀の婦女子に暴行をした。そのために敦賀では、とりわけ婦女子は戦々きようきようとして、女学校のごときは学校を休むようになつたというようなビラをまいたのであります。そうしましたところが、これがいわゆる占領目的違反で、軍事裁判で相当重い罪を受けたのであります。国内裁判でも有罪の判決を受けた者もございました。それからまたこれは奈良県で起きたことでありますが、ある同僚が被疑勾留を受けておりまして、被疑事実なし、釈放ということになつたので、それを出迎えに行きましたときに、たまたま奈良のCICの人に顔を合せて、明朝出て来いということであつたので、明朝出頭いたしまたところが、いろいろなことを聞きます。本籍、住所等々のことを聞き出しましたので、それは団規令等によつて、すでに届出済みであるし、どういうわけでそういうことをお調べになるのかということをお尋ね返しましたところが、いわゆる供述を拒んだということで、これは大阪の軍事裁判に起訴されまして、一年という体刑と幾ばくかの罰金があつたと思うのであります。私どもはこれらの事例を見まして、これは占領目的違反である、軍事裁判にかけられた、あるいはそういう罪名で日本裁判で起訴されたとはいいまするけれども、その中身からいつて凶悪犯ということにはならない。殺人、暴行、強盗というようなものでは断じてないのであります。凶悪犯という概念にはこれはまつたく当てはまらないと思うのであります。こういう意味合いにおきましても、いわゆる凶悪犯、従来恩赦から除外されたという者とは違つて、三百十一号、三百二十五号、ポ勅あるいはポ政令に違反したというようなもの自体、占領法規違反のものは、こういう意味でも具体的に検討して、いわゆる在来の凶悪犯あるいは凶暴性を持つた犯罪人、服役者ということには相ならないと思いますから、この一点からも、当局はひとつこういうようなものについて全面的に釈放してやりたい、恩赦をしてやりたいという気持があるのか、恩赦すべからざるものであるという気持が強いのか、そういう点をいま少し聞かせてもらいたいと思うのであります。これは日本の行刑方面を担当する、あるいは具体的な日本独立主権の現われである司法権を担当する日本の公務員の気構えとも関連して、これは恩赦だけにかかわりませんけれども、この際お尋ねしておく必要があろうかと私は感ずるのであります。
  46. 草鹿淺之介

    草鹿政府委員 私は先ほど、今おつしやるような意味で、従来考えておりました凶悪犯と、いわゆるこの三百二十五号、三百十一号違反、こういつたような犯罪とは別種類の犯罪である、こうお答えしたのであります。従いましてたとえば三百二十五号違反がすなわち全部凶悪犯になるということは言えないと思います。
  47. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは一般的に占領法規違反の服役者あるいは現に裁判中の者に対して、恩赦との関係をごく一般的でけつこうですが——それ以上は御答弁に相なるまいと思うのでありますが、それに対する心構え、気持なりをお聞かせ願えればけつこうだと思います。
  48. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 先ほど刑政長官から、恩赦について従来の先例を勘案するというお話なのでございますが、ポ政令違反は先例のないことでありますので、われわれもこれに対しては、新しい問題に出つくわしたわけでありますので、最も慎重なる態度をとつておるわけでございます。ポ政令違反のことごとくが破壊的暴力行為とは言えなかろうと思いますが、それかといつて、その内容も見ずして、すべてこれに対して恩赦の恩典に浴させるというようなことも、一概に言えなかろうと思います。ことにいまだ占領継続中でございまして、当局においてこれらの内容を明示いたしまして、その態度をはつきりするということは、今後に及ぼす影響も大きいことでございますので、御意見の点は十分承りまして、われわれはこの新しい例に対して誤りなきを期したいという程度をもつて御勘弁願いたいと思います。
  49. 加藤充

    ○加藤(充)委員 もう質問せぬでもいいのですが、ただ御答弁の中に、占領の段階において恩赦が行われるように言われましたが、私はその意味で質問しているのじやなくて、占領が終つて日本が完全独立を回復すると宣伝されておりまする段階に及んで、その喜びを国民ひとしくわかち合う意味恩赦をするというのでありましよう。さすればわれわれは、あくまで独立主権に基いた判断をいたすべきなのであつて、今占領中だから恩赦ができないというのだつたら、まだわかるかもしらぬが、独立回復後に恩赦するのに、なぜこだわる必要があるのか。そういうことでは、だらしがなさ過ぎるということを私は言いたいのです。
  50. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 ただいまの私の答弁をお聞き違いなつたか、私の言いそこないか、どつちか知りませんが、私は、目下占領継続中でありますので、ポ政令に対する恩赦の問題について具体的に態度を鮮明することは、今後いろいろな影響があるから、ただいまの段階でははつきりできないということを申し上げたのであります。しかしながら新しい例でありまするので、御意見の点は十分承りまして、具体的に恩赦は定めて行きたいということを申し上げたのでありますから、誤解のないように願います。
  51. 加藤充

    ○加藤(充)委員 どうもだらしがないので、私はあくまでそこまでこだわる必要はないから、やりたいようにやつたらどうだということを言いたいのであります。やりたいようにやらなければ、独立の回復だ、恩赦だということを宣伝してごまかしても、国民は刑努所の中で、独立は回復されないということを現実の服役者が身をもつて体験することになるということを言うのであつて、そういうことになつたら、政治の不信が暴露してしまうから、恩赦独立ということになるならば、恩赦は完全にやるべきが当然じやないかというのでありますが、恩赦は完全にやるべきだというお考えにはなれないのですか。
  52. 押谷富三

    押谷委員長代理 これ以上の答弁はございません。  他に御質疑はございませんか——他に御質疑がなければ、本日はこの程度といたし、次会は来週火曜日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時三十九分散会