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1952-05-14 第13回国会 衆議院 文部委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十四日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 岡延右エ門君 理事 若林 義孝君    理事 小林 信一君 理事 松本 七郎君       鹿野 彦吉君    圓谷 光衞君       長野 長廣君    平島 良一君       水谷  昇君    井出一太郎君       笹森 順造君    渡部 義通君       小林  進君    浦口 鉄男君  出席政府委員         文部政務次官  今村 忠助君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局庶務課長)  内藤誉三郎君         専  門  員 石井  勗君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 五月十四日  委員井出一太郎君辞任につき、その補欠として  稻葉修君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十三日  葉山中学校屋内体操場建築費国庫補助に関する  請願圖司安正紹介)(第二六八一号)  寒冷地帯学校屋内運動場建設促進に関する  請願外四十五件(小林進紹介)(第二六八一  号) の審査を本委員会に付託された。 同月十二日  義務教育費全額国庫負担に関する陳情書  (第一七三六号)  ユネスコ活動に関する法律案修正陳情書  (第一七三七  号)  高等学校職員俸給表制定に関する陳情書外一  件  (第一七三八号)  公立学校施設の防災並びに災害復旧に関する法  律の制定に関する陳情書  (第一七三九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  義務教育費国庫負担法案竹尾弌君外十四名提  出、衆法第四〇号)     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより会議を開きます。義務教育費国庫負担法案を議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。質疑の通告がございますので、順次これを許します。浦口鉄男君。
  3. 浦口鉄男

    浦口委員 総括的に、まず二、三お尋ねをいたします。義務教育は憲法三十六条によるまでもなく、これは無償で、全国民に均等にその恩恵に浴せしめらるべきである、こういうことは、私といたしましても年来主張しておることでありますので、このたび義務教育費国庫負担法案提案に至りましたことは、われわれとしてもたいへん喜びにたえない。そこでこの法案は、おそらく一昨年あたりから、文部省あたりにおいて慎重に検討されて、その間幾多の変遷を経まして、ただいま提案なつ法律案として完成したものであろう、こういうふうにわれわれは考えております。そこでお聞きしたいことは、この法律案は、議員提案になつて出て参つたわけでありますが、われわれの想像するところでは、おそらくこれは文部省立案をし、内閣提出の形で出て来るものと、こういうふうに考えていたわけでありまして、この義務教育費国庫負担については、少くとも衆議院の文部委員会においては、与党あるいは野党を問わず、おそらく共産党の委員の方も、陰に陽に文部省協力いたしまして現在に及んでおるのであります。それが議員提出なつたという理由については、われわれ政治的ないろいろの事実、あるいは含みがあろうかと思いますが、その経過について、いわゆるわれわれが想像しておりました内閣提出議員提案なつ理由を、まずお尋ねをしておきたい。
  4. 若林義孝

    若林委員 浦口委員から御発言がありましたが、心持におきましては、われわれも同感でございます。大体こういう事柄は、政府提案として堂々と国会提出せられることを望み、それに努力して参つたのでありますが、何分セクシヨナリズムに固まつておるという弊害が、どうしても払拭をせられないのでありまて、われわれとしてもその間折衝を重ねて参つたのでありますが、新聞紙上その他において御承知おきを願つておると思うのでありますが、二転二転いたしまして、遂に地財委文部省との妥協案というところまで来まして、大体この線ならば文部省の要求の最低線であり、また地財委としても、また地方行政関係の人からも、これだけは受入れてもらうことによつて義務教育費確立という線を押し出して行くことができると、こういう意味で、最低の線をねらつた法案でございます。なお大蔵当局との折衝——われわれの努力は、これからなお折衝を進めて行きたいと考えておりますので、その間、言葉は不適当かもしれませんが、大蔵当局との折衝がまだ折衝中であるという事柄のために、政府提案としてこれを出すことができないのであります。議員提案としてこれを提出し、国会意向をこの法案に反映することによりまして、大蔵当局協力を求めるという意味合いで、議員提案になつておるのでございまして、お含みおきを願い、格別の御協力を希望する次第であります。
  5. 浦口鉄男

    浦口委員 大体経過はわかる気がいたします。セクシヨナリズムというお言葉をとらえるわけではないのですが、まあその意味もある程度はわかるのであります。地財委あるいは大蔵省関係が相当困難であつた、その結果二転三転いたしまして妥協案に達した、こういうこともわかるのでありますが、具体的に地財委のこれに強く反対した理由、あるいは現在まだ今の御答弁折衝中と言われる大蔵省の面における問題、難関と申しますか、そういう点について、できるだけ具体的に、いま一度御説明を願いたいと思います。
  6. 若林義孝

    若林委員 地財委の方の反対理由説明をいたしてみたいと思うのでありますが五、六並べてわれわれの手元へ出して来ておるのでありましてその主要なる根本理由を申してみますと、大体この義務教育費というものは、地方が責任を持つて負担すべきものであつてそういう意味合いから、平衡交付金の中にこれを勘案して出しておるのである、地方自治自立性にまかせてあるにもかかわらず、その教育費に充当されるべきものをこれから分離することによつて地方自治自主性に多大の制肘を加えると、こういうところがその反対の第一点であります。  第二点は、地方行政行政費総合運営というものを、これによつて非常に予算面において制肘を受ける。たとえてみますと、三十幾つかのうちの一項目の中に、この教育費が入つておるわけであります。教育費を除きますと、他は地方行政運営のやり方によつて伸縮が割合きくものがある。たとえてみますと、衛生費のごとき、あるいは消防費のごときは、これはもし火事がその年になければ、おそらく最小限度で済むわけです。衛生費のごときは、流行病がその年に流行しなかつたとするならば、非常に少くとも済む。そういうような費目と、それから教育費のごときは、御存じ通り定員定額という、はつきりした明確な線はありませんけれども、大体伸縮することができないものであります。それと一律にあるということが、われわれとしては不合理、向うとしては、地方行政の方から考えますと、これに幾分参酌をすることによつて、他の行政費というものにゆとりがつくかつかぬかということに非常に影響がある、その主要部分の大部分を占めております教育費を別個にせられるということは、他の行政費について非常にきゆうくつなことになると、こういうことが、大体第二の反対理由であります。  それから、一見文部省自体——この金を平衡交付金の中から地財委配分いたしておりますのを、文部省にこれを移管することになると、いわゆる教育地方分権といいますか、それを目ざしておる現状に逆行することにたるのであります。それを握ることによつて、再び文部省中央集権的教育を施す危険が伴うのである、こういうようなことが第三点でございます。その他にもいろいろ理由があげられおりますけれども、主要な部分は、この点にかかつておるのではないかと思うのであります。なお、詳しくこれが御必要でございましたならば、地財委の方から、その資料その他提出をさせまして、十分検討していただきたいと思います。  大蔵省のこれに対する当面の反対理由は、教材費半額負担するということにつきましては、今まで大蔵省予算の中にはこれは想定せられて宏らぬ。PTAその他の寄付金にまつております分を、シヤウプ勧告に基いて、四百億の寄付金をなくするという方向に進んでおつたのでありますけれども、それがまだ目的が達成されておりません。現在お手元に出ておると思いますが、大体百六億というのが、PTAからの寄付金でまかなつておる。その半額をとにかく国家負担すべきであるというような線を新しく出して来たのであります。  それから、大蔵省としては、現在もし国庫負担を考えるとするならば、われわれが構想いたしておりますものより離れまして、別の配分方法を考えておるわけであります。これは直接大蔵大臣からお聞きを願つたらいいと思うのでありますが、その構想は、この法案教育費の総額の二分の一を国庫負担をして、その配分については、財政力の強弱によりまして差異をつけるということが構想になつておる。大蔵省としては、この際明確に各府県の二分の一を補助するという形式をとつたらどうか、こういう構想なんであります。われわれがこれに対して反対しますのは、現在の地方財政を是認した上で、平均して二分の一を、どの府県にもどの府県にも国庫負担をするということは、地方税制その他の根本的な改革を予想しなければならぬわけであります。そうしますと、言葉ははなはだ不適当かもしれませんけれども、東京都のごとき、二十億を国庫半額負担することにより、地方税制改革を企図して三十億を吸い上げられるというような危険にさらされる、東京あたり大蔵省の案に対しての反対理由は、そこにあるのであります。  それからもう一つ理由は、これは配分方法は別に法律をもつて定めると書いてあります。この別に法律をもつて定めるという事柄を、明確にこの法律と添えて出して来なければならぬじやないかということを、大蔵省は言うのであります。これは今地方財政地方税制根本的改革が、地方行政委員会などにおいて考究されておりますので、それとにらみ合せて、この別に法律をもつて定めるときに考究するということになつておるわけであります。大蔵省は、これを同時に出してくれなければ、納得ができぬというような志向を漏らしておるわけでございます。なお補足的な事務的その他についての大蔵省地財委との反対意向については、ひとつ当局から御説明を聴取していただきたいと思います。
  7. 浦口鉄男

    浦口委員 大体お聞したわけでありますが、平衡交付金の中の義務教育に関する分をひもつきにするということが、教育中央集権化をもたらす、こういう見解は一面の理由もあるわけでありますが、これはここで論議になるとも思いますから、私はそれをこの際論議はいたしません。それに必ずしもそういう危険があるとは、私は思いません。ただお尋ねしたいのは、この平衡交付金ができましたときに、義務教育については、アメリカにおける二ユーヨーク州のいわゆる教育平衡交付金制度構想していたのでありますが、日本においては、それが非常に幅の広いものになつた、そういうところから、教育財政平衡交付金の面において非常に不安定になつた。こういう経過は、提案理由の中でも述べておられるわけでありますが、このたびの義務教育費国庫負担法をお出しになる過程において、教育平衡交付金制度確立するという構想が当然なされたと思うのでありますが、その経過をお聞きしておきたいと思います。
  8. 若林義孝

    若林委員 これは先ほど申しましたように、この法案のねらうところは、一昨年確立されました地方平衡交付金制度を挿入いたしておりますところの地方税制というもの、それから地方財政というものを根幹として立てておるのでありますが、しかしながら、御承知通りこの平衡交付金制度の持つ弱点というものが、二年を経過した今日多々現われておりますので、これを根本的に考究し直す段階に迫られております。それで、これをどう改革すべきかというようなことを、今着々と考究中でございますので、まずこの法案のねらいましたところは、その改革案が成立しますまでは、現在の地方税制地方財政あるいは平衡交付金を認めた基礎に立つて行こう、こういう事柄でございまして、むろん教育平衡交付金制度あるいは教育税確立というようなことも、構想にはあつたのでありますけれども、まず現在の地方税制地方財政を是認した基礎の上に立つた法案であることを、ひとつ御承知おきを願いたいと思います。
  9. 浦口鉄男

    浦口委員 全国知事会議あるいは市町村長会議におけるこの法律案反対陳情が来ておることは、御承知と思うのであります。その原因がどこにあるかということを、われわれも検討しているのでありますが、問題は、教職員俸給九百八十七億五千八百万円——これは二十八年度の見込みでありますが、これの半額国庫負担することによつて、はたして地方として、完全に現在の地方税制の範囲内においてこれを確保して行けるか、結局数字算定に、相当地方文部省との間の見解が違うということも、一つの大きな原因のようにわれわれは考えておるのであります。その点地方自治体反対意見に対して、文部省の方では、この立案経過において、どういうふうにここまで持つて来られましたか、それをお尋ねいたします。
  10. 田中義男

    田中政府委員 給与費については、大体現在平衡交付金において見ておりますものと、大して差違はないのでございます。ただ多少結核による休職者補充等において増加いたしますけれども、しかし宣伝されておるように、多数の増員による増額があるわけではございませんので、従つてこれを別にはずして、しかもその半額を支給するということにおいて、何もそのために従来以上に財源的に非常に窮迫になるというようなことはないと考えておるのでございまして、一部誤解に基く反対が相当大きいと了解いたしております。
  11. 若林義孝

    若林委員 ちよつとこれに関連してですが、各市町村長あるいは各府県のこれに対する反対があるということでございますが、これは一部大蔵案とこんがらがつて反対をしておるところもあります。それから、この法案が持つておりますところの内容が、どういうものであるかということもわからないで、法案も何も出ない先から反対ののろしをあげて来ておるのであります。われわれ立案者といたしましても、最後案は七日にでき上つたのであります。にもかかわらず、何もわけもわからずに、ある一部の筋から流された指令で、内容の検討なくして反対意思を表明して来ておるきらいがあるわけであります。あたかもこの標準義務教育費法が問題になりましたときに、反対陳情全国市町村長からやつて来たのは、御承知通りでありまして、内容を知つて反対したかといえば、そうでなかつたわけであります。こういう内容を持つてつたんだ、こう言えば、それなら出しておいてもらつた方がよかつたのですと、こういうようなことがあつたのは、二年前のことでございまして、御承知通りでありますが、今度のものもそういうふうなきらいがあります。だから、地財委関係のこれに対する批判をお聞きになり、説明は聞かれたかもしれない。しかし文部省からもこの法案に対しての話を聞いて、両々相まつて判断した後の反対ではないわけでございまして、私はその事柄を、そういうような反対を、非常に遺憾に考えておるのでありまして、ひとつ委員各位は公正な立場から御批判をお願いしたい、こう思つております。
  12. 浦口鉄男

    浦口委員 そういたしますと、具体的なこの法案に対しての反対理由はなかつた承知していいので、結局現段階においては、おそらくその反対理由は解消したものと提案者確信をされているかどうかということであります。
  13. 若林義孝

    若林委員 この真意を了得せられますならば、おそらく各府県市町村長、あるいは議会関係、これに御了承を得、なおこれをむしろ喜ばれるのじやないかというような確信を持つておることだけを申し上げておきたいと思います。
  14. 浦口鉄男

    浦口委員 先ほど、この地方自治体反対をした理由には、一部の指令というふうな言葉があつたのですが、これは私何も言葉じりをとらえるわけではありませんが、経過において、われわれもうすうすこの反対意見の出所も——指令というかどういうのかわかりませんが、聞いていないわけではないのでありますが、問題は結局現在の地方税制度をそのまま認めた上に立つて立案ということが、非常にむずかしい、こういうふうに地方は考えておると思うのであります。そこでこれが立案された結果は、必ず一体財源はどこから出て来るか、国費の余剰とか、あるいは節約というふうなことによつて出るものか、あるいは非常に地方費が圧縮されて、他の部面が明らかに非常に困難になつて来るということになるのではないか。またそれをもし防止するということになれば、市町村民税その他地方税が極度に増額されて来るのではないかというような面が、私は将来に対する大きな地方自治体の危惧で、そこから反対の大きな原因が起きて来た。必ずしも一部の全然根拠のない指令によつて反対が決議された、こういうふうに一方的には考えられないものがあるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、その点提案者の御見解を承りたいと思います。
  15. 若林義孝

    若林委員 これは御存じ通り地方税については何ら触れておらぬわけであります。現在の段階において、大体大蔵省地財委算定基準として算定いたしておりますその基準を、動かしておらぬわけであります。これは理想的に考えたならば、この算定基準をもう少し積極的に一歩前進、二歩前進した行き方をやりたい気持なんでありますけれども、予算の通過した現在におきまして、これに影響を与えることはいけないというわけで、ただ算定基準法律的に明確にいたしまして、将来この増額を予想せられますようなときには、義務教育なら義務教育だけで明確にこれが増加されて行くような法案になつているわけであります。たとえて申しますと、昨年度の義務教育関係教職員のべース・アップにつきましても、二百億がべース・アップすることによつて増額になるわけであります。そうすると、半額国庫負担という大体の平衡交付金制度から申しまして、百億というものは国家負担しなければならぬ。それが増額しなければならぬのを、なお先ほど申しましたような他の行政費も含めて五十億より増額されておらぬというような事柄は、この法案によつて阻止せられるだろう、明確にこれが浮び出て来るということになるのでありまして、そういうことはねらつておりますけれども、地方税制というものに対しては、今度の法案は何ら触れておりませんので、御承知おきを願いたい。
  16. 浦口鉄男

    浦口委員 他の委員の質問もありましようから、簡単に一、二点お尋ねしておきます。全国PTA学校に対する寄付金——これは建物施設、いろいろな面があると思いますが、これが大体三百億と推算されているわけで、これが妥当かどうか、われわれはまだ多いというふうにも考えておりますが、一応この三百億を是認するといたしまして、これが建物に対する寄付金も相当ありますし、施設あるいは教職員研究費、いろいろな面にあるわけでりますが、この内訳を、立案者はどういうふうにお考えになつているかということが一つと、それからこのたびの法律案によつて国家がその半分を補償するということになれば、結局寄付金としての形は解消しますが、残る半額は当然何らかの形で地方財政の上に赤字になるか、あるいはそれを免れるためには増税になる、こういうふうにも一応考えられるわけでありますが、その二点について御意見を承りたい。
  17. 若林義孝

    若林委員 数字の上で少し思い違いをなさつておられるようであります。この点数字に関することでありますから、内藤課長から申し上げます。
  18. 内藤誉三郎

    内藤説明員 義務教育に対しますPTA寄付金は、昭和二十四年度の学校財政基本調査によりますと、百六億となつているのであります。その内訳は、四十七億がこの法案で考えております教材費に相当するものであります。その他が教職員研究費、旅費、それから建物修繕費、あるいは六・三建築のために一部の補助金をやつております。それでは教材費につきまして、現在市町村でどの程度負担しているかと申しますと、地方税平衡交付金と合せまして教材費については約七十億程度市町村負担しているのであります。この法案で考えておりますのは、PTA寄付金教材費に相当する寄付金約五十億程度のものを、新たに国庫から負担していただくということになりますので、七十億の上にさらにこの五十億というものが加わるわけでありますから、地方財政現状のままで圧迫しない。PTA寄付金教材費に相当する部分を解消したい、こういう考え方になつているわけであります。
  19. 浦口鉄男

    浦口委員 あと具体的にはまた次の機会に私もよく検討して質問いたすことにいたしまして、最後一つお尋ねいたしたいことは、私これは内閣提出と考えておりましたところが議員提案なつた。そこには実施の面において、文部省その他大蔵省地財委、行政府と立法府の間の意見の一致が見出されない点があるので、国会意思をここに強く推進するという意味合いで、議員立法にされた、こういう政治的な御答弁、私はある程度これを了承するわけです。そこで、これと関連いたしまして、この議員立法について、これは率直に言えば、政府与党自由党議員十五人だけの立法になつているわけです。われわれは何もこれをねたむとか、そういうつまらぬ気持はありませんが、産業教育振興法においても、与党野党を問わず、これが立案者になつてあの法律案が推進されたことは御承知通りである。それ以上に非常に大きな義務教育根本を解決するこの法案が、しかも先ほど私最初に申し上げましたように、義務教育費国庫負担については、少くとも従来の文部委員会においては、与党野党を問わず、文部省といわず、ここ二年間くらいにわたつて、強力に推進して来た過程において、われわれとしましては、そこにどういう政治的に深い理由があるか、それはよくわかりませんが、できれば各派共同提案で出されることが、私はこの法律案重要性からいつても、たいへん意義のあることではなかつたか、こういうふうに考えるわけです。これは政党とか立場とかいうものを超越して、われわれは公平に、冷静に、そういうように考えるわけであります。そこには与党自由党としての、またいろいろな見解もおありと思いますが、その点率直に御解明があれば、たいへんけつこうだと思います。
  20. 若林義孝

    若林委員 浦口委員のお気持は、率直に私認めるのであります。われわれといたしましては、そのまま申してみますと、党内では、これは異論がございまして——各地財委関係あるいは予算関係のものも、全部これによつてつたのでありますが、しかしながら、最後大蔵省との折衝ということになつて提出いたします前日まで、ぎりぎりまでやつたわけであります。この会期は相当延びると私は思いますけれども、しかしながら、法的には会期はもう間近に迫つておるわけであります。これを社会党の松本委員などには事前的に、まとめる案をこしらえておるのだが、なかなかできないので困難をしておる、これがもしできるという余裕があれば、皆さんと相談して、各派共同提案の形で行きたいと思うのだ。また各派におきましても、われわれとおそらくまさるとも劣らぬお気持を持ちまして、この義務教育費国庫負担法というものを骨子として御研究になつておること、また成案を得られておるのを、われわれも手にいたしておるわけであります。しかし、この調整をとるのには、おそらく二週間か三週間は要するのじやないか。改進党におかれましても、相当強力な案を御考究中であつたことも承つております。この調整をするのに、産業教育振興法提案いたしましたときのように、小委員会でも文部委員会の中につくりまして、そうしてやるべきが至当だつたとも思うのでありますけれども、自由党の内部において、この最低限度のものを出すのに相当の困難を感じましたということと、成案ができましたときに相当時日の切迫感がありましたので、おるすではあつたのでありますけれども、了解を得て、とりあえず出させていただくからという気持で出したわけでありまして、決してそれ以外に意図するところはございませんですから、ひとつ特に御了承を願つておきたいと思います。
  21. 浦口鉄男

    浦口委員 これは御答弁があるかないかわかりませんが、最初提案者がおつしやつた、いわゆる大蔵省地財委、その他の行政面とまだ一致しない点があるので、長年の輿論を推進する意味で出された、この点は、私はある程度了承するのでありますが、どうも与党の内部で、いろいろ法案の具体的な内容については、異論は当然あると思いますが、本質についての異論があるということは、どうもわれわれ文部委員会の全体の与党野党の空気から考えましても、ちよつと納得が行かない。まあしかし、この点疑問は疑問として投げかけておくだけでもけつこうだと思います。御答弁があれば伺いたいと思います。なければ、それでけつこうでございます。私一応これで質問を終ります。
  22. 若林義孝

    若林委員 先ほど来ありのままを御説明いたしましたように、おそらく地財委関係の国務大臣としての岡野国務相あたりも、個人の考えから行けば、これに反対気持はないのですが、しかし地財委地方行政その他の関係の長官として、これを表から賛成を表明するということは、きわめて至難な立場にあるのじやないか、こういうように地財委関係の分については思われるのであります。それから大蔵省の方は、地方財政事情というものは、われわれよりも明確に把握しておると思うのです。それは間違つておるかどうかわかりませんけれども、大体地方財政において、東京あたりでダブついておる財政力というものは、この法案で行きますならば、そのままダブつくのにまかせておくことになるわけで、何とかこれを機会に地方財政地方税制というものについての調整をはかりたいという意図も見えるわけです。では、大蔵省として確たる成案を持つておるといえば、各方面においての研究の途上にあるという関係で、これを押しのけて行くというまでの確固たる成案はまだ出ていないというような事柄が、これに全幅的の賛意を表することもできない立場にあるのじやないか。一応この国家意思として、こういう線を強く押し出していただきまして、国会を中心とする政府であるという実を、これによつてひとつ示していただきたいという気持があるのでありまして、言葉ははなはだ不適当でありますけれども、内国方でもやもやしておる案を、議員提案で出して来ることは、奇怪しごくだというようにお思いになりますが、本法案に関しましては、遺憾ながらその気持はあるわけであります。これを打開するための法案である。それから各派共同提案で参ることができなかつたのは、いささかそういう事情に関連いたしておることを御了承願いたいと思います。
  23. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に小林信一君。
  24. 小林信一

    小林(信)委員 この問題をお聞きする前に、内容はもう申し上げませんが、去る九日の委員会のときに、重要なことについて委員長にお願いしてあることがあるのです。何かきようの委員会あたりに、委員長としてはこれに対する御意思が表明されるかと思つたのです。しかし私たちは、あくまでもこの問題は重大な問題であるから、きわめて冷静に、しかも与党議員立場を考えておるわけですが、何かそういうことについて私たちにこの際見通しとか、あるいはこのことについて、近々のうちに委員会を開いて何とかするというような、そういう御表明がしていただけたら、私らはその問題はこれでおくつもりなんですが、委員長にお願いできませんですか。
  25. 竹尾弌

    竹尾委員長 きようの委員会は、義務教育費国庫負担法案につきます質疑ということになつておりますので、この際私から、今小林委員お尋ねに対する御答弁を申し上げるのは、どうかと思つておりますけれども、せつかくのお尋ねでございますから、お答え申したいと思います。  小林委員お尋ねのお気持、それからその内容については、十分私想像はできます。そこで、その点について、実は非常に苦慮しておりますけれども、できるだけ小林委員の御期待に沿い得るようなことも、きわめて近き日に御答弁申し上げたい、こう存じておりまして、せつかく考慮中でありますから、さようひとつ御了承願いたいと思います。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 関連して……。今の問題は、きわめて近いうちにと言われるのですが、何か理事会を開いてやられる御意思はおありですか。
  27. 竹尾弌

    竹尾委員長 そういうことも、実は考えております。
  28. 小林信一

    小林(信)委員 先ほど浦口委員から質問された点につきまして、いろいろ経緯等について、提案者から御説明がめつたのですが、やはり今度の問題につきましては、今御説明なつたように、与党内部におきましても、あるいは政府内部におきましても、いろいろとの問題では錯綜した問題があつたよりですが、これは単にそこだけの問題ではなくて、それから派生して全国のこれに関係するいろいろなところに、いろいろ意見が出ておるわけです。その内容等については、何か政府の中の権限争いとかあるいはそれぞれの立場上の問題で、法案そのものよりも、他の問題でいろいろな意見が出ておるようなわけですが、その中でも、ことに問題になつておるのは、これに反対しようとし、反対させようとするような、きわめて計画的なものまであるわけです。これはやはり提案者におかれ欲しては、相当はつきりしたものを持つて臨んでおられると思いますが、やはりこの機会に、その点を提案者に私ははつきり伺つておきたいのです。そういうためにせん反対というふうなものまで入れまして、私ここで質問いたしますが、一つ意見としては、この法案を出すことによつて教育の民主化を大いに阻害して、再びもとの中央集権的なものになるおそれがあるということが、中央から地方に流布されておつて、このためにたといこの法律ができ上つても、何かそこに支障が起きるようなおそれがあるのですが、この際これについて、提案者はどういう意思を持つておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  29. 若林義孝

    若林委員 この全額国庫負担という案を小林委員などの間でもお考えになつておると思つておるわけですが、この場合は、そこを懸念する必要があろのじやないかと思うのです。私たちも全額国庫負担という案を、一応構想に置いて協議をしたことがございます。そのときの——これを私がここで申し上げていいか悪いかわかりませんが、こうなると、文部省の課長のごときは、命が何ぼあつても足らぬというくらいに、全国から押しかけられて来るわけです。そういう意味において、もし全額国庫負担ということになれば、私はいわゆる中央集権化というものが、非常に懸念されると思うのであります。しかし、法案算定基準その他をお考え願いましたならば、裁量の余地というものはないわけでございまして、大体児童の数に根拠を置いて、すべてのものが処理されて、円滑に行くように考えられておるのでありまして、ここにこの法案の持つておる弱点もあると私は思います。突つ込まれたならば、数だけで根拠をもつて行くということはおかしいじやないか、薄弱じやないかという弱点もあると思いますけれども、しかし全国一万二千に余りますところの各小学校のことでございますから、大体この標準で行くのが妥当であるという線を出したのであります。  それからもう一つ、この中央集権化という事柄に関しましては、われわれはその意図でないということを申し上げるのは、やはりこれは地方におきますところの、教育委員会というものの権限に属することになるのであります。この教育委員会の権限というものは、相当強力なものでありまして、今は各府県と、七十に近い市町村に置かれておるだけでありますけれども、将来これを構想いたしておりますのには、各市町村にも置くという法律が現存しておるわけでありますから、それと勘案いたしますことによつて中央集権化というようなことは、完全に防止されるのじやないかと思つております。  それから私たちの意図しますところのものは、ともすれば独立を機会に、昔の教育の形式に逆もどりするのじやないかということを、われわれ自身も懸念いたしております。これをひとつ防止しなければならぬという意味を、小林委員もお考えになつておるのと同様に、私たちも懸念いたしておるのでありまして、世界の連合国の中に堂々と歩を進めて参ります上において、何に根拠を置いて日本が民主化されておるかということを、外国側に立つて考えるときには、やはりその基礎教育にあると考えるのであります。これは教育形式、制度というものを、どこまでも民主化された行き方に行くべきだという、強い信念に立つておるものでありますが、その点をひとつ御了承を願つておきたいと考えるのであります。  なお、これは事務的にこういう基準法案があつても、中央集権化のおそれがあるというような懸念が、もしありますならば、局長からでも、全然そういうような懸念はないということを御答弁つてもいいのですが、現在の地財委が、千三百億近いところの予算を持つて市町村、知事の上に君臨をいたしております。日銀総裁がローマ法皇だと言われると同じように、法皇という名前をもつて呼ばれておりますが、ややこれに近い、一事務官がこの平衡交付金というものの上に君臨をしておる姿から比べますと、私はこれは中央集権化よりもより民主化された行き方になるのではないか、こう思つておるわけであります。
  30. 田中義男

    田中政府委員 私どもの立場で一言申し上げますが、ただいまもお話がございましたように、すべての基準手続等は、あとう限り法律によつてこれを定めようとしておりますので、専断に流れるようなことはなく、従つて御懸念されているようなことも防げるものと考えております。なお、この法案を実施するために、現在以上に中央集権化する。現在はあたかもそれらについては問題なくて、このことによつて初めて中央集権化するように言われるのは、まことに私ども了解に苦しむところでありまして、私どもは、この法案によつて、現在以上に民主化するものと、実は確信を持つておるのでございます。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 この意見の出たのは、ただいま提案者の御説明なつたようなところから出ておることは、私も承知しておるのですが、やはりこれは従来の役人の頭の切りかえがなされておらない点から出て来るものでありまして、今度のこの法律内容等を伺いましても、そういう頭から考えれば、多分にそういう危険が感ぜられるのであります。私たちは、決してそういうことはない、こうはつきり考えておるのでありますが、しかし今詳しい御説明の中で、なおもつと提案者がしつかりしていただきたいところを、私は指摘したいのであります。それは全額国庫負担であれば、そういうおそれがあるかもしれないかという点であります。しかしこれはもう憲法で、義務教育は無償である、しかも教育の機会均等ということは、大事なことであるということが明示されておるのでありまして、その精神を生かすことが、かえつて中央集権化するというようなことになつたら、これは憲法そのものが、また問題になるわけであります。やはりそれも現在の官僚の頭のきりかえられないところに、そういう懸念が生ずるのでありまして、妥当な財源の配分ということを考えて行けば、全額国庫負担であつても問題はない、こういう信念をもつて行かなければいけないと思うのであります。  次に、問題にされるところは、財源をどこから出すのだというところで、これは地方財政の圧縮になるとか、あるいはそのために他の費用が削られるとか、あるいは新しく税の増額をして、よけいに国民に負担をさせるものであるとかいうようなことを主張して、この問題をいろいろと誤解させようとしておる点があるのでありますが、この点につきまして、この際ひとつ明白にしていただきたいと思います。
  32. 若林義孝

    若林委員 この全額国庫負担云々に関連しまして、私たちこれが生み出されます、成案を得ますまでの過程気持を、ひとつ聞き取つていただきたいと思います。最終の財政的補償を、一体どちらがすべきかということが、一応問題になつたのであります。執行しておるのは地方市町村長である。だから、最終の責任は市町村にあるのであるというような意見も出たわけであります。しかしながら、憲法の保障しておるところは、いわゆる無償であるということをいつておる以上、国家の方に重点があるのではないかというような議論と、二つ出たのでありますが、われわれ立案者気持といたしましては、あくまでも最終の補償というものは国家がすべきである。いわゆる地方の自治体も中央の政府も、自治体は自治体である、政府は政府である。だからどちらでもいいではないかという説を吐いた人もあるわけでありますが、しかし最終の責任は、いわゆる国家が持つべきだという建前から、これは立案をされてあることを、御了承願いたいと思うのであります。  それから、地方税制地方財政の圧迫云々につきましては、先ほど小林委員に対しまして、内藤説明員から御説明申し上げましたように、何らこの法案自体は、地方税制あるいは地方財政に圧迫を加えておりません。現段階において、平衡交付金から算出せられております基礎を法文化しておるにすぎない。それから新たに国庫負担としてここに摘出されましたのは、五十億の教材費ということについてであると思うのでありますが、これは八千何百億という中から、財政的の措置を一つすることにより、国民の負担をより増すことなしに、教育関係の方に振り向けるべく、大蔵当局協力を、ひとつ国会意思を反映していただいてやるべきである、こう承知いたしております。
  33. 小林信一

    小林(信)委員 この問題で一番難点になるのは、そこから生ずる誤解だと思います。この点を逐次具体的な箇条の中で明白にしていただきたいと思うのでありますが、誤解のないように、はつきりしたものをお持ち願いたいと思います。それから、さらに今回の法案が、全国平均のものをすべて土台にする点からして、現在非常に教育水準が高まつておるところも、これと同一視されて、かえつてその水準が低下されるようなことがあるのじやないかというので、やはりこれも一つの応対意見になつておるのでありますが、この点はどういう見解を持つておられますか。
  34. 若林義孝

    若林委員 配分の方法については、その点を十分勘案をいたしまして、別に法律でもつて定めることになつておるわけであります。いずれその法律は、これが通つたあと、これを基礎にして、皆様方の御協賛を得てきめることになつておるのでありますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  35. 小林信一

    小林(信)委員 いろいろ反対意見もあるのですが、またこまかい点はその都度お伺いいたしまして、私は今日は提案者根本的な腹構えというようなものをお伺いしたいと思います。第一条に「義務教育無償の原則に則り」という言葉が明記をされておるのでありますが、これが根本方針となつて制定されておるんじやないかと思うのでありますし、またそうであるべきだと思いますが、しかしあとの方の内容をこまかく伺つてみますと、この義務教育無償の原則というものをすみやかに実現して行きたい。それにはもちろん国家財政とにらみ合せるわけでありますが、しかしそこにあくまでも根拠を暑いて行くべきであると思うのです。中の方をずつと調べてみますと、そういうことは表面的にはうたつておるけれども、実際においては、何とかこの際平衡交付金の中から教育費というものを捻出すればいいのだ、従来半額国庫負担というような制度があつたから、それに復帰すればいいのだという消極的な気持に実はなつておるのじやないかというような感もするのですが、この点のほんとうの腹構えをこの際お話願いたいと思うのです。
  36. 若林義孝

    若林委員 むろん同感であります。先ほど私小林委員の御質問に対して申し述べましたように、相当積極的な案が文部省からは提出されておるわけでありますが、いろいろな過程を経まして、一種の妥協案というようなことに新聞には銘を打たれておりますので、われわれも良心的に考えまして、もう少し何とかならぬものかというくらい譲歩に譲歩をいたしまして、まず橋頭堡を一つ打出して、この法案を元にし、これを改正々々ということで教育費の拡充ということを目ざして行きたい、こう考えておるのであります。  それから、義務教育無償の原則ということにつきましては、いわゆる地方が持つか国が持つかということで、先ほど申したようにいろいろな論があつたわけでありますけれども、最終の補償は国家がすべきであるという原則に立つておるわけで——地方負担いたしますもの、いわゆる義務教育無償の原則の一環であるということは事実であります。地方行政に当つております地方自治体も、とにかく政府である、中央だけのことを政府というのではないという考えから、国家という名前を使つてもいいと思います。そういう意味合いで、とにかく将来地方財政的には関与しないで、中央政府が全額を負担して行くという線にあるいはかわつて行くかもしれませんけれども、しかし現段階においては、地方財政の今の制度に根拠を置いて立案をしたものでございます。
  37. 小林信一

    小林(信)委員 立法の大原則、大方針をお伺いしましたから、それに準じてこれから御質問申し上げます。  まずその次に書いてあります規模と内容の問題ですが「妥当」という言葉を使つて表現されておるところに、いささか問題があると思います。規模とは何をお考えになつておるか、その規模の範囲をこの際御説明願いたいと思います。
  38. 若林義孝

    若林委員 これは昨年来からいわゆる定員定額というものが問題になりまして、行政整理その他で論議が国民の間にほうはいとして起つて、六・三の予算というものを中心として行われたのでありますが、大体われわれの考えておりますものは、建物あるいは教員の数、それから欲をいえば設備というものについて、教育に支障のないように国家としては財政とにらみ合せて増大して行くべきだと思うのでありますけれども、現在の段階においては、お手元に差上げております最低の線を基準として考慮をいたしておりますということを申し上げるほか、しかたがないのであります。しかし、国家財政なり日本の国全体の経済力というものの進展に伴いまして、より教育の費用の獲得ということに邁進いたしたい、こう考えております。
  39. 小林信一

    小林(信)委員 私のお伺いしたのは、今日の教育がどういう内容で成り立つておるかということに対する提案者見解であります。多少それに触れられたようですが、教員の給与はもちろんのこと、ここにも掲げてあります教材費も当然ですが、しかし学校の維持運営費というものもまた重要な要素だと思うのです。それから学校建築の問題、これもやはり中に入つておりますから、当然考えられると思います。そのほか、現在他の法律制定してありますところの、義務教育無償の原則にのつとつて、多少ゆがめられておりますけれども、教科書の無償配付の点、これらもやはり重大な要素だと思うのです。しかも提案者がただいま申しましたように、義務教育の無償という大原則を堅持するという建前である以上は、やはりこれも全部考えられなければならないと思うのです。それらを「妥当」という言葉で制約しようとしておるのですが、これだけのものを摘出してあとのものは除外する、その除外したところを私は実はお聞きしたいわけなんです。つまり、どこの学校に行きましても、備品費、消耗費その他いろいろな費用が必要なんですが、しかし維持運営費というものも、文部省がこの法案を検討する最中に相当浮び上つて来て、われわれはひそかにその実現を期待しておつたわけであります。ところが、この規模と称する中から除外されておる。そういう点をどういうふうにお考えになるか。さらに、できるならば、教科書無償配付の問題もこれに包含して行つたら、この際非常にいいのじやないかというようなことも私は考えておつたのですが、この法案からは除外されておる。その点に対する御見解をお聞きしたい。
  40. 若林義孝

    若林委員 同感であります。小林委員が御構想になつておりますのと、われわれ立案者として構想いたしておりますものとは、かわりはありません。ただ先ほど来申しましたように、もう譲歩を重ねました最小限度のところを、この法案に出して来たのでありまして、この法案制定されることによりまして、今仰せになりました平衡交付金あるいは地方税制の中に織り込まれております維持運営費というもの、あるいは災害によるところの建築補助あるいは児童の災害保険に関するようなもの、ことごとくこの法案を中心といたしまして、将来これを改正に改正をすることによりまして高めて行きたいと考えておるのでありますが、これは最小限度のところで出発をするというにすぎないのであります。  それから、維持運営費なんかも問題になつてつたのに、これも消えておるのじやないかという御説があるように思うのでありますが、このねらいどころは、かつて昭和十五年に制定せられました義務教育費国庫負担法、その基準に基いて、いわばこれは文部省の既得権であつた。それをとにかく平衡交付金制度文部省から地財委の方に移管された。それをまず文部省へ復元をするということであります。これがもし通れば教材費の五十億というものがプラスになる。それから維持運営費も地財委の方で考慮いたして、平衡交付金の中で確保したいという気持が強いのでありますから、せめて建築費の起債というわくを設けまして、施設の十分に行われるようなものを規定したのでございます。われわれとしては、利子の補給をも考えたのでありますけれども、これは折衝に至らず、この法案から脱けておりますのは、はなはだ遺憾に思つております。
  41. 小林信一

    小林(信)委員 どうしてそういうふうなものが除かれたかは、御説明によりましてよくわかりましたが、しかし今後修正に修正を重ねて、今提案者が考えておる大理想を実現するためにこれから努力するというお話で、まことにけつこうでございますが、その重要な骨子となる教育を成り立たせる要件というものをこの際含めておかなければ、またいつの日にか日の目を見ることができるかというような疑念を持つわけです。もちろん相当な御苦心によつてこれまで運びつけられたということは承知しておりますけれども、しかしそうかといつて、私たちとすれば、この際そういう重大要素を取除かれることは、非常に残念でならないわけなんです。ことに教科書というような、児童の学用品の中の一部のものですが、せつかく他の法律で財政的の裏づけもでき、そして一般に歓迎されておるものがあるわけですから、これなどもこの中に含めて、そうして将来教科書も、ああいう二冊程度を配るということでなく、できるだけ無償で配付して行くべきであるということをこの機会にしなかつたならば、これもまた、いつの日に実現するかわからぬというような懸念を持つのであります。もちろんその個々の内容等につきまして、またわれわれはそれぞれ意見を持つのでありますが、その基本の要素として欠けておるのが、私は非常に残念に思うのであります。どんな小さいものでもいいからこの中に入れておくことによつて、順次大きくすることもできるけれども、全然影を失つておると、これをこの中に復活させることは非常に困難じやないか、こういうことを考えるものであります。  そこで、その次の問題に移るわけですが、要するにこういう内容によつて立法の精神を生かして行くことは、つまりは第一条の最後に書かれております「教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする」ということにあるわけでございますが、この教育の機会均等という問題も、やはりせつかくの御提案でありますから、この際大英断をもつてあらゆる不均衡なものを是正していただきたい、私はこう思うのであります。この法案の頭の方に「義務教育」という言葉がつけ加えられておるために、私の意見は矛盾するというふうにお考えになるかもしれませんが、しかし、事が教育の機会均等という大きなものをねらわれる以上、実際今の教育制度の中で取残され、不均衡な状態に置かれておるものを、私はできるだけ生かしてやりたいと思うのであります。それは、いつも問題になるのは、今まで六・三制というものが、いわゆる六上二の問題に終つて、高等学校が取残されておつた建築問題も内容の設備の問題も、また諸制度におきまして、これがいつも冷遇されておる。この問題を何とかすべきだということが、最近この委員会でも幾度か問題になり、議員立法として産業教育振興法がつくられたのも、こういう観点からであります。この点も相当に御研究なつたと思いますが、高等学校義務教育でないからといつて取除くならば、この法がかつて半額国庫負担のあの精神を根拠にして、とにかくこちらに権限をとつて来たというような先ほどの御説明ですが、そうならば、かつて定時制高等学校は、半額ではありませんけれども国庫負担でその運営維持ができたわけで、これを何とか救済される方法はなかつたか。ことに若林委員は、青年教育、勤労青年のための学ぶべき道については、その都度御主張になつてつたわけですが、こういう点についてはお考えにならなかつたか。あるいはこれについては他にこういう計画があみということでありますならば、お話願いたいと思います。とにかく、私としては、こういうものが出てしまえば、当然取残されて冷遇されるのは、若林委員が常に主張されるところの勤労青年のための施設、あるいはそのためのいろいろな援助というようなもので、これがなくなつて来るのじやないかと思うのでありますが、御意見をお願いいたします。
  42. 若林義孝

    若林委員 ことごとく同感でありまして、私はここにすわつておりますが、委員席から私の気持をそのままぶちまけていただくような気持で拝聴いたしたのであります。教科書の無償配付については、これは将来教材費の拡大、増額ということを目途といたして行くならば、容易に行けるのじやないかという気がいたします。  それから高等学校教育あるいは定時制についてどう考えるかということは、これは同感以上でございまして、将来、この義務教育費という、教育の根幹をなします、また大部分を占めております教育費確立ということを第  一段階といたしまして、第二、第三と、高等学校教育あるいは幼稚園の費用その他にまで考慮して行くべきことだと考えておるのでありまして、この法案をもととしまして、委員各位の格別の御協力を得たいと存ずる次第であります。
  43. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 ちよつとお許しを得まして、小林信一委員から、教育の機会均等云々というお話が出ましたので、これに関連してお尋ねしたいと思います。これは実は私も提案者の一人でありますから、若林委員とまつたく同じ立場にあるので、若林君にお聞きするのは、自問自答のようになつておかしいので、若林委員にはお尋ねしませんで、文部当局からお伺いいたしますと申しますのは、小林さんのおつしやる機会均等云々というのは、義務教育と高等学校でありますから、まだしも何とか忍ぶべきところがあると思うのでありますが、私立学校の問題は、義務教育という点におきましてはまつたく同じなんです。ところが、それに対して文部当局は何ら考慮していない。今後これをどういうふうに考えて行くかということです。  それから、立ちましたついでにもう一点伺いたい。六・三制の建築の残部と、この法律との関係いかんということです。またそれに関連いたしまして、雨天体操場等の設備も、まだ非常にたくさん残つておるのでありますが、この法律との関係はどうなつておるのか、この点を文部当局から明確にしていただきたいと思います。
  44. 田中義男

    田中政府委員 私立関係につきましても、お話のように、文部省としては十分考慮しなければならぬのでございまして、御承知のように、特に最近私立学校については、私立学校振興会法等の法律もできまして、文部省としても、それらについてはさらに一層の努力をするはずでございます。  第二点の、六・三制の問題はこの法でどうなるかというお話でございますが、建築の残部についても、いろいろ従来折衝過程はございますが、大蔵当局においても、その残部についてはめんどうを見るという話になつておりますので、文部省としても、この法律とは別個に、当然その実現を期待し、なお努力をするつもりでございます。
  45. 小林信一

    小林(信)委員 長くなりますが、もう二点ほどお伺いして、ほかの方にお譲りしたいと思います。ただいま若林委員から、教科書の問題は、将来教材費に含めて云々というふうなお話があつたのですが、これは文部省の方にもお聞きいたしますが、やはり教材費教材費で、教科書というようなものは——ほかの国の例を考えて行きますと、また日本の国の現状からしてもそうですが、児童の持物、児童がそのために必要なもの、こういうふうなものかやはり別個に考えられて行かなければならぬのじやないかと思います。従つて教科書というようなものは、その他学用品等々を含めて、やはり教材費の中に入れずに、児童の持物というふりなものではつきり区別すべきだと考えております。従つて、せめてこういうふうなものを入れて、この無償の精神をこういうものから促進して行くのだという心構えを持つべきだと思うのですが、文部省意向をひとつお伺いいたします。
  46. 田中義男

    田中政府委員 この問題につきましては、先般の教科書の無償配給の法案を御審議願いました場合にも、ことに参議院においても、いろいろ御議論になつた点でございまして、私どもは、将来はお話のようにこの法案の充実によつて、考えているところを実現するように努めて行きたいと思つておるのでございますが、ただいまのところでは、その過渡期にございまして、今ただちに一方をとりやめて、そうしてこの法案において実現して行こうというような決断がつきませんので、現在のような処置にいたしておるのでございまして、将来の目途としては、お話のような意に沿つて進みたいと考えております。
  47. 小林信一

    小林(信)委員 私のような意見で行つていただくと、若林委員のお考えとはまた違うわけですが、まあ御研究願いたいと思います。  もう一つ文部省の方にお伺いします。先ほど維持運営費の問題をお聞きしたのですが、文部省としてはさしつかえないという考えか、それともやはりこの際金を出しておかなければならぬという考えか、ひとつお伺いいたします。
  48. 田中義男

    田中政府委員 私どもは、当初いろいろそれらの点についても要求もいたし、具体的にも考えておりましたが、いういろいろ折衝過程を考えます場合に、この際十分なことも言つておれないので、まことにやむを得ない措置と考えて本案を見ておるようなわけであります。
  49. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つお伺いしますが、それは第二条に関連するのです。これもやはり大きな根本問題だと思うのですが、要は「二分の一」という数字の問題でございます。私たちは全額国庫負担を考えておるのでありまして、二分の一という数字を非常に遺憾に思うのであります。二分の一を下らないようにするということで、私に言わせれば多少ごまかしたような形になつておると思います。もちろん国家財政というものを考え、そうして提案者の大理想である無償の原則を実現するという意図も一方に持つて数字だと思うのですが、それにしては、やはり何か元の半額国庫負担に返ればいいのではないかという感もここにいたすものであります。できるならば、現在の地方の実情というものを考えて、もつと考慮されるべきものではないか。たとえば、地財委等で地方財政事情等を報告する中に、地方の公務員の給与が、昨年におきましても二百億も足りなかつたというようなことを言つておりますが、その二百億の八〇%は教職員の給与なんです。こういう点を考えてみますと、やはり二分の一でなく、せめて三分の二あるいは七〇%というようなところにまで、この際数字を上げて行く必要があるのではないかと思います。私たちは全額を主張するものでありますが、皆さんの御意思としても、この程度では一歩前進という形にならないということを言わなければならぬのであります。この数字の問題について、御意見を承りたいと思います。
  50. 若林義孝

    若林委員 先ほどからの教科書の問題につきましては、表現の仕方は、ちよつとかわつたかもしれませんが、局長が言われたのと私の意図は、かわりはないと思うのです。この中に教科書を含めた法律になれば、私たちの意図するところが満たされると思つております。  それから、教科書については、いろいろな形式がありまして、たとえて言いますと、備品として教科書を学校に置いておく、そうして年々その補充だけをして行くという考え方もあります。これについても、相当考究いたしておるのでありますが、しかし今のところは、紙の性質その他から、一年使えば二年も三年もは使えないだろうというようなことから、ああいうように新しく与えつばなしということになつたのであります。しかし教科書のことにつきましては、将来重要なる教材として考究すべきではないかと思うのであります。  それから、ただいまの御質問の二分の一ということは、先ほど小林委員からも御質疑があつたのでありますが、現在の地方税制地方財政というものを根幹として基礎に考えて総額の二分の一というのを出したわけであります。地方平衡交付金の配賦状態をながめましたときに、ちようどその算定基礎を見てみますと、平衡交付金の中に、全体としてながめましたときに、二分の一が教育費に当つておるわけであります。だから、それをそのままこの法律に法的の根拠を与えようということになつ理由でございます。なぜいま一歩前進ということをしないのかということは、予算通りました現在の段階におきまして、それをそのまま認めた上に立つて構想をいたしたのにすぎないのであります。しかしそれにいたしましても、非常に遠慮したのでありますけれども、療養教職員、あるいは産前産後の教職員などを含めて、大体この法案のねらうところでも、一万五千人ばかりの増員になるわけでありますので、それだけが前進ということになつておると思うのであります。
  51. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に松本七郎君。
  52. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいま小林委員の御質問で、提案者の基本的な考え方というあは、大体われわれと同じで、これを一つの橋頭偶として、今後教育財政確立をはかつて行こうという意欲を拝聴して、非常に嬉しく思つておりますが、問題はやはりこの案が出て来るまでの過程において、大蔵省なり、あるいは地方自治庁から、相当いろいろな異論が出た、これが私は今後この法律が、はたして橋頭堡たり得るかどうかのわかれ目になると思うのであります。その間、非常に提案者が苦労されて、ここまで持つて来ていただいたということは、非常に感謝いたすのでありますが、そういう建前から、私どもは今後できるだけ御協力して、これをもつといいものにして行きたい。また提案者も、そのつもりでこれを出されておるようでありますから、そういう建前から、もう少しはつきりさせていただきたい点をお伺いいたします。時間もありませんから、こまかい点はまたの機会に譲つて、概略的なことだけお伺いしておきたいと思います。提案理由にもしばしば述べておられますように、国が教育費を補償するようにしたいということを、しばしば言われておるわけですが、先ほどの御答弁にもありましたように、憲法で義務教育の無償を保証しておる。しかし実際にその費用を出すのは、地方の機関であつても、国の機関であつてもいいじやないか、国全体としてこれが保障されればいいじやないかという意見があつたということでありますが、これは当然そういうことが出て来ると思います。ただ問題は、教育の特性と教育の機会均等ということから考えて、いずれが実際に費用を負担するのが妥当かということになれば、若林委員の言われますように、やはり国庫負担するのが妥当じやないか。その点若林委員の御説明では、現状では国の方で責任を持つべきだというお話であつたのです。おそらく若林委員も、その適当だという根本は、教育の機会均等という面から、それが必要なんだという御趣旨じやないかと思つたのですが、その点をもう一度はつきりさせていただきたいと思います。
  53. 若林義孝

    若林委員 松本委員の言われた通りでありまして、特に機会均等という意味から、地方市町村財政力というものは、非常な相違があるわけてありますから、これに基礎を置くというよりも、国家全体から、機会均等の原則に基きまして、国家が最終の補償をすべきであるという意味——大体平衡交付金制度というものは、一面からながめますと、きわめて合理的であります。そういう意味から、教育平衡交付金というような名前をつけてもいいのじやないかというような議論も出たわけでありますが、あくまでも現在の段階基礎といたしました関係上、こういう法案の表現になつたのであります。
  54. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでこの機会均等ということから考えて行きますと、ただいま教育平衡交付金というようなお話もあつたのですが、これはある程度地方の財政がゆたかであつて地方でやつて教育の機会均等が維持できる状態で、なお多少足りないというような場合には、それは教育平衡交付金というような制度でもよかろうと思います。ところが、日本の場合はそこまでも行かないので、どうしてもこれは国庫負担して、そして機会均等を守つて行かなければならぬというのが、日本の実情じやないかと思うのです。そういう実情にありながら、現在の実際の制度というものが、地方分権的にたつている。その制度地方分権化されつつあるときに、ただ形式的に、それなればこそ費用もまた地方で持たなければならぬというのが、地方自治庁あるいはその他の意見のように考えておるのであります。ここに根本の問題がある。そういう意見を持つている人々がら、この法律案なり今後の行き方を考えてみる場合には、あらゆる費用を地方で責任を持つべきだ、しかし現在の日本の地方財政の状態からは、それができないから、暫定的に平衡交付金という制度をやろうという考え方です。これは将来だんだん地方財政がよくなつて来るにつれて、この暫定的な平衡交付金というものはなくしてしまおうというのが、政府の最初立案されたときの考え方のようです。そういう考え方に立つてこの法律案を見ますと、まあまあ今はこういう苦しいときだから、暫定的につくつておくが、それにはできるだけ国庫負担を少くしたもので暫定的にやろう、将来はこういうものをなくして、地方でやるように持つて行きたいというような考え方が根底にあるわけです。ここに問題がある。提案者は、先ほどの教育の機会均等という面を強く打出すことによつて、これはなるべく国庫負担にしたい、できれば全額国庫負担にしたいということまで言われたのです。そのときに提案者は、全額国庫負担にすれば中央集権になるというような、ちよつと疑問的なお言葉もありましたが、私どもはそうは思わないのです。現在教育委員会というようなものができて、教育行政が完全に地方分権化されているときに、金を国庫が全額出したからといつて、中央集権にはならないし、またならせないようにできると思うのです。しかし、それはともかくとして、提案者もそういう意図はおありのようでありますが、ここのところに根本の問題があるので、もしも、先ほど申しましたように、反対論の根拠になつておるものを、この法律を橋頭堡として今後打破つて、これを拡充して行こうという意図があるならば、この法律で、すでにもう少しその線を打出すべきじやないか。たとえば、さつき小林委員の言われましたように、この第一条においても、義務教育というようなものに限らないで、幼稚園なり、あるいは高等学校というようなものまでも、これを含めた構想でやはりやるべきであつたと思います。それから、国庫負担にいたしましても、二分の一というようなところにとどめないで、あるいは八割なり三分の二というような線を打出すのが妥当じやなかろうか。あるいは建築費にいたしましても、地方起債でやるということ自体、考え方がどうであろうか。これはやはり国庫でやるという線を打出すのがほんとうじやなかろうか。そういうふうに一連のものにつながつた基本的な考え方というものの打出し方が——なまぬるいのじやないかという気がするのですが、そういう点で打出そうとされたかどうか。そしてどのような過程でこういうところにおちついたかということを、もう少し明らかにしていただきたいと思います。
  55. 若林義孝

    若林委員 この教育費を、幼稚園から高等学校を含めましたところの、いわゆる教育費全般についても、今御質疑にありましたような気分、意図が、われわれの心持の中にはあつたのでありますし、現在においても、これは持つておるのでありますが、小林委員、浦臼委員から御質疑があつたときに申しましたように、本法案は、現在の地方平衡交付金制度基礎を置いた、地方財政というものに基礎を置いた上にこの立案をしたために、非常に物足らない感をお抱きになるような法案なつたわけでありますが、これを基礎といたしまして、一歩二歩三歩と前進を続けて行く橋頭堡にいたしたいと思うのであります。それから、どういうような国家全体の税制というものになりましようとも、最終の補償というものは国家が持つべきであるということの原則には立つておるのであります。それから教育費国庫負担を補償しますが、あくまでもやはり地方の特異性、自主性というものを認めたところの教育でなければならぬという、これも抹殺しては相ならぬものだと考えるのであります。機会均等であるということは、最低の線をねらうべきでありまして、それ以上は、地方々々独自の教育というものを打立てて行かなければならぬと思うのであります。これは松本委員も同じようなお考えをお持ちであろうと私思うのでありますが、そういう意味において、地方自主性というものを生かして行きたい、画一的な教育にならないようにというところをねらつたのでありまして、なお残余のことにつきましては、本委員会のごときがひとつ中心になつていただきまして、折衝を重ねて行きたい。それから起債だけでは物足らぬ——これはむろん物足らないのでありますが、しかし六・三の残余の、ことに建築の補助費については、なお大蔵省はこの法案とは別に考慮をするということを言明いたしておるのでありまして、この六三が一応おちついたといたしますならば、第二段として、その次にはいわゆる国家の補助施設に対しても、国家の補助というものが委員各位の御協力によりまして拡充して行き、今起債でこれを補つておりますのを、正式な国家補助金の計上ということによつて補助を与えて行く、支出をして行くというような段階に進みたいと思うのでありますが、さしあたり六・三の建築というものについての、今過程にあるときでありまして、これを国家の補助という形式で打出して行くということは、きわめて困難な事情にあつたので、起債ということでこれを埋めて行こうということになつたわけであります。これで満足しておるのではないのでありまして、第二段、第三段と、一応はここで紀債というわくの設定になつておりますけれども、六・三の建築の残余が片づくならば、その方面にも相当国費の支出をして行くべきであるという信念を持つておる次第であります。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 地方財政現状から、こういうところにとどめたという話ですが、地方財政の面から、さらに教育の機会均等という面から考えればこそ、もつと強いものを早く打出す必要があるのではないかというのが、われわれの考え方であります。そこのところをどうお考えですか。
  57. 若林義孝

    若林委員 現在の地方財政というものは、地方税制に根幹を置いて、そして足らないものを平衡交付金で補つておるわけであります。今これを動かしますならば、また税制の改革ということも云々せられて来るに違いない。そこで、この根本にさかのぼるのでありますが、小林浦口委員からの御質疑のときにも申したように、平衡交付金制度自体が、今検討されつつあるときでありまして、地方行政委員会あたりでも、非常に今問題になつておるようでありますので、おそらく今年中に、根本的に地方財政平衡交付金というものは、考慮し直されるのではないか。むしろ前の附加税、あるいは配付税その他のようなものが、そのまま浮び上らないといたしましても、かつこうをかえてその精神が浮び上つて来るのではないか。それから地方税制というものは、県税にいたしましても市町村税にいたしましても、税の筋道の通る分は国税でとられてしまつて、あと非常に根拠の薄弱な、安定性のないところのものに、財政的根拠が置かれておりますので、これも相当考慮し直さなければならぬ段階にあり、現に考慮されつつあるわけであります。そこで、先ほど私の答弁の中にも申しましたように、大蔵省当局としても、強い線をぱつと押し出して来るまでの成案がないごとく、われわれ国会の方といたしましても、今考究中の過程にあるものでありますから、大体現在の制度をこの法律でひとつわくづけをしておいて、そうして別の法律でもつて定めるという中には、根本的な改革を予想せられておりますものを織り込んだ配分の方法を考慮しようというようなことになつておりますので、この地方財政地方税制というものを根本的に、地方財政平衡交付金制度の変革と相まちまして、今松本委員からお述べになりましたような精神で、教育財政確立という方面に進んで行きたいという気持を持つております。
  58. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでわれわれこの法律に対処する態度をきめる場合に、参考に聞いておきたいのですが、そういう基本的な考えに立つて、できるだけいいものをつくろうと努力された結果、こういうものにおちついたのですか、平衡交付金なりあらゆる制度改革とまつて、もう少し強いものにしようというお考えか。あるいは、できればこの機会にもう少し進んだものをつくりたい、できるならばそういうものにしたかつたが、諸般の情勢からやむなくこういうものに押しつけられたか。それとも、むしろ提案者の方から進んで、将来平衡交付金なりあらゆるものとにらみ合せた改革をして行くので、一応この程度のものが妥当だというお考えで出されたのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  59. 若林義孝

    若林委員 仰せの通りでありまして、大体これが最小限度で、これ以上は譲ることはできないのであります。これが最小限度であつて——これは一応譲つたかつこうにはなつておりますけれども、義務教育費全般につきましても、この精神で、ひとつあらゆる税制改革地方財政改革強化ということとにらみ合せまして、勘案をして行きたい、こういう気持であります。
  60. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとこの法案予算措置は、どういうことになつておりますか。
  61. 若林義孝

    若林委員 これは給与費につきましては、お手元にあります算定基準基礎にして行く。それから平衡交付金の中にあるものを算定いたしますときに、本年度は文部大臣と協議をして地方財政委員会できめて行く。それからその給与費というものについての百分の十を教材費として算出をして、その半額を、大体五十億と見ておるのでありますが、それがたまたまそういうパーセンテージになるわけであります。現在の財政を基礎といたしまして、そういう率に出て来るものでありますから、給与費の一割を教材費として見る、こういうようなことになつておるわけであります。だから財政的には、現在地方平衡交付金の中にある給与費として算定せられておるものをこれに浮び上らせ、そうして教材費は別に大蔵省が考慮してくれる、こういうことになつております。
  62. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、もう本年度の予算の範囲で、それは確実に確保できておるのですか。
  63. 若林義孝

    若林委員 ですから、五十億についてのみ大体新しい予算的措置が必要なのであります。それから算定基礎が少しかわつて来ることによつて、一万五千くらいの人員が増加して来る、この分だけ大体十億が増加して来るわけであります。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで、二十七年度はこの法律の適用がないわけですが、どうしてこういうふうなことにされたか。二十七年度も大体この法律に準じたもので、別個に予算的な考慮をするというような行き方が当然じやないかと思いますが……。
  65. 若林義孝

    若林委員 もう二十七年度は予算も通つたあとでございますので、大体その中でまかなうことでありまして、算定基準はこの法律従つて行く。それから三十八年度からは別個に文部省の方へその金がまわされて行く、こういうことになつて、本年度は本年度の現状を認めた上で、算定基準だけをこの法律で明確にして行く、こういうことになつております。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 本年度は通つておるといつても、まだ期間があるのですから、追加予算なり何なりでやろうと思えば、やれるわけであります。そういう交渉はされたのですか。
  67. 若林義孝

    若林委員 ここまで持つて来る努力は、非常なものでありまして、より以上プラスするものを求めて行くということはきわめて困難で、この法案自身をも見送るような困難性があつたわけでありますので、まずこの現状のもとで、すべての教育費を明確にして算定をして行くという最低線をねらつたのであります。
  68. 松本七郎

    松本(七)委員 時間もありませんから、詳細はまた他の質疑応答を通じて補足して行きたいと思いますから、この程度であとは保留いたしたいと思いますが、ただ委員長にお願いしたいのは、今の御答弁によりましても、地方自治庁などとの関係で、相当いろいろな問題が含まれておると思います。特に平衡交付金制度地方制度改革というようなことと、今後この法律はどういうふうに進展して行くかということと、重大な関係がありますので、ひとつ岡野国務大臣を呼んでいただきたいと思います。
  69. 竹尾弌

    竹尾委員長 承知いたしました。
  70. 小林進

    小林(進)委員 議事進行について……。今までずつと委員諸君の質疑応答を承つておりますと、まだこの法案に対する予算関係というものが、財政当局と完全に了解点に達していないという感じを非常に抱くのでありまして、この点をひとつ明確にしていただきませんと、われわれは議事の進行上非常に不便がありますので、願わくはひとつ大蔵大臣を次の機会にこの委員会に御出席を願つて、そこら辺からこの問題を解明して行きたい、これをお願いしたいと思います。
  71. 竹尾弌

    竹尾委員長 それでは次会には岡野国務大臣と大蔵大臣を呼びます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十七分散会