○
風早八十二君
懲罰しようとしている人が、このようにあわててお
つてはしようがない。なぜ君はそんなに急ぐのか。どうも
妨害が入
つて、ほんの一分間で済むのです。一言その点だけを明確にしておけばいいんです。
私が
発言の停止を命ぜられたときは、私がまさに
中川君の
発言の
内容に対して、特に
反駁を試みているときなんです。
中川君が、私の言
つたことが
虚構と
捏造であると
言つておりますから、私は、これが
虚構と
捏造ではないと言うために、実際実証を試みてお
つたわけでありまして、これを
一身上の
弁明と言わずして、
一身上の
弁明はない。
従つて、そのまつ最中に
議長がとめられるというそういう措置は、明らかに不当なる
発言の
制限であるということを私は申し上げたいのです。そういうことが、この際この大事な
懲罰委員会においてないように、これは私は特に
委員長初め
懲罰委員各位に申し上げておきたい。それがわか
つてもらえば、私はこれからいくらでも
一身上の
弁明をいたします。
大体
中川君が一昨日
懲罰動議の
趣旨を
弁明されました。また今日はその
速記がここに提出されておりまして、私は、厳密にこの
速記に従いまして、
中川君の摘発のその
内容につきまして逐次
反駁をしたいと思う。もちろん私としても最大限の努力をして、簡潔にその目的を属したいと思います。しかしながら、何分にも非常にこれは厖大なものでありまして、そう十分や二十分で簡単にこれを上げろということを言われましては、これはあらかじめ
発言を
制限されることになりまして、その点は、今非常に時間が切迫していると言われますが、事非常に重大でありますから、あらかじめお断りしておきたいと思います。
故意にこれを引延ばすということは毛頭ないことを、十分に私は断言しておきます。
まず「
風早八十二君の
質問内容は、
虚構と
捏造に終始し、荒唐無稽の言辞を弄して、
国民をして
故意に
警察官に対する
反抗心を助長したること」こういうことがあるのでありまして、これが
中川君の
趣旨弁明の非常に重要な部分をなしております。つまり私の申したことが
虚構と
捏造であると言う。
従つて、とんでもない話、私の申したことは絶対に
虚構と
捏造ではなくして、厳然たる、しかも万人の認める事実であるということを、私はこれから申し上げようと思います。
この
虚構と
捏造ということでありますが、たとえば、ここに「
風早君は、これを称して
政府の
━━━━行為となし、苦痛を訴える
大衆に━━━━━━━━━━━━━━━━ほしいままにした云々と、品から出まかせを並べた上、━━━のか、
国家警察も、予備隊同様、
━━━━━━━━━━━━━━━云云と、出たらめを並べている」こうあ
つて、これが
つまり虚構の具体的な
内容として、ここにあげられておるのであります。そこで私はこの点につきまして、これが厳然たる白昼行われた事実であるということを、これは当然
弁明として申し述べておきたいのであります。この点に関しましては、すでにここにも
アサヒグラフがありますが、この写真を見てもわかられる
通り、いかにひどいことを
警察官がや
つたかということは、もうここに歴然と証明せられております。これを私は
立証物件
として提供したいくらいなのです。
これを実際に裏書きすべきものとして、これは「
世界」という
雑誌の七月号でありますが、この中に
梅崎春生君という、これは
文学者でありますが、この人が「私はみた」という題目のもとに、あたかも
メーデーの
人民広場の
事件を目撃した、そのルポルタージュがここに掲げられておるのであります。
その中に明らかに
梅崎春生君は
言つておる。これはごくほんの二、三点だけをあげておきますが、「
デモ隊の右側をかけ足で走り抜けた
警官隊は、
警棒をふりかざして、斜めに
デモ隊に殺到した。私はあの一瞬の光景を、忘れることは出来ない。ほとんど無抵抗な
デモ隊(
一般市民も相当にその中に混
つていた)に向
つて、完全に武装した
警官たちは、目をおおわせるような獰猛な
襲撃を敢えてした。またたく間に、
警棒に頭を強打され、血まみれにな
つた男女が、あちこちにごろくごろがる。頭を押えてころが
つた者の腰骨を、
警棒が更に殴りつける。そしてそれを踏み越えて、逃げまどう
デモ隊を「追つかける。私は
鉄柵の外側だ
つたから、一応の
安全地帯にあ
つた。私はつぶさにその
やり方を見た。
警官隊の
襲撃は、なかなか組織立
つていて、日頃の
訓練を充分しのばせた。
警棒は、立
つているものに対しては、必らずその頭部をねらう。
デモ隊に後頭部の
負傷者が多か
つたのは、逃げて行くところを、背後からねらい打ちされた為だ。倒れている者に対しては、腰部又は腹部をねらう。そこをなぐると動けなくなるということを、彼等は充分に知り、またその
訓練を経てきたに違いない。
デモ隊の散発的な反撃にくらべて、
警官たちのその
やり方は、その非人間的な獰猛さにおいて、圧倒的であ
つた。」「私の見た限りでは、最初に
暴力をふる
つて挑発したのは、明らかに
警官側であり、「組織された暴徒」とは、
デモ隊のことではなく、
完全武装のこれら
警官隊であ
つた。」こういうふうに、きわめて明確な形でそのときの実情を表わしているのであります。「
鉄柵を乗越そうとする時、あぶなく
ひつぱたかれさうになつた。ころがるようにして逃げた。
一般市民の女までが、殴り倒されているのだから、俺は
デモ隊員じやないと
言つても、それは通らない。狂犬みたいに、手当り次第
飛びかかつてくるのだから、逃げるより他に手はないのである。」こういうようなことも書いてあるのであります。ピストルの
発射につきましても、「私
たちは初め、あれが
実弾発射の音だとは、夢にも思わなか
つた。
発煙筒の栓か何かを抜く音だろうと思
つていた。
日本人が同じ
日本人を撃つなんて、とても信じられなか
つた。」若い婦人がひどくやられて、「松の根元に身体をくねらせ、もだえながら、「
お母さん。
お母さん」と若い女が号泣している。煙でやられ、そこを
警棒で打ちのめされたのだ。それを
看護隊の人達が、かつぎ上げるようにして、
手当所に連れてゆく。」というふうな
記事もあるのであります。「もうその頃は、
乱闘発生から二時間以上も経
つていたので、
デモ隊以外の
一般市民や
通行人たちも、明瞭な反
警官気分を持
つていた。」
警官に対する非常な
反感を持
つていたということであります。「鉄兜、
警棒を持たない者は、全部敵に見えたのだろうと思う。
孤立感のようなものが、たしかに彼等を烈しくいらだたせていた。」こういうふうに、ずつとたくさんありますが、私が
ちよつとラインを引いたところだけを申しましても、このようにこれはま
つたくわれわれとは何の
関係もない、縁もゆかりもない
梅崎春生君という一
文学者が、「私はみた」というその見た形で書いておるのであります。このようなことは、その前後を通じまして、あらゆる
新聞記事を見れば、どなたもこれは認めざるを得ない事実なのでありまして、私はこの事実を事実としてここにあげたにとどまるのであります。
さらに
警察官に対する
国民の
反抗心を助長したと言われますが、この
警察官に対する
国民の
反抗心というものは、これは
警察官のその行状、
警察官の行動の事実によ
つて生ずるものでありまして、
従つて、実際に
警察官にひどい
暴行を受けている
人たちはもちろん、それを目撃した
一般国民の間から、これは自然発生的に生じている
感情であります。私があおるとあおるまいと、そういうことと何ら
関係がない、私はさらにこの
警察官に対する
国民の
反抗心をあお
つたものではないのであります。そういう、
国民がいかに
警察官を見ているかということについては、これも幾多ここにその実際を申し上げることができるのでありますが、これもほんとうに簡単にするために、一の
実例にとどめておきます。これは
皆さん御
承知の改進党の
同僚議員小林運美君のむすこさんでありますが、これが渋谷でやはり
警察官に非常な
暴行を受けている。
小林君
自身が
言つておりますが、
学生証を見せていくら言訳をしてもむだだ、髪の毛をつかみ、
皮ぐつで数回向うずねをけられた。まだほかの
新聞には相当詳しく出ておりましたが、こうい
つたようなことがあが
つておるわけです。これに対しては
鈴木警察署長は、あの際多少のことはやむを得ないと思うようなことを
言つて、あとで取消すようなことも
言つておりますが、こうい
つたように、
警察官が非常な
暴行を
一般大衆に働いておるということは、このごろはもう
日常茶飯事であ
つて、ほとんどこれは当然のうつかり
警察官のそばを
通つて、
警察官の目と視線でも会おうものなら、すぐこれを不審尋問するというふうな事実もあるということを、われわれは聞いておるのであります。非常なこのごろは
暴行をほしいままにしておる。
さらに
暴行だけじやない。最近の五月三十日の
事件を見ましても、その他その前後のいろいろな
デモに対するその
やり方を見ましても、人間一匹を射殺することなんか、このごろは朝飯前にな
つておる。こういうきわめて凶悪なる
暴状が、
警察官によ
つて繰広げられておるのであります。これに対して、
警察官に対する
反感が起らないのがふしぎではないかと思う。事実そういうことを
言つておる
記事もあるわけなんです。これは朝日
新聞の五月十二日号でありますが、その「声」の欄に、「最近たびたび起る
警官との
乱闘事件で、
警官の
暴力行為が一向責められないのは不思議である。」単にたまたまその現場近くに居合せたために
警官になぐられたり、けとばされたりした民衆が何の保護も受けず、その
暴行警官が何の制裁も受けないということは、憲法の
基本的人権論を持ち出すまでもなく許し難いことである。」
といつて、
警察官に対する非難をしておるのであります。
こうい
つたようなことは、やはり最近早稲田のあのきわめて穏健な、しかも無抵抗な
学生に対して行われた
警察官の目をおおうべき
暴状、あの
事件におきましても、
一般に今まで
学生を取締るといわれてお
つた学生課長という人までが、その
暴行をみずから受けてみて、初めて、なるほど
警察官というものは今日ひどい役割を演じておるのだということがわか
つたというので、これに対する非常な
反感を持
つているというぐらいでありまして、これは今日だれがこれをあおるとかあおらないとかいう問題じやない。
警察官自身がや
つておるその
行為から、当然に生れて来る自然的なこれは
国民感情なのであります。この点は一点の疑いのない事実なのでありまして、私はこの事実をあげて、
警察当局、並びに
警察を実際に
使つてあの弾圧をやらせた
政府治安当局に対しても、
抗議の
質問を試みたものにすぎないわけであります。
さらに
中川君の
弁明の中で、引続いて「
内外に及ぼしたる甚大なる
悪影響」ということを非常に問題にしておられます。「
独立早々のわが国に
一大汚点を印した」と、こういうことを
言つておる。しかし私は、ここではつきりこれに対して
反駁したい。
一体「
内外に及ぼしたる甚大なる
悪影響」というが、
内外の
一体だれに及ぼしたこれ一
悪影響であるか、この「
内外」という
意味が私は問題であると思う。少くともわれわれ が実際に公然と毎日見ておるところの、
新聞雑誌で目撃したその
内外の輿論を見ましても、これは少くも二つにわかれておる。これに対し非常に
戦慄を感じたものもあり、その論調もあることは否定いたしません。
かしながら、それはどういう部類のものであるか。いうまでもなく、この場合の
内外というのは、アメリカの
帝国主義者、その
戦争火つけ人、こういう連中を初め、
内外の
反動勢力、こういうもの、平和を最も恐れておるところの
勢力というものが、これが非常な
戦慄を感じて、これではもう
自分たちの足元もあぶないというような危惧の念を抱いて、それを吐露しておるということは、これは事実としてあります。
従つて、もしも
内外に甚大な
悪影響を及ぼしたと言われる人は
——この
提案者としては、こういう
内外の
反動勢力、
内外の
帝国主義者、
戦争屋、こういうものが恐れておるところの
戦慄と同じような
立場に立たなければ、こういうことは言えないことであると私は考える。
その
反対に、
内外に及ぼしたきわめて
悪影響でない、好影響があるのであります。
世界の
平和勢力、これはあながち
ソ同盟やあるいは中華人民共和国の
国民大衆だけを
言つておるのではありません。イギリスにおきましても、またアメリカ
自身につきましてもへその労働者階級としては、日本のあの
メーデー事件についてどういう
一体批判をしておるか。これもやはりり
——これはそうたくさんの数はないのであります。つまり外電が非常に限られておりまして、枚挙にいとまないというもわけではないが、ずいぶん出ておる。ことにインドのごときは、この
事件に対しては、これはもうま
つたく直接にも
警察官側のあれであるが、アメリカ占領政策、アメリカ占領制度、こういうものが七年の間や
つて来たその実に正し民地的な搾取と強圧、これに対する
国民の
反感が一時に爆発したものであ
つて、
従つてこういうような政策、制度が続く限りは、今後もまたこれは当然起るべきものである。こういうことをはつきりと、たとえばヒンドスタン・ガゼットでありましたかも
言つておるし、また同様に、そのときの同じ日付で、同じ
新聞紙上に伝えられてお
つたインドのもう一つの
新聞も
言つてお
つたのであります。
私はこのような
内外の声を十分に古く評価するがゆえに、これはまた日本の事実と確実に合致しているがゆえに、これを私はこの場合に援用して、私の
抗議的な
質問のその建前に置いたのでありまして、それ以外の何ものでもない。
従つて、
内外に及ぼした甚大な
悪影響と言われるが、それは
悪影響どころか、こういう
人たちとしては、一日本の人民
大衆もやはり魂がある、
日本人にも魂がある、今まで
日本人は腰抜けだと思
つてお
つたが、しかしながらやはり
日本人もいよいよ立つべきときには立つんだ、日本の民族の独立のためには、遂に日本民族も立ち上ろうとしておる。この日本民族の真価を
世界に知らしたという重大なる、きわめて重要な歴史的な意義があるのであります。そういう点をま
つたく問題にしていないと思うのであります。「これが
内外に及ぼしたる甚大なる
悪影響」と言われるものは、ま
つたく見当がはずれておる。見当がはずれておらない言われるならば、日本の
メーデー事件に対して悪評をしておるところの外国の
反動勢力、また
帝国主義者、
戦争屋、こういうものとま
つたく同じ
立場に立
つておるということ以外の何ものでもない。
さらに、「
独立早々のわが国に
一大汚点を印した」と言われますが、これは
一大汚点どころか、日本民族というものの真の独立的精神、こういうものが初めてここで示されたのであります。
一大汚点ではなくして、むしろ光輝の一ページ、日本の輝かしい一ページをこれは現わしたものであるとしか考えられない。
「前代未聞の不詳事を招来したることは、まことに遺憾でありまして、」と言われておりますが、その遺憾ということの
意味につきましては、これも結局その二つの
立場、すなわち日本民族の解放というものを恐れる
立場、日本民族をどこまでもアメリカ
帝国主義者の下働き、その奴隷にしておくことに利害
関係を持つ
人たち、こうい
つた人たちにとりましては、これはまことに遺憾なことであるかもしれない。しかしながらその
反対に、あくまで日本民族の独立を身命を賭しても達成しようと念願し、かつそれを実行しようとしておる
人たちにと
つては、これは遺憾どころか、初めて
自分たち自身の力を知
つた、官分
たち自身も、この暴逆に対してただ黙
つておるのではない、これに屈服するのではない、これに抵抗するということが可能である、また有効であるということがここで示されたというように、二つの
立場がここに明確にされたということを
意味するにすぎない。しかもその
立場たるや、一方はもう足元がくずれかけておるし、片一方はこれからいよいよ日本を真日本に築き上げて行こうという、前途洋々たる
立場にあるのだから、われわれはこの日本の真の民族的発展の
立場に立
つて、これは遺憾どころではない、とんでもない話である。われわれはこれをまことに迷惑であると考える。
「その責任は、一にかか
つて、背後からこれを使嗾扇動したる日本
共産党にありと断ぜざるを得ません。」こういうことでありますが、もし
共産党がここで何らかの役割があ
つたとすれば、それはきわめて名誉を負うべき役割でありまして、これに対して責任とかなんとか、何らそういうことではないのであります。こうい
つたことは、この
提案者というものが、みずからの
立場、ま
つたくアメリカ
帝国主義者の買弁になり下
つておるところの
立場を、ここでただ
自己暴露したにすぎないのであると、われわれは断ぜざるを得ないのであります。
〔「アメリカの犬ども」「何だ、ソ連の小使ども」と呼び、その他
発言する者多し〕