○寺中
政府委員 このたび
政府より
提出しました
図書館法の一部を改正する
法律案についてその
大要を御
説明申しあげます。
図書館法は、
社会教育の
精神に基き、図書館の設置及び運営に関し必要な
事項を定めてその健全な発達をはかり、
国民の
教育と
文化の発展に寄與することを
目的として、去る第七
国会において
制定され、
昭和二十五年
法律第百十八号として同年四月三十日公布、同年七月三十日から施行に
なつたものであります。法施行後現在まで約二年を経過しましたが、この法が
関係者の十年余の要望でもありましたので、
わが国の図書館
関係者に非常な喜びをもたらすと同時に、職務の
重要性を
自覚せしめ、新しい図書館奉仕の
機能確立のために大きな抱負と勇気とを醸成し、着々その実績を示しておりますことは、まことに御同慶にたえないところであります。
法が施行されて以来、短時日の間に、
わが国の図書館がどのような発展の過程を示したかを、具体的にその事例をあげれば、およそ、次の
通りであります。
第一は、図書館の新設及び復旧の増加であります。すなわち、図書館
制度の
確立と相まつて、図書館の
重要性並びに
必要性が痛感されて、新設及び戰災等により復旧計画が促進され、新設のもの約四千館、復旧のもの約十館が数えられるのであります。特に国庫補助金交付の最低基準は、新設及び復旧の標準となり、これらの計画が助長されている事実は、この法の特徴とも申すことができるのであります。
第二は、図書館奉仕
機能の整備であります。すなわち、新しい図書館の
機能は、地域
社会の各種の事情を反映して、動く図書館としての奉仕
活動を基調とするわけで、常に地域住民の実生活に即応して、容易に利用し得る体制を整えることが肝要なのであります。
従つて各地の図書館は、この
精神にのつとつて、閲覧
方法も旧来の出納式を接架式に改め、出納手を経ずして自由に図書の利用ができるような設備を施し、かつ直接図書館を利用できぬ人々のために、移動図書館、即なわち自動車文庫を設け、すでに全国で約十五台の移動図書館が
活動している等各種の新しい図書館奉仕が
進展しつつあるのであります。
第三は、図書館専門
職員の充実であります。すなわち、専門
職員である司書及び司書補の資格
規定に基いて、これらの
職員の資格付與の講習が行われるようにな
つたのでありますが、この講習を契機として、専門
職員の識見技術の向上がはかられるとともに図書館学に関する諸種の研究が旺盛となりまして、おのづから専門
職員の資質が向上されて来たのであります。
文部省としましても、この専門
職員の養成充実が、
わが国図書館発展の
原動力となるものと考え、大いに努力いたしており、このたびの改正もこれに関連するわけでありますが、
昭和二十六
年度においては、すでに約一千二百人の講習を終り、引続き二十七
年度も約二千人の養成講習を予定し、所要の準備を進めているのであります。
以上申し述べた過去二箇年の法
実施の経験から考え、特に重要と思われる専門
職員の充実について、現実に、しかも早急に解決を要する問題が生じて参りましたので、次の
通り現行法の一部を改正し、法の
実施をさらに円滑にし、法の
目的を実現したいと思うのであります。
改正の第一は、法第六條第一項の
規定に基く
文部大臣の
大学委嘱講習を、
教育学部または学芸学部を有する
大学のみに限定せず、広く
大学に委嘱できるように改めようとするものであります。すなわち現在図書館に関する科目が設されている
大学は、東京
大学を初め京都
大学、早稻田
大学及び慶応
大学等、国公
私立大学を含めて、全国で約十六の
大学に及んでおり、それぞれ有能な教授陣容を備えて
開議し、自主的な図書館講習を計画
実施しているところが多いのであります。しかし図書館に関する科目は、ほとんど文学部に属し、しかも大部分
教育学部または学芸学部を有しない
大学が設置している実情なのであります。
従つて、これらの
大学は、
教育学部または学芸学部を有しなくとも、十分
文部大臣の委嘱講習を
実施し得る
大学でありますので、講習総合計画との
関係からも、時宜に適するよう改めたいと思うのであります。この点の改正については、すでに全国
私立大学図書館協議会から
請願がなされ、二十六年五月参議院において、同年七月衆議院においてそれぞれ採択されているものであります。
改正の第二は、法附則第四項の
規定によつて、司書及び司書補の暫定資格が、公
私立図書館、
国立国会図書館並びに
大学附属図書館
職員に與えられているのでありますが、これらの
職員のみならず、
大学以外の
学校図書館
職員で教諭免許状を有する者及び経論免許状を有するものとみなされる者についても、同様に暫定資格を附與することに改めようとするものであります。
すなわち、法
制定の際には、この法が公
私立図書館を対象として
規定していること、また、
国立国会図書館支部上野図書館が
国立国会図書館法第二十
二條の
規定により、できる限りすみやかに東京都に移管され
公立図書館として再発足すること、並びに専門
職員の講習を
大学に委嘱することにより、
大学図書館の果す役割が大きいこと等の事情を勘案して、これらの図書館
職員にそれぞれ暫定資格を付與したものであります。
従つて、その当時においては、
大学以外の
学校図書館
職員については、この法の資格
規定との直接具体的な関連を生ぜず、しかも、
学校教育におけるこの種の
規定を予想して暫定資格を付與しなかつたものであります。しかしながら、これらの当初の事情は、その後再検討すべき余地も生れて参り、さらに、講習の実態から申すと、
大学以外の
学校図書館
職員が暫定資格を得ていないために、せつかく有能な
職員でありながら受講の機会を失する者もあり、なお、暫定資格を獲得して受講を望む者が多いので、図書館相互間の円滑な人事交流の点からも考慮して、他の図書館
職員と同様、法施行の日にさかのぼつて、暫定資格を付與するように改めたいと思うのであります。しかし、
学校図書館が、
学校教育の学習
活動の拠点となる本質的
機能の面から考え、これら
職員のうち、正式教員、つまり
教育職員免許法に
規定する教諭免許状を有する者及び
教育職員免許法施行法に
規定する教諭免許状を有するものとみなされる者のみに、暫定資格を付與することとし、
臨時免許状を有する者は除いたのであります。
以上の二点が、改正の要点でありまして、早急に解決を要する問題なのであります。
図書館法の他の点についても、若干改正を必要とする問題もありますが、
社会教育法を初め他の法令との
関係もあり、なお、十分研究すべき点が多いので、目下検討中であります。右の事情を御了察の上、十分御
審議くだされ、一日も早く御賛成くださるように特にお願いする次第であります。