運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-06-10 第13回国会 衆議院 農林委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十日(火曜日)     午前十一時四十二分開議  出席委員    委員長 松浦 東介君    理事 遠藤 三郎君 理事 河野 謙三君    理事 平野 三郎君 理事 小林 運美君    理事 井上 良二君      小笠原八十美君    越智  茂君       小淵 光平君    川西  清君       坂田 英一君    坂本  實君       千賀 康治君    田中 彰治君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    大森 玉木君       吉川 久衛君    石井 繁丸君       竹村奈良一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         農林政務次官  野原 正勝君         農林事務官         (農政局長)  小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  傳君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 六月九日  部落農業団体活動促進並びに国庫補助に関す  る請願河原伊三郎紹介)(第三四八〇号)  同外一件(村瀬宣親紹介)(第三五五七号)  同外十二件(村瀬宣親紹介)(第三六〇六  号)  高野村地内の国有林野払下げに関する請願(本  多市郎君紹介)(第三六三〇号) の審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した事件  農地法案内閣提出第八四号)  農地法施行法案内閣提出第八五号)  開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二五号)  飼料需給調整法案井上良二君外九十五名提出、  衆法第五九号)  農産物検査及び防疫対策等に関する件  桑の霜害に関する件     —————————————
  2. 松浦東介

    松浦委員長 これより農林委員会を開会いたします。
  3. 小林運美

    小林(運)委員 議事進行について。この前の本委員会におきまして、私はかねて本委員会に小委員会をつくり、大体小委員会としての意見がまとまつた肥料需給調整に対する案をもつて委員会提出し、審議を進めるということで委員長との間に公約をいたしておきました。しかるに先ほど来の理事会におきまして、本日の委員会で必ず開くという委員長言明にもかかわらず、まだこれが提案に至つていない。こういうことでは、本委員会で、正式の委員会におきまして委員長言明がその通り行われないというようなことであつては、委員会運営上、はなけだわれわれは遺憾とする。そこでもう一ぺんこの問題をはつきりして審議に入りたいと思います。従いまして私は、松浦委員長のこの問題に対する見解を承つておいてでないと、その他の議案については審議を進められないと思う。これに対してどんなふうにお考えであるか、委員長の御見解を承りたい。
  4. 松浦東介

    松浦委員長 小林君の御発言でございますが、何か本委員会運営についての公約というお話でありますが、私がちよつとからだを悪くしまして三日ばかり休んだために、そこにいろいろ問題が起きたことは、恐縮に存じております。しかし本委員会運営は、諸君御承知のように、万事理事会において円満に話合いをつけ、きわめてスムーズに参つておりますので、先ほどの理事会において申合した通り、吉川君の緊急質問に次いで、開拓者資金融涌法の問題を上げて、その問題が終りましたならば、その後にきようのうちに提案理由説明を聞きたい、かように考えております。  それでは前会、農産物、特にばれいしよの検査防疫対策等の問題に対して、農林事務当局質疑をいたしましたが、本問題について農林大臣質疑要求があります。これを許します。吉川君。
  5. 吉川久衛

    吉川委員 私は、先日東京都下に起りましたバイラス病対策の問題について、政府緊急質問をすることを要求したのでありますが、当日は農政課長の大澤君がおいでなつただけで、私の質問に対して責任のある、また納得の行くようなお答えをいただけなかつたのであります。これはまことに遺憾でございまして、この種の問題について、一課長答弁に立たせるというような農林省農政に対する態度は、きわめて熱意を欠くものとして、私は遺憾に存じていたのでございます。そこで私は委員長に要請をいたして、あらためて農林大臣おいで願つて農林大臣から責任あるお答えを願いたい、こういうことになつたわけでございますから、大臣はそのおつもりでお答えを願います。  東京都で、無病ということで国営検査証明付の種じやがを北海道から六万俵、八十万貫を購入したのであります。これは東京都下地域二千四百町歩にわたるものでございますが、そのうち北部の二百五十町歩西部世田谷練馬の一部三百五十五町歩、合計六百五町歩が七割ないし八割の被害をこうむつた世田谷の烏山の地域全滅という状況でございます。  私と同じように農林大臣世田谷にお住まいでございますから、この問題はすでにお耳に入つたことと思いますけれども、この国営検査済票紙の貼布されてあるところの種いもをまきつけて、そうして七割ないし八割、所によつて全滅というような病害をこうむるというような検査は、一体われわれにはどうしても納得が行かないのですが、事務当局説明によれば、まことに貧弱なる検査機構をもつてつている、従つてどうもこういう問題の起るのもやむを得ないじやないかというような御答弁なのでございますけれども、北海道に生産されるところの種いもは、これは東京都下にだけ配給されるのではなくて、全国に配布されるものでありまして、これが、このような問題が頻繁に起るとするならば、生産農家安心をして北海道種いもを取入れてまきつけることはできなくなり、農業生産農家経済の上に実に大きな問題となるわけでございますが、農林大臣といたしましては、この検査機構の問題、今後の検査制度の問題について、どういうようになさろうとお考えになりますか、その御所見を伺つておきたいと思います。これは本年東京都下にたまたま起つた問題ではなくて、年々歳々、各地に起つている問題でございますが、これに対して農林当局は何らの手が打たれていない、これに対する対策が施されていないという結果が、本年もまたこういう大きな病害となつて現れて来ているということを考えますときに、政府はここに重大な決意をもつて具体的な対策を明示され、それを強力に実践されなければならないと思います。それについて明快なるお答えを願いたい。  それから、一体こういう問題に対する責任はどこにあるか。私は国営検査制度があるからには、これは国が責任を持つべきではないかと考えるのでございますが、大臣はこれについてどういうようにお考えになりますか。この超異常的な災害に対して、これは国が当然その補償の責に当るべきであると考えますが、どういうようにお考えでございますか、この二点について納得の行くようなお答えを願いたいと思います。
  6. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 東京都下におけるバイラス病の発生の問題でありますが、農林省からはまだ正式の調査の結果は報告を受けておりません。しかし東京都の農業係官からは報告を受けておるようなわけであります。現実に被害者から話を聞きますと、かなりひどいようであります。またこの北海道種いもの入つて参りました経路から見ますると、系統団体を通じて正式なルートで入つて参つております。また検査票等を見ますと、これも正式な検査票がついておるのであります。それと併用いたしまして市販で買いました、各種屋等から取入れたじやがいもについては、何ら被害が起きていないのであります。系統団体を正式に通つたものに多く被害があつて一般市販から買い入れたものに被害がないというところに、非常に問題があるのでありまして、私どもの方では、即刻この問題について組織的に、しかもこれを科学的に検討しろということを命じてあります。しかしまだその問題は私のところへ、こういう理由でこうなつたという報告はございません。系統団体を通して販売することを奨励いたしておるわれわれといたしましては、事重大でありますので、徹底的にこれを調査いたしまして、今後このようなことのないようにいたしたいと思います。また検査機構その他については、本委員会等の御意見もだんだんありますし、私たちといたしましては、少い人員ではありますが、万全を期してやるようにいたしたいと思う次第であります。なお責任の所在はどこにあるかということでございますが、検査官の失態であるとするならば、それはおのづと責任大臣にあるはずでありまして、その問題については十分私考究いたしたいと考えております。
  7. 吉川久衛

    吉川委員 たいへん近来に珍しい大臣の確信的な御答弁で、私はある程度満足するわけでございますが、ただ、先日の農政課長答弁では、ただいまから調査をするということでございました。これが移入されるまでの経路についてのいろいろの調査等はもちろんあろうと思いますけれども、バイラス病という病気の起つているこの事実、こういつたような問題については、調査の必要がないのです。これが東京都下という所の気候、風土、土質等によつて病気が起るのだというような問題があるとするならば、これは調査の必要はございますけれども、そういうことによつて、この種の病気は起るのではないので、種いも病菌さえなければ、こういう病気は発生しないのでございますから、この点の調査の必要は私はないと思います。あるとすれば、ここまで移入される輸送の過程、取引の過程、そういうところに問題があるのじやないかと思いますから、これから調査するというようなことでなくて、これはひとつ徹底的な、大臣のおつしやるような科学的な調査をすみやかにやつていただきまして、そうして生産農家安心を与えていただきたい。これはひとり東京都下の問題ではございません。全国いも生産農家影響があることでございますから、そのようにひとつやつていただきたいと思います。それから対策等については適切な御答弁でございますが、責任の問題でございますが、東京都下だけでも、今回の種いもは、室知郡の中富良野、上富良野の両村から来た八千八百七十二俵というのが、この災害をこうむつております。この種いも損害が千四百六十万円で、百四十万貫の減収の見込みの損害を加えますと、その損害は四千五百六十万円といわれております。これは今の国家財政から見れば大した額ではございませんから、原因がはつきりいたしましたら、こういう問題について、積極的な御配慮を要請いたしまして、私の質問を打切ります。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この病菌がその土地合つていもがその病菌に侵されたというのじやないように承知いたしております。これは北海道から種いもに付着して来た病菌が、こつちで繁殖したというように私は聞いております。それからまた市販価格系統団体種いも価格とは非常に違つておるのであります。種いも価格が、系統団体を通したものは千二百円、それから市販のものが九百円というように、非常にここにも差があるようなわけでありまして、また検査した当時における検査票つけ方等においても、いろいろ問題があると思います。そういう点を事こまかに調査いたしまして、対処しなければならぬと思つておりますので、厳密に調査をする考えであります。
  9. 松浦東介

    松浦委員長 この際過般の霜害、すなわち福島山形宮城長野、岩手各県の桑園の霜害対策につきまして、小林運美君より農林大臣に対して緊急質問要求があります。これを許します。小林運美君。
  10. 小林運美

    小林(運)委員 去る四月二十八日、五月九日、十三日の三回にわたりまして、東北並び長野県等を襲いました冷害、霜害の件につきまして、私は農林大臣がこの災害に対していかなる考えを持つておられますか、具体的な対策について二、三質問をいたしたいと思います。  御存じのように、蚕糸業は、先般の国会におきまして糸価安定法が通過いたしまして、一応安定を見たのでありまして、われわれはこの法律のもとに蚕糸価の安定をはかり、外貨の獲得のためにますます増産に励んで参つたのでありますが、今回の霜害は、このわれわれの希望しております増産に非常な影響をもたらす霜害で、ございまして、その内容はすでに当局によつて調査をされておりますが、被害の額は、十六億内外と報告されております。これらはまだ概略の被害でありまして、さらに調査の結果相当の被害を見ておるのであります。春繭の産額においても、約百余万貫の繭の減収を予想されております。今回の霜害は、前例を見ないような非常に甚大なものである。こういうような災害に対して、農林当局は具体的にどんな対策を持つておるか。これは本委員会で追究をするまでもなく、すでに農業災害対策法律もありまして、その方面で急速にやるべきだとわれわれは考えるのでありますが、どうもわれわれの見ておるところでは、そういつた法律があり、ふだん奨励の仕事に当つておるのが、どうも思うような活動をしていない。はなはだ私は遺憾に思います。さような点からいたしまして、いろいろの方策があります、速効肥料購入に対する助成でありますとか、病蟲害予防薬購入助成であるとか、あるいは春繭がいけないから、夏秋蚕に力を入れるために、夏秋蚕種繭購入費助成でありますとか、あるいは農業災害保険金の仮払いを早くやる、あるいは低利の営農資金の貸出しであるとか、その他いろいろの施策が急速に講ぜられるべきであると私は考えます。これに対して農林大臣は、どんな具体的な方法をお持ちか、またこの莫大なる被害に対して、大体どのくらいの予算をもつてこれに臨まれるか、大臣のお考えを十分承りたいと思います。
  11. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御質問中に、あなたは末端の農林省の役人がサボつておるようなことをおつしやられましたが、断じてサボつていないのでありまして、事こまかに調査をいたして、すでに大蔵省事務的に折衡いたしておる過程にあるのであります。あなたの御指摘のように、今回の長野福島山形宮城等に起きました損害は、非常に広範囲で、しかも深刻であります。そのあと——あなたは霜害だけ申されましたが、ひよう害も加わつておるようなわけでありまして、非常に深刻であるのであります。御指摘対策の個個の問題については、速効薬に対する手当、あるいはまた速効肥料に対する手当、あるいはまた種の支払いに関する問題、それから保険の問題、営農寄金問題等、事こまかにこれを調査いたしまして、概算二億数千万円になると思つておりますが、これは農林省から大蔵事務当局に向つて目下折衝中であります。但し先例もありますので、なかなか思うように行かぬのを遺憾といたしますが、農林省といたしましては、非常に熱意を持つてこの問題に対処いたしておるようなわけであります。
  12. 小林運美

    小林(運)委員 今大臣の御答弁の中に、十数億に余る災害に対して二億幾らの金を大蔵省折衝しておるというような話でありました。しかもこの話はまだはつきりしていない。ただ折衝くらいではだめなんです。私がさつき言つたのは、農林省の官僚の下の者が怠慢だというようにあなたはとられたけれども、一体大臣がもう少し積極的にこの問題を考えて、二億やそこらではない、十六億、調べればもつと多くなるかもしれません。そういう問題を、もう少し実情を把握して、もつとしつかりした対策を立てて、大蔵当局なりを鞭撻して、早くこの問題を解決することか、私は万全の仕事ではないかと思う。それをただ下の者は一生懸命やつておる。自分はどうかということを私は聞きたい。そういう点で一億やそこらでなくて、もつと農民納得行くように、しかもこれを早くやる。いくら考えても、あとで金をもらつても間に合わない。蚕はもう夏秋蚕の準備にもかかつておる。桑はどんどん肥料要求しておる。そういう際であるから、金額もなるべく多く、そうしてなるべく早くこれを解決してもらいたい、そういう点を特に私は要望します。それに対する大臣のもう少し腹のある、これは必ずやるという、しつかりした答弁を私は承りたい。
  13. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 事務の方で十分精査いたしまして、積み上げて、大蔵省と誠意をもつて交渉いたしまして実現するように努力いたしたいと思います。     —————————————
  14. 松浦東介

    松浦委員長 それでは開拓者資金融通法の一部を改正する法律案を議題といたし、前会に引続き質疑を行います。竹村奈良一君。
  15. 竹村奈良一

    竹村委員 まず私は二、三大蔵省にお伺いいたしますが、この一部改正法案営農資金は、大体二億一千七百万円だということですが、これに対する利率が五分五厘というように上つておるわけです。前の三分六厘五毛の利率を上げなければならぬという、どういう理由でこういう差等をつけられたか、少くともこの営農資金を必要とするのは、開拓者がいわゆる開拓地を保持して行くためには、従来の期間で長期資金がなくなる。そのために営農資金が必要だという観点から、この法案を出されておるわけでありますから、従つてたとい五年間に限つてでも、営農資金を必要だとするものには、従来と同じ利率で貸すのが当然ではないか。しかるにこれだけが五分五厘に上げられるという理由は一体どうか、しかももう一つは、これについて私は先般政務次官に伺いますと、国家財政見地からと、こう言つておられる。ところが国家財政見地からというほど、この五分五厘に上げるのと、三分六厘五毛で貸付するのと、どのくらい大きな国家財政から考えてというような旭大利子であるかどうか。私の計算したところによりますと、大体二億一千七百万円の率から見ると、その違いはわずかに二百万円くらいしかにならない。それが国家財政の基礎をどうとか、こうとかで、その上ぐるという観点が私はわからない。従つてこの点で大蔵省はなぜ五分五厘に上げなければならないかという点の、詳細の説明を承りたいと思います。
  16. 石原周夫

    石原(周)政府委員 今回三分六厘五毛でありました利子を五分五厘に上げることにいたします理由一つは御承知のように、この開拓者資金融通特別会計ができました際におきまして、この会計といたしましては、所要資金借入金をもつて調達をいたす、御承知のように昭和二十三年までは借入金をもつて調達をいたしておつたわけであります。その当時におきまする公債利率が御承知のように三分六厘五毛であつたのであります。この会計建前といたしまして三分六厘五毛の公債調達いたしまして、それを貸付にまわすということで利率の計算をいたしてあるわけであります。     〔松浦委員長退席遠藤委員長代理着席〕  御承知のように金利水準というものもその後かわつて来ておるのであります。最近におきましては五分五厘ということに相なつておるわけであります。ただ最近におきましては、いわゆるインベントリー・ファイナンスと申しますか、所要運転資金特別会計から借入れの方法によりませんで、一般会計から繰入れをいたすという方法をとつておりますが、制度の当初の趣旨はかわつておりませんので、借入金にかえて一般会計から繰入れをいたしておるのでありますから、本来金利水準変更に伴いまして利率変更をいたすという筋合いであろうかと考えております。それが第一点。  第二点は、この法律でごらんになりますように、すでに一応開拓者資金の従来のわくから申しますと、融資が済んでおる、そういうものに対しまするいわばプラス・アルファの問題などもあわせ考えまして、第一に申し上げました金利水準の現在のところから見まして、五分五厘という利率にいたすのが適当ではないかというふうに考えております。なお国家財政の数字が二百万円ではないかというお話でありますが、これは会計にはやはり会計建前がございまして、どういうようなやり方でやつて参るのかということにつきましては、申すまでもなく二百万円という金額は、お話のように私ども決して小さいというように考えませんが、会計にはそのおのおのの建前がございまして、そういうやり方で全体を貫いて参るというのが財政考え方であろうというふうに思うわけであります。
  17. 竹村奈良一

    竹村委員 開拓地開拓するという根本的な問題は少くとも日本の食糧自給というものが根本的な問題になつて開拓計画があるわけであります。従つてこの人たち長期資金を借りて開拓をやつた。そうすると政府の根本的な態度から申しますならば、長期資金によつて開拓をやらせたならば、その期間返済し得る間に、少くとも営農資金を借り入れなくても、開拓した土地によつて生活ができ得るという政策が立てられねばならぬ。しかもそれが立てられないゆえに、そういう政策ができていないがゆえにまたまた営農資金を貸し付けなければならぬというようなことになつて来るわけです。従つて問題の根本は、——もちろん財政的な立場からこの利率を上げるといいますけれども、もつと根本的な考え方といたしましては、少くとも長期資金によつて開拓した人が、それによつて開拓地におけるところの農業経営というものが成り立つということをやらなかつたところに政府政策貧困があり、そのことが原因してこの貸付制度をこしらえなければならぬというはめになつたわけであります。従いましてそういう根本的な政策考えない、ただ金を借りたい——ほんとういいますと、開拓者は金は借りたくない。金を借りなくても、営農資金を必要としなくても、やつて行けるような農業政策が立てられれば、おそらくだれも、借金したい人は一人もないのであります。その借金をしなければならぬということが、開拓者に対する農業政策というものがなつてないということだ。なつていないからしかたなく借りようとする。そして今まで開拓した土地を維持して農業を続けて行こうといたしますならば、こういう人たち考え方から考えますならば、少くともわれわれは、そういう政策貧困からいつて、実際からいいますならば、利子というものは将来すえ置くよりも、むしろ無利子で貸すのがほんとうだと思いますが、しかし現在の制度をそのまま認めているとしましても、これは三分六厘五毛に、前の資金の率と同じようにすべきではないか、百歩醸つて考えても、そうするのが当然ではないかと思うのであります。元来大蔵省開拓というような問題について、普通一般のものと同じように考えておつて開拓地における開拓者の労務、あるいは開拓地を維持するためにいかに困難しているかという点について、実際問題としてはあまり理解がないのじやないか。それでこういうようになつて来るのではないか。おそらく農林省考え方からするならば、——農林省もそれでいいと同意されたとするならば、これはけしからぬと私は思うのですが、この点は大蔵省として一体どういうふうに考えておられるか。少くともそういうわずかな金だが、財政的な見地からそうやつて行くのだというのでは、それは単なる事務的な考え方でありまして、少くとも農政という点から、しかも開拓した開拓地を維持して行くという点、しかもこの人たちを安んじて、開拓地を維持し、開拓農民としての完成を期せしめるという点から言うならば、少くとも原則としては無利子でやるべきはずだけれども、しかし前から三分六厘五毛での営農資金を承諾しているという建前からいつても、それまでに下げる必要があるのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点について将来そういうように下げる考えがあるのかどうか、あるいはこれをすぐ訂正でもして、三分六厘五毛に変更する考えがあるかどうか、この点をまず伺いたい。
  18. 石原周夫

    石原(周)政府委員 この金は、開拓者家畜導入に使われまする資金であるというふうに承知をいたしておるわけであります。これは別途農林省の方から、すでにお答えを申し上げておると思うのでありまするが、今回二十七年度の予算におきまして、農家家畜導入をいたすという趣旨をもちまして、利子補給予算を組んでおるわけなんであります。これは一割二分五厘という貸付利率考えまして、五分の補給をいたした。従いまして農家の払いまする利子は、差引七分五厘ということになりまして、それと比較をいたしまして、先ど来申し上げておりまする国際利率という観点からにらみ合せまして、私どもといたしましたは、開拓農家の方々にやはりある程度の困難があるのではなかろうかという考え方からいたしまして、先ほど申し上げたような差を見ておるわけであります。それ以外に本年度、別に開拓運転資金というものを一億円出すということにいたしましたが、これはちよつとまた別の関係であります。そういうような関係におきまして、一般の農家家畜導入というものに対しまする政府の施策というものとにらみ合せて、五分五厘というものが適当な利率であろうというふうに考えておるのであります。
  19. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま中期資金利率の問題について、他の金利水準に大体のつとつて五分五厘にきめた、こういう答弁ですが、かりに五分五厘が今日妥当な金利だということでございますならば、何ゆえに一体家畜導入資金利率を一割以上に見たのです。どういうところから一割以上という利率が出て来たのです。それをまず伺いたいのです。
  20. 石原周夫

    石原(周)政府委員 今の一割以上というお尋ねは、先ほど申し上げました普通の有畜農家導入の際に五分の利子補給をいたして、七分五厘ということを申し上げた、その点かと思います。それは、農林中央金庫がそういう際に貸し出します資金利率を一割二分五厘というふうに承知をいたしておるわけでございます。でありますから、私が申上げております五分五厘というのは、もちろん公債利率でございますから、市中の——あえて市中と申しませんでも、通常の金融機関の貸出しの利率というものは、御承知のように、非常に高いのであります。従つて五分五厘というものが、その点から申しまして、市中金融は全然問題にしないわけでございまして、一般の農家の場合におきましても、市中金利と申しますか、農林中央金庫を通じて出ます金の一割二分五厘という金利では、家畜導入のことが非常に困難になるという意味におきまして、五分の補給をいたしたということに御承知を願いたい。
  21. 井上良二

    井上(良)委員 五分五厘は金利水準としては安い方だ、金利水準にのつとつておるというお話ですけれども、農林漁業資金融通法の金利は、その貸付対象において異つておりますが、確かに最低四分くらいのがあると思うのでありますが、そうするとこれも一つ営農資金とかあるいは施設資金とか貸し付けておるものでありまして、そういうことから考えますと、今竹村君のお話の通り、開拓地の特殊な困難な実態を見ました場合、この五分五厘という金利は決して妥当な金利とは言えないじやないか、だからこれをもつと下げて、実際言うならば大した国の負担にはなりません。逆に国の増産効果が高いことが約束されておりますから、この際開拓上、積極的に増産への一つの道を開く上からも、わずかのことを言わずに、この際せめてこれを四分なら四分に下げるという意思はありませんか。
  22. 石原周夫

    石原(周)政府委員 ただいまお話のございましたのは、農林漁業の融資の特別会計お話かと思うのであります。これは御指摘のように最低は四分か四分五厘であつたかと思います。これは土地改良の金でありまして、非常に長期、しかも非常に利回りの薄いものであります。最高は、間違つておりましたらあとで訂正をいたしますが、一割であつたかと思います。平均を大体六分に押えまして、それでも先ほど申し上げましたように、市中金融というものとは違うわけでありますが、その場合におきましては、農林漁業融通特別会計の融資をいたしまするいろいろな事業の持つておりまする収益の関係をにらみまして見ておるわけであります。従いまして、そのうちで一番低いものが四分か四分五厘に行つておるから、それにさや寄せをいたすということに相なりますと、逆に農林漁業融通特別会計金利との間に矛盾を起すわけでありまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような有畜農家に対しまする一般家畜導入というものを、五分の利子をつけまして七分五厘というところに大体農林漁業融資の会計とのバランスをとつておるのでございます。従いまして、そこに開拓農家という点を考へまして、先ほど申しましたようにある差を見ているというふうに御了承を願います。
  23. 井上良二

    井上(良)委員 もう一点で終りますが、あなたのお考えによると、要は五分五厘は他の農林関係の金融から比べると、決してこれは高い金利ではない、こういうお考えでございますか。
  24. 石原周夫

    石原(周)政府委員 おつしやる通りであります。バランスがとれるおる金利だというふうに考えております。
  25. 井上良二

    井上(良)委員 わかりました。
  26. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 他に御質疑もないようでありますから、これにて質疑を終局いたします。  これより本法律案に対する討論に入ります。竹村君。
  27. 竹村奈良一

    竹村委員 私は、開拓者営農資金として貸し付ける、この面についての根本的な考え方については、別に反対はないわけであります。しかしながら、あえてこの法案に反対しなければならない点は一体どこにあるかと申しますと、政府は少くとも国のいわゆる食糧自給建前から、開拓者というものに万全の力をいたすと口では言つておきながら、実際の面においては、開拓者に対するところのほんとうの開拓を完成して、そうしてこれをほんとうに国の増産のために役立つための実際の施策に至りましては、実に遅々としてそのことに進んでいない実情が明らかになつておるわけであります。ということは、この法案にも現われておりますように、長期資金を貸して、そうしてその資金を貸した中において、その過程において、開拓者がいわゆる開拓した土地において、完全に農業を続けて行き得る万策を樹立するのでなければならぬと思うのであります。ところがそれが開拓してもなお営農資金によつて別な形で貸し付けなければならないということ自体は、先ほども申しましたように、いわゆる開拓者が完全に開拓をいたしましても、なおその開拓によつて自分の生活を維持し、農業を発展せしめる根本的な政策が欠除しているということを、明らかに物語つているものであります。從つて私はこの一部改正法律案を見てみますと、先ほどからも問題になつておりましたが、いわゆる大蔵省事務的な考え方からいつて、この五分五厘の貸付利率が高きに失するものではない、これはむしろ安きに失するものであるといわれておりますけれども、それは一片の事務的な考え方からするものでありまして、いわゆる開拓者に対するところの営農、開拓地の維持発展というような根本的な点を拔きにした事務的な考え方でありまして、われわれはむしろ少くとも開拓者長期資金を貸し付けたならば、その範囲内において開拓を完成し、農業を発展せしめる方策をまず立てるべきである。だれしも借金をしたくはない。従つて開拓者が自分自身でも家畜その他の導入ができるような施策を講ずべきである。しかしながらそれができ得ないとするならば、政府は少くともそういう導入資金その他のものについては、無利子においてこれを貸し付けるのが当然である。少くとも従来より利率を引上げるという点につきましては、私はそういう点から考えまして、この法案に反対するものであります。
  28. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。開拓者資金融通法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  29. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。  なお平野君より、本案に対する附帯決議の動議が提出されております。趣旨弁明を求めます。平野君。
  30. 平野三郎

    ○平野委員 本法案は、開拓者が一応その基礎を確立いたしました後において、さらに営農資金融通をはかろうとするものでありまして、開拓者に対するきわめて深い理解を持つた法案であり、もとよりこれに異議のある者はないと信ずるのでありますが、しかしながらこの法律につきましては、なお開拓行政に対する政府熱意が徹底を欠いておるうらみを若干感ぜざるを得ないものであります。それは、開拓者は一般の農家に比較いたしますならば、やはりすこぶる脆弱な基礎にいまなお立つておるのでありまして、さらに国が強力な保護育成の措置を講じなければ、この開拓行政の全きを期することはできない。その点におきまして、問題は利率の点でありますが、一般の家畜導入資金等の利率から見れば、若干差は設けてありますけれども、しかしながら基礎確立時代の利率から見れば、今回は相当高くなつておるわけである。従つてなおもう少しこの利率を引下げて、できれば現行通りの程度にまでするということが適切ではないか、かような趣旨におきまして、ここに附帯決議を提出いたしたいと存ずるわけであります。  案文を朗読いたします。  開拓者資金融通法の一部を改正して開拓農民に対する中期資金貸付制度を創定し、共の営農の基礎を確立しようとすることはもとより適切な措置であるが、今後なお国の強力な保護育成を必要とする開拓地の特殊性にかんがみ、その金額を増加すると共に、貸付利率は極力之を引下げるよう努むべきである。   右決議する。 以上の通りであります。ただいま趣旨の弁明をいたしましたが、こういうような点にかんがみまして、なお政府が一層開拓行政に対する熱意をもつてつて行くべきである。また予算的にもこれはきわめてわずかでありまして、政府熱意いかんによつては決して無理なことではないのでありますから、この上とも政府熱意を要望する、こういう意味において本決議案を付帯して出すことを提案する次第であります。何とぞ委員諸君の御賛成をお願い申し上げる次第であります。
  31. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 ただいまの動議に対して御意見があれば発言を許します。——別に、発言もないようでありますから、採決いたします。本付帯決議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  32. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 起立総員。よつて付帯決議身付することに決しました。  なおお諮りいたします。本案に関する衆議院規則第八十六條の規定による報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 御異議なしと認め、さより決しました。  午後は二時より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後三時三十二分開議
  34. 河野謙三

    ○河野委員長代理 午前に引続きこれより会議を開きます。  まず井上良二君外九十五名提出飼料需給調整法案を議題といたし審査を進めたいと思いますが御異議は、ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 河野謙三

    ○河野委員長代理 御異議なしと認あます。それではまず本案の趣旨について提案者の説明を求めます。井上良二君。
  36. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま議題と相なりました井上良二外九十五名提出飼料需給調整法案につきまして提案理由を御説明いたします。  御承知の通り、畜産振興と農業の有畜化は、戦後新しい農業政策の一環として大きく取上げられて参りましたが、特に食糧政策上、あるいは国民食生活改善の見地から、家畜の増殖、有畜農家の維持創設が重要な問題として検討され、その計画もようやく軌道に乗り始めましたことはまことに喜ばしいことと思うのであります。しかるに、最近の飼料需給とその価格の事情は、きわめて不安定でありまして、関係当局の懸命の努力も、また当局から関係業者に対して発せられました再三の自粛価格要望も、遺憾ながらほとんどその効なく、万一このまま放置いたしますならば、有畜農家の飼料購入難を通じて、せつかくの家畜増殖計画も行き詰まるのほかなき事態に立ち至りますことは、火を見るよりも明らかなことと存ずるのであります。  申し上げますまでもなく、この飼料需給の不安定と価格の高騰は、年々増殖されます家畜の頭数に比較し、飼料の絶対量が不足しておりますことが根本的な原因でありまして、自給飼料、購入飼料の積極的増産、飼料輸入の増加によつてその根本的な解決をはからねばなりませんが、何と申しましてもそれらの政策が完全に実施され飼料の供給が十分になりますまでにはなお相当な時日を要することであり、当面する有畜農家の飼料難を除去いたしますためには、どうしても国の手によりまして飼料の需給を調整し、価格の安定をはかる方途を講ずる必要があるのであります。また、特にふすま等につきましては、麦類の輸入または政府管理に際して莫大な補給金が支出され、それらはすべて国民の租税負担によつてまかなわれているわけでありますから、政府の手から売り渡された麦類について生ずるふすまは、当然、安定した価格で飼料消費者の手に渡ることとしなければならないと存じますので、これらの諸点を勘案いたしまして、当分の間、国が飼料の需給調整を行うことが最も妥当な方途であると存じ、ここに飼料需給調整のための立法措置を講ずることといたしたのであります。  内容のおもな点につきまして御説明申し上げますと、第一に政府は、農林大臣が定める特定飼料需給調整計画に基きまして一定量の飼料の買入れ、保管及び売渡しを行い、買入れ及び売渡しは農林大臣が定める標準価格によつて行うこととし、買入れ及び売渡しの時期、数量、種類等についには需給計画で定めることといたしたのであります。第二に飼料の売渡しにつきましては、原則として入札の方法により一定の価格以内で売り渡す規定を設け、また売渡しにあたつて政府が必要な條件を付することができることとし需給の円滑を期することといたしております。第三には、農林大臣が必要に応じて飼料の製造、販売、輸送、保管及び消費等に関する報告を徴し得ることとし、第四に、以上の諸項目を最も適正に実施し、かつ、関係者の意見を十分尊重するため飼料需給調整審議会を設けることといたしたのであります。  以上がこの法案の目的及び内容の概略でありますが、畜産振興の上からもまた農業政策全般から見ましても飼料の問題はきわめて重要であると存じますので、何とぞ愼重御審議の上すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げる次第であります。
  37. 河野謙三

    ○河野委員長代理 本案に対する質疑は次会に譲ることにいたします。     —————————————
  38. 河野謙三

    ○河野委員長代理 これより農地法案につきまして質疑を続けます。竹村奈良一君。
  39. 竹村奈良一

    竹村委員 私の伺いたいのはまず第三條二項の五でありますが、第三條二項の五に上りますと、今度は北海道では二町歩、都府県では三反歩以下のものがいわゆる農地を取得することができ得ないことになつているのですが、そうなりますと日本全国においてこれは重大な問題だと思うのであります。というのは、たとえば二十五年の二月一日の農林省の統計で行きますと、三反歩未満は百四十三万八千八百七十二戸という、少くとも内地におきましては全農家の二四%が三反歩未満の農家である。あるいは北海道におきましては二町歩未満が十一万四千四百八十二戸、つまり四七%の多くの農家がいわゆる二町歩未満であるわけでありますが、この規定で行きますと、どうもこういう人たちが今後新たに農地を取得することが困難になつて来ると思うのでありますが、これに対して、一体そういうような根本的な規定が行われておつたならばいろいろな障害等が起りますが、どういうような考えでこういうふうにされたのか承つておきたい。
  40. 平川守

    ○平川政府委員 御承知のように本案の一つのねらいといたしまして、中堅の自作農、堅実な自作農の創設維持を目標にいたしているわけであります。従いまして従来からある程度の最低限の面積を定めまして、その面積以下の農家は、農業はやつておりますけれども主として農業をやるものでない、飯米農家でありますとかいうような、収入のおもな部分は他の職業から得ておりまして、自己の飯米あるいはその他の関係で副業的にやつているという農家が大体これに該当すると思うのであります。限りある農地を配分いたします場合に、どういう農家に優先的にそれを、渡すのがいいかという考え方から、非常に大面積の農家はこれを除く。また非常に小面積の、農家と申しましても農業が副業であるというようなものは一応除外する。しかしながら地方によりまた特殊の事情によりまして、現在三反歩以下であるけれども、これは自作農として精進する見込みがあるというようなものにつきましては、例外措置も認めているわけであります。原則といたしましては、やはり中堅の堅実な農家に優先的に少い農地を与えて、その基礎を固めてやることが第一に必要ではないかという考え方から出ているわけであります。従来の農地調整法あるいはポツダム政令におきましても、多少かわつておりますけれども大体こういうような考え方で法制ができているわけであります。
  41. 竹村奈良一

    竹村委員 大体適正規模の農家を育成するという考え方、これはもちろん一応はそういう論もありますけれども、しかしここで問題になるのは、そういうような考え方でやつて行かれるとするのであるならば、少くともなぜ現在内地において三反未満でも耕作しなければならないかという点を考えられたかどうか。その者が三反以上の農家になろうとしてもなり得ない。従来にあつては一反歩以上であつたならば取得できたものが、これによると三反歩以下であつたならできないということになる。そういう限定されるということは、今日その三反歩以下の農家が存在するもろもろの情勢、しかもその上に立つてなおそれを法律で禁じようとするのであるとするならば、その人たちに対する一つ対策がなければならぬ。たとえば三反歩以下の人が農地を取得し得ないようになつて、これが三反以上にでも取得したい、あるいは三反以上ではない、少くとも一反のものを二反にふやしたい、三反にふやしたいというものを押えんとするならば、押えてもいいというこの対策はこの人たちを整理する方針であるのかどうか。そうするとするならば、それに対する一つ対策がなければならぬ。ところがそういう対策も実はないので、ただ適正規模の農家とするためだということだけでは、われわれは納得できないと思うのです。これに対して一体どういう対策を持つておられるのか。いわゆる給料をとりに行くとか兼業農家であるとか、こういうものはなくしたらいいという考えだけでは、大きな社会問題であると思う。先ほど申しましたように、大体内地に二四%、北海道においては四七%がいわゆる二町歩未満の農家であります。しかもこれは兼業農家だから整理してもいいんだという観点だけで済ますということは絶対にできない。その人たちに対するところの相当の対策がなければならない。これに対して、政府の方で何か別にこの人たちに対する根本的な対策があるのかどうか。
  42. 平川守

    ○平川政府委員 この法案考え方といたしましては、先ほど申しましたように対象と考えている農地がきわめてわずかであります。若干の現在の小作地が自作化する場合あるいは新しい開発地が若干開発された乏いう場合に、その農地をどういう人に分配するかということとして考えなければならぬわけであります。その場合に、ただいまお話の零細な兼業農家というものを考えることももとより必要でないというわけではありませんけれども、しかしそれ以上に農業事業でしかも面積が足りないで食えないという人のことをまず第一に考えるべきじやないだろうか。零細な三反歩以下の農家というものは、非常に急激に終戦後ふえているわけでありまして、主として他の職業から農村に流入したと申しますか、主として収入の源泉を農業以外にたよつている人でありまして、従いましてむろんこれに対する対策政府全体として考えることは必要でありますけれども、いずれかといえば、農業だけの部門以外の部門からも対策考え得る人人であるわけであります。農地法の考え方といたしましては、農業以外に職業を持たない農業専業の農家というものをまず第一に考えるべきじやないか。もちろん三反歩以下のような農家考える必要がないという意味ではありませんけれども、限りある農地でありますから、まずいずれを優先的に考えるかとすれば、農業だけやつてつても自己の土地が足りなくて食えないという人をまず考えるべきではなかろうかという考え方をとつたわけであります。但し村によりましては半農半林あるいは半農半漁であるとか、いろいろな事情によつて村全体として平均反別がもつと少いという所もありましよう。また個々の人によつて、現在は三反歩以下であるけれども、自作農としてりつぱに精進できる資格を備えた人であるという場合もあるでありましよう。そういうのはむしろ例外としてこれに土地を与えることは決して禁じておらない。ただ大体の原則といたしましては、こういうところで線を引いたらどうか。現在のポツダム政令におきましては、やはりこういう考え方をとつているわけであります。
  43. 竹村奈良一

    竹村委員 それでは一つ具体的に伺いますが、今まで一反歩耕作しておつた農家が、その付近に土地が一反五畝あつたとした場合に、この土地をいわゆる開墾いたしまして、そうしてこの農地法によつて売りつけを受けようとする場合は一体どうなりますか。
  44. 平川守

    ○平川政府委員 これはその農家が自作農としてほんとうに精進し得る見込みのある者であるかどうかということを考えまして、この第三條の第二項の但書によりまして許可をとることができるわけであります。
  45. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、たとえば北海道においては二町歩未満となつております。この二町歩未満の人は四七%、ほとんど半数に近いような人人をも二町歩以上に拡張することを禁ずるというようなことが、はたして適当であろうか。私は適当でないと思います。開墾する土地が少いと言われますけれども、これはもう議論になりますからあまり聞きたくはありませんが、しかし実際問題としては、地図を見たならば、あなたもせんだつて認められたように、六、七百万町歩があるわけであります。そのことは別としても、そういうような人々を適正農家にし得る措置を講じなくして禁止することには、どうしても私は納得ができない。  もう一つ私は伺いたいのは、この農地法のねらいとしては、いわゆる適正農家を制定するために三反歩以下は農地を取得せしめない方法をとるんだということになりますと、これは農政の根本問題になるわけですが、適正農家とは一体どこを基準に置いておられるか。現在農業だけで飯を食つているものを適正農家にしますと、これは大問題になると思う。少くとも農家全国において相当数整理しなければならぬと思いますが、現状で行きますならば、内地においては何反ぐらいを適正農家考えられ、北海道においては何町ぐらいを適正農家考えられるか。内地においても東北と関西とでは少し違うでしようがお聞きいたしたいと思います。
  46. 平川守

    ○平川政府委員 およその常識的な考えといたしましては、現在の平均的な内地一町歩内外というところが一つの目標であろうかと思いまするけれども、しかしこれを数学的に何反歩が適正であるということを表現することは非常に困難かと思うのでありますが、この法案におきましては、ともかくそういう積極的に何反歩が適正かということまではきめがたいが、逆に不適正な面積は何反歩であるかということを考えたわけでございまして、非常に幅を広くとりまして、大きい方は三町歩以上、小さい方は三反歩以下が不適正であるという考え方をとつたわけでございます。
  47. 竹村奈良一

    竹村委員 私は今の答弁はちよつとおかしいと思う。というのは適正農家は大体一町内外と言つておられる。そうすると五反でも不適正農家になる。つまり農業だけで飯を食つて行けない。こまかくいうと三反一畝でも食つて行けない。ところがたまたま一畝多く持つていたから、その人は今度農地を拡大する権利を持つ。同じ不適正農家であつて三反ちよつと切れたから、この人は農地法による農地を拡大する権利は持たないということになりますと、同じ不適正農家のうちの取扱いに大きな不均衡があると思う。適正農家を三反歩に置いたんだという御答弁であつたならば私は納得いたしますが、しかしそれは一町歩を基準としておられる。三反と三反五畝でも、二反五畝と三反一畝でも違う。反別が違つても、その人もやはり不適正農家であるところが一方の農家に適しない人は温存しこれに増反を認める、一方の人はちよつと少かつたという理由で増反を認めない。これはほかの社会的ないろいろの原因については、別に大臣質問したいと思いますが、しかし現在の事務的な点から考えても、私は非常に不適正じやないかと思う。戦後これだけの零細農家が急激にふえた社会的な原因、政治的な原因がある。その原因を除去せずしてこういうようにきめることは、私としてはどうしても納得することができないのであります。しかも片方においてそういうようにきめながら、最近納得のできないことは、たとえば今度の麦の統制撤廃後、米の供出に対する基準を、この十一月から、内地は少くとも二畝以上のものに供出義務を負わすとはつきり閣議決定されておる。すなわち一方では農地の拡大を防止しておきながら、供出義務は二畝以上に置いておる。こういうような点から考えても、いわゆる零細農といわれる人々——もちろん日本の農民はほとんど貧農に近いのですが、そのうちの極貧農に部類するような人人の農地の拡大を防ぐという考え方身体が、私は大きな問題だと思うのですが、こういう点についてどういうように考えておられますか。
  48. 平川守

    ○平川政府委員 もとより三反歩という一つの限界にはいろいろ議論もありましようし、三反歩がいいか、二反歩がいいか、四反歩がいいかということになれば、厳密に三反歩がいいのだ、それ以下はいけないのだというようなことはございません。ただ考え方といたしましては、専業の農家として成り立つには、やはり一町歩内外の面積が必要であろうと思いまするけれども、三反歩以下の農家を一応除外するという考え方は、貧農を除外するという考え方ではなくして、そういう農家はむしろ攻入原は他にあるのだ、つまり農家として色彩が非常に薄いのである、そういう考え方からして限りある農地を分配いたします場合には、農業の色彩の強い農業で、事業にやつて行こうという意欲のある農家にまず優先的に分配するのが順序ではないか。三反歩以下の農家は大部分が兼業農家であり、且つ兼業農家のうちでも主たる収入を他の事業に持つものが多いのであります。従いましてこれは農家としての色彩が薄いものである。もとより国民全体の政策としてこれらに対する対策考えることは必要であるけれども、限りある農地を分配するという農地法の問題といたしましては、農家としての色彩の強い専業自作農家たるべきものに重点を置く、しかもそれが適正たるべくして一町歩に足りないで六反歩しかないというようなものに優先分配するのが適正ではないかと考えております。
  49. 竹村奈良一

    竹村委員 私は今の答弁でも遺憾ながら納得ができない。今おつしやつたように三反歩以下のものは他の収入によつて生活しておる。従つてこれにはやらなくてもいいのだ、これは少し日本の農村の状態を従来の農林省なりにお考えなつ考え方ではないか。というのは、たとえば三反歩以下の小さい農家はほかに生計の道を求めておると言われるが、それは土地はほしいけれども土地が得られないから、しかたなくほかの仕事について生計の道をある程度求めておるというのが大多数なんです。従つてもしただいまのあなたの御答弁から行くならば、ほんとうに農業で生活をしたいと考えておつても、前の地主的土地所有の関係からたまたま自分がつくれなくて零細化して行く。こういうものをどうして救うところの規定があるか、この点だけはつきりしておきたい。
  50. 平川守

    ○平川政府委員 もとよりお話のような、農地が足りないために零細化して行くということも、確かに一つの原因であろうと思いますけれども、しかし一方から見れば、他の職業が主であつて、飯米がほしいために一反歩か二反歩やつておるという者も相当あるわけです。しかし法律としましては、そこで一応計画的な基準で何らかの差別をつけざるを得ませんので、こういう三反歩というような、現状を客観的にだれが見ても明らかなような形で押えておりますけれども、お話のようにほんとうに自作農になりたい、しかし土地が足りないために現在やむを得ず三反歩をやつておる、こういうものにつきましては、ただいま申しました例外許可を与えて行く、こういう道で救済いたしたい、かように考えております。
  51. 井上良二

    井上(良)委員 この案を審議いたします上において非常に重大な問題は、法案の第一條にもございますように、中堅農家を創設するということがこの法案のねらいのようになつておるわけです。そこで先般から中堅農家の定義につきましていろいろ論争をいたしておりますけれども、一向その点が明確にされません。これは御答弁になりましたように非常にむずかしい問題でありますが、かりに農家一軒当りの家族が六人として、単作地帯の場合はどのくらいの経営面積があれば、農家として大体成り立つて行く、また裏作の場合はどれだけ必要である、これに家畜が入つた場合はどうなる、果樹園芸等の場合はどうなつて行くという、そういうおよその経営規模というものが示されませんと、問題になつております中堅農家の創設というものが非常にあいまいになつて参りますから、これは一応この次の委員会までに関係部課ともよく相談をされまして、大体およその農林省考えております構想だけは明らかにしてもらいたい。そうしませんとこの法案審議の上に重大な問題になつて来ますから、この点だけ特にひとつ打合せをされまして、大体こういう方向だということを明らかにされることが、審議の上に非常に便宜でもありますから、ぜひひとつ明らかにして参つてもらいたいことを特に希望申し上げておきます。
  52. 河野謙三

    ○河野委員代理 農林省としてはこの問題は資料として提出されますか。
  53. 平川守

    ○平川政府委員 資料として出します。
  54. 河野謙三

    ○河野委員代理 井上さんの今の御意見につきましては、資料をもつてお答えするそうですから、残余の質疑は次会に譲りまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時五分散会