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1952-06-07 第13回国会 衆議院 農林委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月七日(土曜日)     午前十一時三分開会  出席委員    委員長代理理事 平野 三郎君    理事 河野 謙三君 理事 井上 良二君       越智  茂君    小淵 光平君       川西  清君    坂田 英一君       坂本  實君    千賀 康治君       幡谷仙次郎君    原田 雪松君       大森 玉木君    吉川 久衛君       石井 繁丸君    竹村奈良一君       足鹿  覺君  出席政府委員         農林政務次官  野原 正勝君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         農林事務官         (農政局農政課         長)      大澤  融君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 六月六日  耕土培養法案坂田英一君外二十三名提出、衆  法第六二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農地法案内閣提出第八四号)  農地法施行法案内閣提出第八五号)  開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二五号)  耕土培養法案坂田英一君外二十三名提出、衆  法第六二号)  農産物の検査及び防疫対策等に関する件     ―――――――――――――
  2. 平野三郎

    平野委員長代理 これより農林委員会を開会いたします。松浦委員長が本日病気のため、私がかわつて職務を行います。この機会に念のためにお知らせいたします。昨日坂田英一君外二十三名提出耕土培養法案が本委員会に付託になりました。御承知おきを願います。これより本案議題といたし審査を進めたいと思いますが、御異議ありませんか。  (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平野三郎

    平野委員長代理 異議なしと認めます。それでは本案の趣旨について提出者説明を求めます。坂田英一君。
  4. 坂田英一

    坂田(英)委員 ただいま議題となりました耕土培養法案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  米麦等食糧を始め各種農産物生産を増加いたしますことは、経済自立基本要件でありますとともに、農家経済安定のためきわめて重要な施策であることはいまさら申し上げるまでもないところであります。農産物増産をはかりますためには、まずもつて農産物生産の基盤である農地土壌、いわゆる耕土生産力を培養すること、すなわち土をつくり、土を肥やさなければならないのでありまして、特にわが国のように、過小の国土の中に過大の人口を養わねばならない国柄におきましてはその感をいよいよ強くするのであります。  農地生産條件を改善するため、すでに農業土木的手段によつて土地改良が行われて来ているのでありますが、これと並行して耕土特に生産力の低い不良耕土に対して、農芸化学手段によつてその化学的手段によつてその化学的性質改良をはかりますことは、極めて重要な事柄でありまして、これら両者相まつて初めて農地生産力はその全きを期待し得ると考えられるのであります。ひるがえつてわが国耕土実情を見ますと、自然的または、人為的の諸原因によりまして、酸性土壌秋落水田土壌を初めとし、塩害地泥炭地等各種低位生産不良耕土が広い範囲に分布し、さらにますます拡大せんとする傾向にありまして、農業生産を著しく阻害し、農村窮乏の重大な原因をなしているのであります。従つてかかる不良耕土を改善し、国家資源としての土地肥沃度酒養に努めますことは刻下の急務でありまして、かような事情にかんがみ、ここに一貫した計画のもとに、かかる不良耕土の解消をはからんとするのが本法律案提出するに至りました理由でございます。以下この法律案内容について概略御説明申し上げます。  第一は、耕土培養地域指定でありまして、都道府県知事は、農林大臣指定従つて管内農地について、その土壌化学的性質、不良の程度分布状況等に関する調査を行い、耕土培養を実施する必要があると認められる地域について、都道府県農業委員会意見を聞き、農林大臣承認を受けて、耕土培養地域として指定することにより、耕土培養事業を集中的かつ敷果的に遂行しようとするものであります。  第二は、対策調査でありまして、前に述べましたところによつて指定された耕土壊養地域をその区域内に含む市町村の長は、市町村農業委員会意見を聞いて、都道府県対策調査の実施を請求することとしようとするのであります。ここで対策調査とは、農地について耕土培養の要否及びその具体的な方法を明らかにするために行う細密な調査のことをいうのであります。なお市町村長による対策調査請求は、農業者または農業団体所定條件従つて請求した場合に瞬いても行わなければならないこととしようとするのであります。  第三は、耕土培養事業計画の樹立でありまして、市町村長は、その請求によつて行われた対策調査の結果、耕土培養を実施する必要がある旨の指示並びに勧告を受けたときは、その勧告に従い、市町村農業委員会意見を聞き、かつ関係者の同意を得て、所定内容によるその市町村耕土培養事業総合的計画を定めて、都道府県知事承認を受けなければならないこととしようとするのであります。しかして耕土培養事業は、この計画に準拠して行われることとなり、事業施行者は、市町村耕土培養地を耕作する農業者または農業団体となるのであります。  第四は、補助金の交付、奨励措置または指導監督等助成でありまして、国は、都道府県に対し、耕土培養地域指定のための調査対策調査及び耕土培養事業指導に要する経費並びに事業施行者耕土培養において施用するものを購入するために要する経費に対し交付する都道府県補助金に対して補助金を交付するとともに、事業施行者及び耕土培養において施用するものまたは耕土培養効果を確保するため施用を必要とする肥料の供給を行う者に対し資金融通またはあつせんその他の奨励措置を講じ、あわせて事業施行に関し必要な指導を行う等、諸般の助成を行うこととせんとするのであります。  第五は、開拓地に対する特例でありまして、開拓地特殊性にかんがみまして、開拓地に対しては政令によつて地域指定対策調査及び耕土培養事業計画設定等について特例を設けることができることといたしたのであります。  以上が本法律案内容の大要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成を得られますよう切望する次第であります。
  5. 平野三郎

    平野委員長代理 これにて提案理由説明を終りました。本案に対する質疑次会より行うことといたします。     ―――――――――――――
  6. 平野三郎

    平野委員長代理 これより開拓者資金融通法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。
  7. 竹村奈良一

    竹村委員 まず私のお伺いいたしておきたいのは、この法律によりますと、営農資金を貸し付けることが目的だといわれておりますが、従来の長期資金貸付によつて、一体貸付額償還あるいは利子の支払い、こういうものが現在どういう状態になつておるか、この点をまず伺つておきたいのであります。
  8. 平川守

    平川政府委員 昭和二十五年慶までに貸付を了しました金額が六十四億五千万円、これに対しまして償還に入りました金額が、二十六年度までに七千七百万円、これに対しまして収入済みは六千六百万円、それの歩合は八六%であります。
  9. 竹村奈良一

    竹村委員 これは大体貸付終つた中から、償還というものが一応設定された額のうちの、利子は別でありますか、含むのですか。
  10. 平川守

    平川政府委員 利子も含んでおりますが、利子法律によりまして、すえ置き期間中は無利子ということになつておりますので、金額はきわめてわずかであります。
  11. 竹村奈良一

    竹村委員 そこで私は、この貸し付けられた金というものが、政府の方では、ほんとに開拓の面に使用されておるかどうか、こういうような調査をされたことがあるかどうか。それからまた、その後貸付金をめぐつて、いろいろなうわさ等新聞紙上に出ているわけでございますが、こういう点についても調査されたかどうか。従つて、この資金というものが、ほんとう開拓のために全部使われて曲るかどうか、この点を調査された点がありましたならば、承つておきたいと思います。
  12. 平川守

    平川政府委員 これは原則といたしまして、地方庁に常に指導さしておるわけでありまして、もちろん開拓者のために全部使われておると考えておりますが、ただ組合等において若干問題が起つておるようなことも聞き及んでおるのであります。問題の発生しました場合に、当該の事案について、県当局あるいは農林省において、十分監督指導いたしておるわけであります。
  13. 竹村奈良一

    竹村委員 なお今度のこの法案によりますと、今後五年間、いわゆる営農資金として貸し付けるにつきまして、利率が少くとも年に五分五厘ということになつておるのでございますが、営農資金として五分五厘という利率が適当かどうか。はたして農民が営農資金としての役割を果し得るために、こういう利率でいいかどうか。これは私はあまりに高過ぎるのではないかと考えておりますが、その点についてどういうように考えておりますか。
  14. 平川守

    平川政府委員 これだけの利率経営に支障がないかどうかということは、きわめて厳密に申せばむずかしい問題でありますが、これは大体の考え方といたしましては、入植早々営農に必要なる肥料家畜等資金につきましては、三分六厘五毛の利子をもつて貸付をいたしておるわけであります。従来はただそれだけの制度であつたわけであります。ただ今回この利子を上げました貸付けを考えておりますものは、入植後三箇年、従来の貸付でやつて参りました開拓農家で、なおかつまだ不十分である、そこで家畜等の購入につきまして、中金程度でもよろしいから、さらに資金貸付を望む、こういう状態のものがあるわけであります。従来の法律のままで参りますと、法律の運用で、法律上からは必ずしもできないわけではございませんけれども、従来の建前といたしましては、入植後三箇年に対して、一定の金額を貸し付けるということになつておりましたわけでありますが、それにプラスするものとして考えておるわけであります。御承知のように、一般農家に対する家畜導入につきましては、利子補給制度がありまして、五分の利子を補給する、これによつて中金等から借り入れます一割二分五厘程度利子が、七分五厘程度に低下する、こういうことになつておるわけであります。開拓農家のことでありますから、それよりも若干下げたいということで、三分六厘五毛程度には行かないけれども、五分五厘程度でやつて参りたい。これで営農としては、一応三箇年を経過した農家のことしでありますから、まず成り立つのではないかというように考えております。
  15. 竹村奈良一

    竹村委員 開拓者が三年後も必要とするので、少し高いけれども貸す、こういうこと重言つておられるが、それで私ひとつ承つておきたいのは、規在こういうふうに、開拓者に対して国家の費用をもつていろいろ貸付をやつて開拓地の完成あるいは開拓者生活を改善する方策をとられるわけですが、しかし実際問題として、個人がこの貸付を受けるについては、相当手続や何かで困難があるのではないか。そこでいわゆる営農資金として、今年度は一体どのくらい貸す予定であるか、あるいは来年度はどれだけの予定であるか、この点ははつきりしておるのですか。その点を伺いたい。
  16. 平川守

    平川政府委員 本年度予定いたしておりますのは、約二億一千七百万円程度でありまして、これによつて家畜約四千九百頭ほどを予定いたしております。これにつきましては、現地の各開拓組合からは非常な要望がございまして、ことに開拓地は御承知のように、主として畑作地帯でありますので、家畜導入したいということが非常にやかましい問題であるのでありまして、この程度のものでは必ずしも十分とは言えないかもしれませんけれども、大体この程度補給いたしますれば、二十三年度入植者に対しましては、大体家畜が行き渡るという程度になる見込みでございます。
  17. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、二十四年から後の入植者に対しては、まだ大体行かぬということしになるのですか。この点については別な方法をとられるのでありますか。
  18. 平川守

    平川政府委員 一応二十四年度のものは、四、五、六と三箇年間、従来の一般貸付金が参るわけであります。古い開拓者につきましては、それがだんだん切れて参りますわけで、こういう要望に応じたい、かように考えておるわけでありまして、二十四年度入植者につきましては、明年度考えたい、かように考えております。
  19. 竹村奈良一

    竹村委員 そこでもう一つ聞いておきたいのですが、現在まで一度入植されてその後入植を放棄して離れられた農家は、総計でけつこうでございます、大体幾らくらいあつたか。しかしてそのおもな原因は一体何であるか、この点をお聞きしたい。
  20. 平川守

    平川政府委員 二十六年度までの入植戸数は、全体で二十万七千戸、そのうち離脱いたしました戸数が六万四千戸、パーセンテージにいたしまして約三割が離脱しているということになつております。その離脱の原因につきましては、明確に申し上げかねるのでありますが、ごく大体申しますと、経営上うまく行かないというようなのが三、四割あるようであります。そのほか世帯主が健康を害したとか、そういうふうなものが二割あるいは二割五分、そのほかいろいろの事情――まあ大体において非常に苦しいという状態で離脱した者が、まず過半数を占めておる、かように考えております。
  21. 竹村奈良一

    竹村委員 この統計でもはつきりしておりますように、少くともいわゆる入植して、そうして農業に精進しようと考えた者が、その途中でいろいろな事情とはいえ三割が離れておる。このことを私は政府の方でもつと重視して考えなければならぬと思う。と同時に、今までの開拓計画が一応進められておりますけれども、実際開拓されて、そうしてこれが完成されている土地というものは、計画よりもだんだん遅れて来ている。この原因もわれわれは考えなければならぬ。それは開拓そのもの助成するのに、問題の進められ方というものが、非常に原始的な形で、また入植した者も、いろいろ家庭のため、生活のためとはいいながら全部をあげて入植して開墾に打込むということができ得ないような開墾者も非常にあるのじやないか。こういう者に対して特別な措置を構じなければならぬと思うのです。この点はひとつ政務次官に聞きたいのですが、そういう離れる者に対する特別な措置を講ずる考えがあるのかどうか、それを承つておきたい。
  22. 野原正勝

    野原政府委員 開拓入植した方たちが、あくまでも営農を確立し、りつぱに入植者として成功できるというように、指導育成いたしたいというふうに考えまして、営農指導には特に重点を置いているわけであります。従つてそこに政府開拓に対する種々なる助成とともに、この開拓資金融通法に基く金融の措置行つて営農を確立させるという対策をしておるわけです。従来相当離農者を出したと“うことは、これは終戦後における開拓は、実情から見まして、必ずしも適切妥当に行われていない面が相当あつた。つまり適地を選ぶにも、必ずしもりつぱないい場所が選ばれるというふうなことでなしに、かなり適当でない所にも入植をするというようなこともありましたし、また開拓に入つて来る人たちも、開拓のいかに困難であるかという実情を十分承知しないで、いわば引揚者であるとか、あるいは戦災者であるとかいうような諸君が、職を求めるというような意味合いで入つていた。ところがその困難に耐えかねるというようなこともあり、いろいろなことが原因となつて相当脱落者を出した。今日以後におきましては、こういう脱落者は一人も出さないというような決心で、農林省指導在しておるわけであります。開拓は、その初期においてはいろいろと保護助長対策辛享けれども、やや営農が確立されるというような段階になりますと、放任というと語弊がありますが、それに対する保護助長対策が十分でなくなるというようなうらみがあるのであります。昭和二十三年以前の入植者等は、ちようど入植しましてからすでにもう五年、六年を経過しておる。非常な苦心によつて、ようやく営農の見通しもついた。この際非常に苦しい中からりつぱな営農を確立しようとして努力しているわけでありますが、資金問題等をめぐつて必ずしも思うように行かないという点があるのであります。そういう点につきまして、この開拓者資金融通法の改正による資金融通が行われまするならば、一段と開拓営農のために効果があるだろうというふうに考えているわけであります。
  23. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一度事務当局に伺いたいと思います。たとえば最近茨城県の、所は忘れましたが、ある開拓団のところでございます。これは現地から報告でも来ておると思いますが、ともかく開拓地開拓をして、それを個人に分配する場合に、たとえばそこの役員に気に入られない入植者というようなものは、巽際において実に悪い所を振り当てられたり、あるいはその他のこういう借入れに対する恩恵が、必ずしもその者に行かないというようなことが行われて、いわゆる開拓地におけるボス的な存在があつて入植者との間にいろいろな紛糾が起き薫るという事実を私は知つております。こういう点は実際調査されておるのかどうか。またもう一つ、今度の家畜導入の際にあたりましても、單に昔のような軍隊組織のままに、いわゆる開拓入植者の中の団長の命に従わざる者は、政府のこういうふうな施策に浴することができ得ないような点がないかどうか、こういう点について、たとえそれが考え方が少し違つてつても、その実際の面におけるところの開拓を完成し、その開拓地におけるところの農業生産を増大さすという者は、ひとしくこういう方法によつて、たとえば家畜導入するとか、あるいは資金を必要とする場合においては、その者にも貸し与えられる、あるいは借りるような措置をとるのが、ほんとうだと思います。しかしそういう開拓団で――これは全国全部とは言いませんが、一部においてそういうことが行われるとすれば、私は開拓行政に対する一つの汚点だと思います。この点についてあなたの方で調査をされたか、あるいはそういうことがあつた場合にはどうなされるか、あるいは今後の家畜導入なり営農資金についても、そういうようなきらいがあつた場合に、警告なり何なりを与えられるのか、この点はどういうふうに考えておられますか。
  24. 平川守

    平川政府委員 開拓の当初におきましては、特に開拓組合としての共同の活動分野が非常に広いわけでございまして、その組合の自主的な活動ということにかなり期待左大きく持つておるわけであります。従いまして、お話のごとき問題は、主として組合運営がまずいという場合かと存ずるのであります。結局組合自体を民主的に、非常に独裁的な何でなしに、多くの人々の意見を取入れた運営に持つて参るということによつて、解決する問題ではなかろうかというふうに考えられるのであります。役所の方としましても、県にそれぞれ係の官を置いておりますが、具体的にそういうまずいケースが起りますれば、常に指導あるいは注意を怠らないということになつております。概して申しますると、終戦後の入植早々の時分に、かなりまずいことがあつたようでありますが、最近におきましては、よほどそういうケースは少いように考えております。しかしなお注意を怠らないつもりでおりますので、具体的にそういう問題が起りますれば、われわれの方でも十分注意するつもりでございますので、具体的の事例については、組合員なり何なりから、県の方なりあるいは農地事務局なりに申出があれば、十分そういう、ある人が非常に不公正な取扱いを受けるということのないようにしたい、かように考えております。
  25. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一ぺん根本的な点について聞いておきたいのですが、大体開拓地開拓に対する予算等を見ておりますと、相当組まれておるのですが、しかしそれだからといつて、これは決して、満足すべきものではないのでありますが、今後日本において――これは農林省の統計充つたかと思いますが、少くとも日本の国において開拓に適するような面積は、私は八百万町歩ある、かように見ておるのですが、一体農林省の方ではどれだけあると見ておられるのか、しかもそれをどういうふうに、何箇年計画開拓しようと考えておられるのか、この点を伺いたい。
  26. 平川守

    平川政府委員 全国土地を、主として傾斜度から見まして、傾斜十五度以内というような所で、荒つぽく押えましたものは、たしか五、六百万町歩あつたかと思います。ただしかしこれは、そういう意味の図面において傾斜度から見たといつたようなものでございまして、具体的にそこに開拓民が入つて、はたして営農が成り立つかどうかということにつきましては、よほど愼重を要すると考えます。大体私の方で、傾斜度のほかにさらに気象その他の條件経済條件等を概査いたしまして、今後開拓に適するだろうと現在見ておりますものは、約七十万町歩くらい、これならば、非常に悪い所へ入れて、そのために開拓民が困つたというような非難を受けることなしに、十分営農の成立する開拓農家ができるだろうという、どつちかと申しますと、かたいところを踏んでおるつもりでございます。七十万町歩くらいはある。一応これを十箇年ぐらいでやりたいというのが、私どもの考えでございますが、これはしかし予算を伴う問題でございまして、御承知のように本年度あたり予算のスピードで参りますと、まず二十年ないし三十年はかかるというふうに考えられます。
  27. 竹村奈良一

    竹村委員 私は農林次官に伺いたいのですが、先般もいわゆる食糧自給の問題をめぐつて農林大臣に質問いたしましたところ、農林大臣は、大体五箇年計画で、相当食糧自給態勢をつくつて考えると言われましたが、今農地局長説明を聞きますと、わずかに七十万町歩、われわれは八百万町と押える、その約一割にしか相当しないものが、今後十箇年くらいかかる、こういう話ですが、そういたしますと、農林大臣の言う食糧自給五箇年計画というようなものは、これは夢物語りを言われたというふうに考えるのですが、この点はどうでしよう。これは十箇年もかかつてわずかに七十万町歩くらい開墾しても、どうも大したことにならないと考えますが、この点はどういうふうに考えますか。
  28. 野原正勝

    野原政府委員 農林大臣の答弁の要旨をよく知りませんが、私推察しますのに、食糧増産五箇年計画は、大体米麦を主にした食糧自給、しかも土地改良あるいは開拓干拓等を、具体的な形態として考えられた最大限度までの国内の食糧自給態勢を強化するという意味合いにおいて立案されたものであつて既耕地土地改良事業等を大いにやると同時に、また新しく耕作面積も増加せしめるというような点で、あの計画は立てられておるというふうに私は見ております。ただ竹村委員の御質問の、八百万町歩開拓できる土地があるということ、これに対して平川局長のきわめて現実的な面から見た、かたいところを踏めば七十万町歩という、たいへんそこには開きがあるわけでありますが、私の見解を申し上げますならば、これは見方によつていろいろあると思うのです。つまり今までのような日本農業の姿で米や麦をとるというような観点から言うと、あるいは七十万町歩ぐらいというところがかたいところではないかと思います。主として従来考えておる日本農業の姿、これはスイスあたりのやつておるところの山岳農業であるとか、あるいはデンマークなどのやつておる輪作形態による酪農経営というようなものまで考えて、ひとつ農業経営というものを拡大強化して――私はいつも何かというと言うのですが、山も一つの農場だというような概念から、今後の山の問題なども考えて行くとなると、これは非常に拡大されて来るのであります。但し日本国土の現状から見まして、そういう場合であつても、森林森林としてやはりその機能を発揮させなければならぬわけですから、これを開拓に適するというようなことからみだりに切ることは、これはまた治山、治水の面、国土の保全の面から危険が伴いまするので、おのずから山地に対する問題、あるいはまた牧野の問題、酪農の振興とあわせ考えて、漸次農業の支配力というか、及ぼす範囲というものが驚く広がつて行くことは、期待されるわけであります。いろいろな面から見ると、将来おそらく今後十年なり二十年なり、人口が一億にもなり、それ以上にもずつとだんだんなつて行く場合においては、かなり広汎な地帯が、やはりその環境にふさわしいような農業経営の対象として考えられて行くのではないか、現段階においては、局長の言う七十万町歩というようなかたいところを踏んで行くのが適切であろうと思うが、これはずつと将来の問題としては、日本農業経営の行き方、農林一体として、そこに総合食糧自給態勢とも申すべき、あるいは土地生産一つの大きな産業として考えて行けば、これはそういつたかなり広い部分がその対象として考えられる段階が来るのではないかというふうに考えます。その点から言えば、あながち竹村君の言うのも、單なる一つの机上の空論ではないだろう、やはり理想としては考え得ることであるというふうに考えております。
  29. 竹村奈良一

    竹村委員 いろいろ構想を承りましたが、この点については、やつておりますときりがないのでこの辺でやめますが、しかし、少くとも私の言う八百万町歩というのは別としても、一応大体地図の上から見れば、六、七百万町歩はある、これははつきりしているわけです。従つて地図の上から見て開拓可能地が六、七百万町歩はあるとするならば、そのうちの一割を可能地として開拓される。しかし私は地図の上で可能なものを、いかにしてこれを現実の可能にするかというところに政治の根本があり、食糧自給の根本があると、考えておるのであります。しかしごの議論をやつておりますときりがないので、私はやめます。  そこでもう一つつておきたいのは、こういう七十万町歩を十箇年で開墾して行くということになりますと、日本農地というものはだんだん減少して来るのではないか。少くとも開拓地等において開拓をやつて、そこで果樹の栽培をするとか、水田をつくるとか、麦をつくるというように持つて行く、総合的な農業計画というものが必要になつて来るのではないかと思います。そういう点は議論はいたしませんが、私の聞きたいのは、少くともこういうよな形でやつて行くと農地が非常に減少して行く。現在でも、たしか二十七万町歩であつたと思いますが、終戦直後に比べてみると農地は減少している。このことははつきりしているのです。そうなりますと、どうしてもだんだん減少して行くのではないか。これに対しましては、先般農林大臣は、人口も増加し、宅地や工場もふえて行くので、農地は減つて行くから、これに対しては何とか法案考えていると言われておりましたが、それは別として、ここで私の言いたいのは、開拓地で現在一番問題になつております警察予備隊あるいは米軍の駐留基地に取上げられようとしておるもの、あるいはその可能地として入れられておるものは、一体どれだけのものがあるか。しかもこの取上げられようとするものにどういうような措置をとるか。これは前々から何回も質問しておるのでございますが、入植者に対する補償等もいろいろ食い違つて、百万円ぐらいと農林大臣は言つたけれども、実は予算は一文もありませんということでは、開拓者は非常に不安でたまらないと思うのですが、これに対しては一体どうするのか。どのくらいの面積が取上げられる予定になつておるのか。これに対してどういう考えを持つておるのか。この際明らかにしていただきたいと思います。それに対して、片方で少しく営農資金をこしらえても、こういう点があつて開拓者としては非常に不安でたまらないと思いますので、この点を聞いておきたいと思います。
  30. 平川守

    平川政府委員 駐留軍の用地につきましては、従来接収されております農地が約五千八百町歩、それから薪炭その他の附帶地が八千九百町歩ほどございます。これを今後どうするかにつきましては、現在合同委員会等で相談中で、ございまして、現在はこのすでに接収されたところは使われておるわけでありますが、おそらく七月ごろまでに、あるものは解除し、あるものはふやすということの、具体的な地区についての相談が固まると思いますが、われわれといたしましては、極力農地を避けようという方針をとつておるわけでありまして、合同委員会といたしましては、アメリカ側もその趣旨に賛成をいたしておるわけであります。従いまして、現在らくの地区について相談をいたしておるわけでありますが、その地区の中に農耕地が予定されております場合には、できるだけこれを避け、何かかわりの所はないかということで、場合によつては共同調査等もいたしまして、極力農地をつぶすことを避ける。また開拓者がその土地を失つて他に出なけ恥ばならぬということを、極力避けるという方法をとつておるわけであります。具体的には、七月ころになりませんとはつきりいたしませんが、おそらくそう多くの農耕地をとられることなしに済むのではなかろうか。またわれわれとしては、そういうようにいたすために努力しておるわけであります。警察予備隊につきましては、従来使われております農地が約二千二百町歩、附帯地が二千五百町歩くらいでありまして、これについてはまだ向うの方の要望がはつきりいたしません。現在私どもの手元では、おそらくこの辺の地区ということを考えているだけでありまして、どのくらいの面積をどうするかということについて、まだ具体的な相談に入つておりません。駐留軍の方を急ぐものでございますから、もつぱらそちらの方をやつております。これについても、態度といたしましてはまつたく同様でございまして、できる限り農耕地を避けるという態度で折衡いたしたいと考えております。なお万一農耕地をとられる場合の補償の問題につきましては、たとえば農業改良のためのダムの水没地の農家の実例にいろいろ似たようなものがあるわけでありますから、そういうものと劣るところのないような、つまり開拓者あるいは農家が、このことのために経済的に非常な不利をこうむるということは、少くとも避けるという意味におきまして、万やむを得ず農耕地をさかなければならぬ場合におきましても、その補償について十分考慮するということで、これにつきましては、目下大蔵省と補償基準について折衡中の段階であります。
  31. 竹村奈良一

    竹村委員 そこで私はもう一つ聞いておきたいのは、たとえば開拓地をいわゆる駐留軍が直接使用するもの以外に、行政協定を見てみますと、その基地の周辺の権利、権能も、あげていわゆる駐留軍のもとに入るということになつておるのです。そういたしますと、今おつしやいました五千八百町歩、八千九百町歩以外のその周辺、つまり開拓地がとられて基地がつくられているその周辺の部分は、どのくらいの範囲ですか。單に開拓地だけではなしに、その附近に散在するところの、今までの普通の農地も非常な脅威を感ずることになると思うのですが、この点に対してはどういう考えを持つておられるのですか。これはどのくらいの範囲に及ぶのか。その辺はどういうものですか。
  32. 平川守

    平川政府委員 直接の支配下に入りますのはただいま申しました面積でありまして、その他はその地区に至る途中の通行その他の程度というふうに考えております。
  33. 平野三郎

    平野委員長代理 竹村君に申し上げますが、他に質疑の通告者がありますL、他の法案開拓行政全般についての御質疑の機会もありますから、その点御留意の上この法案の趣旨から逸脱しないようにお願いいたします。
  34. 竹村奈良一

    竹村委員 それでは委員長に申し上げますが、そういうような点について十分質疑をいたしたいと思いますので、農地法の審議にあたつては、十分質問する時間を留保して、この問題については委員長の注意を了承してもう一点だけにとどめます。  私が伺いたい最後のことは、今おつしやいました補償の問題ですが、ほかの農業改良その他についての例を参酌してとおつしやいますけれども、開拓者が孜々営々として開拓した土地を取上げられる場合、大体心配のない程度にするというだけでは問題は解決しないと思う。かわつた形における開拓地があるのだから、国家の費用で元の開拓地入植した当時におけると同じ條件のもとに開拓し得る土地を与え、しかも開拓するまでの費用、それまでの生活費等を補償するくらいの積極的な考えがなければならぬと私は思つております。根本的にいいますならば、これを取上げることには私は絶対反対であります。しかしもしそういうことになつた場合においては、単なる補償を大蔵省で考えているというだけでは、日本食糧増産の第一線を当担する開拓者に対する政府考えとしては、あまりにも不安でならないのでありますが、政府としては至急に具体案を立てて、これはどうするのだということを言われないと、どこが駐留軍にとられるのか、あるいは警察予備隊にとられるのかもわからないという問題が起る。そこで農地法の関係で農林大臣が火曜日に来られるそうですから、至急にまとまつた見解を農林大臣の品からはつきり言明できるように、あなたの方から、あるいは政務次官にもお願いしておきますが、答弁できるようにして出席してもらいたいということを、特に政府にお願いして私は質問を終ります。
  35. 平野三郎

  36. 足鹿覺

    足鹿委員 私も、本議案に関連して開拓政策の問題について伺いたいと思つておりましたが、他の機会でもまた発言の機会はあるようでありますので、ほんの二、三、今の竹村委員が御質問になりました点と関連いたしまして、開拓政策の全般について若干お尋ねをしてみたいと思います。  接收地の問題が今やかましくなつておりますが、補償基準の問題で、大蔵省その他ともなかなか意見が一致を見てないように聞いておりますが、この点についての折衡の現在までの経過ばどういうふうになつておりますか、それを一つお伺いいたしたいのであります。それから補償金なり賠償金をもらつた農家に対しての課税免除のことを、関係方面でも相当期待をいたしておりますが、そういう点について、関係省との間にいかように話合いが準んでおりますか。それを第二にお伺いいたしたいと思います。  現在農地調整法があるのでありますが、この農地調整法が、結局、接収地の問題に関連しましてはある程度無視されるような傾向もあると思うのです。伝え聞くところによりますと、現行農地調整法よりももつと強度な強制徴収のでき得る新法律を当局は準備をしておられるということを聞きますが、それを第三点としてお尋ねをいたしたいと思います。
  37. 平川守

    平川政府委員 補償基準の問題につきましては、大蔵省の方と話合いをいたしまして大体その土地代及び立木その他の財産に対する補償、それから家屋の移転費というような、従来水没地の農家等に対して出しております一般的な各項目につきましては大体話合いがついておるのであります。ただ問題になつておりますのは、いわゆる作離れ料の問題でりまして、われわれの方は大体年所得の五年分くらいを作離れ料として出してもらいたいということを要求しておりますのに対しまして、大蔵省の方では三年分くらいということを考えておるようであります。この点につきましてはまだいろいろ折中で、ございまして、われわれといたしましては五年分くらいを出してもらわなければ困る。先ほどのお話もありましたように、新しい開拓地に移るにしましても、それだけのものは必要であるということを主張しておる段階であります。  それから、親税の問題につきましては、そういう各種の補償料というものは、大体において、いわゆる損害賠償、損失補償のような考え方のものであるからして、少くとも所得税の対象にはしてもらいたくない、こういうことを主張しておるのでありますが、この点は大体了承しておるようでございます。農地につきましては、財産評価の差額の程度に対してかけるという程度で、その他の、作離れ料その他に対して所得税をかけるというようなことはしない。それから家屋の移転費というようなものに対しても、これは損害賠償のようなものであるから所得税はかけないということを主張しておりまして、大体その点は了承しているようでございます。ただ、形式的にまだはつきりいたしませんので、その点を形式的にはつきりいたしたい、かように考えます。  それから第三点は、これは先般も、農地の壊廃がはなはだしいので、農地がむやみに壊廃されないような、もつと強い法案考えたらどうかという御意見が当委員会からあつたわけでありますが、私どもといたしましてもいろいろ研究いたしておるのでございますが、まだ具体的に申し上げる段階に至つておりません。要は、農地が壊廃されますのに対して、許可制度というようなことが厳密に行われることが必要であるということと、またもう一つ農地の壊廃される一つの原動力は、農地をつぶす方が、新しく林野あるいは工場の焼け跡等を修復するよりもかえつて安上りであるという状態があるのじやないか。これを何とか直さないことには――警察予備隊等につきましても、われわれ農地の側から極力これを反対いたしますけれども、御承知のように、現に市町村において、あるいは府県において誘致運動が行われているというような事態もあるわけであります。そういう傾向を防ぐ何らかの措置が必要じやないかということを考えておるのでございますが、まだ具体的に申し上げる段階に至つておりません。
  38. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの補償の問題については、大蔵当局ともいろいろ御折衝の上、ある程度結論に達しておるというお話でまことにけつこうでありますまた補償金、賠償金等に対する免税の問題についても、大体話合いがついたということでありますが、それは具体的にはどういう方法によつておやりになりますか。その点についてもう少しお伺いいたしたいと思います。
  39. 平川守

    平川政府委員 結局形式的には、受けまする補償について租税特別措置法の適用をいたしまして、それによつて所得税の対象にしない、こういう措置になるわけであります。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 これは開拓者の死活の問題でありますので、本日御言明になりました点が開拓者の期待を裏切らないように、上り一層強く実現のために御盡力をお願いいたしたいと存じます。  なお、この際開拓政策の問題についてお伺いいたしたいのです。政務次官でもけつこうですからお答え願いたいのですが、今の日本開拓政策は、もうある一つの段階に来ているのじやないかという感じを、私は非常に持つのです。今までのような、政府が最初は集団でやつたものをまた個々の営農に、個人経営に持つて行くというような行き方では、なかなか今後の発展が困難ではないかという感じを持つのです。その一つの現象としては、営農者の病気であるとか、その他いろいろな事情によつてでありましようが、下山をして行く者が相当あろということを先刻お話になりましたが、それをただ單に営農者の個々の事情にのみ求めることは、少し無理ではないかと私は思う。全体的に、下山を余儀なくしなければならぬところの、開拓地における営農の基本的な問題が解決されておらないために、そういう個々の事態が発生して来るのではないかという印象を強く持つておるのであります。従つてこれの対策としましては、私はやはり国営開拓地というがごとき、相当大規模な集団的な方式が坂上げられて行かなければならないのではないかという感じを、最近強く持つております。たとえば野原さんは林野関係の権威者でありますが、林野方面において奥地林の開発が盛んに言われておると考える。この奥地林の開発は、やはり開拓問題と関連をして考えてみなければ、私はほんとう効果が上らないと思う。奥地林の開発に対するところの労喜力の提供であ奮か、いろいろな点において、奥地林開発と開拓者との関係は、私は非常に密接であろうと思う。従つてそれが総合的な計画として取上げられ、そして国がそれに対して強力な支援を与えて行くということが、私は非常に大きな課題であると考えておるのであります。結局この開拓政策というものがもう少し大きく総合的に、林野政策とも相当緊密な連絡のもとに樹立され、実行さカて行かなければ、今後ともますます私は下山、離脱して行く者が増加して行くのではないかということを懸念いたしておるのでありますが、一方においては建設省を中心に総合開発計画というがごとき大規模なものが行われておりますが、それらと農林省方面でお考えになつておる開拓政策との関連というものは、どういうふうに場お考えになつておるのでありますか。乏しい開拓地の現状を見ますと、とても商品生産の自由競争の時代に、この開拓者がさおさして、ほんとうにこのままで最後までなしとげ得ろであろうかということを、私ども非常に心配をいたすのでありましてこれに対しましては、もつと国家の手厚い庇護がくだされなければならぬと私はそう信じております。そういつた面から今回提案になつております資金融通法の一部改正法律案は、非常に私ども不満であります。現在の三分六厘五毛の長期資金にいたしましても、外国の事例等を調べてみましても、デンマークあるいは最近日本が手本にしておるアメリカの開拓資金等を調べてみましても、四十年前後の長期であつて、しかも年二分というがごとききわめて低利なもので現実にやつておる。ああいう経済力のある地轄においてすらも、国家がそういう資金融通をしておるにもかかわらず、日本のようなこの貧弱な開拓地に対しまして、現在の三分六厘五毛でも、私はそういつた国の事例に比べれば、まだ十分ではないと思つておりますが、それを二十三年以前の入植者に対しては、これを適用することなしに、新たに五分五厘に、しかも中期資金に切りかえて行くということは、私は当を得ていないと思うのです。この提案理由を読んでみましても、入植後数年経過して、ある程度力がついておるから、従来の長期資金でなくても中期資金でいいというふうに言つておられますが、しかし現実に三割も離脱者が出ておるということは、開拓者に力がついておらない現実の証拠であります。私は政府提案理由として、入植者が数年経過して力がついたという認識に立つて、このような金利の三分六厘五毛をさらに五分五厘に上げるのだという本一部改正案を提出されたことと存じますが、そういう点で私はこの案は当を失しておると思います。むしろ従来のごとく三分六厘五毛を踏襲して、二十三年度以前のものに対しても新しく資金融通の道を開いて行くことが、私はより必要ではないかと思うのです。にもかかわらずこういう案を御提出なつた当局のその立案の根拠、開拓政策全体について、私どもは関心の度合を疑いたいと思うのですが、そういつた点について政務次官の総合政策の点と、それからこの案を御提出なつた根拠というと大げさになりますが、そのお気持についてもう少しお伺いいたしたいと思うのです。
  41. 野原正勝

    野原政府委員 開拓政策全般に対して非常に建設的な御意見を伺いまして、私も非常に同感の点が多いのであります。開拓に対しまして、いやしくも離脇者を出すということは、一部離脱される方はまことにお気の毒である、開拓政策が徹底を欠いておつたということのこれが原因になるわけであります。その点に対しまして、従来私どもも開拓に先行いたしまして、開拓者を入れるだけの諸條件を整備する、すなわち道路を通すとか、あるいはまた電気までもとはすぐ期待できないにしましても、少くとも道路くらい通してやらなければならぬということは、非常に熱意を持つておるわけであります。ところが国家財政の現状からいたしまして、御承知の通り終戦後における国内の食糧自給態勢の問題とあわせ考えて、開拓政策なるものは非常な熱意をもつて行われたにもかかわらず、入植とその建設とが非常にびつたりと行き得るだけの予算措置がなされなかつたというところにも、問題があるわけであります。せつかく入植者は入つたが道路はできない、あるいはまた建築の方も思うように行かない、同時にまた御承知の通りインフレ時代でありまして、せつかく資金は貸し付けたけれども、建てるころになると借りた金では追つつかなくなるというようなこともございまして、そこに経済の非常な不安と混乱の時代もあつたのであります。今後におきましては、やや安定をしておりまするので、先ほども御指摘のごとく、新しくとられる開拓政策なるものは、一つの転換をするべきではないかというお話でございますが、まことにごもつともでありまして、国土総合開発計画の進展に伴いまして、山林、耕地というふうなものの調整を十分考え合せた開拓が進めらるべきものであると思うのであります。特に奥地開発等と関連しての開拓というものは、私ども実は理想はぜひそうありたいものだと考えておる一人なのであります。もうすでによほど古い話でありますが、私、青森におりました当時、野岱という所がありまして、そこは海岸を離れること約八里の地点で、それは全部国有林でありますが、その国有林は非常に未開発の山林でありまして、その地帯に開発をいたさすべく、国といたしまして、進んでそこを開拓適地として、相当面積を不要存置林野に編入いたしまして開拓させようとしたのであります。ところが当時は今から十七、八年前でありますから、たれも開拓の希望者がないということで、たまたま希望して来る方があると思うと、実際調べてみますと、山が目当てであつて、立木だけもらえばあとはよいというようないわゆる利権をあさる人たちが多い、それではどうも困るのでありまして、切つてしまつたあと、そのまま行かれてしまつては困るというふうなことで、せつかく野山林の約一万町歩の山林開発を進めるためには、としてもそこに定着する相当数の林業労働者、熟練したそま人その他がなければこの開発はうまく行かない。従つて常時そこに開拓民を置いて、そうして営農もやらせる、山林の開発もやらせるという構想を立てまして、そこを不要存置に編入して開拓を進めたわけであります。ところがだれもないということで、そこで私は開拓研究のためにみずから進んで実は開拓をいたしまして、いろいろとそこに農耕地をつくつてやつたこともあります。今はようやく時代の脚光を浴びまして、そこが開拓を始めるようになりました。山の経営開拓がびつたり行つている事例の一つと思つております。全国にそういう箇所はたくさんあると思うのであります。そういう問題は現実のケースとしてとらえまして、私どもは、山の開発と開拓というものは十分考えなければならぬというふうに考えております。  一つの例でありますが、今度岩手山麓の岩洞、ダムというのをつくるという計画がいよいよ実現されますが、そこなどもかれこれ二万三千町歩ばかりの未開発資源がございます。その地帯はやはり開拓をすれば必ずできるところの、少くも四、五千町歩の牧野と農耕地の適地があるのであります。これらもほとんど今まで何ら手をつけておりません。あの丹藤川の奥の岩洞を中心とする籔川一帯も、そういつた新しい時代の考え方から開発が当然実現できろものであるというふうに考えております。そういつた点で、今後の開拓はあくまでも地についた大きな国土の総合開発計画、あるいはまたその現地現地の立地的環境等を十分考えあわせまして進めたいというふうに考えております。  それからただいま今回の資金融通法によるところの融資の利子が五分五厘というふうなことは、どうもはなはだ徹底を欠いておるという御意見であります。私も実は一面同感でございます。でき得べくんば三分六厘三毛という従来の低率にいたしたいのであります。ただ諸外国との比較等もなさいましたが、外国では、アメリカ等では年二分というような安い利息で、非常に長期の資金を貸し付けておる。日本でもそうしなければならぬという非常に高邁な理想と私は拝聴いたしました。日本における国家財政あるいはまた経済の事情等からいたしまして、これは大蔵大臣の領域になりますが、何分にも利息が高過ぎることはお互いが非常に苦心をしておる点であります。その点は国際的な視野から見ましても、おそらく日本ほど利息の高いところは今日はないのじやないかと私は考えますが、それだけに最も低利でなければならないはずの開拓者資金融通も、御指摘のごとく勉強しましてもせいぜい三分六厘五毛というふうな現状でありまして、はなはだその点は国家財政の貧困を嘆かざちを得ないのでありますが、それにつけても五分五厘というのは高いじやないかという御意見は、一応、ごもつともでありますが、何分にも国家全体の財政との関係もありますし、あるいはまた現実の問題としまして、この融通法では一応低利で貸付をしたそのあとのまた営農が十分でない、短期でもいいからその資金を流してやることによつて営農が確立される、そのために営農効果があるというものに対して、短期の五年程度資金融通の道を開こうという、一つの新しい局面展開の意味の資金なんであります。従つて利息等につきましても、他の一般の利息から見れば五分五厘というのは相当安くしてあるわけであります。他との比較対照の問題から言えば、政府としましても、せいぜいできるだけ安くしようとして努力したわけであります。五分五厘というのは徹底を欠いていると言与ば御説の通りでありますが、今まで二十三年度前の利息に対しましては、開拓者資金融通法による貸付けを終つたあとは道がない。その道がないような点に対しまして、一つの新しい道を切り開くという点において、徹底は欠いているかもしれませんが、資金融通法はやはり私は営農上に効果が期待されるのではないか、將来の問題といたしまして、これに対しましては極力金利を引下げるとか、あるいは資金融通のわくを広げるとかいうような努力は、政府といたしまして一生懸命やりたいと考えております。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 いろいろと御苦心のあつたことはわかるのですが、このいただいた資料を見ましても償覆金が一万円から六千円、三千円と三年次計画で一頭六万円の役畜ということになつておか、現在のところ六万円程度でもつてりますはたして役畜の十分なものが購入できるかどうかということにつきましても疑問があります。また将来二箇ますが、年関すえ置いて三箇年間の年賦でありますから、最終は今から五年先になりそのときにおける経済変動というような場合を考えました場合に、私は現在の入植者の案情から見まして、償還能力がはたしてあるかどうか、非常に疑わざるる得ません。従来の年賦償還実績を見ましても、二十四年度のものは相当未納金が少いようでありますが、二十五、二十六年度と二割前後の未納金が現にいただいた資料に載つておりまして、三分六厘程度利率でもつてすらもこの程度の未納金が出ている、いわんやこの金利が五分五厘に引上げられた場合に、はたして現在の開拓地営農として、この償還能力があるかどうか、私は疑わざるを得ません。従つて私は、この点について農林省が御盡力、御努力なさつたことに、ついては認めますが、これはそのままではいけないと思います。この点につきましては、一応この法案がかりに成立いたしましても、もつとこの金利の引下げの点については、農林省をあげて御努力をなさらなければならないと私は思います。従来の利率でもつてすらもこういう事案が出ているのでありますから、私はこの営農資金というものは、たちまち行き詰まりが来ると見ております。そういう点について十分御盡力をお願いいたしたいと思います。なおこの財源はどこから求められるのですか。
  43. 平川守

    平川政府委員 財源は一般会計から繰入れますところの開拓者資金融通特別会計にあるわけであります。つまり一般会計から繰入れるわけであります。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、開拓資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案というのが、別に大蔵委員会にかかつているようでありますが、この十五億三千百二十一万円のほかに二億数千万円というものが加わつて来るわけでありますが、この中に含まつているのでありますか。
  45. 平川守

    平川政府委員 この中に約二億一千万円ほど計上になつているわけであります。
  46. 足鹿覺

    足鹿委員 そうすると、二十三年度前のものについては、現行のままで行くと、金融の道がふさがるから、結局そのものに対して金融の道を開いた、こういう意義をこの法律案は持つておるわけですね。それ以外にあまり大したものはないわけですね。さように解していいですか。
  47. 平川守

    平川政府委員 その通りでございます。
  48. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも私は、この法律案そのものの趣旨はわかるのでありますが、なぜこの三分六厘五毛のものが踏襲できないのでしようか。今野原さんは、アメリカなりデンマークの、四十年賦の金利二歩というような事例が、外国にもあるということを言われたのでありますが、この通り日本でもやれということは申し上げるのではありませんが、そういう面から考えますと、現在の三分六厘五毛というものでも、私は開拓者実情から見ますと、実際においては困難じやないかと思つております。先刻申し上げた資料から見ましても、困難だと思います。それを五分五厘に上げて通さなければならないというその意味が、私にはよく了解できないのです。なぜそのままこれを踏襲して行くことができぬのでありますか。年限を延長して行くことによつて昭和二十三年以前のものに恩恵を与えて行くことは、私は可能だろうと思います。わずか二億円やそこらの金を、何もそんなに遠慮することは私はないと思う。なぜこれが五分五厘に上げて、これを通さなければならぬか。どんなに大蔵官僚が日本の財政を握つておるにしましても、わずか二億円のものをこの十五億三千百二十一万円の中に含めなければ、この法案が国会提出の機運に至らないということは、私ども理解することができぬ。この程度のものが、こういうふうに金利を引上げて国会に提出しなければ成立を見ないというようなところに、私は政府自体として開拓政策に対するところの熱意のないという問題も、具体的に現われて来ると思います。これが二十億だとか二百億であるということになれば、大蔵省ともいろいろ折衝上困難があろうと思いますが、どうしても私はその点十分了承することはできぬのであります。本年はまずこれとしまして、将来において、これをいわゆる三分六厘五毛にまで引下げて行くということについて、当局も御盡力にならなければなりませんが、これは一応この法案が通過いたしました後においても、当国会としても考えて行かなければならぬ問題だろうと思います。一党一派の問題でなしに、これは委員長としてもよくお考えになりまして、今後における金利の低減について、農林委員会全体として、私は考えて行かなければならぬ問題だと思うのです。そういう点について、どこに難点があつたのでありましようか。くどいようでありますけれども、もう少し私はお尋ねをいたしたいと思います。
  49. 平川守

    平川政府委員 率直に申し上げまして、この予算の折衝をいたします場合におきまして、従来の約束が、入植後三箇年間の開拓者に対して、この資金融通の道をはかるということで来ておつたわけでございます。それに対して古い入植者、三箇年間過ぎた入植者において、なお家畜導入のために資金がほしい、こういう要望が非常にありまして、農林省といたしましては、その資金をプラスして出したいということで大蔵省といろいろ折衝いたしたわけでございます。しかし何分にも大蔵省としては、そういうことを新しく認めるということになると、今後予算の次の年度のものが控えておりますから予算としては非常に大きくなる可能性があるわけであります。そこで大蔵省としては、入植後三箇年過ぎた後の者に対して、資金を貸し付けるということに対して、なかなか了承しないわけです。いろいろ折衝をいたしまして、古い入植者に対して金利をある程度引上げ、中期の資金を出すということで、それも若干認めようか、こういう空気になつたわけであります。そこで実を申しますと、まだ来年の予算のことははつきり確約を得ておるわけではございませんけれども、われわれといたしましては、單に入植後三箇年の三分六厘五毛の貸付だけでなしに、その四年以降の者に対してもひとつ道を開いて、中期の家畜導入資金を得ることができれば、現在の開拓民としてはプラスではないか、かように考えまして、大蔵省と話合いをいたし、それによつて二億一千万円ばかりの予算をプラスしてもらつたわけでございます。希望といたしましては、もちろん、開拓者のことでありますから、低いに越したことはないと考えますけれども、二面いろいろな金利全体の体系いうこともやはり考えなければならぬわけでありまして、この三分六厘五毛の制度ができましたときは、国債の利回りは原価が三分六厘五毛であつたわけであります。現在におきましては、大体国債の利回りが五分五厘を原価としておる、こういう実情があります。それから一面他の既存の農家に対する家畜導入については、先ほど申しましたように、利子補給制度で七分五厘の家畜導入資金がある。それから先ほどアメリカ等の例もございましたけれども、土地改良等の施設につきましては、これは非常に長期低利でなければならぬ。また日本においては、これに対して御承知のごとく半額あるいは六割といつたような助成金を支出して見ておるわけであります。土地改良等の基本的な施設に対する場合と、家畜導入のごときやや中期の場合と、あるいは農業手形のごとき非常に短期の場合と、いろいろそこに扱いに差があつても、やむを得ぬではなかろうかというようにも考えるわけでありまして、もちろん政務次官からお話がございましたように、日本の金利全体が高いという実情に置かれておるわけであります。さようないろいろの点を考えまして、大蔵省の主張する五分五厘の国債利回り原価というところまでは、やむを得ないのではなからうか、かように妥協と申せば、妥協をいたしたわけであります。
  50. 足鹿覺

    足鹿委員 私は最後に政務次官に所信を伺いまして、質向を打切りたいと思います。いろいろ御当局の御算を聞いておりますと、御苦心になつておると思います。一概に私はそれを非難したり、どうこうというのではありませんが、とにかくいろいろ御事情はありますけれども、現在の開拓者実情から見まして、私はこの五分五厘というものが、これが家畜導入資金であろうと、他の営農資金であろうと、私は妥当ではないと思います。しかしこういう新しく、従来三年間で融資の道がとざされておつたものが、こういうところに一つの活路をお開きになつたというこの努力が、この法案として現われておる点は、私どもこれを了承するのでありますが、ただ問題はわずかな金額でありますから、この金利の引下げについて、農林省としては一段と御盡力にならなければならないと思います。このことは、かえつて開拓者の今後の先行きにも影響があろうと私は思いますのでその点について政務次官の御所信を承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  51. 野原正勝

    野原政府委員 足鹿委員の御主張、まことにごもつともであります。農林省といたしましては、今回の開拓者資金融通法による五分五厘というものに、決して満足をしているわけではないのであります。できるだけ早い機会に、金利を引下げるようなことの実現に努力いたしたい、またこのわくの拡大につきましても努力いたしたいということをお誓い申し上げておきます。
  52. 大森玉木

    ○大森委員 大体私どもの申し上げんとすることは、足磐からいろいろと御質問があつたわけであります。私はこの法案に対しましては、まつたく敬意を表するのであります。しかしながら今の農地局長からの答弁によると、既存の農家はかれこれであるというようなお話がありましたが、開拓者の現実を御存じないと思います。御承知のように、既存農家というのは相当の所得を得る道を持つておる。しかし現在の開拓者というものの生活状態を私どもは直接当つて見ておる。この目で見ておる私どもからするならば、現在まで動物のような生活をいたしておる。そうして開拓者の所得というものは一どうなつておるかということをよく検討せなければならぬが、今の開拓者の農作物というものは、麦を少しつくつている。あるいはじやがいもを少しつくつておる。かんしよを少しつくつているというような程度のものであります。そうして生活状態を見ますときには、今申し上げたような動物的な生活、あるいは娯楽機関もなければ、電気もなければ何もない、そういうところに生活をいたしておりまするがゆえに、彼らはお話のように何割かがもはや脱落したということである。それは当然だと思います。ゆえに私は、せつかく七十何億という金をかけてやつた事業でありまするからこれをどうして育成するかということが政府の根本方針でなければならぬと思うのであります。そういう点から考えまするときに、この利益の少い開拓者から、既存農家と同じような五分五厘の利子をとることが当然だと言うがごときことは、農地局長は現在の開拓者実情を御理解ないのではないか、かように考えるのであります。この金利によつて貸し付けまするならば、せつかくのいい政府考え方でありまするけれども、実効が伴わなければ何もならぬと思います。借りたは、金利のために金も返せないし、金利も納められないというような状態になつて、なおその山にもおることができないというような状態が現われるといたしまするならば、これはかえつて逆作用を起すことになるのであります。こういう点を考えまするときに、農林省の努力に対しましては、私は感謝いたします。しかしながら、現在のこの三分何厘というものに引き直していただくのでなければ、安い金だと申しますけれども、しかしながら利益の少い人から考えてみるときには、非常に高利の金だといわなければならぬ。利益があれば一割の金を借りておつてもさしつかえない。しかし利益を得ることのできない者からとるということになりますと、その点は愼重に考えるべきだ、私はかように考えております。どうかこの金利の問題を、何とか大蔵省と折衝していただいて、そうしてこれを解決していただかなければ、せつかくの案であるけれども、もしもこれをやりましても、そのために回収不能となり、そのために借りた者が困難を感ずるようなことに相なつては、かえつて逆作用に相なると思います。そういう点において、私はこれがどうしてもできないというならば、反対せなければならない、こう思うのであります。農地局長のお考えを承りたいと思います。
  53. 平川守

    平川政府委員 開拓者に対する資金といたしましては、できるだけ低利であることをわれわれも睾ことはもとよりでございまして、この点につきましては、大蔵省ともできる限りの折衝をいたして参つたわけであります。何分われわれといたしましては、金利の問題もさることでございますけれども、同時に資金そのものを得るということが、開拓民として非常に必要性があるわけであります。ことに入植後三箇年で開拓者融通資金が打切られるという現状に対しまして、非常に不満足があるわけであります。何とかしてこの三箇年過ぎました開拓農家に対しましても、家畜導入資金がほしいという要求が、非常に熾烈なわけであります。もとよりわれわれといたしましては、それが低利で供給されるということを望むわけでありますが、大蔵省と折衝の結果は、資金源についてはある程度認める、しかし金利は普通の国債の利回りの原価まで上げてもらいたいということが、いわば交換條件に相なつておりまして、われわれとしてはやむを得ず、その資金源を得るために、この程度までは認めざるを得なかつたというのが実情でございます。
  54. 大森玉木

    ○大森委員 資金問題について開拓者は希望している。であるからその金利は高くてもいいという議論は成立たないと私は考えます。なるほど開拓者が現に要求していることは、私どももよく知つております。また資金を与えてやらなければ、現在の維持はできないいとうことも、よくわかつております。けれども今農地局長のおつしやるように、資金を希望しているから、それで金利は高くてもいいのだというような参お言葉は当らぬのである。これはただならなおいいが、しかしながらいくらか出さなければならないということは、考えておるでありましようが、ほしい者は、おぼれる者はわらをもつかむというたとえがあります通り、何でもよろしいと思うだろうが、私どもがそれを代表しております以上は、これをどうしたらいいのだということをよく判断して、これを適当に私どもが解決をつけねばならぬのじやないか、かように考えるのです。だから今あなたの言われるように、希望しておるから高くてもよろしいのだ、だからこの案を出したのだということは納得できません。先ほどから申し上げているように、この法案を出されたことには非常に感謝いたします。しかしながら、金利という問題に対してその額は幾らであつたか、私調べておりませんが、わずかな金利だと思います。そのわずかな金利をこの開拓者、この土民のような生活をしている者からとらなければ、国家財政が持たないと言うがごときことは、われわれは解することができない。先ほど政務次官は、何か日本の今日の国家財政というようなお話であつたが、国家財政に影響するがごとき大きなものでは断じでありません。貧弱なこうした生活をしている者からしぼり上げなければ、国家財政が立たないというような日本の現状では、私は断じてないと思います。でありますから、あなた方にはお気の毒であるけたども、もう少し大蔵省と折衝していれだいて、そしてこれを今われわれの希望しておりますところまで、ひとつ御努力願いたい、そうしてこの案をきめていただきたいということを私は希望いたします。
  55. 平川守

    平川政府委員 その御希望の点につきましては、私どももまことに同感なんでありまして、何とかして従来の金利でやつてもらえないかということを、ずいぶん交渉いたしたわけであります。われわれの力をもつていたしましては、結局この程度で了承しなければ、資金源そのものが得られないというような実情にありましたために、この点を了承した次第であります。開拓者の状況としましては、できる限り低利であることがいいという点については、まつたく同感でございまするから、今後の問題といたしまして、先ほど政務次官がお答え申し上げましたように、できる限り努力いたしたいと存じます。
  56. 大森玉木

    ○大森委員 一言政務次官にお聞きしておきたい。先ほど足鹿君の質問に対してお答えの節にごもつともだが、日本国家財政が云々ということを仰せられたが、この問題は国家財政に影響するほど大きな問題でありましようか。日本国家財政は、この金利を三分六厘五毛を五分五厘にするごとによつて国家財政が違うほど小さなものでありましようか。その点を伺いたい。
  57. 野原正勝

    野原政府委員 大森さんの御意見は、私の考え方の一部を聞かれての曲解された面があると思います。私も実は国家財政から見ますれば、たかの知れたものでありまして安くしたいのはまにとに同感でございます。しかし御承知の通り国家財政と申しましたことは、日本国家財政が非常に貧困であつて、国際的に見て、日本の金利が非常に高過ぎる。これははなはだ遺憾なことであるけれども、現実の問題としては確かに高いのであります。その点において、われわれは何とかして、特に開拓者に対する資金の問題はもつと安くしなければならぬという点の強い主張ふ持つておりますことは、おそらくその熱意においては大森さんと径庭はなかろうと私は思います。しかし現実の問題としまして、開拓者資金融通法によつて三分六厘五毛の低利で貸付はいたしておりますが、それは入植いたしまして満三箇年の年次を限つて貸付なのであります。その期間が過ぎますと、一応その資金貸付ができなくなるというような現実の問題になつております。しからばその法律を直せばいいじやないか、何年でも貸せるようにすればいいじやないかということも、これまた従来の折衝によりますれば、非常に困難がある。そこで満三年を経過したものに対しましても、事実上はまだまだ確立していない。もう一息のところである。何とかしてこの際資金を心配してやる必要があるというところから、資金融通の道を開きたいものであるという点で打合せをいたしたのでありまして、その点に立ちますと、勢い金利の問題につきましても、三分六厘五毛の開拓者資金融通法が長期ではまずい。これを五年ぐらいの中期にして、そうして金利の方も五分五厘ぐらいではどうかということで、その間もちろん農林省といたしましては、あるいはもつと安く、あるいはもつと長期ということの主張は遺憾なくやつたのでございますが、折衝の段階において、その利子の問題をあまり強く主張いたしますと、資金そのものが得られないというような結果に相なりまして、先ほど局長が御説明いたしました通り、今日の段階においてははなはだ不満の点はございましようけれども、この程度をもつてとにかく新しい資金の道を開こう。今後金利引下げその他について極力努力をする、誠意をもつて事に当りたいという考え方を持つておるわけでございます。
  58. 平野三郎

    平野委員長代理 それでは午後の会議はこの程度にとどめまして、暫時休憩をいたします。午後は一時三十分から開会いたします。     午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十四分開議
  59. 平野三郎

    平野委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  この際、農産物、特にばれいしよの検査及び防疫対策等の問題について、吉川君より質疑の通告があります。これを許します。吉川久衛君。
  60. 吉川久衛

    ○吉川委員 私はこの際、種ばれいしよの国営検査の問題について若若干お尋ねをしておきたいと思います。  せんだつて農産物検査法一部改正の機会にも、多分足鹿議員でしたか、石井議員でしたかからこの問題について御質疑があつたのでございますが、そのときも、どうも政府の答弁がはつきりしていなかつた。そういたしましたところ、たまたま今回東京都下で、無病という国営検査の証明付で、北海道から種じやがを六万俵、八十四万貫を移入したのであります。それが最近に至りまして、所によつてはほとんど全滅で、東京都下北部の二百五十町歩、西部の世田谷、練馬の一部では三百五十五町歩が大体七割ないし八割の被害ということになりました。世田谷の私の住んでおります鳥山の近辺の、ごときは、ほとんど全滅であります。無病だという国営検査の証明付でこのようなバイラスの被害というものは、われわれはどうしても納得ができない。こういうことは今始まつたことではない。毎年あるのであります。これに対して、政府は今までこういつた問題についてどういう措置をとられて来たのであるか。ことに今回この六百余町歩について起きました被害は、北海道の空知郡中富良野、上富良野の両村から来た八千八百七十二俵の種いもについて、はつきりと状況がわかつておるのであります。この損害は百四十余万貫の減収見込みでありまして、その損害と、それから種いもの代価が二千四百六十万円と推定されております。が、合計四千五百六十万円の損害総額ということだそうであります。こういつた問題について、どういうような検査をやつておるのか。その検査の方法において、あるいは過程において、こういつたずさんな検査が行われ得るものであるかどうか。そうしてこういつたような問題は、あるいは検査後生産農家の手に入るまでの間において、検査証紙がすりかえられるようなこともあり得るのであるかどうか。検査の場合の責任、それから証紙がすりかえられた場合の責任、こういつた事犯の起きた場合に、政府特に農林省としてはどういうような御措置をとつておいでになりますか。政府としての責任はどうか。それからこれの損害は、全滅もしくは七割、八割の超異常災害というような状態にありますので、これに対しては政府が何らかの措置をとらなければならない。損害補償の対策いかん。これらの問題について、明快なお答えをお願いいたします。
  61. 大澤融

    ○大澤説明員 ただいまお話がありましたように、私どもも北海道からの種いもを使つたということによつて、東京都下にバイラスの非常にひどい被害が起きておることを聞いております。そこで私どもとしましては、特に北海道の種いも生産地について調査をいたしておるところでありまして、その調査をまたねば判断がつきかねるのでありますが、大体北海道にはただいま七人の防疫官と四百人余りの補助員とを使つて、種いもの圃場で検査をしておるわけであります。そこで圃場で検査いたしましたものに証明書を出して、種いもとしての証紙をつけて各地に流し出すわけであります。その間におきまして今日お話が、ございましたように、植付をしたものが全部被害を受けておるというようなことは、今の検番の方法からいたしますと、ちよつと予想のつかぬことであります。多少のものがまざるというようなことは、あるいはあろうかと思いますが、全般的にこれほどの被害を出すような病気のついたいもが、検査を受けたものの中から出て来るというようなことは、私どもとしてはほとんど想像のつかないところでございます。そこでさらに私どもとしましては、現地でどういう調査をしたかということを再確認しているところであります。それから証紙が途中ですりかえられたのではないかというような御説がございましたが、これも調べてみませんことには何とも申し上げようがないと思います。  それから非常に大きな被害が起きたときの補償の問題でございますが、今ただちに国が補償するというような結論を出すことは、ちよつとまだ申し上げかねると思います。
  62. 吉川久衛

    ○吉川委員 私は大澤課長に伺いますが、この問題には当然国家が補償しなければならない問題が起きて来ると思うのですが、そういつたような場合に、政府がはつきりした答弁をしなければならない場合が予想されるのです。そういうときに、あなたは大臣のかわりで率いでになつたのか局長のかわりでおいでになつたのかしらないが、あなたがそこにおいでになるようになつたいきさつを、ちよつと聞かしていただきたい。
  63. 大澤融

    ○大澤説明員 農政局長か伺うべきところを、ちよつと都合がありましたので、私かわつて参つたのであります。
  64. 吉川久衛

    ○吉川委員 私ははなはだ残念だと思います。これは、政府がこの程度の問題は大したことはないと、いかに軽視しておいでになるかのいい証左だと思うのです。これは東京都下に起きたわずか二千四百町歩のうちの六百五町歩ばかりのできごとではありますけれども、しかし種じやがの生産地というものは限られておるのです。一東京都下の需要を満たすために、どこからでも持つて来られるというのではなくて、北海道で生産されたものがほとんど全国的に配給されているのです。だから北海道の種の生産において毎年繰返される問題であるが、こういつた問題は、徹底的対策が立てられない限り、一東京都下の問題じやない。全国各地のいもの生産農家は不安にたえられない。こういう全国的な大きな問題を、一東京都下のわずか六百余町歩のでき、ことだからというので、非常に軽々に取扱わんとしておいでになる農林省の態度は、日本の農政のために熱意を持つておいでになるかどうかをわれわれは疑わざるを得ないのです。局長が都合が悪くておいでにならぬとすれば、課長でもいいと委員長はお考えなつたのですか。その辺農林委員長としてのあなたのお考えを聞いておきたいと思います。  それからもう一つ、これから調査してみなければわかりませんということでしたが、徹底的に調査しているのかどうか。あるいは調査をする御意思があるのかどうか。調査の結果こういう事実があつたということになりますれば、それに対して政府は補償する考えがあるのかどうか。調査してみた結果でなければわからないというようなあいまいなことではならない。そういう重要な問題を御答弁なさるには、農政課長さんでは気の毒で、あなたに要求するのは無理なのだから、今度は政府の責任ある人に来ていただいて御答弁を願いたいと思うが、局長にかわつておいでになつたあなたの立場ではどういうお見通しなのか、参考のために伺つておきます。
  65. 平野三郎

    平野委員長代理 ちよつと申し上げますが、吉川委員から特にばれいしよ等の検査の問題について説明員から説明を聞きたい、こういう御要求があつて説明を求めておるわけでありますが、政府の方針について別の御要求がありますれば、適当な機会に政府委員からお答えを願うことにいたします。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して……。今吉川委員の御質問に対して、調査中であるという意味の御答弁がありましたが、私はこの間農産物検査法の一部改正法律案を本委員会において審議をいたしました際に、この検査に関連のある事項でありましたので、北海道の種いもの問題について質問をいたしました。その際に食糧庁の総務部長の松任谷さんは、その事実について調査が不十分であつた。今後十分調査をして適当な措置を講ずるということをはつきり言明をなさつてつておられます。ところが当面のこの問題の責任は、食糧庁の検査関係には私は直接関係ないと思う。あくまで植物防疫を担当しておいでになる農政局及び農政局の植物防疫課、そういう方面が直接の責任であろうと思う。これから調査をなさるというような意味の御答弁でありましたが、私が質問いたしましてからはもう大分日時もたつております。食糧庁の検査担当官の方ともお打合せになつて調査が進行しておるのでありますか。その辺はいかがでありましようか。
  67. 大澤融

    ○大澤説明員 ただいま調査をいたしております。それから食糧庁の検査関係とも打合せをしております。植物防疫の関係の防疫官が検査いたしましたものについて、農産物検査法の検査をやつて商品として市場に出る、こういうことになるわけであります。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 私も現地でこれを見ても来ましたし、私はその被害者の一人でありますから、非常な関心を持つておるのであります。問題は植物防疫法の非常に不徹底であるということから、今吉川さんが言われたような事態も起きて参つたのであります。これはただ單に東京都下の問題のみならず、全国でこういう被害が頻々として起きて来ておるのであります。これは本年に限らず、昨年もその前もこういう事例はあるのであります。ところが先刻も課長が申されました七人の防疫官があつて、四百人の補助員があるということを言われますが、圃場の抜取り検査をやる権限があるのは植物防疫官七人であろうと思う。おそらく七人やそこらの防疫官では、北海道のあの荒漠たる地域に栽培しておるところの種ばれいしよの圃場における審査並びにこれらの抜取りということは、私は不可能だと思う。従つてこの補助検査員は大体格付検査員であるにもかかわらず、これにある程度協力を求めておられるのでありますが、おそらくこの検査員の人々は、防疫官の仰せられるように、ほんとうに厳正な抜取り等がいろいろ事情があつてできないものと見ておるのです。そこからこういう事態が起きて来て、植物防疫法は結局空文化しつつある実情にあるのではないかと私は心配しておるのです。そこで今も吉川委員からお話がありましたか、防疫法によつて、いわゆる安全無害の種いもとして検査をして出されたものが、生産農家の手に渡つて、栽培の結果、思いもかけない大きな病害が発生して被害を受けた、こういつた場合に、その責任は一体だれにあるのですか。植物防疫法が巌存し、それによつて検査が行われでおる以上は、国の法律によつて検査が行われた場合、不完全な検査が行われたために病害を受け、被害を受けたということになれば、私は当然これは国家の責任に帰することは明らかであろうと思うのですが、そういう点についていかようにお考えになつておりますか。
  69. 大澤融

    ○大澤説明員 植物防疫法によつて完全な検査をしたものでなければ、商品として売り出さない、こういう建前になつておりますので、あくまでも完全な検査が前提でございますので、この検査が不完全に行われていろいろのことが起つたというようなことがもしあるとすれば、検査の責任になろうと思います。しかし今度の北海道の場合は、一体どこに責任があるのかというような点についても、今調査をしておるところであります。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 御調査になるのはけつこうですが、これは御調査になればなるほど明らかです。別にそんなことは御調査にならなくても、植物防疫法によつて検査され、しかもその票箋付の種いもを使つたものが被害が出ているのでありますから、もうその責任の帰属は言わずして明らかだろうと私は思う。それを御調査になるというのは、愼重を期せられる意味においておやりになることは別にさしつかえありませんが、これは課長がそういう重大な言明をなさることはどうかと思うので、これ以上は申しませんが、この点は明らかだろうと思います。従つてその責任がどこにあるかば別として、いずれにしても、こういう事態が起きつつあることは事実でありますが、それに対しては一体どういう査策を持つておいでになりますか私はいろいろ現地調査をして参りましたが、票箋が、二十五年産の票箋と二十六年産の票箋が明らかでない。票箋の横流しが行われておることは事実です。しかも票箋一枚が三十円から五十円程度で取引されておるということも、だれ知らぬことのない事実です。現地行つてごらんなさい、これは明らかなことです。そういうものに対して、票箋についても、また格付検査をやつたものも、これに対する取締りもできなければ対策も立たぬ、これが今日まで放任してあるということは、怠慢もはなはだしいと思う。そこで、これに対するところの対策はどうか、先日農産物検査法の一部改正案のときに私は申し上げたのですが、これから調査するというお答えであつた。あなた方は農政局においでになるのでありますから、調査どころではない、もうこの事実は大体において隠れもないことでありますから、植物防疫法の改正であるとか、あるいはいろいろこれに関連するところの対策が立てられなければならないと私は思う。それはもうすでになければならぬはずのものである。そういう点についてはどういう御準備をなさつておりますか、もしおわかりであるならば、この際御発表いただきたいと思います。
  71. 大澤融

    ○大澤説明員 ただいま研究中でありまして、特にこれといつて申し上げることはございません。
  72. 井上良二

    ○井上(良)委員 関連してちよつと伺つておきますが、農林省の植物防疫法ですか、検査法ですか、その検査は現地においてこれくのものを検査してくれといつてつて来ますね、検査しますね、そこで検査に合格し退すね、とすると、その合格したものに対する政府の責任は、その場だけの責任であるか、かりに今度北海道から出して来て農家の庭先に持つて来る、これを実際は植えてしまつて病菌が発生して来たという場合に、責任がそこまで来ておるか。それは北海道の、産地だけの検査であつて全国農家の庭先に来てそれが栽培された後まで責任があるかどうか、これは重大な問題である。そこの点が明らかにされておりませんと、損害賠償の問題にも重大な関係になつて来ますから、そこに植物検査法施行の上における法律上の不備が、多少どこかにありはせぬかという点も、一応検討を要する問題であろうと思いますだから北海道で検査を申請して来ましたものを、検査したときの合格証票として渡す。しかしそれが数日、数十日あるいは数箇月の後まで、検査の証票通りということで、そこに責任がかかつて齢るということになるのかどうか、これは重要な問題になつて来ますから、その点をあなたはひとつ関係官とよく相談されて、愼重に御答弁されぬと、重大な問題になつて来ます。これは法の運用の上で大事じやないかと思いますから、一応私からもその点について確かめておきます。
  73. 大澤融

    ○大澤説明員 おつしやる通りでありまして、植物防疫法の関係の検査は、圃場にあるいもを検査しまして、その圃場にあるいもについて責任があるのでありまして、もし仮定として言えるならば、そのいもが俵に詰められて、どこかでほかのいもになつて、そのほかのいもになつたものまでの責任を植物防疫法で負うということはなかろうと思います。
  74. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 関連して……。これは今まで北海道のいもは、たとえば芝浦なら芝浦へ船で持つて来た場合に、非常に腐つた、また病害が出たということで、それを北海道へまた再び高い運賃をかけてもどすということを毎年繰返しておつた。今回これが自由になりました場合、今井上さんかお尋ねになりましたように、種いもの場合の特殊性より考えて、検査当時における品質の保障というだけでなく、特に種いもの場合には消費する農家の手に渡るまでの間、何らか別途の方途を講じないと、今後これを繰返すだけだと思うのです。それについて現在の検査法においては、種いもの場合は、別途の何か政府はどこまでの責任を持たれるという分岐点がありますか。たとえば北海道から東京へ持つて来て、東京の農協なら農協の手を経て渡るまでは責任を持つとか、それとも一般の検査と同様に、俵へ詰めるときの形においての検査を保障するのみだということであるか。ここらのところをひとつはつきりしてもらいたいと思うのです。もしその点がはつきりしていなければ、今後種いもについては別途一般のいもとは違えたところの、検査についての立法措置を講じなければいけないと思うのです。たとえば種苗法の場合にも私は論議したのですが、種苗法あたりでも非常に問題があるのです。たとへば大根の種は検査されておるけれども、買つてまいてみた場合、全然大根が発芽しなかつたとか、また全然品種の違つたものが出たとかということが非常に多いのです。でありまするから、この検査につきましては、病害はもちろんのこと、品種についてのすりかえ等があつた場合に、どういうふうな罰則規定、政府はどういうふうな責任を持たれるかということについて、現在はどうなつておるか。また今後その不備の点はどういうふうに改正する意思があるか、それを伺いたい。
  75. 大澤融

    ○大澤説明員 圃場における病気があるなしを責任を持つて検査する、こういうにとになつております。
  76. 平野三郎

    平野委員長代理 この問題はきわめて重大でありまするし、この際責任ある政府の態度を求める必要があると思いますので、適当な機会に政府委員の出席を求めて問題を明らかにしたいと思いますが、いかがでありましようか。
  77. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 責任ある説明を願うと同時に、政府自体も、現在の検査法についての、特に毎年繰返されるばれいしよの種いものいろいろな被害については、現行法では不備の点は十分わかつておられるわけでありまするから、次会説明されると同時に、現行法における不備の点については、来るべききわめて近い機会に、こういうふうに改正する、そうして政府の責任の分岐点をはつきりするというような用意をもつて委員会に臨んで、答辯してもらいたいと思います。
  78. 吉川久衛

    ○吉川委員 私は説明員を要求したのではなく、賠償要求までするつもりだつたから、政府の責任ある人を要求したんです。その点言つておきます。
  79. 平野三郎

    平野委員長代理 さよう取扱うことにいたします。
  80. 平野三郎

    平野委員長代理 次に農地法案及び農地法施行法案を一括議題とし、引続き質疑を行います。竹村奈良一君。
  81. 竹村奈良一

    竹村委員 私はまず根本的な問題は、農林大臣が来られたときにいたしまして、事務的な点から聞いて行きたいと思います。  第一に聞きたいのは、今度の第一條でございます。前のには農村における民主化の推進をはかるという点が入つておつたのでございますが、それが拔かれている。なせ第一條から、農地改革の一番根本目的である農村における民主化の推進ということを拔かれたか。この点から承つておきたい。
  82. 平川守

    平川政府委員 これは、要するに、非常に大きな農業政策全体と申しますか、さらに国全体として民主化の問題はあるわけであり、農地法のきわめて基本的な当然の前提である。農地法といたしましては、その基礎の上に立つて自作農をできるだけふやして、生産の増強をはかるという、直接農地法のねらつているところを書いたというだけの意味でありまして、別に他意はないわけであります。
  83. 竹村奈良一

    竹村委員 ところが法の総則、しかもその中の第一條の目的をうたうところにおきまして、それが抜けておる。少くとも今まで農村における民主化の推進ということは、一番重要な問題であり、しかも現在日本の国におけるいわゆる封建的な残滓物というものは、農村に一番多いわけであります。これはだれも異論のないところであります。しかも農地改革を行う一番根本的な精神は、先ほど申し上げましたように、やはり農村の民主化の推進が一番大きいのであります。もちろんこれは今おつしやいましたように、いろいろな面で言われますけれども、しかし農民の最も根本的な問題は、その土地の根本政策を行うにある。この説明書を見てみますと、今度の法案は従来のいろいろな法律一つにまとめたものである。まとめたものであるとするならば、一番かんじんな、一番目的の中心にたり、しかもそれが一つの主目的というよりも、むしろ土台になるところのこの條文が、單に他意がないという、だけの説明ではちよつと納得ができぬ。これは私一人ではありません。おそらく全日本の農民諸君が納得し得ないものだと思う。それだけの説明ではちよつと不足です。従つて今度の農地法でこの根本的な精神である農村の民主化の推進ということを拔いたということは、民主化をあともどりさせようという意図があるかのごとく見受けられるわけでありますが、この法律において特に拔かれた理由が、先ほどの御答弁ではちよつと納得ができないのですが、どういう考えであつたのか、はつきりおつしやつていただきたい。これは全体の問題であるということでは解決しないのです。
  84. 平川守

    平川政府委員 先ほど申し上げた通りでありまして、まつたく他意はないのであります。具体的に中味についでごらんを願いますればわかりますように、農村の民主化の方向に逆行するというようなことは毛頭ないと考えておるのでありまして、あまりに基礎的な、あまりに一般的なことでありますから、特に農地法においてそれをうたう必要はないのではないか、かように考えただけであります。
  85. 竹村奈良一

    竹村委員 この問題の内容についてはあとでやりましよう。しかし問題は、あまりにも一般的な問題だとおつしやいますが、今日の農村の実情からいうと、他意がないとするならばこれは入れてもいいのじやないか。おそらく各党でも相談して、これはぜひ入れなければならぬということになると思いますが、もし入れられなかつたならば、わが党だけでも問題を解決したいと思います。この問題を抜くということは、私は非常に大きな問題だと思う。  もう一つ聞いておきたいのは。続いて二條の6の問題でありますが、この法律で「世帯員」とは、住居及び生計を一にする親族をいう。この場合において、世帯員のいずれかについて生じた左に掲げる事由により世帯員が一時住居又は生計を異にしても、これらの者は、なお住居又は生計を一にするものとみなす。」これではちよつとわからない。こうなると非常に問題が多岐になつて来ると思う。たとえば住居と生計を一にした親族をいうとはつきりいつております。またその次のは「世帯員が一時住居又は生計を異にしても、これらの者は、」こういうことになりますと、この定義は非常にややこしい。私はこの際あなたの答弁を通じて、今後農村において種々の問題が起るときに、この答弁を土台にした解決をはかりなければならぬと思いますので、特にあなたの方ではわかつているのかしりぬけれどもこれははつきりしておきたい。実際においてこういう問題をやりますときに、たとえば不在地主としし買収するかしないかという紛糾が起る原因はここにあるわけです。つまり同一家族で一応住居しておつて、しばらくたつたらどこかに行つた、しかし今度またここに住居するのだというこの認定が紛糾の種になるのであります。これは何箇月くらい離れておつても同一住居とみなすのか、この点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  86. 平川守

    平川政府委員 その辺になりますと結局常識によつて判断するよりいたし方がないわけでありまして、要するにどういうことを書いた目的は、たとえば病氣のためにしばらく入院している、あるいは学校に行つているという場合に、ただちにこれが別の世帯員であるという理由によつてその農地の所有関係に法律的な制約を受けるということは、常識に反するという意味で書いたものでございますから、病氣の種類によつて何箇月くらいが適当であるということもありましようし、ここでそういうことを数学的に申し上げることは困難でありますが、おのずから常識によつて適当な判断ができる、かように考えているわけでございます。
  87. 竹村奈良一

    竹村委員 それで大体わかりました。それではこの場合は病気とかそういうはつきりした場合をいう、こう解釈していいわけですからそれはそれでいい。それで「親族」と單にうたつてありますが、この親族とは法律上の何親等までを言われるのかということです。
  88. 平川守

    平川政府委員 これは民法の規定しておる通り六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族ということになるわけであります。
  89. 竹村奈良一

    竹村委員 次に四の「その他省令で定める事由」となつておりますが、この「省令で定める事由」とは一体どういう場合をさすのですか。
  90. 平川守

    平川政府委員 ただいま考えられておりますのは、外地に抑留されている、あるいは服役しているというような場合を想定しております。
  91. 竹村奈良一

    竹村委員 第三條のところで、これもはつきりしておかないと、非常に脱法的な方法でこれが取扱われやすいと思います。ここにいろいろ定めてありますが、この中で、「権利を設定し、若しくは移転する場合は、省令で定めるところにより、」となつておりますが省令で定めるとは一体どういう点でございますか。
  92. 平川守

    平川政府委員 これはたとえば許可を受ける場合の申請の様式といつたような手続的のことを考えております。
  93. 竹村奈良一

    竹村委員 続いて伺いますが、この中の三ですが、「これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合」となつておりますが、これはどういう場合でありますか。
  94. 平川守

    平川政府委員 これは国あるいは都道府県が権利を設定する場合を想定しているわけでありまして、従来の農地でもそういうことかあるわけであります。
  95. 竹村奈良一

    竹村委員 さてこの点で一つつておきたいのは、これらの権利を取得する国または都道府県という場合、たとえば警察予備隊あるいは駐留軍の基地とかいう場合にもこれが適用できるときがあるように思うが、その点はどうですか。
  96. 平川守

    平川政府委員 予備隊の場合に当然国に入るのであります。
  97. 竹村奈良一

    竹村委員 予備隊の場合は入るとして、それからもう一つ聞いておきたいのは、たとえばこの農地をつぶす場合にいろいろ許可條件があるのですが、たとえば三千坪を工場にする。それから二千坪を社宅にするというような場合は、これは農林大臣の許可がいるのですか、どうですか。
  98. 平川守

    平川政府委員 この坪数の計算につきましては、その一つの事案として合計を考えておりますから、一つの工場を経営する工場敷地とそれに不可分の社宅というようなものについては、合計して計算をいたします。
  99. 竹村奈良一

    竹村委員 ここにもたびたび出て來るのですが、この第三條の八の場合にも「その他省令で定める場合」――この法律を見て参りますとこの省令で定める場合が非常に多いのですが、この場合の「省令で定める場合」とは何ですか。これははつきりしておかないと農林省政府の、御都合でどうでもなるという場合が非常に多いのですが、その辺はどうですか。
  100. 平川守

    平川政府委員 この八号については実はさしあたり考えているものはございません。
  101. 竹村奈良一

    竹村委員長 ちよつと委員長に伺いますが、委員会の構成があまりにも定足数を欠いております。しかも与党議員は全然出ておりません。こういう状態で続けること自体が、私は少くとも委員会の権威にもかかわると思います。従つて私は法規によつて定足数をそろえてから質問をいたしたいと思います。
  102. 平野三郎

    平野委員長代理 ただいま定足数を欠くに至りましたので、本日はこの程度にて散会をいたします。次会は公報で御通知いたします。     午後三時十三分散会