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1952-03-12 第13回国会 衆議院 文部委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十二日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君    理事 小林 信一君    鹿野 彦吉君       甲木  保君    坂田 道太君       首藤 新八君    圓谷 光衞君       長野 長廣君    水谷  昇君       井出一太郎君    笹森 順造君       小林  進君  出席政府委員         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         文部事務官         (管理局庶務課         長)      福田  繁君         專  門  員 石井  勗君        專  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月十二日  委員渡部義通君辞任につき、その補欠として加  藤充君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月七日  学校給食継続実施等に関する請願(逢澤寛君外  五名紹介)(第一一九八号)  高等学校教職員の待遇に関する請願竹尾弌君  紹介)(第一二四一号)  学校周辺環境淨化等に関する請願若林議孝  君外六名紹介)(第一二四二号)  青年学級法制化に関する請願竹尾弌君紹  介)(第一二四三号)  学校給食法制定に関する請願(多武良哲三君紹  介)(第一二四四号) 同月十日  寒冷地帶学校屋内運動場建設促進に関する  請願渡邊良夫紹介)(第一三二二号)  六・三制教育施設費国庫補助等に関する請願(  世耕弘一紹介)(第一三七八号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  積雪濕冷地帶義務設置学校屋内運動場整備に関  する陳情書  (第八三三号)  公立学校事務職員の身分に関する陳情書  (第八三四号)  産業教育振興法改正に関する陳情書  (第八三五号)  教育職員給与法規改正に関する陳情書  (第八三六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  私立学校振興会法案内閣提出第四九号)     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより開会いたします。  議事日程の順序を変更いたしまして、まず私立学校振興会法案を議題といたします。本法案につきましては、質疑の通告がございます。質疑は通告順によつてこれを許します。若林君。
  3. 若林義孝

    若林委員 長年懸案になつておりました私立学校振興会法案政府の手から提出せられましたことについては、私たち待望久しき法案であつただけに、心からこれを喜ぶものであります。しかし、この法案目的といたしますところは、何と申しましても、財政的基礎がその根幹となるのであります。従来、官学私学との区別が、国家施策の点において、あまりに差異があり、また社会的のこれを見る目も、官学私学とで非常な差異があつたのでありますが、戰後、特に私学が健全なる発展に努力をされまして、私学独特の学風を打立てて行き、なおまた、この私学を出まして社会人なつ人たちの、刮目すべき活動ぶりというものが、いよいよこの私学重要性というものに目を注いで来たのでありまして、おそらく官学私学とは、国家的にこれを見て、差別をつける必要はない、官学と同様に私学をも育成発展せしむべきだという論拠に基いて、私は考えるのであります。こういう意味において、国家国立学校に注ぐところの財政的の規模の大きさと、私学を助長するために支出するところの財政的の規模とは、さほど差別がないようにやらなければならぬという気持が、出なければならぬと考えるのであります。その意味において、私はこの私立学校振興会法というものが基礎となりまして、国家財政の許す限り、というよりも、むしろ私学官学と申しますか、区別なしに、ひとつ助成して行くべきだという気持を持つ一人なんであります。この意味におきまして、私の考えは別として、この法案のねらつておりますところのものも、財政的に私学振興さそうという気持があつたと思うのであります。そういう意味において、この法案には三億九千万円と出ております。今年度の二億六千万円につきましても、相当われわれも微力を盡したつもりでおつたのでありますが、十二億という要求に対して、わずか二億六千万円で、これが加わつて三億九千万円になつておるように思うのでありますが、将来この法案目的といたしますところを、政府はどの辺に置いておられるか。年々これを政府予算の範囲内において増加して行くことになつておると思うのでありますが、これをどのくらいのところに目安をつけておられますかを、一応伺いたいと思います。
  4. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまの御質問は、振興会出資金が非常に少いではないかということだと思いますが、この点につきましては、私どもといたしましても、決して多いとは考えておりません。将来振興会がその目的を十分に果すためには、少くとも三十億程度のものがいるのではないかというふうに考えておるのでございますが、何分財政の都合によりまして、本日までのところでは、二十七年度の予算で二億六千万円、それから二十六年度の貸付金節約額をこれに振り向けましたものが一億三千万円、合せまして三億九千万円ということになつたのでございます。この点につきましては、御節の通り、決して十分とは考えておりませんので、今後機会あるごとに、この出資金増額につきまして、努力いたしたいと考えております。
  5. 若林義孝

    若林委員 ただいまの御説明の三十億というのは、旧債権の十七億五千万円というものを差引いたものですか、これを含めての三十億ですか。
  6. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 昭和二十一年から戰災復旧貸付といたしまして、ただいままで十七億五千万円というものを貸付いたして参つておりますが、この債権をこの出資に含めまして、今日政府出資の全額を考えておるのでございます。先ほど申し上げました三十億と予定いたしておりますうちには、この十七億五千万円というものを含めて考えております。
  7. 若林義孝

    若林委員 この十七億に対する償還期限その他もまだ来ていないと思いますけれども、われわれの考えでは、——これは誤つておるかもしれませんけれども、助成というのか補助というのか、そういう言葉が使えないので、貸与というような形式をとつたようにも思われない節もないではないと思うのでございますけれども、これははつきりとした債権になるわけなんでありますか、それを伺いたいと思います。
  8. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 われわれは債権考えております。
  9. 若林義孝

    若林委員 おそらく戦災の復旧という意味を、多分に持つておると考えるのでありまして、この点は、われわれとして私学関係方たち意見を聞いて後でなければ、この十七億というものについての事柄についても、確たる信念を持つわけに参りません。政府の方では貸したと思つておる、借りた方はもろうたと思つておるというような齟齬があれば、将来に非常に禍根を残すことになるのではないかと思うのであります。これによく似通つております事柄は、生活更生資金として引揚げ団体に渡しましたものは、債権ではあるけれども、大体借りた方はもらつたつもりでおつたのが、急に債権として返済をしなければならぬ時期に当面をしまして、その当初と現在との非常な違いを生じたために、齟齬を来しておる部面があるのであります。その意味において、今この十七億五千万円という旧債権については、検討を要すべきものじやないかと考えます。なお、もしこれを含めたといたしましても、大体これを含めた三十億で、学制その他国家的の施策の変更によつて私学が新学制に伴うために、新施設あるいは設備を施さなければならぬ事柄が多々あると思うのでありますが、それを中に包含をいたしまして考慮して、三十億で大体新しい学制に伴う学校施設設備充実ができる金額であるかないか。また政府は三十億をもつて私学現状と照し合せて完全にこれが遂行できるとお思いになつております数字であるかどうかを、ひとつ伺いたい。
  10. 福田繁

    福田説明員 ただいまの御質問でありますが、もちろん私立学校が、戰後学制改革等によりまして、いろいろ設備施設充実しなければならないというような関係もございまして、その資金をどれくらい要するかということにつきまして、推定ではございますが、検討いたしますと、相当厖大な資金が必要となるわけでございます。おそらく私学関係者の間でも、百億近い金がいるのだというようなことも聞いております。文部省といたしましても、そういつた関係を、一応推定ではありますけれども、いろいろ検討しますと、数十億以上いるというようなことになるわけでございまして、そういつた資金を全部この中に包含して行くということも、さしあたり財政上の理由からいたしまして不可能でございますので、先ほど局長が申されたように、第一の目標を、一応経常的な経費に中心を置きまして、そこから出発をして参りまして、将来だんだんこの振興会を援助して行くということをねらつているわけでございます。
  11. 若林義孝

    若林委員 これは多々ますます弁ずる方だろうと思うのでありまして、実情に即して国家がより強力に財政的の措置を講ずべきことだと思うのであります。  次に、産業教育振興法ができまして、産業教育施設に対しても、将来私立学校にも助成をするということになつておるのでありますが、それとこれとの関連は、これから出すから、産業教育振興に対する費用は削減をしていいじやないかというような論が起るとたいへんだと思うのでありますが、その点をひとつ明確にしていただきたい。
  12. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 産業教育振興法によりまして、貸し付けます分に歩調を合せまして、私学に対しましても、このただいまの金庫から貸し付けるという方針でおります。法律によりますものは、三分の一の補助でございますが、それとは別にこの私学金庫から貸付する考えでおります。
  13. 若林義孝

    若林委員 監督條項というところですが、第六章の監督、それから第七章の罰則ということに関しては、私学団体の御意向を十分受入れられ、また聞かれておるかどうか。私立学校法をつくりますときに、この文字を、非常に私学団体の方からきろうたわけであります。今度は金を借りる方でございますから、やむを得ずこういう字を甘受せられておるとは思うのでありますけれども、この第六章、第七章についての私学団体側の御意見を十分お聞きになり、あるいは御了承の打合せができておるかどうか、これをひとつはつきり伺いたい。
  14. 福田繁

    福田説明員 ただいま六章、七章について御質問がございましたが、この法案を立案するにあたりましては、文部省といたしまして、主として私学団体連合等中心といたしまして、私学関係団体と緊密な協議をいたしました結果、こういう立案ができたわけであります。私立学校法制定の際には、学校そのものに対する監督権、あるいは監督というような文字について、いろいろ議論があつたのでございますが、それはいろいろ御修正をいただきまして訂正をいたしたわけであります。この場合におきましては、学校に対するものでなしに、この振興会という特殊法人に対する監督でございますので、文字についてかれこれいうような意見も出なかつたのであります。第六章、第七章というようなことでなしに、この法案全体について意見が出たものと考えております。
  15. 若林義孝

    若林委員 金を振興会という名で貸すわけでありまして、そういう意味文部大臣監督をする権限が非常に強化されて来ておるのでありますが、大学自治とこの文部大臣監督命令というものとの限界を、はつきりいたしておきませんといかぬと思うのであります。この点、実際学校管理に当られる方たちの気分で申し上げるのが、一番いいと思うのでありますが——われわれはその経験を持つておりませんが、大学自治確立ということが、この文部大臣監督命令ということの関連において、阻害される懸念があるかないか。これは運営その他によつてよほど大学自治大学の自由ということの方へ立ち入るおそれがあるのではないかと思うのでありますが、その点どういうふうにお考えになつておりますか。
  16. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 御説のような点につきましては、十分執行上注意をいたしまして、そのような危険のないように考えるつもりでおります。
  17. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に小林信一君。
  18. 小林信一

    小林(信)委員 第二十二條の「第一條の目的を達するため、左の事業を行う」——この條項に対しまして、こまかいことですが、お聞きいたします。一の方は大体わかるのですが、二の「学校法人に対し、その設置する私立学校教育振興のため行う事業について助成を行うこと。」——これはどういうような面について考えられておるのかお伺いします。
  19. 福田繁

    福田説明員 第二十二條の二号でございます。学校法人に対し、その設置する私立学校教育振興のため行う事業について助成が行われるように書いてございますが、この「私立学校教育振興のため行う」と申しますのは、学校法人は、学校以外にいろいろな事業もやり得るようになつておりますが、その学校法人が直接設置しておりますところの私立学校におきまして、その学校教育振興のため、あるいはいろいろな教育の研究だとか、あるいは設備の購入といつたような面におきまして、教育振興上プラスになるような事業をやるという場合に対しまして、この振興会から助成をいたしますという規定の趣旨でございます。
  20. 小林信一

    小林(信)委員 続いてこの三に「私立学校職員の研修、福利厚生」ということが出ておるのですが、特に福利厚生に対しまして、それはおそらく振興会にゆだねるべきものであると思いますが、何かこれに対しまして政府として考えておられるところがあるかどうか、お聞きしたいのです。というのは、先ほど若林委員の方から、こういう法律が出て来ることが、非常に私立学校側の長年の希望であつたというふうに申されたのですが、この私立学校の要するものは、理事者立場と、もう一つはそこに働く一般教職員立場と二つあつたと思うのです。その教職員立場として、現在の私立学校経済情勢からいつて給与面で非常に惠まれなかつた。しかも一般官立教職員が、共済組合制度の適用を受けて、そのために福利厚生方面相当に助かつておるのに対しまして、私立学校教職員は、そういうような恩惠がなかつた。この法律は、そういう点につきまして、教職員立場から非常にそういうものが期待されておるのじやないかと思いますが、そういう点に対しまして、文部省としてこの法律を出す場合に考えておるかどうか。そうしてこの法律を出して、将来そういうものが文部省として期待できるかどうか、この点もお伺いいたします。
  21. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 私立学校教職員共済の問題につきましては、今回私学振興会法ができますと同時に、その問題も完全に解決したいという気持があつたのでございましたが、種々の関係から、とりあえずその面につきましては、ただいまできております財団法人私学振興会という方が、主といたしましてその共済事業に当る、そういう考え方をいたしております。しかしながら、この特殊法人私学振興会ができましたあかつきにおきましては、この私学振興会の面におきましても、そのような共済事業が十分できるように、今後考慮して行きたいと考えております。今日まで教職員共済の仕事につきましては、われわれといたしましても十分援助の手が及ばなかつたのでございまして、まことに御迷惑をかけておるかと思いますが、今後は先ほど来申し上げましたような方法をもつて、十分その面も補つて行きたいというふうに考えております。
  22. 小林信一

    小林(信)委員 大体官立公立学校先生方に適用されておる共済組合政府として担当する費用というものは、どれくらいか。それから、もしそれと同等に、私立学校先生方に、こういう福利厚生面充実して行くとすれば、どれくらいな負担が必要であるか。そこでおわかりだつたら、お聞きしたい。
  23. 福田繁

    福田説明員 ただいま官公立学校先生方共済組合と、私立共済事業についてのお尋ねでございますが、どれだけ負担しておるか、総額については今ちよつと調べがございませんが、今局長が申されました財団法人私学振興会というものにおきまして、主として実際にやろうとしておりますところの私立学校先生方のための共済組合事業というものをとつてみますと、大体公立学校先生方共済組合の場合と同じように考えておりまして、いろいろな給付などもまつたく同じように考えております。先生方負担におきましても、現在公立学校共済組合におきましては、本人の負担が、俸給を基本にいたしまして俸給の千分の二十九負担いたしております。私立学校共済事業におきましても、大体それに近い千分の二十八程度を、先生方俸給を基準にいたしまして負担していただくというような建前をとつております。大体公立学校先生方共済組合と、ほぼ同じものをつくつて行きたいという趣旨であります。
  24. 小林信一

    小林(信)委員 それに要する費用は、これを官公立学校先生と同じように考えて、政府出資とすれば、大体どれくらいあつたら足りるのか、それをお伺いしたいのです。
  25. 福田繁

    福田説明員 これは私立学校先生方に全部加入してもらうか、あるいは一部分を加入するかということによつて、非常に金額に相違があるのでありますが、任意加入でございますから、ほぼ全体の八割というような計算をいたしますと一億数千万円くらいの金がいると思います。しかしながら、とりあえず財団法人私学振興会におきましてやろうといたしておりますのは、逐次この加入者をふやして行くという計画に基いて、まず初年度におきましては、金額といたしまして大体八千八百万円程度ということで計画をいたしております。
  26. 小林信一

    小林(信)委員 逐次加入者をふやして行くというようなお話ですが、それはやはり私立学校先生方が、実際に要望しておるところですか。私たちが想像するところでは、だれでも加入できるのだというようなことにすれば、全員が加入すると思うのですが、私立学校先生の中には、すぐに加入する意向のない人があるのですか。
  27. 福田繁

    福田説明員 おいおいこの事業内容はつきりいたしますと、相当加入者がふえて参る見込みであります。ただいま加入申込みの来ておりますのは、大体一万一千程度と思つております。私立学校教職員の全体数から申しますと非常に少いのでありますが、まず初年度はその程度から出発いたしまして、逐次ふやして行きたい、こういうような計画でございます。
  28. 小林信一

    小林(信)委員 その辺、われわれは実際を知らぬから、なかなか理解ができないのですが、やはり予算関係でそういうふうに一般希望者をどんどん入れて行くことができないようなことになれば、これは私立学校先生方にとつて、非常に不幸である。そういうことは、予算的に相当考慮されなければならぬものだと私は思うのです。そこで第二十二條の一項の問題等考え、それから二項に対しまして、私はただいま御説明を受けたのですが——現在どの程度私立学校要望があるのかわかりませんが、この事業の業の内容から考えてみまして、さしあたつて相当の金がなければ、私学振興会というものは形式的なものになつて、実質的にその振興をはかることができないのじやないかと思うのです。ただいま若林委員質問の中でお答えがあつたのですが、私学施設の面で要望するものが百億もあるとか、あるいはその他施設充実等で何十億というような要望があるよいうような御説明があつたのですが、やはりここで三億九千万円というような金で出発させることは、非常に形式的なものであつて、真に私立学校現状考えておらぬというふうに考えられるのですが、政府としては三億九千万円で、一応こういう内容が達せられるというふうにお考えになつておるのですか、重ねてお伺いいたします。
  29. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 出資金の額の問題につきましては、先ほど御質問がございましてお答えいたしたのでございますが、われわれもこの現金出資が三億九千万円、債権出資が十七億五千万円というものに、決して満足しておるものではございません。今後機会あるごとにこの出資増額について努力をいたして参りたいと考えております。
  30. 小林信一

    小林(信)委員 政府は前に貸しておるところの十七億五千万円というものを非常に強調されるのですが、今日の私学実情からして、とうてい振興会業務の方にまわすことはできない状態にあると思うのです。私学立場とすれば、幾らでも出してくれればいいというような、非常に窮迫した立場にあるので、あるいはこれをもつても満足されるかもしれませんけれども、先ほど若林委員がおつしやつたように、私学官学も、現実においては差はな  いのだ。やはり積極的に私立学校法のあの精神からして、国庫相当心配してやらなければ、そこに働く人たちも、そこへ行つて勉強する人たちも、同じ憲法の精神に基いた教育機会均等ということは成り立たないと考えられるのです。三億九千万円というのは、どういうふうに使われるか知らぬけれども、私はただいまお伺いして、非常に心配になつておるわけであります。そこで今度はこれに対する経営の面からお伺いするのでありますが、この内容を見ただけでも、理事者側と、そこに働く教職員立場と、両方の面があると思います。まず第一番に、先ほど局長さんの御説明にありました財団法人私学振興会というものが現にあるのですが、これとどういう関係にこの振興会を持つて行かれるのか。そういう点につきまして、あらかじめ政府考えておる点がありましたら、お伺いしたいと思います。
  31. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 二十六年度に成立いたしました財団法人私学振興会によりまして、私学経営補助並びに共済事業をするということでございました。ただいま特殊法人私学振興会が成立いたしますれば、私学経営補助という面は、もつぱら特殊法人に依存いたしまして、財団法人私学振興会の方では、もつぱら共済事業をやるというふうに考えておりますので、従いまして、財団法人私学振興会の名称を変更いたしまして、財団法人教職員互助会というような名前にいたしまして、教職員共済事業をいたしたいと考えております。
  32. 小林信一

    小林(信)委員 そうしますと、現存する一つの会の中へ八千八百万円というふうな金を政府からただやるだけで、その運営とか機構とかいう問題につきましては、一切既成のものに依存する形をとられるのですか。
  33. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 財団法人私学振興会に対しまして、ただ八千八百万円の金を流すというだけではございませんので、この特殊法人私学振興会の面におきましても、財団法人私学振興会に対しまして、共済事業を援助するという考えを持つております。
  34. 小林信一

    小林(信)委員 そこで問題になりますのは、こういう教職員福利厚生の問題でありますので、相当教職員代表というふうなものの意見が、その運営の中に申し入れられるような形をとることが必要だと思うのです。それはこの振興会そのものの方に、そういう制度もあるわけでありますが、そういうことが考慮されておるかどうか。それからさらに、そういうふうに移管される組織の中にも、受益者立場からして代表が出るような機構に、政府は考慮されるのかどうか。
  35. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 この役員の問題でございますが、それに私学意向が十分反映するように構成してもらいたいという御意見だと思うのでございますが、われわれといたしましても、その点は十分に考えまして、ただいまのところでは評議員会私学関係者に御参加願いまして、そこで十分御意見を反映していただく。業務執行いたしまする理事諸君につきましては、これは原則といたしまして教職員関係者を加えないという考えを持つておりますが、しかしながら、業務担当に適当な人が得られますれば、文部大臣の認可によりまして、兼務の形でもつて理事を加えるという程度考えております。
  36. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、役員の方には教職員は入れない、これを原則とする。それから二十條にあります評議員の選考の場合には、ここに「私立学校関係者」とありますが、これは理事者側からも、あるいは教職員立場からも出す、こういうお考えなのですか。
  37. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 そういうことでございます。その教職員関係者という中には、私立学校関係者ももちろん入るわけでございます。
  38. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に笹森順造君。
  39. 笹森順造

    ○笹森委員 この私立学校振興会法案が出まして、私たち日本の教育を担当しておる者は、私学振興に関して、こういうことが実現することを、多年希望して参つたのでありまするが、いよいよこれが発足するにあたりまして、その実行を、できるならば当初から理想に近いところに進めて行くための希望を持つて、二、三お尋ねをしたいと思います。憲法が成立されましたときに、私立学校が公の法律の支配を受けるものであるかないかというような問題が起つて国家補助助成等のらち外に置かれるがごとき議論の起つたこともないでもありませんが、幸いにして、その後、この私学の担当しております仕事も、公共的な国家的な仕事をするのであるという教育事業の本質から考えて、この法案も、そういう精神で立案されておるように私ども了解をいたします。第一條に、この私学振興会自体が、私立学校経営に関して必要な貸付をする、あるいは助成をする、あるいはまた援助に必要な事業を行うということを明確にしておりますことは、私が今申し上げましたように、私立学校に対する助成国家立場で今後ともやるに何らさしつかえがないという確信のもとに御発議になつたと思いますが、蛇足のようでありまするけれども、文部当局のはつきりとしたそれに対する確信をもう一度伺つておきたいと思います。
  40. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 私学関係に対しまして、国が補助し得るというはつきりした確信のもとに、この法律案は考えております。
  41. 笹森順造

    ○笹森委員 そこで先ほど来、せつかく局長も、できるだけ私立学校に対しても、公立学校あるいは国立の学校と同様にこれを助成して行くべきだというような態度を表明されたわけでありますが、実際の問題になりますと、この取扱い方が、せつかく今ここに発足いたしましても、先ほど来ほかの同僚委員からも御発言がありましたように、私どもは、なおただしておかなければならぬ点が多々ある。と申しまするのは、このたびは大体三十億をねらいとしておる、しかし百億を必要とするであろうということは、文部当局においてもそれを聞き及んでおる。できるならばそうしたい、しかし今なかなかそうは行かない。そこで、今まで私立学校政府から戰災、震災等で受けておりましたこれらの復旧に関するいろいろな費用を、国家債権考えて、そうしてこれをこの振興会に継承させる、こういうことになつておるのでありますが、こまかいようでありまするけれども、ここに出ております二十七年度の予算できめられました額のほかに、この債権から二十七年度のうちに入つて来ると思われる額の予想についての御発表を願います。
  42. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 二十七年度だけでは百二十七万円ほどでございます。これが二十八年度になりますと八百二十七万円、ずつと参りまして昭和三十二年になりますと、一億一千九百七十九万円ということになりまして、これからあとはずつとこの額が毎年入つて参ります。
  43. 笹森順造

    ○笹森委員 結局するところ、この十七億という金は、長い年度のうちに入つて来るので、なかなかすぐ入つて来ない。そうすると、大体最初の年度において四億足らずということになるわけでありますが、この法律が成立いたしますると、これに関連してこれからいろいろな便益を受ける私立学校の数の予想は、今幾つでありますか、お尋ねいたします。
  44. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいま幼稚園まで入れまして、三千五百程度でございます。
  45. 笹森順造

    ○笹森委員 そういたしますると、大体胸算にしてみますると、まあ平均にはむろん行かぬでありましようが、十万そこそこの金になりはせぬかと思うわけであります。それは、ある学校はすぐに恩恵を受けないでありましようけれども、平均してもずいぶん数が多い。あるいは三千五百が四千になるかもしれない。そうすると、わずかばかりのことにしかなりませんので、先ほど来同僚委員から御発言がありましたこれらの私立学校が、官公立学校とやや近いまでの整備をするために、国家考え助成をするならば、そういうごくわずかなことであつたのでは、このせつかくできた法案が、目的を達しがたい。そこで、できるだけすみやかにこのことが実現するようにしなければならぬと思う。「予算に定める金額の範囲内において」ということを、第五條にうたつてあるようでありますが、これはどうしても、今政府委員が発言されましたように、強力に進めて行くように、私どもは要望するのであります。  それについて、なお尋ねておきたいことは、実は先ほども若林委員から御発言がありましたが、受けた方はもらつたと思つておつた。私どももそれを開いて、そういう印象を受けていた。ところが、政府債権だと言う。従来この問題ばかりでなくして、いろいろな政府出資というものは、完全にこれが償還になるという例が非常に少い。またこれが非常に困難である。今まで数億あるいは数十億、あるいはもつと大きな数百億の金さえも、遂に払われずにおしまいになつたという例を私どもよく知つておる。特に利益を伴わない教育事業のために、国家がかつて出資したものを、今度再び債権だとされて払い返せということは、非常にむずかしいことだと思う。これがそのまま新しい法律によつてこの振興会に継承せられないものだとしたならば、どういう結果になつておつたかということを想像しますと、償還の見込みがないということまで、私ども実は憂えているのです。それは、ほかの利益を伴うものに対する国家出資に対しての経験から、そういうことを憂える。文部省でこういうことを立案された場合に、はたしてそれが百パーセントと行かなくても、相当額まで、この振興会にやらせるとそれが入るだろうというようなことを考えたのか、あるいはまたそういうことを考えずに、ただ法案をつくるときに、ほかに方法がないからこうしたとか、こういうことについて、どういう見当をつけてやつたのか。三十年のうちにこの十七億が全部入り得るというようなつもりでやつたのか。その気持を聞かなければ、せつかくここにこれをいただいても、結果が画餅に帰するようなことになつてはいかぬから、その辺のことを、もう少し素直にお話願いたいと思います。
  46. 福田繁

    福田説明員 お話のように、戰災復旧貸付金につきましては、私立学校関係者の間に、いろいろな関係から、もらつたのだというような意向が確かにあると思うのであります。しかしながら、政府といたしましては、かつての震災貸付金と同様に、これを貸付金の契約にいたしまして、必要な担保をとつたりなにかいたしておるわけでありまして、現にかつての震災復旧貸付金につきましても、額は小さいのでございますが、年々償還されております。この十七億五千万円の債権につきましても、学校経営状態によりまして、あるいは不良貸付というような関係も生じまして、償還できない分もあると思いますけれども、災害その他によつて特別な打撃を受けたというような学校につきましては、免除なりあるいは貸付條件の変更というような措置をとり得るようにいたしておりますので、全額が三十年の間返るということは、困難かとも思いますけれども、しかし、そういつた正規の貸付につきましては、猶予條件等を考慮いたしますと、相当つて来るのじやないか、こういうぐあいに考えて、この出資に充てたわけであります。
  47. 笹森順造

    ○笹森委員 一番先に、この法案をつくるにあたつて政府私立学校助成することに確信があるかということを聞いたのは、今の問題に関係があるからであります。最初戰災学校に金を貸した当時は、内外のいろいろな関係から、その辺が明確になつていなかつた。そこで私立学校助成はしたいのだが、その当時の法の解釈、あるいは運営上、いろいろと考慮しなければならぬ点があつたから、一時そうした方法をとつてつたのだが、実はこれはあとでやるのだというようなことを、以心伝心の間に、受ける方ではそういうぐあいに考えておつた向きがあるのです。そういういきさつも、この運営上考慮しなければならぬ。今、償還を免除しなければならぬような実情に陷つている学校は、相当あると思う。それを債権であるかのごとく考えて、この振興会がどこまでもそれをとるというようなことになると、非常に支障を来す面が多かろうと思うわけです。そこで債権振興会の方に移つたと考えて一応額面では、ここにある十七億幾らというものが与えられているということになるならば、第五條の三項に「その債権の額に相当する額は、政府から振興会に対して出資されたものとする、」とありますが、少くともこれは額面通りのものということが、あり得るようにしてもらわなければならぬ。しかし実際の運用は、御答弁がありましたように、あるパーセンテージはこちらの方に返つて来ないということがあり得ると思う。であるならば、特にその際、今後予算の範囲内においていろいろ定める場合には、そういうものもカバーして行かなければならぬことになりますので、そういう免除さるべきものの適当なりと考えられるものは、特に将来の予算案においてこれをカバーするような道も何か考えるべきだという理論を、皆様方の腹のうちに持つておるかどうか。こまかい点でありますが、これを聞いておきたいと思います。
  48. 福田繁

    福田説明員 ただいまの点でございますが、将来債権の免除によりまして資本金から落ちて行くようなものについて、何か考えがあるかというようなお尋ねでございますが、先ほど局長からも申されましたように、一つにおきましては、将来この振興会の資本金を政府出資によりまして増額して行くということは、文部省としても大いに努力いたしたいと考えておりますし、またこの振興会自体の運営としましても、毎年度償還されるべき貸付金の元本が一定しておりますので、この振興会の運用利益の中からその貸付元本に見合うだけのものを特別積立金として積み立てて行き、その十七億五千万円の元本はできるだけ維持して行きたい、こういうような考え方でこの法案を立案いたしておりますので、そうした特別積立金によつて資金の減少を防いで行くというような措置を、あわせて講じておるような次第でございます。
  49. 笹森順造

    ○笹森委員 この法案法律になりました場合に、実際にこの精神を実現することのできるように、ひとつこの法案を提出した文部当局においても、考えていただきたいし、われわれとしても、そういうことに将来努力して行つて、この目的を十分達するようにしたいと思つております。  次に、先ほどもちよつと小林委員からお触れになりましたが、十三條の規定であります。これを運営するについては、どうしてもやはり実際に運営する人がそこに入つて、この振興会運営が円満に、しかも効率的にされなければならぬことは言うまでもない。そこで第十三條には「学識経験を有する者のうちから」とありまして、評議員の規定のように、私立学校関係者を加えるということが明文にうたつてない。原則としては加えないということであるが、しかし、さしつかえないときには加えようとする考えなのであります。実際文部大臣が任命する場合に、そういうことになるわけであろうと思いますが、原則として加えないということをここで言明されることになりますと、これがまた支障を来すのであつて、「学識経験を有する者」と特に十三條にあつて、評議員の方にはさらに「私立学校関係者」というものを加えておる。これを加えておらない十三條は、全部排除するという否定的な意思でないということがはつきりしておると、これはけつこうですが、明確にするために、もう一度聞いておきたいのです。これは私立学校関係者をまつたく排除するという否定的な意味であるのか、そうでなくて書いてはおらぬけれども、運用上文部大臣は任命し得るということであるのか、もう一ぺんはつきりさせておいていただきたいと思います。
  50. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 私学振興会は、私立学校経営に必要な資金貸付その他の事業を行うものでありまして、私立学校関係者の公平な意見を反映せしめる必要を認めまして、評議員会には私学関係者を加える建前でおるのでございます、従いまして、評議員会意見を尊重しまして、理事は公正な業務の執行を行うべきでありまして、役員のうちに私学関係者を加えるということは、やはり利益代表的な存在と見られるおそれがあるのではないかというふうに考えますので、原則といたしまして、私学関係者は加えないという方がいいじあないか。しかしながら振興会運営上、広く適材を求めて役員とする必要がありますので、役員につきましては、文部大臣の許可を受けまして、兼職の者を認め得るようになつておりますから、私学関係者でも、真に適材でありますれば役員につくことができる、かように考えております。
  51. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまの説明でわかつたのでありますが、第十四條にも、振興会と会長、理事長または理事との利益が相反する事項については代表権を有しないという考慮も払われておりますので、ごく公明正大な人であつて、しかも私学全体を代表し得るような人物があるならば、これは加えるのだというお話であるならば、私どもは今のお答えについて了承することができるわけであります。  その次にお尋ねしておきたいことは、ただいまお話のありました第二十條の評議員のことであります。もう一度聞いておきたいことは、「私立学校関係者のうちから」とありますが、大体この比率ということをお考えになつておるかどうか。その数が何名であるか知りませんけれども、比率についての大体の考えはあるかないか。それによつて影響するところは相当大きいと思いますので、考えておらないならば考えておらない、考えておるなら考えておるということを、お答えを願いたいと思います。
  52. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 先ほど評議員には私学関係者を加えるということを申し上げたのでございますが、その比率はどの程度が適当でありますか、非常にむずかしい問題でございます。一応われわれがざつと考えおりますところでは、少くとも半数以下はやはり私学関係者を加えて公正な意見を反映させる、かような方針を持つております。
  53. 笹森順造

    ○笹森委員 半数まで行きましたから、以上という返事が出るかと思いましたが、以下という返事で、私はちよつと以外に思つたのです。実は過半数ということになれば、すこぶるいいじやないかと思う。この運営をいたしまする理事者は、ただいまお話の通りでありますから、やはりこれはどこを考えるかというと、私学のためなのです。これは意見なつたり希望になつて質問になりませんから、あとでまた議論をいたしますが、しかし、大体以下というと、一へまで以下になりますから、そのお答えで、政府の意図するところは明確になつたと思います。  その次に、これは先ほど触れた問題でありますが、小林委員からもお話のありました第二十二條の規定について、もう少しお尋ねしておきたいと思います。それはさつきの政府当局の答弁で大分了解したのでありますが、なおお尋ねしておきたいことは、財団法人私学振興会との関係で、教職員の福利に関する問題は、別個のように、なぜかそこがはつきりしておらぬようでありますけれども、将来これを一本にして、この振興会の中に入れて、大きな組織の中で運営するというような構想でもあるのかないのか。依然としてこれは二本建で行くつもりであるか。これは将来いろいろと私どもが法を考え意味で必要だと思いますので、今どう考えておるか、もし考えがあるならば、その点お答えを願います。
  54. 福田繁

    福田説明員 教職員共済事業につきましては、文部省としては、当初この法案と一緒に考えたいというような構想で参つたのでありますが、いろいろな予算の折衝の過程から申しまして、そういう事情がだめになりましたので、一応別個に切り離しまして、財団法人で共済事業を行うというようなはめになつたのでございます。一般の健康保險等の問題が解決いたしますれば、将来立法処置も考え得られると思いますので、そういう問題と関連しまして、将来の研究問題にしたいと考えます。
  55. 笹森順造

    ○笹森委員 予算的ないろいろな考慮から、御苦心のあつたことは、よくわかるのであります。ただ私がここでなお一点お尋ねしておきたいことは、この二十二條の第三号の中の「福利厚生」ということは、その意味を広げて行くならば、共済問題、もつと明確に言うならば、退職教員の退職金であるとか、恩給であるとかというようなことまでも、これはこの法律をそのままにしておいても、将来予算的に措置ができるならば、そういう適用が、この第三号におけるところの「施設等」という文字の「等」という字の中で、非常に広い意味で含まれてできるものであるかどうかということを、ひとつつておきたいのであります。「等」というのは、非常に広い意味がありますので、今お答えができるかできないか知りませんが、将来実際に力ができたならば、そういうことで、この法律を改正しなくてもやり得る考えであるかどうかを、お尋ねしたいと思います。
  56. 福田繁

    福田説明員 この三号の福利厚生等を行います事業でございますが、これには、現在私立学校団体としてありますところの中等学校の恩給財団とか、あるいは今開始されておりますところの短期給付の共済事業、そういうものを一応含む予定でございます。ただ三号に「施設等」とありますが、これは解釈上いろいろ疑問がおありと思いますけれども、大体そういう施設等を中心にしましてこの法律の対象にして行きたい、こういうぐあいに考えております。
  57. 笹森順造

    ○笹森委員 質問を終ります。
  58. 竹尾弌

  59. 井出一太郎

    ○井出委員 初年度における事業計画書、あるいはもくろみ書、こういうものはございますか。
  60. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 一応つくつてございます。
  61. 井出一太郎

    ○井出委員 それは資料としてちようだいできますか。
  62. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 承知いたしました。
  63. 井出一太郎

    ○井出委員 その資料を拝見した上で申し上げたいとは思いますが、とりあえずお聞きしておきたいことは、貸付の利子は、およそどの程度になつておるかという問題であります。もちろん、いわゆる市中金融のコマーシャル・ベースというわけでもないでしようが、およその見当、それは貸付内容によつては利率が違うのであるか、この点をあわせ承つておきたいと思います。
  64. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 二十七年度の振興会事業計画でございますが、何分現金出資額が少いものでございますので、助成事業までは手が及ばないと思つております。とりあえずは、経営費の貸付だけをやりたい。従いまして、その金は政府出資金の約三億九千万円、その利率は六分五厘ないし七分程度考えております。貸付期間は、一箇年の短期を一応考えております。
  65. 井出一太郎

    ○井出委員 政府出資をもつてまかなうことになつておりますが、借入金をする場合も、三十五條ですかありますが、これはどういうふうな構想になつていますか。その場合の借入先というようなものは、何を予想しておられるか、これをお聞きしたい。
  66. 福田繁

    福田説明員 三十五條の借入金でございますが、今局長が申しましたように、この振興会としては、なるべく低利で私立学校貸付を行いたい、こういう趣旨でありますので、一般の金融ベースにおきますところの利息でほかから借入れまして、それを振興会からさらに私立学校に貸すということになりますと、採算上合わないわけであります。従つて、そういつた事業資金の借入れは、一応考えていないのでございます。しかし、これはいろいろな関係で、一定金額以下のもの、たとえば、事務費に振り当てるために銀行等から借入金をやるというようなこと、またそれが年度内に償還できるような一時的なものであればよろしいのでありますが、その他後年度にわたるような借入金につきましては、一応文部大臣の認可を受けて借入を行う、こういう趣旨でこの三十五條の規定を置いたのでございます。
  67. 井出一太郎

    ○井出委員 そうしますと、たとえば資金運用部の資金というようなものを比較的低利で借りて、六分五厘ないし七分で運用する、こういうことは考えておられますか。
  68. 福田繁

    福田説明員 将来におきましては、そういうことも考え得ると思いますが、ただいまのところでは、その予定は非常に困難だと思います。
  69. 井出一太郎

    ○井出委員 日本の場合は、民間の資金教育に投入せられるということは、比較的少いと思いますが、たとえばロックフェラーの財団というふうなものでも、かりに日本にできたというような場合に、そういう資金がこの機関に入るというようなことは、考えておられませんか。
  70. 福田繁

    福田説明員 そういつた場合の寄付金であれば、受け得ると思います。
  71. 井出一太郎

    ○井出委員 さらに、この資金の運用の範囲を広く考えるという意味で、この機関が一種の金融債のようなものを、政府保証の形で出す、こういうふうな構想はございませんか。
  72. 福田繁

    福田説明員 債券の発行でございますが、これは一般の財政金融の関係から、あるいはまたその消化の点から考えまして、債券の発行は非常に困難だと考えております。
  73. 井出一太郎

    ○井出委員 第五條の四項ですか、必要があるときは、その資本金を増加することができる、こうございますが、これはもちろん政府予算の中からこれを期待する以外にはないと思います。そういう場合、この振興会のイニシアチーヴにおいて、資本金を増加するということが、かりに先行しましても、予算その他で非常な制約を受ける、こういう支障をどう考えておりますか。
  74. 福田繁

    福田説明員 四項の規定は、振興会といたしまして増資の必要のある場合におきましては、文部大臣の認可を受けるという規定でございますが、この振興会自体の建前といたしましては、なるべく政府出資という建前からいたしまして、振興会で資本金を増加するというような場合におきましては、政府はその予算に定める金額の範囲内において、振興会にこれを出資するというような建前をとるのでございまして、もしこの予算上、そういつた金がとれなければ、政府としては資本の増加はできない。振興会自体としては、自発的に、また別の方法で資本金の増加というものは考え得るわけであります。
  75. 井出一太郎

    ○井出委員 この団体が、どうも文部省の一種の外郭団体になりそうな感じがいたすのでありますが、その場合、厖大なる職員組織を持たれたり、あるいはこれが官僚の姥捨山になるというようなことであつては、本来の目的が非常に阻害されると思います。役員の構成は、法文の中にうたつてありますけれども、職員の組織は、およそどんな見当の腹案を持つておられるか、これを伺つておきたい。
  76. 福田繁

    福田説明員 職員につきましては、振興会がみずからの運用によりまして利益をあげで、その利益によつてまかなうという建前をとつております関係上、あまり多数の職員は置けないわけでございます。文部省としてまず考えられますのは、二十名以下だと考えております。
  77. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に小林進君。
  78. 小林進

    小林(進)委員 御質問いたしますが、大体この私学振興会法案を通じて感ぜられることは、私学のために、こうした援助、補助助成の道が開けたことは、幸いでありますが、わずかな金を補助するというその恩典のために、どうも極端に文部大臣、ということは、結局文部省でありますが、その監督を受けて、私学の特質が失われるのではないか、こういう感じを、私どもは強く受けるのであります。金はもらいたいが、そのためには私学の特質が非常に失われる、こういうことを痛感するのでありまして、その考えでこの條文を拜見いたしておりますと、至るところに文部大臣の認可、許可、あるいは監督命令、あるいは検査、こういう一連の非常に強い線が延びておりますので、金は貸すけれども、私学の特質は殺さないというような、そうした寛大な條文が一つも見えないのであります。この法案をおつくりになるときに、何かそういう点を考慮された條文や形式がありますかどうか、あらかじめそれをお伺いしておきます。
  79. 福田繁

    福田説明員 ただいまおつしやいました御説の通りに、文部省考えておるのでございまして、私立学校の自立性なり伝統というものを生かして行くためには——どうしても政府機関におきまして貸付金とか、あるいは補助金を出すということにおきましては、ある特定の監督がつきやすいのでございます。従つて私立学校関係者におきましても、従来そういつた方式でなしに、私立学校助成ができる方法を研究いたして参つたのでございますが、文部省としましては、政府におきまして直接私立学校助成をするということよりも、こういつた特殊な法人によりまして助成を行いますれば、その法人からは、私立学校に対する監督は全然ないわけでございまして、御説のような私立学校の自立性なり、あるいは伝統を生かし得る点におきましては、従来よりも数段まさつておると考えております。そういつた関係上、学校振興会との関係におきましては、何ら監督関係はないのでございます。しかしながら、この振興会自体を考えますと、これはこうした特殊な業務を行いますために、また政府が全額出資という建前から、振興会自体に対するところの文部大臣監督というものは、これは一般の特殊法人と同様に考えて、こうした監督事項の規定が置かれたわけでございます。
  80. 小林進

    小林(進)委員 今の御説明によりますと、直接文部省監督あるいは貸付をやらないから、何か非常に自由を与えられておるようでありますが、しかし私は、振興会を通じて、間接の統制あるいは監督が行われるということを懸念しておる、こういうことを申し上げたのでありまして、ちようどアメリカが日本を占領しておると同じであります。日本が中国に駐屯しておりますときには、日本軍が直接監督あるいは指導してやつたが、アメリカは日本政府を通じて間接にわが国を指導監督しておる。けれども、受けるところの感じは同じであります。ただ表面に出て来ていないだけであります。ただ私は、この振興会を通じて、文部省意向が強く働き過ぎはしないか、あるいは監督統制が強くなりはしないかということをおそれているのであります。その点何も不安がないとすれば、別の角度からお尋ねしたいのでありますが、この私学振興会法案という法律のほかに、何か文部省令やあるいはそのほか細則、規則というものをおつくりになる腹案があるかどうか、定款だけにしておかれるのかどうか、それを承りたいと思います。
  81. 福田繁

    福田説明員 これ以外に、文部省令等の制定の予定はございません。ただこの法律ができますと、登記をいたさなければなりません関係上、登記に必要な手続を政令できめるという程度の政令は、別に考えております。
  82. 小林進

    小林(進)委員 参考までにお伺いしておきますが、現在、国立学校の学生一人に対する国費の補助は、どれくらいになつておりますか、その点をひとつ承りたいと思います。
  83. 福田繁

    福田説明員 ただいまその資料を持ち合せておりませんので、あとで調べましてお答えいたしたいと思います。
  84. 小林進

    小林(進)委員 それでは、あとで資料をいただくことにいたしまして、現在この私学振興会法案に盛られた三億九千万円、あるいは将来入るかもしれないと予定せられている十七億五千万円を含めましても、私学の学生一人に与えられる助成金の補助額は、どれくらいになる見込みでありますか。
  85. 稻田清助

    ○稻田政府委員 国立学校の学生一人当りの学費でございますが、これはとりようによりまして、たとえば学術の研究に関します費用とか、病院の費用とかございまして、例の二百五億を全部一人当りにいたしますのもどうかと思いますし、とりようが非常にむずかしいのでございますが、明年度予算あたりでございますと、一人当り八万円ないし九万円ぐらいに当つているかと思います。
  86. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまの御質問でございますが、一応学校を対象といたしまして貸し付けるわけでございまして、一人当りという計算はちよつとむずかしいのでございますが、しいて御要求でございますれば、後ほど計算いたしましてお答えいたします。
  87. 小林進

    小林(進)委員 ぜひお伺いいたしたいと思うのであります。今、公立学校では八万円ないし九万円ということでありますが、私の調査によりますと、大体国費で分担しておるのが、一人の経費の九五%で、五%だけが学生の授業料であるというふうに聞いておりますし、都立の大学などもやはり同じくらいで、東京都あたりでも大体都民税で負担している部分が九七%、こんなふうに承つておるのであります。官立大学あるいは公立学校では、国費ないしは国民の税金で九五%ないし九七%までまかなつておりながらも、これらの学校では、金をもらうのが当然の権利のように考えていられて、少しも教育の方にはそういう卑屈な考えというものはない。むしろここで今問題になつております官学の学長の官選論だとか、あるいは法学部の廃止とかいうふうな一連の反動の意見も出て来ると思うのでありますが、私はこの意見も、まつこうから意味なしとはしないが、一面やはりそれが伸び伸びと国立学校がやつているゆえんであると思うのであります。私は官選論や法学部の廃止には反対でありますが、ただ官学がこれほどの国費や税金をちようだいしながらも、伸び伸びとやつているその反面、私学というものが、わずかな金をもらうことによつて、どれだけ卑屈な気持になるかということであります。私はこの点を非常におそれるのでありまして、先ほども申し上げました十七億五千万円の金を文部省から貸付を受けるために、私学がいかに猛運動を開始し、いかに卑屈な気持になつて、皆さん方の所に泣きついて行つたかということは、私は身にしみて実に痛切に感ずるところがあるのでありまして、こういう形が現われることを私学校案で何とか排除してもらわなければならぬと思うのであります。こういう点について、いま一度文部当局から御意見を承つておきたいと思うのであります。
  88. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 先ほど来申し上げましたように、われわれといたしましても、三億九千万円のこの出資金につきまして、決して満足をいたしておりません。今後機会あるごとに、増額につきまして財務当局に要求いたしまして、皆様の御希望に沿うように一層の努力をいたすつもりでございます。
  89. 小林進

    小林(進)委員 それでは若干條文についてお尋ねいたしたいと思います。  第一條の私学であります。先ほど私学の総数は三千何ぼとおつしやいましたが、この助成の対象となる私学を、一体どの範囲にお考えになつておるのか、承りたいと思います。
  90. 福田繁

    福田説明員 大体、先ほど局長から申し上げましたが、一応の対象として考えております私立学校学校数は、幼稚園まで入れまして三千五百校程度考えております。
  91. 小林進

    小林(進)委員 私が先ほど規則ないしは省令をお設けになるのかどうかとお尋ねしたのは、そこなんでありまして、大学から幼稚園までには、いろいろな段階もありますし、その助成の額についても、やはり標準がなければならないのじやないかと考えるのであります。單なる振興会のそのときの思いつきでお貸しになるのか、それとも大学はどのくらい、高等学校はどのくらい、中等学校はどのくらい、幼稚園はどのくらいというような、一応の標準をおつくりになるのかどうか、そういうことも承つておきたいと思うのであります。
  92. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 一応この法律案の上で対象といたします学校につきましては、第三條に規定してございますが、なお附則の十一項によりまして、私立の盲学校、ろう学校、養護学校及び幼稚園でございまして、そのうち民法の三十四條の規定で設けられているもの、こういつたものを対象といたしております。それからなお、ただいまのところでは旧制私立学校、これは一応対象からはずしております。と申しますのは、これは昭和三十年までの存続期間を持つておるものでございまして、ちようどただいまは過渡期にございますので、一応この対象からははずして考えております。それから準学校法人でございますが、これにつきましては、一応対象からはずしております。それはただいま産業教育振興法がございますが、その面におきましても、はずしておりますし、現に国及び地方団体から補助が実際には参つておりません。一応補助し得る建前になつておりますけれども、事実上そうなつておりませんので、この法律案におきましても、その準学校法人等に対しましては、一応除外しております。そういうふうに考えております。  なおどの学校に幾ら、どういう種類の学校にどうするかというようなことにつきましては、これはやはり特殊法人私学振興会が成立いたしまして、その業務方法書でおそらく規定されるであろう、かように考えております。
  93. 小林進

    小林(進)委員 それから第五條の第四項でありまするが、これは「振興会は、必要があるときは、文部大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。」というのでありますが、その内容はどういうことを言つているのか、御説明を願いたいと思います。
  94. 福田繁

    福田説明員 第五條第四項の規定でございますが、これは振興会の資本金を増加する必要があるときにおきまして、まず資本金の増加ということについて内部的に決定をする、その決定につきまして文部大臣の認可を受ける、こういうような手続にしてございまして、これは一般の法人が定款の変更につきまして、文部大臣の認可を受けると同様でございます。
  95. 小林進

    小林(進)委員 これはむしろ毎年文部省なり、振興会が主力を注いで、大いにこの資本金を増加してもらわなければならない建前なのでありますが、これを「必要があるとき」などというような言葉で表現されるのは、いかに條文の体裁とはいいながら、私は実情に即しない、非常におかしな規定だと思うのでありまして、こういうことはどうも私どもはピンと来ないのであります。  次に、第十二條でお伺いいたしたいのは、会長は振興会代表し、あるいは理事長は、定款がありまするけれども、これも振興会代表し、それから第三項の理事、これも定款がありまするけれども、振興会代表し、会長も理事長も理事振興会代表するのでありますが、この三つの代表の区分をひとつ承りたいのであります。
  96. 福田繁

    福田説明員 会長なり理事長になつている者の振興会代表の問題でありますが、これは一般のこういつた特殊法人の場合におきましても同様でございまして、理事は各人がその振興会代表するというような建前になつておるのでございます。ただ、この振興会におきまして、兼務の役員、理事、あるいは専務理事というものをつくりました場合におきましては、その場合によりましては、兼務理事についてはその業務の範囲におきまして代表権を有しないような定款のきめ方をしてもいいわけであります。そういつた場合があり得るわけであります。
  97. 小林進

    小林(進)委員 第十三條は、先ほど質問がございましたから省略いたしまするが、第二十三條は、これも法案の体裁でございましようけれども、無用な條文じやないかと思うのであります。「第二十三條振興会業務は、第一條に規定する振興会目的に従い、公平且つ確実な運営を期して執行されなければならない。」綱領、宣言のよう  でありまして、これは確実かつ公平に執行されんがために代表機関を設け、あるいは監督機関を設ける、第一條、第二條、第二十四條から最後の條文までやつていることの総括問題として、これは確実公正なる運営を期するために、なぜ一体こんなところへ持つて来て、ぽこんと抽象的な宣言文みたいな條項法律に入れる必要があるのか。第二十三條は無用な條文にあらずやということを私は考えるのでありますが、いかがでありましよう。何を意味するのか。
  98. 福田繁

    福田説明員 第二十三條でございますが、振興会目的に従いまして、業務を公平に、かつまた確実に運営しなければならないということを申しますことは、当然なことでございまして、無用だとおつしやいますが、こうした特殊法人につきましては、業務執行の基本原則として、こうした文面的な規定を入れるのが通例でございます。
  99. 小林進

    小林(進)委員 これは慣習であるとおつしやるかもしれませんが、盲腸的存在で、どうも最近の占領政策後に、何かアメリカン・システムみたいになつてから、こんな條文がちよいちよい現われて来るようになつたのでありまして、これは私はどうも無用だと思う。もしこの條文があるなら、何も罰則の規定を設けたり、監督の規定を設けたり、命令の規定を設けたり、あるいは定款を設けたり、一切の條文は私はいらないと思う。これを入れないために、こういうむずかしい幾多の條文を置いてあるのです。何か法律も最近のアメリカン・システムにならつて流行を追つているような形であります。これは私は十分ここでこういう議論を繰返したいとは思いませんけれども、まだ法案でありまするから、お帰りになつてとつ十分考慮願いたいと思うのであります。  それから、これは総括的になりまするが、さつきも言われた十三條と二十條の、必要な学識経験者という、抽象論だけでありまするが、このほかに役員あるいは評議員を任命されるための資格について、こういう抽象的な言葉でなしに、何か具体的に資格その他をお考えになつているところがございましたら、ひとつ率直にお教え願いたいと思うのでございます。
  100. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまのところは、別にほかに基準を考えておりません。ただ校長及び教員の欠格事由に該当する者につきましては、資格の点につきまして除外的に考えております。
  101. 小林進

    小林(進)委員 そういたしますと、文部大臣のお気に入りの方が任命せられる、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  102. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 第二十條に規定してありますように、必要な学識経験を有する者及び私立学校関係者のうちから候補者を選定いたしまして、文部大臣が任命するという運びになつております。
  103. 小林進

    小林(進)委員 第二十條はそれでよろしゆうございますが、第十三條によりますと、結局文部大臣のお気に入りの方が、こうした役員にお入りになると、私どもは解釈する以外にないのであります。先ほども井出委員からお話がありましたように、私は文部省としては、お役人のいい姥捨て場所をおつくりになる、そういう感じを受けるのでありますが、願わくは私はこの私立学校振興会は、文部省を退官したる役人は十年なり五年なりこの役員となることを得ずというふうな規定でも一つ設けられる意思があるかないか、この点をひとつ承りたいと思うのであります。
  104. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいま御意見のように、文部省の役人の姥捨山になるというようなことでは、たいへん申訳ないことになりますので、われわれといたしましては、さようなことの絶対にないように、人選その他につきまして文部大臣に十分進言いたし、われわれもまたその点は十分嚴戒いたしまして、りつぱな人事をやりたいと考えております。
  105. 小林進

    小林(進)委員 願わくは近藤局長が終生文部省におられると、そういう公約が達成せられるのであつていいのでありますが、どうもちよいちよいおかわりになりますので、この点非常に不安がありますが、何分ひとつ私どもの切なるお願いでございますので、国会の記録として、どうか代々文部省に残して、そういうことのないように特別の御処置をお願い申し上げたい、私はこう思うのであります。  最後に、一言申し上げて質問を終ります。それは附則の第二項の「文部大臣は、設立委員を命じ、振興会の設立に関する事務を処理させる。」——初めから終りまで全部文部大臣の任命でございますが、一体この設立委員というものにどういう方々を予定しておいでになるのか、それをひとつ承りたいと思うのであります。
  106. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまのところは、まだ候補者の選定まで至つておりません。しかしながら、何分この法律案を今月中に発足させたいという考えを持つておりますので、またそういたしませんと、出資金にもさしつかえがございますので、この法律の審議と並行いたしまして、人選につきましても御考慮願うというふうに考えております。
  107. 竹尾弌

    竹尾委員長 これにて本案に対する質疑を終了いたしたいと存じますが、理事の諸君にちよつとお集まり願います。——他に御質疑はございませんか。
  108. 若林義孝

    若林委員 各委員からの質問は、出資金ということについて、相当重点が置かれておつたように思うのでありますが、これに関連いたしまして、私立学校法の第二十六條の、収益事業に関しての貸付を可能なものと解釈してよいかということが一点と、それからもう一つは、政府が三十億を予想しておられるように思うのでありまして、またわれわれも、これについては三十億までは大いに努力しなければならぬと思うのでありますが、五年後に三十億が大体予想し得るとするならば、この振興会自身が、ほかから責任をもつてその残余の金を借りて、貸し付けるというような方途は講じ得ないものか。あくまでもこの政府出資金の範囲内よりほかできないものか。この点をひとつはつきり御答弁願つておきたいと思います。
  109. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 今収益事業につきまして、貸付または助成ができないのかという御質問でございますが、ただいまのところでは、その事業の性質にかんがみまして、貸付または助成は行えない、かように考えております。それから出資を増加させるということについて、予算以外に方法はないかということでございますが、将来可能な場合になりますれば、資金運用部の資金を低利で借りるということが、あるいは考えられるのじやないかというふうに考えております。目下のところでは、向うの規則でそういうものに金を貸すことは、さしつかえがあるように考えております。なおその点につきまして、われわれとしては、努力をいたしたいと思つております。
  110. 若林義孝

    若林委員 大体政府に対しまする質疑は、先ほど委員長から動議が出たのでありますが、今日のところでは、質疑はないのでありますけれども、私先ほど質問のときに申しましたように、一度私学関係側の意見も、ひとつ確かめてみたい箇所もあります。それは私ばかりではない、他の委員もその御意向を持つておるようでありますので、委員長において、私学関係方たちの本法案に対する意見を聞く機会を、ひとつ至急おつくり願うことを、動議として提出いたしたいと思います。
  111. 竹尾弌

    竹尾委員長 他に質疑はございませんか。
  112. 首藤新八

    ○首藤委員 二、三御質問したいと思います。ただいままで私学に融資しております十七億五千万円の貸付の條件、それから担保物件があれば、何を担保物件としておるか、あるいは今日までの回収が、当初の契約通りに回収できておるかどうか、できていなければ、どういう比率の回収ができておるか、そういう点を一応お伺いします。
  113. 福田繁

    福田説明員 戰災復旧貸付金等につきましては、大体最近は年五分五厘の三十年にわたる均等償還でございまして、昭和二十一年に貸し付けた金が、ちようどすえ置き期間が五箇年でございますので、二十七年度に最初のものは返つて来るという関係上、まだ回収されたものはございません。それから担保物件につきましては、土地または建物を抵当に設定しております。
  114. 首藤新八

    ○首藤委員 本年度が初めての償還期になつておるそうでありますから、もうしばらく時日を経過しなければ、回収率ははつきりしないかもしれませんが、担保物件について、要するに対象が営利事業を営んでおりまするものならば、こういう回収も、ある程度望みはありますが、現在の私学経営の状態から見て、はたして條件通りの回収ができるかどうかという点に、非常に実は疑問を持つものであります。特に担保物件なるものも、ほかの事業と違つて学校経営であるという点に思いをいたしますると、これが処分も容易でないと思いますが、もし償還期日が来まして、なお償還できないという場合には、どういう処置をおとりになる予定になつておりまするか、それを一応伺いたい。
  115. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 昭和二十一年度当初の戰災貸付は、利率が三分二厘でございまして、それがちようど今年の四月から償還期が開始するということになるのでございます。その予定額は、先ほど申し上げましたように、百二十七万円余り元利が返るという計算になつております。万一これが入らない場合、どうするかということにつきましては、これはこの規定にもございますように、條件の変更、あるいは場合によつて債権の免除というようなことも、起るかとも考えております。
  116. 首藤新八

    ○首藤委員 先ほども同僚委員から御質問がありましたが、大体私学の方では返還ということよりも、むしろ助成というような考え方から、多分にもらつたというような気持が多いのじやないかと思うのであります。また実際上現実の私学内容から見ましても、これを償還するということは、容易でないのじやないかというふうな気持もいたすのであります。もし、かようなことで、償還が予定通りに進行しないというふうに仮定いたしますれば、今年度の政府出資は一億三千万円くらいであり、そして一方の融資を受けたいという対象は三千五百校ある。一校当りにすれば十万円にすぎない。むろん全部に融資するということは困難でありましようけれども、少くともこれほどのたくさんの学校を対象として一億三千万円の融資でありますならば、まつたく焼け石に水であつて、これに該当するものの学校のわくがありますれば、一回だけでこれは貸してしまつて、あとの任務はほとんどないのではないか。一方振興会の方は会長、理事長あるいは理事その他役員が相当数あるように思いますが、はたしてこういう陣容をつくるだけの事務があるかどうかというふうな一応の疑問を持つのでありますが、その点はどういうお考えを持つておりますか。
  117. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 確かに出資額が少な過ぎるということにつきましては、われわれもまことに同感でございますので、今後機会あるごとに、その増額に努めたいと思いますことは、先ほど来しばしば申した通りであります。しかしながら、昭和二十一年度から今日までの戰災貸付金の状況を見て参りますと、昭和二十一年度は約二千四百三十万円、昭和二十二年度は約一億一千四百万円一番多い年は二十三年度でございますが、これが三億五千百七十四万円ということで、もちろん大学から高等学校以下全部を対象といたしまして、選定いたしたのでございますが、貸し付けて参つたような実情もございますので、焼け石に水でありますけれども、しかし何がしかやはり相当の効果を上げておるということを確信いたしておりますので、その点はわれわれは決して失望いたしておるのではございません。かりに二十七年度三億九千万円の現金出資をもちましても、相当の効果は上げ得るというふうに考えております。しかしながら、決してそれで十分であるとは考えておりません、今後努力いたしたいと思います  なお理事者の給与の点でございますが、これはただいま一応考えております点は、大日本育英会の役員の給与を基準にいたしまして、大体それに準じた額を考えておるわけでございます。従いまして、そう莫大な金額がこの面に流れるというようなことはないものと考えております。
  118. 首藤新八

    ○首藤委員 将来できる限りすみやかにもつと増額するような方法を、特に私はとつていただくようにお願いしておきたいと思います。  そこでもう一つお尋ねいたしたいと思いますのは、第十四條でありますが「振興会と会長、理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は代表権を有しない。この場合においては、監事が振興会代表する。」——ちよつと事例のない條文でありまして、振興会と会長の利益が相反するという場合があるかどうかまたかりにありましても、そのときには理事長または理事があるわけでありまして、必ずしも監事が振興会代表する必要はないのじやないか。また理事長または理事との間に利益が反する場合があつても、会長が代表したらいいじやないかということを考えました場合に、事ごとに監事が振興会代表するというようなことが、実際問題として妥当であるかどうか。他に事例もありませんので、特殊な事情によつてこう  いう法文をつくつたのかどうか、その点をお伺いしたい。
  119. 福田繁

    福田説明員 第十四條の規定でございますが、この振興会に会長、理事長または理事というような役員を置く関係上、代表権の問題につきまして、万一の場合を立法の際に考えなければならないという立場からいたしまして、この監事が代表するという場合には、会長も理事長も、ほかのすべての理事も、振興会と利益が相反するというような極端な場合にのみこの規定が働くのでありまして、実際上の問題としては、こういうことが起り得ようとは考えておりませんが、一般の立法例からいたしまして、こういう規定を置いたのであります。
  120. 首藤新八

    ○首藤委員 今の御回答のようでありましたら、私は表現の仕方が非常に誤解を招くおそれがあるのではないかと思うのでございます。そういう御意向でありますならば、振興会と会長、理事長、理事全員というような表現でありましたならば、今の御回答のような解釈が行われますが、この候文から見ますと、振興会と会長、あるいは振興会理事長、あるいは振興会理事との利益が相反する場合というふうな解釈が行われるのであります。しかも、こういう事例は、実際問題としてありません。またかりにありましても、他の條文でこれを制約する方法は、幾多きめられておりますから、それらの点を考えた場合に、こういう誤解のおそれのある條文は、むしろ削除した方がいいんじやないかと思うのですが、いかがです。
  121. 福田繁

    福田説明員 この十四條の規定につきましては、ただいま御説明申し上げましたような趣旨でございまして、これは解釈上、全員という意味に解しております。
  122. 首藤新八

    ○首藤委員 そういうふうに強くこれを固執するならば、私もそれをもう一度質問しなければならぬのであります。もしそういう意向でありますならば、そういう意向に解釈されるような表現を使う必要があると私は思いますが、どうですか。
  123. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 先ほど庶務課長から御説明した通り、通例こういう特殊の法人で、しかも金融的職務を持つものにつきましては、大体こういうような表現が普通でありますので、この場合もさような表現を用いたのでございますが、御意見の点は十分承りまして、なお研究いたして参りたいと思います。
  124. 首藤新八

    ○首藤委員 それから、この振興会は強制加入でありますか、任意加入でありますか、その点をひとつお答えいただきたいと思います。それからもう一つ振興会に対する会員の負担金というものはあるかどうか、あればどういう金額を予定しておりますか。
  125. 福田繁

    福田説明員 今お尋ねの加入という問題については、全然予想していないのでございまして、この振興会自体がこの出資金によつていろいろな業務を行う、それによりましてその対象になる学校は、別に振興会に加入するという関係じやないのでございます。
  126. 小林信一

    小林(信)委員 めつたに文部委員会が開かれませんから、文部省にお伺いする機会がなかつたのですが、実は北海道の震災の問題です。すでに御調査になつておるかと思いますが、被害状況等についてお伺いしたい。そういうふうなものがもうできておるかどうか、まずお伺いいたします。
  127. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 北海道の震災のお話でございますが、ただいま私の方から現地に調査団を五名出しております。その報告を待たなければ、詳細なことは申し上げられませんが、北海道の道庁の教育委員会から私の方へ参りました報告によりますれば、ただいまのところでは、校舎の倒壊したものが、小学校で十二校、中学校で六校と記憶しておりますが、なお詳細な点につきましては、後ほど資料を差上げたいと思います。
  128. 小林信一

    小林(信)委員 ちよつと関連して——実は老朽校舎の問題で私たちは今までこの委員会で苦労して来たのですが、今度の震災で、單に被害が何校と  いうことでなく、そういうような校舎がまつ先に必ずやられていると思うのですが、そういう問題について、文部省としては、そういう点でよく資料をつくつて見せていただきたいと思うのです。それにつきましても、文部省から調査団が派遣されたということは、私いいことだと思うのです。最近の状況からしては、建設大臣は行かれたわけですが、文部大臣あたりが直接行くくらいに、やはり誠意を見せられて、そうしてこの学校施設状況というふうなものを十分考慮される必要があつたのじやないか。係官五名を派遣したというようなことでもつて文部省がこの問題を軽く見ておられることは、学校のいろいろな点からしまして、私は非常に遺憾だと思うのです。今後ああいう大きな問題が出た場合には、学校問題として累積しておることがたくさんあるのですから、そういうようなことで、大臣じかに調査される、あるいは実情をじかに調査されるというふうに、私はやつていただきたかつたと思うのです。特に調査団がもしそういう点についても——特に御指令はあつたと思うのですが、私たちが問題にしております腐朽しておる校舎が、そういう場合にまつ先にやられた、そのために人の方に被害がどれくらいあつた、そういうなまなましい事実をこの際持つて来てもらつて、とかく大蔵省あたりが頑迷でおるのに対して、それをもつて啓蒙をするような態度を示していただきたいと思いますが、そういう意味からしても、私たちの方にそういう資料をできるだけ提供していただきたい。また文部省としてそれをもつて大蔵省との折衝に当つていただきたい。これをお願いいたしまして私の質問を終ります。
  129. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど政府委員の御答弁の中に、私学教職員共済事業振興会一本でやりたい希望を持つておつたけれども、予算の獲得上これを切り離したという御答弁でありましたが、この問題は私ども文部関係予算審議のときに、すでに再三御質問申し上げて、同じような御答弁をいただいておるわけですが、これは予算獲得、予算編成の形式の上からそういうことになつておるので、せつかくこういう法律をつくる上からいえば、やはりそういう形式を打破して、筋の通つたものならば、それによつて予算を獲得するというのが当然のあり方だろうと思います。まつたくその御説明に納得が行かないのですが、これはもう少し研究するとして、私は委員長にお願いしたいのは、現在の教職員共済事業現状に関する資料を、文部省に要求していただきたい。     —————————————
  130. 竹尾弌

    竹尾委員長 この際若林君の動議についてお諮りいたします。ただいま議題となつております法律案に関して、参考人を招致いたしまして意見を聽取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認めましてさよう決定いたします。  なお参考人の招致の日時は、明後十四日午前十時といたします。人選及びその数に関しましては、委員長に御一任願いたいと思います。  本日は時間の関係上これにて散会いたしまして、次会は明後十四日午前十時といたしたいと思います。なお公報をもつてお知らせいたしますけれども、皆様に特に御協力願いたいと思いますのは、どうぞ定刻にぜひ御参集を願いたい。これをお願い申しまして散会いたします。     午後一時十五分散会