○勝田参考人 私は改正
地方自治法の
法案のうちで二点につきまして、全国の
都道府県議会議長会議におきまして決定した点を申し上げまして、各位の御了承を得たいと思います。
第一点は、
議員の
定数の縮減でございます。
議員定数縮減には、全国
都道府県議会議長会議においては反対でございます。この反対の理由を簡單に申し上げますが、現在の制度は、御
承知のごとく七十万人までを四十八というべースをきめまして、五万ごとに逓増をさしております。そして百二十人という限度をきめておりますが、
改正案は古い
府県制の昔に返り、七十万の
人口に対して三十人というベースの上に立
つて数を逓増させております。そうしてその数をきめる最後の場合におきましては、これを
府県の
條例にゆだねてありますが、その場合に公聴会を開いて
意見を聞けということが
規定されております。そこでまず
定数の問題でございますが、この
改正案によりますと、
千葉県は大体十人
減少することにな
つております。
議員の
定数を幾人にするかということの科学的な根拠と申しますか、あるいは政治学的な根拠というものは何もないのでございます。七十万に対して三十人というベースを古い
府県制がきめておりますが、これは見積りでありまして、この見積りの上に立
つた古い
府県制の三十人というものに十人を加えまして、新しい
自治法においてはこれを四十人としたまででございます。代議制度の本旨から申しまして、私どもは、理論としては多いほどいいという議論をとりまするが、もちろん能率であるとか、あるいは経費というような点を考慮しなければなりませんので、そこに適当の歩どまり
定数というものが、おのずから生じて来るであろうと思うのです。しかしながら、今ようやく民主政治がわかりかけて来たときに、
定数を減らすというような打撃を、
地方の民衆に加えることがはたしてどうであろうか。そういう観点に立ちまして、私どもは、民主政治の習熟の日の浅い今日、レベルのまだ低い今日においては、縮減の
段階ではない、少くともかような挙に出ることは早計ではあるまいか、かように
考えております。
改正案の中で、
條例をも
つてきめる場合には、公聴会を開いてやれということにな
つておりますが、これは
改正案といたしましては、
地方の
自治性にまかしたのでありまして、いかにも進歩的でございます。進歩的であることは私どもも同意するにやぶさかではございませんが、ただ、民主政治の現
段階では、これが実際の
運営の上で、いろいろな支障が生ずることを
考えていただきたいのであります。
選挙区の
定員を配当するときに、この公聴会の
意見は、おそらくまちまちであろうと思います。また最後には
議会がこれをきめるのでありますが、
議会において非常な紛糾を予想されるのであります。かような政治性の多いもので、しかも客観性の多分にあるものは、これは進歩的ではあるが、今の
段階ではまだ
法律できめておいた方が無難ではないか、
従つて現行の制度の方が安定的である、かように
考えます。それから
議員を減らすことが経費節減ということにひつかかるのでございましようけれども、経費の節減ということには大してなりません。例を
千葉県にとりますと、二十七年度の
議会費の予算は三千五百六十二万円であります。
議員一人当りが五十七万円、これが十人縮減されますると五百七十万円節減されることに一応はなりますが、
議員が減
つても、
議員が減
つた場合に減る費目は報酬と旅費だけでございます。そのほか印刷費であるとか、備品費であるとか、若干は減りましようが、報酬と旅費がおもなものでございまして、報酬一人一箇年十八万円、旅費一人一箇年七万円でございますが、これを合せて十人分といたしましても二百五十万円の節減にしかならないのであります。県の総予算は七十三億四千二百万円でございまして、この数字に比べましてまことに微々たる数字であります。
議員を
減少するというような深刻な打撃を
地方の
自治政治の上に與えておいて、そうしてしかも節減される額は、きわめて少いということを私どもは
考えるのでございます。
第二点は、
地方議会の定例会廃止についてでございます。これも全国
都道府県議会議長会議におきましては、絶対反対を決議いたしております。理由を申し上げます。定例会の制度を設けた精神は、会期の短い
議会に——
地方の
議会は三日ないし七日でございまして、全国の数字を見ましても三日ないし七日でございます。非常に短い期間の定例会をたくさん開いて、一般
住民が
議会を通じて民意を反映せしめるという機会を多くする、かような意味で年六回開かなければならないという
現行の
自治法の精神は、非常にけつこうなことだと思
つております。これを年一回定例会というものをやめまして、年に一回翌年の予算を審議する通常会というものを設けて、これを三十日会期を置くという
改正案でございますが、これは
地方の
自治を進展せしめるという
自治法の立法の精神に反するのではないだろうか、
議会と
住民との結びつきを非常に疎隔せしめるものではなかろうか、
住民の
代表である
議員の発言の機会を、非常に減殺することになりまするので、これは私は
自治体の
議会のあり方ではない、かように
考えます。
事務的に申し上げてみますと、現在の
地方財政は、先ほど茨城県の知事さんから申し上げましたように、国の財政に依存することがきわめて大でございます。
千葉県の例をとりましても、歳入の六五%は国に依存しております。平衡交付金が三三%、国庫支出金が一七%、起債が一五%、合計六五%というものが国に依存しておるのであります。そこで国会が三月の末にいろんな仕事を終
つて、予算を確定いたします。
地方は二月もしくは三月に
議会を開きまして、見込額を予算に組んでおります。そこで国の方が確定するのがおそいのでありまして、これが追加更正を必要といたしまして、どうしても年一回の通常
府県会というようなことではやり得ないのであります。平衡交付金も年に四回にわけて
地方に参ります。特別平衡交付金というやつが、さらに一回参ります。かような次第で、回数が多くなければならないという事務的なこともあると思います。起債の面から申しましても、毎年七月に県の單独事業、十月に公共事業が決定されますから、これだけでも二回を必要といたします。もちろん平衡交付金の確定の時期と必ずしも同一でなく、あるいは同一の場合がありますから、これを合わせただけの回数が必要ということを申すのではございません。また国庫支出金でございますが、これは年四回にそれぞれ
政府から内示がありまして、予算の措置をすることになります。
政府は中途において省令などで一方的に
地方に事務を委任いたしまして、事業費の何分の一かのきわめて少額のひもをつけまして、しかも実施の時期を指定して参ります。強要して参るとでも申しますか、指定し強要して参るのであります。これはどこの
府県でもお困りだろうと思いますが、これを県といたしましては、予算措置をしなければなりません。予算措置をしなければ、
政府自身がお困りになるのでございます。以上は
千葉県の例でございますが、どこの
府県でも似たようなものではなかろうかと
考えております。代決機関を設けないで——代決機関といたしまして、
府県制の時代には、参事会というものがございました。この参事会を設けないで、定例会を廃止してしま
つて、そうして通常会を年に一回しか開かせないというのは、改正の意図がどこにあるか、まことに解釈に苦しむのでございます。そこで臨時会があるじやないか、臨時会はいくらでも開けるじやないか、必ずかように御
指摘なさるであろうと思います。しかしながら臨時会は、招集権はもちろん知事にございます。この招集権は知事の一方的な見地に左右される公算がきわめて大でございます。
議員の三分の一で臨時会の開催を請求することができますが、これは
議員の発議権のある者に限られております。
議員の発議権のない者は、請求ができないのでございます。臨時会の招集をめぐ
つて、
議会と執行部の間にいたずらなる摩擦を招くおそれが多分にあるのではなかろうかと
考えております。いやしくも知事さんは、公選で出られた知事さんでありますから、十分
議会と協調する手腕、力量を持
つておられることを私ども疑いません。しかしながら大体において、全国的に見まして、
議会は自由党が現在多いところが多いようです。私どもと同職の
議会の
議長を見ましても、三分の二は自由党である。知事さんはどうかと見ますと、自由党で知事さんというのはきわめて少いようです。私どもの現実を申し上げますと、自由党が絶対多数ですが、知事さんは反対の側から出ておられます。かような県がなかなか多いのでありまして、こういう臨時会を開けばいいではないかというようなことでぽんと投げ出されてしまうと、なかなかこれは
議会と執行部の間にトランブルが起るのではなかろうか、摩擦を招くおそれが多分にある、かように
考える次第であります。必ずこういうことを申します、定例会は六回あ
つて、そのうち大部分は
会議を開いても大した仕事をしていないじやないか、かようなことを言われる方が多いのです。これがまた非常に宣伝されておりまして、皆さんの方のお耳にも、六回なんということをやると、おそらくそのうちの何回かは、何にも議案がなくて、むなしく過しておるのが多いのだというようなことが伝えられるのは、はなはだ遺憾であります。そこでこれも
千葉県の二十六年度の実際の例をと
つて見ます。
千葉県では通常会を
法律通り六回開いております。しかもなお臨時会を三回開かざるを得なか
つたのでございます。この内容を申し上げてみましても、臨時会では、昨年五月の臨時会には三つの重要な案件が付議されております。九月の臨時会は
議長改選の
議会でありましたが、しかしなおかつ、重要案件が二つ付議されております。三月の臨時会は、十一の議案が審議されております。六回の定例会におきましては、大体五回は会期が五日間でありまして、付議された案件は、六月が十七件、七月が二十六件、九月が二十件、それから十一月に定例会を開くべきでありましたのが、
政府の方針がきまらないことがあ
つたために、予算額がわからないために、十一月の定例会を十二月に延ばしましたところが、三十三件の議案を付議せざるを得なか
つたのでございます。この間三箇月を経過いたしておりますが、三箇月ほう
つておくと、三十三件もの議案が軍な
つて参るのであります。一月の定例県会は、十二月に三十三件を付議したために、わずかに五件を付議しただけであります。二月の定例県会は二十日間にわたる長い、二十七年度予算を審議する県会でありますから、これは六十一の議案を審議しておることは当然でございましよう。こういうふうな次第でありまして、六回は多過ぎるということは実際的ではないのです。そのうち一回くらいはどこかの
府県で、あるいは数個の
府県で、議案がなく
つて困
つたというような所はございましようが、大多数のところでは、これをうまく按分いたしまして、うまくこれに議案をはめまして、そうしてすこぶる順調に
会議をや
つているというのが現状でございまして、むだな回数というものは非常に少い、かようにお
考えを願いたいと思います。
以上の理由によりまして私は定例会を廃して、そうして通常会一回にして、あとは臨時会にするというこの
改正案は、
地方制度に対するはなはだ虐待である、民主政治に逆行した、しかも
議会の弱体化を招くものである。
議会の弱体化以外の何ものでもない、かように申し上げまして、
現行法の
通りを主張しまして、改正には絶体反対を、全国
都道府県議会議長会の名において申し上げる次第であります。
議会を弱体ならしめることが執行部の望むところであるというならば、また何をか言わんやでありますしかしながら民主政治の選手であられる国会
議員の各位におかれましては、どうぞこれらの事情に深い御省察をたれ賜りまして、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。