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内田(常)
政府委員 四日市の
海軍燃料廠、つまり第二
海軍燃料廠というものがございまして、これが現在のところは
賠償指定にな
つており
ます。しかし
賠償指定でありましても、
司令部の
許可を得て一時
使用が許される建前があり
ますので、そこで従来からこの
海軍燃料廠の転用のための一時
使用につきまして、私の記憶でも約十社ぐらいの
石油精製会社から
使用申請がございました。もつとも
四日市の
海軍燃料廠と申しましても、非常に広い区域でありまして、地積にして多分六十万坪くらいに及んでおると思い
ます。その中で約半分くらいは
石油精製ではないのでありまして、
硫安だ
つたと思い
ますが、
東海硫安会社にすでに一時
使用が承認されておりまして、残る
部分が今
お尋ねの対象にな
つているところでござい
ます。なおこの
東海硫安のほかにも一、二他の
石油会社に対しまして、
貯油施設等が一時
使用として
許可されており
ます。それは
大協石油外一社であると思い
ますが、これらはいずれも
附帶設備でありまして、
四日市燃料廠の中枢的な
部分ではございません。私の申しました十社くらいから
申請が出ておると申しましたのは、いずれも旧
燃料廠の
石油精製に関するいわば心臓的な
部分でありまして、これをどうするかということがいろいろ問題にな
つており
ます。
四日市の
燃料廠は、
日本の
海軍が持
つてお
つた燃料廠の中で一番大きいものであり、一番新しいものであると聞いており
ます。
昭和十八年くらいに就工いたしまして、ほんとうにこれが運転し始めたころは、
戦争の状態も非常に悪くなり、アメリカからはむろんのこと、南方の原油も取寄せられなくな
つて、
松根油などを処理する
程度で、
戦争が済んでしま
つたということで、せつかくつく
つたものがあまり戦力にはならなか
つたようでございました。もつとも
昭和二十年ごろ三回ぐらい爆撃を受けまして、私も一度見たことがあり
ますが、私
どもしろうと目から見
ますと非常にこわされており
ます。かつ
化学工業であり
ますために、地上で目に見え
ますものは、そう大したものでもないように見え
ますが、おそらく地下のパイプその他の
施設等を合せ
ますと、今後修理を加え
ますならば、相当の規模で
石油の
精製を再開し得るものだろうと
考えます。私が承知しており
ますところでも、あれに修理を加えて再開し
ますと、一日に二万五千バーレルくらいの原油の処理ができる。今日
日本の原油処理の状況は、おそらく一日七万バーレルか八万バーレルくらいであろうと思い
ますから、従
つて現在の国内の動いている
石油精製能力の四分の一くらいの規模を持
つている。従
つてあの
石油精製施設を、だれが一時
使用の
許可を受けて運転するかということによりまして、そのものが
石油精製上非常に有利な地位に立つということが、もつぱら業界の最大関心事にな
つているわけでござい
ます。ところがこれはいろいろ説があるのであり
ますが、従来の一時
使用というものはいつ取上げられるかわからぬ。
司令部の命令があるといつでも
使用の状態を中止させて——これは
賠償指定にな
つており
ますから、いつやめさせられるかもしれないということのために、他の
施設でもこれはそうであり
ますが、一時
使用料というものは非常に安か
つた。もちろん
政府が払い下げるわけでもないのですからよけいな金はいらぬ。毎年何がしかの
使用料を払
つて行けばそれで
施設の運転ができるということのために、十社というところから
申請があ
つたと思い
ます。しかし御承知のように講和条約が発効いたし
ますと、
賠償指定は自動的になくなり
ますから、今までのような安い
使用料で、民間の
申請会社に貸し付けるということはございません。従
つて今後は
政府が評価する相当の
価格で、それを買いとらなければならないことになり
ます。そうなると、今まで一時
使用申請中の十社が十社まで、単独でこれの
払下げを受け得る資力があるかどうか、ここにもかなり問題があり
ますが、いずれにしても今までの
申請が一時
使用を対象としてお
つたものが、今後は私
どもの方針はこれを評価額で払い下げるということになり
ますから、そこに問題がかなり違
つて来ると思い
ます。なお
お尋ねのように、大蔵省と通産省との間には
意見の相違や争いはございません。それは、御
質問のないのに私から申し上げてしまうのもいかがかと思い
ますが、今日他の
委員会等でしばしば問題にされおり
ますのは、あれを某々一社が
資金的にも資格あるものとして、ことに
資金の面については外資を入れて、その資力によ
つてあれを買いとる、こういう
申請があるそうだが、さようなことに
なつた場合には、
日本の
石油の
精製施設の相当大きい
部分に、外国の勢力が入ることになりはせぬか、その辺は
政府はどう
考えるか、むしろこれはその一社ではなしに、数社で共同で経営させるようにした方が適当ではないか、あるいは国がむしろあれを現物出資をして、他の足らない
資金を民間から集めて、一つの特殊会社のような形に運営さし
たらどうか、それらの今後の運営方式いかんということが問題にな
つているのではないかと思い
ます。大蔵省に関し
まするものは、あの
財産はまさに大蔵省所管の
国有財産であり
ますから、最後に売るか貸すか、また幾らに売るかということは大蔵省の仕事であり
ますけれ
ども、大蔵省は財政官庁でありまして作業官庁ではないのであり
ます。いかなる形態であれの復旧をはかつ
たらいいか、どこにやらし
たらいいかということにつきましては、大蔵省自体が判断するよりも、むしろ
石油行政の担当官庁である通産省の
意見をまつ、こういう態度であり
ます。その大蔵省の態度と照応いたしまして、通産省で現在すでに、たとえば播磨製造所などについて同じことが行われましたように、業界の、これはまあ
石油に直接の
関係はない方々のようであり
ますけれ
ども、識見ある
産業家、金融家等のいわゆる五人
委員会というものが、非公式に通産大臣の御相談相手の
機関として通産省の中につくられまして、そこで一切の状況を
説明されて、これはおもにどういう形で運営させるのがいいかということを御研究中のようであり
ます。通産省の
意見がきまり
ますと、通産省から大蔵省にその
意見の通報がある。大蔵省におきましては通産省の
意見を、これは大蔵省単独ではなしに他の作業官庁、たとえば運輸省、
経済安定本部というような他の作業官庁と、転用に関して常時催しており
ますところの
関係官庁間の協議会のようなものがござい
ますが、通産省の
意見をその協議会できめまして、みな異存のないところで最終的な処分を決定する、こういうことに相なると思い
ます。
なおもう一点他の
委員会等で問題になりましたのは、あたかも大蔵省が非常に何か安い評価額を示しているようだ、これは話にならぬような安い評価額だ、さような評価額は適当とは思えないというような御
意見もあり
ますが、その点につきましては、大蔵省はまだ評価を完了いたしておりません。従いまして何億円というようなこともま
つたくきま
つておりません。ただこれは
四日市の燃料
施設に限らず、
賠償指定にな
つており
ます旧軍用
施設につきましては、
昭和二十三年に
司令部の命令によりまして評価をしたものがござい
ます。これは非常に大きな仕組みと相当の金を使いまして、当時の民間の有識者といい
ますか、経験者の応援までも得まして、
昭和二十三年の状態で評価をしたものを大蔵省が持
つており
ます。詳しく申し
ますと、二十三年に評価をしたのですが、評価の
価格は二十三年で評価をしたのではなしに、一九三九年ですか、ですから
昭和十四年になり
ますが、
昭和十四年の時価まで引きもとして、
昭和十四年の時価で、現実の状態は一九四八年の状態で評価をしたものがござい
ます。それを基礎といたしまして、その後の物価の倍率と申し
ますか、これは
一般的の標準物価とか卸売物価でなしに、同種の機械なんかの市場
価格の動き方の系数、大体これは機械なんかの一九三九年から今日までの値上り額で、
一般の物価よりも上り方が割合少くて、八十倍ないし百二十倍のようであり
ますが、そのようなものをかけまして一応の評価をするようであり
ます。これはあくまでも一応の机上の評価であり
ますから、机上の評価をもととして、なお民間の有識者つまり信託会社とか、あるいは
産業銀行とか、あるいは工場財団等を取扱う
機関というような方々の協力を得まして、さらにその最終評価をやり直す、こういう予定でおり
ますが、現在のところは大蔵省としては評価がきま
つておらないのであり
ます。従
つて従来
ちよい
ちよい問題にされましたように、評価が安いとか高いとかいうところまで来ていないのが現状であり
ます。以上一応申し上げ
ます。