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田邊(正)
政府委員 通信法案の第百
七條におきまして、
公社が
損害を
賠償いたします場合を
規定してございますが、この額につきまして、
損害が生じました場合にどのくらいの額を
賠償したらいいかという、その額の問題がございますし、もう
一つは、いかなる場合に
賠償をするかという、
賠償する場合のにともあるわけでございます。大体
電気通信というのは、御承知のようにきわめて大量的に、しかも瞬間的に
仕事をしなければならない
性質のものでございまして、
従つて十分な
注意をいたしましても、ある場合におきましては、やはりある
程度の
取扱いの疎漏と申しますか、間違いと申しますか、そういうものが出て参るわけでございます。たとえば
電報でございますが、現在
審報の
誤りがなお
相当ございまして、現在におきましては大体
普通電報におきまして、一万字
当り二十四字くらい、それから
照合電報におきましても、大体半分の十二、三字くらいあるわけでございます。その原因はいろいろございまして、むろん
取扱者がもう少し
注意したならば、その
誤謬は
減つただろうという場合もございますが、しかしまた一方現在の
電信の
設備におきましては、十分な
保守をいたしましても、
印刷電信機などにおきましては、ある
程度の
誤謬というもの、これはアメリカなどでもある
程度あると思いますが、そういうふうな
状況でございます。もつともこの
誤謬につきましては、終戦後におきましては、一万字
当り百字を越したこともございまして、それからいろいろと施策を講じ、また
従業員にも勉強してもらいまして、ただいま申し上げましたような数字にな
つて参つたのでございます。また
電話の点におきましても、
市内通話あるいは
市外通話におきましても、きわめて短かい時間に非常に多くのものを取扱うというふうな
関係から、どうしてもある
程度の
取扱いの間違いというものは、これはやむを得ないものではないかというふうに考えるわけでございます。それからもう
一つは、この
損害賠償の点として考えましたことは、
電報にいたしましても、あるいは
電話にいたしましても、われわれの方で引受けますものは、その
内容、
電報で言いますれば、たとえば
電報の
内容の持
つておりますところの
意味と申しますか、価値と申しますか、そういうものとは無
関係に
料金がきめられてあるわけでございます。ところがその
内容は千差万別でございまして、その
電報が間違いましたために、非常に大きな
損害を生ずるというふうな場合もございます。もちろんどのくらいの
損害を生じたかという
認定になりますと、これは個々の場合にいわゆる
相当因果関係と申しましようか、よ
つて生じた
損害というふうにな
つておりまして、その
解釈は
一つ一つの具体的の場合におのずから決定さるべき問題だろうと思いますけれ
ども、とにかく今申し上げましたような
通話、あるいは
電報の
内容によ
つて非常に大きな
損害を生じ得べき場合もある、
従つてその
因果関係ということを論じて参りますと、非常に大きな
賠償をしなければならないというような場合も考えられるわけでございまして、これは実際にどのくらい
誤謬を生じ、あるいは
取扱いを間違え、その間
違つた結果どれだけ
損害を生じたか、
相当因果関係を生じたかということを想定することはきわめて困難でありまするけれ
ども、場合によりましては、あるいは五十万円とか百万円とかいうようなことも考えられるのでありまして、これをやはりある
程度制限いたしませんと、
公社の財政上にも
相当の差響きが出て参る。そういうふうになりますと、
仕事の方の
合理化をいたしましても、なお
料金の問題とも関連して参りまして、今の
料金をやはりかえなければならねということを考えられるわけであります。そういうような、今申し上げましたような
電気通信の
性質として、それから
電気通信の
内容によ
つて生ずるいろいろな
損害、そういうものの
認定というような問題をあわせ考えまして、この際やはり
損害の額につきましては
一定の
限度を置くべきではないかというふうに考えましたわけでございまして、なお
国際電気通信條約におきましては、
電気通信の
取扱いによ
つて生じた
損害は
賠償しないというふうな
規定にな
つております。また外国の
事情を調べてみますと、
賠償するところもございますし、今日までの
電気通信省と同じように、全然
賠償しないところもございます。また
賠償するときにおきましても、多く
賠償額を限定しておるようであります。それからまた
賠償いたします場合には、特別な
電報におきましては
保險的電報と申しますか、普通の
料金以上に
よけい金をもらうというような制度をあわせ用いておるところもあるようでございます。今申し上げましたような点で、この
賠償の額といたしましては
一定の額に限る。
その次は場合でありますが、この場合はここに第百
七條に書いてございますように、その
損害が
不可抗力によ
つて発生した場合と、それからまたこの
損害の発生について
利用者に
過失があ
つた場合、その場合を除きましてすべて
公社において
賠償するということにいたしたわけであります。その
意味は、
損害の
賠償は多くの場合に
民法上の
債務不履行になると思うわけでございますが、この
債務不履行の場合に、たとえば
公社の方に重大な
過失があ
つたという場合には、むろん
賠償しなければならぬが、非常に
過失の
程度が軽い場合はどうかということも考えられるわけでございますが、この際は今申しましたように
不可抗力によ
つて損害が発生した場合と、それから
利用者の方で
過失があ
つた場合を除きまして、すべて
賠償するということにいたしたわけであります。これは
一つにはこういう点を考えましたわけでございまして、
従つてこれは
挙証責任と申しますか、そういう点につきましては非常に
利用者の方にとりましては有利でありまして、これは自分の方で間違いがなか
つたということだけ立証してもらえば、すぐ
賠償になるわけであります。ところが
民法上の普通の
状況になりますと、これは
債務不履行の場合に
故意あるいは
過失があ
つたということを立証しなければならないことにな
つておりますので、それをこの場合において考えますと、
利用者の方で
損害を
賠償いたします場合に
相当複雑なる
手続がいるという点がありますので、その点は今申し上げましたような場合のほか、
公社においてすべて
損害を
賠償するように
規定いたしたわけであります。なおまたこの
料金の額につきましては、私
どもといたしましても必ずしもこの
料金の五倍という額が、最も妥当であるというふうな絶対的な確信はないのでございますが、先ほど申し上げましたような
事情から、この際
料金の五倍を
限度としてや
つて参りたいというふうに考えているわけでございます。