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1952-06-10 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十日(火曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 今澄  勇君       阿左美廣治君    江田斗米吉君       小川 平二君    小金 義照君       土倉 宗明君    永井 要造君       南  好雄君    高橋清治郎君       佐伯 宗義君    岡  良一君       横田甚太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局総務部         長)      古内 広雄君         通商産業事務官         (通商繊維局         長)      記内 角一君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    松尾 金蔵君  委員外出席者         衆議院法制局参         事         (第三部長)  川口 頼好君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 六月九日  委員青野武一辞任につき、その補欠として上  林與市郎君が議長指名委員に選任された。 六月十日  委員加藤鐐造君及び上林與市郎辞任につき、  その補欠として岡良一君及び青野武一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 六月九日  中共貿易促進に関する請願上林與市郎君紹  介)(第三四六四号)  同(勝間田清一紹介)(第三五五九号)  中小企業等協同組合法等の一部改正に関する請  願(田中織之進君紹介)(第三四八一号)  中小企業安定法制定に関する請願久野忠治君  紹介)(第三五五八号)  日本刀製作所持に関する法律制定等請願(  増田甲子七君外三名紹介)(第三五九九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  特定中小企業の安定に関する臨時措置法案(南  好雄君外二十二名提出、衆法第六一号)     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  本日は特定中小企業の安定に関する臨時措置法案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。山手滿男君。
  3. 山手滿男

    山手委員 前会に二、三私からこの法案に対して質疑をいたしたのでありまするが、残してある部分を、重複を避けつつもう一度お伺いしてみたいと思います。私がこの法案を読み直してみて痛感することは、この法律題目中小企業の安定に関する臨時措置法ということになつておるのでありまするが、実際には、政府側が積極的にこうするのだという規定は何ら入つておらない。業界の中で、何か相互に大企業中小企業というふうなものを対立させた観念の中に追い込んで行くというふうな規定中小企業と大企業とが対立の前提に立つて、これを調整して行くというふうな響きが非常に強い法律であるように思うのであります。政府あるいは国家中小企業立場をもう少し強化して行こう、もう少し中小企業を育成して行こうというそういう助成、育成、保護規定というふうなものがこの中にはどうも見出せないのでありますけれども、これについて提案者はどういうふうにお考えでありますか。
  4. 南好雄

    南委員 御質問通り、この法律案中小企業の中で業種が指定せられたものに対する安定に関する臨時措置的なことをねらいにいたしました関係上、この法律案そのものには、中小企業に対する積極的な施策が盛り込んでございません。しかし全般的にながめますならば、先般衆参両院を通過いたしております中小企業等協同組合法に基く中小企業者積極的団結、またこれの積極的な事業に対する各般の政府施設、そういうようなものと相まつて一本になつて、今一番問題になつております中小企業者の、一つの筋金が入つて行くのだと私たち考えておるのであります。中小企業等協同組合決の持つておりまする欠陥をこの法案によつて少しでも直して行こう、そこをねらつてこの法案ができておるのであります。今御質問にありましたように、この法律をつくることによつて企業者と、中小企業者を団結させて対立させるという観念は、この法律におきましても中小企業等協同組合法におきましても、おそらくそういうことはないものと提案者考えておる次第であります。なお詳しいことについては、ここに中小企業庁松尾政府委員が参つておりますから、補足的に説明をいたさせます。
  5. 松尾金蔵

    松尾(金)政府委員 ただいまの御質問に対するお答えといたしましては、ただいま南委員からお話通りであると思うのでありますが、中小企業振興策であるいは安定策といたしましては、この法案によるいわば消極的な安定策が必ずしも唯一の安定策ではない、むしろ振興策といたしましては、別途かねて中小企業対策として実施されておりまする、また今後も実施しなければならない中小企業の積極的な組織化あるいは合理化、あるいはこういうことに必要な金融対策あるいは企業診断その他の指導方策、こういうもので政府といたしましては積極的な中小企業振興策を、従来にも増して実施して行かなければならないと思つております。この法案は、私どもも先ほど申しましたような意味の当面の中小企業特定業種に対する緊急の消極的な安定策である、しかしこういうこともあわせなければ——中小企業の現在の窮状を打開するのにはやはりこういう方策もまた必要である、こういうふうに考えておりまして、中小企業対策といたしましては、これをあわせて中小企業の今後の振興安定策に資して行きたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  6. 山手滿男

    山手委員 今の振興部長の御説明でございますが、私は振興部長にもう一度お伺いしてみたいと思うのであります。ごく最近において、中小企業擁護者であり、代弁者になつておつたところの中小企業庁の廃止を実行すると言うている、あるいは商工中金のごときものも、実際にはいろいろのことをやると言つているけれども中小企業にはほとんど金がまわつて行かないような実情にあつて中小企業がきわめて困難な状態に遭遇をいたしております。この中小企業安定法と銘を打つたものは、そういう大前提を無視して、單に大企業と角逐をして行くというか、かみ合いをするような、そういう事態をむしろ醸成して行くような法律であつて、私は魂が拔けているような気がいたします。私は政府のやつておることを、何でも食い足りないとか何とかいうことじやないのですが、中小企業の現在の日本産業界における地位からいたしましても、こういう子供だましのような法律で、中小企業者が満足するわけのものでもないと思うし、それにはこういう安定法というようなものでなしに、操短法とか、設備制限法とか、需給調整法とか、そういうような名前で、むしろ名称を変更することが適当ではないか、私はかように考えます。この点について、中小企業庁の方の見解をもう一ぺんお伺いをしておきます。
  7. 松尾金蔵

    松尾(金)政府委員 お答えいたします。法律名前につきまして、私からどうこう申し上げる立場ではございませんが、現在の状況におきまして、特殊の業種におきましては、いわば不況その他の圧迫、また中小企業、またその設備の過剰な状態から申しまして、いわばよく言われますような、無制限なる出血競争を、周囲の悪い環境のもとにしいられておるというような状況にありますことは、御承知の通りであると思います。こういう状況に対しまして、もちろん片方にそういう局面を打開するための必要な積極的な対策、先ほど私から御説明をいたしましたような対策も、もちろん今後積極的に実施しなければならないのであります。しかし同時にまた、中小企業者がみずからある程度の必要最小限度競争部分的な制限と申しますか、そういうことを中小企業自身がやれるような制度をあわせてつくつておくことが、中小企業者の相互扶助的な自治調整の役目を果す意味からいつて、必要ではなかろうか、こういう意味合いで、本法案の立案がされたものと承知しております。先ほど申しましたように、本法案だけで中小企業の安定というのではなくて、中小企業の安定には積極、消極両方策を今後とも努力して行かなければならない、そういうふうに考えておる次第であります。
  8. 山手滿男

    山手委員 調整命令を出し、あるいは調整に関する勧告をする場合なのでありまするが、二十七條の中ほどから書いてあります「且つ、かような事態を放置しては当該業種に係る産業及びその関連産業存立に及ぼす重大な悪影響を除去することができないと認めるときに限り、」ということでございますが、「かような事態を放置しては」という場合は、どういう場合であるか。もつと具体的に言えば、現在すでにそういう状態が起きておる業種があるとお考えであるのかどうか、この点を一点と、それから「その関連産業存立に及ぼす」という関連産業というのはどういうものまで関連産業の中に入れてお考えになつておるのか、お伺いをいたします。
  9. 南好雄

    南委員 お答えいたします。二十七條のいわゆる調整規定アウトサイダーまで縛るというような場合、そういう場合における問題につきましては、しばしば御説明申し上げおりますように、結局その組合自治調整ではどうにもならない、つまりアウトサイダー活動のために、組合自治調整が著しい影響を受けておる、そういう場合に限つて公益的見地に立つて主務大臣たる通産大臣が二十七條勧告を出し得るのだ、こういうふうにしばしばお答申し上げている通りであります。そういうものが現在あるか、こういうお話でありますが、これはよく調べてみなければわからぬのでありますけれども、よく言われるのでありますが、絹、人絹のいわゆる機屋、そういうような業界におきましては、もうすでに一年以上もいわゆる適正利潤というようなものは考えられずに、常に出血の操業をさせられておる、こういうことが大体認められ得るのではないかと考えております。従つてもしこういう場合をしいてあげて御説明申し上げるとするならば、絹、人絹業界実情あたりがややこれに近いものではなかろうかと考えております。なお関連産業範囲でありますが、関連産業と申しますと、絹、人絹関係では化織のメーカー関連産業でありましようし、あるいはこれを取次いで売つておるいわゆる卸商社関係関連産業でございましようし、またその織物を売つております内地の商社、さらに進んでそれを外国に出しております輸出商社あたり関連産業じやないかと思つております。こういうものが全般的に影響を受けておる場合に二十七條発動するのか、その一部分影響を受けておる際に二十七條発動さすのか、これは通産大臣が、このまま放置しておいては当該業種のみならず、これに関係しておる関連産業が非常に大きな影響を受けて、かえつてその産業界にマイナスになる、そういうような場合を認定して二十七條発動されるもの、こういうふうに私たち考えておる次第であります。
  10. 山手滿男

    山手委員 この関連産業というのを、今のように絹、人絹の場合に、化織のメーカーから問屋から商売人まで全部関連産業ということにして、この機屋の申出によつていろいろな勧告をするということになると、これはやはり相当重大な事態ではないかという気がいたしますが、この点についてはまだ私は研究をしてみなければならないと思いますから、そのままにしておきます。ところでこの第二十七條がこの法案の中では非常に重大でありまするが、中小企業組合の申出によつて通産大臣がかくのごとき重大な制限をする。生産制限をする、出荷制限をする、あるいは設備制限をするということになりますると、すでに設備をしている者は、その設備につぎ込んだ金が遊休施設になるわけでありまするから、まわらなくなつて金利だけでも相当な損害をこうむることになる。またすでに雇つている労働者を失業さすというふうな事態になつて、その解雇手当なり休業手当というふうなものだけでも相当な損害を出さすということになるのでありまして、これは私有財産権の相当な侵害になるような気がいたします。この点について法制局の方の御意見伺いたいと思います。
  11. 川口頼好

    川口法制局参事 仰せ通りこの法律案の最も重要な條文は第二十七條でございますが、もともと憲法十九條におきましては、第一項において、私有財産はこれを侵してはならないと一般原則を掲げておりますが、同時に、同一條文の第二項におきまして、財産権内容公共福祉に適合するように法律で定める。また同じく第三項におきまして、私有財産は、正当な補償のもとに、公共のために用いることができるというふうにいろいろな理念が共存して規定いたしております。ただいまの問題のこの法案の第二十七條は、はたしてそのどれに該当するものであろうかということになるのでございますが、まず第一にこの学説上の憲法のただいまの條章の理論を一応御参考までに申し上げますと、この第二項に書いてあります公共福祉に適合するやうに、法律財産権内容を定めるというのは、大部分の学者が一致しております解説は、国民経済上その他の国家政策上のつまり立法政策上の制限が、これによつて可能であるという解説には、大体一致しておるのでございます。従いまして現在の各種の経済統制立法あるいはまた独占禁止法過度経済力集中排除法というふうな一連の経済改革の諸法律は全部憲法第二十九條、第二項によつて発布いたしておるわけでございまして、そのうちに特に個々の人に対しまして具体的な処分、たとえば一般的に国民が受ける制限ではございませんで、ある特定のものだけが他人のために犠牲を及ぼすというものに対しましては、これは当然第三項の問題でございまして、損失補償が当然いることは明らかでございますが、非常に一般的に国家経済を維持するために、もしくは国民経済を増進するために一般的な制約を財産権に対して課するということは、ただいま申し上げましたような諸法令におきまして当然認められておるところでございまして、一、二の例を申し上げますれば、独占禁止法におきまして不当な事業能力の較差があります場合に、これの排除公取委員会が命ずる、あるいは過度経済力集中排除に関するいろいろな具体的な措置命令されておる。あるいはまた最近本委員会を通過いたしました国際的に不足する物資統制に関する臨時措置法、これは今年の三月三十一日で法律になつておりますが、これにおきましてその第二條におきましては、主務大臣安定本部総裁と協議をいたしまして、日本の全体的な立場から物資の割当、それから譲渡、売渡し、引渡し等に関する制限もしくは禁止をすることができる。一般的にこれに対しては損失補償規定はその法律には書いてございません。ただ第二項におきまして具体的な人を名指しまして、ある特定品物を幾らで売れとか、あるいはいつだれだれに対してどこどこで売れというふうな具体的な処分命令が、主務大臣から出ます場合にだけ、損失補償を必要とするという建前になつておつたのでございます。その点重大な問題でございまして、ただいまの憲法の二項と三項との関係はきわめて困難な、はなはだむずかしい問題ではございまするが、ただいままで研究いたしました結果によりますれば、結局問題の要点は中小企業安定法案の第二十七條に書いてある、かような事態を放置しては当該産業及び関連産業存立自体を脅かして行く、ないしは国民経済全般に対する悪影響がある、そういうときに一種の制限措置をとるということがはたして憲法第二十九條の二項にいう「公共福祉」に該当するかいなかという一点に書きるのではないかと考えております。そういう意味合いにおきまして損失補償規定を必要としないのではないかと思います。私としてはそう考えて起草に参画をいたした次第でございます。  なおこれが将来この権力発動がありました場合に、たとえば訴訟なつたと仮定いたしまして、その場合にこの法律案損失補償規定がないからこの法律自体が、つまり第二十七條そのもの憲法違反として無効の判決を受けるのか、あるいは他の学説によりましてその主張が裁判所にいれられまして、そういうことになるのか、あるいはその処分自体は有効であるが、国家損失補償の責任を負うという判決になるか、これも未確定の問題でございまして、学説上いろいろ争いがございます。ただいままでのところ私どもといたしましては、そういうことを訴訟に持つて行くことを禁止することは、憲法上許されませんで、当然憲法違反とか、あるいは損失補償がいると申して訴訟に持つて行くことは行けるわけであります。さりとてこの法律全体の違憲性云々の問題を言うことは、行き過ぎではないかと思います。要は大体のところ現在までに至る通常の立法例にかんがみまして、損失補償規定はあえていたさなくてもいいのではないかという考えを持つている次第でございます。
  12. 山手滿男

    山手委員 私が先ほどからお聞きいたしましたことは、この問題が特に重要でありますから、その前提としてお聞きいたしたのでありますが、この法案はいわゆる特定中小企業の安定をはかるための法律であると題目にはつきり書いてあるのであります。特定中小企業の安定をはかるために、そのアウトサイダーまでその組合の申出によつて通産大臣が動いて制限をしようという考え方である。その制限発動の場合、これこれかようの事態のときに発動できると書いてある。これは発動し得る場合の條件が書いてあるのであつて、目標は特定中小企業の安定のために命令発動するということがこの法律趣旨であろうかと思います。そういたしますと、これによつて特定輸出産業というようなものが損害をこうむる、具体的に言えば労働者を解雇しなければならない、それには解雇手当を拂わなければならない、あるいは設備遊休不稼働なものになるということの禁止その他が、もうかるべきものか、もうからないものかという損失補償、これはあまり無理かと思いますが、とにかく相当な損害が起きる場合がある。そういたしますと、今第三部長の話は具体的に個々企業体、あるいは私有財産権を侵害される場合に当てはまつて来る気がするのです。それでありますから、これは中小企業を育成するためにこういう法律はけつこうでありますから、当然補償規定を設けなければいかぬ、こういう意見であります。特定中小企業を育成するために政府は積極的にこれを盛り立てて行く規定がこの法律の中には全然ない。ただ單に大企業を押えつけることばかりがこの規定趣旨であります。中小企業国家全体の利益のために大企業にもがまんしてもらう、また産業も小さくなれということだつたら、それによる損失補償規定を盛り込むことが中小企業を盛り立てる政府の大方針でなければならないと思うのであります。この見解に対してもう一ぺん御答弁をお願いいたします。
  13. 川口頼好

    川口法制局参事 ただいまお尋ねになりました第二十七條第一項に掲げてある何々するときに限るというのは、單純なる條件を示したものであつて、ねらいは中小企業を助けるために、アウトサイダーにも同一の基準を課せるのではないかという点でございますが、まず法律的な構成だけを私存じ上げている範囲内で申し上げますと、その第一項の第一号には、なるほど仰せのような員外、つまりアウトサイダー活動が、組合調整自体の効果を著しく弱めているどいう言葉が掲げられておりますが、第二号には、アウトサイダーがおるとかいないとかいうことに関係いたしませず、すべて組合自体調整措置が、それ自体ではあまりにも微弱であつて結局当該産業全体の存立及び関連産業悪影響を及ぼすおそれがあるということでございまして、かつまた全国的な調整組合なり、連合会なりから申出があつて初めて発動する形にはなつておりますが、むしろその点は国家権力が恣意的に発動することを抑制する趣旨ではないかと考えておりますので、それと、権力発動します場合の建前は、組合から頼まれて通産大臣権力発動するという筋では絶対ないと考えられますので、もともと権力発動をします転換の時期におきまして、同じ似たような内容ではございましようが、そのときに、国民が服従する義務の面で申しますれば、完全に本質的に義務内容転換途げておると解釈しますので、一般的に臨時物資需給調整法とか、あるいは先ほど申しましたように、国際的にアメリカの法律等による制限と本質的にはあまりかわらないのではないかというふうに考えておる次第であります。お答えになりますかどうか……。
  14. 山手滿男

    山手委員 今の法制局の御意見は、そういう建前を押して行くことは、この法律建前から行けば、私は非常に無理があるであろうと思います。今のお話でありまするけれども、この法律の二十七條発動し得る場合は、やはり調整組合の申出があつたときにのみこれはやり得るのです。この二十七條趣旨は、申出がなかつたらこの法律からは発動できないような気がするのでありまして、この法律題目に掲げてあるところの中小企業安定法という趣旨から行きまするならば、今の第三部長の御説明は必ずしも当つておらないような気がいたします。もし今の第三部長の御説明通りに行きまするならば、中小企業安定法という題目を削つてしまつて、諸産業制限に関する法律か、操短法か、何かそういうふうに名前をかえて行かなければ、今の部長説明は筋が通つて行かないような気がいたします。それはもう少し研究をすることにしておきます。  この法律が一番大きくねらつておりまするのは、附則にも書いてありまするが、雑貨なんかもそうですが、繊維製品が大きなねらいの業種になつておるように思うのであります。中小企業業者の数がきわめて多いのです。そうしてその種類もきわめて雑駁でありまして、少しずつ種類の違つたもの、特殊なものを中小企業者が引受けてやることが特色なんです。輸出産業の中の大企業が受持つている面は、統一された画一的な品物をつくる面で、それが大企業特色です。しかし中小企業が受持つている分野というものは、特色のあるそれぞれ品種の違つたものを各様な目的で特殊な立場でつくつておるというのが中小企業の本質的なものであるのであります。そういう全国的にばらばらに、地域的にも広がつて特殊な品物を織つておるものを、こういう單なる申合せなり、命令によつて操短をさしたりあるいは生産制限したり、これを監視をして行くということは、私はきわめて困難なことになるのじやないか、こういう気がいたします。戦前もいろいろ生産制限統制をやつたのでありますが、そのときも絶えずいろいろな問題を起して苦杯をなめておるのであります、命令がはたして徹底し得るものかどうか、あるいは現在の通産省の陣容そのもので、こういういろいろな統制に類似した問題を監視しあるいは指導して行くことができるものかどうか、そういう点について繊維局長から御説明を願いたいと思います。
  15. 記内角一

    記内政府委員 お答えいたします。今御質問になりましたように、中小企業は非常に小部門の仕事をいろいろとやつてつて、しかも数が非常に多いというようなことがございますし、特に私どもの担当いたしております繊維部門につきましては、そういう色彩が強いわけであります。しかしながらこの法律が施行になりまして、その業種繊維品のある部門が指定になつた場合におきましても、その中でどの業種部門調整組合をつくつて、ここに指定してあるような事業を営むかということは、それぞれの業界々々によつて判断される問題になつて来ると思うわけであります。またそういうあかつきにおきましては、相当大部分業者がその調整絶食入るものとわれわれ期待いたしております。まず第一には、そういう業界の方々が、自主的に生産制限なり出荷制限なり設備制限なりという方法によつて、いろいろ糸価の安定をはかることに努力されると思うのであります。そういうまず第一に業界の方面において大部分のものが自主的に調整されて参りますので、残された部門がもし万一実施効果の上らない場合におきましては、政府が監督なり制限なりをいたしまして、実施の効果を上げるようにいたすわけであります。その際には残された部門は比較的少いのでありまして、こういうものに対しましては、ある程度の政府の力も及び得るのではないかというふうに考えている次第でございます。
  16. 山手滿男

    山手委員 こういう法律ができて、これが発動されることになると、単にこういうことだけでは済まなくなるだろうと思います。これに関係していろいろなことをやつて行かないと、この法律趣旨国民経済とマッチして行かない事態が起きると思います。たとえて言いますと、生産制限をやり、出荷制限をやる、これは設備制限ということにもなるのでありますが、今日これで指定されておるのは、綿織機など織物の関係でありますが、どんどん織物の方は制限しても、原糸や何かが大量に出て来ると原糸が暴落して行くし、輸出もきかないということになるとたいへんです。そうすると、紡績の錘数を制限することが起きなければならぬ。これは今四割操短とかなんとかいうことでおやりになつているが、これには法律はない。この点については、公取と必ずしも意見が一致していないようでありますが、業界の方に政府勧告をされたという形で言つてある。操業はそういうことになつている。ところが現在はこの紡績の錘数はどんどんふえる。私はますます驚いた。四割も操短しておりながらごく近いうちに百万錘くらいふえるのではないかという予想なのだそうだが、こういうものを野放しにしておいて、末の方のこういうものだけ制限をするような、統制をするような処置に出られても、私は意味がないだろうと思いますが、この法律を通すと、紡績なんかの糸の生産施設禁止する、増錘禁止措置なんかとられるものかどうか、この点について繊維局長から御説明を承りたいと思います。
  17. 記内角一

    記内政府委員 紡績設備の増設を禁止することは、今日の法制の建前からできないのでありまして、これには立法措置が必要になつて参るわけであります。ただ実際問題として御指摘のように相当操短をしておるにかかわらず、増設されるようなけはいもございますので、過般例の原綿輸入外貨資金の割当の操作によりまして、十一月以降に増設されたものについては、割当を当分しないということを発表いたした次第でございますが、こういう方法によりまして今後も増設を矯正して参りたいというように考えておる次第であります。
  18. 山手滿男

    山手委員 それが繊維局の方のきわめて甘いところであるし、実際と違うところがそこにあるのです。なぜかというと、繊維局の方では新規に設備増設をするというものに対しては、原綿の割当をしないとおつしやる。それによつて目的は達成されるというお話でありますが、ちつとも達成されていないのです。現に割当がないということを覚悟して一万錘当り何億とかかるものをどんどんつくつておる。これはなぜか。局長はそれでこの設備制限は完全にできる、こういうふうにお考えなんですけれども、実際業界では一万錘当り二億も三億もかけてどんどん設備を増設しておる。そうしておいて片方では操短を勧告しておる。なぜか。これはこうなんです。落綿で生産をしておる。さらにひどいのになりますと、今小さな業者は割当を受けた原綿を売つた方がもうかるという状態なんです。それだから右から左にいろいろやつておる。また最近の紡績の事情をいろいろ調べて会すると、非常に技術が落ちておる。落綿をわざとたくさん出して、そうして落綿を処分して、綿糸の損失をカバーするという行き方をやつておる。それだからそれを見越して小さな紡績会社なんかは、繊維局がそんなことを考えても、そんなものはほつたらかしてどんどん増設をやつておる。これは国民経済全般から見ると、大損害をやつておる。私はこういうところに手が抜けておると思う。この法案を通して行くならば、その前提になるものを全部押えて行かないと片手落ちになる。そういうものをどんどんふくらましておいて、そうしてこういうもので終りの方だけ押えて行く、そうしておいて、この損失補償も何もしない、これでは正直者がばかを見るという事態になりますが、繊維局長はどうお考えになりますか。
  19. 記内角一

    記内政府委員 ただいまの外貨の條件によりまして、特にドル資金をもつてする綿花の輸入は非常に制限されておるわけであります。もちろんポンド地域からポンド資金をもつて綿花を輸入することは自由でありますが、これはおのずから生産数量なりあるいは価格の面から、輸入することにも限度があるわけであります。従いまして設備が増設されましても、それで消化する原綿の量というものはおのずから限度があるわけであります。また落綿のお話がありましたが、今申し上げたように原綿自体にも限度がありますので、落綿自体にもおのずから限度がある。従いまして綿糸の生産量というものは、設備の増設のいかんにかかわらず、おのずからこれに限度があるわけであります。われわれが操短問題を勧告いたしましたのも、ただそういう際におきまして非常に時期的に増産をする、あるいはある時期には原綿がなくて非常な減産をせざるを得ないような立場に追い込まれる、こういうふうな事態を憂慮いたしまして、一年間を平均して綿糸の生産出荷ができるような態勢に持つて行きたいという趣旨のもとに一時的な減産を勧告したような次第であります。減産勧告のいかんにかかわらず、外貨予算の関係から綿糸の生産状態というものは、決して増設にかかわらず増加しないというのがただいまの現状になつております。従いましてそういう意味におきましては、この安定法が出ました場合におきましても大体バランスはとれて参るのではないかというふうに考えておる次第であります。     〔委員長退席、高木委員長代理着席〕
  20. 山手滿男

    山手委員 私どもはどうもそこらあたりの関連が非常にむずかしい問題だと思うのです。今紡績の話にまで飛んで行つたのでありますが、紡績の設備はこれ以上ふやさせないという禁止的な態度に出て行つてもらわなければ、この法律ができている以上私は困ると思うのです。それからまたこういうことで綿織物とか絹、人絹織物の製造業者設備制限をされたり生産制限をされたりする状態が起りそうだということになると、おそらくこれは今のうちに登録をして置こうということになつて、ここでぱつと設備がふえて行く可能性がある。こういう気がいたします。またそれをつくる織機のメーカーあたりにしましても、やはりこの法律従つてこれも関連産業になつて行くだろうと私は思うが、メーカーあたりはどういう立場に追い込められて行くか、ほとんどこれは生産をストップしてしまうという状態にまでなつて行くだろうと思うのでありますが、織機の増設に対する禁止措置をやる考えは通産省にないか。タオルならタオル、小幅の織機なら織機、そういうものは多いのだからこれ以上ふやさせないという建前をとつておいて、そういう建前ができて初めて次の段階において生産制限とか出荷制限というものがこの法律によつて行われるならばこれはよろしい。しかしそういう設備の問題を根本的には野放しにしておいて生産制限出荷制限をするということは、これはいかがなものであろうかと私は思うのでありますが、この点どうですか
  21. 記内角一

    記内政府委員 お答えいたします。この法案はそういう点も加味いたされまして議員提出で提案されたものと解釈いたしております。
  22. 山手滿男

    山手委員 そういたしますと繊維局の方からは絹、人絹織物そのほかの織機はもう増設を禁止する処置をとるということを承認されてこの法案が出されたというわけでありますか。
  23. 記内角一

    記内政府委員 その意味におきまして設備制限に関する措置組合によつてできる、また必要のある場合には通産大臣勧告なりあるいは省令を出すことができるというふうに規定いたしておるものと考えております。但し直接機械メーカーに対して織機の製造を禁止するという建前にはなつておらないわけであります。
  24. 山手滿男

    山手委員 これはこういう織物の関係をやつて行くのだつたら紡績から始まつて、初めからしまいまで全部一貫的に統制をして行く必要があろうと思うのでありまして、現在行われつつある錘数のむちやくちやな増錘、これは安本の方の作業に上つても現在の日本の人口の状況、輸出の状況と見合つて大体四百五十万錘から、多くて六百万錘まででもう十分だという目安がきまつております。それをやたらに繊維局の方でほつたらかしにしておいて片一方でこういう措置をとつて行くということは、私は国民経済の上からいつて大きな損失であるということを指摘しておきたいのでありまして、ぜひこれは善処を要望したいのであります。  それからこの点についてこの法律案は、独占禁止法あるいは事業者団体法との関連が起きて来ると私は思うのであります。この法律案にはさつき言つたような損失補償の問題あるいは一旦出した命令をいかなるときに撤回するか、解除するかというふうな時期に関する規定が抜けているように思つておりますけれども、そのようなものについて公取委の方はどういうお考えであるか、ここで御説明を願います。
  25. 古内広雄

    ○古内政府委員 お答えいたします。ただいまの損失補償の問題に関しましては、当委員会としては一応提案者の方に希望を述べておいたのでありますが、その点のお取扱いは提案者法制局の方におまかせしたわけであります。それからこの法律実施の場合における公正取引委員会との関係に関する問題でありますが、それについては原案の第二十八條に規定があるのでありますが、これに対しまして公正取引委員会としては一応提案者の方に多少これを補強したような案を希望として述べておいた次第でございます。われわれの希望といたしましては、調整組合設立の場合のみならず、調整組合がやる規定をつくるとき、その変更の場合、通産大臣勧告を出される場合、勧告に応じなくて命令を出される場合、その場合々々に応じて公正取引委員会との協議もしくは公正取引委員会の同意を得るようなものにしてほしいという希望を述べたのです。なお解散の場合に関しても、公正取引委員会と協議をするように希望を述べたのであります。
  26. 山手滿男

    山手委員 今お話をいただきました公正取引委員会の希望が、この法案には入れられておらない。そこにやはり提案者にもお考えを願わなければならない点があろうと私は思います。しかしこの点は私はあまり深くつつこみません。要するにこの法案中小企業安定法と銘打つて出して来たのでありますけれども中小企業の安定はもつと本質的なものからやつて行かなければならない。政府はこの法律においても何ら積極的に中小企業に寄與するという積極規定を盛り込ませようとしない、何らの補償もしないというふうな状態であるのでありまして、私はこの法律がきわめて不完全なものであることを指摘しておきたいと思うのです。しかしながら、中小企業のためには一歩でも前進したいということで、あえて反対はいたしませんが、そういうことを一言申し述べて私の質問を終ります。
  27. 高木吉之助

    ○高木委員長代理 岡良一君。
  28. 岡良一

    ○岡(良)委員 私は社会党の立場から、特にこの法律にまだ十分明文化されておらない、調整発動した場合に労働者の生活についてどういうふうな構想があるかという点を中心としてただしたいと思います。その前に一応この案の実質的な検討をしぼるために提案者伺いたいことは、現在中小企業が非常な難関に立つている、それは單に中小企業ないしそれに従事する従業員の生活問題ではなく、もはや数年来大きな社会問題、政治問題としてクローズ・アップされておるのでありますが、特に絹織物、人絹織物等についてなぜこういう臨時措置的な対策を講じなければならないのであるか、その基本的な原因、特に貿易の事情あるいは国際市場の最近の情勢、見通しといつた点について承りたいと思います。
  29. 南好雄

    南委員 お答えいたします。ただいまの御質問は前の委員会において加藤委員から御質問がありました際にもお答えしておいたのでありまして、絹、人絹関係につきましても、こういう法律が必要になつた根本的理由につきましてはいろいろあろうかと思いますが、営業の自由からする業界の先行きに対する中小企業の持つております弱点を露出いたしまして、少しもうかるからといつて非常に無統制に数が多くなつたということも一つありましようし、また最近ポンドの処理の問題につきまして、絹、人絹が主として出ておりました。ポンド圏における貿易状態が非常に悪化したというようなこと、それに関係いたしまして今までの計画上灘翻が来たというような点が働きまして、絹、人絹関係につきましては刻下の非常に悪い状態が出たものと考えておるのであります。もともと貿易と申しますものは相手のあることでありますので、こちらがどういうことを希望しておりましても相手が聞かなければしようがない。貿易関係に対する的確な見通しを持つということはだれしもできぬことであります。従つてそういう国内、国外のいういろいろの状況の変化に応じまして、もとから数の上において非常に過多であり、そして業界全般がなかなかまとまりにくいという中小企業の持つておりまする弱点を、できるだけ除去してやりたいという意味合いにおきまして、当初は私的自治を組合においてやらせまして、そしてその私的自治によつて救い切れぬ面を公益的見地をもつて通産大臣中小企業に救いの手を延べて行くということでこの法律案ができていることは、加藤委員の御質問の際によく御返事申し上げておいたのであります。
  30. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただいまの御説明でごく大づかみのところは承知いたしましたが、現在の国際市場が特に狭隘化しているということ、また各国それぞれの自己産業保護政策というものもあつて、特に絹織物、人絹また混紡織物等の輸出が不振であつて、私どもの県下においてもまつたく火の消えたような状態になつておるのでありますが、これが改善ということについて政府としてはどういう努力をしておられるのか、またはたしてそうした努力がどの程度に実を結ぶ見通しを持つておられるのか。もちろん相手のあることでありますから責任のある、また自信のある御答弁は無理かと思いますが、繊維局長でけつこうでありますから一応の御答弁を願いたい。
  31. 記内角一

    記内政府委員 絹、人絹業界は今不振にあるわけでありますが、これをもう一回安定させますのには、結局はよけいにつくつてよけいに売れるような態勢に持つて行かなければならぬかと思うのであります。しかしながら国内の面は、これはいろいろ見方もあり論議もありますが、現在のところにおきましても、比較的売れ行きは進んでおるのであります。ただ輸出を目標といたしておりますいわゆる広幅絹、人絹あたりは相当苦境にあるという状況であります。しかしもちろん内地の需要の面も、はたしてこれがいつまで続きますかというここは、今後の内地の景気変動ともからみ合つて来る問題であります。そこで輸出の面になつて参りますと、まだ残念ながら日本の輸出の相手国は大体ポンド地域が非常に多い。そのポンド地域が、いわゆるポンドの弱体化を防止する意味で、イギリス本国を中心といたしまして、そのスターリングもエリア各国とも目下輸入制限をいたしておるわけであります。その影響が多分に参つておると思われるのであります。しかしこういう事情は、結局ポンドの実力の回復するということが一つの大きな前提でもありますが、輸入の制限というふうな消極的な措置をいつまでも続けておるわけにも参りませんし、そうなりますと世界的にお互いに取引の縮小ということになつて来るわけであります。どうしてもこれは国際的な観点からいたしまして、お互いによけいに物を買いつけて売込みを多くするという取引の拡大の方向へと進んで参らなければならぬかと存ずるわけであります。最近日本も独立いたしまして、各国とも大使、公使あるいは領事館の設置というふうなことを漸次実行に移しつつあります。こういう機関を通じまして、いわゆる経済外交によりまして、この方面の打開をはかつて参りたいと考えておるわけであります。新しく大使、公使あたりの赴任される際におきましても、通産省といたしましてほ、特にこの点を強く要望いたしておるような次第でございます。
  32. 岡良一

    ○岡(良)委員 しかし問題は、国際的ないわば不景気と申しましようか、アメリカを中心とする軍拡的な方針の大きな頓挫というか、不振によつて、独立した日本が荒波にもまれておる難破船のような状況で、そういうような危機が特に現在の繊維産業に集中的に、その中でも絹織物、人絹、ステープル・フアイバー、混紡等の産業に出ておるように考えておりますが、ただいまの御答弁によりますと、そういう基本的な点については、何百人の大公使を出してみたところで、それによつて解決ができる問題とも考えられないのであります。従つて国際的な不況が集中的に表現されている繊維産業の危機というものは、きわめて慢性的な形をとるものではなかろうかと考えるのであります。そういう点についての繊維局長のお考えを承りたいと思います。
  33. 記内角一

    記内政府委員 今のような不況が慢性的ではないかというふうな見方もあるわけでありますが、また一面、昨年の春まで続きましたいわゆる朝鮮事変ブームの反動期というふうにも考えられるわけであります。私ども決して日本の繊維業界がこのまま今のような調子で推移するものとは思つておりませんし、また推移させてはならないと考えておるわけであります。その点でいろいろ打開に苦慮いたしているわけであります。しかし現在におきまして、現実の面といたしましては今申し上げたような帯境にあるわけであります。従いましてその問の応急の措置として、今度のような法律によつてお互いに生産を自粛し、設備を自粛することによつてこの間の苦境を切り抜けることもまた必要ではないかと考えておる次第であります。
  34. 岡良一

    ○岡(良)委員 日本の繊維業界に現われておる現在の危機が、多少反動的な要素を持つているとしても、また一面では、やはり国際的な規模における貿易の不振ないしそれの慢性化という條件に引きずられて慢性化するということになれば、この法律案が臨時措置と銘打つてつても、これが臨時措置という提案者の御趣旨を逸脱するような結果になりはしないかということをわれわれは恐れておるのでありますが、こういう点は見方の相違でありますから、これ以上触れないことにいたします。  そこでこれは釈迦に説法でありますが、提案者の南さんにお尋ねいたしたいのであります。わが国の産業構造で、特に中小企業というものが非常に大きなウエートを持つているというところに、日本産業のいわば苦悩と申しましようか、いろいろな内部的な矛盾の源泉が大きくあろうということは多くの人が指摘しておるのであります。そこでそういう日本の現在の産業構造で中小企業が非常に大きなウエートを占めているという、内部構造の矛盾から起つて来たところの、中小企業がこうむつている現在の危機に対して、業者が、自主的な統制と申しましようか、調整という言葉が用いてありまするが、ある程度の計画的な生産なり計画的な加工をやる。そういうことになりますれば、この生産ないし加工の調整というものが、流通の面なり、価格の面におけるやはり一種の調整を当然伴つて来ると思うのであります。そういうふうな形になろうと思いますが、そういう点についての提案者としてのお考え、また繊維局長としてのお考えを承りたいと思うのであります。
  35. 南好雄

    南委員 お答えいたします。私たち考えましたのは、あくまで今直面しておりまする中小企業の持つている、金融面と並んでの弱点と言われておるなかなか大きく団結し得れないという点、それが事業者団体法なりあるいは独禁法の規定のためにそういうことができないというふうに考えられましたので、そういう面から中小企業者中小企業等協同組合法による協同組合と違つた意味において、救つて行こうという意味でこの法案を出したのであります。結局考え方といたしましては、あくまで中小企業の持つている弱点というものを一つ一つとつて行く、こういう意味でこの法案ができておるのであります。そういう意味合いから、現段階においては生産設備とかあるいは出荷数量とか、あるいは生産数量を制限することをもつて足るのであつて、さらに進んで加工賃の技術的調整あるいは価格の技術的調整というものまで、二十七條をまとめて考えるべき段階に達していない。今の段階におきましては、要するに数の規正をやつて、ある程度コントロールすればそれでいいのじやないか、こういうふうに考えておるのでありまして、臨時的な措置であります。先ほど、経済界の将来ということについての岡さんの御見解によつて、これが慢性化して恒久化するかもしれぬというような御意見でございましたが、そういう場合には、またおのずから異なつて処置をすべきものではないか。少くともこの法律に盛つておりますような二年間の短期間内においては、今の状態では、価格協定というものまでをこの調整組合事業の一つにするということまで至つておらぬ、こういうふうに提案者考えておる次第であります。
  36. 岡良一

    ○岡(良)委員 繊維局長にも御答弁を求めましたが、これは保留いたしまして、とにかく現在の日本中小企業、特に繊維産業業界、北陸三県の業界等は、協同組合の現在のあり方をもつてしては、とうていこうした自主的な生産統制はできないというような段階にあることは御指摘の通りであります。そういう意味で、この法律を御提出になつた御意図もわれわれは十分多とするのでありますが、それにいたしましても、やはりここに日本中小企業という、日本産業構造において大きなウエートを持つておるものの中で、特にこの別表に指定されておるような業界においてそのクリーゼが集中的に出て来た。これに対して、こうした対策を、あるいは臨時措置を講じなければならなくなつたという本質的な自由党としての態度についてお尋ねしたいのでありますが、そういうことで、結局中小業者が、たといいかなる機関により、いかに民主的にやられようとも、やはり現在のような野放しの自由経済という方針ではいけない。だからして、自主的に、民主的にでも計画的な形をとつてやらなければならないということになれば、私ども自由党としてはやはり野放しの自由経済をもつてしては、中小企業、特に日本産業において大きなウエートを占めておる中小企業の生き得る道がないというような観点からいたしまして、たとい臨時的にもあれ、そうしたお心構えの上における根本的な転換があつて二の法律が御用意されたのかどうか、この点を重ねて承りたいと思います。
  37. 南好雄

    南委員 お答えいたします。今岡さんから自由党の野放し経済というお言葉が盛んに出たのでありますが、自由党は決して従来から野放し経済などという考えを持つておつたことはないのであります。ただ法律によつて何でも経済を律することができるということは私たち考えておりますし、またそのときどきに応じまして、終戦以来の日本のきゆうくつな状態を、もつと経済の持つておりまする本然の形に返して行きたい、そういうためには、いろいろ縛られておる制限を一日も早くとつて、活溌な経済活動のできるような状態にしてやりたい、こういう主張は一方的にありましたけれども中小企業にいたしましても、大企業にいたしましても、ほつとけばそれでいいのだ、野放しにしておけばそれでいいのだ、それが一番経済のかてになるのだということはかつて考えたこともなし、また将来とも考えて行くべきではなかろう。ある程度の見通しのもとにおいて経済計画を立てて、それにマッチするように産業経済を指導して行かなければならぬものだということは、前々から私どもが知つておつたところであります。自由党といたしましてもそういう感覚でやつておつたと思います。その点になつて参りますと、水かけ論になりますから、しいて申し上げませんが、自由党としては急激に転換したものではない、こういうようにしか御返事ができないと思います。
  38. 岡良一

    ○岡(良)委員 それは私どもの見方からすると、むしろ大いに歓迎なのであつて、やはり中小企業の危機を脱却する道は、中小企業者みずからの自主的な民主的な方法における調整あるいは計画化というものが、生産なりあるいは出荷等においても十分に考慮されねばならないと思うのでありまして、私どもはそういう方向に進むということは、中小企業業界が計画経済への道を開くものであるという考え方を持つて、その御趣旨は大いに歓迎をいたしたいと思うのであります。  そこでさらにお尋ねをいたしたいのでありまするが、調整発動した場合における、その業務に従事している従業員の生活の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。憲法の第二十七條には「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」ということがうたわれてているこは御存じの通りであります、そこで、この調整発動いたしますると、勤労の権利が著しく阻害されるような事態が起りはしないかということが危惧されるのでありまするが、このような法律案をご提出になりまする場合において、事前に労働省の関係者等とお打合正せがあつたかどうかあつたとすれば、どういう内容についてお打合せになり、また、どういうようなおとりきめなり、御了解が成立しておつたか、この点をまず承りたいと思います。
  39. 南好雄

    南委員 法案の起革にあたりましては、労働省の意見は聞いてへたことはありますが、特別に公式的に打合せたことはないのであります。私はこの法案につきましては、先ほど川口部長からも申しましたように、憲法上の議論があることは当然でありますが、労働者の利害に関しましては、こういうふうに考えておるのであります。現在の段階におきましても、倒産が相次いでいるような状態でありますから、その範囲内において、労働者の権利は労働基準法その他の労働法規によつて守られておる。それから自主的統制調整組合がやる場合におきましても、そこにはおのずから話合いができて、不当に侵害されるようなことはない。それから二十七條のような場合になつたときにおきましては、通産大臣は、物をつくつたり、物を加工したりする者だけの立場でこういうことをやるべきではないのであつて、そのためにはもちろん審議会をつくつて、十分関係各方面の利害得失を考意いたしまして、その上において事情やむを得ない、かくすることによつてのみ日本の最終の国民経済が救われるのだという確信の上に立つて、二十七條発動して参るのでありますから、従業員の利害といいますか、そういう見地でおのずから他と同じように制限は受けても、不当には制限を受けない、こういうように考えておるのであります。私たち考えでは、中央における審議会の中には、もちろん労働関係の代表者も入つてもらうように考えております。またそういうふうに政府に要望するつもりであります。従つてこの法案が両院を通過して施行される場合において、労働者の利益を不当に侵害するというようなことは当然理論的にも実際的にもあり得ないもの、こういうふうに考えておる次第であります。
  40. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただいま審議会というお話がありましたが、御存じの通り、中央に設けられている審議会の意見政府の施策に反映をした、それだけの力を持つたという事実はきわめて少いのであります。失業対策審議会の具申がほとんどいれられておらない。社会保障制度審議会の勧告のごときはほとんど無視されておる、こういうことで、審議会に繊維関係の労働組合の代表が参加いたしましても、その実効は私どもはあまり期待できないと思うのでありまするが、それはそれといたしましてもう一つ基本的に、さつき申しました憲法の第二十七條では国民の勤労の権利を保証しておる。ところがそれをこういう法律によつてある程度拘束をする事態が起るわけです。それは就業の時間について起るか、あるいはその事業場のある部分において離職者が出るという形において起るか、あるいは全面的な休暇と申しますか、ある期間内において一定期日の操業禁止という状態が起りました場合にいたしましても、働労の権利というものが不当に拘束されるということになる。そこでこういうような国民の基本的な権利である勤労の権利というものは、憲法規定されておる基本的な人権として保障されておるものが、この中小企業の安定をはかろうという、たとい善意の意図から出たとしても、この場合にこれをやはり法律をよつてはつきりと、こうした場合における勤労者の生活の保障というものが明文化される必要があるのではないかということを考えるのでありまするが、その点がこれには述べられておりませんが、なぜこの際明文化されなかつたのか、あるいはまたいかなる措置によつて具体的にこれらの生活の保証の道が講ぜられるようとしておるか、この点についての提案者の御構想を承りたい。
  41. 南好雄

    南委員 繰返して御質問でございますが、私は問題をあまりむずかしく考えておるわけではないのでありまして、そういうような状態を放置しておきますと、労働者の法的の最終の主張はなし得られましても、中小企業が一日に何軒ずつかつぶれて行くというような現下の実情で、岡さんもよく御承知の通りであります。その範囲においては労働基準法の命ずる最小限度の保護しかないのであります。そこで多少なりとも業界安定にこの法律が役立つて参りますならば、間接的には労働者の利益も広がつて行くのではないか、その程度のものであれば中小企業者といえども、経営者の立場においての利益、それからこれに協力しておりまする労務者の利益等もおのずからそこに協調し得られる面が出て来るのではないか、こういうふうに考えてこの法律を出しているようなわけでありまして、そうむずかしく考えて、基本的人権というような問題から割出して、特別にこの場合に法的措置がいるのだというふうには、ただいまのところ考えておらないのであります。
  42. 岡良一

    ○岡(良)委員 法制部長がおられるようですから、お伺いします。憲法第二十七條に保障されておる国民の勤労の権利、これは国民の普遍的意思の表現として規定された憲法が保障しておる基本的な権利でありますが、これが法律によつてたとい一時的にでも不当に拘束されるという事態が起ることは必至でございまするが、これに対して法制部長のお考えを承りたいのであります。一体こうした国民の普遍的な意思の表現として規定された、憲法に保障されておる国民の基本的権利である勤労という権利が、人為的な法律によつて不当に拘束されるということは、これは憲法上どういうふうに解釈しているのかという点について専門家からひとつ御教示を願いたいと思います。
  43. 川口頼好

    川口法制局参事 非常にむずかしい問題でございますが、高度な政策上の問題は別といたしまして、憲法規定されている勤労の権利その他生存権の保障、一切の関係におきまして一応私どもの理解しておりまするところでは、一種の国家の全般的な政策上の指導目標ということを掲げておる一つの理想を示した規定で、ございまして従いまして純粋に法律的に申し上げますれば、ある会社は何名ぐらいの従業員を常に確保しなければならないか、これこれ以上は失業者を出してはならないというふうな制約は、個々企業体につきましては、別に現在取締つている法律は一つもないわけでございまして、ただ今回の提案されております法律案によりまして、その権力発動もしくは組合活動によりまして、面接的ではなくて、結果といたしましてある程度の失業者なり、もしくはその他の損害が勤労者にもかかるということは、あるいはあるかもしれません。そういう場合に、少くとも法律の問題といたしましては、勤労権そのものを直接国家自身が害しておるわけではないと一応解釈されまして、従いましてその部分に関する諸般の法律制度は憲法條章にかんがみまして、失業保険法その他労働諸立法における保障を受ける。従いまして企業者もその面における協力をする義務があるというふうな一般的なことは申し上げられますけれども、この法律案において労働者を何名だけに限定し、何名は解雇しなければならないというふうな直接的な命令規定というものは一つも、ございません。結果的にそういうことが生ずるかもしれないという意味におきまして、直接的に憲法條章を特に侵しているというふうには考えられないのであります。かように一応考えております。
  44. 岡良一

    ○岡(良)委員 法律家らしい、しかしきわめて技術的な御答弁でありますが、一体憲法に保障された勤労の権利を行使しているものが、かりにここに百名ほどの絹織物工場があつたといたします。そうしてこの命令発動されることになりますと、一箇月のうち十日休業する、あるいは六箇月間のうち相当期間休業する、あるいはその上にある部分が離職をしなければならないという事態が起きて来ます。そうすると、結局憲法で保障されている勤労の権利が一応拘束されることになる。事が憲法で保障されている以上、法でそれを拘束するならば、その法律はあわせてかかる場合における勤労の権利、もちろんこれは憲法に明らかなことく生活手段の獲得のための勤労でありますから、その生活の保障というものがあわせて明文化されなければ非常に片手落ちではないか、法律的な取扱いとしても当然明文化されるべきものではないかということをお伺いしているのですが、この点についてどうお考えになりますか。
  45. 川口頼好

    川口法制局参事 ある企業体の経営につきまして、今御質問のお言葉にもありましたような事態が、たとえば具体的にこの法律に基く二十七條権力発動によりまして、現在就業している労務者の何パーセントを整理すべしというよなことになりますれば、これはもう何人も当然これに対して憲法に保障するそれの裏づけを立法上当然必要とすると考えられるのでございますが、一応そういうことを離れまして、企業経営の全体的な立場からある程度の標準を設け、その結果として企業体の責任において副次的にそういう作用が出て来るでありましようが、その面に対する全体的な立法的な施策は別といたしまして、直接法律的に憲法に権利が保障されているから、当然この法律案において必ず先ほどの財産権の保障と似たような形における勤労権の保障規定、あるいはそれの償いの問題を処理すべきであるとまでは一応考えていないわけでございます。
  46. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただいまの御答弁は非常に不満でもあり、遺憾でもありますが、それはさておきましよう。  それでは労働基準法では解雇いたします場合には、三十日間の予告期間があるということになつております。この調整命令と申しましようか、いよいよ発効するということになれば、これは法律上純粋の意味の解雇ではなかろうと思います。おそらく組合事業主もそういう法律が出れば労働協約によつて解雇というような形ではないような表現でもつて何らかの対策を講ずると思いまするが、それにいたしましてもやはりそういう事態が起ります場合に、この問題は適当に双方の納得の行く解決がつくまでにはいつでも時間が非常にかかるわけです。そういうふうに時間がかかるので、やはり調整規程が発動されて、いよいよ調整が実施されるという前にはこの法律等においてはつきりと、あるいは政令等にゆだねてもけつこうですが、従業員に対する予告期間というふうなものを設定する必要があるのではないかということを考えるのでありますが、その点について提案者にもまた法制局の専門家の御意見もあわせて承つておきたいと思います。
  47. 南好雄

    南委員 純粋の法律解釈につきましては、その方面の権威者である川口さんからお答え願う方がよいのでありますが、私はこの法律で二十七條発動されるような場合におきましても、こうまつも労働基準法の適用を排除しているのではないのでありますから、独禁法や事業者団体法のように適用を排除されておるわけではないのでありますから、これは当然三十日の予告期間がいるものと解釈しております。  なお失念いたしましたので、ここで補足させていただきますが、先ほど岡さんからどうも審議会というものは意見の通つたためしがないと言われるのでありますが、今の構成上ではこれ以上ないという強い表現で、その答申については政府はこれを尊重しなければならぬといつて、他の法制とはちよつと違つた行き方をしておるのであります。それは尊重せよというのと、それからそれに従えというのとは言葉が違いますけれども、こう強く出ておるのは最近の立法例としては二つか三つくらいだと記憶しておりますが、そうこの審議会が政府に対して無力のものであるということは、私たち立法者の一人として考えておらぬのであります。
  48. 岡良一

    ○岡(良)委員 しかし私が例にあげました社会保障制度審議会のごときは、社会保障制度審議会設置法によつて設定されておる。それだけのために法三章を設けたものであり、内閣と同等の権利下に立つて、総理大臣に直接勧告するということが條文にはつきり出ております。ところがこの勧告は、われわれも長年委員をやつておりますが、ほとんど実施されていないのですから、私は幻滅の悲哀を感じて申し上げたわけです。できるだけ御趣旨のような運営を期待いたします。  そこでさらにお尋ねいたしますが、それではこの調整発動されまして、いよいよ従業員がその職務を離れなければならないという事態が起つた場合、それは再雇用されるということを前提としての一時的離職、こういう取扱いになりますか、その点について、これは法制局部長の御見解伺いたいと思います。
  49. 川口頼好

    川口法制局参事 お答えいたします。先ほどの提案者お答えにもございましたように、まずこの法律案ではいきなり命令が出ることを避けまして、勧告という形で一応の反省を求めまして、若干の余裕を置いて権力発動はしないという形になつておりますのが第一点で、かつまた一般の労働立法に対する例外措置は全然つくつていないのでございまして、その場合におけるいろいろな事後措置に関する問題としての労働法上の制約はその通り受けるべきものだと考えております。  なおただいまの御質問の点は、これはやり方でございますが、この期間というものがはたして数年とか、あるいは何箇月とかいうふうに出るものかどうかによつていろいろ違いましようが、この法律案におきましては、施行期間を非常に限定いたしておりまして、きわめて臨時的な色彩が強うございます。でありますから、これはおそらく予測の問題でございますけれども、将来の経済回復、危機を突破した場合の措置というものは、当然考慮せられるのでありましよう。ただそれは各企業者の判断によるものでありまして、必ず将来はまた雇いもどすというふうな制約が與えられるかどうか、この点はもつぱら団体交渉の範囲に帰属するのであつて法律上一定の制約はないものだと思つております。
  50. 岡良一

    ○岡(良)委員 それは重大な問題なのです。提案者にお伺いしたいのは、三十日の予告をもつて調整令が発動される。その期間たとえば一月にしろ二十日間にしろ、これは暫定措置といわれる以上は期間が限定されておるわけですが、その期間は一応その職を離れる、離職という事態が起る。この離職という事態に対しては、当然また事業を開始したら再雇用するという條件がないとするならば、これは臨時措置ではなくなつて来る。これは企業そのものが永久的に小規模化するということになつて、この法律案趣旨とおよそかけ離れたものになるので、これは当然再雇用を前提としての一時的な離職である、こうはつきりしていただかないと困るのですが、法制局部長のお考えのように、臨時措置とうたわれながら、しかも法律には何ら規定がないから再雇用の道が講ぜられるかどうかは労働協約にまかすということでは、この法律案の精神ないしはうたつておる臨時措置と矛盾して来る。もしこれが首を切られつぱなしということになつて、再雇用の保障がないというならば、これは法律をもつて中小企業の従業員に対する首切りを合法化するということになつてしまうのだが、その点について提案者なりあるいは法律の専門家のはつきりした御意見をこの際承つておきたい。
  51. 南好雄

    南委員 お啓えいたします。岡さんは非常にむずかしく御質問になるのですが、私などの常識的な考え方から申しますと、法律に常識的ということを申し上げてまことに申訳ないのですが、普通の解釈をいたしますならば、これは二年間の臨時立法であります。それからもともとあくまで生産調整にあるのでありますから、縮小しつぱなしというようなことは私といたしましても考えておらぬのであります。従つてそのときどきの情勢によつて、一箇月になつたり二箇月になつたりあるいは三箇月なつたりする。もともと中小企業といえども、もうかればやりたいのです。もうかるようになれば、普通の業態でありますならば前から使つておつた人間を町雇用するのはあたりまえです。そういう意味で、そのときの交渉によつて、あるいは再雇用になるかもしれません。あるいは市況が当分回復見込みなしということになれば、そのまま解雇になることもありましよう。それで六箇月以上ということになれば、その後になつて来てくれといつてもほかへ就職していればだめなのでありますから、そういいましても、必ずしも待つていなければならぬということはないのでしようから、そのときの事情によつてそれは判断しなければならぬのじやないか。法規的に言いますならば、それは川口さんと同じように永久的になることもあれば、あるいは一箇月なら一箇月後に再雇用ということになるという団体交渉の結果ならば、またそういうことになつて来るのではないか、こう考えるのがあたりまえではないかと思います。ほつておけばみなつぶれて、そうして労働基準法の最小限度の保護が與えられるにすぎない。現在の業界においてある程度の救済を與えて行きたいという場合には、個々の問題についてはいろいろなむずかしい問題が起きるかもしれませんけれども、全体として考えますならば、決して中小企業界に従事しておる労働者に特別にこの法律によつて犠牲を強要するというような事態には法規的にも実際的にもなるはずがないと私考えております。
  52. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは端的に重ねて責任ある御答弁を伺いたいのですが、この法律案による調整というものは、あくまでも期間が限定された臨時的のものである。だから原則として一時離職しても当然荷雇用させるべきものである。もちろん当人が他に職場を求めて自由に行くということは、職業選択の自由が認められておることだからしかたがないが、原則としてはその離職は、ある期間を限定されての離職である、こういうことであるから再雇用ができるということを一応の原則として提案者は認めておるのか、あるいは認めておらないのか、どちらなんですか。
  53. 南好雄

    南委員 お答えいたします。非常にむずかしい話で、私は法律の持つておる性格からいたしまして、現在の不況というものは自治的な調節によつて相当回復し得られる、こう考えておりますので、普通の状態考えますならばそれは当然再雇用の形に参るものと私は考えております。しかしこれは法律的に当然再雇用の形をとるべきであるというところまでは考えておりません。
  54. 岡良一

    ○岡(良)委員 この例は綿紡とか化繊関係でもかつてあつたはずでありますが、そのときの情勢を繊維局長から伺いたいと思います。
  55. 記内角一

    記内政府委員 この扱いはもつぱら紡績会社あるいは化繊会社等それぞれの繊維の労働組合との間に話合いが進められて解決しておるようであります。従いましてその内容は、個々の会社により、個々の労働組合によつてつております。完全に退職して縁の切れておる者もあれば、また一時休暇という形で離職しておる者もございます。また條件とはいたしておりませんが、話合いの間で、また復活する場合には再び必ず採用するという約束をいたしておるものもあるようであります。一律にはきまつておらぬのであります。
  56. 岡良一

    ○岡(良)委員 ここに綿紡績業の操業短縮に伴う一時離職者に対する失業保険給付事務の取扱いについて、労働省の職業安定局長から通達が出ておりますが、この中で、操業短縮に伴う再雇用の條件付一時解雇及び再雇用の條件付一時退職は、失業保険上の離職と認めるということになつております。化繊とか大紡績のところの組合の力も非常に強いのです。しかし中小企業ということになりますと非常に組合の力が弱い、従つて特にその保護の措置について十分な考慮をしていただきたいということを申し上げるのです。そこでこの再雇用ということを前提とすることを私どもは強く希望する。これを組合業者の自主的な解決にゆだねるということではならないと思います。特に石川県の実情、これは南さんもよく御存じだと思いますが、単軍に労働者だけの問題ではないのです。現在の石川県の繊維産業の婦人労働者というものは、ほとんど周辺の農村から入つておる。たとえばここにこういう川柳がある。「吸いに行く姉を殺した糸くずを」これは石川県の農村に流行しておる川柳です。これはしがない五反百姓が自分の娘が小学校を出たが、とても婚資がないというので近くの繊維工場に働きに行く、ところが劣悪な條件のために肺結核で死ぬ、だから石川県には肺結核が農村に実に多い。二番目の娘もまた一人前になつたがやはり自分の家はしがない五反百姓のために、これも繊維工場に行く、そういう形で、いわゆる農村の若い子供たち、娘たちの大きな犠牲の上に石川県の繊維産業というものは成立して来たし、今も成立しておる。そういう非常に弱いものであり、彼らの生活が保障されないということは、軍にそこに働く労働者の生活が保障されないのみではなくて、石川県全体の農村経済に重圧をもたらすことになります。そういう事情を特に勘案していたたきたい。再雇用ということは、これは原則として臨時措置の立法でありますが、しかし国民の勤労の権利が拘束されるならば、当然再雇用ということは明確に明文化してもらいたい。そのことについてはわが党としてもいずれ修正案を提出して十分に善処したいと思いますので、この問題はこの程度にいたします。  次に二、三点お尋ねをいたしたいと思いますが、この法律案では、当初の原案については多少私どもも知らされておりましたが、予算措置を伴つたものがほとんど削られているようなかつこうであります。こういうふうに調整がされるということになつて来ると、さしあたり税金の問題ですが、南さんはどうお考えでしようか。何しろ所得税というものは前の年の所得で抑わなければならないので、操短をしなければならないほどきゆうくつな状態に陷つて来たときに、減免はどうかと思いますが、せめて延納措置などは考えてやらなければならないと思います。その点についてどうお考えですか。
  57. 南好雄

    南委員 お答えいたします。今の中小企業を、端的にこういう方法で救えますものならばというのでこの法律案はできております。なおこれが中小企業対策の一から十まで万全でないことは御指摘の通りであります。税金の問題におきましても、今のような状態におきましては、休業が二割三割も出ておるのでありますから、これはもうけがあるどころか、労働対策上からでも出費のあることは当然であります。結局生産制限をやつた場合において、業界がそれで立ち直つて税金をある程度納められるようになればこれに越したことはありませんし、それからそれでまだ業界が立ち直らずに、まだまだ悪化の状態になることになれば、この法律によつては救えない、また別個の積極的な措置がいる、こういうふうに私たち考えております。こういう法律のうちに、御指摘の通り予算措置を講じて、そして足らないがちの中小企業に対して少しでも潤いになればと思つていろいろ研究もし、努力もしたのでありますが、国家の財政状態においてはなかなか困難である。従つてこういうことをやつてみてなおかつだめなときには、次の手を打つというふうな漸を追うて進むという考え方で法律ができているのであります。
  58. 岡良一

    ○岡(良)委員 ちよつと聞き忘れましたが、これは法制局部長にお聞きしたいし、提案者にもお尋ねしたいのですが、これまで勤務しておつた者が、この調整発動されたために職場を失つたという場合には、たとい再雇用ということが労働契約上うたわれておるといたしましても、しかし実際の雇用関係というものはその瞬間からないということになりますが、そういう場合の取扱いは、失業保険法の被適用者として取扱われますか、これは特に繊維局長は綿紡、化繊等でも御経験のことと思いますが、これまでの実例についてその点をあわせてお答え願いたいと思います。
  59. 南好雄

    南委員 お答えいたします。その方面を特別に研究したことはないのでまことに申訳ないのでありますが、今の法律解釈ではそれは当然岡さんが言われたようなことになるのではないかと思つております。
  60. 記内角一

    記内政府委員 綿紡績の場合におきましては、提案者からのお話のように、失業者と扱つているはずでありまして、先ほど読み上げられました再雇用の契約を結んでいる場合におきましても、やはり失業保険の対象になるということを念のため通達が出たような次第でございまして、それ以上の失業状態にある者に対しましては、当然適用があるというふうに解釈いたします。
  61. 岡良一

    ○岡(良)委員 失業保険は六箇月の給付期間が限られておりますが、調整発動いたしまして、再雇用を條件として六箇月を越える期間職場を離脆しなければならなかつたという場合、かりに二十日間のこれを越ゆる間、失業保険金を受取ることはできないことになつて来ますが、この場合は一体ただちに補償政府によつてせられるのか。調整発動して、離職期間が、失業保険金を受給する期間を越えた場合において、その幾日かあるいは幾箇月かというものに対しては、従業員に対する給與関係というものはどういうふうにお考えですか。
  62. 南好雄

    南委員 お答えいたします。それは私はそのときどきの団体交渉によつてきまるのじやないかと思うのであります。六箇月を起える期間を再雇用を條件としておるような場合、その後、ある程度の、賃金ではないですが、つなぎをくれる場合もありましようし、またくれぬ場合もありましよう。しかし今の中小企業の実態から判断いたしますると、こういう場合におきましても、先ほどお答えいたしましたように、労働基準法の適用を排除しておらぬから、労働基準法の適用があつて、それ以上のことは、ちよつと望みかねるのじやないか、実情はそうなるのじやないかと私は思つておりますが、非常に理解のある経営者と理解のある労働組合との団体交渉によつて、許されるならば、七箇月というような場合に、一箇月はある程度のつなぎは出ることも絶無ではないと私は思います。
  63. 岡良一

    ○岡(良)委員 問題は離職の原因が法律に基くということですね。法律に基いて離職した、しかも失業保険金を受給する期間を越えてしまつた、しかしその間再雇用の條件もあるということで漫然と待つておるといつたら、食わずに待つておるというわけには実際問題として行かない。そういう場合、失業保険の受給期間を越え、しかも調整発動に基いて操業が営まれていなかつた場合の離職期間中における従業員の生活保障は一体どうすればいいか。組合事業主との対等な交渉において納得のある解決をと言われますが、繰返して申しましたように、組合の力は非常に弱いのです。しかも一方では法律的に職場を去らなければならないという事態をつくり出しておるとすれば、やはり当然この法律の上において、かかる場合における具体的な勤労者、従業員の生活保障の措置が講ぜられなければならぬと思うのです。それが立案者の大きな責任じやないかと思う。そういう点について南さんの御心境を率直なところをもう一度伺いたい。
  64. 南好雄

    南委員 中小企業の問題を考えます場合においては、労働者立場も十分考えなければならぬが、さりとて中小企業者の経営者としての立場もこれと同様に考えてやらなければならぬのじやないかと思うのです。どつちかにウエートを置いて考えることは立場々々の議論になりまして、こういう法律をつくつて行く者の立場としては、どちらにしても行き過ぎであろうと私は思うのであります。私たちの石川県なんかを見ておりますと、労働基準法はあつても、倒産してしまえばその金さえもとられぬという事態も発生しておる。そうなると法は形式的の保護であつて、差押えしても、全部銀行に入つてつて先取特権は働く余地もない。実際行つてみたら何もなかつたというような場合もあるのであります。そういうような場合には、実際問題ではなくて、法律的な解釈といたしましては、もちろん団体交渉によつてきまるのだが、法律的にしいて答えろとおつしやられますならば、労働基準法の規定する労働者に與えられたもろもろの保護が手一ぱいではないかと考えております。
  65. 岡良一

    ○岡(良)委員 私どもは、別に労働者のみに重点を置いてその生活を守れというのではなく、特に繊維産業の場合、地方の実情は農村経済と密接な問題として、單に勤労者だけではなく、その地域全体の景気を高めて行くという考え方も織り込んで、一方によけいにウエートを置くというのではなく、両々納得の行くような措置が必要だろうという観点から申し上げております。その点はいずれわれわれとしても十分考慮いたしますし、あるいはまた修正意見等も出るかもしれませんが、これは保留いたします。  さらにお尋ねをいたしたいのであります。御存じの通り、石川県の実情を例として申しますと、農村のか弱い娘たちの生命と肉体の犠牲で、石川県における繊維産業はささえられておるのです。福井県も同様です。しかも御存じの通り、石川県、福井県は、全国的にまれに見る特に農業耕作地に悩まされていて、経営反別は隣の富山県から見ると半分にも足らぬ実情である。繊維産業の基盤がそうした零細な農民の貧しい子弟、特に娘たちの命と病気による大きな犠性によつて今日まで形づくられて来たということをひとつ大きな要素としてお考えを願いたい。  いま一つは、石川県の場合、私どもはこれを端的におつとせいだと言うのであります。織機の所有台数二百台、三百台という大きなメーカーがあるが、県下全体としては十台くらいのものがほとんどである。そうしてこの大きな二百台、三百台を持つ織機メーカーは、同時に商社である。原糸の特約店もやつているし、製品の売買もやつている。そういう昔からの問屋は二百台なり三百台なりの多くの織機を持つておるが、一方は一台そこそこの業者で、これがほとんど八割から九割なんです。これらの諸君はほとんど賃加工をやつている。これは南さんもよく御存じの通りだと思う。そこでそういう賃加工の実態を申しますれば、十台で二十五日稼働して一匹十五時間かかる。労働基準法に縛られておるというので、学校に行く子供も休ませて十五時間稼働させて、手間賃は百五十円だ。二十五日間稼働で十五時間全部フルに動かしたところで三万七千五百円しかならない。それに電力料と賃金を差引けば、糸の織値だけで辛うじて彼らの生活を維持しているが、それではかなわないというのが現状だと思う。ところが大きなメーカーは糸も押えており、つくつた物も押えている。何と申しますか、おつとせいの雄みたいなのがおつて、そのほかに雌がたくさんおつて、少数の雄のおつとせいに支配されておるというのが石川県の実情なんです。法律案にはいろいろうまくうたつておりますが、こういう点においてこの法律案が発効した場合に、実際は賃加工業者が犠牲になる、こういうような実情が石川県の小さな地域内に起つて来る可能性がある。今私どもが申しましたような実情から、資金面においても、原料面においても、つくつた物の面においても、ほんの一握りの大きな問屋筋に押えられている。おそらく繊維局長にしてもお会いになつておるのはそういう方にお会いになつていて、こまかい業者の方には会つておられないと思う。そこで小さな経営規模をもつてつている諸君は、この法律案はうれしいような恐ろしいような悲喜こもごも至るという感情を訴えているわけだ。これまでのようなそういうおつとせい的なあり方はやめて、零細なメーカーを含めて、それらの意向について、納得の行く形でその調整が行われることが必要だが、そのような保証がこれだけではどうもわれわれは納得できない。商社を兼ねておつた従来の問屋筋には、原糸の配給の面でも金繰りの面でもこれまで援助を與えている。織機を買いたいと言えば金も貸してやつておる。そしてでき上つた織物はこれを一手に販売しておる。この諸君が何百台も持つて全部支配しておつたというこのままの形でこの調整が出て来ると、実際九割を占めておる小メーカーにとつては、非常に不利な事態が起りはしないかという点が非常に懸念されるわけです。これは特に十分御考慮になつたことと思いますが、提案者なり繊維局長として、そういう実情に即してはこういう手で、従来のいわゆるおつとせいの雄のような専制的支配をやつておつた商社であり、大メーカーである諸君を押えて、零細な二十台以下、あるいは十台そこそこの繊機を持つておるメーカの現在の苦境を助けて行くということについて、この法律発動した場合、具体的にどういうふうな措置補償が期得できるか、この点をお答えを願いたい。
  66. 南好雄

    南委員 岡さんの石川県の人組製造業者の実態の御説明、ごもつともな点もあります。しかし、私の生れたところなどもそういう業者が非常に多いのでありますが、今岡さんの言われたよりもつと悪いのであります。十台くらいの織機を持つておる連中が、賃加工をさしてくれればまだいい方で、糸の上り下りの責任もない、織物の上り下りの責任もないのであります。いくら少くても、そろばんを置いてどうしても引合わなければやめるだけの自由は持つておる。ところが今の状況では、わずか十台持つて糸は買つてつて織物を売つて行かなければならないというので、岡さんの説明以上に十台、二十台、三十台くらいを持つておる連中は困つておることは、私は身をもつて体験してよく見ております。石川県の事情については、少数の大きな業者のおることも私は認めますが、それ以外の業者は、今あなたの御説明なつた賃加工になるべく、どれほど努力しておるかわからない。賃加工にしてくれれば損か得か、そろばんを置いて引合わなければやめる。ところが糸を買つてそれを織物に織つてつて行く。その糸の相場の上り下り、織物の上り下りの責任まで持たされるのではやりきれぬというような現在の状態であります。そういうこともよく存じておりますので、これらについても、私が行政の衝に当るのではありませんから、繊維局長によくその実態を説明して万々遺漏のないように措置していただくように、いつもお願いしておるのであります。お説の通り石川、福井の絹、人絹業界調整規程と申しますものについては、岡さんの御指摘のような点も生かして十分に運用上遺憾のないようにして参らなければならぬと考えております。
  67. 記内角一

    記内政府委員 今度の法案によりますと、第九條によつて組合員が組合を組織するにはその三分の二以上が中小企業者でなければならぬというふうになつております。大部分中小企業者でもつて組織しておるということが前提になつております。また第五條によりまして、調整組合組合員の議決権及び選挙権が平等であるということが條件になつておりまして、こういうことのない組合は認可できないことになるのであります。従いまして今御指摘のような点は、中小企業者、十台あるいはそれ以下しかないような零細な業者というものが十分自覚して活動していただく限りにおきましては、心配ないものと考えております。
  68. 岡良一

    ○岡(良)委員 それは自覚して活動してくれれば、全然そういう間違いは起らないのです。第五條なり第九條をおあげになりましたが、たとえば三分の二以上が中小企業者でなければならないといたしましても、石川県の場合のような、福井県も同断ですが、これが別表による絹、人絹、ステープル・フアイバー、混紡等が適用されて来るわけです。ここでは中小企業は三百人以下と規定されておりますが、これらの工場は従業員が七、八名で、その八割、九割まで自家労働でやつておるところもたくさんあるという状況であります。しかも原糸の世話もしてもらい、金繰りの世話もしてもらい、機械を買うといえば金も融通してもらうとか、それを担保に入れておるとか、あるいは女房が病気をすればその借金もしておるというような長い因縁の関係において、非常に封建的な形ででき上つて来た現在の協同組合、丸三とか何とかいろいろあるのです。たとえば小松に織物同業組合があります。丸三というのは県一円でやつておるのですが、この法律によると、絹、人絹という業種関係した石川県一円の調整組合ができるわけですか。
  69. 南好雄

    南委員 調整組合の性質上、府県単位になるものと私は考えております。その府県単位になつたときの状態は、丸三が一本になつて入る場合もありましようし、あるいは個々業者状態で入つて来る場合もありましよう。法律には中小企業の協同組合で入つて来ることを拒否しておりませんで、そのときどきの調整組合結成の際における各業者の随意であります。個々業者の入つて来る場合もありましようし、協同組合で入つて来る場合もありましよう。しかし表決権が平等でありますから、そこらは組合構成上考えて行かなければならぬ点はあると思います。しかし法律の保護は一定のことを條件としておりますので、先の先まで案じているいろいろこまかい規定を設ければ、かえつてそれが運用されるので、こういう場合にはこの程度が一番穏当じやないかと思つておるのであります。大きな業者で入つて来るようなことがありましても、一票しかものを言いませんから、個々業者で入つて来るのじやないかと思います。
  70. 岡良一

    ○岡(良)委員 その場合、表決権が平等とはうたつてあるけれども、その権利が従来のいろいろな因縁やら情実によつてゆがめられて行使される危険性があり、その結果平等ではなく、調整発動した場合でも、昔のようなおつとせい的支配が起つて来るということでは、零細な業者はかわいそうであると思うのでお尋ねしておるのです。これについてはほんとうにわれわれの納得のできる御答弁はないのですが、織機を台数で制限する、百五十台以上のものは調整組合理事は何名、あるいは二十台以上のものは何名というふうにして、特に商社を兼ねている大メーカーの発言権を押えて、調整発動なり調整の施行なり、一切の調整業務の運営に業者の声を集約して行くということを、よほどはつきりと指導しませんと、商社にしてメーカーを兼ねておる従来の支配的な諸君が、再び実権を握るということでは、せつかく零細業者をも含めて安定をはかろうという御好意が無になる。危険がある。そういう意味で運営に当る機関の人的な構成は、織機台数などではつきりと振りわけをして、零細業者の声が十分に反映できるような仕組みを考える必要があろうと思うが、こういう点について南さんほ何かお考えになつておることがありましようか。
  71. 南好雄

    南委員 お答えいたします。岡さんはなかなかこまかいご質問なんで、御心配の点は私もわからぬことはないのであります。しかし法律をつくつて行く際におきましては、たくさんの織機を持つておる人の利益をことさらに押えて行く、それから少数を持つておる人の利益をことさらに保護するということになつて参りますと、もうそれ自身何か他の目的を持つた法規になりがちなんです。私はこれはやはり一台持つておる人が入つても一票の表決権、千台を持つておる人——そういう人はないのでありますが、かりに持つておる人があつたといたしましたら、その人も一票、経営の際において、そういういわゆる平等が、こういう調整なんかやる際において、かえつて公平かどうかというような議論もあつたのでありますが、これは私は押して議決権は平等でなければならぬという建前を絶対にくずしておらぬのであります。従つて業者としては実際損をしてかえつて得をしておるのでありますが、今日の福井県あたりの業界の不況というようなものは、大きいものだけがかえつてひどいのでありまして、小さいものはかえつて、都合が悪ければやめておる。そういうような実情にあるのでありますから、岡さんが御心配になるほど自分の利益を保護するのに、それほど暗いと私は考えておりません。しかし行政運用の際におきましては、御趣旨のような点についてできるだけ注意するように、立法者の一人として繊維局あたりに要望すべき点については前々から要望しておるのであります。
  72. 岡良一

    ○岡(良)委員 最後に提案者にお伺いいたしますが、この審議会は、特に石川、福井のように、おそらく調整組合によつて包括される産業によつて、その府県の工業生産額のほとんど七割も八割も占められておるという府県の経済従つてその産業の浮き沈みが、その府県の経済を制しておるというような地域においては単に中央だけでなくて、その地域にも審議会をつくる。そうなればそれに零細な諸君、あるいは大きな連中、あるいはまた繊維産業労働組合の代表者も入れると思いますが、そういうところでは、やはり府県においても審議会とか、名目は何でもけつこうですが、やはりその地域、その府県における大きな指導的な指揮的な機関をつくる必要がありはしないか、こう思いますが、そういう点について提案者はお考えなつたことがありましようか。
  73. 南好雄

    南委員 お答えいたします。私は絹、人絹のように、たとい府県単位の調整組合ができましても、それはさらに連合会になつて参りますが、石川や福井の絹、人絹のように日本の絹、人絹業界における八割、九割までを占めておるような場合におきましては、名は中央における絹、人絹の審議会でありましても、代表者は当然福井、石川の人たちが入つてしかるべきものと思つております。従つて先ほどあなたの御質問お答えいたしましたように、学識経験者の中には福井、石川の繊維関係も労働団体の適当な人も入れていただくように、起案者の一人として通産省にお願いしてあるような次第でありまして、別個に石川県、福井県にそれぞれ小さな審議会を置きますことは、屋上屋を重ねる結果になる。動くようであつて、かえつて動かぬのではないか。むしろ福井人絹なり石川人絹なりが日本人絹であるならば、その代表者が当然中央の審議会に入つて来てしかるべきものではなかろうか。従つて学識経験者なども当然そういうことになつたその標準のもとにおいておそらく選ばれるものであろう、こういうふうに提案者の一人として考えております。
  74. 岡良一

    ○岡(良)委員 私ども考えでは屋上屋を架するというような意味でなく、やはりその府県の産業の、あるいは景気の死命を制している産業において、操短というような非常事態あるいは緊急の措置がとられるということは、その府県全部の大きな関心事でもあるので、やはり中央でなく、その府県で独立した機構があつて、その間十分な検討を遂げられる必要があろうかと思つて申し上げたのであります。そのほかいろいろお尋ねしたい点もありますが、時間も過ぎましたので、あとはまた後日に譲りまして、この程度できようの私の質問は終えたいと思います。
  75. 高木吉之助

    ○高木委員長代理 本日はこの程度にいたし、明日は午後一時より理事会、午後一時半より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十六分散会