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池田国務大臣 ポンド
対策につきましての先般の措置につきまして、かなり誤解があるようでございますから、
ちよつと申し上げておきたいと思います。
昨年の日英協定をいたします四、五月ごろからの状況をたど
つてみますと、一昨年の暮れには、
日本の手持ちのポンドは千九百万ポンドで、向うからポンドを借りなければや
つて行けない、こういう状況であ
つたのです。そこでわれわれも苦労してイギリスの方からポンドを借りました。そういう
状態であつた。これはドル・クローズの問題等がありましたので、そういうことも起
つたのでありますが、日英協定によりましてドル・クローズをのけましてからの
日本のボンドのあり高というものは、昨年の暮れには一年前の千九百万ポンドが七千五百万ポンドになりまして、今は一億ポンドになんなんとする
——日英協定のときにまあ五千万ポンドぐらいは
日本は持
つてもいいけれ
ども、それ以上は持たぬ、こういうので協定の根本にしたのでありますが、遺憾ながら七千五百万ポンドとなり今では一億ポンドなんなんとしておる。しかもポンドはドルに対して、スターリングとは名前だけで、ノン・スターリング、弱いです。一ポンド二ドル八十セントが、御
承知の
通り二ドル三十セントないし二ドル二十五セント、一割八分から二割のやみで低下であります。このときにポンドが
日本にたまり過ぎてドルが不足では困るから、私は通産省にとくとポンド
対策を講じろと言いましたら、内輪を申し上げますが、それなら
金融措置でや
つてくれというのが通産省、そこで私は大蔵省の職員に、
金融措置でやれ、輸出を制限するということは愚の骨頂だ、
金融措置で一応やらなければ国際信義の上からい
つてもよくないといつたときに、大蔵事務当局は
金融措置でやるべきでない、制限すべきだということで、きつく私に反対をした。お前ら何を言うかというので、一、二箇月待ちましたが、昨年の暮れに今の信用状の六箇月というものを三箇月に縮めようとした、その下相談が漏れて、大阪ではたいへんな騒ぎを起した。そこでこれはうつかりよその省には相談できない。それから私の方の事務当局にもお前らは輸出制限とかいわずに、
金融措置を
考えなければ、おれが
考えるというので、私が案をこしらえまして、そうして金曜日の閣議に私は重大事項として私の
意見を発表した。全部の閣僚は
賛成されまして、それで行ごうということになりました。そこで私は閣議の決定を受けまして、それから通産次官、並びに通産省の事務当局へ通した。
大臣も
賛成された、君らどうか。それで通産省に
個々の問題につきまして私が折衝に当つた。そうすると通産省は、いや
金融措置よりも今度は逆に輸出制限をやるから、
金融措置を待
つてくれと言い出した。
金融措置は待てないが、それでは君の方で輸出制限をするまで、
金融措置はある程度まで待とう。しかし一応手を打
つて、それから君らの方の輸出制限ができたならば、
金融措置をだんだんゆるめて実態に沿うようにしようということで、私の独断でしかも閣議の全部の了解を得てやつたことなのです。通産省も大蔵省も何もありません。私は
大蔵大臣でありましても通産
大臣をしたこともあります。通産省、大蔵省、農林省もない、
日本の国がよくなればということから生み出した。事務当局なんかに相談しますと、ここで事務当局を悪く言うかもしれませんが、ああじやない、こうじやないとい
つて、まとまりがつきませんから、私が独断でや
つたのであります。この処置につきましてイギリスがどんな手を打
つて来るかということを見ておりましたが、マンチエスター・ガーデイアンも、
大蔵大臣のやることはやむを得ぬだろう
——イギリスは私の
考え方に納得しておりまして、私は大なる失政とは思いません。こうやらなければ、
日本の外貨、
日本の
経済が変なところへ持
つて行
つてはいかぬという、ほんとうの赤心からやつたことでありまして、セクシヨナリズムでも何でもありません。通産省も、通産
大臣まずも
つて賛成した、事務当局も了解した、こうぽんぽんとやらなければ、ぐずぐずしてお
つてはいかぬ今の国際情勢でありますので、こういう手を打
つたのであります。しかしてああいう措置をとりましても、鉄の輸出にしましても、私は十万九千トンの分を、夜の夜中に次官からかか
つて来ましたから、それはよかろう、七万トンぐらい出すのはよいだろうと、夜の夜中に返事をした、病気で寝ているときでした、こういうような
対策を講じておるのであります。
そこで今後のボンドの問題につきましてどうするかという問題。
日本の
大蔵大臣がボンドの問題をどうするかという前に、イギリスのバトラーがわれわれが二年前にやつた
日本の政策を踏襲しておる。
日本の自由党内閣の政策を、私の政策をバトラーは、ならつたとは言いませんけれ
ども、私が二年前にやつた
通りの政策を今や
つている。ボンドを強くしようと非常な
努力を
拂つておるのであります。補給金を減して、食糧の補給金を減して、そうして中産階級以下の人の
税金をまけた。二年前の私のやつた政策
通りをや
つております。そこでイギリスがどういうポンド政策をとるかにより、
日本としてもイギリスの
経済復興には協力いたします。今も総理と話したのですが、バトラーは吉田総理と非常に懇意です。総理が大使をしておるときに
大蔵次官だつたとい
つておりました。非常に協力して、ボンドが非常に強くなることを望んでおりますが、今までのように弱いポンドを押しつけがましく
日本に持たされてはこれはいけません。だからポンドをほんとうに強くして、将来のポンド地域に対する
日本の発展を
考えるならば、あれくらいのことは朝飯前だ、まだまだ強い手を打つかもしれません。私は好んで強い手を打とうとは思いません。いろいろな
関係を考慮しながら、各省の協力のもとにりつぱな
日本を立て、そうして世界がお互いに立
つて行くような手を打つべきだ、こう
考えて私は失政とは思
つておりません。イギリスも納得しております。こういう
考えで行
つておるわけでございます。事務当局間の内輪話を申し上げて恐縮でございましたが、事柄はこういうふうにな
つておる。私は
日本の
経済、
日本の信用を守るべき立場にあります
関係上、
大蔵大臣として通貨
関係に対しまして当然の処置だと今も確信を持
つておるのであります。