○石井
委員 食糧管理法の一部を改正する
法律案並びにその修正案に対しまして、社会党を代表いたしまして反対討論をいたします。
自由党におきましては、
昭和二十四年米麦の
統制撤廃という、その当時としてはできないところの政策を掲げまして、人心の虚に乗じまして奇勝を博したのであります。その後におきましても、何らかこれを糊塗しようということを中心としまして、昨年の秋における米麦の
統制撤廃であるとか、あるいは供出役の一部
販売等を申して来たのでありますが、その根拠は、遠藤
委員は非常に確実な根拠のように申しますが、何ら根拠なく、単に政策の具に供したというにすぎなか
つたのであります。今回麦の
統制撤廃ということを申しておるのでありまするが、その根拠を聞きますと、
廣川農林大臣が再三再四述べるように、配給辞退が多く
なつたという点が
一つであります。もう
一つは、やみ
価格と
公定価格がほとんど大差なく
なつたという点であります。こういう
状態であるから、もはや大
小麦は
統制撤廃の時期に至
つたというふうに申しておるのであります。しかしながらそれは単なる偶然的なる現象でありまして、大
小麦の
統制撤廃をするところの深き根拠をなすものではないということは十分に言い得るわけであります。
統制撤廃が確実にできるという根拠は、国内
食糧が需給の面においてバランスがとれるということが
一つ、もし国内におきまして需給のバランスがとれない場合においては、海外からの
食糧が継続的にかつ確実に輸入ができるということ、この二点におきまして
統制撤廃は根拠ができるわけであります。国内における
食糧のバランスはどうであるか、自給度はどうであるかということにつきましては、われわれがいまさら論ずるまでもないのであります。海外から年間三百五十万トンの
食糧を買い込んでおるというような事実によ
つても明らかであります。またこのほかに、
政府として、今回大
小麦の
統制撤廃をするという場合におきまして、国民に対する呼び声として
食糧増産十箇年
計画を今度は五箇年に短縮するという政策をとりまして国民に訴え、この根拠のもとにおいて
食糧の
統制撤廃はできるのであるというふうに申しておるようなわけでありまするから、国内の自給だけでは国民の
食糧の安定は得られないことは一言を要しないのであります。そこで海外からの
食糧の輸入確保が、どれだけの確実性があるかということが一番中心的な問題であります。この点につきましては詳しく論ずるまでもなく、日本におきましては、
昭和二十六
年度における貿易外収入が九億三千九百万ドル、こういう異常なる貿易外の收入があ
つた。二十七
年度におきましても八億ドル余の貿易外の收入がある。こういう点が大体日本の海外からの
食糧買取り
資金の裏づけをしておるわけであります。しかるにこの貿易外の収入、こういう点は、われわれが論ずるまでもなく非常に不安定な収入である。駐留軍が内地におるということ、並びにいろいろな駐留軍の日本におけるところの特定の需要があるということ、朝鮮事変によるところの特需というようなことに依存するのでありまして、これらの特需がないということになりますれば、日本においては外貨は非常に不足しまして、
食糧どころではなく、綿花もあるいはガソリン等もほとんど買い取ることができないというような苦しい
状態になることは明らかであります。こういう際に、
政府においては、今年の
見通しとして、海外の
食糧輸入は十分になし得る
見通しがあると申しますが、その基礎は、御承知のように変態的な特需収入、貿易外の不当なる收入に依存するわけでありまして、これは何らノーマルな根拠でないのであります。こういうふうな
状態のもとで海外の
食糧を輸入するということでありましてこれはもし一変してこれらの点が収入の目途がなく
なつたというようなことになりますれば、もはや日本におきましては、ほとんどその輸入の根拠がなくなるということは、われわれの説明をまつまでもなく明らかな問題であります。この一番たよりにしているところの貿易外の収入あるいは今年の貿易の伸長度というものは、今年の一月におけるところの安本の輸出入の見積りが、もはやこの四月におけるところの安本の試案によりますと、
予定がたいへんくずれて来て、今日におきましても二億ドルくらい減少するのではないかというわけで、一月の安本の試案を改正するというような
状態にな
つております。そこでつじつまを合せようといたしまして、貿易外収入を少しふやそうというような
立場に出ているわけであります。いかに三百五十万トンの
食糧を輸入するところの
財源的な、
資金面におきましての根拠が、薄弱であるかということは明らかであります。かようなところの基礎の上に立
つて海外から継続的に、そうしてまた確実に
食糧の輸入ができるということを言うのは、砂上に楼閣を築きあるいは蜃気楼を夢みるものでありまして、かような根拠に立つところの海外
食糧における安定性のもとに
統制はもはや不用であるということは、われわれといたしましては、はなはだとるに足りないところの根拠であろうと思うのであります。
統制撤廃があり、そうして自由であるということはだれも好むところであります。しかしながら食生活の重大であるということ、そうしてこれに対しては国民に不安を與えてはならないということに対しましては、
食糧買入れの
資金につきまして十分なる根拠と対策の立
つた上でなければならない、その点からしまして
統制撤廃というものは無謀である、われわれはまずこういうふうに申し上げたいと思うのであります。
それからもう
一つ申し上げたいことは、
政府においては、麦の
統制撤廃は、アメリカに十分依存できる、そうしてまた米の方につきましても、これまた不安は何らないというふうなことを大言壮語いたしておるのでありますが、再々この
委員会において述べた
通り、海外からの米の輸入は困難であるということは、根本特使を派遣したということでも明瞭にわかる。そうして
東畑長官が説明したことく、米は一体どこから買
つているかという問いに対しましては、タイから買
つております、ビルマから買
つております、イタリアからも買
つております、それからスペインから買
つてお
つたということを聞きましで、自由党の
委員各位は驚きました。スペインじや米がとれぬだろう、こういうような驚嘆の声を放
つておることによ
つても、いかに日本の国が米を世界各地から買いあさ
つておるかということがよくわかる。特にわれわれのあまりなじみのない、世界の地理上にもあまり知られないエクアドルから三万トンも買
つておる。こういう実情を見ても、世界の米を買いあさ
つておるということがわかる。それはくず米、いい米とりまぜて、百万トンやつとこしらえておるというのが米の面においての操作であるということは、
政府の
答弁をまつまでもなく一目瞭然としておるのであります。かような点を見ましても、自由党がいかに苦しい努力をしておるかということは明瞭にわかる。そして米、麦いずれの部面に対しても無理算段をし、その苦しい算段の上にあらゆることをなされておるというような場面、それで確保されておるということを見ましても、これは党の政策のために国民の食生活を犠牲にして断行せんとする暴挙であるということが、十分に断言をし得るのであります。またその上に、渉外からの
食糧につきましては
政府がいろいろと買いあさ
つておる。そういう
関係で、初め一トン百七十ドルの
計画が現在は二百ドルにな
つておる。そこで
政府の
答弁は、麦の方においては安くなると思うからバランスが何とかとれますというようなことを
言つておりますが、先ほどの
食糧庁長官の
答弁のように、まだ来年の国際
小麦協定におけるところの麦の割当もきま
つておらない。おそらく来年は一ブツシエルニドルの上になるのではないか。アメリカの
小麦等もたいへん安いといいますが、四月
相場等を見ても少しも安くな
つていない。たいへん強気で、今日の
相場を見ますと一ブツシエルニドル四十セントにもな
つておるのでありまして、これは
政府が本
委員会における
答弁を容易ならしめるために作為的なる言辞を弄しておるのではないかと思う。つまり
資金の根拠また買入れ
価格等においても非常に無理算段をしてや
つておるのであります。日本人の悪いくせは、のど元過ぎれば熱さを忘れるということで、昨日までいろいろ奔走し、パン一きれを得ようとして努力してお
つた。ちよつとゆとりが出ると、ただちにもはや満ち足りたという気持になるのは非常に大きな間違いである。こういうときにおきまして正しく国民を指導しないで、国民に迎合しようという自由党のやり方は、まことに寒心にたえない次第であります。それから
統制の技術の面から言いましても無理が出ようと思うのであります。今まで二合七勺といいましたが、その中において
政府は米麦を適宜にあんばいして、米の不足は麦で、麦の不足は米でとや
つて来たのであります。こういうふうにしましてうまくごまかしがきいたわけである。
一般の
消費者階級としましては、それほどこまかく毎日々々算段するわけではない。近ごろは麦が多いなというくらいで大体問題を糊塗できたのであります。このように今までの米麦の配給というものは、二本建によ
つて何とかこれが運営されたのでありますが、もし麦の
統制を撤廃してしまいますと、どういう結果になるかというと、その重みはほとんど全部が米にかか
つて来るわけである。こういうことになりますと、おそらく自由党の東北方面の人々やあるいは改進党の米作地帶の人々、今度の
統制撤廃に賛成した人々が後悔するのではないかと思うのでありまして、今から同情の念を禁じ得ないものがあるわけであります。この点につきましては二本建のときにおきましては、一方を軽く見るというのでありますが、われわれは足が二本とも丈夫であるときには、右足は左足のあることを忘れ、また左足は右足のあることを忘れるのであります。こういうようなわけで、この麦の
統制撤廃によ
つて今後米に重みがかか
つて行く、そうしてこれがまた米のバランスをいろいろと妨げまして問題を起すのではないかということでございまして、今度の
法案にしぶしぶ賛成されたるところの改進党も、たいへん心配するのはもつともであろうと思うのであります。
次に、この
統制撤廃が農民と中小製粉業者を犠牲にして、大資本の製粉業者を利するというようなことにつきましては、もはや議論の余地がないところであ
つて改進党が自由党に対しまして、こういう点について十分考えておるかというようなことを申されてだめを押しておりますが、だめを押すだけがやぼでありまして、これは自由党の希望するところであり、自由党の考えるところであります。このようなわけで、今後
農村における農民、中小製粉業者、地方都市における中小製粉業者というような弱小経済力を考慮する者にとりましては、この
統制撤廃問題について十分に検討を加え反対をしなければならないという根拠を持
つておるのであります。
消費者の
立場についてもいろいろ議論がありますが、
消費者の多くの筋からも、経済的に研究される方々が
統制撤廃に反対しておるという事実を見ても、この点は十分うかがわれるわけであります。われわれはあらゆる
角度から研究いたしまして、
一つとして
統制撤廃の時期に達しておらない、
統制撤廃をする十分の根拠がない、こういう点を確認いたしておる。特に朝鮮会談も御承知のように決裂をいたそうとしておる。もしかような事態が発生いたしますれば、
食糧を海外に依存しておる日本におきましては、また再
統制をやらなければならない。われわれは十年も外交を遮断されたので、海外の情勢に暗い。そうして占領下の温室に育
つてお
つたので、非常に狭い考えを持
つておりまして、大局を見る目がない。その間に自由党は、單に二十四年の架空な政策に拘泥されて、今回のような
統制撤廃をと
つたということにつきましては、まことに遺憾にたえざるものがある。また改進党は自由党に示唆されまして修正案を出した。この修正案は、自由党並びに
政府が改進党に知恵を授けてや
つたのでありますから、改進党は何ら根拠がないのは明らかである。こういうようなわけでありまして、この大きな麦の
統制撤廃ということにつきまして、
政府も将来のことをいろいろと案じて改進党を籠絡し、そうして共同して将来の攻撃を乗り切ろうとすることは、まことに卑劣な態度ではないかと非常に残念に思うわけである。
廣川農林大臣は、
食糧の配給辞退が多い、公衆
価格とやみ
価格とが同じにな
つておる、これが
統制撤廃の根拠であると申しますが、まだ海外から多くの
食糧が輸入されており、その
資金面は特需においてまかなわれておる。つまり悪口を言えば、パンパン
資金の上にまかなわれおるとさえ言われておる。かような
状態のもとにおいて
統制撤廃をするということは、日本の将来に、特に
食糧政策に禍根を残すものである。こういう
立場から全耕作農民並びに
消費者のために、全面的に
統制撤廃に反対をいたすものであります。