○梅津参考人 一昨日当
委員会におかれては、
公聴会をお開きになり、多数の
公述人をお呼び出しあ
つて、その
意見をお聞きなされたということを聞きましたので、自分といたしましては、もうおそらく委員各位におかれては、それぞれの立場から述べられた各
公述人の
意見は、十分お聞きとりになられたものだと想像いたしますので、私は都議
会議員の立場で、今回の
地方自治法の修正に対して、都会でどのような模様であつたかという点に重点を置いて、
意見を述べさせていただきたいと存じます。
特に自分は、この
地方自治法の中での区長の任命制、及び議員の定数の縮減という点が、憲法九十三條に保障されておるところの
地方公共
団体の長及び議員の、その
住民によるところの直接選挙によ
つてというこの條項に、明らかに違反するものだ、こういう
考えを持
つております。なお任命制を主張される側の都側において、またそれに同調される議員諸公の中には、特別区と財産区というものを例に引きまして、財産区においては直接選挙をとらない。そういう
意味において、大体特別区の区長も、直接選挙でなくとも違憲にはならない。こういうふうに主張されておるように記憶しておりますが、これは財産区と特別区との本質的な
性格を混同されているものだというふうに私は
考えますので、こういう
意味から言いましても、明らかに憲法違反であるというふうに
考えておるので、任命制に対しては賛成いたしかねるのであります。
第二点は、やはりこの直接選挙を
規定しましたところの
地方自治法は、終戰後新しく生れかわつた今後の
日本の行き方を
規定した、憲法に基きましてできたものでございまして、終戰前までの任命知事、あるいは任命区長というふうなものは、中央集権化し、またひいて官僚独善化するというこの悪政を排除するということに、大きな
意味が含まれておつたものだというふうに解釈いたします。民意の政治面への反映、
地方自治の民主化という、このねらいから改正されたものだとするならば、あくまでも区長は公選でなければならないし、また
議会のあり方として、民意を政治に、
議会に反映させるという建前からいいましても、あらゆる国民の各階層の
意見を、
議会に反映させるという
意味からいいましても、議員の数も、できる限り多い方が、そうした目的に沿うという
意味においても、議員定数の縮減に対しては、あわせて賛成しかねるのであります。委員諸公におかれては、東條軍閥
時代に、どのような政治のあり方であつたかということを
考えていただけるならば、もう私が喋々と、ここで申し上げるまでもないことと存じます。あの当時は、いわゆる任命知事が官僚軍閥の意に隷属させられた、またそういう制度だからこそさせらせやすかつたということ、また
議会においても、翼賛
議会にした方が戰争政策遂行の上には効果的であつたというこの点からも、そういうふうに制度の変革をなされたことは明らかな事実であります。今新しい憲法の精神によ
つて、
日本の
民主主義を助長し、そしてあくまでも平和を守ろうとする
日本のあり方から
考えますならば、区長を任命制にしたり、あるいは議員の定数縮減をするということは、むしろ昔に逆もどりする復古調であり、その現われであるということが、はつきり言えるのではなかろうかというふうに存じます。と申しましても、今日の
東京都の二十三区の実態は、完全なる自治権があり、主体性があるかと申し上げますならば、そのような姿でない点が非常に多いのであります。特別区の予算を見ましても、二十六年度においては約百億、二十七年度においては八十五億、ところが都知事からの執行委任の予算が、二十六年度においては九十一億、二十七年度においても大体前年と同様な予算が予想されるのでありまして、また
事務、事業の面につきましても、直接
住民の利害に密接な
関係のあるところの保健
事務、あるいは福祉
事務、税務
事務、こういうふうなものが、ほとんど昨年から都に取られまして、区はそうした
仕事にタッチしていないというふうなこの姿こそが、都の出先
機関であるがごとき現在の特別区の姿でございます。しかしそういう姿が決していいことではない。私たちはやはりできる限り
住民の直接利害
関係のある、先ほど申し上げましたような
事務、事業は、大幅に区に委讓すべきことを主張てしおりますし、二十三区長及び二十三区の各区
会議員諸公も、それを望んでおりますとともに、それの裏づけの財源の要求をも掲げておるのでありますが、今でさえそのような、各区が都の出先
機関であるような姿を、今回の
地方自治法改正によりまして、それを法的にはつきりと仕上げをするというふうな姿になることは、これは十分見通されるのであります。そういう
意味からいいましても、私たちは賛成しかねるのであります。
第三点については、
地方自治法の改正だけを取上げましても、多くの良識ある識者諸君、議員諸君、都民諸君の中には、
区長任命制反対の声が起
つておりますが、私はこの
地方自治法の改正だけに目を奪われずに、もつと視野を広くしまして、両條約の締結と
行政協定を結ばれるとともに、いろいろ
議会に
提出されつつあるところの諸法案、たとえば破壞活動防止法案、労働法の改悪、
警察予備隊令の改正、
地方税法の改正、参議院を貴族院化しようとするような公職選挙法の改正案、そういうものまで新聞に報ぜられており、事実上程されておる議案もございますが、そのものとともにこれをあわせ
考えまするならば、先ほどまで申し上げました官僚独善と中央集権化、そしてフアツシヨ態勢の強化という点が、この客観的な政治動向の上からも、はつきりと確認されるというふうに信じておるのであります。すでに御
承知でございましようけれ
ども、安井知事は電車やバスその他要所々々にポスターによ
つて告示いたしておりまするが、その
告示の
言葉の中に、一部の者の風説に惑わされることなく、冷静に国会の決定を待
つていてほしいということを書いてございます。この一部の者の風説に惑わされることなくという
言葉こそ、私たちは簡單に見のがすわけに行かない。つまり自分の政治に批判し反対するところのもの、これを一部の者の扇動だ、一部の者の風説であるというふうに、何かしら非常に反逆的な行為のように印象づけようとするそのことは自体が、自分だけの主観によるところの独善主義的な官僚的な解釈ではなかろうか、すでにそういうことがポスターの上に表われているということを
考えまするならば、どうしても私たちは賛成し得ない。特に都
議会側の言い分を十分聞き、かつ批判することも必要であろうと思うので、私たち今まで聞いて参りました、そのおもなる点は、
公述人も言われたことだろうとは想像いたしまするが、要点だけを申し上げますと、都側が区民諸君に対して、任命制にするならば、
住民の便利をはかる、つまり窓口を簡素にする、こういうふうなことを極力宣伝されております。もちろん先ほど申し上げましたように、保健所、福祉
事務所、都税
事務所が区役所の窓口と別個にばらばらにあるということは、
住民にと
つては非常に重荷でございますし、迷惑することでございます。けれ
ども一体そういう姿にさせた責任はどちらの側にあつたかというならば、これは区長、区
会議員、
住民の要望をはねのけて別個にした都側にむしろあるというふうに、私たちは解釈しております。そういうふうな点から、これはどうしても区側の要求でもありまた
住民の大多数の人々の要求でもあるのでありますから、窓口を簡素にするためには、区側にそういう
事務の委讓、その裏づけの財源を付與するということの方に、都の
理事者としては努力すべきであるにもかかわらず、それをしないで、その不便を何かしら区側になすりつけようとすることは、まつたく卑劣な行為であり宣伝である。もし法及び都
條例の改正によ
つてなす必要あるとするならば、それならそれで今のような
住民の要望にこたえる姿に、早く立ち返らすべきが妥当ではなかろうか、そういうふうに
考えております。
その次には、任命制にすれば区長の選挙費用が浮く、こういうことは政治家としては言えない
言葉だろうと思いますが、それを言
つております。ここで賢明なる委員各位に、私は御説明する必要はなかろうと思うのですが、ただそういうことを主張する都の
理事者や都議
会議員諸君に対して私は言つたのであります。もしあなた方の論理が正しいとするならば、知事も任命制にする方が同じ結果になるのではないか、また都
会議員の定数も縮減し、国
会議員の定数も縮減した方が、その意義が大きいではないか。そういうことは希望しておりませんけれ
ども、任命制を主張する側の人の言うその論理があまりにばかばかしいから、そういうことを皮肉つたことがございます。それは国民の税負担を軽くする
意味において、不必要な経費の縮減をするということは、これは政治家として絶対
考えていただかなければならぬことだろうと思いますが、むしろ縮減をえさにして、任命制に賛成させようと宣伝する側においては、もつと大きなむだがあるのに、臭いものにふた主義でや
つております。たとえば
東京の予算八百億の中で、約一割近いところのものが彈圧費に使われ、また軍事基地化、軍用道路及び
東京湾を軍港化しようとするところの予算、それからお手盛り退職金や宴会費等などを合せるならば、優に二百億近いところのむだが、節減できるのではなかろうかと私たちは
考えます。そういうふうなことをひた隠しにしておいて、区長を任命制にして、選挙をしなければ選挙費用が浮くなどということは、おそらく物心のついた子供さんでも、その判断がなし得ると思いますので、その点の批判はこれでとどめたいと思います。
なおもう
一つの点、都区行財政の
一体化の確立が、どうしても
東京都においては必要だと主張されます。もちろん各区においての
事務あるいは財政のバランスをとるということは、私たちもその必要性は認めます。であるがゆえに、一昨年まで都側と区側と中立というふうな立場の人から、それぞれ委員をあげまして、都区行財政の調整
委員会をつくられ、一昨年において大体その調整がなされておつたのであります。ところがそれが実行に移されなかつたというのは、むしろ都の
理事者側の方が、その紳士的な協定案を誠意を持
つて実行しようとする熱意がなかつたこと、つまり都側の利己心が強く出た。それによ
つて紳士的な協定案が、いまなおもやもやしておるという姿であります。その責任についてはむしろ都側が負うべきであると
考えておるのであります。
なおその次に、区民が民主的に訓練されておらない。政治的な
考え方が民主的にできておらないなどという、これまたばかげた議論をなす人もあるやに聞き及んでおりますが、か
つて普通選挙を国民が要望したときに、婦人や青年はいまだ政治に目ざめていない、だから婦人に参政権を與えることも、また選挙権の年齢を低下することも、国を危うくするものであると主張した保守的な人たちもおりましたが、今にな
つてはそれは昔のおとぎ話化しております。その
考え方を今の
時代にまたも振りかざすとは、これまたお話にならないばかげたことだと
考えます。そういう人が都の
理事者や、都政に参與する議員の中にいるからこそ、マツカーサー君から
日本は十二歳のボーイだなどという侮辱された
言葉をはかれるので、これはあえて無理からぬことであると
考えておるのであります。自分が選んだ区長であるなればこそ、その区長が
住民のためにどのような区政をや
つてくれるのであろうかということの関心が十分深まりまするし、区政に対しても都政に対しても、選挙権を與えられ、かつそれを
行使したればこそ、みずからの責任を持
つて、政治に目が広く向くのは理の当然でございます。むしろ天くだり的な官僚区長よりも、やはり
住民に選挙された区長の方が——十分に民主的な人ばかりが百パーセント選ばれるというふうには期待はできないにしろ、任命区長よりも、よりよく
住民の意思を区政に反映させる区長が出て来られ、またそのように運営しなければならぬということ、これはもうはつきりしていることだと思います。都側が主張する点は今のようにまつたく矛盾だらけであります。
もう
一つ、実は昨年の十二月二十一日都
議会において、
神戸勧告案なるものに対しての決議として意思表示をいたしました。おそらくこの点については、委員諸公には
議会の方から参考資料として書類が参
つておることであろうと想像いたしまするが、要点だけをもう一回
考えてみたいと思うのです。十二月の都
議会において、
行政事務再配分に関する第二次
勧告に関する
意見書というその中に、「
地方自治の本旨とするところは、
地方行政を
地方団体自らの責任と創意に委ねてこれを培し、伸暢せしめることによ
つて国家全体の福祉に寄與することが根本の要請でありまして、わが国の再建と伸展は一に懸
つて地方自治の徹底強化にあると信ずるものであります。然るに最近における諸般のわが国の情勢はわが国の民主化ひいては
地方自治の本旨に逆行するが如き懸念が看取されるのでありまして、本
勧告の使命とする
地方自治確立の
趣旨も、その具体的
勧告内容におきましては、必ずしも全面的に顯現されているとは解しえない点があり、本
勧告に寄せたわれわれの期待に充分副い得なないものがあることは、遺憾に堪えないところであります。」云々という前書きをいたしまして、そうして
神戸勧告案に対し、中央集権化、官僚独善の方向を食いとめるためには、都
議会といたしましては、全面的に賛成できない、こうい
つて反対しておるのであります。ただ最後に区長の公選制を廃止するというこの点について同意しておるのであります。この決議案を上程するときに、一応私たちにも相談がありましたので、私たちは都会でかような決議がなされることは前文の意思は時宜に適したものであるということを申し上げたのであります。もちろん今日道州制やあるいは知事の任命制は、これはあくまでも民主政治を守り、
地方自治、
地方分権を守る
意味から反対されているのは妥当である。だが
区長任命制に賛成されておることは理論的に矛盾でないか。私たちはその点を突きまして、できるならば区長もやはり公選制を存置するように修正してほしいという
意見書を出したのでありましたけれ
ども、遺憾ながらそれは取上げられなかつたのであります。そのような矛盾をしておる。最近においては、一昨年でございましたか、警視庁の国警編入、あるいは警視総監の
総理大臣……。