○木内
政府委員 第一点の大蔵省の思うようにならなか
つた、これは心の中の問題でありますから、いかなる点において思うようにおなりにならなか
つたかは存じませんが、私はすでに他の席において御説明いたしました通り、現
機構というものは、
仕事をわけ合
つてチエツク・アンド・バランスということを
一つの原則と
考えてできている
機構でありますから、思うようにならなか
つたとお思いになるケースがあ
つたはずなんであ
つて、たしかにそうだろうと思います。しかしそれが、チエツク・アンド・バランスということの方がいいならば、その方が
国家のためであ
つたということが言えるケースもあ
つたのではないかと思います。これは一々それがどつちがよか
つたかということは、まだ判定のできない問題もありましようし、あるいは見るところによ
つて違うので、ここで実例をあげて、この場合は大蔵省の意向にかかわらず外為の意向の通りにしたのだが、確かにそれはよか
つたんだということを説明しろとおつしや
つてもちよつと思いつきません。とにかくそれは確かにチエツク・アンド・バランスを基礎に置いているのですから、必ずしも思うようにおなりにならなか
つたのではないかと思います。そこでそのよしあしは別論といたしまして、それが
国策遂行に非常に害があ
つた。それでは
大蔵大臣として
責任がとれないとい
つたような大きな問題に対して、そういう対立があ
つたために、
大蔵大臣が
責任をとれないような思いをなす
つたということは、私はないと思います。少くとも現在はなくな
つたと思います。私どもにまかせられている部分というものは、
大蔵大臣の御意向に反してでも私どもの主張しなければならぬという部分は二つあるのであります。
一つは技術の面です。純然たる技術に関することは私どもにまかされてあるので、御相談いたしますが、われわれの専管事項であるために、こと金に関しますけれども、私どもの
意見に従
つたということはあります。これはしかし技術の面でありまするから、それがために
大蔵大臣として
責任がおとりになれぬということは生じなか
つたと思います。もう
一つわれわれの主張を必ずしも譲
つてはならない部面があるかと思うのでありますが、それは国際信用に関するような場合であります。国際信用の大本に関するような場合に、たとえば外貨予算というものの使い方が非常に乱暴である。これではいけないとい
つたような場合には、私どもは外人の言葉でお前たちは外貨予算のウオツチドツグである、番犬であるということをしきりに、法律をつくりましたころに言
つたのでありますが、外貨予算の使い方がたとえば非常に乱暴であ
つて、外貨がどんどん減る。しかし
国内経済政策上やむを得ぬとい
つたようなときに、あまりひどか
つたならば、ノーといわなければならぬことにな
つておるのでありますが、こういうような点において、今まで
意見の相違を来したことはございません。
従つてそういう問題について私どもは
意見の衝突を来したことはないのです。その他私どもは一般的に全体の
総合調整というような役割を持
つておりますから、いわば何事でも多少の口は出すということがあり、このために御
意見に一致しなか
つたことはあるかと思いますが、その多くのものは、私どもは法制的にいえば勧告権、勧告をなすことを得という
立場においてしているのであ
つて、従いましてその勧告をお取上げにならなくても、私どもは別に争わないのです。ですから申し上げたことをおとりにならない、これは
政治問題である。
大蔵大臣の
政治責任、通産
大臣の
政治責任であると思う場合には、私どもは一応
意見を申すだけで、それなりにしております。別にお困りにな
つたことはないと思います。これが大体最初に言われました点に対するお答えであります。
次にこの成立の経緯を振り返
つてみてどうかというお話でありますが、私どもは最近は非常に事がスムーズに行くようにな
つたので喜んでおります。実は最初この
委員会がつくられましたときから、
大蔵大臣のお
考えはすでに予算
委員会においても申され、あるいは今の局長の御
答弁にもはつきり出ておりますが、通貨、為替の
仕事というものは大蔵省の専管事項であるから、これに対して技術面であれ何であれ、
自分の思う通りにならない
機構があるのはいけないというのが、大蔵省の一貫した御精神であるかと思います。これも
一つの見方であ
つて、大いに敬意を表すべきかと思いますが、すでに、われわれの
委員会ができました以上は、その精神とは物の見方が衝突しておる。従いましてこの経過を振り返
つて見ますと、私どもは今の
機構に対する真の精神的御理解がなか
つたために、そのためにこそ何となく常にどこかに衝突があるような気分をさせられて参りました。これは法律立法の上にも多少出ておりますし、その後の運営の上にも出ております。大体一言にして言えば、そういう経過を示して来たのであります。従いまして現制度が所期した真の効果というものは、遺憾ながら十分には発揮できなか
つたという感想を持
つております。もし現
機構に化体されております精神というものが、真に
日本政府の全面賛成を得て、そのように運営されたならば、さだめしよか
つたであろうといまだに残念に思いますが、これは過去のことであります。振り返
つてみてどうかということには、はなはだ抽象的な言いまわしをいたしましたが、一応これをも
つてお答えといたします。
どういうことをして来たかという御質問に対しては、ずいぶん働いて来たつもりでありますが、あまり大したことはできなくてはなはだ恐縮でありますが、まず第一年目は、大体立法に費されております。最初は私どももまた盲貿易という言葉がありますが、まるで盲で為替管理の
仕事を託されたような感じでありました。つまり
日本が隔絶している間に世界は非常に進歩したのでありまして、実は新しい為替管理のイデオロはどうであり、手段はどうであるというようなことを知らないで携わ
つて来ましたのが最初でありまして、戸惑
つたような期間もございましたが、これは法律をつくろうということにな
つて、法律の作成にかかりましたのが三年前の夏であります。それから具体案に入りまして、十月の初めですか、国際通貨基金から
司令部の招待いたしました二人の人たちの指導を受けながらつく
つたのが、今の外国為替及び貿易管理法であります。ところがそれは十二月一日から輸出が
民間の手に移
つて、続いて翌年の一月一日から
民間貿易へ移りましたが、そこの辺までようやく期限に間に合せて手続、法律に基く政令、規則というものを出して進んだのでありますが、それから残りました通常貿易外と称せられている部分でありますが、その部分の政令をつくりますのに半年を要してようやく最後の部分が、第三の部分が実施になりましたのが七月一日だ
つたと思います。でありましたから出発のときから見れば満一年以上を費してようやく立法体制ができたということであります。
次いで外貨の管理を
司令部から引継ぎ、それに対しては外貨の管理というものは単に金の出納をしているのではないのであ
つて、それを利用して外国の銀行に
日本の貿易の金融と申しますか、貿易の
取扱いの片棒をかつぐ、例の新聞によく出ましたコルレス契約というふうに表現されておりますあれでありますが、そういうとりきめ、先方の銀行との間にとりきめをつく
つて、なるべく有利な
条件で貿易を仕向けて行く、これが外貨管理の一部の
仕事であります。そういうのをだんだんつく
つて行くというような
仕事に入
つてや
つたわけであります。爾来完全に外貨の管理が移りましたのは昨年の十月でありました。それからまた私ちようど世界一周の旅に出かけまして帰
つたのが十月末でありますが、爾来今年にな
つてから何をしたか。ようやく運営らしい運営に入
つたのでありますが、例のポンド問題その他ごたごたが起りまして多くの時間を費されまして、目立
つたものはほとんど何もありませんが、しかし昨年外貨管理が完全に移
つてからあとは次第にスムーズにな
つて来て、どうやら今の為替管理も板について来たのではないか。先ほど申しました通り
根本に対して大蔵省の御賛成をどうも得ておらぬというために十分だという印象は与えませんが、かなりうまく
動き出したというのが最後のステージであります。
最後に大蔵為替局に移
つてうまく行くかどうかという御質問でありますが、これはどうも私ども専門家ということにな
つておりますが、われわれならうまく行くがそうでなければうまく行かないということを言えとおつしやるように聞えまして、はなはだ言いにくいのですが、私どもの体験を申しますと、私は正金銀行に二十年おりまして、ドイツ為替管理法のもとで働いたことがありますし、もちろん
日本の為替管理法のもとで働いておりました。支那等にも参りましたからずいぶん例外的な事象にも面したのでありますが、要するに一生を正金銀行で過して来たのであります。他の
委員の方、大久保
委員は何年
日本銀行におられましたかはつきり存じませんが、やはり二十年近いものを
日本銀行にお暮しになり、海外への御経験もあります。もう一人の
委員の方はやはり正金銀行で私と同様でありますが、ほぼ私と同じ二十年の正金生活。第四番目の
委員の方は、これは三菱商事でありますが、これにもおそらく二十年くらいおられたと思います。大体において為替銀行出身二名、商事会社一名、中央銀行一名というのが現在の構成でありますが、いずれも二十年近くのいわゆる年期を入れた人間であります。この
仕事も草創時代であ
つたせいもありましようが、私どもはずいぶん働かされた。徹夜作業をしたこともありますし、ほとんど全身全力を費して来たつもりであります。しかも顧みまして必ずしも
仕事は満足に行
つているとは思わない。言いかえてみますとこの為替管理という
仕事は実にむずかしい
仕事であるというのが私の印象であります。
日本銀行に大部分のものをまかすからというお話でありますが、
日本銀行の方は私どもずいぶん
仕事をお頼みしております。その結果としまして最近のことはよく
御存じであります。のみならず非常に大きな人数を動員してくださいまして熱心に執務してくださいましたから、ずいぶん戦後の新しいやり方について認識も深ま
つたり、いわば実力を深めてくだす
つたであろうと思います。しかしながら
日本銀行におまかせしておりますことは、許可
事務の窓口と金を預かるブツキングの簡単な、銀行同士の手続をさせるという程度でありまして、為替管理のほんとうのむずかしい、私どもが真に頭を悩ます点については御相談はしておりますが、ほんとうに
責任を持
つておまかせした部分はありません。その点については遺憾ながら十分なる御経験を得られた方が
日本銀行の中に
相当できて来たという
段階にはまだ少し及ばないのだと思います。これが大体
事務能力というものに関する説明であります。
なお為替
事務というものは非常に末節的なものでありまして、この末節的なところに非常に重要性がある。先ほど
審議会というもので――重要事項はそうでございますが、もちろん非常に必要にしてけつこうなことでありますが、為替管理がうまく行くか行かぬかは実に言うに言われない微妙なところにある。たとえば一例を申し上げますが、外貨予算制度というもの、
民間貿易というものが発足しまして自動承認制というものが非常に大きく言われている。自動承認製でどんどん物を買いつけて大失敗をしたような経験をしました。あの中に自動承認制でも
つて外貨の許可を得た、現在外貨を使う権利を獲得した、だれがどの商品についてどれだけの外貨をすでに許可を握
つたかということを今時々出している。従いまして人様がどれだけ、AならAの商品をすでに買いつけることにな
つたかということを業界の方が知ることができる。その結果としてあまり
行き過ぎは起らないはずである。その数字をもつと早く出せばよか
つたが、初めのうちは出さなか
つた。出さなか
つたがために人様がどれだけ買
つているか、業界の方は無知であ
つて、まだだれも買
つていないかと思
つて買付を急いでお
つたということもありますが、これはその数字を出す出さぬというごく小さなことでありますが、私ども専門家をも
つて任じながらそれに気がつくことがおそくて、あのような大事件がそのような小さなことにひつかか
つているのでありますが、いわゆる重要事項で、
審議会でも相談になるような点が、為替管理の真に重要なものではないかと私は
考えております。