○荻田
政府委員 この
地方財政の状況報告は、法律に基きまして毎年国会に提
出しなければならないものでございます。本年度の分をここに
出したわけであります。非常に大部にわた
つておりますので簡單にどこにどういう趣旨のことを書いておるかということを申し上げておきたいと存じます。
この序説に書いてありますことは、われわれとしまして
地方財政の問題につきまして、今種々論議が行われておりますが、その論議の基礎に数学的のものが
はつきりしておりませんために、無用の混乱を起しておるというふうに
考えますので、この白書自身も一つのそれの資料になりますように、これによりまして正当な
地方財政の論議かできますようにということを念願して書いております。この二十六年度までの
地方財政の状況は、ここにも書いておりますように、二十五年度におきまして
相当数の
団体が
赤字を
出しております。また二十六年度においても、ただいまの予定では
相当のものが
赤字を出すことにな
つております。この
意味におきまして、一般的に
地方財政が
相当困
つているということは、全体として申されることだと
考えております。
次に二十六年度の
地方財政を説く前に、二十五年度の
決算が大体わかりましたのでこの第一には、二十五年度の
地方財政の
決算の状況がございます。二ページから三ページにかけての表によりまして、大体
都道府県、特別区、
五大市、
市町村等をわけましての歳入歳出の総額を掲げております。その表の一番最後にございますように、
都道府県では百億程度の黒字を
出しておるのに対しまして、
五大市では十二億の
赤字を
出し、ごくわずかの市と特別区はある程度の黒字を
出しております。町村は七十四億の黒字を
出しております。この総計は百八十三億というものが一応繰越金にな
つております。この繰越金を従来の繰越金と比較いたしました表が四ページに出ておりますが、二十四年度におきまして二百五十億ありましたものが百八十三億に減
つております。つまり六十六億だけの減少にな
つております。これはとりもなおさず、
地方財政が二十四年度に比べて二十五年度は
相当苦しか
つたということを物語るものだと思います。この繰越金は、いわゆる純剩余ということにはならないのでございまして、御
承知のように継続費と
事業の繰越しがございますので、それに伴いまして当然に持
つて行かなければならない歳出がありますので、ここに出ました数字そのものが純黒字ではございません。そういう
意味におきまして、さらにその純
赤字というものを計算いたしますと、もつと多くのものが出るのじやないかということは
考えられるのでありまするが、その数字を次に
出しております。ます五ページの表は、これは一応
決算上の
形式上の
赤字をここに掲げたものでありまして、
都道府県以下
市町村は段階別にわけまして、どれくらいのものが
赤字を
出したかということが書いてあります。六ページの表におきまして、先ほど申し上げました
実質的
赤字とされております。つまり
決算上の
赤字は、
都道府県で六億、
五大市場で十九億、市で十九億というものでございまするけれ
ども、
実質的のただいま申しましたような
意味におきまする
赤字は、
都道府県が七十二億、
五大市が三十五億、ほかの市が四十一億、このように増加しておるのでございます。あと七ページ以下に、
個々の
団体につきましてできる限りの表をつけてございます。十三ページ以下に
決算の分析を
出しておりまするが、まずこの
地方税の
改正と
收入がどう
なつたかという問題でございます。これは二十五年度におきましては御
承知のように画期的な
改正が行われましたので、その結果につきましていろいろ憂慮もあ
つたのでございまするが、まずこの十三ページから十四ページに出ておる表によりまして、調定額に対しまする
徴收額が府県で七四・二%
市町村で八〇・二%、両者を合計いたしまして七七・七%という
徴收率にな
つております。これは二十四年あるいはその前に比べますと、ある程度の減少を来しておるということにな
つております。
それから次に税
收入の増減でございます。税制
改正によります増減でありまするが、十六ページに表が出ておりますように、大体四百二十億の増加、これは当初の目標が大体四百億でありましたのでその
通りであ
つたわけでありまするが、四百二十九億というものが二十四年度に比べて増加にな
つております。これがたくさんふえたところ、少ししかふえなか
つたところ、あるいはむしろ減少したところ、いろいろあるわけでありまして、
地方の各
団体につきましては
相当財政上の変化を来したのであります。十六ページの表によりまして、
都道府県におきましてはほとんどふえてない、七%、
市町村におきまして大体三〇%のふえ方にな
つておるわけであります。十七ページにおきまして、府県の中の税がふえた
減つたをパーセンテージによりまして段階ごとに府県をわけたのでございますが、上欄の方の一番左の三〇%以上ふえましたのは大阪、愛知というようなところ、それに次ぐのは二〇%以上の東京、京都、石川等であります。逆にひどく減收のありましたのは、青森、茨城、島根の三〇%以上も減收したというところもあるわけでございます。
それから次に十八ページにおきましては、こういう趣旨によりまして
市町村の増減の状況を調べております。十八ページ、十九ページ、二十ページ、これをごらん願いたいと思います。
それから次に二十一ページにあります法定外独立税及び
標準税率、超過
課税の
実施状況でありますが、これは二十四年度に比べますと、法定外独立税は非常に整理されたわけになるのでありますが、しかし二十五年度におきまして、二十一ページから二十二ページにかけましての表、特別法定独立税があ
つたわけであります。それから次に
標準税率超過
課税につきましては、二十三ページの表のように府県におきましては
事業税、
特別所得税において六県だけが超過
課税を
行つております。
市町村におきましては
固定資産税について標準率超過
課税ができませんので、二十五年度は
市町村民税だけの問題でありますが、これにつきましてはここに出ております程度のものが標準率超過
課税を
行つております。
それから二十四ページに
平衡交付金のことを書いておりますが、これは二十五年に新しくできた
制度でございますので、これの結果いかんということが
相当問題でございますが、この二十五ページ以下には
平衡交付金の交付状況が書いてございます。
それから二十九ページには税、
平衡交付金を加えまして一般
財源の増加、これがひつきようこのシヤウプ勧告によります
地方財政、税制の
改正の主眼でありました
地方税の
財源を増加するということがこれによ
つて達せられておるかどうかという比較でございますが、以下書いてあります
通り、大体
都道府県におきましてはあまり増加にな
つておりません。
市町村におきましては
相当財源が強化されたという形にな
つております。これを各人口段階等につきまして比較いたし、
団体について調査してございます。これは三十四ページまでであります。
次に三十五ページにおきましてはこの増加いたしました一般
財源を何に使
つたかということが書いてございます。大体におきまして給與の改訂であるとか、新たに法令によ
つて地方団体の
負担に
なつた
事業というようなものの
経費また臨時的な
経費では公共
事業費の増加というようなことに充当されまして、あまり余裕のあるような額は少なか
つたわけでございます。従いまして最後に二十五年度の
赤字が二十四生度に比べて、むしろふえたようにな
つておるわけでございます。
三十八ページには自主
財源と依存
財源の割合でございますが、これは先ほ
どもお話のありました
地方みずからの
財源と国からもらう
財源と、この状況を調べておるのでありますが、二十四年度と比べまして二十五年度は大して変更はなか
つたのでございます。これは四十二ページまで書いてあります。これが大体二十五年度におきましての
地方の状況でございます。
四十三ページ以下には二十六年度の
地方財政の状況を総説として書いております。これはこの前数回の国会におきまして
地方財政委員会の
出します数字と
政府の数字との食い違いというようなことからいたしまして、
地方財政の
財源が不足だということをいろいろ申し上げて來たのでありますが、それを当初以来最後までのことをまとめて四十三ページから五十一ページまでに書いてございます。その結果五十二ページに書いてございますように、二十六年度の
決算見込みは、先般調査したところによりますと、五十三ページに出ておりますような結果になりまして、
相当の歳入不足が予定されるのでありまして、これに対しましては今回起債を増加するというかつこうにおきまして、八十億程度のものを
措置することにな
つておるのでありますが、いまだ確定いたしておりませんが、いずれ確定いたしたら御報告申し上げたいと思います。
次に五十五ページ以下は歳出の状況をしるしてあります。この歳出が何ゆえふえて来たかというようなこと、給與の問題であるとか、
政府の施策に伴う
経費の問題であるとか、公共
事業費の増加、物価騰貴による増加というようなことによりまして項をわかちまして書いております。これはこまかくなりますので省略させていただきます。
七十六ページには歳入の状況が書いてございます。これにつきまして八十ページに
地方税、一番中心にな
つております
地方税についてその見込み等を書いてあります。
それから八十四ページには
地方税の収入状況、最近におきまする大体
地方の
徴税成績というものを書いております。われわれこの数字から
考えますところでは、二十五年度に比べまして、
相当徴税成績は改善されたものと
考えております。
八十八ページにおきましては二十六年度の法定外普通税を
都道府県及び
市町村について書いてあります。九十ページには
標準税率超過
課税の状況を
都道府県について調べております。
それから九十一ページ、
市町村におきまする
市町村民税の
所得割の
課税方法、これについて三つの選択方法がありますが、これが現実どのようにな
つておるかということを調べたのであります。
以上で税は終りまして、九十二ページに
平衡交付金の問題を書いてございますが、これには二十五年度に比べまして二十六年度
改正いたしました交付基準等につきまして詳細に書いてございます。そうしてその結果單に
費用の額とか、あるいは各
団体別の交付額というようなものを百八ページまでの間に記してございます。
それから百八ページから
地方債の問題でありまするが、今年の
地方債五百億につきまして、その許可の状況あるいは
地方から申請して來ましたものに対しまする許可の割合というようなことを書いてございます。百十六ページまでそれであります。百十七ページ以降は、使用料、手数料その他の雑
收入の問題を書いてあります。
それから百二十一ページに公営企業——電車、自動車、電気、水道、ガスというような公営
事業の会計について書いてございます。
それから百二十四ページに收益
事業すなわち競馬とか競輪等の
事業についきましてその結果をしるしております。これが大体二十六年度の
地方財政の状況であります。
それから百二十九ページから二十七年度の
地方財政の展望を書いてありまするが、これにつきましては先般
平衡交付金等を含みます
国庫予算御審議の際に、御
説明申し上げましたことが書いてあるわけであります。百四十七ページまでが二十七年度の以上の見通しを書いております。
百四十八ページに、法律をもちまして
地方財政について改善すべき方策をこの報告書に付記することにな
つておりますので、それに対する意見を書いております。四つのことを
考えておりますが、第一は
地方団体の
赤字の解消の問題であります。これは
地方財政におきまして先ほど来申し上げておりますように、
赤字を
出します
団体が多いということは、
地方財政上あらゆる
意味におきまして適当でないと思われます。これにつきましては国の方らの
財源措置ということも十分
考えなければならないとともに、
地方団体自体の財政
運営につきましても、
相当気をつけてもらわなければならないところがあるのではないかという感じを持
つております。いずれにいたしましても、この
赤字を解消することが焦眉の急であると思われますので、この際二十六年度につきまして
地方財政委員会より、
財源不足について国会に意見が提出され、国会は衆議院、参議院ともに御決議をなす
つておられます
方針に基きまして、この際何らかの形による現在出ておる
赤字についての
財源を増加付與すべきものであるという
考えを持
つております。一応この
赤字を消しまして、それからあとは国も
地方団体もともに協力して、将来
赤字を出さないようにという強い目標をもちまして、財政、ひいては
行政自体を
運営する必要があるという
考えを持
つております。
第二には、根本の問題としましてまず
行政経費の縮減の問題であると思います。現在の
地方団体自体のやり方につきましては、あるいは濫費というような
言葉をも
つて表現するのに当るような
経費の
支出もあると思いまするが、それは額としてはそう大きなものではない。
国民感情の上から申しますれば好ましくないことでありまするが、額の上からは、大きなものではない。むしろ
行政事務が非常にふえておる。これを縮小しない限り
地方の
経費は縮小できないのじやないか。従
つて地方財政も健全にならぬのじやないか、こういう感じがしております。従いまして国、
地方を通じての
租税負担ということをよく
考えてそのして
行政内容を
決定して行く。過去のものにつきましてはもう一度再検討を加えて、いい仕事ではあるけれ
ども、現在の財政事情からできにくいというものは何らかこれを整理する、いわゆる
地方行政簡素化の問題を強く推し進める必要があるのではないかという感じがしております。
第三は適正な
財源付與の問題でありますが、これは今申しました
通り地方の
事業分量、
行政の分量というものがきまりまするならば、それに必ずマツチして、十分その仕事をや
つて行くに必要な
財源は、何らかの形において
地方団体に付與されなければならぬ。それは
地方税あるいは
平衡交付金、
国庫補助金、
地方債というように
内容はいろいろありましようけれ
ども、とにかくそれだけの
事業分量をまかなうだけの
財源は付與されなければならない。ことに新しい法律、施策等によりまして、新しい仕事が
地方団体に命ぜられて、しかも
財源がそれに伴わないということが、今まで
地方財政を圧迫して来た大きな原因でありまするので、今後新しい仕事をする場合には、特に
財源措置は必ずそれに伴うということを
考えなければならぬのじやないかということでございます。
最後に
地方債の増加の問題でありまするが、その
財源付與の問題としては、
地方債の問題がもう少し重要視されなければならないのじやないか。過去における
地方債の状況あるいは
地方団体自体の財政
運営の
形式等から見ましても、
国庫とは非常に違うのでありまして、この際
地方債をもう少し増加する必要があるのじやないか。もちろんこれは国、
地方を通じまして大きな財政金融政策として、いろいろ問題はありましようけれ
ども、とにかく今の
地方団体の財政にとりまして、
地方債がもう少しわくがふえることが必要であるのではないか。以上四点について
地方財政につき改善をする方策をここに掲げたわけであります。
以上簡單でありましたが、
地方財政状況の報告書の
説明を終ります。