○久保
公述人 私は
全国電気通信従業員組合中央執
行委員長の久保等でございます。今回
政府が
国会に上程せられました
日本電信電話公社法案並びに
国際電信電話株式会社法案に対しまして、以下申し上げたいと存じまするが、かねがね私
ども特に
電気通信事業に直接参画いたしております者といたしまして、私
ども組合といたしましても、実はかねがね
電気通信事業をいかに再建すると同時に、さらに
国民の要望にこたえてこれを拡充発展させて行くかということについて、真摯な
研究と努力を今日まで続けて参
つておるわけであります。従いまして以下申し上げますことも、実は私
ども直接
事業に携
つておる
従業員がいろいろ
研究を重ね、検討を加えたものであることをつけ加えて申し上げておきたいと存ずるわけであります。
今回の
国会に上程されておりまする両
法案に対しまして、私
ども結論から申し上げまするならば、従来の
電気通信事業が
二つに分割されまして、片一方は
公社、片一方は株式会社という形に分断せられることにつきまして、非常に私
どもといたしましては遺憾に存じておりますし、実は反対の立場であるわけでありますが、さらにまた分断せられたもののうちで、特に国際関係のものにつきましては、これを民営にするということについて、非常に強くこれにつきましては私
ども反対の立場を遺憾ながらとらざるを得ないわけであります。実は今回の
法案が上程されるまでの経過から考えましても、私
どもといたしましては、十分にこの問題を検討いたしました結果が、以上のような
結論にな
つておるわけでありますが、現在
電気通信事業というのが概略どういう
状況にあるかということをまず簡単に申し上げてみたいと思います。
戦後のいわゆる荒廃した
電気通信事業というものを、私
どもでき得る限りの資材と
資金の
範囲内において、組合自体といたしましても今日まで努力を続けて参
つたわけでありますが、もちろん量の面におきましては、いろいろ
国民各位からの御批判もあるようでありまするけれ
ども、むしろ戦前以上に量的な面においては増設をされておるという点があるわけでありまして、たとえば
電話の場合におきまして、戦前最も加入者の多か
つた時代におきましても、百八万個
程度のものであ
つたのでありまするが、本年の三月末現在におきましては、百二十四万六千という増設がなされておるわけでありまして、また
電信におきましても、戦前約八千六百万前後あ
つたわけでありまするが、現在におきましても、約八千六百十一万通という電報通数が今日さばかれておるわけでありまして、
電信におきましてはほぼ戦前並、
電話におきましては、
ただいま申し上げましたような
相当数の増加という点があるわけであります。しかしながら、もちろんこれが質的な面において、長い間設備を酷使したというような面もありまして、必ずしも
国民の要望に沿い得ないことは、私
ども重々存じておりますし、またこれの改善策についていろいろ努力をいたしておるわけであります。しかも現在の
電信電話に対する
一般国民の
需要状況がどうであるかということを申し上げますると、現在のところ
電話需要におきましては、約二百万個に及ぶところの
需要があるわけであります。しかもこの二百万個というものが、はたして現在の電気通信省といたしまして、どの
程度の年数がかか
つたならばこの二百万個を消化し切れるかという問題になりますと、全然具体的な
計画が立ち得ないわけでありまして、その点は私
ども特に国家
予算の面におきましてかねがね
でき得る限り、こうした
国民の熾烈な要望に沿い得るような建設
計画を樹立いたしまして、これに必要なところの
資金の
獲得ということで、いろいろ
一般のこれに対する関心と御協力をも要請いたして参
つておりまするが、現在におきましては、昭和二十七
年度におきましても、わずかに
建設資金は百三十五億という形のものが
国会においてきめられておるわけでありまするが、
ただいま申し上げましたように二百万個に及ぶところの
需要を満たす、その
ためには約二千億近くの
建設資金が必要でありまするが、この点におきましてももちろん意のごとくならないというのが現在の実情でありますし、さらにまた
建設資金そのもの、あるいはその他の保守関係に必要なところの
資金そのものにつきましても、いわゆる
財務会計制変という面におきまして非常に大きな
制約を受けておるわけでありまして、この点がいわゆる
能率的に、また機動的に
運営をするという面では、遺憾ながら大きな隘路にな
つておるのが現在の実情であります。従いましてこうい
つた点について何とか私
ども打開をしなければ、真に
電気通信事業というものが
国民の要望に沿い得ないということを考え、いろいろ苦心をいたして、今日に及んでおるわけであります。
しからば今日まで
政府がいかなる態度で、この
電気通信事業というものを扱
つて参
つたか、あるいはまたどういう形でこうした問題について今日まで
研究を重ねて来たかということを、若干申し上げてみたいと思うわけでありますが、特に戦前の問題は別といたしましても、戦後におきましていわゆるか
つての逓信省を電気通信省という形で、郵政
事業を分離いたしたのが昭和二十四年になるわけでありますが、この昭和二十四年にいわゆるライン・オルガニゼーシヨンという形で、
アメリカ式の
機構改革がなされたわけでありますが、この
機構改革はもちろん
日本の特殊
事情というもの、こうい
つた点が非常に閑却せられたような形で、縦割りにこまかくいろいろ
機構が割れたわけであります。そのことの
ために私
ども現在において非常に不便、あるいはまた非
能率という点を痛感いたしておるわけでありますが、いずれにせよ、こうい
つた電気通信省というものが、昭和二十四年の六月一日から実施せられたわけでありますが、これと相前後いたしまして、昭和二十四年の七月に
電信電話復興審
議会というものが、内閣総理大臣の諮問
機関として設置せられまして、
電気通信事業の復興という問題を特に主眼に、いろいろ
研究が重ねられたわけであります。
この復興審
議会でいろいろ
研究が重ねられましたその過程におきましても、必ずしも私
どもこの
状況を見ておりまして、私
どもの意に沿い得るような、すなわち
日本の実情というものを十分に考え合せて、しかも真に
研究の結果、自主的に
結論が出されたというふうにも考えられない節もあるわけでありますが、しかしながらいずれにせよ、こうした復興審
議会自体でいろいろ検討せられた
結論を見ましても、この
結論は簡単に申し上げますると、要するに
公共企業体にすることがもちろん妥当であるというふうな
結論を出されておるわけでありまして、内閣総理大臣に答申案といたしまして、昭和二十五年に出されたものの一部を読み上げてみますると、
電気通信事業は「公共的
事業であるとともに
一つの
経済的
企業であるにかかわらず、国営であるがゆえに
企業経営の基礎であるその
財務経理および
人事管理の
制度方法が、他の
一般行政および
一般管理のそれと同一の基調において律せられておる点において、致命的な欠陥を有するものである。われわれはこれまで本
事業の
経済性が無理解に
制約せられていた
ために、その公共性までがかえ
つてはなはだ達成せられていない事実に留意して、その
経営主体を充分に自主制と機動性を持
つた独立の
企業体に改め、も
つて最も
能率的な
運営を行わしめる必要があると考える。最も自主性と機動性を持つ
企業組織は民営であるが、」ここで項目をあげて書いてあることは、本来ならばこの
結論といたしましては、
企業組織は民営であるが、本
事業の基本的性格である公共性、それから技術的統一性及び自然的独占性ということ、さらに本
事業の現状においては、租税諸公課の免除その他国家的保護育成を必要とすること、こういうような、
事情から最も円滑迅速に
できるだけ効果的に目的を達成する
ためには、最大限に民営的長所を、取入れた
公共企業体にすることが適当であると考えるということが、この復興審
議会の
結論であるようであります。
さらにまたこの
電気通信事業の再建といいまするか、
電気通信事業の建直しという意味におきましては、同じ昭和二十五年の第七
国会におきまして、衆議院がやはりこの
公共企業体移行促進に関する決議をされておるわけでありまして、これを簡単に一応読み上げますると、「由来
電気通信事業は、高度の公共性を有する一面、その本質はあくまで
企業的性格を帯びるものである。この点にかんがみ、
政府はさきに電気通信省を設置して
事業管理
機構の合理化を図
つたのであるが、本
事業の
経営形態が依然国営に属しておる結果として、
企業経営の
根本たる
会計、経理及び
人事管理等の面は、今なお原則として
一般行政
機関を規律する準則によ
つて拘束されておる
ため、
運営上活発な
企業活動が阻害せられ、本
事業の健全な発達に多くの障害を与えているものと認められる。よ
つて政府は、これらの障害を除去し、本
事業の
根本的刷新向上を図る目的をも
つて、これが
経営形態を
公共企業体に移行するとともに、
運営諸般の方途についても検討を遂げ、
経営上十分な自主性と機動性とを附与すべきである。」というようなことが衆議院において決議せられておるわけでありまして、いずれにせよ
終戦後においていろいろ検討が加えられた
結論は、
公共企業体以外に一歩も出ていないわけでありますし、さらにさかのぼ
つて考えてみますれば、
電気通信事業は、明治初年から今日まで八十年間、この
事業がいかなる
形態において
運営せられるのが最も妥当であるかということについては、いろいろ論議が重ねられておるわけでありまして、時によ
つては民営論というものが一部において唱えられてお
つたこともあるようでありますが、しかしその当時の
事情はむしろ国家の
財政というものは非常に緊縮政策をとらざるを得ないというような、国家
財政の面から実は民営
にしたらどうかというような
意見も一部にはあ
つたようでありますけれ
ども、しかしながら今日まで八十年間、
電気通信事業というものが完全なる
形態において民営という形を
国会において審議せられ、しかもまたこのこと自体か非常に大きな
一つの
意見とな
つて現われたことはないようでありましていずれにいたしましても、今回出されました両
法案自体の持ちまする意味というものは、非常に重大なものがあるというふうに考えておるわけでありまして、
終戦後における、
ただいま申し上げましたような
国会、あるいは
政府の動きに相呼応いたしまして、電気通信事務
当局においても、いろいろ試案を作成いたしてお
つたわけでありまして、本年まで第八次にわたるところの電気通信事務
当局の案がつくられてお
つたわけでありますが、その中に流れてお
つたと申しまするか、考え方というものは、常にやはり
公共企業体という形における電気通信、国際においてもあるいは国内通信においても、これを一本として考えた
公共企業体という前提に立
つてお
つたわけであります。
また私
ども実は一昨年の末ごろから、電気通信の再建運動というようなことを始めまして、爾来特にこうい
つた問題について十分に
研究も重ね、関心も持
つて参
つておるわけでありますので、昨年大臣の新任に伴いまして、佐藤大臣にもこの問題については終始いろいろ
政府の意向というものも打診するし、私
どもの意向も十分に申し上げてお
つたわけでありますが、しかしその過程におきましても、やはり何ら民営という問題には触れておらなか
つたわけであります。かねがね私
どもといたしましても公共
事業でありまする
電気通信事業を民営にするということにつきましては
根本的に反対でありますし、また民営ということによ
つて問題の解決ははかり得ないという
結論に立
つて、強く私
どもの意向も申し上げてお
つたわけでありますが、この点に対します態度といたしましても、何ら民営という問題は申しておらなか
つたのであります。また民営を前提とする
公共企業体というものも考えておらないというのが、少くとも私
どもに対するはつきりとした正式の態度であ
つたわけでありますが、どういう風の吹きまわしか存じませんけれ
ども、本年の実は二月下旬から三月の上旬にかけまして、国際問題についてはこれを民営にすべきであるという形で、急遽これに対するいろいろ準備が進められたようでありますが、こうい
つたいきさつにつきましては、少くとも
電気通信事業の内部に直接参画しておるところの、
国民の公器である
事業を預か
つておるものといたしましては、きわめてふに落ちないところであります。特に過去におきましてもいろいろ民営論というものが論ぜられた経過からいたしまして、あの当時の
状況と今日の
状況を比較して、民営論というものの根拠が那辺にあるかということを私
ども考えました場合に、結局私
どもといたしましまして理解
できることは、
政府の考えておる点は、特に国際に目をつけたところのものは、その収支の問題であろうというふうに推定をせざるを得ないのでありまして、特に
国際電気通信事業の問題につきましては、数字をあげて簡単に申し上げますると、昨年の四月から本年の一月までの間、すなわち十箇月の間における収支
状況でありますが、概略の数字になりまするけれ
ども、収入の面におきましては約三十二億六千六百万円、支出の面におきましては十一億一千六百万円、従いまして支出の面におきましては、収入の面の比率として申し上げますると、三四%
程度にしかならないわけでありまして、二十一億五千万円という金額が一応黒字として出て参るわけであります。もちろんこの二十一億五千万円という数字は、雑費というような少額のものは含まれておりませんので、大体の数字になるわけでありますが、いずれにせよとにかく三十二億前後の金額から十一億余の金額を差引きました二十一億に及ぶところの黒字
財政であるということだけは申し上げられるわけでありますし、
政府自体が民営を考えた場合における根拠といたしましては、ここに目をつけたのではないかというふうに感ぜざるを得ないわけであります。
同時にまたさらに国内通信についても、これを民営にすべきだというふうに
意見が出ておるようでありますが、この民営論ももちろん
電信電話を含めての一元的な民営を考えておられる方はどなたもおらないわけでありまして、
電話を民営に
できればしたいという考えでありますが、しかしながら国内における
電信電話につきましても、これがしからば現実的に
電信と
電話に分離
できるかということを考えた場合には、現実的に
でき得ないことであります。こうい
つたような
事情を考え合せましても、やはり国内の将来に対する考え方といたしましても、
電話を民営に
できればしたい。今回の実は
政府の出されました
法案の
提案趣旨の
説明にも、当初はあの
日本電信電話公社法案の
提案趣旨の
説明といたしまして、
でき得る限り早急に民営に切りかえたいのだが、きわめて厖大な固定資産を持
つております国内の
電信電話を、一挙に民営にすることは現実的な問題として不可能であるという観点から、この問題は一応見送ろうという形で、今回の
日本電信電話公社法案が上程せられておるという経緯を、私
ども承知いたしております立場といたしまして、いわゆる民営を前提とするところの
日本電信電話公社法案に対しましても、多大の危惧と同時に私
どもといたしましては反対をせざるを得ないわけでありますし、さらに
ただいま申し上げました
通り、
電気通信事業が一元的に
運営せられておることは御承知の
通りでありますが、そのうちもうかる部面をまず国際の面において切り落し、さらに将来においてはそのうちのまた
電話部門を切り落すという形に考えて行くとするならば、私
どもの真に公共的な使命を持つ
電気通信事業自体の行方が、いかなる方向に行くかということもおよそ見当がつくわけであります。少くとも八十年間にわたる
電気通信事業が、今日においてこの
法案によ
つて決定せられるような形で将来
運営されて行くとするならば、きわめて重大なる問題ではないかということを率直に考えておるわけであります。従いましてこうした公共性の無規される形における民営分断という形は、私
どもはこの点について反対せざるを得ないわけでありますが、現在それならば世界的な
状況が一体どうな
つておるかということも、簡単に一言触れておきたいと思います。
特に国際の民営の点につきましては、国際場裡において電波を
獲得する面において、あるいはまた
公社の利用者に対する
サービスを向上させる
ためにということが、
提案趣旨の大きな理由にな
つておるようでありますが、それならばそういう民営の形でなければ、国際場裡において全世界が民営にな
つてしまうのかということになりますと、決してそうではないわけでありまして、まず五つ、六つの例を申し上げますると、アジアにおける中国あるいはタイ、インド、さらに欧洲におきましてはソ連はもちろんのことでありまするが、スエーデン、あるいはノールウエー、フインランド、ポーランド、ベルギーというようなところは、すでにこの
電気通信事業は国営で
運営されておるわけであります。さらにまたフランスにおきましても、国際通信につきましては官民半々の
状態にな
つておりますし、さらに
電話事業につきましても、実は一八八九年まで民営でこれが
経営せられておりましたが、一八八九年以後国営にな
つておるわけであります。
電信はもちろん国営でなされておるわけであります。同時にまたイギリスにおきましてもイギリスにおいては当初
電信電話とも民営で
運営せられておりましたが、その後これが国営に切りかえられておるわけであります。国際
電信電話の点につきましては、これも当初民営であ
つたものが、一九四七年から実は
公共企業体に切りかえられて今日に及んでいるわけであります。そういう点から考えますると、いずれにせよ民営から
公共企業体という形、あるいは民営から国営という形に移行しつつあるという形はございますけれ
ども、従来国営ないしは
公共企業体であ
つたものが、民営に切りかえたという話は実は聞かないのでありまして、こうい
つた点から申しましても、特に国際場裡において電波
獲得の上から、特に民営でなければならぬという理由については、遺憾ながら
終戦後におきまして
日本の立場というものは、
経営形態の問題とは別に、
日本の世界における立場、あるいは
日本の国力という問題から、確かに電波
獲得の上においていろいろ大きな問題が起きていると思いますが、いずれにせよ
経営形態だけの問題ではなくて、やはりそうい
つた問題は国際場裡における国力の問題が最も大きな問題であろうと存ずるわけであります。こういう点から私
どもといたしましては、この世界的な動向、そうい
つた面から考え合せました場合、国際を特に民営
にしなければ、この
経営が非常に困難であるというふうには考えられないわけであります。
さらに
サービスの問題に触れておるようでありますが、
サービスの問題につきましても利用者
各位からは、
電気通信事業というものに対する
サービスが悪い、非常に長い時間かかるというお話がございましたが、この点につきましても確かに今日電報あるいは
電話の扱い時間というものが長いという問題があるわけでありますけれ
ども、この点を特に、ごく最近のデータであり、四月の八日から十日間においてとりました一、二の例にすぎませんけれ
ども、たとえば
アメリカ向けの通信について申し上げまするならば、外国、すなわち
アメリカの受付から
日本の東京電報局、あるいはまた東京の国際
電話局、ここまでに到達する時間は二十四分であるのに対して、
日本の国内で受付けたものを
日本の国内から外に送り出す、すなわち送信するまでの時間が二十一分、これは至急報と申しまするか、官報の場合でありまするが、普通の場合につきましても、外国から
日本の東京に着信するまでの時間というものは二時間、それから国内から外に出る時間が一時間十二分というような形にな
つておるわけでありまして、さらにそのほかフイリピン、あるいはスイス、こうい
つたところにつきましてももちろん若干の時間の変動がございまするが、ほぼ外から内に、内から外へという経過時分というものは、そう大きな変化がないわけであります。この点から申し上げまするならば、
ただ単に
日本における
サービスのみが悪いという
結論にはならないわけでありますし、今後改善を要する点はもちろんあるといたしましても、経過時分等の点から見まするならば、国内における経過時分のみで、一方的に
サービスが悪いという
結論には必ずしもならないというように考えておるわけであります。特に電通事務
当局の方で出されました資料の中にもあ
つたようでありますけれ
ども、あれはもちろん全部をひつくるめた中の大体の平均をと
つたようであります。至急報と普通報、あるいはまた遅れてもよろしいという利用者の了解の上で受付けるものとは、時間の上ではそれぞれ大きな差異があるわけでありまして、一律に電報は何でもおそいのだ、国際
電話は何でもおそいのだという
結論にはならないかと存ずるわけであります。
さらに
サービスの改善の問題といたしまして、私
どもかねがね主張いたしておることでありますが、
機構改革の点について先ほどちよつと申し上げましたように、昭和二十四年のあの
機構大
改革以来、これは
ただ単に国際面だけではなくて、国内の面におきましても非常に大きな改正を私
ども痛感いたしておるわけでありまして、たとえば国際の場合につきましても、
電信電話を扱う
ために、そのすぐ上位における管理所といいますか、上部団体の
機構を考え合せました場合には、非常に複雑にな
つておるわけであります。国際
電信電話を取扱うところの現業局のすぐ上位における部局の構成につきましても、現在のところ
電信管理所あるいは
電話管理所、あるいは搬送管理所、国際管理所、国内管理所というようなきわめて複雑な
機構状態にな
つておるわけでありまして、こういう問題を拔き
にして、
ただ単に
サービスが悪い、これを民営にするならば問題が解決するのではないかというものの見方は、非常に浅薄ではないかというように考えておるわけでありますし、こうい
つた点は国内問題についてももちろんあるわけでありますが、国際の場合におきましても、
ただいま申し上げました
機構自体に非常に大きな問題があることを十分御承知願いたいわけであります。同時にそのこと自体が決してそうむずかしい、や
つてもやり得ないというふうな困難な
機構状態であるとは私
ども考えないわけでありまして、十分に
機構改正をやることによ
つて、こうい
つた面を打開することが
できるというように考えておるわけであります。
それからさらに施設の強化といいますか、施設の整備というような点を考え合せましても、たとえば昭和二十七
年度には、
電信回線を四回線増設し、
電話につきましては二回線、
電信放送につきましては二方面にわたるところの増設
計画をいたしておるわけでありまして、これに要する
経費は二億五千万円であります。わずかに二億五千万円という問題につきましても、
ただいま申し上げましたように、国際の収支
状況というものはきわめて現在のところ潤沢と申しますか、非常に余裕があるわけでありまして、こういう点から考えた二億五千万円という数字、あるいはかりに
サービスを向上させる
ために、
日本の国内におけるところの加入者、大口利用者に施設を整備拡充いたしまして、たとえばテレタイプというようなものを大口加入者につけて、
サービスの改善をはかるというようなことを考え合せましても、決してそう厖大な
予算が必要ではないわけでありまして、こうい
つた点を考えても、やはり二、三億
程度の
予算があるならば、設備の強化あるいは設備の改善というようなことも、十分になし得るというように考えるわけであります。しかもこのこと自体も決してこれを民営
にしなければやり得ないというふうには、われわれ理解いたさないわけであります。そういう点を考えますると、加入者に対する
サービスあるいはまた
機構改革等を考え合せましても、やり得る点が十分に残
つておる。まだたくさんある。この問題に手を触れずして、先ほど私が申し上げましたように、
政府当局が突如としてことしの二月ないし三月に至
つて、国際を民営に切りかえるという形で現わしたことにつきましては、いずれの面を考えましても、率直に言
つて納得しがたいのであります。
こういう点と、さらにまた電気通信
当局で出しましたところの現在の回線
状況を申し上げますると、戦前における国際通信が七十三回線あ
つたものが、現在は三十七回線しか実は
復旧しておらないという点でありますけれ
ども、この点につきましては、御承知のように現在の
日本の国際的な立場というものが、大陸方面においてはほとんど閉塞
状態にな
つておるというような問題、あるいはまた海底線の問題
にしましてもしかりでありまして、こういう点がやはり大きな
一つの隘路にな
つておるわけでありまして、
ただ単にこれを
電気通信事業というものの問題として片づけるのには、あまりにも大きな問題ではないかというふうに考えておるわけでありまして、これとてもやはり民営に切りかえれば、大幅に昔のような回線
状態になり得るというように考えることは、非常に甘いということを率直に申し上げざるを得ないわけであります。
さらに国際の分離問題につきましては、御承知のように
ただいま申し上げましたように、電気通信というものが非常に全国的に統一的な、しかもまた有機的
なつながりを持
つておりまするだけに、簡単に分離するということは
でき得ないわけでありまして、机上において分離することはもちろん簡単でありまするが、生きておる
電信電話を分断といいますか、
経営を別にするということについては、非常に困難があるわけでありまして、施設の保守面におきましても、たとえば国内の
電信電話線と併用せられておるという点があるわけでありますし、さらにまた運用面におきましても有機的な連繋がはたしてより強化されるか、それとも
経営自体が違うことによ
つて有機的な連繋が阻害される可能性の方か多いかということになりますると、私決して後者にな
つても前者になるとは考えられないわけであります。
さらにまた民営になれば、何でも
サービスがよくなるし、また
従業員の態度もよくなるのだということをよく申しますけれ
ども、簡単に考えまするならば、
ただ単に先ほど申し上げました数字からいたしますれば、これはきようあすの問題としては
給与も十倍くらいに上げてもいいのじやないかというように考えられるかもしれませんけれ
ども、しかし
経営形態がかわることによ
つて、当然従来の
電気通信事業を一元的に
運営しておりました際以上に、間接費が増加するということは当然であります。共通部門を従来以上に強化しなければならぬということは、これは当然考えられるわけでありますし、さらに税金、株主に対する配当、その他の分担金ということを考えました場合に、将来においては国際の
電話料金あるいは電報料金というものは、現在非常に高いという声があるが、必ず安くなるかということになりますると、むしろ長い目で見た将来の
電話料金あるいは電報料金というものは、高くなることも十分考えられるわけでありますし、
ただいま申し上げましたような内容を検討して参りまするならば、そうい
つた料金が将来高くなるということも十分考えられるわけであります。しかもか
つて日本の国際関係におけるあの
日本無線
電信株式会社が大正十四年、それから昭和七年に国際
電話株式会社というものが、設備だけが実は民間で設備をし、運用は
政府がや
つてお
つた当時の
状態を見ましても、必ずしもあの当時それならば非常にもうか
つてお
つたかどうかということになりますと、むしろ
財政的には非常に苦しか
つたということもあるわけでありまして、そのことが昭和十三年の例の国際電気株式会社という形に合併され、さらにもう少し営業部門を広げたということもあるわけでありまして、そういう点から考えまして、何か一応内部的にこの民営論を考えまするならば、とんでもない、非常に幻滅の悲哀を痛感する結果になるのではないかというように考えるわけであります。こういう点をいろいろ考え合せまして、私
ども国際電信電話株式会社法案に対しましては、特に強く反対をいたしておるわけであります。
〔
委員長退席、高塩
委員長代理着席〕
さらに最後に、公
社法案に対する問題について申し上げたいと思いまするが、この点につきましては、いろいろ基本的な考え方につきましては、先ほど来申し上げましたので、特に
条文に沿
つて具体的に
意見を申し上げて参りたいと思います。従来から
電気通信事業の隘路というものは、冒頭に私が申し上げましたように、いわゆる機動的な
能率的な
運営が
財政面において非常に大きく制限をされておるということであります。そうい
つた点が、今度の
公社案から見ました場合に、解決しておるかどうかという問題につきましては、非常に多くの疑問があるわけでありますし、むしろ疑問というよりは、はつきりと大きなひもがついておるわけでありまして、十分な機動的な
運営が不可能ではないかというふうに考えておるわけであります。
条文を追
つて申し上げて参りたいと思いますが、
最初に第十一条の
経営委員会の問題であります。この
経営委員会の構成は、
委員が三名と総裁、副総裁の
特別委員二名を加えて、五名をも
つて構成することにな
つておりますが、大体
公共企業体というものを考えて参りまする場合に、
経営委員会において決定されたことは、
ただちにこれが有機的に執行面において執行されなければならないと存じますし、同時にまた日常における諸般の問題が、執行面から
経営委員会の決議
機関の中に流れ込んで来るという有機的な
形態でなければならない、かように考えるわけであります。その際なるほど部外からは三名の非常に優秀な
経営委員を送るといたしましても、総裁副総裁の形によ
つてはたして執行面における全
従業員の意向が、あるいはまた全
従業員の熱意というものが、遺憾なく
経営委員会に反映され、吸収されるかどうかという問題については、多分に疑問があるわけであります。
結論的に申し上げまするならば、この
経営委員会にぜひとも職員代表という形における
経営委員を参加さすべきだというふうに考えるわけであります。いかに決議
機関、執行
機関というものがきれいな形で
でき上りましても、血の通わない
経営委員会と執行
機関の関係であ
つては、決して
企業体はうまく行かないということを、私
ども過友の二、三の例からも痛感いたしておるわけでありますので、この点につきましてもぜひ十分にお考えをい
ただきたいというように考えております。
次は二十一条にあります総裁、副総裁の任命の問題でありますが、この点はやはり
一般の
経営委員の任命と同じような形で、
国会の
承認を経るという形にすべきではないかというように私は考えます。総裁、副総裁は
特別委員という形で、特別という名前はついておりますけれ
ども、実質的には
経営委員の
仕事もやるわけでありますから、
経営委員以上に非常に大きな責任があるわけであります。他の
経営委員が
国会の
承認を得て内閣が任命するという形にな
つておるにもかかわらず、この総裁、副総裁は内閣が
ただ単に任命するという形にな
つておるということにつきましては、非常に私
ども不安を覚えますので、ぜひとも第二十一条の総裁、副総裁は、内閣が任命する場合には、やはり他の
経営委員と同じように
国会の
承認を経ることを条件としたいと考えるわけであります。
さらに第三十二条へ参ります。これはあるいは大した問題ではないというふうにお考えになるかもしれませんが、第六項の、職員がいわゆる結核性疾患にかか
つた場合に対する
給与率でございます。これは現在の国家公務員
給与法に基いた
給与規程を、そのままここに挿入したものだと考えるわけであります。結核疾患というものが
電気通信事業といかなる関係にあるかということは、私
ども機会あるごとに強調いたしておるわけでありますが、
日本の
電気通信事業に携わる
従業員には、非常に結核患者が多いわけであります。これは職場環境あるいは作業の特殊性というものが、非常に結核を多くしておるわけであります。結核性疾患の者を初めから電気通信省が採用しておるわけではありませんし、厳重なる身体検査のもとに採用するからには、やはり職場において感染し結核にかか
つた場合においては、特別の措置を考慮すべきではないかというふうに考えるわけであります。しかもまた
一般の社会施設に至
つては、現在のところほとんど考慮がなされておらないという
状況から考えましても、職員が結核性疾患にかか
つた場合においては、百分の八十という
給与ではなく、百分の百の
給与に是正してい
ただきたい、かように考えるのであります。
さらに第三十六条に参りまして、
公共企業体労働関係法の適用の問題でありますが、私
ども公共企業体に携わる
従業員の労働関係を、いかに規律して行くべきかという問題については、やはり原則的に労組法の適用をお考え願いたいというふうに考えるわけであります。
日本の労働運動というものが、
終戦後の
状況からいたしまして、いわゆる不安定と申しますか、非常に変則的な形で進められてお
つたことも十分に承知いたしておりますが、しかしこれに付する扱い方も、きわめてへんぱな扱いがなされてお
つたことも事実であると考えるわけであります。すでに
国鉄公社なりあるいはまた
専売公社に対しましては、あのマ書簡の出た直後から
公共企業体労働関係法が適用せられて今日に及んでおるわけでありますけれ
ども、今日から発足するものに、やはりあの
占領下にあ
つたところのマ書簡の練り直しという
程度のものを適用させるという形については、十分に反省する必要があるのではないか、原則として労組法の適用をぜひ考えるべきであるというように考えておるわけであります。
次に第四十三条に参りまして、
予算の問題であります。従来から
電気通信事業というものの
経費について、種々論議がなされてお
つた点が、特にこの
財務、
会計、言葉をかえて言えば、
予算の問題に関連してであ
つたということを考え合せますならば、十分に
企業体の自主性を尊重して行くべきであるというように考えますので、少くとも弟四十三条第二号、四号、六号というものは、削除するのが正しいというよりに考えます。すなわち第二号は
予算の
流用の問題でありますが、これが一一監督
官庁の
承認を必要とするという形では、臨機応変の措置が十分になし得ないと考えるわけであります。しかもまた終局的には、
国会のこれに対する監査監督が確保されている限りにおきましては、こまかい費目の
流用等についてまで、一々監督
官庁の
承認を必要とするということでは、
公共企業体としての性格なり、あるいはその使命を十分に達することが
できないのではないかと考えるわけであります。第四号は国庫納付に関する事項でありますが、真に
公共企業体の公共性を考えて参るとすれば、これを一種のドル箱的な考え方で見るということは、そもそも間違いであると思います。上
つて来た
利益については、もちろんその間において繰越
欠損金に充当して、さらにそれ以上のものがあ
つた場合という条件はついておりますけれ
ども、いずれにせよ、国庫納付ということをここにはつきりと明示することについては、
公共企業体そのものに対する熱意を疑わざるを得ないわけでありまして、ぜひとも国庫納付に関する事項は削除願いたい。もちろんこれに関連して前後の
条文の若干の整理はあると思いますが、私の主張いたしております点は、国庫に一部納入するというこの
制度を廃止すべきであると考えます。第六号の
給与の問題につきましても、少くとも
事業に適した勤労ということを考え、またこれに対する妥当な
給与を考えて行こうということでありますならば、
給与総額の面において金縛りにするということは、非常に大きな問題があると考えます。
次は第六十一条であります。これは
ただいま四号のところで申し上げたのと繰返しませんが、これも削除願いたいのであります。
大体以上で、
日本電信電話公社法案に対する私の
意見を申し上げたわけでありますが、いずれにせよ、公共性と
企業の自主性という問題を考えます場合に、
ただいま申し上げましたところの
予算という問題、すなわち
財務、
会計制度という問題は、かねがねいろいろ国鉄あるいは
専売等におきましても論議が重ねられて参
つておりますだけに、この問題については、
公共企業体として発足した場合において、従来の国鉄あるいは
専売において批判がなされてお
つた点が克服されたという形においての新しい問題を考えて行くべきではないかということを考えるわけであります。
以上
日本電信電話公社法案に対する
意見を申し上げたわけでありますが、総括的なことは冒頭に申しておりますので、時間の関係もあろうかと存じますから、以上でも
つて私の今回の両
法案に対する
公述をこれで終りたいと存じます。