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1952-05-19 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第70号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十九日(月曜日)     午後一時五十九分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 小山 長規君 理事 佐久間 徹君    理事 内藤 友明君 理事 松尾トシ子君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       大上  司君    島村 一郎君       清水 逸平君    苫米地英俊君       夏堀源三郎君    三宅 則義君       宮幡  靖君    武藤 嘉一君       高田 富之君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      大月  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (副財務官)  清島 省三君         大蔵事務官         (管財局閉鎖機         関課長)    堀口 定義君         大蔵事務官         (銀行局特殊金         融課長)    有吉  正君         日本開発銀行調         査部事業調査課         長       網野 貞雄君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 五月十七日  揮発油税目的税として道路整備に関する陳情  書(第一八三九  号)  農業協同組合に対する課税減免に関する陳情書  (第一八四〇号)  観賞用写真物品税撤廃に関する陳情書  (第一八四一  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  長期信用銀行法案内閣提出第一一三号)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三八号)  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第一四三号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律案内閣提出第一九〇  号)  貸付信託法案内閣提出第一三〇号)(予)     ―――――――――――――
  2. 佐藤重遠

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  長期信用銀行法案貸付信託法案日本開発銀行法の一部を改正する法律案閉鎖機関令の一部を改正する法律案の四法案一括議題として、質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許可いたします。三宅則義君。
  3. 三宅則義

    三宅(則)委員 私はただいま議題となりました四法案中、貸付信託法案に対しまして二、三質疑をしたいと存じます。この貸付信託法案というものにつきまして、いろいろの案もございまするが、大体政府といたしましては、提案理由にもございますように、無記名定期というようなことを考えられておりましようと思いますが、貸付信託法案に対しまする効果等について、政府の持つておりまする法案の内容について、ごく簡單に御説明を願いたいと存じます。
  4. 大月高

    大月政府委員 貸付信託制度は、ただいまお話のございました無記名定期制度などと並びまして、一つ資金吸收の手段にいたしたいわけであります。御存じのように無記名定期も、この二月の十一日から始まりまして、資金吸收のためにそれぞれ実効をあげてはおるわけでございますが、現在までのところこの四月十日現在におきまして、無記名定期の総額は六百七十七億に上つております。従いましてわずか二月の初めからでございますので、数箇月の間にこれだけの実績を上げておるわけでございますが、何と申しましても一つ無記名であるということの魅力であろうかと存ずるのであります。証券関係におきましては、この貸付信託と同様に、証券投資信託制度があるわけでございまして、これも現在において二百四、五十億という実績を上げております。ただいま別に御提案申し上げております国民貯蓄債券も、やはり同様の趣旨によりまして、政府資金運用部資金として獲得いたすために無記名貯蓄債券を売り出す、こういうわけでございまして、やはり一つ無記名ということをねらいにいたしておるわけでございます。この貸付信託もその三つのものと並びまして、信託の面においてこの無記名の方式を応用し、なお信託につきまして、この受益権証券化することによつて消化を促進しよう、この二つのねらいを持つておるわけでございまして、それぞれほかの制度に比べまして特色を持つておりますので、いわば信託というものに愛着を持つておる階層が、なお一層この制度によつて資金を預けて来るということは、期待できるわけでございます。なおこの制度一つのねらいといたしましては、信託特殊性といたしまして、集まりました資金運用とが結びついておるという一つ特色がございます。資源の開発だとか、その他緊要産業に対する融資ということがリンクされておる意味におきまして、現在の経済界において要望しておるところ、国民の希望しておるところに金が流れるという意味もあわせ含めまして、一つ特色をなすかと思うのであります。ほかの制度と並びまして年間約六十億程度の消化を見込んでおるのでありますが、十分の効果を発揮し得る制度であろうかと考えております。
  5. 三宅則義

    三宅(則)委員 この貸付信託は、信託会社もしくは貸付信託につきましていろいろの契約もあるわけでございますが、受益者保護ということに十分な注意を促さなければならぬと思つておりますが、これには何か特別の方法がありましようか、承りたいと思います。
  6. 大月高

    大月政府委員 この貸付信託は、先ほど申し上げましたように無記名でございまして、転々流通するわけでございます。單に普通の信託関係におきましても、相当信頼関係を前提にいたしております関係上、普通の銀行信託会社に対する一般監督として十分監督いたしておるのでございますが、この貸付信託受益権は特にこれが無記名証券に化体することにより、なお一層投資者保護を必要といたすわけでございます。従いまして個々の規定相当の部分は、その投資者保護という観点からできておるわけでございます。さしあたり第三条におきまして、まず信託約款大蔵大臣承認するという点が一点でございます。ここでは金額であるとか、あるいは信託目的であるとか、その他配当条件だとか、あるいは計算の時期だとかいうことを、全部発行の前に大蔵大臣が審査いたしまして、間違いがないというところで承認いたすわけでございます。それからこの証券を発行いたしました後、事情の変更がございまして約款を変更しようといたします場合は、同じく大蔵大臣承認を要する。そうして一般に売り出す場合には、この信託約款に基いて信託契約を結ばなくちやいかぬという制約を置いておるわけでございます。なお信託約款を変更いたしました場合に、実はそういう条件でこの証券を買つたんじやない、趣旨が違うのであるということで、この信託契約から脱退したいという投資者もあるかと思うのでございまして、そういう場合には受益証券を持つております受益権者の請求によりまし、信託会社はこれを買い取る義務が與えられるわけでございます。それから第三点といたしましては、この受益証券は期限は二年以上を原則といたしておりますが、かりに資金投資者の側におきまして、資金の必要がございまして換金いたしたい、こういうような場合には、信託会社がこの受益証券をお互いの相対づくで買い取つてよろしい。これによつて投資者保護をはかつておるわけでございます。それから第十二条の信託財産運用自体につきましても、特別に貸付方法と割引の方法以外でやつてはいけないという制約も置きますし、その他信託会社に対しまする監督規定でございます。信託業法は、全部この制度の裏をなします信託会社に適用があるわけでございまして検査もいたしまするし報告もとるということによつて、万遺憾なきを期することになつております。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員 この証券に対しまして、税金の面でありまするが、これを記名式にした場合は利益配当に対して百分の二十となつておりますが、貸付信託の場合は源泉の方でどういうふうにとる予算でありますか、承りたいと思います。
  8. 大月高

    大月政府委員 この貸付信託は、一面から申しますと無記名有価証券になるわけでございますので、その点におきまして無記名公社債あるいは貸付信託受益証券と同様に扱いたいわけでございます。その点から申しますと、これは二〇%の源泉徴收をいたしまして、そのあとは申告にまつ、こういうことでございます。それからこの貸付信託は、他面におきまして合同運用金銭信託の性格を持つておるわけでございまして、その点は一般合同運用金銭信託にかかります税金、つまり源泉選択をいたしますれば、五〇%の税率、選択をいたしません場合には、一般記名式の預貯金あるいは普通の金銭信託と同様に課税せられるわけでございます。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員 先ほどの御説明にもありましたが、一般に二箇年ということになつておるその期間を、一年以上に改めることができるというふうに説明してあるわけでございまするが、これは二箇年を原則といたしまして、場合によりましては一年でもよろしい、こういう意味合いでしようか。その辺を承りたいと思います。
  10. 大月高

    大月政府委員 この法律の本文におきましては第三条の第三項によりまして、貸付信託にかかる信託契約期間は、二年以上でなければならないという原則を立てておりまして、一般的に申しまして一年ものは出せないということになつております。ただこの制度はこのたび初めて実施いたします関係上、かりに制度ができても、売れないということでも趣旨にかないませんので、安全を見まして、試験的にこの法律を施行いたしましてから一年間に限つて、一年ものを出すことができる、こういうことにいたしたわけであります。従いましてこの法律施行後一年を経過いたしました後は、何にも法律的な措置をとりません場合には、二年以上でなければならないということでございますが、この消化実績その他をごらん願いまして、次の国会において御審査願う場合に、その一年という期間を延長するかどうか、再び御検討願う趣旨であります。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 「受益証券消化を容易にするとともに、長期資金融資先資金の安定をはかるため、」と書いてありまして、「信託会社が一年のすえ置き期間を置き、その固有財産をもつて受益証券を買い取り得る道を開いております。」と提案理由説明でおつしやつたわけですが、これは転々と流通するような普通の金銭、貨幣、紙幣というようなものとの関係は、どんなふうになつておりましようか。ちよつと承りたい。
  12. 大月高

    大月政府委員 この点は一般無記名公社債に関する取締りと全然同様でございまして、この法律におきましても、十五条で「通貨及証券模造取締法は、受益証券模造について準用する。」こういうことになつております。従いまして、現在興業銀行勧業銀行等で発行しておりますいわゆる金融債無記名公社債、そういうものも全部いわゆる通貨に類似する重要なる証券といたしまして、摸造、変造、偽造そういつたものは、一切刑罰をもつて取締つてあろわけであります。
  13. 三宅則義

    三宅(則)委員 信託会社経営を安定せしめるということは、われわれの念願するところでありますが、損失を招くような経営状態にあつたのではたいへんでありますからして、これはよほど監督する面において、多少收益のあつた場合におきましては、相当量積立金をいたしまして、これに対する監督を嚴にする、こういうふうに私は考えておりますが、実際に監督面におられます方は、どういうふうに考えておられるか承りたい。
  14. 大月高

    大月政府委員 現在におきましても信託報酬につきましては、業務方法書というものをこしらえまして、その中にそれを記載いたしまして、それを大蔵省で審査いたすことになつております。その貸付信託自体につきましては先ほど申し上げました信託約款記載事項の中に、信託報酬計算方法支払い方法、時期に関する事項というものがございまして、そこで元本に対しまして何銭何厘の割でとるということをあらかじめ書きまして、それが信託会社といたしまして適当な手数料に相当するものであるかどうかということを、厳重に見るわけでございます。それで高率の配当をいたしますために、みずからの收益を食つて配当するというようなことがないように、その信託約款承認の際にそれを審査する、こういうことにいたしております。
  15. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の御説明も了承するにやぶさかでございませんが、ときどきこういう問題につきましては、よほど第三者の立場、たとえば公認会計士とか、計理士とか、職業監査への意見を徴することも必要だと思うのでありますが、現在は、財務局財務部というようなもので監督しておられるのでありましようか。あるいは第三者信用ある監査人監査も必要だと思いますが、これに対して政府はどういうふうに思つておりますか承りたい。
  16. 大月高

    大月政府委員 この貸付信託に対する監督は、先ほど申し上げました特別の承認事項とか、その他受益者保護のための買取り以外の点につきましては全部現在ございます信託に対する監督と同様でございます。これは基本的には信託業法によつて規定いたしてあるわけでございまして、大蔵大臣が直接に報告を徴し、検査をする権限を持つておりまして、現在も運用といたしましては、主として信託をやつております信託銀行が六社ございますが、これは全部大蔵省の直轄といたしまして、銀行局検査部検査いたしております。それからその他いわゆる兼業従事者言つておりますが、一部信託業も兼ねておりますものにつきましては、地方銀行及び中央銀行につきましてともにやはり大蔵省でやつており、一部財務局検査する場合もあるということであります。
  17. 三宅則義

    三宅(則)委員 大蔵大正臣ちよつとお尋ねしたいと思います。実は地方をまわつてみますと、講和が成立いたしましたから、貨幣制度金融制度につきまして、多少変革がありはしないか。たとえて申しますと、平価の切下げとか、あるいは円單位を何か別の單位に直すとかいうような変革がありはしないか、ということを聞かれるわけであります。私の見るところによりましては、池田蔵相の続く限りそんなことはない、こう言つておるわけでありますが、中にはそういうような疑問点を持つておる者もあるわけです。そこでこの機会にひとつ池田大蔵大臣には確固たる基本方針がありましようか、一応承りたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 貨幣制度金融制度につきまして、差向き金融制度長期金融機関を設置するというふうなあれで、変革を加えるつもりではありますが、貨幣制度、ことに御指摘のデノミネーシヨンの問題なんかは、私は考えておりません。今朝もある代議士からそういうものについて質問するという話がありましたが、質問なさつても何もないでしようと、こう言つておいたのであります。デノミネーシヨンをやる具体的な案があるかといつたら、ありはしない。風声鶴唳と申しますか、とにかく取越し若労をする人には、いくら言つても取越し苦労はやまぬものでございますが、池田大蔵大臣をやつている間は、もちろんデノミネーシヨンをやるなんということはありつこありません。
  19. 三宅則義

    三宅(則)委員 そのことは今大蔵大臣の御説明によりましてはつきりしたのでありまして、私はこの機会にただいま問題になつております長期信用銀行について、池田大蔵大臣に二、三質問をしたいと思います。長期信用銀行は昔の勧銀もしくは興銀、これらが土地家屋機械等を利用いたしまして設備資金なりあるいは長期運転資金にこれを利用する、こういう線を出されるわけでありますが、私は何とぞ中央だけではなしに、地方にも長期信用銀行の設立を願いたい。たとえば昔の農工銀行というような意味合いのものが必要かと思いますが、大臣はどう考えておりますか承りたい。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 私は地方の方に各県別不動産銀行と申しますか、長期金融機関を設けることがいいか悪いかという問題になると、私は必ずしも賛成いたしません。やはり中央に大きいのがありまして、それが各地支店を置いてやるのが便利がいいのではないか。それは明治時代から続いておりました農工銀行が、最後には勧銀に合併されたあの経過から申しましても、大きい銀行各地支店特つて、その分野に精進するという万が適当ではないかといつた気持を持つておるのであります。従いまして今回強力な長期金融機関を設けて、そうして今手薄い不動産担保あるいは長期金融機関と申しますか、そういつたものを設けよう、こういうふうに考えております。
  21. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の御説明によりまして、地方には大きな銀行のいわゆる長期信用銀行支店を設ける。これは私も賛成する一人でありますが、ややもいたしますと、大きな銀行は実に官僚的で困る、こういうことを言われるわけであります。何とかひとつ具体的によく了承いたしまして、早く納得行く線を出すために——地方銀行とも関係があるわけでありますが、そういうふうな土地家屋機械というようなものにつきましては、よほど基準をきめまして、納得の行く線で早く処理する、こういうように御指導を願いたいと思いますが、大臣はどういうふうに考えておりますか。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 敗戦後金融制度が乱れまして——乱れると言うと語弊があるかもしれませんが、そういう截然たる特殊の使命を持つ銀行がなくなつて商業銀行を主とした地方銀行がこれに当る。しかもまた一県一行主義が行われておりましたために、非常に独占的なところがあつたのであります。最近におきましては、一県一行主義を打破すると同時に、各地相互銀行相当有力になつて参りました。これらが今後中小企業または不動産金融の方にも向いて行くのではないかと考えておるのでありまして、少くとも相互銀行におきましては、今の各県の商業銀行よりももつと手の届いたことを、中小企業者にやつておると確信いたしておるのであります。従いましてこういうものを、大蔵省としては育成して行こうという考えであります。
  23. 三宅則義

    三宅(則)委員 わが国の物資輸入等考えまして、ある程度まで政府長期金融をいたして、この貿易輸入面についても考慮せねばならぬと思います。平和になりました以上は、政府方針もその辺にあるものと思いまするが、これについて大臣はどう考えておりまするか承りたい。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 輸出入貿易を振興さすことは、これはわが内閣の最も力を入れておるところでございます。しかし最近の情勢によつて見ますると必ずしもわれわれの企図するほど行つておりません。しかし今までかせぎました外貨相当蓄積されておるのであります。この際将来の競争力考えて、合理化のためにこの外貨をできるだけ使おう。また進んでは必要は物資につきましてもこれを使つて行こうという方針をきめて、各界を指導しておる状況であるのであります。また当初その計画なんかにつきまして十分でないところもありますので、業界の万々の意見を聞きまして、できるだけ設備近代化あるいは必要原材料輸入ということについて、努力したいと考えております。
  25. 三宅則義

    三宅(則)委員 具体的なことになりまするが、住宅に関しましては金融公庫というものがあるわけでありまするが、なお大都会等におきましては不足を感じておるわけです。住宅金融に対しましては、相当大幅に政府も力を入れていただきたいと思いまするが、これについて大臣の御構想を承りたいと存じます。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように今衣食住のうちで一番困つているのは住宅だと思います。従いまして予算でごらんになりましても、住宅公庫への一般会計並びに資金運用部融資、並びにまた公共事業費から縣を主体とする住宅組合等への融資、あらゆる面でやつておるのでありまするが、今後におきましても今までの方法を強化すると同時に、最近におきましては資金運用部の金を使つて労務者住宅をもつと建てよう、こういう考えで進んでおりまする
  27. 三宅則義

    三宅(則)委員 これは東京のまん中を言うわけでありまするが、非常に大きなビルデイングがたくさんできているわけでありまするが、あれは全部自己資金によつてつておりまするか。政府資金あるいはその他の資金を仰いでやつておりまするか。これはわれわれとしては重大問題でありまするからこれについて政府の御方針を承りたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 自己資金ということになると定義がなかなかむずかしいのでございまして、銀行ビルの一階を占拠しておりまするが、その銀行の出した金は自己資金が、こういうことになると三宅さんも必ずしも自己資金とは言われますまい。銀行がそうでございますので、一般事業会社は必ずしも自己資金ばかりというわけにも行つていないと思います。しからばその金はどこから出たか、こうなりますと自己資金もある程度ありましようが、相当借入れをしております。しかし借入れをするのにビルを建てて、そこへ入る権利料というので借り入れた場合はほとんどないと思いまするいろいろな仕事の面で借り入れてその一部分が権利料になる、こういうのが多いのでございまして、こういう点から考えまして、昨年の秋にビルの建設はしばらく遠慮してもらいたいというように、銀行を指導しておるのであります。今やつておりますのは、前から手をつけておるもののみでございます。途中でちよん切つてしまうということも、これは経済的にどうかというので続けさせておりますが、新規のものはよほどひどく押えております。
  29. 三宅則義

    三宅(則)委員 池田大藏大臣はもちろん財政経済一般に精通しておられるわけでありまするが、ことに前からの念願でありまする中小企業につきましては、何かよい方法はないかと思いまして、われわれは考えたわけであります。常に市中をまわつてみますると、一番困難を感ずるのは中小企業金融でございます。この対策にはあるいは国民金融公庫なりあるいは商工中金あるいは農林中金というものがあるわけでありまするが、何かこの市価の暴落たとえば繊維の暴落とかあるいはその他の変化がありまするときにおきましては、救済方法というものもないかもしれませんが、何か金融面をつける方法はありませんでしようか。中小企業によく頼まれるわけでありまするが、政府としての御方針をこの際承りたいと存じます。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 中小企業金融につきまして、ここ二、三年来画期的な改正等をし、また政府としても努力いたしておるのであります。何と申しましても少い金でございます。また中小企業銀行から十分の信用を得て借りるということも、なかなかむずかしい問題でございます。たとえば商工中金あるいは国民金融公庫あるいは信用保証制度、また銀行におきましても、中小企業専門銀行を設ける、あるいはそれに対して見返り資金から数十億円を出す、こういう態勢を整えておりまするが、なかなか今の銀行が積極的に動くまた中小企業者銀行納得が行くような信用説明することがなかなか困難なものでございますので、十分行つておりません。しかしいつの世、いつの国でも、これは一番むづかしい問願でございまして、全体に経済運行を円滑にするということが第一だと思います。中小企業と申しましても、やはり大企業につながつておりますので、大企業を育成することが間接に中小企業の育成にもなります。また中小企業に対しまして、できるだけのことをすることが、ひいては大企業にもつながりを持つことになるのでございまして経済運行を正常化して行く、これが第一の仕事、その間に取残された弱い方々に政府特別措置をする、こういうことよりほかにないと思います。
  31. 三宅則義

    三宅(則)委員 具体的な例になるかもしれませんが、私どもは貿易金融というものは非常に関係が深いと思います。これはしばしば他の議員から質問があつたと思いまするが、ドル地域米英ばかりでなく台湾その他の地域、東南アジア地方とはひとつ大いにやつてもらいたいという希望もあるわけでありまして、特に中小企業等につきましては、生産する物は大国のみに輸出するのではなくして、むしろ東南アジア地方の弱小国、こういう方面に向くものが多いと言われておるわけでありまするが、これについて政府は何かお考えがありまするか承りたい。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 昔の中小企業者を中心とした輸出産業というものは、おおむね問屋が介在いたしまして相当な勢力を持つておる。しかしてこの問屋の上に強力な貿易商社があつた。今は強力な貿易商社も財閥解体でなくなつてしまいましたし、また問屋も一時壊滅に瀕した。この商社や問屋が徐々に復興しかけたときに、昨年の一月以来の問題が起きて参りました。中小企業の商社や問屋が整備拡充が思うように行かず、ちよつと頓挫したような状態になつて来たのでありますが、日本といたしましては、何をおいても貿易には商社の強力なものを育成しなければならぬし、また個々の業者と商社とのつながり、問屋の制度を育成して行かなければならぬ、こう考えております。
  33. 三宅則義

    三宅(則)委員 大分長く伺いましたが、最後にもう一点伺わせていただきたいと思いまする事柄は、われわれといたしましては、常に中小企業、大企業ともどもに発展して日本の経済の正常を期したい、これは念願しておるところでありまして、幸い講和が発散になりまして、十分なる活動とまでは行きませんと思いまするが、政府は何か特別にこういうものに対しまする振興策を講じておりまするか。たとえば開発銀行もございますでしようし、また輸出入銀行もあるわけでありまするが何か抜本的な方針政府ではお持ちになつておりまするか。この際ひとつ国民に示していただきたいと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはつきりいたしませんでしたが……。
  35. 三宅則義

    三宅(則)委員 今日といたしましては、日本の経済が正常に復し、講和が回復いたしました以上は、日本の貿易を通じまして、経済上におきましてもあるいは金融上におきましても利益を得たい、正常に復したい、こういう念願でありまするが、何かこれを啓発させるために、今まで日本開発銀行でありまするとか、あるいは輸出入銀行等を通しまして、その産業の育成に努力せられたわけでありまするが、何か抜本的な方針政府としては持つておられまするか、この際お示しを願いたい、こう考えております。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 そう抜本的な注射藥があるわけではありません。今までの政策を地道に、できるだけ急速度に進めて行こう、これだけであります。
  37. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は今の大蔵大臣説明をずつと聞いておつたわけでありますが、日本が独立国になりました以上は、日本の政府において、また議会において十分審議し、いろいろな法律案をつくれまするし、事業を計画することもできるわけであります。本年度はすでに予算も通つたわけでありますが、取越し苦労かもしれませんが、来年度予算につきましては、政府はすでに着手せられつつありましようか。その点をひとつ承りたい。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ着手をいたしておりません。
  39. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は、国会は六月半ば、もしくは六月過ぎに終るものと思いますが、新聞紙の伝えるところによりますと、八月上旬には第十四通常国会が開かれるだろう。こういうことが言われておるようでありまして、もちろん来年の選挙もしくは本年末の選挙を勘案いたしてであろうと思いますが大蔵大臣といたしましては、予算の概要などはとりあえずつくる必要があろうかと思いますが、これに対しまして大臣の御構想をこの際承りたいと思います。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 予算をつくりますのには、そう時間は要しません。いつまでにつくれとおつしやれば、それまでにつくります。一週間ででも、十日ででも、二十日ででも、あるいは五日ででもつくります。ただ印刷の期間が二週間いるということだけを御了承になれば、絶対多数を擁しておる自由党内閣でございますから、すぐできます。いつ開こうと、私のために国会が開かれなかつたとかいうような汚名は、大蔵大臣として受けたくないという気持で、いつでもつくれるようにしております。
  41. 三宅則義

    三宅(則)委員 今の大臣お話によりまして、私も意を安んずる一人であります。  最後に、たびたび承りましたが、金融面の金利を下げろという説と、多少金利を上げましてもという説があるわけでありまして、この際も高金利なんという問題が出て参りましたが、私どもは、法律でもつて高金利の程度をきめるなどということはまことにおかしな問題である、かように思つておるわけでありまして、大蔵大臣も、これに対してはひとつ御反省を願いたい。たとえば五十銭をもつて高金利の限度とするというようなこともあつたわけでありますが、大臣といたしましてはどういうお考えでありますか、この際その方針を承りたいと存じます。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 三宅さんは大政治家だから、大きい意味からの金利問題を議論せられておるかと思いましたら、やみ金融の金利の問題に移つておるようでありますが、金利全体の問題といたしましては、ここ半年あるいは一年前は、金利は高くても金さえ貸してくれればいい、こういう議論が強かつた。最近はとにかく金が相当出まわりつつあるものですから、金利が高過ぎる、もつと安くしろという議論が出ておるのであります。私は産業面から行きまして、日本は全体に金利水準が高い、できるだけ下げて行つた方がいいと思いますが、これもまた一概に全部を下げるというわけには参りません。やはりそのときの情勢によつて、産業区分別に、また資金の長短別にいろいろな考えをしなければなりませんが、全体としては貸付金利は下げて行くのが至当だと考えておるのであります。  それから金融取締りの関係で、五十銭とかなんとかいうのがあるそうですが、私はよく存じません。これは普通の金利の問題ではありますまい。金利水準の問題なんかでなしに、えてしてしつかりしない金融機関、金融を取扱つておる人が、いろいろな手で——脱法とも申し上げかねるかもしれませんが、普通のやり方でないものが行われるやに聞いておりますので、それを取締る方法としてやつておると思いますが、これは金利水準から来た金利ではないと思います。
  43. 三宅則義

    三宅(則)委員 今のお話によりましてもちろん金融面におきまする普通の金利は下げる方がよい、まことに意を得た御答弁でありますが、高金利、いわゆる高利貸しの定義法律できめるということは、まことにおかしなことであると思うわけてありますから、具体的にきまらぬかもしれませんが、たとえば政令等によつてこれを取締る。大蔵省は直接監督できないので、地方の警察権にこれを委讓いたしまして取締るというようなことになるかと存じます。しかしこれは何かほかの方法をもつて法律でなく、政令等で高金利を取締つた方がよろしいかと思いますが大蔵大臣はどういうふうに思つておりますか。法律案が今出ておるわけでありますので、直接関係があると思いましたから、これを伺つたわけであります。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
  45. 大月高

    大月政府委員 高利貸しという名前の問題でございますが、現在の法律にも高利貸しという名前は出ておらないと思います。現在ございますのは、貸金業という一つ定義が加えておりますが、それをこのたび廃しまして、一般のいわゆる暴利に類するものを刑罰をもつて取締ろう、こういう趣旨でございます。
  46. 三宅則義

    三宅(則)委員 大蔵大臣にもう一点追加してお伺いさせていただきます。ただいまの質問によりまして、大蔵大臣の御方針、わが国の経済、財政のあり方等について大要わかつたのでありますが、われわれといたしましては、農村を含めた中央地方の大企業中小企業ももちろんのことでありますが、一般金融の水準を円滑にせしめまして、経済の安定をはかりたいというのが、われわれの念願するところでありまして、ことに大蔵省といたしましては、国内の金融並びに経済を正常化するために努力せられておるのは多といたしております。でありますから、この際関連して質問しておきますが、さらに法人税等について、あるいはこれを低める、あるいは高めるとかいうようなお気持がありましようか、ありませんか。私どもは、なるべく経済を安定するために、あまり上げたくない、かように思つておるわけであります。ただ地方税等については、多少変革することはもちろんあると思いますが、所得税並びに法人税等については、これ以上上げる必要はないと思つておりますが、大臣はどう考えておりますか承りたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 今の税率以上に法人税、所得税を上げる考えは、ただいまのところありません。どちらかと言うと下げたいくらいで、検討しておるのであります。地方税につきましては所管でございませんが、地方税につきましても大体同じ方向ではないかと考えております。
  48. 佐藤重遠

    佐藤委員長 ただいま四法案に対する質疑を続行いたしておりますが、この際、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案をあわせ議題として、質疑を続行いたします。宮幡靖君。
  49. 宮幡靖

    宮幡委員 きようは大臣がお見えになる日ではないと思いましたので、十分準備がありません。それで大蔵大臣の名答弁を聞くことができないことをおそれるほど愚問であるかもしれませんが、いろいろな方面にわたつてお伺いしてみたいと思つております。  一昨日でありましたか、予算委員会において総括的質問でお尋ねいたしましたが、大臣はほかの委員会においでになつて、安本長官から御答弁をいただきました。大体政府方針としてはおそらく安本長官の御答弁で十分だろうと私は思うけれども、一応大蔵大臣としての立場から、簡単でよろしいから、ぜひ御答弁をいただきたい。御記憶のよい大蔵大臣は、当日の私の質問の要領はお聞きとりであろうと思いますが、何分にも繁多な行政面のお仕事を担当しておられるので、あるいはよく御記憶にない点もあるかもしれませんから、蛇足と思いますが、その要旨を申し添えまして、御答弁をいただきたいと思います。  現在のわが党の政府と申しますか、これの執行いたしておりまする財政経済の諸政策は、自由主義経済であるということは、これは論をまちません。自由主義経済と申しますものは、事新しく申し上げるまでもなく、国民経済の基盤に創意と、くふうと、努力とを強く要望する資本主義的な経済あることも、また私が申し上げるまでもないことであります。しかしてこの場合におきまして、いわゆる物量の不足のときと、物量の充実いたしましたときとの両面から、簡単な言葉で申しますならば、過剰生産となつた場合——ただちに今過剰生産に陥つていると私は極論するものではありませんが、もし過剰生産に陥つたというような場合にこれらの経済主義からながめて参りますと、もとより社会主義的な統制経済の理念とは遠ざかつているものでありますが、相当の需給調節の必要性が生れて来るということは、これは当然考えられれなければならないところであります。たとえて申しますならば、生産調節というようなことを自主的に行われることが必然の傾向である、こうも考えられるわけでありまして、これを自由放任の形で調節をさせて行きますと大衆の——おもに消費者でありましようが——利益を一部の企業家等に吸收されるというようなおそれも多分にあるわけでありまして、この現象は明らかに経済の民主化の憲法であります独占禁止法、あるいは附属法令の事業者団体法等の精神にも矛盾があるかと思うのであります。一体熾烈なる自由競争の中に放任しておきまして、自然淘汰をまつということも、経済の行きがかり上よいことではありますが、大衆の生活をまつたく顧みない、いわゆる見送り主義、自然淘汰をまつて物の生産調節等が行われるということを待つのがよいか悪いかということは、多大の疑問があるわけであります。そこで自由主義経済の中に、民主的な経済の計画性をひとつ織り込んだらどうだという考え方が出て参りまして、これは機会あるごとに大蔵大臣にお尋ねをしておるのでありますが、ときたまたま独立の機会でもありますので、この際何らかかようなお考えがあるか。この点につきまして、簡單でけつこうでありますから、御所見を伺いたいのであります。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 えてして計画性とかいう議論があるのでありますが、私は国民経済全体を見て、しかもまた国際経済とのつながりにおいて、宮幡君のいつも言われます、民間の方々の創意くふう、努力で行くのが本筋だと思います。ただ問題は、それでは政府は財政を持ち、金融監督をしておる立場から、一切介入しないかということになりますると、私はこういう生産力のあまり伸びていない、しかも資材の不足な国で、そして外国市場に影響を受けやすい日本としては、基幹産業方面におきましては、できるだけの助長的の態度をとる、こういう方針で、基本は自由主義経済でございまするが、足らざるところをこちらである程度補つて行く、こういう考えで進むべきだと思つております。
  51. 宮幡靖

    宮幡委員 最近予算委員会の空気などを見ておりますと、大陸貿易、ソ連との貿易というようなことについて、おもに野党側からでありますが、何か政府の怠慢でも追究するかのごとき発言がありまして、また政府大臣及び政府委員説明を聞きますと、それが一つの重大な問題であつて、それを解決するのが当然であるというような、きわめて安易な答弁をしばしば聞いておるのであります。もちろん最終的におきましては、経済において国境はないはずでありますので、イデオロギーの相違から国境をあえて設くべき観念は、認容すべきではありませんけれども、これらの問題につきまして、現政府の認識というものは必ずしも妥当でない。と申しますのは、過去の、ことに中共貿易の促進などという問題を主張せられることが、どうも観念論が多いのであります。われわれが今後独立の中に中共貿易も促進し、あるいは思想は違つておりましても、ソ連との貿易等も開かなければならないという蓋然論をなします方々に大いに反省を加え、しかして地道な方法によつて、これをすみやかに回復できる方途に努力を払うべきことに、私どもは異論はないのでありますけれども、根本的に考えてみて、一体ソ連と日本が占領下において通商交易いたしました実績政府は何と心得ておるか。これも私は、政府委員から強くこれらの実績をあげまして、さような質問に対しての御答弁を期待しておりましたが、それらの点には言及いたしておりません。たとえば、占領下の日本にかわつて連合国総司令部がソ連と交易いたしました実績——送りましたものは鉄道の車両とか、まくら木とか、小型の木造船とかいうものであつた。しかも日ソ金融協定は厳然として存在しております。しかもその決済をソ連がスムーズにいたしましたか。決して払つていない。のみならず、現在においても相当金額が未決済になつている。一体こういう国とすみやかに貿易を再開せよなどと要求する方の観念が狂つておると私は思う。従つてそれらを強調いたしまして今日まで日ソ貿易というものが容易に友好的な状態において再開せらるべきものでないということを、政府ははたして強く認識せられておるのかどうか。これは大蔵大臣の立場だけでけつこうでありますから、この点についての御意見を明らかにしていただきたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 中共貿易とか、日ソ貿易ということをいわれておりまするが、私は宮幡君のおつしやることはよくわかるのであります。終戰後の中共貿易あるいは日ソ貿易は、お話の通りにあまりウエートはございません。終戦前におきましては、数十万、数百万の人が当時の中国全土におりました。しかも経済的に最も優位な地位にある日本において占めたあの貿易上の関係を、敗戦後の日本がそのまま継ぎ得ようなどと考えることは、よほど甘いのでございます。もう今は日本から出ておる人もおりませんし、権益もない。こういうときでございます。しかもまたそういう状態であつて、中国から鉄鉱石とか、あるいは大豆、塩を持つて来るといいましても、向うの人は、日本ヘアメリカから入れた場合の価格がどれだけだということはよく知つております。だから中共の連中としても、アメリカから仕入れた物の値段に引合すように、向うの原価をきめるということは、当然のことであります。だからここで議論されているような甘い問題ではないと私は考えておるのであります。たとえば一昨年の暮れごろ、せつかく大豆が日本の港まで来ましても値段が暴騰したらおろさずに、そのまま帰るとか、いろいろな例があるのでありまして、ここで議論されておるようなことにはなりにくい。しかし、それだからといつて、中共との貿易はこんりんざいいやだとか、ソ連との貿易はわれわれは考えていないとか、こうはねつけるわけでもないのでございまするが、といつて、ここで議論されているように甘いものでないということは、日本の財界の人も、心ある人は御存じだと思います。あなたの御質問は私にはよくわかります。
  53. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁はまことに適切であつて、あるいは私個人の感じかもしれませんが、最近の政府側の御答弁として最大のお考えであると思うと同時に、その気持に対して少からず敬意を表するものであります。そこで、そのようなことについてこれからあと一々お答えをいただいていては、時間がむだになりますので、大体項目を並べまして、最後に大蔵大臣のお答えをいただくことにいたします。  まず、サンフランシスコ平和條約において、日本の賠償義務の限界はおおむね明らかになつたわけであります。しかしながら、平和条約の未締結国の方が多いのであります。調印国の四十八箇国全部が条約を批准し効力を発しておるのではない現在、もし貿易その他の関係におきまして、日本が債権を持ちあるいは資金を個々に集めるといつたような立場になつた場合に、いわゆるアタツチメントと申しますか、そういうことが絶対に起らない——平和条約を締結した国はわかつておりますが、しからざる国と通商貿易をいたしまして起つた日本のいわゆる債権、かようなものに対してアタツチメントが絶対にないというお見通しがあるかどうか。これが一点。  それから国際通貨基金にまだ加入しておらない、あるいは為替銀行制度が確立しておらないで——これは日本の方にもそういうことが言えますが、コルレス契約も締結のない状況で、正常の貿易が開始されるとは考えられぬのであるが、その点について大蔵大臣はどう考えておられるか。これが第二点。  現に占領下において行われました中国との貿易、これはエスクロー・バーターと申しまして、しかもこの貿易実績というものを反省してみますると先ほど大臣の御答弁の中にもありましたように、われわれの方、日本側の義務の不履行あるいは責任の回避等によつて貿易が行われないのでなくして、相手方、少くとも中国側のそれぞれの機関におきまして不履行の場合が多いのでありまして、輸入先行でエスクロー・バーターいたしましても、その実績が少しも上つておらない。こういうものに対しまして、またいまさらのごとく大陸貿易という大目標のもとにこれを唱えても、実際実現の力があるかどうか。これは大蔵大臣考え方を伺えばいいのであります。これが第三点。  その次の問題は、大体先ほどの大臣のお言葉にもありましたが、戦前において日本の大陸貿易が振つたということは、大陸の中に日本の経済活動の基盤があつた。大臣の言葉を拝借いたしますれば権益を持つておつた。それによつて日本との通商貿易機会が生れて来て、その貿易が振興したのである。しかるに今のように権益も何もない裸の日本が中国と貿易をいたしまして、はたして観念論でいうがごとく、ウエートがあるところの貿易が再開せられるとお考えになつておるかどうか。またソ連について考えてみましても——これは少し外務大臣の方にも及ぶ話でありますが、ソ連の通商代表部というものは日本にありません。今ありますソ連の代表部というものは、これを認めるとか認めないとかについては、岡崎国務大臣はまことにうまい答弁をせられておりまするが、これは占領下にありました日本の実情におきまして、あくまでも総司令部に対するソ連代表部であつて、日本に対する代表部ではない。こういうソ連の通商代表部もないようなときに、ソ連との貿易をやるべきだ、やらないならば政府の責任だなどと追究いたしますことは、妥当性がないと私は考えるが、これはどうであるか。従いまして、こういう諸条件を——まだたくさんありますが拾つてみましても、大陸貿易などということを、観念論的に政府を追究いたします議論として述べて参りますならば、どう考えてみても——平和回復ということはもとより望ましいことであるが、もしできなくとも、いわゆる国交の回復、友好の状況に返るということが先決問題であつて、その後におきまして初めて、イデオロギーの相違がありましても、経済的交流が行われるべきである。いわゆる貿易の再開の方が国交の回復のあとであるということ左私どもは考えるが、その点はどうお考えになつておるか。  さらには、これは大蔵大臣直接の問題でないので、お尋ねするのは無理かもしれませんが、予算委員会質問の中にもしばしばバドル法のことが申し述べられております。もちろん基本法はケム法、ケム修正法であつて、最近はバトル法でありまして、日本がアメリカの援助を受け、バトル法の条件にはまりまするならば、日本の貿易管理の諸法制というものも、もちろんこれに固定いたさなければならないのでありますが、現在の日本といたしましては、国連憲章の精神に矛盾しない限り自主的な貿易政策をとることができることは疑いないところであります。従いまして、バトル法を忠実に守るがゆえに貿易ができないのだという非難は私は受けたくないのでありますが、貿易及び金融政策を担当せられております大蔵大臣としましては、これらに対してどういうようなお考えを持つておられるか。大要でよろしゆうございますから、この際御答弁をいただきたいのでおります。しかしてなお委員長に申し上げておきますが、その他の問題は話し出すとやはり長くなりますからきようは譲ることにいたします。
  54. 佐藤重遠

    佐藤委員長 了承いたしました。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 アタッチメントの問題はやつかいな問題でございまして、こういう制度があるのでというので非常に手控えたこともあります。何もそういう心配はいらないという説もありますし、やつかいな問題でございましたが、結局アタツチメントを頭に置いて今まで措置をとつて来たわけでございます。従いまして、講和条約調印国の間においてはございませんが、その他の国におきましては、やはり今まで通りにこのアタツチメントの問題は考えて行かなければならぬと思うのであります。第二番目の、為替銀行その他がないと通商貿易もうまく行かぬじやないかこいうことはその通りでございます。しかし為替銀行は向うの銀行とコルレスを結んでおります。またこちらから商社が行かなくても、向うの商社がかわつてやればできることでございます。しかしいずれにいたしましても、今後におきましては、為替銀行が向うに支店を持つことが望ましい。また貿易商社あるいは産業団体、企業家が向うに支店を持つことも望ましいのでございますから、今後はそういう戦前の姿にできるだけ早く復帰したい、こういう考えを持つております。それから中共貿易の問題でいろいろな御指摘がございましたが、ただいま申し上げましたような状態で、国交が回復していない場合におきましては、いわゆる支払いの問題なども直接にどうこうという処理はむずかしいのでございます。こういうことが中共並びにソ連との貿易を阻害しているわけです。そこで最後のお話貿易というものは、国交が回復しなければできないのではないか、こういう結論に来ると思いますが、しかしながら、国交を回復しなければ、貿易は全然あり得ないというわけのものでもないのであります。香港を通ずるとか——あるいはバーターも考えられないことはありません。しかしいずれにいたしましても、国交が回復しなければなかなかやりにくいということだけは確かだと思います。  それからバトル法の問題でございますが、経済的に見て、中共貿易は今の状態ではそう大して期待できない。そうするとやはり最もいい得意先のアメリカや東南アジアのドル地域との貿易に、主眼を置くことが必要だと思います。バトル法が独立した日本に適用があるかないかという問題につきましては、所管外でございますが、経済的に何もアメリカあるいは東南アジアの自由国家群の感情を害してまでも、むずかしい貿易をすることは、商売の上からどうかという気がいたしております。
  56. 高田富之

    ○高田(富)委員 今の宮幡君の質問に関連もあるわけでありますが、この貿易を中心といたしましたただいまの大臣の答弁につきまして、重ねて所信をただしておきたいと思うのであります。  輸出入計画が、最近のボンド過剰問題、あるいは各国の輸入制限の強化の傾向に遭遇いたしましたために、わが国におきましても、当初に比較いたしまして、計画を縮小せざるを得ないような状態になつておるというふうに、安本あたりの数字を見ましても出ておるわけであります。政府経済自立のために、講和後におきましては、特に輸出入の貿易を拡大するというところに、相当の重点を置くように従来言明されて来たわけでありますが、最近の政府の施策等を見ますと、やや従来のそうした言明に反しまして、輸出入計画を縮小せざるを得ないような建前に立ち至つておるように信ぜられるのであります。このような状態でありましては、今後のわが国の経済というものは、従来の占領下におけるよりも一層苦しくなり、縮小せざるを得ないような状況になり、せつかく拡充いたしました設備能力については、次第に生産過剰の傾向を深めるのではないかというような危惧の念を一般に與えておることは、事実であると思うのであります。そこでこうした傾向にある貿易を今後再転させまして、さらに拡大するという見通しが——今答えられましたように、新しい貿易の範囲を広げるという方面に希望を持たずに、従来のままの地域を対象といたしまして、なおかつ拡大できる方策が、一体考えられておるのかおらないのかという問題につきまして、伺いたいと思うのであります。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 輸出入が予定の計画通り行かないことは、今の世界経済の現状であるのであります。日本ばかりではございません。従いまして、これをどういうふうにしてつじつまを合して行くかという問題になりますと、国内消費を上げるとか、あるいは他の市場を求める、こういうことであると思うのであります。従いまして、国内消費を上げることが消費インフレになつては困りますので、第一次的には、やはり長い目で見ての新しい地域を拡大して行く、こういうことであろうと思うのであります。御承知の通り、まだまだ東南アジア方面の生活程度、文化程度は非常に低いのでありますから、こういうものを、アメリカの資本とタイアツプして、またできれば日本独自に開発して行つて、そうして日本の生産品の消費品をこしらえるということが主であると思うのであります。私は国内的には日本のコストを合理化によつて下げると同時に、日本で生産されたものを東南アジア方面に持つてつて、向うの産業を起し、生活水準を上げる、相ともに助け合つて貿易の振興をはかる、こういうことよりほかにないと思うのであります。経済あるいは貿易の振興の道には、何もかわつた手はない。あの手この手で活路を見出して行くところに、進歩があり発展があると考えているのであります。
  58. 高田富之

    ○高田(富)委員 貿易といいますと、ただちに東南アジアを常に対象とされておるのでありますが、東南アジアに、つきましては、政府もずつと前から研究もされ努力もされておると思うのであります。しかしながらこの方面への貿易の発展という見通しにつきまして楽観的な見通しを立てられる根拠が一体あるのかどうかということは、今までの政府の業績にかんがみまして、これを納得せしめることは非常に困難であろうかと思います。ことに最近におきましては、プラント輸出等については非常に行き詰まりを来しまして、むしろ減少傾向にあるとさえ言われておるわけであります。この東南アジア開発問題こそ、むしろもう少し具体的なプランと確信をお示しにならない限り中共貿易やその他の貿易が観念的であるとか、空論的であるとかいうお話がありましたが、上り以上に観念的であり、室論的であるかのごとくに考えられるのであります。具体的に現在、絶望とまでは言えないでありましようがはなはだもつて希望が薄らぎつつある東南アジアへの依存につきまして、もう少し大臣が確信を国民に與え得るような、何らかの明確な方針なり根拠というものがおありでありましたら、この際お示しを願いたいと思います。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの御質問の、おありでありましたらお知らせ願いたいというふうなお話でもおわかりになるように、なかなか相手のあるものですから、こんな品物があるといつて二足三文に売るわけには行きません。回收のつかぬものを売りつけるというわけには行かない。東南アジアの開発と申しましても、これはなかなかいろいろな種類があるのであります。何と申しましても非常に民度が低い。今の輸出入銀行からの様子を聞きましてもちよつと日本の文化程度と格段の差があるところは、そう急速にすぐに行くものではございません。東南アジア開発計画などというものは、私が二年前にワシントンに行つたときに、向うで盛んに議論されておつたのでありますが、まだまだアメリカの二年前からのものもなかなか緒についていない。これは一つの原因は、東南アジアというものがあまりにも生活程度が低いということ、今の状態では、東南アジアよりも南米方面が日本の海外輸出には非常にいいようです。これは程度が似ております。たとえばバス一台輸出しようといつたつて、インドとかあるいはボルネオにはなかなか行きにくいし、南米の方にはバスの注文が相当ある。こういうふうに私の言う東南アジアとこうのは、やはり南米の方も含めて言つておるのであります。その民度の状況によりまして、出て行くプラント輸出なんかも程度が違うのであります。民度が低いからといつて、いつまでもほうつておくわけには行きません。そこで先ほど来申し上げておりますように、各国の事情を見ながら、また国内の生産事情を勘案しながら、ステデイにやつで行かなければならない。たとい民度の低いインドなんかにおきましても、製鉄の問題が今話題に上つておりますが、こういうこはなかなか有望だと思います。こういうことをきつかけとして、いろいろな産業を東南アジアに植えつけ、そうして東南アジア民族の生活水準を上げて行く。そうして生活水準が上れば即消費力になるのであります。そういうような点で考えて行かなければならぬと思うのであります。
  60. 高田富之

    ○高田(富)委員 現在やつておりますところの貿易で、この矛盾が一番端的に現れれておるのは、これはしよつちゆう問題になつておるポンド過剰だと思うのであります。この問題を技術的に改善する輸出というものは、現在の国際情勢からいたしまして、非常に困難なところへぶつかつておる。根本的に解決する道を選ばなければ、この宿弊を取除いて行くことはできないのではないかというふうに考えられるわけであります。ポンド過剰の問題につきまして、依然として政府は輸出を抑制して、輸入を促進するために、いろいろ外貨を貸し付けるとか、いろいろな便宜を與えるという方針で進まれる考えでありますか。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 さようでございます。
  62. 高田富之

    ○高田(富)委員 輸入促進のためにいろいろの措置を講じて、輸出の方は押えて行くということで、結局これは従来の主たる輸出市場であつて、さらに発展すべき方面を押えて行くということになりますので、必然的に輸出は相対的に見て萎縮せざるを得ない。それからそういう形で輸入を促進いたしまして、かりにポンド圏からの輸入がどんどんできるといたしまして、それによりまして生産がさらに拡充されたといたしますと、これを輸出するのに、結局ドル圏へ輸出をせざるを得ないというようなことになつて参りまして、ドル圏への輸出の条件等は、かえつてそういうこちらの弱みにつけ込まれまして、非常に不利な立場に立たされるのではないのでありますか。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 物事が悪く行つたらそういうことになるかもしれませんがその間にいわゆる業者が特殊の創意とくふうと努力によつて、切り抜け得ると私は見ておるのであります。
  64. 高田富之

    ○高田(富)委員 もう一つお聞きしておきたいのは、輸出入についてリンク制は施行する考えでありますか。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどからのお話を聞きますと、ある一つのことにさつととらわれてしまつて、あらゆる状態であらゆるコネクシヨンを持つているものを、一つだけで議論されているように私には見えるのであります。どことどことのリンク制、あるいはどこの国とどの品物のリンク制、また物で行くか、いわゆる勘定で行くか、いろいろなものがあるのであります。今リンク制を考えるかということについては、総体的にはリンク制は考えておりません。だから事柄を個々の問題について御質問にならないと、いろいろなコネクシヨンを持つているのを、一つのものだけについてお聞きになりますと、かえつて御判断を誤られるのではないかと思います。
  66. 高田富之

    ○高田(富)委員 ドル圏への輸出を促進するというような見地から、輸出した場合のみ輸入権を與えるというような形でやつて行くというようなことで今までのドル不足を解決して行くというような見地から、たとえば綿花と何かをリンクさせるというような方式での構想があるかどうかという点であります。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうリンク制は考えておりません。ただドル方面への輸出に対しましては、品物によつて違いますが、ある一定額のドルの自由使用を認める、こういうことだけであります。
  68. 高田富之

    ○高田(富)委員 最後に、今まで大臣宮幡君への答弁を聞いておりますといろいろな問題が出ておると思うのでありますが、最近中国との貿易問題につきましては、本委員会の宮腰君なんか向うへ行かれまして、いろいろな報道が伝わつてつておりますので、この業界に対する影響というものは非常に大きいのであります。これが帰つて来られましたならば、おそらく相当の波紋を財界に投げかけるであろうということは、これはもう衆目の見るところであります。そこで私は、政府が最近になりましてから、バトル法の範囲内において、何とか中共貿易のわくを広げたいというような点に、今までに見ない、ある種の制約下ではありましようが、努力を傾け始めたのではないかというふうに感ぜられるのであります。この問題につきましては、政府としてどの程度、どの範囲で、そういつた努力を払われておるか。具体的にはどういうふうに、アメリカとの折衝におきましては取運ばれる段取りになつておるかというような点を、明らかにしていただきたいと思うのであります。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 宮腰君、帆足君が行かれたので、帰られたら非常に波紋を起すだろうという想像の誤りと、政府がバトル法その他の関係はあるけれども、中共方面との貿易に対して特段の努力を払うようになつたという見通しは、同じように私の見通しとは違つております。政府は最近に至つて特に中共貿易を振興するためにこういう手段をとつた、ああいう手段をとつたということは、閣僚の一人として聞いておりません。
  70. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次会は明二十日午前十時から開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時十七分散会