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1952-05-14 第13回国会 衆議院 通商産業委員会農林委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十四日(水曜日)     午後一時五十五分開議  出席委員   通商産業委員会    委員長 中村 純一君    理事 多武良哲三君 理事 中村 幸八君       江田斗米吉君    小川 平三君       小金 義照君    淵上房太郎君       加藤 鐐造君    田代 文久君   農林委員会    理事 平野 三郎君       小淵 光平君    坂本  實君       千賀 康治君    中馬 辰猪君       原田 雪松君    石井 繁丸君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         通商産業政務次         官       本間 俊一君         通商産業事務官         (資源庁炭政局         長)      中島 征帆君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      谷垣 專一君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君         通商産業委員会         専門員     越田 清七君         農林委員会専門         員       藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出第一五九号)     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより通商産業委員会農林委員会連合審査会を開会いたします。  私が議案の付託を受けました通商産業委員会委員長でございますので、本連合審査会委員長の職務を行います。  ただいまより臨時石炭鉱害復旧法案を議題として審査を行います。これより質疑に入ります。平野三郎君。
  3. 平野三郎

    平野委員 今回政府から提出せられました臨時石炭鉱害復旧法案は、主として農地被害に甚大な関係がありますので、われわれ農林委員会といたしましてはこれを重要視いたし、全会一致決議をもつて連合審査通産委員会に対してお願いいたしましたところ、快くこの提案をいれてくださいまして、本日ここに連合審査会のお運びをいただきましたことは、まことに感謝にたえない次第でございまして、ここに委員長並びに通産委員各位にまずもつて厚く御礼を申し上げる次第でございます。  そこで政府当局に対しまして若干の質疑をいたしたいのでありますが、その前にわれわれの前提だけを簡単に申し上げますならば、鉱業の重要であるということはもちろんでありますけれども、今日わが国の置かれております立場は、食糧問題が最も喫緊かつ重要な点でございます。すなわち戦争によりまして国土の六割を喪失し、今やわれわれ八千四百万の民族がこの小さな島に押し込められて生きて行かなければならない。それがために毎年実に四億ドルないし六億ドルの外貨を支仏つて食糧の輸入をいたしておる。かような現状でありますから、何といたしましても食糧自給度を確保するということが民族に課せられました最も重要な問題でありまして、従つて国会におきましてもこの食糧自給態勢を確立するため食糧増産を第一義とすべきであるということをしばしば決議もいたし、また政府におきましてもこの点を十分に認識し努力をしておるわけでありますが、何といいましても毎年毎年耕地のつぶれて参りますのがすでに三万五千町歩以上にわたつておる。従つて食糧増産を確保するにつきましては、農地保全並びに農地の拡張、改良ということが絶対の問題であるわけでありますので、政府におかれては、鉱業重要性はもちろんであるけれども、農地保全ということにつきまして、民族の根本的な問題である点を認識して措置を進められなければならぬわけでございます。  かような前提からまずお尋ねいたしたいことは、この鉱害復旧ということは当然原形にもどすということが前提でなければなりません。しかるに現鉱業法においては金銭賠償主義によつて、いわゆるそこに発生した損害だけを賠償する、こういう建前になつておりますけれども、そういう方法で行けばだんだん耕地が減少して参りまして、先ほど申し上げました農地保全という、国の運命にもかかわる根本的な点に悪影響を来すわけでありますので、どうしても農地被害に対してはこれを原形復旧してもらうということが基本でなければなりません。かような見地から今回この法案政府は出されて、そうして鉱業権者負担金を支払つたその残りの分については、国及び地方公共団体がこれを補填してやるというような趣旨であつて、その点においてはこれを了承いたしますけれども、しかしながら国または地方公共団体がどの程度のことをやるか、これは被害を受けた農民としてはまつたく何らあずかり知らぬところであつて、当然元通りにしてもらうということが基本でなければなりませんけれども、ここに提案されておる法案だけをもつて見ますならば、はたしてほんとうに全面的に原状回復原則が確立せられておるのであるかいなか。その点はなはだ疑わしいというふうに思われるのでありますが、まず実際においてこの法を適用して、原形復旧を行われるについては、どういう方法をもつてやられるのであるか、その点具体的にお答えを願いたい。これは通産省並び農林省当局からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  4. 中島征帆

    中島政府委員 農地復旧するということは、これは現在の鉱業法では原則になつておりませんで、金銭賠償原則になつておりますことは、ただいまお話通りでございます。この法案は今日累積しておる鉱害復旧するため特別臨時立法でありまして、この法律によつて鉱業法原則を根本からくずすというところまでは行つていないのであります。根本問題としてそういうふうな金銭賠償主義が適当であるかどうかという点につきましては、これは議論があるところでありまして、鉱業法も成立後まだ日も浅いわけでありますが、適当な機会にまたこれを再検討する必要のある事項だと思つております。しかし根本問題が一応そういうことで、そのままの前提で行きますと、この復旧法で全面的に現在の鉱害原形復旧するということは、原則的にとられていないのであります。またそういうふうな意図も持つておりません。それではどの程度復旧するかと申しますと、鉱害以外の土地についても、たとえば新しい農地造成の必要から国費が出されております。また土地改良費からも農地に対して工事が行われておりますが、そういう場合におきまして、農地造成という趣旨から、どの程度工事費を出して新しく農地をつくるのが国として適当であるか、あるいは経済的であるか、こういう判断をして、そこでその限度以下で経済効果が上るところを現在では取上げておるわけであります。従つてこの鉱害復旧関係においても、そういうふうな一般の方針に基きまして、たとえば現在鉱害を受けておる農地復旧することと、それ以外に別の地区で新しく他の方法をもつて農地をつくるということ、これとあわせてどちらが国家的に優先すべきかということを考えましで、その優先順位考えるということになるわけであります。それをいま少し具体的に言いますならば、特別鉱害におきましては、今日一反当り復旧費が十三万八千円以上のものは経済効果が少いものとして復旧をいたしておりません。それ以上の金をかけるということは、土地原形復旧はできますけれども、その農地の収穫と、それからそれだけの金を投じてほかで農地造成した場合とを比較しまして、それ以上のものは取上げないことにした方がよろしいということに基いておるのだと思いますが、そういうふうにして考慮をいたしておるわけであります。従つて一般鉱害の場合におきましても、私どもの目標としては反当り復旧費が十四万円以上になるものは原則として復旧に適しないということで一応除外いたしまして、それ以下であがるものを復旧する、こういうふうに考えておる次第であります。
  5. 谷垣專一

    谷垣説明員 原状回復をすることが、こういう鉱害問題に対して望ましいという点についてでありますが、これは現在の鉱業法におきましては原状回復主義が例外的に認められておるのみであります。しかし鉱業法の論議がありました際に、私たち農林省の方よりいろいろ申し上げました通り、今日におきましても、鉱業による損害を受けました農地原状回復さるべきことが望ましい、鉱業法においてもそういう改正が行われることが望ましいということは、現在においても農林省の意見としてはかわりはございません。しかしそれは他日いろいろ議論さるべきことでありまして、今日の問題といたしましては、こういうような臨時的なものとして原状回復の線が出て来るということを非常に望ましいと考えております。ただ私たちの方で問題があると思いますのは、これが累積された鉱害ということになつておるわけですけれども、石炭稼行がどんどん進んで参ります。そのどんどん進んで行く稼行に対して累増して行く鉱害が、どうしたらば制限されて行くか、また安定した上に鉱害復旧ができるかということが私たちとしては問題があると思つております。またこれは本来鉱業権者被害者との間で考えるべき問題でありまするけれども、国がこれに対して手を加えて行くといたしますれば、その他の土地改良事業等と見比べまして、経済効果その他の点で同様の立場からこれを議論すべきものである、工事の施工に関してそういうような考え方が正しいのではないか、かように考えております。
  6. 平野三郎

    平野委員 ただいまの御答弁は非常に重大な問題があると思います。そうした認識でおられたならば実に重大な結果を来すと思うのでありますが、それは今通産省の御答弁によりますと、つまり農地土地改良造成等一般にやつておる、それと同じような考え方鉱害地に対する復旧をいたしたい、こういうようなお話であり、またこの提案理由を拝見しても、一般公共事業の例にならつて補助することといたしましたとあります。それでは鉱害地一般農地も同じような観念で行くということになるのです。そこで問題は、鉱害を受けた地帯というものは、鉱業をおやりになるということと何の関係もないのです。まつたくこれは善意の被害者です。何も被害を受けた農民が頼んでそこで石炭を掘つてもらうわけでもない。一方国がかつて鉱業権者許可を与えて鉱業をやらしておる。その結果被害を受けた。それに対して一般農地改良と同じような方法でおやりになるというのでは、いかにも被害農民を無視したというか、踏みつけた観念だと思います。そこでこれははつきりお尋ねしておかなければなりませんが、一般公共事業費というものは、いわゆる地元負担がつくわけであります。これは自分の農地を国の補助を得て改良するということであつて改良することによつてその地帯におるところの農民がその利益を受けるわけですから、これは地元負担も当然であり、またそういうふうにやつておるわけでありますけれども、被害地というものは、一般の先祖伝来住んでおるところの農地改良するというのとは本質的に違うわけであります。しかるに今のお話では同じようにやるというのですから、こうした鉱害を受けた農地に対しても、やはり一般公共事業並に行けば、地元負担とか、そういうものを多少でも農民負担せしめるとかいうようなことになるのですかどうですか、その点をはつきりしておきたいと思います。
  7. 中島征帆

    中島政府委員 その場合におきまして、被害者負担ということは全然考えておりません。もちろん復旧することによつて被害者は何ら利益を受けるわけではありませんから、その限度において負担をする筋合いのものではないのでありますが、国及び地方公共団体が出すということは、本来この鉱害鉱業権者の経営によつて生じたもので、鉱業権者責任を負うべき筋合いのものであります。鉱業権者としては従来そういう被害農地については年々不作分賠償をいたしておりますが、現行鉱業法原則によりますと、原状に回復するという義務はない。原状復旧費というものは概して金額の大きい場合が多いわけでありますが、年々賠償している金額鉱業法上の義務限度である。これを資本還元して、被害者に一時に支払つて打切り賠償するということも理論的に決して不当ではないのであります。それを徴収いたしまして、残り復旧費との差額を国及び地方公共団体負担して復旧させるというわけでありますから、現在の鉱業法原則によりましては、復旧のとうていできないものをそれに補助金を加えて復旧させる、それがこの法律一つの進歩であります。この際地方負担が問題になりますが、本来からいえば、現行法制上は国にしても、地方公共団体にしても、あるいは加害者にしても原状回復する義務は何らないのでありますが、特にこの法律によりまして、そういう新しい法律関係をつくることになりまして、鉱業権者の方から限度一ぱい賠償金を出させ、その残りを公共的に埋める。こういう場合におきましては、残りの全部を国で負担するということは国民全体に負担をかけることになります。それも一つのりくつは通ると思いますが、しかし何と申しましてもそれが年々賠償を続けられているにもかかわらず、復旧しないで放擲されている場合にはその土地生産力がそれだけ減りまして、その市町村としては経済的にそれだけのマイナスがあるわけでありますが、それが復旧されるということになりますと、元にもどることにはならないものの、少くとも現在よりはプラスになる。それでは現状では不当であるかということになりますと、一応賠償が続けられている限りは法律的には片づいているのでありますから、やはりプラスになるということを言つていいだろうと思います。そうすればその部分だけは地方公共団体としても若干の負担をしてさしつかえないのじやないか、こういう論理から残り補助金のうちの一部分を地方に背負わせるというふうな仕組みにいたしたのであります。
  8. 平野三郎

    平野委員 そういたしますと、国及び地方公共団体負担割合はどういうふうになりますか。
  9. 中島征帆

    中島政府委員 鉱業権者から徴収しました負担金復旧費との差額を国及び地方公共団体で持つという原則につきまして関係各省との了解がついておりますが、その負担区分につきましてはまだ最終的に話合いがついておりません。一つの例で申しますと、特別鉱害の場合には農地については工事費の九割の補助が出まして、そのうちで八割を国が持ち、一割を地方公共団体負担する、こういうような実例がございます。今度はどういうふうにこの負担区分をきめるかということについてなお関係各省と相談を続けておりまして、実のところまだ最終的に何割と何割だというような決定まで達しておりません。
  10. 平野三郎

    平野委員 その地方団体負担せしめるということが私は問題だと思います。農民に対しては負担をかけないということで、その点は当然のことでありますが、しかし地方公共団体負担するということもまことに筋の通らない話だと思います。  そこでお尋ねしますが、一体この鉱業権許可される場合においては、こうした被害が起るということは予想しないで許可されるものだと思う。そうした被害の起るような危険な仕事に対しては国が許可をしないのが当然なのである。しかしながらたまたま不運にもういう被害が発生したということなのですから、そうしてみれば結局これはそうした誤れる許可をしたということについては国に責任があります。  本来ならばそういう許可を与えたことも間違つておるし、また鉱山監督局というものもあつて政府としては指導監督に当つておられるわけです。そうした落盤等の問題が起ることは指導監督も悪かつたということになるわけであつて、その点政府責任を感ずべきである。そうすれば罪はすべて政府にあるわけである。鉱業法によれば、鉱業権者が当然全部原状回復までの責を持つけれども、しかし国家として鉱業を育成保護しなければならぬという立場から、今回国もその責の一斑を持つというわけでありますけれども、しかし地方公共団体は何も鉱業許可を与える責任があるわけでもなければ、指導監督にも関係がない。しかるに、割合はまだきまつておらぬそうですが、そこに発生した被害に多少ながら負担を持つということは実に筋の通らぬ話であつて了解に苦しむことであります。ことに一般公共事業費の例にならつてということであれば、これは一般農地も、こうした特殊の農地も同じような考え方で行くということであつて政府の無責任実にきわまれりと言つて院過言でないと思う。地方公共団体負担をさせるというあなたの御説明は私よくわかりませんが、もう一度その点を明確にお答え願いたいと思う。
  11. 中島征帆

    中島政府委員 一般鉱害復旧あるいは賠償に関しまして、お話のように国が責任をとらなければならぬという理由は全然ないのであります。なぜかと申しますと鉱業権許可する場合に、むろんその採掘影響というものは大体わかりますが、その結果非常に大きな社会的影響を及ぼすような場合にはこれを許可しないこともできるわけでありますけれども、実際において、たとえば下を掘つたため田畑あるいは住宅地が陥落するという程度のものは現在の鉱業法の運用上は押えていない。またどの程度鉱害が起るかということはある程度推定もできますし、また下を掘れば必ず上が陥落するということは必然の結果でありまして、当然予想されなければならぬわけであります。その結果被害が出て来るのは、山地あるいは荒地の下を採掘しない限りは当然出て参りますから、それを予想して供託金制度等鉱業法では置いているわけであります。また起きます損害については全部が鉱業権者責任であるということも、これははつきりしております。ただその賠償方法等をどうするかということについて鉱業法金銭賠償原則が認められております結果、これは立法問題と、して問題はありますけれども、原状回復まではする義務はない。少くとも現在ではそうなつておるわけであります。そこで鉱業権者としては金銭賠償限度においてこれを賠償すれば、一応法律的に賠償責任はなくなるわけでありますが、それを放置しておいては国土計画その他の関係から適当でないというので、国が取上げて復旧させるというわけでありまして、こういう措置をしなければ一般公共事業と同じように取上げられるということには参らない。と申しますのは、鉱業権者としては年々賠償を続けておれば別にそれ以上負担する必要はない、またその場合には土地改良のごとく地元あるいは土地所有者等から負担させるという理由はないわけでありますので、いつまでたつて復旧されないで残つていることになるので、それをこの際鉱業権者から賠償金額をとりまとめて、それを一つの財源として残り補助金で出そう、公共事業的な取扱いをするというのはそういう形を言つておるのでありまして、従つて国としては本来は鉱業権許可については適法にやつておるのでありまして、鉱害が出るということも、決して過失に基くわけでも何でもないわけであります。鉱害に対しましては、鉱業権者責任以上に、国がそれをカバーしてやるという義務はないのでありますけれども、別の国家的な見地から取上げるということになります。その際には、もちろんそれによつて利益を受ける程度の多い地方がある程度負担をするのが当然であろうというふうな論理から、その補助金に対しまして、一部は地方負担でするという規定を置いたのであります。
  12. 平野三郎

    平野委員 今あなたのお話を伺つておると、鉱業許可を与える場合において、ある程度被害が起るということは当然である。そういうことは初めから予想して許可するのだというお話でしたが、そうなんですか。実に驚くべきお話を承るのですが……。
  13. 中島征帆

    中島政府委員 これは鉱害が起きないということがむしろふしぎでありまして、当然起るのであります。鉱害というと少し言い過ぎかもしれませんが、下に埋蔵されております石炭採掘して、上へ出してしまうということになれば、その間隙は必ず埋めなければならない。それをコンクリートか何か強固な囲いをして絶対に陥落しないようにすれば別でありますが、そういうような方法は特殊な主要坑道以外は用いませんので、石炭を掘つたあとは充填いたしましてもある程度落ちるということは、どうしても現在の技術では避けられない。従つて採掘によつて上が陥落するということは、現在の条件におきましては必然でありまして、住宅地あるいは田畑の下を掘られる場合には、必ずその上の方の物件が何らかの被害を受けるということは当然予想されるわけでありまして、そのため鉱害賠償規定鉱業法にあるわけであります。ただその賠償が、金銭賠償が適当かどうかというところに問題があるのと、実際の賠償のやり方につきまして、鉱業権者鉱業法上要求されておる適正な金額賠償しておるかどうか、こういう点の実行方法につきましては問題があるかもしれませんけれども、法制上といたしましては、鉱業権者が起しました損害につきましては、その金額鉱業権者責任として賠償しなければならないということになつておるわけであります。
  14. 平野三郎

    平野委員 そういうことになれば、要するに賠償さえ払えば何をやつてもいいのだ。石炭を掘れば当然陥落するのはあたりまえの話だ。そのときにはその分だけ賠償を払えばいいのだというようなお考えでは、これは罰金さえ払えばどんな悪いことをしてもいいのだということと同じ論理になると思う。私はそういう政府指導でははなはだ間違つた結果を来すと思うのです。そこで具体的に申し上げますが、たとえば農地の下を掘つて、それがため農地が陥没して米がとれなくなるという場合に、その掘つた石炭価値と、そこの農地の米の価値というものは、もちろん石炭の方が高いかもしれませんが、石炭は一ぺん掘れば永久になくなつてしまうものであり、米は毎年々々できるものであります。いわんや先ほど申しましたように、今日食糧確保ということは最大の問題なんだ。そうしてみれば、そういつた許可を与えられる場合は、当然陥没をするということが予想されるならば、その毎年々々の被害を弁償しさえすればいいというような考えは、国家的な重大な損失を来すわけですから、当然損害が起るというならば、起るべき損害とその石炭を掘ることによつて得るところの利益をはかりにかけて、はたしてどちらが国家ためになるかということを検討した上で許可を与えられるのが至当だと思う。それについては私は政府の内部において、通産省農林省と協議をせられて、その比重をはかつて取扱いをされるということが至当であろうと思うが、そういう点について農林省打合せをしてやつておられるのでありますかどうか、これに対して通産省並び農林省はどういうふうにお考えになつておるか、あわせてお尋ねいたします。
  15. 中島征帆

    中島政府委員 ただいまのお話はまことにごもつともでありまして、本来ならば、採掘せられる石炭価値と、鉱害によつて損失する地方損害との利害を比べて、そこで判断をつけるというのが理論的に最も正しいと思います。ただ現在の鉱業法におきましては、そういうふうな経済的に秤量することによつて鉱業権の認否をするということができなくなつております。むしろ社会的にどの程度大きな影響を与えるか、そういうふうな面からの規定はございますけれども、今のような例でもつて実際上の鉱業権許可をするというふうなことになつていない。従つてそういう点につきましては、鉱業権許可をする際に、農林省と個々に打合せをしておることはございません。ただ立法論といたしましては、やはり地下資源と、地表の農地なりその他の財産との比較というものをいたしまして、その間の調整をどうするかということは非常にむずかしい問題でありますけれども、将来はそれを根本的に取上げて考えなければならぬということは私も考えますが、現在ではさようになつていないということを申し上げておきます。
  16. 谷垣專一

    谷垣説明員 鉱業権許可をされるのは通産省でいたしてございますので、この際に農業との関係をどういうふうに見ておられるか私は存じませんが、ただ農林省といたしましては、石炭の掘鑿を続けて行く、それから必然的に鉱害が発生するということでありますならば、そのやり方について、地表の鉱害に対する十分な顧慮が行われて、発掘の計画が実施されるということが当然であり、また最も望ましいことであろうかと思います。鉱業権許可並びにそのあとの作業について今のような考慮が払わるべき必要があると考えております。
  17. 平野三郎

    平野委員 実にこれは意外なことなんでありまするが、これは国家として当然考えなければならぬことだと思います。不幸にして予期せざる被害が発生したという場合はやむを得ない、これは国として年々いろいろな災害復旧をやつておるわけでありますが、石炭を掘れば、必然的に被害が起るのだということが、初めからわかつてつてつておる場合においては、当然これは政府の部内においてどちらに比重を置くかということで考えて行かなければならぬわけで、ただいまの御答弁では、それは当然のことであるけれども、実際には通産省だけでやつておる、こういうふうなことで、まつたく人をばかにするにもほどがあると考えます。これはあなた方の問題ではなく、政府全体の責任において大臣にお尋ねをしなければならぬことでありまするが、この点について、本間政務次官から御答弁をいただきたいと思います。
  18. 本間俊一

    ○本間政府委員 平野委員の御指摘のように、いろいろな被害が出まして、その被害をできるだけ原形に回復いたしまして、農業の生産も継続ができるようにいたしたいという考えはまつたく御同感でございます。ただ従来相当な被害がありましたが、関係各省との関係もございまして、なかなか取り上げることができなかつたのでございますが、やつと特別鉱害に対しましては法案が成立いたしましたので、そこでその法律案に従つて処理いたしておるわけでございます。今度さらに一歩を進めまして、一般鉱害に対しましても手をつけたいということで実は提案をいたしておるのでございますが、御承知でもあろうかと思いますが、各省との間の話合いも非常にめんどうな関係になつておりますので、御満足の行かない箇所が方々にありますることは、私ども承知をいたしておるのでございます。従つて今度この法案によりまして耕地復旧いたします場合に、大体ただいまの構想といたしましては、被害地のひどいところに復旧事業団というものをつくりまして、その事業団で、被害を受けました人々、それかり被害を与えました加害者の方並びに一般の災害復旧その他の仕事を担当しております府県などの専門家のいろいろ専門的な意見をも十分尊重いたしまして、そうして復旧事業計画というものを作成されて、その復旧計画に従つて復旧をいたしたい、こういうように考えておりまするので、一般鉱害被害の回復にあたりまして農地関係をいたしております、あるいはその他の関係をいたしております府県の専門家なり、何なりの意見を全然参照しないで、単に通産省だけで処理するという意味では実はないわけでございますので、十分それらの専門の担当官の意見を尊重いたしまして、できるだけりつぱな、実際に即した復旧計画を立てて参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  19. 平野三郎

    平野委員 今の政務次官の御答弁は、本法案趣旨弁明で、私のお尋ねのお答えにはならないのですが、私のお尋ねしていることは、鉱業権許可を与えられる場合において、当然そこに起るべく予想される被害としいうものと、鉱業をやることによつて受ける利益との比較をして、当然起るべき被害の方が大きいような場合であつたならば、許可をしない方が国家的に見ていいにきまつているのですから、通産省としては、関係各省と協議をして、その上で許可をするということが当然ではないかということをお尋ねしているわけです。実は私どもの岐阜県の亜炭地帯のごときは、もうどんどん農地が陥没して困るのですが、だれが見ても農地被害の方が亜炭を掘ることによつて得る利益よりもはなはだしい。実は私、たまたま掘つてみたところが予想しない被害が起つたというふうに今まで思つておつたのですが、掘れば被害の起るのは当然だ、陥没が起るのは当然だということを予想して許可をするということを聞いたので、それならば農地の下を掘るという場合には、当然農林省と協議をして許可すべきではないか、あるいはその後の指導監督についても農林省との連絡が必要ではないか、しかるに何らそういう政府部内での打合せがないという今の御答弁なので、それではいかぬじやないかということをお尋ねしておるのですが、その点お答え願いたいと思います。
  20. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答えをいたします。先ほど炭政局長からお答えいたしましたのは、鉱業権許可いたしまする場合にある種の被害が起るということは、いろいろな事例もありますので、概念の上から申しますれば、当然被害があるということが予想できるのだというふうにお答えいたしたのでございますが、具体的な問題になつて参りますと、たとえばどの地点をどういうふうに掘ればどういう被害が起るというようなことを一々正確に判断することも、はなはだ困難な場合も実はあるわけでございます。そこで農地関係をいたしまする場合に、全然被害のないような場合でございますと、御指摘のようなふうに心配ないわけでございますけれども、この問題を多少農地関係がありますということで関係各省と協議をするということになりますと、実際に起りまする被害程度なども正確には予測することがなかなか困難でございますので、許可を与えられない場合の方が非常に多くなるという懸念も実はございますから、従来鉱業法にのつとりまして処理をいたしておるわけでございますが、特に非常な被害が起つて来るというような具体的な問題が起りました場合には、担当いたしております方から具体的な被害について連絡なり、意見がございますれば、それらの意見をもちろん考慮いたしまして処理をするようにいたさなければならぬと考えております。
  21. 平野三郎

    平野委員 なお通産、農林両省にいろいろお尋ねすることがありますが、主計局長がお見えですから、お忙しいようですから順序をかえて大蔵省の方へのお尋ねをこの際やらせていただきたいと思います。  今回政府はこの法案を出されたわけでありますが、これに対する予算的の裏づけについてはどういうふうになつておるのでございますか。昭和二十七年度の予算にはもちろん計上がないわけですけれども、政府としてこういう法案を出される以上は、予備費その他から支出をするということをお考えなのか。あるいは近く補正予算をお組みになるお考えなのか。また補正予算をお組みになるとすれば、どういう構想であるか。その点ひとつお尋ねいたしたい。
  22. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 これはけさほどもお尋ねがあつたのでありますが、ただいまのところ補正予算の問題につきましては今後の情勢いかんによりますので、今補正予算でこの経費を組むというふうにもきめておらないのでございます。現在各省において相当ことしは公共事業費もふえておりますので、こういつた関係の分もその中から振り向けてさしあたりはやつて行きたいというふうに考えております。
  23. 平野三郎

    平野委員 今の主計局長の御答弁はまことに明確を欠くのですが、一般公共事業費が相当ふえておるのだというようなお話だつたが、そうしますと、二十七年度の公共事業費の中に多少でもこの法案の裏づけになるような予算があるということなのですか。
  24. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 農林省土地改良あるいは建設省の道路、河川その他いろいろ各省で予算が盛つてあるのでありまして、その対象について特にどこどこというふうに指定をしてないものも相当あるのであります。従つて鉱害復旧といいましても、あるいは土地復旧であり、改良であるわけでありますので、その経費から一応支弁することは考えていいのではないかというふうに思つております。
  25. 平野三郎

    平野委員 一応支弁するとか何とかいうお話がありましたが、二十七年度の予算案を編成される当時は、この法案というものは全然成立していないわけであつて、この法案もまだ成立するかどうかわからぬわけであります。従つてこの法案というものを全然予期しないでつくられた予算なのであるから、その予算の中にこの法案に基くところの予算がたとい一銭たりとも入つておるなどということは、常識上あり得ざることであると思います。しかも二十七年度予算というのはそれぞれ下から組み上げられて、そうしてすでにその予算の配分なども今日各省ともどんどんやつておられる。おおむね完了しているのではないかと思うわけであります。従つて二十七年度の予算の中で一応出しておくなんということは出しようがないのではないか。一体そういうものがあるのですかどうですか。これは農林省の方にひとつお尋ねいたします。
  26. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 鉱害復旧という名目の予算はないのであります。ことに鉱害復旧についてわれわれが補助をいたします建前というものは、事業団が一応補償の金を出して、それ以上の復旧の経費をどうするかという問題でございまして、これについては公共事業の建前から補助をする、鉱業法一般私的の法律関係はかえないという建前でございますので、国が補助をするのは公共事業として補助する、こういうことになるのでございます。各省ではおのおの公共事業の予算を持つておりますので、これはもちろん場所のきまつたものもございますが、府県道の補助であるとか、あるいは土地改良であるとかいつたような経費について、農林省農林省食糧増産なら食糧増産という建前から、鉱害土地についても補助をして行く、こういう建前でおりますので、必ずしもその名目の予算としてはマークして入つておりませんが、そういうことができる建前になつております。
  27. 淵上房太郎

    ○淵上委員 実は大蔵省の御出席をお待ちしておつたのでありますが、この問題に関連してこの機会にお尋ねしておきます。ただいまの御説明によりますと、この法案の第三章農地、農業用施設及び公共施設の復旧工事につい出て、第五章第九十一条で、国は、その予算の範囲内において補助をなすという、これは公共事業費の補助から出せるという御見解であるのか、ひとつ伺つておきたいのであります。
  28. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 私どもとしましては公共事業の予算から出すつもりでおります。
  29. 淵上房太郎

    ○淵上委員 もう一点大蔵省にお伺いいたしておきたいのでありますが、実は土地の基準賃貸価格の倍率に関連いたす問題でありますが、国庫補助が大体どれくらいの割合で出るのか、これをお尋ねしておきたい。これはちよつと前提にお尋ねいたしますが、第七十三条の農地の効用が回復するのに、勤労とか肥料とか、超過労力なり超過費用がかかつております。それから第七十七条によります維持管理費がいる。昨日の質問に二万円ずつくらいは四箇年いると見てもよかろという農林省当局の御説明でありました。もしもかりに国庫補助が五割出るといたしまして、県費補助が一割出るといたしますならば、残る四割は鉱業権者賠償義務者の納付金によらなければならぬ。それは特別鉱害の実績によりますと、不毛田につきまして復旧費が十二万七千円、公共用施設の復旧費が一万三千幾ら、十四万円はかりになつておりますが、その四割を賠償義務者の負担によるといたしますならば五万六千円、それと先ほど申します二万円プラス二万円、九万六千円という金額になるのであります。かりに福岡県の田の賃貸価格の平均額から申しますと十七円四十六銭でありますが、この九万六千円を十七円四十六銭で割りますと五千四百四十倍になるのでありまして、従つてこの五十一条の二千を下らず五千を越えない範囲ではとうてい農地復旧ができなくなる、こういう関連が生じて参ります。従いまして今ここで大蔵当局にお聞きしたいのは、国庫補助を五割程度お出しになるのでありますか、あるいは六割までお出しいただけますか、その御方針を伺つておきたいと思うのであります。
  30. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 事業団に出します納付金額は、一応鉱業法の建前で補償に当る金額でございます。そうして鉱害をこうむりましたものをその農地として復旧いたすというわけでありますので、普通の復旧の経費と、それから事業団から受けるいわゆる補償に相当する金額との差額について補助金が行くということになろうかと思います。一般農地改良で行きますと——これは公共事業一般がそうでありますが、県に対して国は五割の補助金でありますので、その他のものには五割を国が負担する、こういう建前であります。
  31. 平野三郎

    平野委員 今河野さんは一般公共事業費から出すということを再々繰返されるのですけれども、これは御承知の通り復旧事業団というものをこしらえて、そこで鉱業権者から負担金をとつて、足りない部分を国及び地方公共団体が出す、こういうことであつて、二十七度の予算においてはまだまだそういうことは予想しないことであり、また一般公共事業費の中にはこの鉱害というものは全然含まれていないわけなんです。それにもかかわらず一般公共事業費から出すということは、それは大蔵省は金を出したくないのでいろいろりくつをつけられますが、私はりくつがつかぬと思う。どうしてもこれは独特の予算項目を一本立てなければつじつまが合わぬわけであり、従つてこれは通産省の御方針だと思いますが、かような法案通産省が出されるならば、事前に大蔵省とも予算的の打合せを当然して、その上で出されなければならぬ。予算の裏づけのないようなものを、ただ法案だけ出して国会の審議を求められるということは、いかにも政府として私は無責任もはなはだしいと思うのですが、そういう点において通産省は大蔵省と事前にいろいろ打合せをされたかどうか、今の大蔵当局の御答弁ではどうも私はふに落ちませんが、その辺はどうですか。
  32. 中島征帆

    中島政府委員 もちろんこの法律が制定されますと、今年度におきまして相当の予算がいるということが予想されますので、当初からこの点につきましては話はしております。ただこの法律案の具体的な内容が固まりましたのが大分おそくなりました関係で、今日出しておりますような形の数字が出ましたのは比較的最近でありますけれども、大ざつぱな話としてはすでに大蔵省に対してそういう申入れをいたしております。ただ、ただいま主計局長も言われましたように、本年度の公共事業費の中からこれは出せるはずだという点につきましては、むしろ今年度の公共事業費の所管の各省がはたして出し得る状況にあるかどうかということになるのでありまして、その点は通産省としてはそういう予算を持つておりませんので、大蔵省となお相談いたしまして、今年度の公共事業費から出なければやはり補正予算か何かで考えてもらわなければならぬケースのものだというふうに考えて、なお今後話を続けたいと思つておるわけであります。
  33. 平野三郎

    平野委員 農林省の方はどうですか。
  34. 谷垣專一

    谷垣政府委員 農林省の方といたしましては、二十七年度予算に、この法案に盛られておりますのに該当する予算を持つておりません。これは今後それとは別個の措置をお考え願いたいと思つております。
  35. 平野三郎

    平野委員 予算のことは私は裏も表も知つておりますから、あまりやぼなことは申しませんが、ただこの際主計局長にはつきりお答えを願つておきたいことは、今農林当局言つておりますように、この法案が通つて、そして二十七年度の一般公共事業費から支出するなどということは絶対に不可能なことであります。これはよく御認識願うと同時に、当然次の補正において独特の項目を立てて、予算的措置を講じてもらわなければならぬと思いますが、その御意思ありやいなや、これだけ念を押しておきます。
  36. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 補正予算を組むとか組まぬとかいうことは、今後の情勢いかんでありまして、補正予算というものは、財政法にもありますように、何でもかんでも組むという建前のものではありませんので、鉱害復旧について今後御調査もおありでありましようし、それが具体的にきまるのはあるいは遅れるかもしれません。農林省はただいま予算がないということを言われましたが、それは結局出さぬつもりならないということになりますし、何かくふうしても考えるというならあるということになるのでありまして、予算がより以上ほしいという立場に立つてはそういうことも言われると思いますけれども、われわれとしては、現在の段階において、どうということを申し上げる段階でないことを御了察願いたいと思います。
  37. 平野三郎

    平野委員 予算のことはこの程度にしますが、ただもう一つ念を押しておきたいことは、今の一般公共事業費でもつて本年度出すということは絶対にできないことである。またそうした予算の裏づけがない。すなわち補正予算も組むか組まないか、補正予算ということは全般の情勢によることはもちろんでありますが、こういう法案が出れば、当然これに伴つて補正をするのでなければ、こういう法案を出されること自体が、まつたく無意味なことなのですから、これは大蔵省としても覚悟をしておいていただきたいということを念を押しておいて、大蔵省はこの程度でけつこうでございます。  通産省にお尋ねいたしたいことは、鉱業権者の納付金というものは、どういう基準でどういう割合になるものですか。
  38. 中島征帆

    中島政府委員 鉱業権者の納付金は、農地の場合と、その他の公共施設の場合と違うのでありますが、農地の場合におきましては、その農地鉱害に基く被害額、つまり減収量というものを毎年賠償しなければならぬわけでありますが、それを資本還元いたしまして、先の分まで前取りするというかつこうでとるわけであります。その具体的な算出方法等は、こまかい数字がございますが、その方式によつて出すわけであります。それによつて大体の見当をつけるわけでありますが、その基準に基いて、この法律に出ておりますのは賃貸価格の何千倍というような表現をいたしております。一つの標準的な農地をとりまして、賃貸価格の何千倍になるかという倍率をきめまして、あとは土地台帳に基いてそれぞれの格差がございますが、台帳の賃貸価格に応じて倍率をかけて出す、こういうような機械的な算出方法になります。公共施設につきましては、復旧費鉱業権者の納付金、こういうことになるわけであります。もちろん公共施設を復旧しました結果におきまして、従来より以上の効用を得る、あるいはそれ以上のつぱなものができたという場合には、やはり受益者負担的に地方団体負担するわけでありまして、その分につきましては、鉱業権者負担金はないのでありますが、少くとも原状回復をするという意味におきましては、全額鉱業権者負担である。但し、これにつきましては、一時的には公共事業費から一般の率による補助金を出していただきまして——この率はどのくらいになるか、三割になるか五割になるか、いろいろケースは違うと思いますが、そのきまつた補助金復旧費から除いた残りのものを、納付金として取上げる。こういうことになります。従つて表面的な納付金としては、公共施設に対しては、復旧費から補助金を除いたもの、こういうことになります、残り補助金に相当するものは、納付金としてでなく、国に返還するという規定があります。そういう方法によつて、結局におきまして、鉱業権者は公共施設としては全額負担をするということになつております。
  39. 平野三郎

    平野委員 五十一条を拝見しますと、賃貸価格の何千倍ということになつておりますが、こうなれば、復旧費がいろいろ物価の値上り等によつてつて来た場合においては、国の負担歩合が非常に多くなつて来る場合があるんじやないか。特にこれは先ほどからの根本問題でありますが、私どもの見解では、農地が陥没した場合においては、それを金銭賠償するということでは、その農民自体は、とにかくそれで損害を補填されますが、農地がそれだけ減るわけであつて国家的な食糧増産の大目的が阻害されることになるから、これは当然金銭賠償でなくして、陥没した土地にまた土を入れて、元通りそこで米がとれるようにするということが、私はしかるべきだと思うのですけれども、そうしますと、非常に事業費が上つて来る。そのために、この五十一条によるところの賃貸価格の何千倍ということだけでは、鉱業権者負担が少くなつて、そのために国の負担が多くなる。負担が多くなるから、結局、一反歩当り復旧費がよけいかかる。しかもこれは一般公共事業費の例にならつてやるということになれば、そういう経済効果の上らない所はやめた方がいいじやないかというようなことになつて、今、大蔵省の河野主計局長が申したような観念で行かれるならば、結局、耕地がだんだん減つて行くということになつて困ると思う。だからそうしたような、ただ賃貸価格の何千倍というだけのことで行くならば、結局、復旧費が非常に制限されて来て、原形回復ができないようなおそれがないか。そこでもう一度五十一条というものを、よほど検討される必要はないかと思うのですが、その点はどうですか。
  40. 中島征帆

    中島政府委員 お話の筋道はその通りでございます。ただ特に物価騰貴の場合を予想いたしましたときに、五千倍というものは、ある程度ゆとりのある数字だと思うのであります。もちろん、非常なインフレによりまして、大幅な物価騰貴が起りました場合には、法律改正ということをしなければなりませんけれども、ある程度の物価の変動は、二千倍ないし五千倍ということで吸収できると思います。具体的に申しますと、大体、今考えておりますのは、三千何百倍になりますか、四千倍以下くらいのところでおそらくきまるだろうと思いますが、そういたしますと、まだそこに二割くらいの余裕があるということになりますので、その程度の中の物価変動であれば、倍率は政令でもつてきめられますから、その事情に応じて適当に修正することが可能かと思います。
  41. 平野三郎

    平野委員 これは非常に特殊の例でありますけれども、一つつておきたいことは、鉱業権者が、被害が起つた場合に、どこかへ行方不明になつてわからない。従つて納付金を納めさせようと思つても、納める者がいなくなつてしまつたという場合は、全部国で負担しておやりになるのであるかどうか。
  42. 中島征帆

    中島政府委員 その場合は、鉱業権者負担すべきものにつきまして、一般の場合と同じように、国と地方公共団体とが分担して負担するという建前になつております。特にそういう農地復旧する場合には、関係の市町村等の同意を得て、それだけの負担ができるという場合に初めて復旧するわけでありますが、いざ復旧する場合には、率がどの程度にきまりますか、かりに二割、八割という数字できまつたとすれば、国がその復旧費の八割を負担し、地方は二割負担する。こういうようなことで、国と地方の両方で分担することになります。
  43. 平野三郎

    平野委員 そういう場合は、地方公共団体の協力を得て、全部国がやるということでけつこうですが、しかし、そういう被害が起つたために、分担金を出すのがいやだからというので、逃げていなくなつてしまうというような、不都合きわまる者に対して、鉱業権許可を与えるという政府が、実に私は無責任きわまると思う。なお伺つておきたいことは、許可を与えられたその人は、かりに相当な人物であつたとしても、その鉱業権を、他のそういう無責任な者に讓渡するというというような場合があるのですけれども、その讓渡をするような場合については、政府はそれに干渉することができないのであるか、鉱業権の讓渡ということはまつたく自由なものであるか。またそうした不都合な者に許可を与えるということは、私は無責任もはなはだしいと思うが、そういう場合が起つたことについて、政府として責任を感じないかどうか。私は感ぜられると思うが、感ぜられたならば、どういう処置をおとりになるのか、お伺いいたします。
  44. 中島征帆

    中島政府委員 鉱業権の讓渡の場合に、どの程度チエツクできるかということですが、私、ちよつと鉱業法をその点まで承知いたしておりませんが、かりに許可を要するといたしましても、讓受人の資力まで考慮して認可するということは、その場合は全然無資力な者が何かの目的でやる場合もありますが、そうでなく、多少悪質で将来鉱害賠償しないおそれがあるということで許可しないということはできないと思います。その欠陥はどこにあるかということでありますが、ただいまのところ国がその負任を負うということも筋が通らないのでありますが、根本的には現行法においては供託制度に欠陥があるのじやないか。供託金というものは前の鉱業法からずつと実行されておりますけれども、以前は一トン当り五十銭とかなんとかいう、今日の貨幣価値に比べると全然問題にならぬようなものを供託いたしております。本来からいえばこの供託というものは将来起るべき鉱害を補填することを保証するわけでありますから、いよいよ鉱業権者採掘をやめた場合に大体予想の鉱害をすべてカバーできるというところまで持つて行くというのが筋道でありますが、そういうような供託制度にするか、あるいは別に供託はしないまでも、鉱業権者の経理の中に鉱害賠償の積立金あるいは準備金を置かせるというような制度を設けるかして、将来に対しまして被害者に対する保証をしなければならぬと思うのでありますけれども、今日の立法上はそこまで至つておりません。これは将来は何とかそこまで持つて行かなければならぬということを、私個人的には考えておりますが、現在の法制のもとにおきましては、そのようないわば悪質の鉱業権者を押える方法としては、完全にこれをやめてどこかに逃げてしまつた者についてはいかんともしがたいということははなはだ残念なことであります。
  45. 平野三郎

    平野委員 そういう者に許可しても政府責任がないというようなお話ですけれども、これは何も法が悪いのではなくして、法はおそらくこういう者に許可せよとか許可するなというようなことまで書いてあるわけではなく、常識で判断しても、被害が起つたら行方不明になつてしまうというような不都合な者に対して許可を与えたということは政府責任で、この点当然私は責任を感ずべきだと思うのです。悪質な者に対しても許可をするのはやむを得ないのだというようなことは、私は断じてあり得ざることと思いますが、その点もう一度お答えを願いたいと思います。
  46. 中島征帆

    中島政府委員 どうも鉱業権の讓渡あるいは出願した者が、将来におきましてそういうような義務不履行をするかどうかというようなところまで見て、そこまで国が責任を負うということは、現在の一般の行政のやり方としては行き得ないのじやないか。そこまで国に責任を負わせるのは無理じやないかと私は思うのであります。
  47. 平野三郎

    平野委員 無理じやないかとおつしやるけれども、これは特に朝鮮人などに非常に多いのです。そういうような悪質な者はどんどん許可を与えて、しかも指導、監督などもろくにやつておられない。従つて鉱業法の違反はめちやくちやに起つて農地被害が頻発しているというような状況を呈している。これは事実なんですが、そういうことについて、どうもやむを得ないのだということでは、実に政府の無責任さは驚き入つたことで、私はさらに具体的な事実を一つあげて政府の反省を求めたいと思いますが、あまり長くなりますので、もう一、二お尋ねして打切ります。  この復旧事業団というものはこの法律が成立すればすぐにおつくりになるわけですけれども、そういうことについての準備がどの程度進んでおるかどうか。特に私はこの点について、規模の大きいものについては復旧事業団をつくるが、規模の小さいものはあとまわしにするというようなことがかりにあるとすれば、これはゆゆしき問題だと思います。ということは、被害が大きかろうと小さかろうと、それは大きいか小さいかというだけの違いであつて被害を受けた農民としては同じことです。従つてたとえば私らの岐阜県の亜炭の地帯のような所は、被害金額としては少いものです。少いが、その受ける影響は実に深刻なのであつて、当然これは復旧団をすみやかにこしらえてこの法律を適用しなければならぬのでありますが、その辺はどういうふうになつておりますか。
  48. 中島征帆

    中島政府委員 一般鉱害復旧方法といい、あるいは特別鉱害といい、いずれも問題が起きましたのが大部分九州、宇部でありまして、その他の地区は調査の場合も実はつけ足りに一応調査したという程度であります。しかし亜炭に関してやはり同様な問題が起つているということは想像されますので、この法案の中でも石炭と亜炭とは同等に扱つておりますが、一応亜炭地区に関する調査を見ますと、金額が比較的に少い、それから鉱業権者から出ているものと地元の市町村等から出ているものとの開きが非常に多い、ということは実際の被害のつかみ方が必ずしも明確でないということと、さらに納付金を納め、あるいは賠償すべき鉱業権者がいなくなつているという地区が相当あるということが想像されるのであります。そこでそういう地区において復旧事業団をつくりまして復旧するということは、決して排除するわけではありませんけれども、事業団をつくりますとそこに人も置かなければなりませんし、ある程度の経費もいるという場合に、鉱業権者が全然いない場合には、そこにそれだけの地元負担がふえるわけであります。そういういろいろな負担考えましたときに、その地区で復旧事業団をつくつて計画的にやるということは、はたして採算がとれるかどうかということをまず考えなければならぬ。それがもしとれるという見通しであれば、それはいかに地区が小さかろうと、金額が小さかろうと、事業団をつくることについて何も押える意思はございません。むしろつくつて早く復旧した方がいいのじやないか。そういう点を早く調査しませんとただいまのところは若干そういう点に疑問がありますので、今すぐに復旧事業団の設立を考えておりますのはさしあたりは九州と宇部でありますが、その点の調査を十分にいたしまして、たとえば名古屋地区におきましてもやはり復旧事業団をつくるだけの価値があるということになれば、やはりつくるということはさしつかえないのであります。
  49. 平野三郎

    平野委員 農林省にお尋ねします。七十八条によりますと、農林省復旧計画をつくり、実施計画をつくるということになつておりますが、そうすると計画に入らないものは漏れるわけであつて、そういう所は復旧しないで放任されるということになるのですか、その点ちよつと伺います。
  50. 谷垣專一

    谷垣説明員 農林省の方といたしましては、できるだけ多くの農地復旧されることを望んでおります。従つてそういう立場から実施計画その他を認定いたすわけでありますが、ただ納付金の額あるいは事業費の高、それの経済効果等をやはり考え合せる必要があるのと、御指摘になりました七十八条  の復旧し得ない土地というものは極力少くして、技術的に見てやむを得ないものの限度にとどめるという要請等を考えましてやつて行きたいと考えております。なお実施計画に入りません地区は、鉱業法の本来の賠償という形にゆだねられるのでありまして、本法以外で保証が与えられるというようになると考えております。
  51. 平野三郎

    平野委員 なおいろいろお尋ね申し上げたいことはありますが、あまり時間が長くなりますので私はこの程度にしておきますが、ただいまの大体の政府答弁を総括的に判断しますと、これは法案としては一応体裁が整つておるけれども、その内部にはいろいろ修正すべき点があるようにも思いますし、ことに一番問題は、これに対する算の裏づけでありまするけれども、ただいまの大蔵省の見解では、もうすでに二十七年度の予算の中に幾らかでも入つておるというような、まことに奇怪きわまる答弁をしておるということから判断いたしましても、すみやかに農地復旧をはかつて、この法の施行をするためには、今後通産委員各位の格段なる御尽力をお願いしなければならぬと思いますので、特に委員長にお願いいたしまして、私の質疑を一応打切ります。
  52. 原田雪松

    ○原田委員 私もついででありますから一言お尋ねしておきたいと思います。本立法が臨時立法で、特に一般鉱害の方まで親心をもつて伸べるということについては、心から感謝するものであるし、ほんとうはおそきに失する感もあるわけです。さしあたりお尋ねしたいことは、鉱害地の中で一般鉱害特別鉱害との比率がどうなつておるか、このパーセンテージを一応お尋ねしておきたいと思います。
  53. 中島征帆

    中島政府委員 特別鉱害で取上げられております農地は三千町歩であります。それから今回の一般鉱害として出ておりますのが九千町歩ほどございます。但しこの中で、まだ鉱害の安定してないもの等を除きまして、大体復旧計画に乘りそうなものが五千町歩程度であります。
  54. 原田雪松

    ○原田委員 そこでお尋ねしますが、特に私も鉱害地の調査を二、三回やつたことがありますが、地下と地上の万般の権利関係の調整を実際上現在までどうやつておられるか。まことに涙ぐまといような悲惨な状態もあつたように見ておるのですが、一向手をつけてないというような部面がたくさんある。今までおやりになりました調整あるいはその他の調査等にはどういう手を打つて、どういうふうにやつておられるか、内容をちよつと伺つておきたい。
  55. 中島征帆

    中島政府委員 地下を採掘します場合には、鉱業権許可というところで応問題が起りますが、いざ事業を開始いたしますと、施業案というものの認可を受けなければならぬことになる。施業案というものの中に採掘計画に関しまするいろいろなこまかい計画を出すわけでありますが、その出した書類を見まして、それがはたして坑内の保安あるいは経済的な採炭という意味において適当であるかどうかということとあわせまして、その採掘計画に基いて、地上にどういう影響を及ぼすか、その影響がどういうものであるかというようなことを検討いたしました上で、必要な場合には、適当な修正を加えまして認可をすることになるわけであります。そこでこういうふうな採掘に着手の認可あるいは施業案の認可の案の出ました場合に、地上の利害関係者がそれに対して反対をする場合があり得るわけであります。これは個々の場合にはきわめて少いのでありますけれども、たとえばその地帯が温泉地帯でありますとか、その他上の方に重要工作物があるとか、貯水池があるとかいうような場合におきましては、その下を掘るということにつきまして、利害関係者は一応の不安を持ちまして、それに対して反対の意見が出るわけであります。そういう場合におきましては、地元の通産局長が最終的な許可をするわけでありますので、許可をする前に、利害関係者ないしは専門家の意見を十分聞きまして、そこで話合  いがつけば、その趣旨従つて許可をするということをいたします。またどうしても話合いがつかない場合には、一応の判定を下しまして、それに対して不満のある者は土地調整委員会の方に申し出ることができるわけであります。そういたしますと、土地調整委員会の方でその関係のことを十分検討して、採掘を許すか、あるいは採掘禁止区域にするかということを判断するわけであります。そういうような態度でもつてただいま調整の道がとられております。  それから一面的に考えます場合には、鉱害そのものをできるだけ少くするために、鉱山保安の見地から、鉱害に対しましてもできるだけの予防をするようなことは命ずることができるわけであります。今日までこの保安法規の運用というものは、むしろどちらかといいますと、今まで非常に災害が多くて、日本の鉱山の作業というものを非常に危険にしておりました坑内保安というものに力を入れまして、鉱害防止というような坑外保安に対しましては、いささか手がまわりかねておつたような事情も一時ございました。その後最近におきましては坑外に対しましても十分保安的な見地から監督するということになりまして、現在日本の技術並びに経済的な条件のもとで許されるだけの鉱害防止措置というものは講じさせるように、保安の見地から監督をいたしておるわけであります。
  56. 原田雪松

    ○原田委員 先ほどから平野さんが農地重要性を説かれておつたのですが、私、一例を申しますと、福岡の一部を見ますと、何百町歩というものがだめになり、よしでおおわれてしまつて、その附近の実情をよく聞いてみると、農村が非常に悲鳴をあげておるというよりも、むしろ思想的に悪化をしておる。のみならず、純真な農民の勤労精神は破られてしまつた。どうにもしようがない。こういうふうに実はこぼしごとを言つておる。しかもまた復旧工事の状況を見ますと、遅々として進まないというよりも、むしろ鉱業権者が立てかえ工事をやつておる。これ  は原形復旧なんていうものでは絶対にないと私は思う。むしろこれは効力発揮をするところの一つのつくりかえだという以外には言えないのである。ところがそれでさえなおかつ今まで手を染め得ない点がたくさんある。また実態を見ますと、特別鉱害はきわめて僅少であり、一般鉱害が非常に多い。そうして特別鉱害地帯一般鉱害地帯をよく調査をしてみますと、かえつて一般鉱害の方が被害が甚大だというようなこともたくさん聞いております。その調査等について遺漏がないかどうかということに実は疑問を抱いておるのでありますが、その点の調査についてはどういう方法でやられるかお尋ねしておきたい。
  57. 中島征帆

    中島政府委員 特別鉱害で現在計画されておりますのが七十九億復旧費として上つております。これに対しまして一般鉱害として出ておりますのが総額二百三十億で、一般鉱害がずつと多いということであります。調査のやり方といたしましては、まず鉱業権者が自分の掘つた場所を一番よく知つておるわけでありますし、またその採掘計画等も図面で明瞭でありますので、鉱業権者から、どの地区にどういう鉱害があるかということを出させますと同時に、被害の市町村からも出させまして、その両方をつき合せまして、鉱業権者から申請していないもので、市町村だけから申請しておるものも今の二百三十億の中に入れておるわけであります。両方が合致しておるもの、あるいは少くとも鉱業権者の方から申請しておるものは当然鉱害であるということが明瞭でありますけれども、そうでない部分、市町村だけが出しておりますものが二百三十億の中で約八十億ばかりございますが、これに関しましては、さらに実地に十分調査いたしませんと、どの鉱業権者責任であるか、あるいは鉱業権者関係であるのか、それ以外の関係であるのかということもわかりませんから、この辺の数字は調査によつて多少かわると思いますけれども、一応出て来ましたもの全部をそのまま集計いたしまして、二百三十億という数字が出ております。
  58. 原田雪松

    ○原田委員 この農地鉱害に対してのお考えはそうであるが、私はあの附近を見た結果からしますと、家屋が非常に傾斜をして危険にさらされているのがたくさんある。こういうものも同様に取扱われるのであるかどうか。この点をお尋ねいたします。
  59. 中島征帆

    中島政府委員 二百三十億の鉱害費の中には家屋も含まれております。ただこの法案の内容といたしましては、家屋に関しましては事業団の復旧計画の中に入れて総合的にやるということをいたしませんで、家屋の復旧を希望する場合にはまず家屋の所有者と鉱業権者との間に協議をさせまして、協議がととのわない場合には通産局長の裁定をするというふうな、そういう手続的な規定を設けているわけであります。この点につきまして少し家屋に対してやり方が不十分であるという御意見がありますけれども、私どもの考え方といたしましては、特別鉱害では家屋も一般的に復旧の対象になつておりますけれども、しかし家屋に対しましても全然国の補助は出ていないのです。ところが一般鉱害の場合に特別鉱害に出ていない補助が家屋に出るかと申しますと、もちろんこれはそれ以上に出にくいわけでありまして、家屋に対します補助は全然期待できない。その理由は、家屋は私有であつていわゆる公共性がない、公共性がないものは当然鉱業権者の全責任でやるべきだという理念で来ているわけでありますが、全然補助金が出ないということになりますと、復旧事業団の復旧計画に入れましても、結局鉱業権者復旧費に相当するものを自分で出しまして自分で自己復旧をする。ですから復旧計画に入れても入れないでも鉱業権者復旧をするということについてはかわりないわけであります。鉱業権者が、復旧する意思を持たせるか持たせないかということにかかつて来るわけでありますから、その点は通産局長の裁定によつてこれは復旧すべきものだという裁定をすれば、それによつて鉱業権者としては当然復旧しなければならぬ。こういうことに持つて行くことによつて従来の鉱業法によりまして、一般賠償はすべて裁判所の決定にゆだねるというふうな、裁判請求を少し一般にとつつきやすいように通産局長の裁定というところまで持つて来て、そこで調整をはかるというふうな措置をこの法案では出しているわけであります。
  60. 原田雪松

    ○原田委員 この事業団の構成についてお尋ねしておきたいのであります。現在の復旧工事をやつている模様から見ますと、おそらく完全なものはでき得ないというような考え方を私どもは深くしているのであります。この際この法案で事業団ができてこれによつて復旧をやる、これはまことにけつこうなことと思うのですが、この事業団の機構、構成はどんなふうに考えておられますか。
  61. 中島征帆

    中島政府委員 事務局は別といたしまして、事業団は理事機関として理事長のほかに理事、幹事という役員があります。それの下に事務局がつきまして事務局が案を立てるわけであります、意思決定機関といたしましてそのに評議員会というものを設けております。これはこの法律の構成上被害者立場のものと加害者的な立場のも、つまり鉱業権者と第三者、こうい三つの部門を代表する評議員によつて構成するわけでありまして、大体被害者加害者の率は同数とするという原則をとつております。そして第三者は被害者ないしは加害者の数よりも少い。大体こういうような構成を予想いたしているのでありますか、そういうような評議員会によつて復旧計画を決定して認可を申請するという手続をとるわけであります。そういうような計画を立てましたあとの実施は、事業団といたしましてはその計画に基いて鉱業権者から納付金を徴収するということと工事を始めました場合に所定の工事費を支払つてやる。さらに工事が完了いたしました後において、たとえば農業用のポンプ等の施設をいたしました場合はその維持管理費を払つてやる。あるいは復旧いたしました後においてなお若干減収が残る場合は、その減収部分に対して補償するというような、主として金銭的な出納をやることが仕事でありまして、そういうような計画と出納ということになるのであります。これが事業団の仕事の大部分であります。従つて実際の復旧工事というものは、事業団も例外的にやりますけれども、工事担当者としての市町村あるいは土地改良局、あるいは場合によつて鉱業権者工事を担当するのでありまて、これはそれぞれ法律によりまして、だれが工事施工者になるかということはきまつておるわけでありますから、それぞれの工事に基く工事機関ということになります。いずれの法律によりましてもほかにその工事を担当する適当なものがありません場合には、事業団が引受けるということになつておりまして、例外的にはみずから事業をやることはありますけれども、そういう場合には事業団と請負業者とが契約を結んでやることになりますが、それ以外の場合には事業団は金を払つて工事の施行者が請負業者を使つてやる工事に対して、事業団が直接の責任を負うというような仕組にしていないのであります。
  62. 原田雪松

    ○原田委員 いま一つお尋ねいたします。今回の法律の中で鉱害予防措置ということがあるのです。これはまことにけつこうな措置だと思う。こういう場合にどういう措置をなさるか。たとえば墓地の下であるとか、あるいは市街地の下を掘るということは当然に陥没が伴う。これは先ほどからお話があつたのですが、こういう面を調整される意味でまず山手の方をやるとか、あるいは田畑にするというと最も劣等な部面の方のすぐ陥没してもよろしいというような見定めをして、将来やられるつもりであるかどうか、この点もう一点お伺いしたい。
  63. 中島征帆

    中島政府委員 これは程度問題でありまして、たとえば甲の地区と乙の地区とありまして、乙の地域には鉱害が起きても割合にその影響が少い、そういう場合にはまず乙の地区から採掘するようにというようなことは、その程度が大して違いない場合におきましてはまず今までやつておりませんし、またやれないと思います。非常に差があり、かつ甲地区においての被害があまりにも大き過ぎるいう場合におきましては、社会全般に対する影響という意味で、その地区の採掘を禁止することもできますけれども、そうでない場合におきましては、大体下を掘る計画の最も合理的なものを認めるということになりますので、多少上の方の被害程度が違いがありましても、そのため採掘方法を前後するというようなことは今のところ考えにくいのじやないかと思つております。ただ根本的におきましては、やはり採掘の及ぼす影響というものを一層科学的につかみまして、どういう採掘方法をとればいいか。この地区ではどの附近にどの害が起るということを精密に計算できる方法を、まず講じなければならぬと思うのでありますが、その点の技術というものがまだ十分発達いたしておりませんので、従つて鉱害予防に関しましてとり得る措置というものも、現在におきましてははなはだ限られておるような状態であります。将来はその点からもう少し築き上げまして、鉱害予防ということが一層完全になるように持つて行かなければならぬと思つております。
  64. 原田雪松

    ○原田委員 自県のことを申し上げることはどうかと思いますが、熊本県は福岡県に比べますと鉱害程度というものは九牛の一毛に過ぎません。しかしながら熊本県でも荒尾地区が最も鉱害被害をたくさんこうむつておるところであります。その総額は二十億三千六百六十九万五千円になつておりますが、そのうちで特別鉱害というものは一億七千万円くらいになつております。これによつて一般鉱害の方が非常に恩恵をこうむるということにつきましては、私賛意を表したいと思うのでありますが、この運営の上に遺憾のないように、しかもややもしますと大きな鉱害地のある方が大きく恵まれて、小さい方がどうも薄く恵まれるという傾向もございますので、この点も私は熊本県の鉱害ということに対して、一言最後に特別の御配慮にあずかることを願いまして、質問を打切りたいと思います。
  65. 千賀康治

    ○千賀委員 平野、原田両君に関連をして一つ伺いますが、この予算の裏づけが先ほど大蔵省の主計局長の言明を聞いておりましても、ないというのか不確かというのか、しいて言えば二十七年度の農林公共事業費をもつてこれに充てると言つております。農林公共事業は、決してこれはあり余つた予算ではなくて、すでに累年の農林公共事業、ことにその中の復旧費が不足するために、今は数百億というような累積した過年度災害がそのままにたまつております。鉱害ために経費を投ずることももちろん必要ではありますが、すでに起つた河川の決壊によつて農地が流失したとか、あるいは海岸堤防が切れて農地が流失しておるとか、こういうようなものさえも、そのままになつておるものが何百億という現在でありますから、もしも余裕があるならばこの方を直す方がまだわが国の食糧増産の面には大きく働き得るのであります。農林当局といえどももちろんその見解は私と同じだろうと思いますが、この法案の財源として、二十七年度の復旧費の中からこれを出すのだというようなことを大蔵省からむしろをかぶされて、それで農林当局は承諾をして来たのか、大蔵当局と同じ考えのもとに立つて、在来の過年度災害はそのままにしておいても、この方になけなしの金を出そうと考えつつあるのか、その点はいかがです。お伺いいたします。
  66. 谷垣專一

    谷垣説明員 先ほどお答え申し上げました通りに、二十七年度の農林省の現在までの予算には、本法案の対象になります鉱害復旧ための経費はございません。なお鉱害石炭を掘れば必ず起きるのでありまして、また施業案の実施その他につきましても、それぞれ主管の官庁でやつておられるわけでありますので、鉱業の掘鑿に必然的に付随して起きる鉱害問題に対するいろいろな跡始末は、むしろそれぞれの主管のところでやつて行くべきものであつて農林省といたしましては、この農地復旧に対して技術的な観点あるいはまた農民の保護、食糧増高という建前においてこれに応援するというのが筋道ではないか、かように考えております。
  67. 千賀康治

    ○千賀委員 むろんそうでなければならぬと思います。去年に比べて今年の方が若干でも大きな過年度災害に対しまして雀の涙という言葉が相当するでありましようが、災害復旧費の増額を認めてくれたとはいいながら、その中から完全にやれば二百何十億もかかる鉱害があり、それを出せるではないかと大蔵当局考えることは、きわめて不可解千万であつて、非常な反感をもつて報いなければならない言葉であります。八千数百億の大きな予算の出費の裏づけをする大蔵当局であるならば、ときに百万円や二百万円のはした金でも、どうしてもなければならぬ経費があるから、これを認めろといいましても、常に大蔵当局の答えは、いかに大きな経費を扱つていようとも、予算は紙一枚、鉛筆一本から成り立つているのだから、さようなことはできないというのが大蔵当局の常に用いる遁辞であり、常套語であります。ところが農林省の二十七年度の災害復旧だけは今まで考えてもいなかつたこの大きな予算の中から相当額裏づけし得る。すでに一たび自分の手を離れてしまえば、農林省の中においては災害復旧費はかようにずさんに取扱われている。その態度に至つてはすこぶる賛成せざるところでございます。この法案けつこうでありますが、何としても、補正予算においてこの経費を新しく裏づけするにあらずんば、一面において災害復旧農地の完全を期し得たといたしましても、さらに他の部面において大きな欠陥が重なつて行き、ますます過年度災害の数字をふやすばかりである。こういうことに至つては日本全体の食糧増産の面において決してプラスではない。このことを断言いたしまして、私はこの予算の裏づけには新しく補正予算においてあげなければ、かようなものは無意味であるということを強く意見を申し上げておいて、私の関連質問を終りたいと思います。
  68. 中村純一

    中村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——御質疑がないようでありますから、これにて通商産業委員会農林委員会連合審査会は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十八分散会、