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1952-04-21 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十一日(月曜日)     午前十一時四分開議  出席委員   委員長 中村 純一君    理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君    理事 今澄  勇君    阿左美廣治君       江田斗米吉君    小川 平二君       土倉 宗明君    永井 要造君       南  好雄君    村上  勇君       高橋清治郎君    風早八十二君  出席国務大臣         通商産業大臣  高橋龍太郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      松田 道夫君  委員外出席者         参  考  人         (大協石油株式         会社常務取締         役)      石崎 重郎君         参  考  人         (東亜石油株式         会社社長)   近藤 光正君         参  考  人         (福岡鉱害対         策協議会副会         長)      栗田 數雄君         参  考  人         (福岡鉱害対         策協議会常任委         員)      三村  保君         参  考  人         (福岡鉱害対         策協議会常任委         員)      宮崎 光次君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出第一五九号)  特許法の一部を改正する法律案内閣提出第一  六八号)  旧軍工廠施設払下げに関する件     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず特許法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府より提案理由説明を求めます。高橋通産大臣。     —————————————
  3. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 特許法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  今般、日本国との平和條約の発効に伴いまして、特許権等享有に関しまする外国人に対する制限を緩和いたし、また国際民間航空條約の当事国航空機等に対しまする特許権等効力の特例を設ける必要が生じましたので、改正を行おうとするものであります。  すなわち、従来わが国におきまして特許権等享有できる外国人は、わが国住所もしくは営業所を持つている者か、あるいは工業所有権保護同盟條約国の国民またはこの條約国の領土内に住所もしくは営業所を持つている者に限られたのでありまして、その他の外国人に対しましては一切特許権等享有を認めておらなかつたのであります。ところが、今回の日本国との平和條約によりまして、連合国の中でわが国国民特許権等について内国民待遇を与えている国の国民につきましては、わが国も同様に内国民待遇を与えることになつているのであります。  また今回の平和條約に参加していない国におきましても、すでにわが国国民に対しまして無條件にまたは相互主義により特許権等享有について内国民待遇を与えることとしている国が多い現状でありますので、これらの諸国に対しましても、前記連合国と同様に相互主義の原則に基いて特許権等享有できるよう、外国人権利能力制限を緩和いたしたいと考えるものであります。  次に今回の平和條発効と同時に、わが国国際民間航空條加入前といえどもその航空條約の規定を実施することになつておりますので、国際航空に従事する国際民間航空條約の当事国航空機、その部品等特許権等の侵害の理由で差押えその他の請求を受けることがないように、特許権等効力を除外いたしたいと考えるのであります。  なおこの措置はわが国国際民間航空條約に加入するまでの臨時的なものでありまして、條約加入後は現行特許法により同條約が適用されることになつております。  以上申し上げました点が、この法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決ざれんことを御願いいたします。
  4. 中村純一

    中村委員長 以上をもつて提案理由説明は終りました。質疑は次会にこれを行うことといたします。     —————————————
  5. 中村純一

    中村委員長 次に旧軍工廠施設払下げに関する件について調査を進めます。高標清治郎君。
  6. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 四日市における旧軍工廠施設払下げに関して、過般来新聞紙上において、この問題をめぐつていろいろと国民疑惑の念を与えておるのであります。一体この旧軍工廠施設払下げに関して、今日までの経過はどのようになつておるか、通産大臣に伺いたい。
  7. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ただいま五人の審査委員を嘱託いたしまして、その委員会審議研究中であります。まだ何も結論に達するところに参つておりません。この問題は前に決定いたしました播磨造兵廠の場合も同じでありましたが、いろいろなデマが新聞紙上をにぎわしておりますけれども、何分多数の出願会社がありますので、そういう方面からいろいろな宣伝が行われておるのでないかと思います。それらの多くは、私ども全般にわたつて研究しておる者から見ますると、当らないものが多いのであります。この決定は先刻申しましたように、まだ何ら結論に達しておりません。私は、情実あるいは運動に左右せられてこの問題を決定することは断じてないことを、ここで御確約できる自信を持つております。
  8. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 大臣の今のお話で、大臣心境はわかりましたけれども、各十一社の申し込んだ会社人々と過般わが党は会つて、いろいろと意見を聞いたのであります。しかしそのうちに三菱石油会社とある外国会社とに九分九厘まで払下げすることに大体内定したというようなことをわれわれは承つたのであります。しかも時価よりも非常に安く、十六億ぐらいで払下げするというようなことであつたのです。これに対しまして通産大臣は一体この工廠時価をどのくらいに御調査しておられるか。その点をひとつ承りたい。
  9. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 御質問の最初の点でありますが、ある一定会社に多分決定するであろうというような風評がいかにも私はふしぎに思うのであります。私は先刻申しましたように、まだ何ら結論に達していない。また五人の委員会でも現在どの会社が有力であろうというような委員個人意見も一切発表しない。そういう点はいろいろな混乱が起き、誤解が起きるおそれがあるから、委員諸君も、個人意見として、どの会社がそのうちでいいだろうというようなことは、最後の結論を出すまでは一切発言をしないことにするという方針で審査しておるわけなのです。今のある特定会社に、多分もう私ども意向がきまつておるだろうというようなことは全然根拠のないことであります。  それから価格の問題でありますが、価格の問題は、こういうことになつております。国有財産の処置でありますので、大蔵省の所管であるわけなんです。私ども通産省としましては播磨の場合も同様であつたのでありますが、この国有財産たる大きな施設を利用して、国家産業に貢献するのにはこの会社が一番適当であろうという意見をきめて、それを内閣に報告いたしまして、払下げ條件等につきましては大蔵当局が折衝することになつておるのであります。
  10. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 将来日本の防衛上の立場から、この施設をそういう方面に利用するようなお考えは、大臣としてお持ちであるかどうか。
  11. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 四日市施設払下げを、石油鉱業でなくて、あるいはほかの施設に払い下げるべきかというような結論が出るかもしれません。それは第一、五人委員会がどういう結論を出しますか。ただ私個人意見でありますが、日本石油工場施設が現在のままでさらにふやす必要はないという前提であればともかく、石油施設もまだまだ増さなくちやいけぬということであれば、四日市は、立地條件が船着きの場合、いろいろな点を考えまして、石油鉱業には一番適しておりましよう。けれども今申しましたように、結論は出ておりません。
  12. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 過般業者会合の席で聞いたのでありまするが、東亜石油社長は、自分たちが前に持つてつた工場が強制的に買い上げられたのであるから、またこの払下げを申し込んでおるのであるから、それをわれわれの方の会社に優先的に払下げをしてもらうのが当然だと思うというようなことを述べておりましたが、そういうような前の関係を基準として払下げをするようなことはないとは思いまするが、ただ私の考えまするのには、日本石油界の将来から考えてみますると、石油業者人々考え方もそうであるようでありまするが、申込者全体の共同の、ある一つ国家的見地から特殊会社をつくつて、これを運営された方がいいじやないかというのが大半の空気であつたようであります。そういうようなことをお考えになつておりますかどうか。
  13. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ただいまのお話のような趣意でありましよう。新しい石油鉱業会社をこしらえ、現在の石油鉱業者の一部分がそれに参加して、そこへ払下げを受けたいという書類せんだつて通産省の方にも出されました。それはさつそく審議会の方へ移しまして、せんだつて会合にそれらの発起人諸君に来ていただき、説明を聞きました。その説明にいろいろ要領を得ない疑問の点がありますので、さらに書類をもつて至急回答すべく話し、そういう約束をもつてその諸君は帰られたのであります。そういう書類が出ればまた審議会で審査いたします。ただ私少しその中で理解ができないのは、その新しい会社に協力参加するという会社が幾つかあるのだそうですが、これは全部ではないのです。そしてそこで説明されて名前を聞いたそれらの会社單独払下げ申請しておつて、それはまだ取下げてはいないのです。そうするとそれらの会社單独でも払い下げてくれと言い、一方では、これはただ口説明だけですからわかりませんが、共同してこういう会社もこしらえる。そして申請会社が全部というのならばともかくも、みずから顧みてとうてい自分の方へは払い下げないだろうと考えられるような三つ会社が合同してそういう新しい会社を組織して払い下げてくれというのは、私少しどうかと思う。もつとも誤解があるといけませんから申し添えておきますが、その申請している三社が新しい会社に協力するということは、この間見えた発起人の方々が話されたのです。それでその発起人諸君質問をしてみると、協力するというのはただ口頭の約束であつて、それ以上には進んでいないのだという御説明でありましたから、それに協力するということで名前をあげられた会社の真意はまだわかつていないのです。そういうものを書類で返答を求め、いずれ確かなものにして説明書を出すと言つて帰られましたから、そのうちにそれらの点も明らかになると考えております。現在のところではその程度であります。
  14. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 次に今後この工場をやつて行く上におきまして、国家的見地から外国資本共同体としてこれに入れた方がいいと思われるか悪いと思われるか、通産大臣としての御意見を承りたいと思います。
  15. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 あの工場を動かすのには相当多額の金がいるのです。ある会社では百億、ある会社では完成までには二百億というような計画だという説明であります。ですから私は当然外資考え、また日本の現在の石油再製は、御承知通り製品がいかにもオクタン価の低い粗製品にすぎないのでありますから、外国の進んだ技術が入ることも歓迎すべきだと存じます。ただその形式でありますが、形式についてはいろいろな意見がありましよう。しかしあれだけの大きな国有財産でありますから、外国資本が入つてその会社指導権を持つという会社であれば私は適当ではないと存じております。これは私の意見であります。
  16. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 日本石油界外国資本を入れたことによつて指導権をとられるということは絶対に排斥しなければならぬと思うのであります。なお先ほど大臣心境を申された通り、あらゆる情実にとらわれずに、国家的見地から見てこの工場の処理を考えるという方針でどこまでも進んでいただきたいと思います。  かんじんの大蔵省から見えないので、この工場時価評価と、今言つた三菱石油に十六億円で払下げをするという点についての質問は、大蔵省から見えたならば答弁していただきます。次にはこれに対して大協石油の方から御意見参考のため承つて、私の質問を打切りたいと思います。
  17. 中村純一

    中村委員長 この際お諮りいたします。本件について大協石油株式会社常務取締役石崎重郎君及び東亜石油株式会社社長近藤光正君を参考人といたし、意見を求めたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 中村純一

    中村委員長 御異議なければさようとりはからいます。大協石油株式会社取締役石崎重郎君。
  19. 石崎重郎

    石崎参考人 四日市燃料廠払下げ出願関係者の一名として出席させていただきました大協石油石崎であります。  御承知のように、あの燃料廠払下げをめぐりまして、十社に上るわれわれ同業の製油会社並びに関係石油会社からいろいろな形で払下げ出願がございましたが、私は大協石油としての立場だけを御説明申し上げるのでございますが、諸般情勢にかんがみまして、私の方は四日市燃料廠と相並んだ四日市の湾の反対側工場を建設しております。あの工場を私の方で一日払い下げて経営するということは出願いたしましたが、その後の諸般情勢にかんがみまして、これを一応辞退を申し上げました。このことは正式に書類をもつて関係当局へ差出してございます。ただタンクヤードは現在私の方で拜借しておりまして、それにアラビヤからの原油を受入れて操業をしておりまして、タンクヤードに関しましては今後も払下げ及び確保の希望を持つております。現在大臣からも御説明のございました合同経営案と申しますか、これは各社が競願いたしまして、ほとんど収拾のつかぬような情勢になりまして、先ほどお話のございました三菱石油さんの計画に対しても、あの設備がかり民間の一社へ払下げなつた際は、現在ほぼバランスのとれているところの日本精製設備、ないしは国内のマーケツトというものに相当大きな変化を来すということが業界の刺激になりましたということと同時に、終戰後とにかく払下げ出願さえすればよいというような態度の会社もございまして、それが十社以上に上つたわけでございますが、これを自然発生的に拾い上げて、どの会社にこれを払い下ぐべきかというような御選定をされることは非常に困難でもあり、かつ無理ではないかと思うのでございます。それで業界の長老の皆様が集まられて、この際どうやつて收拾すべきかということを相談された結果が、今度新規に出た合同経営案と承つておりますが、この計画の詳細についてはまだ私どもこまかい御説明を聞いておりませんが、趣旨としては現在の情勢においては最善ではないかもしれないが、とにかくまだ割切れないものもございますが、これ以外には解決の方法がないかと思います。それで私の方としてこの合同経営案出願者に払い下げていただくということに賛意を表するものであります。
  20. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ちよつと私一言したいのですが、今の御意見を聞いて、ただいまの石崎君の御意見の中に、たくさんの会社出願しておつて、収拾つかぬような状態になつているということであるが、そういうことは新聞にも書いております。これは一、二の出願者からそういう情報を流されたのではないかと思うのですが、私は収拾つかぬようなものになつておるということは全然考えません。これは私の担当の仕事であつて、今日の状態がいわゆるたくさんの出願者があつて、かつて気ままな主張をされても収拾つかぬというような状態になつているというお言葉には私はすこぶる侮辱を感ずるので一言申し上げます。
  21. 今澄勇

    今澄委員 今通産大臣から御説明がございましたし、なお大協石油石崎常務から一応の御説明がございましたが、できれば私は五人委員会代表者からこれらの経過とその見通しについての御説明を聞くべく、五人委員会代表者の見えるのを待つておるわけであります。特に私が通産大臣にお聞きしたいのは、今大臣の御説明通産行政責任者としてのあなたのお考えは大体わかりました。私も収拾つかぬようになつておるとは思いません。ただ問題は一四日市燃料廠の問題のみならず、この四日市施設石油関係者に払い下げるとすれば、通産行政責任者としては日本燃料国策燃料政策というものを、一体どうするのかということにまず大もとを発してお考えを願うということでないと、行き当りばつたりであるということは免れません。そこで国内原油の採掘並びにこれが精製外油輸入これが精製、その外油輸入については特定輸入業者をもつて充てるような外油会社外資を入れてやる方がいいのか、それともそういうことでなしに、昔の日本が戰争前にやつてつたような、ああいう外油輸入もあつて、そこで今後国内における石油需要に対して、大体輸入とその他のものを見通して、四日市燃料廠五十万トン程度のものをやつて、なおかつ六十万トンも足りないのだが、こういつた需要に見合う日本の供給すべき石油の面からの考え方、こうした一連の燃料政策に立つ四日市問題でなければならぬと思います。この問題が紛糾したかに見えるのは、そういつた政府の一貫した燃料政策、あるいは石油政策というものについての見通しと、明確な政策に欠けておるからであると私は思うのでありまして、通産大臣のこれらに対する計画的な見通し、及び燃料行政についてひとつ率直に御意見を御披瀝いただいて、引続いてこれらの問題について質問をいたしたいと思います。
  22. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ごもつともな御意見で私も御同感に存ずるのであります。その問題は日本石油燃料政策といいますか、それに非常に関係を持つて決定して行かなければいけないわけです。また日本石油燃料行政といいましても、根本は豊富な安い燃料を供給することでありますが、内地の資源が遺憾ながらこの面では非常に乏しいのでありますから、どうしても海外から輸入しなくてはいけない。それらの点につきましては、通産省で十分研究した案を持つておるのでありますが、今日は用意してありませんので、数字どもつけて次の機会に御答弁申し上げ、あるいは書面で御答弁したいと存じます。
  23. 今澄勇

    今澄委員 この基本的な通産省が抱く燃料行政というものの一環として、四日市というものをわれわれは論じなければならぬのであるから、これが概括については、大臣そういつた数字その他の点についてこの次にという話でありましたけれども、まずこれが先決であるという意味において、鉱山局長も見えておられるが、どなたでもけつこうです、お手もとにある資料でもけつこうですから御説明願いたい。
  24. 松田道夫

    松田(道)政府委員 方針の問題は私が申し上げるよりは大臣の方が適当と存じますが、ただいま持ち合せの数字答弁をするようにということでございますので、需給関係を主として御説明申し上げます。石油需要の今後の伸びというものにつきましては、日本経済事情変化、これがノルマルな状態でございませんのではつきり間違いのない見通しをつけることはなかなかむずかしいのでございますが、ここで申し上げますのは、安本がここ四、五年を予想いたしまして、それに最近の事情その他を加味いたしました需要予想数量を申し上げたいと思います。ラウンド・ナンバーで申し上げますと、二十八年度になりまして六百三十万キロリツトル、二十九年度が六百四十万キロリツトル、三十年が六百六十万キロリツトル、三十一年が六百七十万キロリツトル、こういう需要でございます。これに対しまして国産の原油は三十六万キロリツトルくらいでございますので、一割足らずの生産しかございません。それから精製の面でございますが、現在の精油工場能力は大体十万バーレルで、これを年間のキロリツトルに直しますと、五百八十万キロリツトル製品ができる。現鹿と申し上げましたが、不正確でございまして、今日本石油会社増産計画を持つておりますが、はつきり固まつた増産計画従つて二十七年末までに完成が予想される数字も入つておりますが、これができ上りますと、五百八十万キロリツトルという数字になります。
  25. 今澄勇

    今澄委員 今精製石油の大体の生産高並び安本計画等の御説明がありました。そこでまずこの払下げの問題で、神戸製鋼が播磨造船所の旧施設払下げを受けたことと、この四日市払下げとの間には根本的な事情の相違があるということを申し上げねばならぬのであります。この四日市施設石油に払い下げることをきめるとすれば、通産省としては石油政策の上に立つて約五十万キロリツトルと予想せられる四日市施設をどのように石油に利用した方が石油供給需要の方でいいのかどうかという判定ができたからこそ、石油の方に払い下げるということにきまつたのだろうと思います。そうなると、石油会社から三つも四つも申請が出て来る。そうして通産省では公平を期しがたいというので、五人委員会にこれをゆだねるということは当然だと思う。そこで通産大臣にお聞きしたいことは、どういう理由四日市石油に払い下げるべきであるということをきめられたのか。もう一つは、その五人委員会なるものを何ゆえにつくつたのか、その五人委員を任命する方式あるいはそれを編成した方針というものがあるはずであるが、それはどういう方針によつてつくられたのかということを通産大臣にお伺いいたしたいと思います。
  26. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 御質問一つは、あそこを石油業に払い下げるということはどういう理由できめたのかということでありますが、これは先刻高橋さんの御質問に対して述べましたように、通産省ではあそこは石油業者に払い下げるべきだということを今日まできめておるわけではないのであります。それからこれも高橋さんに御答弁したように、あるいは五人委員会でも石油業はもう必要ないじやないか、またほかのある業種の方をあそこへ持つて行く方が適当ではないかという結論が出るかもしれないわけであります。ただ先刻高橋さんに申し述べたのは私個人考えでありますけれども石油精製工場が現在のもので不十分で、まだ新しい施設が必要だという結論が出れば、そういう前提條件考えて、その場合には四日市立地條件が非常にいいように私は考えるということを申し上げたのであります。  それから五人委員のああいう審査委員会をこしらえましたのは、私も就任当時、この問題は非常に重大な問題であるし、あれだけまとまつた国有財産を払い下げるということであるから、非常に愼重を期すべきであると考えて、私が意見を聞くべく、あの人選をいたして五人の審査委員会を設けたのであります。
  27. 今澄勇

    今澄委員 その人選にわれわれは文句があるのであつて、もう少し各分野から民主的な方針によつて経営者のみならずいろいろな方面から人を集められたらどうか、この五人委員会人選について一定方針を私は聞いたのであるが、御答弁がなかつたが、方針をお改めになつたのか、それともどういう一定方針でお集めになつたのか、あなたの顧問機関ということでおきめになつたのか、あるいは今後この人数をふやされる御意向があるのか、あるいはわれわれが要望するいわゆる学者なりその他の人をお入れになるような御意思があるのか、ついでにひとつ承りたいと思います。
  28. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 これは私の諮問機関であつて、私が民間の信頼できる有力な人の意見を聞いてみたいという趣意から出たのであります。この決定はいつでしたか、この委員会でもちよつとそういうことに触れたつもりでありますが、審査委員会意見を聞いてあくまで私の責任決定をするつもりでおります。それからこの委員会を拡張するという考えは持つておりません。むろん業者なりあるいは地方の方なり、いろいろな人の意見参考に聞くべきだと考えますが、その審査委員会で時時そういう適当な人に来てもらつて意見を聞いておる次第であります。
  29. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、これらの払下げ決定する最終の責任者通産大臣であるということが、あなたの御答弁で明らかになりました。このあなたの方針によつてお頼みになつ委員会委員がきめた決定を、あなたの責任においておきめになるということになると、通産大臣としてはこういうふうに国家的な四日市燃料廠が今日まで解体しないで残つてつたということはもとよりこれは地元の要望であり、日本の幸運であると考えられているだろう。だが私どもはこういう国家的な施設を、しかも燃料国策の重大な一環を将来になおうとするこの四日市燃料廠については、私をして言わしむるならば、昭和二十七年度の計画その他先ほどの数字をあげてみると、大体まだ百千万キロリツトル程度の不足をする、そこで石油はもうつくらなくてもいいのだというような見解にはくみし得ないので、少くとも四日市の海軍燃料廠精製工場として五十万キロリツトル程度のものをつくり上げてもなおかつ不足するのではないか、将来日本石油外資の蹂躪するところにまかして——なるほど技術も大事です。それは近代的な石油化学工業、石油を中心としたあらゆるその他のものをつくるという技術ももとより必要でしよう。だが日本の現在の一番大事な問題は、独立するにあたつてわが国の電力行政と、あるいはこのような重大な燃料行政については、輸入原油の問題もあるけれども、いかにして自主性を持つた、これらの日本の思うままに動かすことのできる精製工場がいるかということももとより当然の問題である。だから私は、通産大臣は、少くとも先ほど来の御答弁を聞き合せてみると、自分責任においてお頼みになつた五人委員会であり、その五人委員会結論を諮問的に聞いて自分がきめる立場におられる者としてはあまりに石油行政全般に対する御抱負なり、あるいは日本需給関係からにらんだ日本石油というもののあり方なり、あるいは四日市精製工場についてのいろいろの御見解なりが明確でないではないかということを指摘せざるを得ない。そこにいろいろ新聞紙上伝えられておるところの大きな、行き詰まつておるとか、收拾つかないという問題の基礎があるので、私がこの際お聞きしたいのは、以上のそういう前提に立つて——この四日市燃料廠価格査定というようなことはあとあとの問題だ。これを一体石油にやらせるのがいいのかどうか。それから石油にやらせるとすれば、その石油国策の上に立つて外資の入らない、国家責任を負うて半官半民的な石油公社的な形態によつて外資が全部支配しておるところの——大体現在の石油の中で、外国石油業者精製の中で支配しておるものは約七七%であります。これらの約半数以上の株を持ち、半数以上の支配権を持つ外国石油会社に支配せられておる石油会社を、政府が何か今度政府方針でこういうふうに燃料国策をやるんだといつたところで、外国の方の重役に指令を仰がなければならぬ。そうすると外国の方は外国政府方針によ  つて、そんなものはだめだ、こうしろといつて、てんで政府の言うように動かぬということになつたときには、私は、日本燃料国策というものは重大な立場に立つと思う。そういう意味において、大臣は、大体この四日市燃料廠は、そういう半官半民的な企業形態で、日本の純然たる国家資本日本国民資本によつてこれが動くという形態が最上と思われるかどうか。民間会社外資の影響をこうむらないで民間会社だけでやるべきものであるかどうか。それとも今までのほかの石油会社がやつておるように、外資を入れて、五〇%も株を持つて、ほとんど外国資本に牛耳られてしまうというやり方にこの四日市までもやらしてしまうということになると、日本燃料国策を長い目で見ると、日本国家燃料政策というものは浸透しないということになるが、それでもいいのか。独立を前にして責任ある通産大臣として、こういう問題こそは明確な方針見通しを、信念の上に立つて答えてもらいたい。
  30. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 御意見はごもつともでありますから、私は参考にしておきます。私は先刻も申したように、まだ結論に達していない。しいて言えば私の現在の位置は白紙であるのですが、今あなたが言われたように、これは外国資本指導権を持つて日本政府の希望なり命令にも応じないような会社に払い下げるべきでないということは、当然のことだろうと思います。それからこれは今あなたの御質問のうちにはなかつたのですが、先刻来私の答弁であるいは誤解があるといけませんから一言つけ加えておきますが、私が四日市に対してきめる問題は、かりに払下げをする場合に、たくさんの会社から申請をしておる。そのうちでどれが一番適当であるかあるいは全部が適当でないかということの通産省意見をきめて、内閣へ報告して、内閣が最後の決定をするわけでございます。それから払下げ條件大蔵省の方できめるわけで、かりに私が甲の会社に払い下げるべきだという結論を得ましても、価格條件などでまたそれが実行できぬ場合もあるわけであります。一応それだけつけ加えておきたいと思います。
  31. 今澄勇

    今澄委員 五人委員会は、お願いをしておつたのでありますが、お見えにならぬようでありますので、私はただいまお見えになつたという東亜石油近藤さんに、今いろいろ大臣なり石崎参考人から承つたのでありますが、この四日市払下げにからんで抱懐しておられる意見並びに現在までの経緯等について様子をこの際述べてもらいたい。ひとつ委員の御指名を願います。
  32. 中村純一

  33. 近藤光正

    近藤参考人 私は東亜石油株式会社社長近藤光正であります。ただいまの御質問にお答えいたします。私は石油を四十二年間経営し、かつ四日市施設問題につきましては、昭和二十年十一月一日出願の、第一先願の立場であり、かつは二十二年一月二十九日、当時内閣における中央特殊物件処理委員会においてタンク施設等の使用認可をとりまして、爾来五年間、今日も使用しております。石油業者立場におきましては、最も歴史が古くかつ事情を存じておるものの一人であります。これが使用方法についての私見を申し述べよとの御質問でございますから、要点を申し上げて御参考に供したいと思います。当時私の出願いたしました前後は、各精製業者も自己の経営についてすでに確信を失つて失神状態にあつた当時でありますけれども日本国内におきまして、今日も事情は同じでありますが、民間施設をあげて比較いたしますと、最優秀の設備なのであります。なぜならば、八〇%の完成の段階において終戰になつた事実から申しても、新しい設備であることがおわかりだと思います。さような施設を賠償の指定から、移設の命令を適当に防衛することを当時考えて、これの一時使用を国策上私どもは取上げたものであります。しかし原油等の問題からとうていGHQの認可は得られないという見解で、関係当局の御注意もあつて製品の配給施設にこれを、不足である事実から十分理由があるというお勧めもあつてタンク施設の使用の段階に入り、今日まで爾来継続して使用いたしておるのであります。ところが太平洋岸の工場の再開の見通しがきき、原油の裏づけがおおむね可能であるという情勢を見ました昭和二十四年ごろから、ひとしくこの施設に向つて払下げ申請が殺到したのであります。その後昨年の夏ごろから、今日の約十二社になります各社が競願に参加し、御承知のごとくきわめて紛糾する問題になつて来たのであります。
  34. 中村純一

    中村委員長 近藤さんに申し上げますが、時間の関係もありますから、簡單にお願いします。
  35. 近藤光正

    近藤参考人 そこで私ども石油業者としてもこの政治問題化した客観情勢、また石油界の将来の運営を円滑にいたします等のために、これは現在出願しておりますもののうち資格のあるもの全員をもつて経営することが、国内相剋も回避して、最良の案と考えたのであります。第二は今日石油精製業者は八社ありますが、このうち五社はすでに外資導入済みであります。なお導入済みの会社の経営が、日本人の経営者において強く指導権を把握いたしておればよろしいのでありますが、事実は昔満洲国が日本の勢力下にあります当時と同じように、社長日本人でも副社長である外人によつて牛耳られておる。また重要なる営業政策もその本国であるアメリカとか、ロンドンとかのそれぞれ外油会社の本社の訓令を仰がなければ、重要なことは決せられないのであります。これが外資導入をこれ以上進めてはならない、重大な根拠であります。従つて一社の経営でさえさように指導権を握られておるときに、通産当局が石油国策の面で価額の問題、あるいは品種の問題、あるいは国内配置並びに貯油の計画等につきまして、それらの会社を呼んで指導をいたしたときに、一々ニユーヨークであるとか、ロンドンへ聞かなければ決せられない。この状態が今日七七%になつておるのであります。精製八社のうちの五社、その生産能力から行きますと、国内全般の生産能力の七七%になつておるのであります。残る民族資本いわゆる国民の自主権によつて動いておる石油業者は幾らあるか、三社であります。丸善石油、大同石油日本鉱業、この三社しか民族資本会社はありません。これらの生産能力は合計で二三%であります。これは最近における外国原油割当の数字から申し上げるのであります。合体して二三%では個個に分散しました法人独立の計算から行きますと、わずかに一〇%前後でありまして、とうていこれらの各單位工場としては、将来石油統制が解除されて自由になりましたときに、原価計算で一人立ちはできません。かような貧弱なものしか残つていないのであります。かような状態で、同じ原価の競争はできないという点から考えてみますならば、強力な経営能力のあるものは百パーセント外国指導権にゆだねられておるというのが現状であります。かような状態から四日市燃料廠外資導入された会社、いわゆる外国人指導権にゆだねることは断じてできないということを申上げたいのであります。しからば四日市燃料廠はどのくらいの生産能力があるか。皆様すでに御承知でございましようが、大体第一期計画として年間五十万トン処理能力には半年もたたずして復活ができます。百万トンに復活するのには約一年半ないし二年かかります。これだけの能力を持ちますと、外国原油が同一の値段であれば必ず対等に闘い得るのであります。小さい、能力の貧弱な工場は、同じ原価の外油をもらいましても、そのでき上る製品は高くつくのでありまして、競争はできないのであります。かようにいわゆる標準能力と申します年間五十万ないし百万トンの能力を持つた、たつた一つしか日本にない、民族の、民間の、国民の自由になる、政府の自由になる機関を、それを知つておる今日において、これを外資の、外国の指導下に提供するのはけしからぬことである。四十二年石油に奉職する私は、あるときは戰時中支那等において石油をやつて、放火されても再び立つて製造をやつておりました。しかるに終戰前、十九年十二月二十日の閣議決定で私の会社は海軍にとられた。それでも終戰後また賠償物件に金をかけてこれを移設から防ぐために努力して参りました。その私でさえもこれは私ども一社でやるべきではないと考えております。これは石油に職を受けるものは、公人として当然考えるべき考え方でございます。外資を導入した会社がどういう状態に置かれておるかということは皆さん方にはとうていよいよわからないのであります。ことに自分指導権を握られておる会社の当局者は、自分は骨抜きだとはおそらく申されますまい。従つてそれらの会社社長にお会いになつても、その根拠を言葉からなかなか受取れないのであります。しかし私は石油を四十二年やり、特に国内においては輸入と販売をやりました関係上、どの会社の台所も知つております。ちよつとした営業政策でも一々、外人の認可を得なければとれない。ことに日本に来る外人は決して有力な決定権のある外人ではない。一々本社の訓令を仰いでおるのであります。この事実を知つておるのであります。東亜燃料においても日本石油においても知つておるのであります。かような根拠に立つてども国民として業界人として現状を見て、いても立つてもおれない感じを持つておるのであります。強く言えば、この事情のわからぬうちはよろしい。しかし事情がわかつてもなおまた外人の勢力下にこれを置くならばこれは国賊だ。断じて天誅を加えるべきだという信念で私はおります。そのために諮問委員各位にもその事実を申し上げておるのであります。しかし世間のうわさはまことにただごとでない空気をただよわしております。そこで誠心誠意この事態は議会においても十分にお取上げになり、時間を十分に重ねて御研究を願いたいのであります。もしアングロ・イラニアン石油のごとき、あのイラニアンの民族の暴力によつて外国資本を国外に駆逐するようなことを日本も許されるならば、私はこの際目をつぶつて石油においても日本への外人の投資を歓迎いたします。しかし以上申し上げましたようにすでに七七%をとられ、事実上一〇〇%の勢力をとられておるにもかかわらず、なおかつ国民総員の協力によつてできました軍事施設を、自由にできる政府が、自由にできる議会が、これをいわゆる外国の指導下に与えられるようなことが夢にもあつては困るのであります。私は敗戰後の日本として、アンダ口イラニアン石油に対するがごとき、あの暴力的な革命的なことを日本人はしてはならぬと思います。しかるがゆえに、今日において絶対にこの工場は民族資本でやる。すなわち外資を借り入れることはよろしいでありましう。しかし指導権を持つところの出資はさせてはなりません。ことに五〇%、——五〇%の出資は、いかにも公平であるかのごとき感を持ちますが、事実はしからずであります。皆さん、お考えになつてごらんなさい。資本が同額であつても、それ以上金を借りています。金を借りたものに頭が上らないのは人情です。それにもう一つ大きな命の綱を握られておるのであります。それは原油の供給であります。原油の供給は彼らは専売権を持つておるのであります。物の足りないときには、原油をくれることは神様から物をいただくほど感謝しなければならない。ところが今日世界の原油精製能力のバランスは百の原油に対して六〇%しか生産能力がないのであります。かようなわけで終戰後の今日の安定した状態から行きますならば、原油はどこからでも買えるのであります、ところが外資導入済みの会社の方々の構想とするところは、どうしても出資の裏づけがなければ原油の供給は不安であるということなのであります。この一つだけでも、おそらくしろうとの方にはどちらとも真相は把握できないことで、石油業者でもわからないのです。なぜならばそう言われてみればなるほどそうかもしれないと思うでしよう。私どもは二十数年前から石油業界における直輸入業者であつた立場から、終戰後外国石油会社と連絡をとりまして、アメリカの五大石油会社の一社であるガルフから外資導入がなくとも原油をぜひ買つてくれという電報が来たのを、一月十七日の諮問委員会においても私はそのコピーを皆さんに差上げたのです。差上けたためにこれが漏れてほかの石油会社からすぐ原油の引当てをやつておる、こういう書類がたびたび電報になつて私のところに来ておりますが、それもその後委員会において御披露いたしました。これは資本金十二億ドルでありまして、その石油採油地もアラビア、イラン、ニユーギネア、テキサスに豊富に持つておる有力な会社でありますが、これは一つの例であります。かように活発なる動きが原油供給についてあるのであります。皆さん外油会社に惑わされることなくこの現実を信じてください。私はこれを裏づけする書類を今日持つて来ていますからごらんに入れます。  かように原油供給の裏づけができないということが第一、第二は資金がたくさんかかるから外資導入をやらなければならないということ、第三は技術だと言つております。ところが第一の原因は以上申し上げるようにきわめて簡単にこれを破砕できます。第二の資金の問題は、今日オイル権とかなんとかいろいろの問題があつて、今日液体燃料石油ほど重要なものはないにもかかわらず、それをさしおいて将来の緊急性のウエートの少い工場とあわせ考えて、そこに七十億、百億を要するという計画が必然起つて来る。かような計画をするには金が足りない、こういうことに持つてつておるわけであります。私はそういうふうにあえて申したい。
  36. 中村純一

    中村委員長 時間が大分たちましたから簡潔にお願いいたします。
  37. 近藤光正

    近藤参考人 かような状態でございまして、いろいろ現場から受取りますと事態より真相をきわめておるのでありますが、要は予算におきましては年間五十万トンとして二十四、五億の金で十分に運営ができるのであります。また百万トンにいたしますには約四十億の金で十分に稼働ができるのであります。大体かような資金の状態でありまして、これは十億の資本であと設備資金が十一、二億かかるから、こういうものについては当然重要産業として政府の設備資金より融通して行くべき常識的範囲の金額である。こんなわずかなものを、以上申し上げるような情勢下における危險な石油産業を、いわゆる自主権を失いつつある現状にあるにもかかわらず、なおかつ外資の権力下にゆだねなければならぬという理由は絶対に私はないと思います。  次に第三の技術の問題について申し上げます。先ほども申し上げましたようにこれは海軍の施設でありまして、海軍の技術将校が外国へ行つてあらゆる努力をし金を使つて、大船の燃料廠のパイロツト・プラントで研究して十分に突きとめた上で四日市がああいうふうに起用いたしたものであります。従つてそれらの海軍の技術将校の若い連中は、かわいそうに豚を飼つたり村役場に奉職したり、通訳になつたりして国内に分散しております。これらを起用することは彼らの感激を高める上に一石二鳥だと考えます。従つて外人の技術などを使う必要はありません。まだ将来向上したる技術に対しては原油供給者は当然商売のサービスとして、彼らからいろいろな技術のアドヴアイスを受けることができるのであります。以上申し上げましたように、外資導入をしなければならぬという三大條件は根本から私は成り立たないと思うのであります。  以上のような次第から私は先刻来申し上げますように、石油界の最大の実績を持つております立場にありながら、石油界の現状を見まして、民族資本でかつ国民の総力をあげてこの施設を活用しなければいけない、そういう性格を持つており、ことに政治問題化した今日、一社が持つことによつて社会情勢が安定しないということは非常に国に害を及ぼすと考えておるのであります。しかるがゆえに私は現在の競願者あるいは競願以外の人でも有力な人があればこれに参画して、石油界の模範的工場として政府がパイロツト・ケース、サンプル・ケースにこれを用いてそしてすでに七八%も進出した、既成事実になつ外油をひつぱつて行くことが必要です。  最後に一点話させていただきます。それは原油の値段において市場の価格がコントロールできるという専門的な商売人の一つの見どころであります。
  38. 今澄勇

    今澄委員 その点はあとで伺いますから……。
  39. 近藤光正

    近藤参考人 それではまた次の機会にお話をさせていただきますが、どうぞ本件は愼重に御検討願いますことを重ねてお願いいたしまして、長時間御清聴ありがとうございました。
  40. 今澄勇

    今澄委員 通産大臣はほかの会合のお約束でおいでだそうでありますので、参考人の話を途中で切つてお尋ねいたしますが、石崎さん、それから今の近藤さんの意見をわれわれは参考のために徴しましたが、これらの点から見ると、五人委員会では石崎さんはおられなかつたけれども、三菱鉱業の下請であるところの、子会社であるところの三菱系の石油会社に大体払下げるという見解がきまつてつたということを私どもは調査の結果突きとめているのであるが、そういうことはまことに軽率ではなかつたか。それで今度政治的ないろいろな輿論の上に立つてそれがやり直されて、またあとで受付の開始をせられるということになつたけれども、これらの実情に対しては通産大臣はいま少しく事態を検討して——国民輿論とわれわれ野党側は一致結果して、四日市燃料廠払下げの問題については国民を納得せしめるところの線で行きたいと思います。先ほど通産大臣はこれが事態の収拾に努めるというようなお話があつたけれども、まことに大間違いである。なお団体払下げを受けるように願いを出しながら、また個々の会社においても払下げの願いを出している業者はけしからぬというお言葉があつたが、ちようど業者が二人見えておられるから、そのようなだらしのない競願を一体ほんとうにやつているのか、それも通産大臣の食言であるかどうか、この点について二人の業者の方の御答弁を煩わしたい。  以上が私の質問であります。どうぞ通産大臣からお答え願います。
  41. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 五人委員会で三菱に内定したということをあなたは調査して何か確証を持つているようなお言葉だつたが、意外なことで、先刻高橋君の御質問に対しても私よく申し上げておいたのですが、そういうことは全然ありません。いよいよ結論を討議するまでは五人委員会の集まりでも、どの会社が適当だとかいうようなことは一切触れぬことにしようという申合せを五人委員会ではしておるのでありますから、それは全然間違いであるということを、私重ねて申し上げます。私はあくまで白紙の立場でありますから、どうぞ御了承願います。
  42. 今澄勇

    今澄委員 なお今後の見通し、あなたの御意見を伺いたい。
  43. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 それはちよつと無理じやないですか。私は白紙の立場だということを繰返して申し上げます。何か見通しを言えとおつしやるが、私はそれはちよつと無理だと思う。これで御了承願います。
  44. 中村純一

    中村委員長 参考人の方、ただいまの質疑に対して何か御発言がありますか。石崎参考人いかがですか。
  45. 石崎重郎

    石崎参考人 自分自身で單独払下げ申請をしておきながら、また共同申請をしておるのは矛盾じやないかという御質問がございましたが、先ほど御説明申し上げました通り、私の会社大協石油では、すでに諸般情勢にかんがみまして、燃料廠精製設備払下げは正式に辞退してございます。タンクヤードだけは現在お借りしておりまして、また今後使用せざるを得ないような立地條件にございますので、タンクヤードだけは別にして、精製設備の方は辞退してございます。従つて私の会社としては、新しい合同案に対して賛意を表するには何ら手続上も矛盾はないと存じております。ほかの同じく出願をしていらつしやる会社で、合同案について今御相談中のところでも、話がまとまりますればおそらく單独出願は取下げられると思いますが、この点は、いつどちらさんでどういう形式でされるかということは、私は明確には存じておりません。
  46. 近藤光正

    近藤参考人 私が参ります前に、大臣から御質問があつたようにただいま伺いましたが、私だけの立場から申せば、先刻申し上げましたように、国民総力をあげて、ことに石油業者はみんなで協力してこれを取上ぐべきだと主張いたしております意見の持主でありますから、従つて今回石油界の御長老から、これは共同体でやるべきだということで新しい出願が、十二社の最後に出て参りましたが、これは私どもの年来、ことに最近日を夜についで各方面説いてまわつておる点でございまして、まことにけつこうな案であつて、私は当然のことと思うのであります。また大臣がいられれば、私は大臣に対して逆に質問をいたしたいと思つたのでありますが、これは今日の情勢なり、あるいは政治問題化している情勢からいつて日本人として当然考えるところにおちついて来たのであつて、なぜ間違つたことをよく改めるにもかかわらず、御追究になるのか、私はむしろそれはおかしいと思います。一応のものの順序をきわめるだめの御質問であればけつこうでありますが、みなで手を握つて行こう、石油行政の円滑を期そう、一社だけに許してあとの十数社が出血する、かようなことでは後日必ず石油界に波瀾を起し、ひいては政治問題化するのによけい熾烈さを加えることに気づいたからの反省だと考えるのでありまして、その点について私は以上の見解を申し上げたのであります。  それから先刻の原油の値段について、三、三分でよろしゆうございますが、発言してよいですか。
  47. 中村純一

    中村委員長 なるべく簡單に。
  48. 近藤光正

    近藤参考人 委員長のお許しがありましたから申し上げます。  物の足りないときは必ずその価格が上る。これはもう常識でございます。原油は今日世界的にきわめて円滑に供給されております。従つて日本に数十年来勢力を張つておりますところのスタンダードとライジング・サン石油、今日の名はシエル、この二社が終戰後日本石油界の実権を依然として握つております。従つてカルテツクスはアメリカにおいてはスタンダードとテキサス・オイルとの五分々々の出資でありますが、元をたどればスタンダード一社と見るべきであります。これが今日の日本に進出している石油状態の概要の姿であります。彼らは出資するかわりにおれから原油を買えという專売を條件としております。従つて專売するところにサービスのよいわけはございません。これは人情からも当然だと思います。そこで今回の四日市問題は、相手にいわゆるまるかかえにならないで経営をしようというのであります。おざしきにかつてに好きな藝者を呼んでサービスさせるところに彼らの熱意が豊富にあるのは当然でございます。従つて原油の今日の供給状態がきわめて潤沢であり、熱意をもつてアメリカの五大石油が供給をしようと努力している事実から行けば、必ず安くなるのが当然であります。この安くなつ石油日本に入れて競争のできる生産能力の標準單位にある四日市を運転しますと、この一工場のあるおかげで原油を安閑として高値に自分の投資会社に売ることができなくなるのであります。なぜできないかと申しますと、幸いにして外資導入済みのいろいろの数社の石油業者の株主に日本人が半数以上あるからであります。東亜燃料は四五%でありますけれども、大体このくらいの株主がある。これは日本の株主総会において、この価格の不当に高い点を、四日市石油会社原油仕入れ値段を参考として追究してごらんなさい。これは重大なる重役背任問題として突くことができると私は思う。こういうふうで結局今度は逆に申せば、四日市外資導入済みにいたしますと、これはまるかかえの工場になりますから、外人の思う標準価格の最高の値段で売りつけます。そうするとどういうことになるか。これを牽制するものは何もありません。従つて、もちろん日本の内地でも、外国でもどこでもそうでありますが、標準価格というものは最高値段であります。しかし表面から追究すると、標準価格じやないか、それ以上売つていないじやないか、こう申します。ところが実際売買される相場というものは、サービスのいいものは、標準建値から必ず下を行く価格であります。その価格が相当なマージンがあるのであります。従つてそれだけ日本石油製品価格が高くなります。彼らに全部牛耳られて、そこで動力といい、熱源といい、ことごとく石油にまつておる状態から行きますと、国内価格が上る、上ることによつて海外輸出物資の価格が上昇する、従つて英米は世界のマーケツトにおいて日本と貿易の戰争をやる場合に、石油の原価だけ上げることによつて、彼らはそれだけ楽な戰争ができる。こういうこともわれわれは将来自由の通商になつたときに考えなければならぬ重大な問題だと思つておる。ことに石油に対する投資は、金融業者であるとか保險会社であるとか、金だけもうければいいという会社一つもありません。ことごとく相手は石油会社です。外資を導入してくれている会社石油会社です。そこで利益をとるという以外に彼らの石油の商略というものが加味されていることは皆さん十分含んでいただきたい。従つてこの石油を通して日本の物価の水準を上げ、国内の物価はともかく、国外に対して、輸出物資の値上りを来すように持つてつた場合に、われわれはある種の漂然たるものを感ずるのであります。何もこれは石油ばかりではありません。しかし有力なものになることはいなめないのであります。かような点から、かたがた私は民族資本において借入れをかりにいたすとしても、指導権を握られるごとき五分心々の出資などは絶対にやらないようにお願いしたい。ことに再軍備用の石油といたしましては、御承知通り安本計画では二十七年度は五百六十万トンであると言われております。しかるに現在の国内のワン・デー十万バーレルという生産で行きますと、国内原油を入れて約四百五、六十万トン、百万トン近いものが今日でも不足しておるのでありますが、現在の国内民間生産能力はまだ百万トン以上不足しております。しかし製油をやつておる民間製造会社はすでに生産能力は消費の割当数を上まわつておるのだと想像しておる人もあるやに伺つておりますが、これは我田引水でありますから、私どもは鉱山当局の数字が一番正確なものだと思います。かような状態のところへ再軍備用の油が加わるのでありますから、それらのことを考えてみましても、いよいよ再軍備ができたときの軍事機密の最も有力なものは燃料の貯蔵なり保有であります。これらの点を考えても、どうしてもこれだけの設備のものは、民族資本で一工場でも再軍備用に持つて行かなければならぬ。今民需においても今日百万トンという事実から行きましても、当然これを外資指導権にゆだねる理由はないと思うのであります。重ねて補足して御参考に供したいと思います。
  49. 今澄勇

    今澄委員 大体参考人の陳述を聞き大臣の話を聞いてみるに、この四日市燃料廠払下げの問題は、日本石油国策の上に立つ政府政策に一貫性を欠いておる。第二点としては、やはり日本石油外資一辺倒ではいけないと今御意見があつた大臣答弁はこれに対してまことに支離滅裂でありまして、何ら見通しがないと言われるけれども、私どもは白洲次郎氏を媒介に立てて三菱関係払下げ運動というものが相当熾烈であつたということも知つておるし、なおまた日本鉱業はその他の著名人を立てて五人委員会と折衝を重ね、いろいろ奔走されておることも新聞紙上に報道せられておる通りである。通産大臣はこれは業者自分のところに払下げてもらいたいための一片のデマを捏造したものであるという一片の言葉をもつて片づけられましたが、私はこの言葉を全石油業者に伝えて、通産大臣の言う、自分のところへ払下げてもらいたいために一片のデマを捏造したものなりやいなやということについても、当委員会としては取上げて十分検討すべきものであると存じます。  なお払下げの値段も、大蔵省の内田管財局長に聞きたいのでありますが、再三要求いたしましたけれども大蔵省からは本日はお見えにならぬようであります。これらの払下げの値段についても、これを一応十三億と定めあるいはさらにこれを再評価していろいろやり直して帳簿価格で五十億、さらに今度は現地に行つてというふうに、輿論の沸き上ると同時に漸次これらの値段が高くなつて来たことに対しても、私どもは非常な関心を持たざるを得ない。少くともこういう重大な国家的な問題と、さらには値段をめぐるところの一つの利権の問題と、二重の意味においてこの四日市燃料廠払下げというものは重大な問題である。  結論として私どもは公共企業体的な国家的な資本民間資本によるこれらの開発ということが望ましい、かように考えております。この問題は全般的な軍需施設払下げということよりは、石油という特殊事情のもとにおいてはこれは別のものである。全般的な軍需施設払下げ時価に比べてどの程度のものであつたかということも問題だが、そういつた国策とこういう払下げというものについては、通産省は何か一貫した方針を打ち出して、この方針によつて行くのだというようなものでもつくられたらどうかと思うのです。そういう一つ燃料国策あるいは繊維国策あるいは電力政策、鉱山政府等の大きな建前の上に立つた一貫的な方針通産省が打立てて、これらの問題を内閣に答申するということ以外には、国民の疑惑なくしてこういう問題をやり得る道はない。そこで委員長には、会をあらためて、通産大臣なり業者の代表なりの述べた言葉は速記録に残つておるのであるから、いずれが真なりやこれが対決と、国民に対する疑惑を解く道がどこにあるかという点において審議のやり直しをされんことを要求するとともに、通産省関係政府委員の方から私の述べた点についての概括的な御答弁を煩わして私の質問を終ります。
  50. 松田道夫

    松田(道)政府委員 お答えいたします。通産省自体として燃料政策をはつきり打ち立てることが必要だという御意見でございますが、私も同感に存じます。しからばいかなる燃料政策を持つておるかという点になりますが、これは先ほど大臣に御質問がございまして、あとではつきりいたすという御答弁がございましたので、ただいま私からそれを申し上げるよりは、大臣の御指示によりましてそれをはつきりさせたいと存じます。
  51. 風早八十二

    ○風早委員 時間も経過しておりますから、ただ一、二点だけ、これは東亜石油近藤社長にお尋ねします。近藤社長は四十年間も石油関係をやつておられ、専門的にも非常に深い方であられますので、私はこの際二、三お尋ねして、参考にしたいと思います。  まず四日市の海軍燃料廠をあなた方が確保し、これに補修を加えた場合におきまして、その能力というものは太平洋沿岸に今あります輸入原油の処理工場原油処理能力に対して、実際どのくらいの割合になるのであるか。これを実際の数字なり、割合についてお示しを願いたいと思います。
  52. 近藤光正

    近藤参考人 御質問生産能力の対比の点でございますが、先ほど申し上げましたごとく、半年間くらいの整備期間を要すれば、五十万トン。その五十万トンの第一期計画国内生産の率と対比いたしますれば、大体今日四百四、五十万トンに年間なるはずであります。それに対して五十万トンが加わるのでございますから、約一二%ぐらいになりましよう。それから第二期の整備をいたせば、百万トンになりますから、従つて百万トン対それ以外の四百四、五十万トンとの対比になりますから、約二割五分ぐらいになりますが、そういつたような数字になります。
  53. 風早八十二

    ○風早委員 あなたは、先ほど非常に重要な発言をざれたと思います。日本石油業というものが、ほとんど七八%も外資に握られておる。従つて原油処理能力も実質上はもう百パーセント握られておる。こういうような問題は、日本立場からいつてきわめて重大である。従つて今後の問題として、いたずらに外資導入をして、またまたその支配力を増強させるというようなことは、少くも日本人としては考え得べからざることである、こういう重要な御発言があつたと思います。ところで、実際問題といたしまして、この四日市の海軍燃料廠を確保し、きわめて近い将来に二五%まであなた方で確保し得る、あくまりでこれは日本資本で、日本の技術で、また皆さん方の日本の経営力で二五%を支配できるという場合に、それによつて他の外資導入下の、つまり外資支配下の能力に対し、その運営に対して、どういうぐあいにしてその牽制をし、かつ駆逐して行くか。こういう点については相当具体的な方策をお持ちであろうと思いますが、この点はどういうお考えを持つておられますか。伺いたいと思います。
  54. 近藤光正

    近藤参考人 外資導入下の会社を牽制する具体案に関しての御質問のようですが、先ほど私の陳述の中に申し上げてあるごとく、一番かんじんのことは価格の問題であります。価格は経済に及ぼすことが一番重大な問題ですから、従つて他の問題では牽制することが非常に困難と思います。一番かんじんな価格において、先ほど申し上げますように、原油の一種の供給に対する独占権を与えるがごとき投資の行き方はいけない。それをはばむことによつて、完全にいわゆるフリー・コンペンセイシヨンの状態において原油を入手できる。この仕入れの仕方を、独占させないで、世界市場に向つて自由にどこからでも買えるというコンデイシヨンを留保することによつて、私はかれらを牽制することができると思います。
  55. 風早八十二

    ○風早委員 あなた自身の会社に対しては、おそらくスタンダードだと思うのですが、ほとんどその支配下に実情はあると思う。こういう立場を考慮して、なおかつ他方において四日市払下げに対してそれに参加される。そうして今言われたような価格にしましても、また原油の供給独占権の排除にしましても、そういうような点について、相当有効な手が打てるというようなことを考えておられるわけですか、その点をもう一度。
  56. 近藤光正

    近藤参考人 あなたはおそらく私の会社を間違えておられるのじやないかと思う。私は東亜石油株式会社でありまして、スタンダード石油の五五%出資いたしておりますのは、東亜燃料であります。従つて私はスタンダードと何の関係もございません。
  57. 風早八十二

    ○風早委員 あなたの会社には外資は入つておらないですね。
  58. 近藤光正

    近藤参考人 入つておりません。
  59. 風早八十二

    ○風早委員 それで非常にすつきりしましたが、そういたしますと、日本石油業というものは戰前、戰時においては、どういう役割を持つたかということは、今さら申すまでもないわけです。また、戰後においては、日本の陸海軍にかわつて、主として米空軍の需要に応ずる役割がやはり支配的であつたと思う。これに対して、結局、同じく高オクタンのガソリン精製というような点が、今後日本石油業の重要なものになり、かつこれが外資を排除して進出して行くという場合において、その販路、市場というものは、具体的には大体どういう将来性を考えておられるのであるか、その点をなおつつ込んでお答え願いたいと思います。
  60. 近藤光正

    近藤参考人 四日市を起用した場合の販売の目標はどこに置くかという御質問でございますか。
  61. 風早八十二

    ○風早委員 四日市のみでなく、日本石油業の将来の販路です。
  62. 近藤光正

    近藤参考人 われわれ石油業者から考えますれば、国内の供給を潤沢にして、でき得べくんば日本国内の労働の全的活用をいたして、やはり紡績のごとく、原料を輸入して製品を国外に輸出いたしたいということを念願としております。またこのときある程度制約される部分は、南方、近東に近づくに従つて原油の産地に接近するのでありますから、自然われわれの輸出する区域は支那大陸とか朝鮮とかいう方面に制約されるのではないか、原油の出る場所、石油生産基地よりも遠隔の地に持つてつて販売する以外に販路は成り立たないのでありますから、それらの目標を期待しておりますが、しかし現状においては日本生産力は、将来の再軍備あるいは経済復興の民需の上から、とうていまだ輸出を考えなければならぬ段階ではないと思います。
  63. 風早八十二

    ○風早委員 輸出といいましても、輸出の相手方はごく手近にあるのであつて、現在ではこれが外資であろうとなかろうと、やはり高オクタンのガソリンが航空機あるいは戰車などに用いられるであろうということは常識上きわめて明らかだと思う。従つて現在においては主として米空軍、米陸軍の需要というものがこの生産物の市場である、こういうことが当然出て来ると思う。また現在そうだと思うのです。そういう点で、あなたはこの外資の支配という点を——ただその経営あるいは経営の利潤、こういういろいろな面について、結局外資のコントロールがもうほとんど圧倒的であるという点を非常に問題にされた。その限りにおいて私どももそれはよくわかるのです。しかしながらもしもその根本において、やはり米軍の需要というものがこれらの石油業の現在並びに将来の市場であるという場合に、どうも日本立場といわれるあなたの考えが少しばかりくずれて来やしないかということを私は印象づけられるのです。そういう点はどこまで一体考えておられるのか。将来米軍に対して日本自身の強大な再軍備ということをあなたは予定せられて、これを予定した上で先ほどのような御議論が出るのか、こういう点がもう一つはつきりしないのです。その点について御答弁願いたいと思います。
  64. 近藤光正

    近藤参考人 再軍備の規模の大小は私どもには專門外でわからないのでありますが、新聞紙上に散見する程度のものを目標にいたしましても、現在民需も不足だし、また巷間伝えられる程度のきわめて廉価な計画の全貌を対象といたしても、やはり国内生産の力というものがきわめて不足しているという事実に立つてあの四日市の設備は石油生産に使われなければならない、こういう基礎のもとにすべての主張が発しているのであります。また強力なる再軍備であるかいなかということは、従つてどもは何らこの考え方のうちに資料として考えてはおらないのであつて、現状においてなおかつ確実に石油生産一本に行けばいいのであつて、オイル・ケミカルその他石油を基本にした多角経営の広範囲な化学工業に、貧困な日本の世帯としてあれに金をかけてまでぜいたくな工場を興すことは根本的に間違つておる。人間が住む家がない。ちようど日本の商品に対して石油の自給というものが数量が少い。さような借家がないと同じような状態のときであるから、ひさしに人を入れ、座敷に二、三の人間を入れてもいいじやないか、貧困なりに現在の設備を全的に活用する、そういう計画にすべきだという点を今日において申し上げておるのでございます。要は、石油に集中してあの設備を復活する、数字的にきわめて不足の状態であるということが拠点でございまして、再軍備の構想いかんによつては今日なをさら必要であつて、われわれは現状だけでもきわめて不足の状態であるから必要だ。その必要ないわゆる効力のある、活用度のきわめて緊急性のあるもの、また日本石油行政というものが百パーセント外人の指導権にゆだねられれば、日本石油国策の自主性がなくなる、この点が私の主張の要点であります。
  65. 風早八十二

    ○風早委員 もう一点だけ伺いたい。私はこの石油というものが今どういうことに使われているかというその実際用途、言いかえれば石油の市場関係、そういう観点からまず出発いたしまして、それが今アメリカの軍用に主として供せられておることと、もう一つこの石油業が相当もうかるということとの二つですが、そのことと外資導入ということが不可分であるというふうに、今までの実質から見ますと考えられるわけであります。そこで今あるいは安全保障條約なりあるいは行政協定なり、こういう線が政府の一貫した線であります。経済的な面から見ましても、日米経済協力というのがまた一貫した線です。そうした場合に政府の、あるいはまた結局は通産省考え方からして、この四日市払下げについてはあなたの考えられているような民間払下げ考え方というものとは大分隔たりがあるように考えられるわけです。これは政府の一貫した今の政策方針から出て来ることだと思うのです。かりに民間だけに払い下げるといたしましても、その場合にはやはり三菱にしても、三菱ということは大臣は否定しておりますが、結局は外資と密接不可分に結合しておる。民間に払い下げるにつきましてもそういう会社へ払い下げる。言いかえれば現在のやはりコントロールを百パーセントそこで可能にするような形で払下げが行われる、こういう一つ見通しが今の政府政策からしては立つわけです。これに対しては、もちろんあなたは、先ほどの今澄君に対する御答弁では反対であろうと思いますが、しかしながら事実はそういうところに来ておると思うのです。ですから、私はあなたの発言は非常に重要な発言だと考えておるわけです。そこで時間もありませんから、それでは積極的にどういうふうにしたらよろしいか。あなた方は日本民族の資本として石油業を興そうとされる立場から四日市払下げ考えておられる、こういうことであろうと私は了承をいたしますから、その立場から具体的にはどうしてもらいたいという考え方を、われわれがこの問題について委員会としての判断をする場合において、これはぜひとも伺つておきたいと思います。また現在の法規その他についてこういう点が非常に障害になる、こういう点もお気づきでしたらあわせて伺いたい。あなたのいろいろな御要求というものを私どもはここで十分取上げたいと思います。
  66. 近藤光正

    近藤参考人 四日市の取上げ方につきましては、先ほど御質問の節に申し上げましたように、石油精製に経験を有する者にして、かつ出願する熱意のある者の共同体が私は望ましいと思うのです。むろん今日すでに数年間賠償指定物件にあげられた危險なものへの投資、この薄氷を踏むようなものに財産を投資して、国家に寄与しましたところの大協石油さんとか不肖私ども東亜石油であるとか、現在使用して国家に貢献のあつた者を加える。要するに競願者のうち現在の使用者並びに石油精製に経験を持つ者に対してコンポレートして、今日使用を許したらよいのではないか、これが私ども主張する案であります。  なおこまかく申し上げれば、現在すでに外資導入済みの会社は遠慮してもらいたい。民族資本石油精製業をやつておる者並びに現在使用しておる者で協力申し上げたらどうか、かように第一案として意見書を私は通産、大蔵両大臣に出し、前通産委員長小金さんにも出したことがあるのです。早くこの通産委員会で取上げていただきたいということは、昨年の九月十七日に私は通産委員長あてに出しておりますが、不幸にして半箇年間遅れた、さようなわけでありますが、今日の業界の競願をめぐつての動き並びに政治的、社会的な情勢考えまして、この重大な国民総力の犠牲によつてできた設備を将来活用するには、競願者のうちの全石油業者、現在の使用者を含めたものというように、範囲を広げてコーポレートするように、第二案でありましたがこれを第一案に置きかえて行くことが望ましいと考えておるのであります。  なおもう一つ具体的に申し上げてみますならば、先ほど大臣から逆に御質問があつたという、石油界の長老組五人で約半月前に出願の最終に出ました案が、すなわち私の以上申し上げる案と完全に一致しておるのであります。石油精製業者並びに現在の使用者をもつて、国策的な目的のためにコーポレートして運営すべきである、こういうことが根幹になつております。従つて私はこれに競願の皆さんが合流して、業界が一本になつて、しかも国策本意にこれを運営するということで、両院並びに官の了解を得て行きますれば、きわめて円満な仕上げができるのではないか、これは各方面でこれを使用した方がいいというふうに考えております。
  67. 風早八十二

    ○風早委員 最後の御発言ははなはだ矛盾もはなはだしいのではないかと私は思うのです。あなたの昨年の九月十七日に出された案に従えば、これは先ほどあなたが言われたその精神に合致しております。しかしながらこれは全石油業者となりますと、あなた自身が十分に認めておられるように、七八%も現にもう外資の支配しておるし、また実質上はもう百%以上もその運営の支配をやつておるという、すべての石油業者を含んでそういう出願をされることは、ただ自分会社も一枚割込みたいという商売上のことになるだけの話でありまして、むろんそれもあなたとしては別に無意義ではないと思いますが、しかしながら先ほどの真に外資を排除して云々と言われたことはおよそ縁が遠い実情になると考えられる。おまけに今後これらの外資支配が、全面的に四日市に及ぶことは当然出て来ることです。でありますから、先ほどの御発言と矛盾し、われわれははなはだ不満足を感ずる次第です。非常に動揺しておられるということが事実であるとすればやむを得ません。私どもは事実としてそれを承つておきます。すなわち大臣にこれについての所見をただしたい、この点は大臣が出席のときに留保して私の質問を終ります。
  68. 中村純一

    中村委員長 午前の会議はこの程度にいたし、午後二時より再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  69. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  臨時石炭鉱害復旧法案を議題といたします。この際本案施行のため出張中航空事故のため死亡した資源鉱害第一課長西尾善作君に対し、委員会を代表いたしまして深く哀悼の意を表します。なお本案審査のため栗田數雄君、三村保君、宮崎光次君を参考人といたし、その意見を求めたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 御異議なければさようとりはからいます。質疑の通告がありますから、これを許します。村上勇君。
  71. 村上勇

    ○村上(勇)委員 臨時石炭鉱害復旧法案に関しましては、地元の各市町村に非常な強い要望があるのであります。われわれはこの法案の急速な国会通過を念願するとともに、この法案によつて、非常な問題を惹起するという点について、十分な意見を聞いた上で、この審議に入りたいと思います。この意味において、ただいまの参考人としての三氏に、要点だけでも説明の聞けることは非常に有意義と思いますので、そのようにおとりはからいあらんことをお願いする次第であります。
  72. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 福岡鉱害対策組合連合会副会長栗田數雄君。
  73. 栗田數雄

    ○栗田参考人 私は福岡県の炭鉱被害による被害者代表の栗田であります。  公述に先だちまして諸矢生方に三審御礼を申し上げたいと存じます。福岡県の鉱害、いな全国の鉱害問題につきまして、さきの国会におきまして特別鉱害復旧措置法案を御制定いただき、また鉱業法の改正にあたりましても、いろいろと私どもに御同情あるお言葉、御決議をいただきましてまことにありがとうございます。さらに今回臨時石炭鉱害復旧法案がさような意味からここに提案されるに至りました点も厚く御礼を申し上げます。ただ私ども今からお願い申し上げたいと考えますのは、私どもに御同情ある土場からこの臨時石炭鉱害復旧法案が出て参つたのでございますが、この法案をつぶさに検討いたして参りますと、私ども被害者がこの法案自体をのみ込んで行くことは被害者として将来非常に困る立場に参るわけであります。被害者が不安な立場に置かれることは将来の石炭の開発にも非常な影響があるものと私は考えます。この意味から被害者の立場ということだけでなくて、一歩進んで将来の石炭採掘に対する大きな支障を来す問題としてお取上げを願いたいと考える次第でございます。  第一、私どもがこの法案に反対いたしますのは第七十三條から五條に至ります、一応の効用回復ができた後においては炭鉱の責任が消滅するということでございます。御承知のように、私どもは鉱業法の改正にあたりまして、一応原形復旧を主張しておるのでございます。今般ドイツ、イギリス等に政府その他から御派遣になりました方に現地の状況を承りましても、私どもは当然原形復旧がなさるべきだという主張を曲げないものでございます。しかるに現在の鉱業法が金銭賠償で、しかも金銭賠償の額が非常なわずかな額に制約をされておるように考えられます。そういうことであつて、制約されたところの金額で、効用回復はある程度の形をつくつてやると言われるだけで補償の打切りをされますと、御承知のように福岡県の鉱害は非常に厖大なものでございまして、全部つくり土をかえて農地の改良事業のようなことをやることはできかねるのであります。従つてボタを下に置いてある程度山上を持つて行く、あまりおもしろくない土でも一応置いて、ただ農業土木の上から鉱害復旧の面がなされておるということが多ついのであります。そういうことになりますと少くとも三年、五年はできません。実際私どもの知つておる嘉穂郡の一部では、山土ばかり入れておつて今日まで二十年の間まだほんとうの田ができないというような現実の面もあるのであります。それらのものがあることによつて、今回は修正されて三年以内という一つの特別の條章はできましたけれども、今申しますようなことから、やはり鉱害復旧である以上は、炭鉱の方に免責措置をとつていただくことは困ることであります。これを具体的に私が数字を申し述べてみますと、福岡県の賃貸価格は大体十九円五十八銭というように資源庁並びに農林省では割出されておるのでありますが、炭鉱地帶の今現実に被害を受けておるところの賃貸価格を調査してみますと、最低十六円から二十円の線でございまして、大体において十八円程度でございます。十八円にいたしますと、この法案によつて定められたところの二千倍ないし五千倍ということになりますと最高が九万円、最低が三万六千円で、平均しましても六万三千円でございます。ところがこれは田が全部陷落した不毛田にそれだけ出されることになるのであります。傾斜田はその傾斜の度合いによりまして、また炭鉱の負担が下つて参ります。少くとも実際の面では、これが五万円程度以下になるのじなないかということをこの法案を見て憂慮するものであります。法案自体の実施にあたりまして、より以上とることはなかなか困難であると思います。ところが一方耕地の復旧をする価格は、現在農林省で大体において反当十三万八千円を限度として国家がその半額を助成せられております。その十三万八千円で先ほど申しますように一応工事ができ上るのであります。山土を入れるとか非常に粗悪な土をもつて埋められておるという場合は打切り補償の場合で、これは政令で定められることになつておりますが、今資源庁なり農林省で構想を練つていらつしやる内容を承つてみますと、大体において表作で三万二千円程度、裏作でそれにまた加算されまして大体四万円程度でありまして、ほんとうに百姓から申しますと、稻のできないようなところに三年を期間として四万円程度で打切りがなされておるのであります。これは被害者とするならばいかに精を出して堆肥をここへ入れましても、少くとも八万円程度を——これは人によりますれば十万円以上を主張しておる人もありますが、私ども一応そういう線でなくて穏当の八万円と仮定するならば、十三万八千円に加うるに最悪の場合は八万円という金がかかりますから、二十一万八千円になる。二十一万八千円になるのに鉱山の負担が五万円そこそこであつて、はたしてその差額を政府に御補助願うことができるか。これは私ども一般耕地改良におきまして、農民の血の出るような金を半額出す場合において、政府に五割を出していただいておるのでございます。一方鉱山業者が炭鉱によつて相当の利益をあげられる場合において半額以上、要するに三倍の十五万円の金を御補助願えることができるだろうか。そういうことができないということが一応考えられるのでございまして、この点はやむを得ざる場合はともかくとしても、現在の法案というものは、これでもつて免責措置をとられることはわれわれ絶対でございます。  次はお手元に差上げておりますように、家屋、墓地等の非公共事業に対する措置でございますが、これはただ單に鉱山側と被害者との協議を行つて、中間の労をとつていただくことによりまして一時金を貸していただくことになつております。しかしながら私ども被害者としては、石炭増産のために常により多く犠牲を払わされているのでございます。家屋、墓地につきましてもさきにいろいろごらん願いましたように、戸障子がたたずにほんとうに困つております。それらのものが放任さつております。それらのものが放任されて、ただ単に通産曲調の裁定その他でもつて措置せられる、国からは何もいただかないということはまことに被害者としては困るのでございまして、これは県並びに市町村連盟の方でも強く主張せられる点でございます。  次は県並びに市町村に関しまするところの負担でございます。これらのものが三つの條項において取上げられておるようでございましてすなわち農地及び農業用施設の復旧の一部を負担させられる場合と、それから事業団に対する地方公共団体の負担、さらに鉱業権者が不明である、あるいは資力がないという場合において、市町村並びに県がその額を負担しなければならぬ。県も市町村もともにこれは被害者でございまして、それだけの余力はない、こういう意味から県並びに市町村と同様私ども被害人としてもいわゆる税を負担する者として反対せざるを得ないのでございます。  第四におきまして七十八條でもつて一応復旧計画によつて工事をやるのだが、それができない場合においては復旧の不適地として除外する、その土地はそのままほつたらかすというようにできております。こういうことになりますと先ほど私ども数字をあげて申しましたように、一定の金額に制約されておりますと相当厖大な土地が不適格地として将来放任されるのではないか。要するに炭鉱のできまするところに地上権を持つている農民は将来どこに行くか、何に生業を求めるかということになつて参りますから、こういうものが濫用せられるということになれば、将来鉱業権の設定にあたつて、被害者は断固これに反対をするものと考えております。これらの問題は、最後においていかなる場合でも、被害者が納得の行く線でやられるならばともかくも、今回の法案によりましては、農林大臣通産大臣の政令によつて、不適格地として認められて打切り補償のうき目にあわなければならぬ、かようなことになるわけでございます。私ども被害民といたしましては、被害民自体の現在の苦境はもちろんでございまするが、将来の石炭鉱業権設定等にあたりまして、この法案がもしこのまま成立するということになれば非常な支障を来すということで、今川上京して参つて先生方にお願いしておる次第でございます。はなはだ簡単でございますが、これで終ります。
  74. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 ほかに参考人から何か補充することがございますか。三村保君。
  75. 三村保

    ○三村参考人 福岡県の被害者代表の三村でございます。本日参考人として諸先生方に意見を聞いていただくことになりましたことにつきましては、厚く感謝申し上げます。ただいま栗田代表から説明がありましたから、おわかりになつたと思いますので、私が考えてほかに気のついておるところだけ敷衍させていただきまして、御参考にしていただきたいと思うのであります。  この前鉱業法の審議されますときに、被害者が最も憂慮しておりましたのは、百九條の賠償規定であつたのであります。当時、栗田代表も申し上げましたように、われわれとしてはどうしても原形に復旧していただきたいというのが希望でございましたけれども諸般事情上、どうしても対価で賠償するよりほかしかたがないというようなことで、鉱業法が一応成立を見たようにお伺いしておるのであります。ところがその鉱業法の成立しますときに、これでは被害者側をほんとうに救うことはできまい、何とかして被害者側を救つてやりたいというようなお気持から、国会におかせられましても、附帶決議をしていただいたのであります。従つて被害者側といたしましては、この附帶決議が実際に行われる場合には、鉱業法の百九條の賠償規定の不満はそれによつて救われるということを非常に期待しておつたのであります。ところが今度出ました一般鉱害の復旧と申しますか、臨時石炭鉱害復旧法案を見せていただきましたところが、賠償の規定が、鉱業法に規定せられておりますところの百九條の範囲内で復旧しようというようなことになつておるようでございます。従つて被害者が当初期待しておりました対価賠償以上の線には少しも出ていない。それのみか石炭鉱業権者が当然負担すべきところの賠償責任を事業団に転嫁しておる。今度の場合は、賠償の責任は事業団にあるというふうになつております。鉱害の未回復分についても、事業団が一応賠償するために、被害者としては炭鉱側にこの実際の苦痛を持ち込むことができないというようになつておるのでありまして、この点について栗田代表の申しましたように、賠償打切りということは被害者側にはたえられないところでありますので、ぜひとも修正をしていただきたいと思うのであります。  それから家屋関係でありますが、七十九條から八十六條にわたつております。一応基本計画が設定された場合に、その基本計画内の家屋所有者は、これを復旧する場合、一応通産局長の許可を受けなければならないというようになつております。炭鉱のために被害を受けてそれを復旧してもらうのに、何がゆえに通産局長の許可まで受けなければならないかというようなことを考えております。  その次に、鉱害で家屋がいたんだものを復旧する場合に、より以上にきれいになつた場合には、被害者がその受益した分については負担しなければならないとなつておりますが、これは鉱害以上にきれいになつて行く場合には、その費用は当然被害者が負担すべきであります。しかしその半面鉱害を復旧するために、家屋を被害者側は一応明けなければならない。ある場合においては営業を停止しなければならないという状態にあるのでございますが、被害者側が受益した場合は、その受益分については費用を負担しろ、こうなつておりますけれども、反対に被害者側が不利益の場合には何ら規定されていない。少くとも被害者側にこういう負担する分をはつきりする以上、また鉱害を復旧するために特に著しく被害者側が損害山を与えられた場合には、当然炭鉱側としてもその分に対して、補償することを規定していただきたいと思うのであります。あとは栗田代表の分と重複しますので、これで終らせていただきます。
  76. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 宮崎光次君
  77. 宮崎光次

    ○宮崎参考人 本日参考人としてこの席に選ばれたことを厚く御礼申し上げます。と同時に今度の臨時石炭鉱害復旧法案という弱い者のためにならなければならない法案が逆になつているということを憂えまして特にこのたびのこの法案につきましては、先生方の絶大なるお骨折りをお願いしたいと考えております。前代表が申しましたごとく、打切り問題とか、かれこれこの法案にありますが、この法案をほんとうに弱い者を助けるという意味の法案にしていただきたいと思います。実際現地におきましては、毎日のごとく社会問題が勃起いたしまして、われわれは農民の指導者として実に感慨無量なる点があるのであります。ここでそういうことを一々取上げて申すべきではございませんけれども、実際の面にあたりましてほんとうにわれわれ世の中を憂えるようなことが起るのであります。この点も一応御研究してくださいまして、この法案に限りぜひ弱い者を助けるという線をもつて愼重にお考え願いたいと思います。簡単でございますが、私どもの意をくんでいただくように切にお願いいたしまして参考意見を終ります。
  78. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 ほかにお質疑はございませんか、1別にないようでありますから、本日はこの程度にいたし散会いたします。  なお参考人の各位に対しまして、当委員会に対し率直な御意見を開陳していただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  次会は明二十二日午前十時半より開会いたします。     午後三時十二分散会