○青木
説明員 私、青木国家公安委員であります。
警察法の
改正につきましては、先ほど来問題にな
つております国警
長官の任免権並びに警視総監の任免権を
政府が持つということは妥当でないと思
つております。その点を
ちよつと申し上げたいと思うのですが、まず警視総監は、これは今度の
法案の精神としまして、警視庁を完全な自治体でない取扱いをするということ、これはまことに妥当なことだと思
つております。それは東京都には
国会がありますし、
最高裁判所がありますし、あるいは各般の行
政府がありますし、宮城がありますし、外国大公使館がありますし、外国使臣の住居がある。経済、文化の
中心であるのみならず、さような特殊な性格がありまして、その東京都が單なる自治体の
警察でその治安を守るということは、国としてまことに妥当でない。国としてたくさんの責任を負うべき問題があるのであるから、
従つて單純なる自治体
警察でない特別な取扱いをするということは、これは当然であると
考えております。なおこの点につきましては、世界各国におきましても、その国の首都は決して單純なる自治体
警察にまかしておかない、こういう慣例にもな
つておりますし、また東京都だけが現在完全な自治体の取扱いにな
つておりますことは、何としてもおだやかでない、妥当でないと
考えております。ただしかし、その
長官の任免権は、これは後ほど
ちよつと申し上げたいと思いますが、これはやはり国警
長官の任免権と同時に、総理が直接持つことが妥当でない。国警
長官の任免権はどうしてそれじや総理が持つことは妥当でないかと申し上げますと、元来、先ほど法務総裁から
お話がありましたように、もし非常なお互いに善意な人間同士が、そうして神のような良識を持
つてお互いに反対党なり、
政府を組織しておる場合には何ら心配ないのでありますが、ともかく現在の政治は
政党を
中心としたいわゆる
政党政治でありまして、しかも
議会が最高であ
つて、
議会の上には何もない。過去におきましては、法制上はいろいろ問題があるかもしれませんが、天皇の大権もありますし、あるいは元老のような存在もありましたし、ともかく何らか特別な存在があ
つて、
議会を
制肘するものがあ
つた。にもかかわらず、それでもなおかつ
議会の腐敗というようなことに対して、一部の者の不満を買いまして、軍部フアッシヨを起したにがい経験を持
つております。しかも
政党政治においては、
選挙が非常に大事な問題でありまして、そうすると多数党が
警察の
長官の人事権を持ち、多数党の
政府が
警察の
長官の人事権を持つということは、その
警察の
長官を通じまして、一切の
警察署長の人事権を持ちますから、そうしますと、かりにそういう心配がなくても、非常に公正なことをしておりましても、反対党から見ましては、
選挙に有利な形をした
警察署長の
取締り権までと
つてしま
つて、どうして反対党がこれに対して言論戰をも
つて公正な争いができようというような不満を抱かせまして、そうして言論にたよるより、何らかほかのものにたよらなければならぬというというような
考えをもし抱かせるようなことがありましたならば、まことに残念なことでございます。そういう李下の冠、瓜田のくつというような心配のある制度を何も立てる必要はない。さようなことをしなくても、治安の維持さえできるならば、そこまで行く必要はないと
考えるのであります。そうしますと、国警
長官の任免権を
政府が持つだけのことによ
つて、非常に失うところが多い。もし
政府が任免権を持たなくても、何らかの形で発育をしまして、
政府の
意思の発表ができるならば、さような大きなマイナスをする必要はないじやないかと私は
考えるのでありす。なお
政府が
長官の任免権を持ちますと、先ほど申しましたように国警の人事一切に対する支配権が握られるということになりますから、外国から見ましても、
警察国家
——日本の
一つの象徴としまして、すぐ批判されます
警察国家というような言葉で見られるおそれがります。さようなことから
考えますと、内外ともにこの際実利の少いことでございまして、これは差控えたがいいんじやないかと
考えて、それならば任免権は国家公安委員会に與えておいて、單に御相談にあずかる、あるいは承認を與えるというような何か消極的な
意味合いにおいての発言権を、お持ちになることがいいじやないかと
考えておるのであります。
なお警視総監につきましては、警視総監の任免権は、自治体を主体として
考えますと、特別区の公安委員会が任免権を持つ。そうして総理の承認を得るなり同意を得るなりという形をとるのがいいと思いますが、なおこれははなはだ自分の立場で強調するのは誤解を招くおそれがありますが、公平な自分の気持で申し上げますと、先ほど申しましたように警視庁というものは、国家的の比重が非常に大きい。治安の対象としまして、自治体の比重よりもむしろ国家的の比重の方が大きいのであります。それならば自治体の委員会が任免権を持つよりも、なお国家公安委員会において任免権を持ち、自治体の公安委員会の同意なりあるいは意見を聞き、そうして同じく総理の承認を得るというような形の方が、あるいはさらに進んだ
一つの行き万ではないかと私は
考えておりますが、ともかくも両者とも総理の任免権を持つということについては、行き過ぎのように思
つております。
それから
指示権の問題につきましては、いろいろ御意見ありましたが、私は今の
警察の一番の欠陷は、民主
警察としては形の上はまことによろしいのでありますが、何と申しましても、御承知の
通りあの
警察法ができました昭和二十二年当時におきましては、国を通じての破壊的な活動というようなものは想像されなか
つたのであります。ま
つたく隣同士の刑法犯、司法犯、窃盗ですとか強盗ですとか、さような隣人相戒める
程度のことを
考えて、一応
警察の仕事をやらしたらいい。それだけしか
犯罪は
考えられない。またあとは交通整理というようなことで、あの
警察法ができたのでありまして、今日になりまして、
全国的につながりを持
つた、
全国的の騒乱、破壊を試みるような活動が現われて来ますと、当時のあの精神にのつと
つた警察法によ
つてでき上りました
警察では、ま
つたく用をなさないのであります。はなはだ残念でありますが、簡単に
数字を申し上げますと、約十三万人の
警察官がおる、約八万五千は今自治体
警察であります。そうして自治体の
警察官は、多いのは警視庁の二万五千というのもありますが、二十数人前後、二十人前後の都市の
警察官で、その署長は内外の情勢あるいは日本経済一切の情勢を判断しまして、独立不離の立場で、これが治安の任に当
つておるのであります。もちろん署長でなくして、ほんとうの
運営並びに行政の長は、そのほかに自治体の公安委員会があるのでありますが、さような
地方の公安委員並びに
警察署長が、この世界の動き、あるいは国内の大きな動き、さようなことに対して、ことごとく正当な判断を持てるかどうか、これはずいぶん無理な話であります。自分の町の中における暴力団あるいは窃盗等に対する相談、あるいは施策、対策というようなものは、簡單にできると思いますが、この今世界を貫いておる大きな国際情勢から来るような大きな動きに対して、判断を持てとい
つても無理でありまして、結局さようなことには近づかぬがいい、自治体
警察としては近づかぬがいい、近づいて間違
つたことをせぬ方がいい、間違わなくても捜査その他に金を使
つては、非常に困ることになるというような
考え方が、多いように拝見しております。そのために残念ながら、現在の治安の一番大事なかなめの
警察の機能というものが、非常にぐあい悪くな
つております。これは先ほど来しばしば
お話がありましたように、もう少し
警察法を根本的にかえれば、あるいは問題は解決しますが、しかし現在の建前では、できるだけ各自治体が協力しまして、そうして一本に動けるように、全体が統一して動けるような形をとり、心構えをとるよりほかは仕方がないのであります。その
一つの
方法として、全体に一番明るい
政府が
——これは国警がやるということになると、なかなかうるさいですけれ
ども、そうなりますと、
政府の立場が非常にいいと思うのであります。
政府の、
総理大臣の立場で、
地方の公安委員などとうてい
考えられぬような問題、非常に重大な国の公安に関する大きな問題、それを適切に
指示するという
指示権を
総理大臣に與えるということは、治安の面から私は、さような欠陷を持
つておる現在の制度のもとにおいては、まことに至当であると
考えております。従いまして、その
指示権によ
つて地方の自溶体の公安委員の、いわゆるの自治の精神なり、権能が侵されるというように解釈する必要はないと
考えております。
最後に都の
警察の
費用を一部国家が負担するということ、これは先ほど来法務総裁から
お話がありましたように、当然な措置と
考えております。私の
考えはさような次第であります。