○加藤(充)
委員 今引用した随筆様のものの次には、こういうことが書いてあるわけであります。これは桶谷氏がパリかどこかに行
つたときの目撃談でありますが、パリの「サン・サーンス街を足早にグルネル大
通りに出た私はギクリとして足をとめた。鉄かぶとに銃を持
つた警官が数百人、高架線に
なつた(メトロ)地下鉄線の下にジツと音もなく立
つているのである。……急いでグルネルの駅に来れば、警官の山である。しかも明らかにアルジエリア人と思われる労働者風の人達が百人ばかり駅の鉄柵の所に押しつけられて、皆ひきつ
つた様な蒼白な顔をしている。その外側はぎつしりと棒を持
つた警官、その外側が更に銃を持
つた警官なのである。「立止つちやいかん。」二、三人の警官がわれわれ通行人を押しやるのであるが、見ると警官は棒でアルジエリア人の頭をガンガン叩いている。それを避けようとして彼等の群が少し移動すると、「何故動くのか」と云
つて向うからガンガンと叩く。血走し
つた目をした男が棒をひ
つたくるようにすると、その男は警官に捕えられポカンポカンと殴られた、」 こういうのであります。それで私が聞きたいのはその次の問題なのです。これはフランスの例だというが、私は
日本の国情なり
警察の動き方というものはこの
通りではないか。こういうことと関連して今遠慮してフランスの例をひつぱ
つている。私はわきの切符売りのおばさんに尋ねた、というのです。そうしたらアルジエリア人の労働者の会合がこの近くであるはずであ
つたのだけれ
ども、警視庁から禁止されて、その禁止されたのを知らないで来た連中がああしてやられているのです、という答えだ
つた。ところが、その翌朝の政府の発表を見ると、あなたの
答弁みたいなものだと思うが、この禁止を犯して集合した着たちの中で
警察官に暴行を働いた百五十名が検束されたという発表であ
つたという。なぜこんなアルジエリアの労働者が集会を持つかというと、「ちなみに、」と書いてあるのでありますが、戦後労働者の不足から北アフリカ人を無統制に国内に連れ込んで、現在これら労働者は失業問題で苦しんでいるのである、という。私は、こうな
つて来ると、フランスの例だからあなたも気やすく聞いておいていただきたいと思うが、これは治安の
維持の
警察力の行使ではない。これはもうアルジエリア人にと
つては隷属と貧困を強制するための
警察権力の行使であ
つて、それはすでに不法であり、私はこれこそが暴力の実体だと思うのです。それでお尋ねするのですが、この
法案の
集団示威運動等の秩序
維持に関する
法律というようなものも、実をいうと今紹介したようなやり方の
警察力の行使、ま
つたくひどいこのようなものになるのではないか。大体集団示威というような問題は、これは
基本人権として奪うべからざるものであり、それに公共の福祉だとか公共の秩序だとかい
つたところで、それで人権を制限するそのままの口実にはならない。それで乱暴するからと言うが、今最初に聞いた澁谷の街頭の学生の、みすぼらしい服装ではあるが論理の通
つた弁舌を唯一の武器として一般の人たちに信ずることを訴えていた、こういうような者を弾圧することは明らかに不当であり、集団示威運動取締りのこの
法案はそのことをねら
つているのではないか。このことを実はお尋ねいたしたいのであります。昨日の新聞が名づけたいわゆる五・三〇というような問題が起きて、新宿あたりでは新聞の報ずるところによれば、えらい騒ぎが起きたようであるけれ
ども、集団示威というものを犯罪視して、そうして現在の政府が結局身売り証文のような講和條約をやり、
行政協定をやるそのために
日本の政治は隷属にな
つて行く。そうしてまた結局においては
日本の産業界あるいは個人の生活も、ま
つたくひどい貧困とま
つたく不自由な生活の中に押し込まれて来ている。これに対するいろいろな
日本人としての、あるいはそれが集団としての不満の
意思表示、それに対して見向きもしないで
警察力の増強だけで弾圧するというようなやり方については、当然抵抗が起きて来る。その抵抗はやはり私が
先ほど来問題にいたしましたような
趣旨と根拠に基く正当なものである。これが自分の思うようにならぬから自分の言う
通りに聞け、無理でも何でもおれの言うことに文句を言うな、というやり方の中に使われて来る
警察力というものは、すでに
国家権力の行使という形で行われますけれ
ども、暴力である。アルジエリア人をフランスに引き込んで来て、そうしてか
つてなことをや
つておいて、生活に困
つている者を
法律の集会をさせないで、そうして知らないで集ま
つた者をがんがんたたいて行く。そうしてそれが暴力を働いた者が検束されたというのでは、こういう白々しいやり方では、いつまでも
国民を瞞着させたり、羊にしていることはできないと思いますが、昨日あたりの私のこの近所で見た
警察のものものしい配置、警備ぶりというものは、あれは明らかに職務尋問というものの範囲を逸脱した不法行動であり、事実上戒厳令にひとしいものを実現していると思うのですが、どうしてこんなことをや
つてさしつかえないと思
つているのか、またどうしてこういうことをぬけぬけとや
つているのか。それでこのためにはどういう配備をや
つてどういう所でどういう問題が起きたのか、これを詳細に報告してもらいたい。