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1952-04-23 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十三日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 佐久間 徹君 理事 内藤 友明君    理事 松尾トシ子君       大上  司君    川野 芳滿君       島村 一郎君    清水 逸平君       苫米地英俊君    夏堀源三郎君       三宅 則義君    宮幡  靖君       武藤 嘉一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      福田 久男君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局閉鎖機         関課長)    堀口 定義君         参  考  人         (旧朝鮮銀行副         総裁)     星野喜代治君         参  考  人         (旧朝鮮殖産銀         行理事)    石川 清深君         参  考  人         (旧台湾銀行頭         取)      上山 英三君         参  考  人         (旧台湾銀行マ         ニラ支店支配         人)      田村  宏君         参  考  人         (旧朝鮮銀行理         事)      桜沢秀治郎君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 四月二十二日  煙火類に対する物品税撤廃請願千賀康治君  紹介)(第二二五〇号)  たばこ小売人利益率引上げに関する請願(冨  永格五郎紹介)(第二二九〇号)  たばこ小売人特殊性格業として免税の請願(  冨永格五郎紹介)(第二二九一号)  造船産業労務者用特価酒確保に関する請願(  門司亮紹介)(第二三二七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  国有財産特別措置法案内閣提出第五九号)  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第一四三号)  国有財産法第十三条の規定に基き、国会の議決  を求めるの件(内閣提出議決第一号)     —————————————
  2. 佐藤重遠

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  本日はまず閉鎖機関令の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては利害関係者として旧朝鮮銀行台湾銀行朝鮮殖産銀行責任者参考人としてお招きしてありますので、これより参考人方々から参考意見を聴取いたしたいと存じます。  なお本日御出席参考人方々は、お手元に配付してあります印刷物の通りでありますが、念のため読み上げます。旧朝鮮銀行理事桜沢秀治郎君、同じく副総裁星野喜代治君、旧台湾銀行頭取上山英三君、旧台湾銀行マニラ支店支配人田村宏君、旧朝鮮殖産銀行理事石川清深君でございます。  それでは参考人方々におかれましては、忌憚のない御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。まず星野喜代治君の御発言をお願いいたします。
  3. 星野喜代治

    星野参考人 私元朝鮮銀行役員をいたしておりました星野でございます。今日は皆様会期が非常に切迫しておりまして、非常に御多忙のところ、私ごとき者を参考人としてお呼び出しくださいまして、ただいま委員長のお話によりますれば、忌憚のない意見を申し述べてくれ、こういうありがたい御趣旨でございますから、そのつもりで私は忌憚のない意見を申し上げてみたいと存じます。  実は私はかつて過去におきまして、大蔵省の役人をいたしておつたことがございますので、この法案に対して反対意見を述べなければならない立場にございますことは、私情といたしましては非常に心苦しい点でございます。しかし本法案は私が大蔵省退官後、役員としてかなり長い間勤務しておりました朝鮮銀行株主その他の債権者に対して、非常に重大な関係のございます法案でございますので、多少研究して参つておるところもありますので、忌憚のない意見を申し上げたいと存じます。  まず第一番に私の申し上げたいことは、朝鮮銀行終戦閉鎖機関指定を受ける前に、ほとんど終戦と同時に、内地支店というものは全部閉鎖されてしまつたのであります。御承知通り昭和二十二年の三月閉鎖機関令が公布されると同時に、閉鎖機関指定を受けたわけでありますで御承知通り閉鎖機関令の示すところによりまして、大蔵大臣から閉鎖機関指定を受けますと、ただちにこれが営業を停止されることはもちろんでありますが、その後解散いたしまして清算に移るのでございます。普通の場合でございますと、日本商法規定によりまして、解散当時の取締役が当然原則として清算人となつて清算に当るのが普通なのであります。ところがこの閉鎖機関指定を受けますと、あたかもこれは個人ちようど戦争に協力した懲罰といいますか何といいますか、追放にあつたと同じ待遇を受けるのであります。つまり清算に対しては、過去の閉鎖機関たる会社を長年の間愛育して来たところの役員、また非常に利害関係をともにして来ましたところの株主というような者の意思は一切顧慮されないで、そして政府が設けました閉鎖機関整理委員会という機関の手によつて、かつてにというとおかしいですが、監督はしておられるでしようが、とにかく株主とか従来の関係者意思は全然無視して清算が行われるのであります。また後に詳しく申し述べますが、そういうような待遇を受けますのが閉鎖機関なのであります。朝鮮銀行はそれでは何ゆえにつまり会社としての戦争犯罪人——追放にあつて閉鎖機関として指定をされたかということになりますと、閉鎖機関指定というようなものは非常に不公平な指定でございまして、同じような仕事をしておつた、たとえばわれわれの朝鮮銀行は、日本領土朝鮮において平和的な金融をやつてつたにすぎない銀行であります。海外の土地において活動しておつた金融機関であれば、ほかに正金銀行というような銀行もあります。ところが正金銀行台湾銀行朝鮮銀行と違いまして、第二会社としていち早く東京銀行の設立が認められているわけであります。そういうふうなわけでありますが、朝鮮銀行は中には外国法人だ、朝鮮人銀行じやないかというような誤解をしておられる向きがありますが、朝鮮銀行は決して朝鮮銀行ではありません。日本銀行であります。内国法人であります。明治四十四年に日本法律でありますところの朝鮮銀行法によつて設立されたのであります。日本大蔵大臣の指揮、監督のもとに常に置かれてありましたし、株主の大部分——部分と申しますと、八十万株の株式のうちで、純然たる朝鮮人並びに朝鮮人会社所有しておる株式というものは、わずかに三千三百二十三株にすぎません。八十万株に対して三千株、大したことはありません。ほとんどすべてが日本人株主であつたということができるのであります。重役を初め幹部職員は全部日本人であります。ただ本店朝鮮京城にあつたということでもつて、あれは朝鮮銀行ではないかということを言われる場合があるのでありますが、これは営業がだんだん発展しまして、朝鮮銀行が単に朝鮮島内だけにとどまらず、あるときは満州の内部、また終戦当時までは関東州において、中央銀行として活動しておつたのであります。それからまた北支、中支の方面にもだんだん営業が発展して参りましたので、東京ではどうも中心にならないというので、営業区域中心に近い京城に持つて行つたということが一つ。それと、朝鮮総督府で、その当時何と言いますか朝鮮中央銀行でありながら、本店東京に置くのはけしからぬじやないかというような感情的な意見もありまして、終戦当時まで京城本店があつたことは事実であります。但し過去におきましては、私の記憶によりますと多分昭和七、八年ごろには東京本店があつた時代もあるのであります。そういうような銀行でございまして、これが何も戦犯に問われるような理由はないと思うのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、どういうわけか閉鎖機関として、個人追放の場合と同じような待遇を受けて参つたような次第であります。  先ほど朝鮮人持株というものは非常に少いということを申し上げましたが、そのほかにちよつと皆さんの御参考までに申し上げておきたいことは、朝鮮銀行特殊銀行であるから、国家出資額が非常に多かつたのじやないかというようなお疑いのある方もあるかもしれませんが、決して国家出資が多かつたということはございません。しいて申しますならば、朝鮮総督府が一万五千株だけを持つてつたのであります。それだけであります。朝鮮総督府が終戦当時持つておりましたが一万五千株が、現在では日本政府所有と見るべきものか、あるいは朝鮮——今の韓国政府所有移つたのかということにつきましては、私は日本政府に移つたものと見てさしつかえないと思いますけれども、これは外務省あたり外交上きまる問題であると思うのであります。そのほかに多少疑問のありますのは、朝鮮金融組合連合会というのがあります。これはちようど内地の農林中央金庫に当る機関とお考え願えばよろしいかと思いますが、この金融組合連合会が四万株ばかり持つておりました。それから朝鮮信託株式会社が四万株ばかり持つておりました。しかしこれらの連合会あるいは信託会社等は、私の解釈では、これは日本所有に受継がるべきものであつて朝鮮に渡すべきものでは断じてないと解釈いたしております。もしただいま申し上げましたようなこれらの株券が疑問がございまして、外交交渉の結果それは朝鮮のものであるという解釈がつきました場合には、どうなるかと申しますと、朝鮮銀行法朝鮮銀行定款には、日本人でなければ株主となることができないという規定がございますから、もしこれらの株主朝鮮人である、朝鮮人株式を引継いだのだということになりますれば、われわれがこれから清算をいたします場合には、この朝鮮人たる株主法律上並びに朝鮮銀行定款上、その株主たる資格を失格されるのでありますから、これは株主でないものとして取扱つてさしつかえない問題であると思います。ですからある向きでは、朝鮮銀行でもし普通の清算をやろうとしても、株主総会が開けないじやないか。それはどういうわけかというと、今のように朝鮮にたくさん株主がいるから、株主総会を開こうと言つても開けないじやないかというような御心配をなさる向きもあるということを聞いておりますが、そんなことは一向心配ありません。心配ばかりでなく、われわれが約一年ばかり前に、日本内地におられる株主に対しまして代表者を選んで残余財産の運用その他処置につきまして、大蔵省その他の当局と交渉する権限を委任してくれという委任状をとつたことがあります。その委任状をとりました時分には、ただ一片はがきを書いて出しただけでありますけれども、委任状が集まつた数は、株主の数が約千五百人、その持株数が二十五万株の委任状がただちに集まつたのであります。これはただ一片はがきを出してやつただけでありまして、終戦間もなくのことでありましたものですから、中には住所がわからないためにもどつて来たはがきもありますし、またせつかくついたはがきでも、何こんなものをいくら出しても、つぶれた会社はしかたがないということで、委任状を出されなかつた方もあるらしいのであります。その後新聞広告もしませんし、あるいはまたお忘れになつたら、もう一度出してくださいというような催促もしませんから、その後の委任状というものは参りませんけれども、とにかく一回出しただけでも千五百人の株主がただちに委任状を送つてくれる、二十五万株の株主券がただちに集まるというような状態でありますので、何も朝鮮人株主に多いから株主総会は開けないだろうというようなことで、閉鎖機関なりと観念してもらうことは、非常に誤つた考えだと私は考えます。  御承知通りアメリカ占領政策というものは、占領当時におきましては、個人の場合でありますれば、戦争に協力したものは全部追放として一線から葬つてしまう、なお犯罪の重いものは戦犯として、これをそれぞれ処刑するというような峻厳なる方針だつたことは、皆さん承知通りであります。個人以外の会社の場合に対しましても、なるべくならば戦争に協力した日本会社というものはたたきつぶしてしまう、経済的の活動をここで首を絞めてしまつて、懲罰的な措置をしてやろうという考えから、閉鎖機関令というものができたのであります。この閉鎖機関令なるものをいつまでも延長して行くということは、ちようど一旦追放として個人を指名したものを、永久にこの社会から葬り去つて、どんな有為の才能を持つてつても、日本の再建には関与させないと同じことなのであります。私は後ほども申し上げますけれども、一旦閉鎖機関として指定された活動機関であつても、今日に至つてはまさに講和条約が発効いたしまして、日本独立を回復しようというようなときにあたりまして、なおかつ個人追放がどんどん解除されて、戦犯でさえもそのうちには何とか恩赦の令がくだるだろうというような今日において、この閉鎖機関だけはとことんまで首を絞めて行かなければならぬ。そして一切の清算には、株主の権利であるとか、あるいはその当時の経営者というものを容喙させないで、大蔵大臣が特殊の清算人を選定して、特殊の清算人でかつて清算をやつて行くのだというような方法をとられることは、日本経済全体の上から申しましても、非常な損失ではないかと私は考えるのであります。  それでは、具体的にどういう点が、特殊清算方法によれば経済不利益であるかということを申し上げます。それから二番には、この閉鎖機関令なんというものをもつてつて行くことは、法律の上にこういうことを出しておくことは、日本のこれからの外交の万般の上に、非常な不利益を来すおそれがあるではないかということを、皆さんに私は申し上げたいと思います。第三番目には、かかる法律をもつてただいま申し上げましたような閉鎖機関整理を行つて参りますことは——占領下にあつて連合軍最高司令官憲法の上にあり、商法民法を無視して、その上で剣を振つて占領政策をやつたんですから、占領中はわれわれは黙つて屈服しておらなければなりませんでしたけれども、講和条約が発効して、われわれが独立を回復した場合においては、日本の国は最高法律として憲法があります。憲法規定に基きまして、商法規定民法規定というものがありまして、その商法規定には、ちやんと株式会社解散した場合にはこういう方法清算をするという清算規定が、たくさん書いてあるのであります。それを無視してこういう法律でもつてやるということは憲法違反疑いがあるということを申し上げたいと思うのであります。それでは第一の点から申し上げます。こういう方法をもつてやれば、いかに経費の点において損をするかということを、皆さんに申し上げておきたいと思います。何か閉鎖機関令改正説明の中には、なるべく清算に対する費用を節約して、そうして清算敏活化をはかるためであるという、まことにりつぱなお考えがあるそうでありますが、私が実際面からこれを観察しますと、事実はその反対でありまして、この朝鮮銀行実情を何ら知らない人が、特殊清算人としてこの清算に当りますならば、多大の経費が使われるということを、皆さんに申し上げてみたいと思うのであります。その一例を申し上げます。閉鎖機関令が施行になりましたのは、昭和二十二年の三月であります。それ以来二十六年の八月の末までの間に、あの閉鎖機関整理のために整理委員会が一体どれだけの経費使つているか、こういうことになりますと、五十七億六千四百万円の経費を今まで使つておるのです。これはちようど、この期間は二十二年の三月から二十六年の八月まででありますから、四年と五箇月の間に五十七億六千四百万円の経費が使われておるということになるのであります。これを一年間平均にいたしますと、十二億八千万円の金を使つておるわけであります。一箇月平均一億七百万円の金を整理委員会が今まで使つた計算になつております。こういう莫大な金が使われたことは、私は決して経費節約にはなつていないと思うのであります。かりに一月に一億七百万円の金を使う事業会社を想像してみましよう。もし一億七百万円の半分を人件費といたしましたならば、人件費を一箇月に約五千三百五十万円使つておるわけであります。かりに一万五千円の給与ベース職員使つておるものとしますならば、実に三千四百人の人を使つて、その人件費と同額の五千何百万かの事務費月々使つて特殊機関整理に当つて来たわけであります。これだけの莫大な経費を使う事業会社があつたとしますならば、相当生産能力のある会社活動ができるだろうと思いますし、日本経済界にも、これよりもつともつと大きな貢献ができておつたはずではないかと思われるのであります。朝鮮銀行だけの例をとりますならば、この四年五箇月の間に、朝鮮銀行貸付金の取立てた額がわずか約一億だそうであります。私は監督権を持ちませんし、そういう書類を見る権限も持ちません。これはある筋から聞いた数字でありますけれども、約一億だそうであります。そのほかに整理委員会朝鮮銀行整理のためにやつてくれた仕事というのは、丸の内の支店をナシヨナル・シティー・バンクに売却したこと、それから大阪支店の店を売却したこと、それからただいま申し上げた一億円の債権を取立てたこと、それくらいの仕事だけであります。そのほかの預金支払い事務日本銀行がやつたのですから、整理委員会がやつたわけではないのであります。朝鮮銀行だけの場合を見ますと、四年半かかつてわずか一億ばかりの貸し金を回収してそうして二、三の建物を売つた以外に、大した整理の実もないのです。それに対して、とにかく全体として五十七億の経費が使われておりますが、おそらく朝鮮銀行残余財産といいますか、今朝鮮銀行の分としてとつてある資産の中から、相当の額の経費が支出されておるであろうと思うのでありますが、そんなわけでありまして、朝鮮銀行実情をちつとも知らない人が特殊清算人——まつたくの月給取りであります。その月給取りが、内容も知らないで清算に当るということは、経費節約には決してならぬということを、私はこの際申し上げておきたいと思うのであります。  それからその次には、それなら迅速な清算行為ができるかと申しますと、特殊清算人がああいう組織でやつてつたのでは、決して迅速な整理はできません。会社清算のごときは、実際に多年その事務を取扱つて来た人が一番内情をよく知つておるのでありますから、その解散当時の取締役とか、あるいはその他の役員清算事務に当りますならば、従来の内容も知つておりますから、非常に迅速かつ実際に即した整理ができるのであります。それでありますからこそ、商法の第四百十七条には、会社が破産または合併以外の理由によつて解散した場合には、解散当時の取締役清算人となるという規定がございます。でありますから、商法規定から申しましても、清算にはその当時の取締役が当るということが、一番実情に適して、一番迅速に整理ができるという原則ができておるのであります。その原則を無視して、そうして特殊の機関でもつてつて整理をやろうというようなことにつきましては、私は非常なむだがあるということを考えるのであります。たとえば朝鮮銀行の貸出金等について見ましても、こじれているような貸出しにつきましては、その貸出しをするときに、重役ならたいてい貸すべきか、貸すべからざるものかというようなことにつきまして、業務部長か何か担当の職員から相談を受けますから、そのときには、あれはこういう条件で貸し出した、あれはだれの名義で貸したけれども、実はこういう方面使つているのだ、だからここに行つて催促すればとれるのだということが、われわれならわかる。それを全然知らない者が、われわれを近づけないで、特殊の清算人でこれから先もやつて行こうというようなことでは、とても実情に即した整理はできるものじやないと私は考えるのであります。  それからもう一つ申し上げておきたいことは、この閉鎖機関令改正法律案——この前ここを通つた法律でありますが、この法律によりますと、朝鮮銀行のような海外活動しておつた金融機関整理に対しては、海外支店本店海外に負うておつた債務を全部完済するに足るだけの、何か見合いの資産でも保留しておかなければ、株主在外資産の分配はできないとかいう規定があるのでありますが、私から言わせますと、あたかも朝鮮の人間が昔の朝鮮預金通帳を持つて日本へ来て、そしてお前のところには大分資産があるそうだから返してくれというと、それに対して考慮するがごとくこの法律にうたつてある。ところがわれわれが清算に当るなら、そんなものは問題にする必要はない。というのはどういうことかと申しますと、朝鮮銀行はわれわれが多年苦労して育てたのであるけれども、敗戦の結果追い出されて来た。追い出されて帰つてみると、閉鎖機関令の適用を受けて、内地にあつた八つ支店が閉鎖されている。お前たち重役なんか近づいてはいかぬ、罪人だというような扱いなんです。ところが朝鮮にはわれわれ朝鮮銀行本家本元を継いだ相続人がちやんとある。韓国銀行と名前はかわつておりますが、釜山に堂々たる中央銀行がある。それにもかかわらず日本八つ支店清算する清算人が、財産があるからいらつしやい、請求があるなら払つてあげましようということをこの条文の中に書いておくことは、外交上非常に損なことであると考えます。そうでなくても弱みにつけ込んでいろいろなことを吹つかけて来ると、どんなものを偽造してこれ払え、あれ払えといつて来るかわからぬと思います。そんなことは実情を知つている者からいえばおかしくてしようがない。先ほど委員長から忌憚のない意見を述べろと言われましたが、私は、お前朝鮮銀行でやつていて実情を知つているだろうから、何か話してくれといわれて説明するのは、きようが初めてであります。今までこんな説明をさせられたことはない。だから私はきようは率直に申しますが、朝鮮銀行と申しますのは、過去におきましていろいろな盛衰、非常に波のあつた銀行でございまして、八千万円から四千万円に減少したこともありますし、昭和二、三年ごろあるいはその後昭和五、六年ごろの金融恐慌時代には、非常な業績不振に陥つたのでありまして、貸付金整理とか借金の申訳をするには、非常に練達な能力職員がたくさんいる。役員もそういうことには得意なんです。だから朝鮮銀行清算は当時の役職員にやらせてもらえば、非常に整理をうまくやる。それを全然関係のない、朝鮮銀行が何をしていたところか知らない人が来て、清算をやろうといつても無理な話なんです。そこで私があなた方に訴えておりますように、講和条約が効力を発生いたしまして、日本独立を回復しましたあかつきには、何もこんな閉鎖機関令なんという屈辱的な法律を設けて、日本活動能力ある会社銀行を痛めつけておく必要はないと思うのです。それで普通の商法規定による清算規定がちやんとあつて、それには裁判所が不正をしないように監督する規定もあるのですから、普通の商法規定によつて清算をやらしてもらつて一向さしつかえないと思います。その点を皆さんに訴えたいと思います。こういう例があるのであります。終戦当時朝鮮本店を持つておりました会社で、朝鮮郵会社という会社があります。それから高周波重工業株式会社という会社があります。これらの会社はいずれも本店京城に持つてつた会社でありまして、朝鮮における債務と債権とを持つてつた会社でありまするけれども、どういうわけか閉鎖機関には指定されないで済んだのであります。朝鮮郵船にしても、高周波重工業にしても戦時には非常に協力をした会社であつたのですが、どういうわけか目こぼれになつて指定を受けなかつたのであります。そのため朝鮮郵船は拿捕されなかつた船が幸い四隻ばかりあつたというので、向うにおつた人が日本へ帰つて来て、その船を使つて今でも盛んに事業をやつております。それから高周波重工業株式会社も品川附近と富山に工場がありましたものですから、向うから帰つて来た連中が、ひとつこの工場を動かして事業をやろうではないかといつて事業を始めたがために、今では重工業として隆々たる勢いで活動しております。御承知でもありましようが、今株価はたしか百何十円かしておりまして、倍額増資をするとかしないとかいうところまで来ております。それから大連汽船株式会社といつて、大連に本店のあつた会社がありますが、これも閉鎖機関指定を受けなかつたものですから、向うから帰つて来た人たちが東邦海運とかなんとか名前をかえて今盛んに活動しております。と同様に一旦閉鎖機関指定を受けた会社とか銀行であつても、何も最高司令官が言つたからというので、平和条約が発効した後までも首根つこまで絞めて殺さなければならない理由はない。一般商法規定による清算によつて、そうして株主総会の総意によつて第二会社としてほかの事業を始めるもよし、何か活動させてもらえば、日本の産業のために非常に貢献するところが多いと思うのであります。せつかく働きたいと思つておる職員があり、組織が残つておるにもかかわらず、いつまでも活動の根を絞めて、とことんまで生命を断たなければならないという理由はなかろうと思うのであります。これが経済上非常に損であるという私の理由であります。  次には先ほどちよつと触れましたが、外交上非常に損をするのではないかということを申し上げます。それはこの改正法律案だけをごらんになつたのでは、ちよつとおわかりにくいと思います。この改正案の元の法律とあわせてごらんになるとよくわかると思うのですが、われわれのように海外活動していた金融機関は、閉鎖機関指定を解除されないらしい。そうして大蔵大臣が任命した特殊の清算人によつて、当時の役員とか株主意見なんかは全然顧慮しないで、かつて清算をやることになつておるらしいのであります。そうして対外債務が全部完済されるまでは、何十億たまつてもその金に手をつけないで残しておくと、法律にちやんと書いてある。これではとりにいらつしやいと言わんばかりの法律でありまして、外交上非常に損があるのではないかと思うのであります。朝鮮銀行に関する限りは、朝鮮に対する債務はありません。むしろ私の方は五億円ばかりの貸しになつている。われわれは朝鮮にあつた本店支店の建物を、ただでとられて帰つて来たようなかつこうですし、あちらの方へはわれわれ並びにわれわれの先輩が、多年かかつてつくり上げた銀行の組織だとか、あるいはいろいろな内規だとか、そういう営業の方針を書いたものを全部そのまま置いて来たのでありますから、これらの点を営業権として計算しますならば、むしろわれわれは現存の韓国政府に対しまして、何百億かの営業権の補償を請求してもいいくらいのものじやないかと私は考えております。それで実は朝鮮日本の問題なんかは、これは氷山の一角と申しましようか、大したことはないですが、これがもとになつて北支から連銀を幾ら補償してくれとか、あるいは中支の貯備銀行から幾ら返せとか、南方開発銀行の発行した証券をどうしろというような問題が起つて来た。これは朝鮮の問題だけじやなくなるのですよ。こういう危険なことを法律の上にさらしておくということは、私はどうもどういうあれかわかりませんが、御研究願いたいと思います。  それから最後には、こういう法律憲法違反疑いがあるということを、皆さんのお耳に達したいと思います。御承知通り占領直後におきましては、わが国はもうまつた最高司令官の意のままに動かざるを得なかつたのでありますから、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令の件というものが、昭和二十年の九月に勅令で発せられております。それには『政府ハ「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ聯合国最高司令官ノ為ス要求ニ係ル事項ヲ実施スル為特ニ必要アル場合ニ於テハ命令ヲ以テ所要ノ定ヲ為シ及必要ナル罰則ヲ設クルコトヲ得』という規定がございまして、その規定に基いてこの閉鎖機関令というものができた。そもそもの生れはそういう法律であります。ここ閉鎖機関令の第一条にはこういう規定がございます。これは今の改正になつても生きている規定であります。閉鎖機関とは、連合国最高司令官の要求に基き、その本邦内における業務を停止し、その本邦内に在る財産清算をなすべきものとして大蔵大臣指定する法人その他の団体をいうという規定がございます。この占領当時のアメリカの日本に対する占領政策が時を経るに従いまして、国際情勢の変化とともに漸次緩和されて参りましたことは、先ほど申し上げた通りであります。閉鎖機関令のような、こういう最高司令官の要求に基いてやむなく発せられた規定は、必要のない限りはなるべく早く廃止すべきがほんとうだろうと私は思います。解散した会社に対する清算方法につきましては、先ほどもちよつと申し上げました通り日本には昔から施行されておる商法という規定がありまして、その商法には解散に対するりつぱな用意周到な規定ができておるのであります。でありますから、何もこういうものでもつて特に海外活動機関を縛るというようなことをせぬでも、普通の商法規定による清算ができるように、皆さんに御配慮をいただきたいというのが、私の意見の結論でございます。もちろん御承知のことに相違ありませんが、憲法の第二十九条に「財産権は、これを侵してはならない。」という規定があります。その第二項には「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と書いてあります。この株主が持つております財産権、この株主権に対しましては、商法という法律でちやんと公共の福祉に適するように、憲法規定に基いて定めがあるのであります。それを今度マツカーサーの権限をそのまま受継いで、この憲法規定に抵触する事項を、大蔵大臣が一人で剣を振りまわして行こうというようなことは、私は憲法違反じやないかと考えるのであります。  以上申し述べました通り、私らの希望いたしますところは、どうぞ早く朝鮮銀行に対しましても、閉鎖機関の指令を解いていただきまして、そして一般の商法規定によつて、その当時の関係者、その事情に最も精通した責任者が、清算の任に当つてつて行くということが最も経済的であり、最も日本経済界にも有益なことであろうと思うのであります。ただいまこの法律改正案を拝見しまして、最後の理由書にこういうことが書いてあります。理由閉鎖機関令による特殊清算を続行する必要がなくなつた閉鎖機関指定の解除後における清算民法商法等の規定により行わせるために必要な経過措置を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」と書いてあります。この理由を文字通りとるならば、ありがたいことだと私は思う。私はこのことを言つているのです。これをお願いしたい。ところがこういうことが書いてありますけれども、さてこれを元の母法とこの改正法をくつつけてみますと、われわれみたいな台湾銀行とか、朝鮮銀行というものは除かれるような規定になつておりますから、この理由をよく読んで研究していただきたい。この理由通りつてもらえばわれわれはちつとも意見はございません。どうも長い間御清聴を煩わしてはなはだ恐縮であります。
  4. 佐藤重遠

    佐藤委員長 それでは第二席として、旧朝鮮殖産銀行理事石川清深君にお願いいたします。  なお参考人ちよつとお願いいたしておきますが、つとめて時間を有効に使います関係上、なるべく前参考人の御発言と食い違つた点をおもにして、お話を願います。
  5. 石川清深

    石川参考人 承知いたしました。  旧朝鮮殖産銀行の特殊性を簡單に申し述べておきたいと思います。朝鮮殖産銀行と申しますと、いかにも朝鮮人銀行のようにお考え向きが多々あると思いますけれども、これは資本構成を申し上げますと、資本金は払込み五千三百五十万円です。そのうち千株以上の株主を拾いますと、百二十九人おりますが、そのうちの百二十七人が日本人でありまして、朝鮮人は二人なんです。むろん経営者日本人でありまして、これは日本銀行です。これを念のために申し上げておきたいと思います。それから次に預金などの問題につきましても、日本人が九〇%でありまして、朝鮮人は一〇%ということになつております。なおこの銀行は社債を発行しておりましたけれども、社債のほとんど百パーセント近くは、日本の資本を持つて行つたものであります。資本構成としてはこういう特殊性があるのであります。  それからこの銀行といたしましては、閉鎖機関指定されておつたものでありますけれども、すでに一昨年これは閉鎖機関指定するのには当らないのじやないか、結局この程度は解除すべきであろうということは、むしろ大蔵当局の方から話もありまして、陳情書を出しましたところが、日本の当局においても、これはもちろんそのまま認めるということで、GHQへ出しまして、GHQの方で、これは内容閉鎖機関に当らない、解除してもよろしいけれども、事務上の都合がありまして、内容的でなしに、単なる事務の都合ということで、一応ペンデイングになつた状態なんであります。それが今度講和が発効になりまして二年前にすでに内容はそれに値せずと日本の当局も認め、またGHQの方でも内容をそう認めたやつが、講和発効後になお閉鎖機関にそのままなるということは、はなはだ皮肉な状態なのでございます。簡單にこれだけのことを申し上げておきます。
  6. 佐藤重遠

    佐藤委員長 それでは次は旧台湾銀行頭取上山英三さんにお願いいたします。
  7. 上山英三

    上山参考人 私は旧台湾銀行頭取の上山英三と申します。  今日この法案に対して、参考人として意見を述べることができる機会を与えていただいたことを、非常に感謝いたします。大体さつき星野君からお話のあつたことは、私も非常にいいことを言つてくださつたと思つておるのであります。非常に詳細にわたつてお話がありましたから、私はごく簡單に、旧台湾銀行の当事者として考えておつたところを、申し上げてみたいと思います。  台湾銀行はどういう仕事をしておつたかということは、私から申し上げる必要はないと思います。台湾の開発のためにつくられ、さらにそれは広く日本の南方への経済提携のために活躍した銀行であります。この法案を見まして私は非常に落胆をしたのであります。実は事務当局におきましては、もう少し親切な案を御用意になつてつたようでございますが、ここに出ておる案を見ましたら、そういう御親切な案は私どもの聞き及んでおるだけでありまして、その案が消えてなくなつておるのでありまして、非常に残念に思うのであります。それは事務当局の御意見といたしまして、第二会社として更生し得るものは、かなり簡單なる方法をもつて更生しておるというふうなお考えを持つておられたようでありますが、しかしこの案にはそれが消えてなくなつておるのであります。実は私どもといたしましては、台湾銀行の三千の行員が、海外におきまして裸になつて内地へ帰つて来た。これらの人の就職に対しましては、私どもは最も関心を持つて微力ながら尽して来たはずでありますが、しかし先ほど星野君も言われたように、ある会社においては第二会社として更生しておる。しかるにわれわれにおいてはその更生の道を断たれておる。このことは私ども非常に残念の至りであります。しかも私どもの考え方といたしましては、現在の日本といたしまして、南方の諸地域の人々と経済的に手を握つてやるということは、刻下の急務であると私は思うのでありまして、日本が立つて行く上においても、最も考えなければならぬ問題と思うのであります。聞きますれば、清算事務も非常に進歩しまして、内地における台湾銀行資産としても相当残るように考えております。それらのものに対しまして、できるだけ早く目鼻をつけまして、第二会社として出発せしめ、南方においてこれまで長い間経験した行員の人たちの知識を利用し、あるいは人的の関係、南方諸地域の人々との間のつながりを利用しまして、新しい第二会社として出発せしめるならば、国家のために非常に有益な事業となるのではないかと、私は考えるのであります。これは私ども銀行の最後の当事者として、責任を感じて考えている事柄でありまして、台湾銀行株主の大多数におきましても、私どもが意見を聞いたところによりますれば、いずれも双手をあげて賛成しているところであります。この点について、私は事務当局の方々が、何ゆえにせつかくいいことをお考えつきになつたものを、お引つこめになつたか。この案を見ると、前のものをただおざなりにそのまま引継いだというような感じがするのでありまして、非常に遺憾に感ずる次第であります。  なおこの機会におきまして、一言だけ皆様にお聞き願いたいことは、これはこの問題と少し遠ざかるかもしれませんが、われわれ台湾銀行終戦当時の当事者として、どういうふうな心構えでおつたかということを、御参考に申し上げておきたいと思うのであります。  実は私ども終戦になりました際に、台湾銀行をどういう方向に育て上げるかということにつきまして、私どもは非常に考えたのであります。実はその当時は今の国民政府があの小さい台湾に来ることは、私ども想像しておりませんでしたが、台湾につきましては、皆様御承知と思いますが、五十年間日本がいろいろの意味において育成して来ました。ある意味から言いますれば、現在の台湾人は中国人ではない、また日本人ではない特殊の性格を持つた人になつていると思うのであります。しかし私どもは、日本が今まで育て上げて来たものを土台といたしまして、中国と日本との間の親善の芽ばえをここに起しておきたいと考えまして、私どもは台湾の経済の混乱ということを極力避けたのであります。終戦の当時非常に困難な事情がありましたにかかわらず、われわれは終戦後、できるだけりつぱな台湾銀行として存続させまして、台湾の経済状態を混乱に陥れないために、できるだけの努力をしたのでありまして、この点は私は台湾人たちから、われわれが感謝の念をもつて迎えられるに十分なる価値があると、ひそかに思つている次第であります。従つて台湾銀行の解決といたしましては、現在進められておる国民政府との間におきまして、かなり有利な状況において、お互いの話合いにおいて解決されるべき素地がつくられておつた、こういうふうに私は考えておるのであります。これは非常に余談になりましたけれども、この点をお耳に入れておきたいと思う次第であります。  なおこの法案の具体的の問題につきまして申し上げたい点は、二点あります。一点は、先ほど星野君の申された点でありまして、この特殊清算人の選定にあたりまして、これは清算をうまくやるためには、やはり朝鮮銀行清算人、あるいは台湾銀行清算人、できるだけたくさんの人をそこに持つて来まして、よく事情を知つた人を、複数的に清算人に選出をするという点であります。それからできるだけ早い時期において、特殊清算から一般の清算へ移行する。この二点につきまして特に考慮していただきたいと思います。私のこの案に対する希望というのは、この二点に要約することができると思います。どうもありがとうございました。
  8. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次は、旧台湾銀行マニラ支店支配人の田村宏君にお願いいたします。
  9. 田村宏

    田村参考人 私は元台湾銀行マニラ支店支配人をしておりました田村宏であります。この法案につきましての問題は、前の参考人方々がお述べになりましたことで、ほぼ尽きておると思いますので、私はそれに対してことごとく同感でございますので、もう少し具体的な問題を御参考までにお耳に入れたいと思います。それは私の勤めました旧台湾銀行の性格につきまして上山前頭取から今申し上げたような事情で、われわれの終生を捧げよう思いましたところは南方地域でございまして、三十人の行員は、ことごとく一生を捧げてそれに没頭しておりました。そこで日本の将来を考えてみましてやはり南方地域の経済的発展ということが、どうしても日本の国策として第一に考えなくちやならぬ時期に、せつかく南方のそういういろいろな縁故を持つておりますものが、その力を発揮することができないような形に、この法案がますますかたまつて行くということが、非常に私ども心外でございますし、私どもの個人的な感情を離れても、国家の利害から考えて非常な損なことじやないかというふうに思うものでございますから、さつきのお話の通り、なるべく早く特殊清算という形を解除して、普通清算に移して、旧台湾銀行のものが働けるような態勢をとる方向に、お進み願いたいと思います。この戦争の結果、日本の軍の各地におけるいろいろな行動のために、非常に評判が悪くなつておりますけれども、私が現に身をもつて体験いたしました関係から申し上げますれば、もし私どもが出かけて行きまして——たとえば中国とか、フイリピンとか、非常に悪いのでありまして、私も最後はフイリピンに勤務いたしまして、捕虜になつてつて来たのでございますが、私最初昭和十五年から二年ほど上海におりまして、その後フイリピンに参りましたのですが、上海と南京の間の地域でも、私が昭和十五年に上海に赴任いたしまして、南京へ参ります途中、揚子江の沿岸に台湾銀行の出張所ができまして、その揚子江の沿岸をずつと歩いてみますと、戦争の結果町は焼けておりますけれども、一番先に復興していたものは、電燈がついておることであります。それを調べますと、それはみな昔台湾銀行がその町々に金を貸し付けて、そうして小さい電燈会社をつくつたものが残つておりまして、それが基礎になつて、家は焼けましたけれども、一番先に復興しましたのが電燈であるというような、やはり台湾銀行がやつた事績がそういうふうに残つておりました。それから私フイリピンは昭和十七年に参りましたのですが、フイリピンの地方というものは、経済的に非常に荒廃しまして、それで復興資金がいりましたのですが、フイリピンの銀行あるいは日本側の銀行も、これに対してほとんど貸すところがなかつたのでございます。そこで地方の小都市の商工会議所の会頭といつたような連中が、盛んに陳情して来たものでございますから、私はそれはそろばんに合いませんけれども、地方復興を援助する意味で、二十箇所くらいの地方小都市に貸出しをしたのであります。その回収もそう悪くなかつたのでございますが、戦争がはげしくなりまして、昭和二十年の初めに、私はマニラを逃げ出したのであります。私の逃げて行きました一番最初のところが、バレテイパスの裏手のバヨンボンという、人口三万くらいのいなか町でありますが、その町にも五万ペソくらいであつたと思いますが、金を貸したのであります。そこへ私が正金銀行の支配人、それから南方開発の支配人と一緒に逃げたのでございますけれども、その町に行つてみまして、その町の連中は、正金銀行とか南方開発は知りませんが、しかし台湾銀行の支配人が来たというので、戦塵忽忙の間に向うの有志が礼装を整えまして、私のところにあいさつに来たというようなこともあるのであります。ですから、フイリピンなんか今対日感情は非常に悪うございますが、もし私が出かけて行けば、何とか話がつくのではないかという自信を持つておる次第でありまして、そういつた関係が各地にございますものですから、この法案台湾銀行がなるべく早目に動けるようになるような条項が加わつておりましたならば、非常にいいだろうと思います。  私の希望だけを申し上げておきます。
  10. 佐藤重遠

    佐藤委員長 最後に旧朝鮮銀行理事の桜沢秀治郎君に、御意見の発表をお願いいたします。
  11. 桜沢秀治郎

    ○桜沢参考人 時間がありませんから、私、簡單に申し述べて責めをふさぎたいと思います。  この問題は、私は軍司令部と過去三年間交渉しておつた問題であります。その前に、大蔵省に行きますと、大蔵省は、司令部さえいいと言つたら私の方では異議がないから、いつでも閉鎖機関は解除するのだ、司令部へ行つてくれぬかというので、われわれは司令部へずつと交渉しておつたのであります。司令部もマーカツトは、これはワシントンの問題だから、ワシントンに聞いてやろうということで、それで現にそういう交渉で解除された会社があります。台湾の方は御存じかもしれませんが、台湾商工銀行というようなものはそれで解除されて行つたのです。それで先ほど殖産銀行からも言われたように、解除の一歩手前というところまで占領中に行つてつた問題であります。しかるに、占領が済んでからこんな法律を出し、そうしていよいよこれを強化する。これは何事であるか。私どもは大蔵省の役人をここに一緒に来てもらつて、あらためて皆さんの前で談判したいと考えておるくらいであります。御参考のために一言申し上げておきます。
  12. 小山長規

    ○小山委員 朝鮮銀行の方にも台湾銀行の方にも二点だけ伺つておきたいことがあるのでありますが、第一は、一般の商法民法規定によつて清算にかりに移すという場合に、第二会社的なものをつくりたいという御希望であるようでありますが、その第二会社は一体いかなることをやろうと考えておられるのか。これはただ単に金を預かつてそれを運用するというような意味なのか、あるいはその第二会社は、日本経済復興に役立つような積極的な仕事をなさろうというのか、この点はぜひ伺つておきたいのであります。  その次の問題は、これは台湾銀行にも朝鮮銀行にもお伺いしたいのでありますが、台湾において発行しておつた台湾銀行券、及び朝鮮銀行で発行しておつた朝鮮銀行券、これの跡始末、これは一体どういうふうになるとお考えになつているか。特に星野さんは法律家でありますから、法律的の立場からもひとつ説明を願いたいのであります。
  13. 星野喜代治

    星野参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。第一点の、もし第二会社が許されるような運びに至つた場合に、どのような仕事をするかというお尋ねでございます。実はこれまでこういう閉鎖機関令というようなものを解除してもらいたいということの方に、非常に熱心になつておりまして、さて何をやろうかという具体的のことは、今まで全株主の意向というものを徴したことはございません。ただ私どものぼやつとした考えでは、これは無理なことかと思いますけれども、もしできますれば、商法規定にも、解散した会社は、株主総会の総意があれば、なお解散を取消して元の営業を継続することができるという法律がございますから、できればその法律で、過去の経験もあることでもありますし、銀行が許されれば、一番われわれの手に覚えのある営業でもありますし、また国家のためにも一番貢献ができるんじやないかと思つております。これはただ私だけの考えでございます。  それから第二の、朝鮮において発行しておつた銀行券の跡始末はどうするかというお尋ねでございます。これは人によつていろいろ考えがあるかと存じますが、問題になる点は、朝鮮銀行券を発行いたします場合に、保証制度というものがございます。その保証制度は、従来の朝鮮銀行法規定では、朝鮮銀行銀行券を発行する場合には、はつきり覚えておりませんが、発行額の三分の一以上だかは、地金銀または日本銀行の預け金で保証を立てなくちやならぬ。その余の部分に対しては、確実なる国債とか有価証券その他商業手形等を保証にすればよろしいという規定であつたのでございますが、昭和十六年ごろであつたと思いますが、その制度を一時停止する法律案通りまして、朝鮮銀行台湾銀行おのおの法律が出まして、その年々の発行額の最高額は大蔵大臣がこれを定めるということになつたのであります。これは昭和十六年ごろの議会で通つた法律だと私は考えておりますが、その最高額はその年々大蔵大臣が決定いたしまして、大蔵省から何か通牒が参つておりまして、その大蔵大臣が定めた発行額を発行する場合には、ちよつと今覚えておりませんが、その三分の一かは、やはり地金銀とか、あるいは日本銀行への預け金というもので保証しなければならぬ。あと残りの部分は、確実な有価証券あるいは商業手形でもつて保証すればよろしい。大蔵大臣が定むる額以外にまた発行する場合が起つた場合には、限外発行として大蔵大臣の特に認定を得て発行することができる。その場合には、年三分を下らざる限外発行税というものを納めるという制度になつてつたのであります。ところで保証の制度がある以上は、引揚げて行く場合に、朝鮮銀行の補償をして来なくちやならぬではないかという御疑問があるのかと存じますが、私はこの点に関しましては、少くとも朝鮮の場合はこう考えております。なるほど保証制度はございますけれども、これは何も発行した銀行券を、保証の物件でもつてこれを弁償するというような意味のものではなくて、御承知通り、何ら資産の裏づけのないのに、どんどん銀行券を発行せしむるということは、一面通貨の信用を低下する問題でございますし、また一面においてはインフレを助長するおそれがあるというために、私はこの保証制度というものができ上つたものであると考えます。それで朝鮮の場合はどうかと申しますと、なるほど朝鮮では終戦当時は非常にインフレが盛んになりまして、終戦当時は八十五、六億くらいの発行額じやなかつたかと思います。ところが一方われわれは、その証券を発行しておりますけれども、発行券に見合うだけの貸付金とかなんとかいう資産があるのでありますから、八十億の通貨を残して来たところで、朝鮮に対して決して何も実質上の損害をかけてはおらぬと私は考えております。従いましてこれに対してから手で向うから何か補償せいと言つて参りましても、補償する必要はないと私は解釈しております。
  14. 小山長規

    ○小山委員 先ほどの台湾銀行それから朝鮮銀行、両方とも申されましたが、清算を旧役職員でやると費用がかからないし、またうまく行くとおつしやるけれども、これはどういうふうにうまく行くのか。その点を一つ伺つておきたい。
  15. 星野喜代治

    星野参考人 ただいまの重ねての御質問にお答え申し上げます。長年の間その経営の任に当つておりました取締り、つまり事務執行の重役清算に当れば、どういうわけで経費節約され、あるいはまた迅速な清算ができるかというお尋ねのように拝聴いたしました。先ほども申し上げたかと存じますが、第一に多年その銀行の業務に携わつて参りました重役その他の幹部職員というものは、その銀行自体に非常な愛行心というようなものがございます。これはただ月給をもらつてその日の仕事をやる特殊清算人とは、非常な違いだろうと私は考えます。これはお尋ねがありまするから申しますけれども、今日まで整理委員会の手によつて処分されました不動産の売却価格等につきましても、これはわれわれのひがみかもしれませんけれども、もしわれわれがわれわれの手で清算をやつておりましたならば、あんなに安くたたかれて離さなかつただろうというような例もあります。そういうことはあまり言わぬことにしますが、そういう例はたくさんありまして、また貸金の取立て、回収なんかにいたしましても、われわれが知つていれば、あんなものまでとらないでもよさそうだというようなものがあるのです。あれはああいういきさつで貸した金で、あそこをつつついてもだめで、こつちに行つてとればすぐとれるという金があるのです。そんなのが一向わからないでやつている。それからまた経費がかからないと申しましたけれども、それではお前がやつたらばどれだけの経費で済むかと言われれば、これはやつてみなければわかりませんが、少くとも先ほど申し上げましたように、四年半の間にああいう莫大な何十億の金、一年に十二億何がしかの金を使つて、まだ遅々として進まないというようなことは万あるまいと私は考えるものであります。大体朝鮮銀行清算に当る人は、朝鮮銀行の店というものは一体東を向いておつたのか、西を向いておつたのか、れんがづくりであつたのか石づくりであつたのかもわからない。朝鮮人が金を借りに来る心理とか応待というものを全然知らない人が、この清算をよくやれるとは思われないのです。それは悪口になるから申し上げませんが……。
  16. 小山長規

    ○小山委員 実はこれはまだ質疑が済んでいないのでよくわからぬのでありますが、今のお話は、まだ取立てすべきものが相当つている、あるいは処分すべき不動産その他の財産相当つているのである、従つて今後あなた方旧役職員がおやりになれば、うまく行くというような前提で聞いておるのでありますが、そのように取立てるべき財産あるいは処分すべき不動産その他の資産というものが、まだ台湾銀行なり朝鮮銀行なりには相当内地に残つておるのかどうか、その点はいかがですか。
  17. 星野喜代治

    星野参考人 ただいまのお尋ねにお答え申し上げます。第一の、債権の回収残が相当あるのかどうかというお話でございますが、私ども今まで追放になつておりまして、元の朝鮮銀行の跡に出入りしてはいかぬ、清算になど一切口を出してはいかぬということになつておりましたので、正確な数字は存じておらないのであります。ただ元職員であつた者が、どこから聞いて来るかわかりませんけれども、ときどきあの債権はまだ残つているそうだとか、あの不動産はわずかあんな金で売却されたそうだとかいうようなことを聞いて来て、そんなことを知つていることと、並びに、今日までの債権の回収額が、四年半の間に一億程度であつたということを知つている以外に、これから先の債権は、どんな内容のものがどれだけ残つているかということは、私が清算人になつて内容を見なければ、ここで申すわけには行かないと存じます。ただわれわれの望みますところは、われわれが清算人になりますれば、内地商法規定によりまして、催告を早くやるとか、日本法律によつて片づけるべきものは片づけて、どんどんもつと早く整理を進行して参りたいと思います。それに対して異議のある者が相手方から裁判に訴えて来れば、それに応訴して、払うべきものはどんどん払つて行き、払うべからざるものは、朝鮮人言つて来ようが中国人が言つて来ようが、絶対にこれを拒絶するというようにてきぱきやつて行けると思うのであります。ことに、先ほど上山君からもお話がありましたように、われわれは、できるならば一日も早く、失業しております引揚げの旧職員を何かの事業に結びつけて、働く場所をつくつてやりたいという念に燃えておりますので、それを実現するためにも、われわれの手に清算事務を移していただければ、早く進行できるのじやないかと考えております。
  18. 小山長規

    ○小山委員 これは法律的な問題でありますが、清算人を選任しようとすれば株主総会を開かなければならない。これは日本法律でそうなつておるのでありますが、朝鮮銀行にせよ、台湾銀行にせよ、日本法律によつて瑕疵なく、つまりあとでその株主総会は無効だというような問題が起らないような方法で、株主総会を開き得る状態にあるのかどうか。その点はどうですか。
  19. 星野喜代治

    星野参考人 お答え申し上げます。ただいまの点ですが、株主総会は、日本内地商法規定によつてこれを招集しますならば、あとから無効の訴えでくつがえるようなことのない株主総会を、必ず開ける自信が私にはございます。先ほども申し上げましたように、われわれが有利に朝鮮銀行清算をするために、われわれに事務を委任してくれるかというような委任状はがき一本やつただけで、相当の——二千何百人とかあるいは二十万株というようなものがたちまち集まるのでありますから、終戦後大分時もたちましたし、株主の住所のわかつて来た者もたくさんあります。ただここで問題になりますのは、朝鮮人の三千何百かの株主なのでありますが、これらがもしかりに株主総会無効の訴えというようなことをやつたといたしますれば、先ほど申し上げましたように、朝鮮が外国になつた以上は、朝鮮人というものは、朝鮮銀行株主たる資格を法律上もう失格してしまつたのですし、株主ではないのですから、お前などはそんなことを訴えることはできないのだということが、言えるだろうと思います。ですからその点も、株主総会の開催については何ら懸念はないと存じております。
  20. 小山長規

    ○小山委員 ただいまの問題は、台湾銀行朝鮮殖産銀行も同じでありますか。
  21. 石川清深

    石川参考人 同じです。
  22. 上山英三

    上山参考人 今の御質問の第一点の第二会社の問題でございますが、私ども及び台湾に関係のあつた方々等で、南方経済研究会というようなものをつくつております。その仲間において研究した問題としまして、実は私どもは銀行に生活しておつたのですから、第二会社として銀行をやりたいという希望もあるのでありますが、必ずしもわれわれとしてはそれを固執しない。ただ日本の最も関心を持つているのは南方との経済の提携という点であります。だからできるなれば、私は卑近な言葉で申しておるのでなすが、われわれは南方への窓を小さくともあけるという点に、関心を持つておるのでありまして、たとえば南方貿易に対して保証をしてやるというようなことをやりますれば、必ずや国のためになるのじやないか、こう考えております。  それから第二の銀行券の問題でありますが、これはあるいは台湾銀行だけの問題かとも思いますけれども、昭和二十一年の十月に、中国側ではそのまま法定通貨として国民政府が指令を出しておるのであります。だからこの点から行きまして、法定通貨に指定されたときにも債務の肩がわりができていたのじやないか。実は先ほどもちよつと余談でありましたが申し述べたように、われわれは台湾の経済安定のためには非常に努力を払つたのでありまして、そのために国民政府の方としましては、台湾銀行をそつくりそのまま台湾銀行として新しく再出発した。われわれがこしらえた基礎をそのまま利用してやつておるのでありまして、向う側から台湾銀行に対して要求することよりか、われわれはそういう組織をつくり、そのまま向うさまへ差上げたことになるわけですから、かえつて向うから頂戴しなければならぬという議論も成り立つのではないかと思います。それから何か……。
  23. 小山長規

    ○小山委員 それと株主総会を合法的に開けるかという……。
  24. 上山英三

    上山参考人 株主総会の問題は申し上げませんでしたが、株主内容ですが、これは内地の人ばかりで、台湾の株主というようなものは実は百二十三名で、五千九百七十株にすぎないのですから微々たるものでありまして、問題にならないと思います。
  25. 小山長規

    ○小山委員 やはり台湾人は株主でないという御議論ですか。
  26. 上山英三

    上山参考人 その当時は日本人ですから……。
  27. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 先ほどの御説明朝鮮銀行銀行券八十億円は、ちよつと多いように考えるのでありますが、日本銀行に登録公債というようなものが八十億円程度あると聞いたことがあるのです。あるいはそれ以上あるかもしれません。これはその銀行券を発行するときに預かつたものでありますか、あるいはこれには関係ないわけでありますか、それをお伺いします。
  28. 星野喜代治

    星野参考人 終戦当時日本銀行へ登録しておきました公債は約六十億ございます。そうして日本銀行へ登録しました、つまり日本銀行へ預けましたことは、預けた結果保証に利用はいたしましたけれども、もともと保証のために預けたわけではなく、預けておいたものを保証の方へ使いましたのですから、預けたときは、すなわち保証の必要が起つた都度預けたのかとおつしやると、そうではありません。内地で国債を買えと言われまして、買うたびに国債の現物を持つて来ないで、登録公債でそのまま日本銀行へ預けておつたのであります。
  29. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 そういたしますと、朝鮮であなたの方の負債関係は幾らもないということをおつしやいましたが、資産はどれくらいありますか。
  30. 星野喜代治

    星野参考人 朝鮮銀行内だけの資産ですか。
  31. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 いわゆる在外資産です。
  32. 星野喜代治

    星野参考人 ただいまの点にお答え申し上げます。終戦当時の朝鮮における資産は幾らあつたかというお尋ねでございますが、ただいまその数字をここへ持つて来ておりませんから、あとから取調べまして書類にしてお届け申し上げたいと思います。御了承を願います。
  33. 宮幡靖

    宮幡委員 参考人の御意見は、私ども相当共鳴する点があるわけでございますけれども、その結論は委員会独自の審議に移したいと思います。そこで今まで質問のありましたうちで、小山委員の質問の株主総会の適法招集ができるか。その議決は瑕疵は生じないかという法律論でございます。これは朝鮮銀行台湾銀行、あるいは朝鮮殖産銀行等にお伺いするのでありますが、それぞれの銀行定款株主の住所届出の規定がありますか。株主は住所を会社に登録するという義務を課せられておる定款になつておるかどうか。
  34. 星野喜代治

    星野参考人 お答えいたします。定款に住所を届け出ろという規定がございます。
  35. 宮幡靖

    宮幡委員 そういたしますと、参考人の述べられました株主総会の招集手続の問題は簡單だと思う。銀行なり会社としましては、その知れたる住所に通知することをもつて足りるわけであります。従いまして、住所の登録のない朝鮮人や台湾人は、当然日本法律によつて排除されるべきものであります。でありますから、今まで公述せられました参考人の御意見は、少しりくつが強過ぎると思います。日本法律から参りますれば、これは住所登録の義務が課せられている以上、現在銀行に残つております知れたる住所に通知すればいいのでありますから、感情を刺激するような御意見は撤回してもらつた方がよいと思います。  それからもう一つは、朝鮮債権債務相殺というような御観念でお話になりましたが、なるほど銀行券は発行しておると同時に、それにおおむね見合うべき資金なり、あるいはその他の資産を持つてつたら、これはやる必要がない。これは常識的にはわかるのでありますが、債権債務が同一人に帰属しておれば、日本法律効果によつても、今度消滅するわけでありますが、相殺は相手方が承諾しなければなりません。こういう事態にあります場合において、この債権債務の消滅を確認しない以前におきまして、現在清算中で持つておりますところの朝鮮銀行資産というものは、処分してもよろしいものとお考えになつているかどうか。この点がこの問題に重大な関係があるわけです。と同時に、台湾銀行の方はこれは邦貨に指定されておることも大体知つております。従いまして、台湾銀行券というものに対する観念は、朝鮮銀行券とはまたたいへん違つておる。しかし台湾銀行につきましては、中国といいますか、国民政府というか、中共といいますか、とにかく当時日本が正常なる外交関係、あるいは交戦状態にあつた時代におきまする、いわゆる中国という観念の中に包括いたしました債権債務の関係になつて来るであろうと想います。この点につきまして、台湾銀行の方は台湾銀行の方、朝鮮銀行の方はあなたからお答えをいただきたいと思います。
  36. 星野喜代治

    星野参考人 お答えいたします。たいへんけつこうな御意見を伺わしていただいてありがとうございます。ただ株主の住所は本店に届け出ろという規定がございまして、朝鮮京城ではわれわれは各株主の住所を集めて持つてつたのです。ところが追われてこつちへ帰つて来るときは、そんな書類を持つて来れないものですから、現在株主名簿というものはございません。それで東京の店で桜沢さんなんかが中心になつて、たれそれはどこにおる、たれそれはどこにおるというような名簿を作成中のようなかつこうなのでございまして、本店に登録がないから絶対それはかまわないのだというわけにも行かない状態のものですから、事実株主総会を開く前には一応新聞公告でもいたしまして、株主はこういうようなことになつているから、至急住所の届出をしてもらいたいというような手続は、とらなくちやならないものと思つております。  それからその次のお尋ねの銀行券の問題でありますが、これは一概に朝鮮銀行券と申しますと、朝鮮道中だけに通用しておつた銀行券じやございませんでして、南と北はまつ二つになりまして、南の方に流通しておつた朝鮮銀行券が幾らあつたかわからないのです。それからまた関東州では、やはり私の方では朝鮮銀行中央銀行として、朝鮮銀行券が正貨として流通しておりました。この関東州にもどれだけが流れ込んで、どれだけ終戦当時あつたかわからない。それからまた法律上は正貨じやないのでありますけれども、満州国人がその当時朝鮮の通貨が非常に信用がありまして、満州中央銀行券との間に百円について二円から四円くらいの打歩がついておりましたから、盛んに国境において密貿易が行われて朝鮮銀行券がずいぶん満州国人の間にたんす預金になつてしまわれておつたのであります。それからまた北支方面におきましても、北支の連合準備銀行券がインフレで非常に価値が下つたものですから、朝鮮銀行券が退蔵されました。これはちよつと余談になりますけれども、私が天津に出張で参つたことがあるのでありますが、その時分に、何か荒物屋みたいなところへ寄つて、マツチかタバコか何か買つたことがあるのです。そうしましたら、私ちようど連銀券がなくて、朝鮮銀行券しか持たなかつたので、おばあさんにこれでいいかと言つたら、いいと言つて朝鮮銀行券で売つてくれたのです。それで見ていましたら、こうしわを延ばして、丁寧に別の深いひきだしへ大事そうに入れたのです。それで私を案内してくれた天津支店の行員が、あれは朝鮮銀行券を非常にありがたがつて、あの通り下のひきだしの奥深くしまつているでしよう。ああいうふうに、こちらの方では朝鮮銀行券を大事にしてしまうのだといつたようなことも言つているわけです。そんなふうなわけで、満州、中国、関東州、蒙疆あたりまで非常に散らばつておりましたから、そこでまた今南鮮に対して幾らの補償をしていいかということもわからないことなんです。それで私は先ほどから幾度も申しましたように、われわれの本家本元を継いだ本家の相続人である朝鮮銀行の本体は、釜山にちやんとあるのです。それがわれわれがこつちへ来て、支店整理をやる人間がその本家本元をさしおいて補償するというようなことは、しかられはしないかと思いますが、僭越しごくだと思うのです。
  37. 佐藤重遠

    佐藤委員長 これにて休憩いたしたいと思いますが、本問題は政府当局の出席を促した上で、午後の質疑を続行いたしたいと思いますので、参考人皆さんには長時間たいへんお気の毒でございますが、ます。お残りをお願いいたし     —————————————
  38. 佐藤重遠

    佐藤委員長 この際連合審査会の件についてお諮りいたします。ただいま本委員会において審査中の国立病院特別会計所属の資産の譲渡等に関する特別措置法案に関しまして、地方行政委員会から連合審査会を開いてほしい旨の申出がありましたが、本案につき地方行政委員会と連合審査会を開会するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 佐藤重遠

    佐藤委員長 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。  なお連合審査会の日時等につきましては、委員長に御一任を願います。  午後一時半まで休憩します。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時十二分会議
  40. 佐藤重遠

    佐藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  大蔵大臣出席されましたので、午後はまず閉鎖機関令の一部を改正する法律案国有財産特別措置法案及び国有財産法第十三条の規定に基き、国会の議決を求めるの件の三案を一括議題として、質疑を継続いたします。
  41. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣の時間の御都合があるようでありますし、懸案となつております財政金融全般についての質問を続けたいのでありますが、いろいろな都合で、ただいま議題として閉鎖機関令の一部を改正する法律案等がかかつておるようでありますから、その問題について二、三大蔵大臣に伺つてみたいと思います。  これはもうすでにわれわれが十分納得しておかなければならない問題であつて大蔵大臣にお尋ねすることはむしろ愚問に属するものだと思いますが、念のためにこの際伺つておきたい。それは在外活動機関閉鎖機関となした理由はどういうところにあるか。これを一度反省してみたいと思うのです。もしこれが変なお尋ねでありまして、あるいは占領政策とからんで重要な問題になるかもしれませんが、内田管財局長からのお答えでも、大蔵大臣の答弁と同様に尊重して伺うことにいたします。どうぞお願いします。
  42. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 終戦後連合国最高指令官の指令に基きまして、千以上の諸機関のうち数十の在外活動会社、法人等が閉鎖機関指定されました趣旨は二つあると思います。一つは、これらの指定されました機関は、たとえば国内的には戦時中の統制会社等として政府戦争遂行に協力し、また日本の侵略政策に協力したというような点から、二度と再びこれらの機関が同じような活動を続けないように閉鎖するという趣旨と、もう一つは特に在外活動閉鎖機関につきましては、日本戦争に負けまして、ポツダム宣言その他によりまして、海外の領域その他の資産を失つておる。その際これらの在外の資産、負債等は平和条約後の処理にまかせなければならない、こういう趣旨がありましたために、一応現状のままストツプして、わずかに国内にある資産活動等を閉鎖する、こういう趣旨で指定をいたした次第でございます。
  43. 宮幡靖

    宮幡委員 これは何度伺いましても、その趣旨はかわらないだろうと思います。われわれもまた知つておらなければならないはずであります。これは平和条約の効力の発生するやさきでありますので、行き方によつてははなはだ行き過ぎになるかもしれませんが、占領政策からながめました場合には、さようなことは了承しなければなりません。けれども独立日本として考えてみて、この閉鎖機関政府清算しなければならないという理由がどこにあるか。これは占領政策に縛られたということではなしに、日本人的に考えて、この閉鎖機関政府がどうしても清算しなければならないという理由がおありになるかどうか。
  44. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 平和条約も締結されまして、それが近く発効するという段階におきましては、これらの閉鎖機関清算を、他の事情がなければ政府が任命する特殊の清算人清算させる必要はないと思います。それゆえに今回閉鎖機関令改正案におきましては、できますものはすべて閉鎖機関指定を解除いたしまして、普通の商法または民法による清算の手続にまかせる、こういう改正方を織り込んでございます。ただ閉鎖機関につきましては、従来の法令上すでに解散したものとみなされ、かつ役員等は一切解任されておりますから、通常の清算手続に移しますためには、そのつなぎとして従来の特殊清算人株主総会を開いて、株主の選任する商法上の清算人の選任手続等のお世話をするということが、必要になつて参りますので、そのような規定を今回の改正法案に置いてございます。ただ先ほどもお話のございました在外活動閉鎖機関につきましては、これは国内に本店があつて、外地に支店があるという完全な日本法人であるのは少うございまして、むしろ外地または外国に本店があつて日本にも店舗なり財産がある、こういうものが多うございますために、これらにつきましては別に今回の改正法案には色はつけてございませんが、政府がただちに閉鎖機関指定を解除いたしまして、通常の商法上の清算人に移そうといたしましても、外地法人等につきましては、これは当然には商法等の適用を受けませんので、そのようなことが法律的にできないということが一つと、もう一つ、実質的にはこれらの在外活動閉鎖機関は、先ほども触れましたように、平和条約における日本在外資産、負債の処理とも関連いたします。今ただちに民間の清算人をして、自由にそれらの財産を処分せしめるということは、この在外資産の処理の問題、特に朝鮮、台湾等につきましては、御承知のように平和条約第四条に規定がございまして、両国間の特別のとりきめをまちまして在外資産の処理がきめられますから、それと趣旨を合せて、これらの在外活動閉鎖機関資産は処理しなければならない。こういう関係がありますから、これらにつきましてはいましばらく特殊清算人清算手続を続けるほかないと考えます。
  45. 宮幡靖

    宮幡委員 本日は当委員会においてただいまお話のありました在外活動機関のうち、朝鮮銀行台湾銀行朝鮮殖産銀行等の旧役員の方に参考意見を承つたわけであります。それらの意見も全部が全部ごもつともだとは思いません。けれども相当傾聴すべき要素を含んでおつた。この在外活動をいたしました、ただいま特殊法人といわれておりますが、これらのものを一般の閉鎖機関令指定を解除する中に組み入れまして不都合な部分は、ただいまの局長の説明によりますと、残りの清算手続が国内法と合わないということが、一つの有力な理由でありますが、これがために前提が一般に指定を解除する他の閉鎖機関と同様に、鮮銀なり台銀なり拓殖銀行なりをはずしてよろしいというもし議論があつたとしますならば、これに伴いますところの清算手続というものを国内法に合うように、これに準拠いたしました特別な法律を配慮する御用意があるかどうか。この点をひとつお伺いしたい。
  46. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 法制的にはかなり複雑な手続を要します。たとえば外地に本店のある銀行閉鎖機関指定を解除されたときには、このものは内地本店があつて日本商法等によつてつくられた会社とみなすというような考え方を組み入れまして、かなり法律上の擬制等を用いまして、相当複雑な手続を要しますけれども、法制的には可能でございます。むしろこの際実質上外交上の関係から、しいてそのようなむずかしい法律手続までもとるべき段階ではない、というふうに考えております。
  47. 宮幡靖

    宮幡委員 そういうむずかしい法律手続までとるべき現段階でないということ、これはなかなか意味慎重であります。従つて必ずしも悪い意味にのみ解釈するわけではありませんが、そういう複雑な手続をかりにとつても、これが日本経済の正常化といいますか、あるいはかつて活動を回復し、あるいはその蓄積されました資金等を他に転用、活用することによりまして、日本経済の自立に有効になるという場合におきましては、これは複雑なる法律手続などに藉口して、立法を回避すべきではないと思うのであります。この点につきましてこれは御意見を聞く方が無理かもしれませんが、私どもはさような意見を持つておるのであります。しかもわれわれが閉鎖機関令等を通読いたしてみましたり、あるいは本日の参考人参考意見等を拝承いたしますと、株主関係なんかにおきましてもきわめて単純でありまして、しかして現在の国内法をもつてこれを清算して行くことに、特殊の困難はきわめて少いと思う。ただ御指摘の平和条約第四条の規定の配慮があることで、これはごもつともなことであります。しかしながらかりに日韓の間にどういう協定ができたといたしましても、どういう条約ができたといたしましても、それは在外資産、在外負債等の問題を考慮いたします通念で申しますと、賠償関係からいいますれば、平和条約第十四条の域を脱することはないと、私は確信いたしております。従いまして国際信義の上から、一時保管しておつて、いつでも請求があればこれは払うのだという気構えは、国際信義の上からいいますとまことによろしいのでありますが、平和条約第十四条の精神を敷衍いたして考えました場合には、これは無用な努力だと思います。むしろこれはやるぞと言われてから、賠償の義務として条約にあつても、附属議定書などにおきましては、この義務は平和条約第十四条にかかる金銭賠償、役務賠償、しかも日本の生活水準を維持し得るところの最低経済力を保有し得る限度においてはということは、厳然として存在している事実であります。従いましてかようなものを蓄積いたしまして、しかしていつ請求があつても払う用意があるという道義的な点には、私は一応の関心を持ちますけれども、他に国際条約というもので一応お手本が示されておる現段階において、また日本経済力というものを勘案いたしてみますると、これは無用の配慮のように思うのでありますが、大蔵当局はどうお考えになつておりますか。
  48. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 平和条約第四条の解釈と第十四条の解釈、あるいは両条の相違、あるいは第四条によつてできます両当事国間のとりきめというものが、どのような形になるかという議論に、ただいま入ることは適当でありませんので、その点は差控えざるを得ないと思います。ただ御説のそれだけ内地に残つております機関につきましては、これは国民経済全体のために運用するという趣旨は、私どもも同じ気持を持つておりますので、御承知のようにこれらの閉鎖機関残余財産等で、従来日本銀行に封鎖的に預託のような形になつておりましたものを、この機会に一部民間金融機関等に預けがえ等の方法によりまして、これらを国民経済に活用するということを実行いたしたいと考えております。
  49. 宮幡靖

    宮幡委員 適切なる行政措置によつて滞留資金を運用せられることは、これは大蔵省の所管事務といたしまして私は当然な措置だと思います。むしろこれはおそきに失しておるといううらみさえ申し述べたい。しかしながら占領下にありますことでありますから、かような点は強く追究するものではありません。  そこで細目にわたりまして、これこそ事務当局にお伺いすべき問題でありますが、閉鎖機関整理委員会清算費用というものは、われわれは適当の機会に国会で聞いたことがありますが、そのときに大体想定せられました費用と、実際本日参考人の陳述によりまして伺いましたところの清算費との間には非常な開きがある。月平均に大体一億七百万円程度、こういうものに一億というものが使われている。過去において五十七億という累積された清算費、一体こんなものがいるのかいらないのか、はなはだわれわれは釈然としないのでありますが、これらについて清算費の内容をひとつお示しを願いたい。もし本日間に合わないようでしたら、資料をもちまして明細に御提出を願いたい。
  50. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 御承知のように閉鎖機関清算に要する経費等につきましては、従来政府機関予算といたしまして、予算に計上して国会の御承認を得ております。なおちようどここに集計表がございますが、昨年の十二月三十一日まで閉鎖機関が発足してから三年か四年の間、その清算費用の比率は、閉鎖機関残余財産の換算額に対して三・七一%ということでございまして、絶対金額にすると相当な金額になると思いますが、大体の建前が数百あるいは千以上の閉鎖機関を集めまして集合清算をやつておりますために、個々の機関清算費を持ち、また必要な職員等を持たないことにおきまして、決してむだな費用が多額に出ておるようなことはまずないのではないか。むしろ集合清算のために清算費用を節約せられまして、将来指定が解除された場合等におきましても、従来の株主に不当の損害を与えておつたという事態はないのではないかと私は考えます。
  51. 宮幡靖

    宮幡委員 これは事務当局としては当然な御答弁であり、また国会側としても政府機関としての予算を承認し、決算の裏を見ているのでありまして、あえてこれは申すべきことではなかろうかと思いますが、しかしただいまの局長の答弁のみで、私どもは実は了承できないのであります。まとめて清算をしたから、その清算費のありかたが少くなつたということは、実際の数字がもし五十七億などというようなものでありましたならば、これを事業活動の生産費用というものに比べてみますと、実に厖大なものである。しかもなおお伺いしたいのは、限定して朝鮮銀行だけでもけつこうでありますが、債権の取立て、財産の処分の実績等をひとつ振り返つて見る必要がある。将来におきまして債権の取立て可能見込額、不能額、こういうようなものにつきまして資料をお持ちになつたら、御説明をいただきたいと思います。
  52. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 たいへんこまかいお尋ねでありますけれども、たまたま一覧表がございますから、それについて簡單な数字だけ申し上げますと、朝鮮銀行閉鎖機関指定されました当時におきましては、帳簿価額で六十二億六千九十八万七千円という資産を持つておりましたが、その後換価をいたしました分がございまして、その換価した財産の帳簿価額が五億四千十三万八千円、その換価額が実際に現金になりましたのが、五億六千五百九十五万円と相なつておりまして、大部分が換価の必要のない現金、公債等でありますために、換価した部分が少くなつております。それから国内において支払うべき債務は、閉鎖機関指定されました当時は三億七千七百万円、それが現在では負債は大部分支払われまして、すなわち三億六千百九十万五千円、支払いを要すべき金額は、今日では千五百五十一万一千円、言いかえますならば、国内においての債務は大部分処理できまして、もはや国内に現金、有価証券等を残すままの形になつておる、かように申し上げることができると思います。
  53. 宮幡靖

    宮幡委員 局長さんはこまかい質問だとおつしやつたが、こまかい質問をしなければならないような法律が出ておるということを、まず反省していただきたいと思います。あるいはこれは管財局の御意思ではないかもしれないが、いろいろの事情に押されてできた法律で、これはまつたく納得の行かない法律だと思う。従つて納得の行くまでこまかいことを聞かなければならない事情にあるということを、ひとつ御了解いただきたいと思うのであります。  その次にまたこまかい問題になつて参りますが、ほのかに伺いますと、終戦当時朝鮮銀行の持つておりました店舗等は、換価処分せられたように聞いておりますが、その価額はどういうことになつておるか。今の数字の中に入つておるのかいないのか。まさか五億七千幾らの中に入つているわけではないでしよう。
  54. 堀口定義

    ○堀口説明員 ただいまの換価額の中に入つております。
  55. 宮幡靖

    宮幡委員 しからばその詳細は、件数が少いのでありますから、何と何という御説明をいただきたい。
  56. 堀口定義

    ○堀口説明員 個々の資産につきましてのこまかい帳簿価額及び換価額につきましては、ここにちよつと資料がありませんので、あとで御提出いたします。
  57. 宮幡靖

    宮幡委員 それならばそれでけつこうでありますが、五億七千の中に入つておるとすると、現金回収額というものはきわめて少い。またさらに、仄聞いたしました数字でありますから、もちろん確かなことではありません。間違いがあれば間違いがあるとおつしやつていただいてけつこうでありますが、終戦当時、朝鮮銀行銀行券発行の見合いという意味でありますか、あるいは保証に積んだということになるかもしれませんが、いずれにしましても日本銀行預金が肩がわつた意味の登録公債が、大体六十億くらいあつたのですが、そういうものがございましたか。その後の措置はどうなつておりますか。
  58. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えいたしますが、閉鎖当時の登録国債につきましては、そのまま日本銀行の方に保管されております。
  59. 宮幡靖

    宮幡委員 六十億はただいま資産として持つているというわけでございますね。登録のままになつておりますね。
  60. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えいたします。そのまま換価せずに持つているわけであります。
  61. 宮幡靖

    宮幡委員 それはそれで明らかになりました。  それから、これもさつき局長の答えられた、なかなか今言いにくいという問題に入るのかもしれませんので、言いにくければ別な機会に伺つてもけつこうでありますが、前の副総裁参考意見に、株主名簿はないが、朝鮮人は三千二、三百株しかないということであります。しかし朝鮮総督府以下朝鮮のいろいろ機関が、株を持つているという現実は知つているわけでありますが、この持株は現在日本政府に属するものであるか。韓国政府に属するものであるか。この点につきまして、これはむずかしいことでありますから、もしここで言わない方がいいというお考えならばしいて答弁はいりませんが、さしつかえなかつたらその点についてのお答えを願いたいと思います。
  62. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 御承知のように朝鮮総督等の持株が一万株余あると思います。しかし何度も申し上げたのでありますが、日韓交渉等の関係が非常に微妙になつておりまして、ただいまの段階では日本の立場等からも申し上げるべき段階でございませんので、申し上げないようにいたしております。
  63. 宮幡靖

    宮幡委員 さらにもう一点、こまかい問題でありますが、朝鮮銀行と限定してもけつこうでありますが、現在旧朝鮮銀行株主を招集して——これは公式の株主総会とは言えないかもしれませんけれども、そういう株主に残つた財産を配分することが可能であるかどうか。絶対に不可能であるならばその理由はどうであるか。これをひとつ説明願いたい。
  64. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 法律的には、日本におる株主だけが集まつて朝鮮銀行日本にある残余財産を分配するということは、不可能ではないかと思います。現になおかつ閉鎖機関として指定せられておりまして、今回の改正法にはそのことを改正いたしておりませんから、残余財産を、在外活動閉鎖機関の場合には株主に分配しない、しばらく大蔵大臣が管理しておるという形のままになつておりますので、この際は不可能であります。
  65. 宮幡靖

    宮幡委員 やはりそこにこの法律を審議して行く場合に重大な問題がある。今は閉鎖機関指定されているから、分配は不可能であるという御説明ですが、われわれの頭は、他の条件に不利益やあるいは不可能な事実がないとすれば、閉鎖機関指定を解除すべきだという論拠に立つてお伺いしているのであります。しかしこれはまことに言いにくい問題であることは私も想像いたします。われわれはそういうふうな意味において、政府当局に迫るべきではありませんので、これはこの程度にいたします。しかしあくまでも御了解を得ておきたいのは、他に不利益や不可能な事実がないとするならば、これらはもともと戦争に協力したので、将来かような機関ができないようにという占領政策のねらいではありますけれども、ほんとうの基本的活動考えますならば、朝鮮銀行にしろ殖産銀行にしろ台湾銀行にしろ、それぞれの地域におけるところの平和的な正常な経済活動を助成して行く、日本の躍進する一つの方策を援助したにすぎません。またこれに主導権を与えて、政府が指導育成して来たというのが正しいかもしれません。さような大乗的な観念から見ますと、当然これは一般の閉鎖機関と同様に指定を解除すべきものだ、こういうことを強く信じましてこの法律案をながめておる。従つて今のようなお答えしにくいことと想像しながらも、これをひとつ明らかにしてもらいたい、かような観念になるのであります。しかしながら本日は大臣の御都合もあるようでありますし、なお本委員会は、本問題に関しますことは小山理事を主査といたしまして、内部協議をまとめております。今は小山委員がちよつと都合で欠席しておりますので、最後まで私質問いたしません。しかし今後関連いたしまして、なおこの質問を継続したいと思いますが、他の委員に発言がないといたしましたならば、本日は私の質問はこの程度にいたしておきたいと思います。
  66. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 きわめて愚問のような、しかも簡單なことでありますが、一点明らかにしておきたいと思うのです。朝鮮銀行閉鎖機関になつた台湾銀行閉鎖機関になつたと簡單にこう申しておりますが、その閉鎖機関指定は、日本の領土内においてのみであるか、もしくは朝鮮まで閉鎖されておるのであるか、台湾においても閉鎖されておるのか、こういうことを一つお伺いしたいのであります。
  67. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 日本にある財産だけにつきまして、いわば財団的な意味におきましてこれを閉鎖機関といたしております。
  68. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 これが重大な点でありまして、閉鎖されたのは日本の国内にあるものだけである。台湾銀行は国民政府がそのまま受継いでそこで営業をやつておる。閉鎖されておらない。朝鮮においても朝鮮の中央金融機関としてこれが閉鎖されずに動いておる。しかもそのいずれにおいても相当資産を持ち、営業権を継承しておる。こういう場合に、それらと関連して、日本閉鎖機関をどこまでも閉鎖して行かなければならないという理由は、ちよつとわれわれには理解できないのでありますが、この点御説明を願います。
  69. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 台湾銀行朝鮮銀行の場合はなかなかむずかしい問題であると思います。台湾、朝鮮ともそれぞれ割譲地域でありますが、割譲地から見るとそれぞれ中央銀行的な役割を現に持つておるのであります。従つてこれらの機関を、今後両当事国間の財産権あるいは請求権の処理の交渉の際に、いかに観念して行くかということが実は一番重大な問題でありまして、その辺が現在までいろいろなむずかしい交渉あるいは暗礁に乗つておりまして、この機会に明らかにできないことを遺憾に思います。ただ国内のこれらの三行を閉鎖機関として指定してありますのは、決して従来のそれらの機関に対する日本株主経済的利益を侵害するという趣旨はないのでありまして、今後とも同じ考え方で私どもは進んで行くつもりであります。
  70. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 御説明は一応了解できるのでありますが、その考えを発展させて行きますと、これは中共にも及びまた南方にも及んで行くというおそれがあるのであります。そういう危険性を含んだものを躊躇しておることが賢明であるか。閉鎖ということは国内に限られた問題であるがゆえに、国内の問題は国内で解決してしまつて、国際問題は国際問題として別個に扱つて行く。この方が私は日本の今後の行き方としてはむしろ明確でもあり、危険性も含まない問題になると思うのですが、この点いかがでしよう。
  71. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 その点は、平和条約第四条によりまする両当事国間のとりきめがどうなるかということと、実は深い関連があるものと考えます。先ほども申しましたように、決して政府がこれらの閉鎖機関の国内に残つている資産を取上げてしまうという趣旨ではないのでありまして、この両国間のとりきめの形がつくまで、しばらくこれを管理的に運営して参るということの方が、いろいろな関係で適切であり、しかもこの関係は今後そう長い時間をとるまいと考えますので、いましばらくは今日のようなままの形をとらねばなるまいと考えます。
  72. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 この法律の修正案の理由書で明らかであることを、今理財局長からお話があつたのでありますが、ほんの短かい期間というような説ですが、その短かい期間は大体どのくらいのお見通しでありますか。それを伺いたい。
  73. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私は実は管財局長でございまして、理財局長ではないのでありますけれども、平和条約の発効が二十八日と聞いております。従つて、その第四条のとりきめ、あるいは平和条約第十四条に基く在外資産の処理等も、公式には条約発効後のことになるのであります。ただ発効前に朝鮮その他との間に打合せがございますが、これは予備的なものでありますから、発効後なるべくすみやかな期間に、このような関係は処理したいと考えますが、何箇月というようなことは、これは理財局長がお見えになつても、にわかには申し上げられないと思います。
  74. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 この問題と深い関連を持つていると考えるのでありますが、軍票等につきましては、これは賠償問題ではないと思うのでありますが、どういう状態になつておりますか。一応御説明を願います。
  75. 池田勇人

    ○池田国務大臣 軍票と申しましても地域別にいろいろなものがござまして、私は、一々どういうようにするという考えを持つておりません。
  76. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 どうするかという考えを持つておられないということでありますが、そのどうするかという考えを持つていないというところにも段階があるので、これは非常にこまかい段階がありますが、今言うことができないとおつしやるのならば、それでわかるのでございますけれども、一体これは日本が支払うべきものかどうかということは、おのおのの国との折衝によつてきまるのだろうと思います。そしてその金額等も、どのくらいあるかほとんど検討がつかないと思うのですが、その今の大蔵大臣のお言葉をもう少し明確に承りたい。
  77. 池田勇人

    ○池田国務大臣 委員長、速記をとめてください。
  78. 佐藤重遠

    佐藤委員長 速記ストツプ。     〔速記中止〕
  79. 佐藤重遠

    佐藤委員長 速記を始めて。
  80. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 過般来、閉鎖機関令の一部を改正する法律案につきまして、政府委員からの御答弁にあずかつておりますが、まだはつきりいたしませんので、きようは大蔵大臣から直接それに関連した事項について、お伺いしたい、こう存じておる次第であります。もうすでに重要な面については、同僚宮幡君よりも御質問になり、そしてそれに対しての御答弁は、重要な問題でありますので、あまり明確な御答弁は避けたい、こういうようなことを伺つておりますので、重ねてここにお伺いすることもどうかと思います。やや重複した点もありますけれども、速記をとめてお伺いすることはよろしゆうございましようか。もし御答弁のうちに、速記をとめて御答弁願える事項がありましたならば、速記をとめて願います。朝鮮、台湾、これはもちろん連合国ではないと存じますが、それはその通り解釈してよろしゆうございましようか。
  81. 池田勇人

    ○池田国務大臣 朝鮮は連合国ではございません。従いまして、一般の連合国との平和条約で当然に適用にならぬ場合がございますので、いろんな規定を設けておるのであります。
  82. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 閉鎖機関令の一部を改正する法律案に関連したいろいろな事項をお伺いするのでありますが、その点は御了承願いたいと思います。  朝鮮資産は、前回の委員会において政府委員は、現地において米軍により接収され、その後いわゆる米韓協定によつて朝鮮に帰属し、朝鮮は最終的取得と解していると伺つたのですけれども、そうでありますかどうか。私は、そうではなく、これは没収されたのではないのだから、いわゆる所有権は日本にあつて、そうして一時軍事譲渡というような関係で向うがお預かりしているのだ、そう解釈すべきではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  83. 池田勇人

    ○池田国務大臣 速記をとめていただきましよう。
  84. 佐藤重遠

    佐藤委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  85. 佐藤重遠

    佐藤委員長 速記を始めて。
  86. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 「閉鎖機関の本邦外に在る本店支店その他の営業所に係る債権及び債務で命令で定めるものは、これを本邦内に在る財産とみなす。」こういうことになつております。そこでこの法律案の趣旨は、この間何かブラジルの例をとつておりましたが、ブラジル一国にこれを適用する意味でありますか、あるいはその他の国にもこれを適用せんとするものであるかということをお聞きしたい。
  87. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えいたします。第二条の改正の点でありますが、現在問題になつていますのは、こちらでもらえる財産といたしましては、特に連合国関係でブラジル、それからもう一つ現在明確になつておりますのは、国際決済銀行のスイス・フランというようなところが、現在までにわかつているところであります。それからもう一つ、国内店舗の資産負債の範囲内に取入れて参りましたのは、支払う方の問題も実はあるわけであります。先ほど来いろいろ説明がありましたように、いろいろ外交交渉その他の結果、日本が支払わなくてはならない債務が出て来るかもしれない。その債務の種類といいますのは、現在までの閉鎖機関令で行きますと、国内店舗の債務に限定されておるわけであります。しかしその交渉の結果等に基きまして、現在その範囲内にない支払いをする必要が生じた場合には、現在の法律では払えませんので、一応そういうものが将来出て来た場合には、政令で規定して支払うことができるように、本邦店舗の資産負債のうちへ取込んでおるわけであります。
  88. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 これは朝鮮と台湾は例外でありましようか。
  89. 堀口定義

    ○堀口説明員 朝鮮、台湾につきましても、その折衝の結果起つた問題の処理につきましては、同一に適用されるものであります。
  90. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 午前中に参考人からいろいろお伺いしたのですが、私もこの前政府に対する質問の中に、第二会社を設けると考えておつたが、今第二会社をはずしたということは、一体どういうことか、こういうことをお伺いしたはずであります。また参考人の御意見も、第二会社はどうしてもやりたいというようないろいろな質疑応答があつたようであります。第二会社をもし設けるとすれば、法律によらなければならないのか。私はそれに対して、法律によらなくとも、株主総会あるいは清算人の総意によつてできるではないか、こう申し上げましたが、それは法律を要するという御答弁でありました。これはやつぱり法律によらなけばできないものでありましようか。
  91. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 法律によらなければできないことだと思います。
  92. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 法律によらなければできない、政府がそう考えておるのですから、これはやむを得ないと思いますが、法律によらなければできないという根拠はどこにありますか。
  93. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 たとえば朝鮮銀行を例にとりまして、朝鮮銀行法という法律がありまして、この法律本店京城に置いて、事業活動の範囲がきめられておりますので、財産は御承知のように今日国内に六十億残つておりますから、株主総会を開いて、その財産朝鮮銀行法できめられた他の用途に使おうとする場合には、これは朝鮮銀行としてやる限りにおいては、朝鮮銀行法の範囲外になりますから、どうしてもこの財産を利用して、たとえば貿易事業をやるとか、生産事業をやるためには、朝鮮銀行のかくかくの財産使つて、かくかくの新しい目的で法人格を形成する、こういう法律がいることになります。
  94. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 その点はわかりました。そこで午前中に参考からお伺いいたしましたいわゆる国内資産、登録公債と申しますか、終戦直後たしか百六十億円と聞きましたが、ただいまは六十億円という数字をお示しになつたのでありますが、これはどちらがほんとうでありますか。
  95. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えいたします。百六十億円という数字は、どこからお聞きになつたのですか。その数字は間違つておると思います。
  96. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 六十億円といわれるが、それはその他の財産もありましよう。閉鎖機関の現在持つておる資産、これは大体二百億円、こういう説明をこの間お伺いしたのであります。二百億円は閉鎖機関で、いわゆる命令によつて指定されたその当時の帳簿価額であると思いますが、この点いかがでありますか。
  97. 堀口定義

    ○堀口説明員 閉鎖当時の帳簿価額では、約九百億程度であつたと思います。ラウンド・ナンバーで約九百億円であります。それを現在まで換価した額が約一千億程度の総額になつております。従いまして現在二百億程度とこの前申し上げたかと思いますが、それは要するに債権の徴収をやつて、債務の支払いをやる、あるいは財産の売払いをやつて債務の支払いをやる。その間にたまつております余裕金、それからさつき問題になりましたような朝鮮銀行台湾銀行等の当時持つておられました国債というようなもの、現在そういう形で残つているものが約二百億ということであります。
  98. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 午前の参考人の御意見として、すみやかに閉鎖機関を解除してもらいたいということは、なるほどお伺いしてみれば、私どもも同情すべき点はあると思います。講和条約発効によつて、これまでの広範囲にわたつてのいわゆるパージの解除、あるいは犯罪者の面においても大幅に特赦される、こういうような事態にあるのに、ただこの閉鎖機関だけは厳然として何か非常な重罪でも犯したように、ぎつしりと縛つておくということもどうかと思いますが、この間の御説明によりますと、何か四段階にわけて、また整理人を大蔵大臣が指名してやるのだ、こういうようなことであります。五十七億円もの厖大な費用を費してそしてどの程度の整理がされたかといえば、先ほどお伺いいたしますと、たとえば朝鮮銀行の一億円程度の貸付の取立てとか、あるいはある一部の財雇の処分とかいうような程度だと伺つております。そうしたような事務整理に伴うそれとしては、あまりにも多くの経費を要する。こういうことはこの間もお伺いした通りでありますが、すみやかにこの閉鎖機関を解除して、これを軌道に乗せることがよろしいじやないかと考えるのであります。一体どの点までそれは整理すれば解除されるのか。その点はどうお考えになりますか。
  99. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 今回提出せられました政令の改正法案の第一の目的は、先ほど来も御説明申し上げましたように、講和条約も発効するまでの段階になつたのでありますから、できるだけ従来の閉鎖機関指定を解除して、自由な商法上の清算に移すということのために、法律案が提出されておるのであります。ただたびたび御質問がございますように、さような場合になつても、在外活動閉鎖機関だけについては、講和条約の発効後、第四条の規定で、相手国政府とのとりきめができるまでは解除ができない、こういうことは同時に申し上げました。従つてすでに三月三十一日限り、従来の閉鎖機関整理委員会というものも、大蔵大臣の命令で解散いたしました。そのあとは閉鎖機関は四つにわけまして、それに一名ずつの清算人を置きまして清算の形を簡素にし、できるだけ清算費用も節約するような形をとつております。すでに四人の清算人大蔵大臣から指名されておりますけれども、これはいずれも従来の閉鎖機関整理委員会の委員をやつておられた、七人の方から出ておるのでありまして、これらの方は清算事務を引継ぐと同時に、ただちに個々の閉鎖機関につきまして、指定を解除していいかどうかを検討いたしまして、解除した方がいいものは、この法律通り次第に解除して、普通の清算に移そう、かように考えております。それから従来何十億の清算費用を要しましたが、今日まで閉鎖機関整理委員会が、何百人かの人を使いまして清算を進めました結果、当初千八十八あつた閉鎖機関が、今日現在では二百七十くらいに減つております。従つて八百近い閉鎖機関は、完全に清算を済ませまして、あと残りの二百の閉鎖機関につきましては、できますことならば今年中、あるいは今年の半ばごろまでには、可能なものは指定を解除して普通清算に移す、こういうつもりでおります。
  100. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今折衝中であります朝鮮、台湾等については、平和条約が発効後において、いつまでもかかつてはこれはどうかと思います。すみやかに御解決になるようなことをするでありましようが、いわゆる資産の処理、先ほど参考人方々としては第二会社をつくりたい、そして営業は一体どういう方法をとるか、それに対してはやはり銀行のような仕事を営みたい、こういう御意見があつたように聞いております。朝鮮銀行台湾銀行は、その使命はすでに失つたのでありますから、単なる金融機関ということの意味であろうと思います。今長期信用銀行法案が審議されておりますが、これは私の希望でありますけれども、こうした整理が進んで、できるだけ国策に沿うような線に、こうしたような資金を充当するようにすることが望ましい。このようなことも考えられる次第であります。今からそうしたようなことを注文づけることも、これは時期が早いだろうと思いますが、ただ先ほどお伺いした法律は、今国会中はめんどうだ、いずれ次の国会にというお話もありましたので、そのうちにはすべての解決ができるであろう。そういう時期になりましたならば、あえて長期信用銀行ということに限定するわけではありませんけれども、今最もこの金融面において機能が停頓しておるような状態になつておりますので、すみやかにそうしたような有益な事業面に投資させる態勢を、御考慮になつておるのかどうか。あるいはまた株主全部にこれを配分するというようなお考えでもあるのかどうか。もしおさしつかえない範囲において御答弁願えれば、けつこうだと存じます。
  101. 池田勇人

    ○池田国務大臣 閉鎖機関の方で、今たまつておりまする金は百億程度あると思います。これは今食糧証券に投資しておるのであります。食糧証券を日本銀行に持たすか、あるいは資金運用部が持つて、その食糧証券を売つた金を銀行に預け、そして預金として持つておくか、あるいは今まで通りに食糧証券の方に投資しておくか、これは清算人がお考えになることだと思いますが、この金は行く行くは、今の閉鎖機関の方の清算が済んでしまえば、分配さるべきものであります。ただ朝鮮銀行その他につきましては、今までいろいろ議論のあつたような点がございますので、この金をどうしようかということについては、私も考慮をめぐらしましたが、こういうふうな金を長期の投資に使うことがいいか悪いかというのは、問題があるのであります。やはり長期の資金につきましては、原則として資金運用部を活用するのがいい。資金運用部が持つたり、あるいは日本銀行が持つべきいわゆる食糧証券を、閉鎖機関に持つてもらつておるのでありますが、間接的にはその金は相当有効に使われておる、こういうことに相なるのであります。今後の問題といたしましては、先ほど来申し上げましたように、預金にするかあるいは食糧証券で行つたらいいか、研究を要する問題でございますが、やはり清算に移るべき過程の状態でありますので、今すぐこれをどうこうするということは、よほど研究を要する問題だと思います。
  102. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 ただいまの御答弁のように、現在の立場において、食糧証券その他に利用しておるという程度で、まことに消極的な利用の方法であると思います。私の申し上げたことは、今ただちにとは申し上げられないけれども、最も積極的に、最も能率的に、こういうことで活用することがどうか、こうも考えて申し述べたのでありますが、これをどちらにまわすかということは、清算人及び株主の総意によつて決定することであるか。清算人大蔵大臣の指名によつて生れたのであるから、大蔵大臣の御意向によつて決定するものであるか。その指導力はどちらにあるのですか。
  103. 池田勇人

    ○池田国務大臣 指導力は、清算人がきめるべき問題でございます。大蔵大臣監督の立場にございます。実は二、三週間前の新聞に出ておつたと思いまするが、この閉鎖機関のためております百億円を、指定預金にしようかということも考えてみたのでありますが、先ほど申し上げましたように、政府の金を指定預金にしますと数十行、相互銀行を入れますと百数十行、信用金庫を入れますと二百近くになる、こういう問題があるので、閉鎖機関のこういう金を、今までの指定預金のように全部の銀行に振りまくということは、なかなか困難であります。そうすると都会の銀行だけに預けると五、六行、あるいは四、五行に預けるかということになると、なかなかやつかいな問題であります。それから預金の利子をどうするかという問題になると、かえつて食糧証券を持つた方が、閉鎖機関清算人としては利益だ、こういう場合もありますので、研究は続けておりまするが、今のところはこのままで行くのが妥当じやないかという考えを持つておるものであります。研究はいたしております。
  104. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 この問題は、これ以上お伺いしたところでちよつと無理だと思いますので、次に移りますが、今ちようど指定預金のお話がありましたので、それについてちよつと思い起したのであります。これは大蔵大臣に対して決して皮肉で言うのではありません。ちよつと今思い出したので申し上げるわけですから、どうぞ悪しからず……。  昨年の十一月二十六日、一時間余にわたつて、私が大蔵委員長当時、経済金融に関する問題について質疑を行つたのであります。そのときに年末金融の問題に触れて、何とかこの預託を引揚げたなら、もう一度再預託はできないか、こう申しましたらば、大蔵大臣は、それは金融上の常識ではない、こういうことはいわゆる常識によつてやらなければならぬ、こうはつきり言われた。そこで私は、専門家である大蔵大臣が、常識論によつて先に出したのを、今度は出さぬのはおかしいじやありませんか、こう私が申し述べたことがあります。それはそれでいいとして、あの当時は、年末を控えて、不渡手形あるいは取引停止というように、非常に大きな問題が出て、経済の危機が迫つていたのでお伺したはずであります。そこで私記憶を呼びもとしてみると、衆議院では、それは常識ではないからやらぬのだと言つたのに、その後二箇月か二箇月半しがたつていないうちに、参議院において百五十億円を預託することにする、こうおつしやつたのです。もつともその間の情勢は、あるいは政府の年度内における剰余金の見通しがついたことでもあろうと考えております。客観情勢の変化によつて、そうしたようなこともあるいはあり得るかもしれませんが、賢明なる大蔵大臣は、そんな二箇月か三箇月ぐらいの見通しがわからないはずはないのです。それなのに衆議院においては、それは常識ではない、いよいよ困れば何とかするから安心せよと言われたので、われわれはすつかり安心しておつたのですが、それから二、三箇月後の参議院においては、預託するのだと言われた。そこでまた実際われわれは安心はいたしましたけれども、われわれはずいぶんその当時金融状態を心配してお伺いしたのに、きれいさつぱり常識ではないと片づけられてしまつた。これは私どものひがみかもしれない。衆議院は協力するのだから、適当にしておけばいいというような御意思もあつたろうと思いますが、参議院はなかなかそうは行きませんので、ここはまあ大蔵大臣が大きな政治家になつたのだから、この程度の手をやるのは当然であろうと思いますけれども、あまり食い違つた御答弁であつたことを、今ちようど指定預金の話が出ましたので、ちよつと思いましたので、別にどうこうというわけではありません。そうしたようなことがあつたので聞いてみると、参議院と衆議院との答弁が食い違つておる。やはり親類同士であつたからそうであつたのか、こういうふうに好意的な考えでおりますけれども、これは別にぜひ御答弁願いたいというわけじやございません。そうしたようなことを今思いついたわけでありますから、御了承願いたいと思います。
  105. 池田勇人

    ○池田国務大臣 せつかくの夏堀さんのお話でございますので、その間の事情をお話申し上げたいと思います。これは昨年の九月、十月ごろ政府指定預金をすべしということは、金融界のみならず大蔵省事務当局の全部一致した意見でありました。私を加えない省議でもそういうふうに決定した。ぼくは何を言うのだ、そういうことは第三・四半期においては数百億円の散布超過になる。そこで今はすべきじやない。大体金融というものに対して財政資金を出すということは、常識的でもないし妥当でもない。第三・四半期は七、八百億の散布超過になるのだから、こういうときにやるべきじやない。しかもそれは金融の常道ではないと言つてとめたわけです。しかるところ二月に私が病気いたしまして、実は積極的にあまり仕事をするだけの余裕がなかつたのです。昨年の政府の引上げ超過は一月、二月で五十億程度であつたのであります。しかるところ今年の一月、二月は合せて四百数十億円の引上げ超過になりまして、自然増収が相当あることが見込まれた。そこで私は病気がなおつて省へ出まして、こういうふうに政府の引上げ超過になるのをためておくことはよくない。なぜ君たちは指定預金をしなかつたのだ。その案を出さなかつたのだと言つたら、昨年の秋大臣は絶対に反対だと言われたからそのままにしておきました。それで、経済というものは動くのだ。常に注射をすることはよくないけれども、ちよつと異常のときには注射をするのが政治家や大蔵省の務めであるというので、案をこしらえさせまして、これは何も要望がないのに私どもから自発的に申したわけで、こういう状態であるのであります。従いまして三月、四月の金融の行き詰まりその他を緩和するために百五十億を出した。しかも中小企業の方を主にいたしました関係上、商工中金につきましては引上げるべきものを引上げずにそれに追銭を出す、こういうふうな方法相当中小企業の方に出したのであります。今の状態におきましても日本銀行の貸出しが、外貨貸付と合せまして三千億程度になる。去年の今ごろは外貨貸付と合せまして、三千八西億円の貸出しだつたのであります。しかるところ今はそういうふうになつておりますので、要すれば指定預金をしようかというので、政府の余裕金を実は探しておるのであります。きのう現在では指定預金が二百十億になつております。すなわち前の指定預金で引上げるべきものを、商工中金あるいは無尽の方は引上げずにおるところへ、また百五十億円出した。二百数十億円の指定預金になつた。それ以外の政府の当座預金が三百四十億ある。四、五、六月が多分相当の引上げ超過になるだろうと思いますから、この三百四十億をどのくらい使おうか、あるいは今閉鎖機関として問題になつておりますあの金が何とかなれば、また別でありますが、あの手この手を打つて金の算段をいたしまして、今度はもう少し長期の指定預金をしたらどうかということで、今研究をいたしておるのであります。事情がかわつて来ておりますので、そのかわつた都度、邪道ではありまするが、生きものの経済をうまくするためにやつております。原則政府指定預金が妥当でございます。今のようなときには、政府の引上げ超過があるときは、やはりその超過分は民間で使つてもらう。引上げとか散布の方に超過が起らないように、いろいろ手を打つのが大事でありますが、今日は何としても三百億の自然増収があり、あれやこれや自然増収以外の前年度繰越金も相当ありますので、そういう手を打つておるのでありますが、原則は衆議院でお話した通りでございます。それから状況によりましては、参議院で私が進んで発表したような方針もあるのでございますが、趣旨は一貫しておりまして、あなたのおつしやる通りにやつておりますから、御了承を願いたいと思います。
  106. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 大蔵大臣はどうも大政治家になられたので、その当時と現在は大分情勢もかわつておりますので臨機応変の処置をとつた、こういうことに解釈して喜んでおります。食い違つたことはその通りなんですけれども、お互いに親類同士なので、そこは臨機応変でやつたということですが、十分指定預金を出すべきだと思います。  そこでついでにお伺いいたしますが、今長期の預託の意思があるということですが、私この間地方に帰りましたら、どうも三箇月やそこらの預託では、こわくて安心して貸されない。せつかく持つて来ても、ただふところに置いておくだけで、じつとながめておらなければならぬ。何とか六箇月ぐらい余裕を置いてくれれば、手形でも何でも貸すことができるのだが、二箇月でやるのもいいのだが、とても心配でどうにもならぬ、この点を何とかできないだろうか、こういうような金融機関の声もありましたので、ちようど長期のお話も出ましたから、この点はもう少し何とか預託の引上げを延ばすようなお考えはありませんかどうですか。
  107. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ごもつともな御意見でございまして、私が長期と言いましたのもそういう意味で言つておるのでありまして、今回の百五十億円の指定預金も——今回と申しましても一箇月ぐらいのことでありますが、大体予算の説明のときにおきましては、金融債の引受はしない、情勢によつてから金融債の引受も考える、こういうことになつておるのであります。すなわち資金運用部資金の六百五十億は、地方債あるいは各特別会計の融資とか政府出資機関への貸付とか、こういうふうにいたしております。しかし今までの簡易保険の集まり方、厚生年金の集まり方、あるいはまた郵便貯金も予定より越えまして、昭和二十六年度は四百六十億円がちよつと越えております。そういうことで私の予定よりも、資金運用部の昭和二十六年度中の余裕金は百億円余りであつたということで、これは金融債の方に引受けられる。しかし金融債の発行は興銀、勧銀の方で計画的にやらなければいけませんから、今預けております分は四、五、六月の金融債の発行の場合における預金部の引受の見合いになる、こういうかつこうでやつておるわけであります。そうすると三箇月で引上げられることになると運用にも困る、銀行も思い切つて運用できない、こういうのであの金を長期にかえるとか、あるいはこれからもう少し金を探して、あの金は四、五、六月に引上げるが、今度はお話のように六箇月ぐらいなものにできないかということで、研究をいたしておるのでございます。これまた夏堀さんの御意見通りにやつて行きたいと考えております。
  108. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 何分もう少し長期にお願いしたいということを、この際重ねてお願い申し上げておきます。  それから私の聞き違いであつたかもしれませんが、昨日同僚宮幡委員からの御質疑のときに、財政と金融は混同しないように持つて行きたいものだ、こういうことでございましたが、その通りでございますか。
  109. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その通りでございます。ただ資金運用部の金あるいは見返り資金を、財政資金と言うか金融資金と言うかによつて、その結論がかわつて参りますが、見返り資金は昭和二十七年中には開発銀行に出してしまつて、これは金融資金になる。資金運用部の資金は政府の扱うものでありますが、実体は金融でございます。こういう意味におきましては、財政資金と金融資金とはなるべく区別して行きたい。ただ電力開発のためとかあるいは重点産業の復興のためには、ある程度一般会計から出資するということはやむを得ないと思います。住宅公庫への出資金は財政資金か金融資金かということは、住宅公庫というものは一つの金融業務でございます。しかし事の性質上これはある程度政治的な考え方もあつて、財政資金の面が相当あると思います。そこで預金部資金、見返り資金の金融資金ということになれば、昨日宮幡委員にお答えしたように、財政と金融とは区別して、政治的目的を多分に含むものについては、ある程度財政資金が金融資金のうしろだてをすることは、やむを得ないことだと考えております。
  110. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今の御説明はわかつたようでわからぬのでありますが、この資金運用部資金の金は、これはこの前御質問申し上げたように、産業資金に対する三百億円を切つたのです。先ほどお伺いしたところでは、相当年度末の金がふえておるようですが、今後資金運用部資金から産業資金へまわし得る金は、どのくらい御考慮になつておるか、あるいはまたそういうことは考えておらぬのであるかどうか、その点をお伺いしたい。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昭和二十六年度におきましては、資金運用部からの金融債引受は、買上げ分を入れまして大体三百億、引受の分は正確にいえば二百八十億だつたかと思います。その程度あります。しかし各会計を通じての絶対均衡予算という方針を堅持いたしますると、ただいままでの見込みでは六百五十億の地方債を引受けたり、あるいは百十億の鉄道への繰入れ、百三千億の電通への繰入れ、あるいは政府出資機関への出資貸付等を入れますと、金融債の前年度の三百億円が一文も出なかつたということになる。そこで金融債は、資金運用部の方の引受は今計画には乗せておりません。しかし今後の情勢によつて郵便貯金も集まる、簡易保険もふえて来るということになれば、予定以上にふえたものについては金融債を引受けるということは、今国会の初めごろ申し上げておつたのであります。しかるところ先ほど申しましたように、税の自然増収もあり、資金運用部の預入も多くなりましたので、今のところは少くとも百億あるいは百二、三十億の金融債の引受は確実にできるようになる。しこうして今後の情勢が、予算見積りのときよりももつと金が集まります場合においては、その金を優先的に金融債の方の引受に充てよう。しかしまたいろいろ問題も起つて参りますので、金融債ばかりというわけにも行かぬと思いますが、大体金融債の方に主として向けるという考えで進んでおります。
  112. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 たいへんけつこうな御答弁でありました。これは二月二十六日に私が質問いたしました際に、「一般会計の余裕財源で預金部の方の資金源にするように、大体百六十億ないし百七十億というものを予定いたしておるのであります。その程度の一般会計からする預金部の方の援助を計画いたしております。」こういう御答弁にあずかつておるはずであります。この資金運用部の方に一般会計から繰入れるということは、これは予算にはなかつたが、これからやるということでございましようか。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは金のやりくりでございまして、一般会計の方で余裕がございまして、政府の当座預金がふえますと、日銀の方へそのふえた分だけ預金部の方の所有証券を肩がわりさせる、こういうことがあるのであります。一般会計のみならず、預金その他につきまして相当ふえております。たとえば森林火災保険特別会計等におきまして、従来は二、三十億円の赤字であつたが、今度五、六十億円の黒字ということになりますと、この特別会計から預金部の方へ預金をする、こういう金を見積つたのが、合計で百六十億であつたかと思います。
  114. 佐藤重遠

    佐藤委員長 ちよつと夏掘君お待ちください。  参考人の皆様にごあいさつしたいと思います。ただいま議題となつております閉鎖機関令の一部を改正する法律案について、参考人方々におかれましては、長時間にわたり忌憚のない御意見を開陳せられ、本案審査上におきまして多大の参考となりましたことを、委員一同にかわり心から感謝いたします。御自由に御退席くださいましてけつこうであります。どうも御苦労さまでございました。
  115. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 この前、無記名定期預金は約百億円ほど増額になつております、こういう御説明でありましたが、その後どんな状態になつておりましようか。
  116. 池田勇人

    ○池田国務大臣 無記名定期預金は二月十一日から始めまして、大体二月一ぱいで二百億程度の無記名定期預金ができました。その後大体毎日十億円程度ふえる足取りでございます。従つて三月末には大体五百億円程度の無記名定期預金の増になつております。しかしこの五百億円の増の中には、今までの定期預金その他の預金が振りかわるのも相当あるのであります。大体四分六分で、振りかわりが六割、ネツト増が四割という各銀行の申出でございますので、二月十一日から始めまして三月末までに、大体三百億円余りの増加があつたと私は考えております。四月に入りますと、その足取りはちよつと落ちると思います。今後は今までのようにふえないかもわかりません。しかし振りかわり以外にだんだん新しい無記名預金が今後増加する。これにつきましては一部では千億円という話もございますが、またネツトの増は四、五百億円という話もあります。大体ネツトの増は四、五百億円くらいになるのではないか、あるいはまた時がたちますれば、それ以上になるかもしれないと考えております。
  117. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 この無記名定期をもつと奬励する意味で少し税金を負けたらどうか、こうお伺いいたしましたらば、何とかそういうことにしよう、こういうような御答弁であつたように思いますが、これはやはり法律によらなければできないのでしようか。またそういうような御意思があるのでしようか。
  118. 池田勇人

    ○池田国務大臣 実は無記名定期預金は、法律の変更なくしては認められないのであります。ただ法律上は源泉選択の税率がある。これは五〇%になりますので、無記名定期預金も源泉選択の税率にならざるを得ない。しかし貯蓄奨励の意味から申しまして、五〇%の税率は少し高過ぎるというので、適当の機会にこの税率を下げたいという気持を持つております。ただ税の理論から申しますと、最高税率が五五%になつておるから、その人はもし利子をもらえば五五%かかる。そうすれば五〇%は安いじやないかという議論もありますが、全般的に申しますと、また貯蓄増強の必要性から考えて、私は適当の機会にこの五〇%は下げるようにいたしたいという考えを持つております。
  119. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 もう一点だけ伺います。前国会で問題になつた遺家族の八百三十億のあの公債、あれはその後方々から金融がつかぬので、ただの金をもらつたも同様だと言つて、ずいぶん不満の声を聞きますけれども、せつかくこうして大蔵大臣がお考えになつたことであるから、これに対する金融も何かの方法でお考えになつておるかどうか。何か国民金融公庫から出すというようなお話もあつたそうでありますが、今の公庫の資金量ではどうにもならぬと思います。せつかく出したことによつて、かえつて国民の不満を買うというようなことは残念なことでありますので、この対策を何かお考えになつておりますかどうか。
  120. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話はごもつとな点があるのでございますが、これは一ぺんに換貨いたしますと、インフレのきらいがありますので、一年すえ置き、十年間の償還ということにいたしたいと思います。ただお困りの方につきましては、十年たたなければ全部もらえないというのでは長過ぎるので、生活状況その他を考えまして、五年償還ということも考えたいと思うのであります。御承知通り、農地証券とか漁業権証券の問題もありましたが、ただああいうものは片一方で金が入つて参る。漁業権証券の方は国債償還の金も相当ありましたから、もう二年間でほとんど払うようになり、来年からあるいは本年度からは外債の償還ということがございますので、一度にこれを短期間に払うということは財政上はなはだ困難で、増税でもすれば別でありますが、そこは金融情勢とも見はからつて、またそれをおもらいになる遺家族の方々の生活状況等を考えまして、適当な措置をして行きたい。財政が許せばこれを五年間あるいは十年間を待たずに出したいという気持はございますが、ただいまのところの見通しといたしましては、特別な方に五年償還でお渡ししてがまん願う。生業資金その他につきましては、すでに国民金融金庫でございまするか、遺家族の方には特に留意しようということで、進んで行きたいと考えております。
  121. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 まだ長期信用銀行等についていろいろお伺いしたいことがありますけれども、同僚委員諸君の御質問もあるようですから、きようは私はこれで遠慮いたします。
  122. 佐藤重遠

  123. 宮幡靖

    宮幡委員 大分時間もたつておりますし、きわめて短かい時間ではなかなか終りまで参りませんので、きようはそのうちの一つか二つお尋ねをいたしたいと思うのであります。きのうただいま御質問の夏堀委員から御質問があるというので、途中で時間等を見合いながらやめたのでありますが、ちようど一万田日銀総裁の話に触れまして、通貨制度確立ということを言つておるがどうかということをお尋ねいたしましたが、これははつきりいたしました。やはり同様一万田さんが関西の方へ行かれて言われた談話の中に、講和発効後は中央銀行としての地位はどうなるかということについての一項があるのです。それには、政府経済政策と密接に結びつくものでなければならない。中央銀行としてはそういうように考えている。しかし政府の政策が好ましくない方向に動く場合は、独自の立場からこれを是正すると言つております。これは例によつて例の通りはなはだ行き過ぎでありまして、大蔵大臣のもとに相談に参つて慎重にやつて緊密に行つているはずである。ところが談話にはこういうことが随所に出て来るのでありますが、一体大蔵大臣としては、講和発効後におきまする中央銀行の地位をどういうふうにお考えになつているか。この点につきましてお伺いいたします。
  124. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本銀行法の規定いたします通り、また政府機関法律規定しておりますところを守つて行きたいと考えているのであります。どんなことを言つたか私はよく見ておりませんが、政府のやり方が悪いとか不適当であるとか、そういうことは私はいたしませんから、問題は一応起つて来ないと思います。
  125. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣の答弁は円転闊達、少しも疑問はありません。けれどもこういうことを発表されると、司令部の牽制もなくなりました中央銀行というものが私どもは心配になつて来る。そこで昨日お尋ねいたしましたら、いわゆる金融三法とでも申すべきものの改正は次の国会において、こういう御答弁でありましたが、至急に諸般の情勢を考えられまして御立案を進めていただきたいのであります。独自の考えなきにしもあらずであるが、せつかく諮問機関として審議会を設けてあるので、その意見を尊重したいというのはごもつともであります。決してこれを促進しろというのではございませんが、どうもこういう言葉の出るのは私ども不愉快である。しかも占領政策によります指令、覚書等の発せられない事態になりますと、今のようなほとんど統制が行われておらない市中銀行、これを統轄すると申しますか、その中央銀行という立場にあります総裁の言動などというものは、十分心して行かなければならぬ。これらを完全に取締るというと語弊がありますが、適当な言葉では監督し得る規定等も望ましいではなかろうか、かように考えておるわけであります。  その次に、当面の経済の見通しについて、これは大蔵省からはもちろんそれぞれ適当の時期において御発表があり、伺つておりますが、非常におもしろい言い方になつております。これはもちろん一万田さんの談話でありますが、それもただ放言的に記者に言うのではなくして——大体大臣とか総裁などが旅行せられるときは、車中談の原稿を持つているはずであります。従いましてこれはそのときのたまたまの言葉ではなくして、何かそこに基本的な他意があるわけである。そういう意味から行きますと、ただ民間人がむだ話をしたという話では済まないのであります。当面の経済の見通しはどうだという質問に対して、近い機会に景気の急上昇するような要因は非常に乏しい、こう説明せられておつたのが、日を繰つてみますと出発前の一日か二日の時期であります。ところが今度は関西の方へ行つての談話によりますと、下期経済やや好転、こういうことで説明している。その要素としましては、七月には米国の新年度予算がきまり、国内では電源開発資金が出まわり、同時に八次新船建造が始まり、東南アジアの開発も軌道に乗り、日米経済協力が緊密になる。これだけの条件をあげまして、下期の経済はややよくなるのだと、こういう説明をしておられるのであります。ただ反面悲観的要素といたしましては、国内が一時的であろうが、生産過剰の状態に悩むことになるであろう。各国のいわゆる自給態勢がだんだん整備して来ることによつて、貿易規模が縮小されるという悲観材料があるが、ということまで言つておるのであります。一体大蔵大臣といたしまして、経済の見通し——きのう繊維につきましては、共産党の高田君の質問でありましたが、非常にわれわれの納得の行く、いわゆる業者の言う滞貨、あるいは操業短縮——私どもは操業短縮などということにつきまして通産省あたりが指令、通告を出してやるというようなことをいたしますならば、強い言葉で言いますれば、むしろ独占禁止法違反だとさえ私どもは考えております。そういうことで、きのうの御答弁では、繊維界のことに関しましてはまことに適切なお見通しをいただいておる。従いまして全体的に、一体大蔵大臣経済をどういうふうに見られているか。これは、やや好転なら好転でけつこうであります。逆転では困る、好転を望んでおりますが、今、日銀総裁が述べております諸条件の中に、どうも絵に描いたような感じのするものが一、二あるのでありますが、全般的にひとつ大蔵大臣のお見通しをお知らせ願いたいと思います。
  126. 池田勇人

    ○池田国務大臣 経済の見通しにつきまして、一万田君の言うことを私が批評するのはどうかと思います。私は吉田内閣の大蔵大臣ですし、日本の財政経済を預かつておるものでございまするから、一日本銀行総裁がこう言つた、ああ言つたで、それに対して批評を加えることはやめますが、私の見通しといたしましては、今は世界的に経済の正常化のときであります。もちろん軍備拡張をしておりまするイギリス、アメリカ、フランス等におきましては、インフレ予算をつくりまして——イギリスはそうでもございませんが、インフレ予算をつくつて、そうして軍拡をやつております。しかし他方ではいろいろなデフレ政策をとる。その方式はアメリカで申しますると、予算は相当計上いたしまするが、実際その予算はあまり使つていない。よほどスピードを落しておる、こういうことでインフレ予算でありますが、実際はそれを訂正するようなやり方をしておる。また片一方では非常に生産拡充をしておるという状態で、アメリカの方が大体正常な動きをしている。イギリスの方は生産は伸びません。予算はふえて、物価は上つて来るというので、アメリカとは様子は違いますが、非常に手持ち外貨を減らしまして、これは物価がだんだん上昇の傾向をとる。そこでバトラーが特別な施策で起死回生の方策を講じつつある。フランスもやはり軍拡のためにインフレで、フランがどんどん下り、独力でやつて行けるかどうか。この前のフランスの首相の声明なんか、とにかくフランの価値を上げることが政策の中心であるということまで言つて、バトラー流にやつておるのであります。しかし一方今度は軍備拡張をあまりしない西ドイツ、ベルギー、イタリア、日本というのは、これは輸出超過で外貨が余つて来る。ふえて来る。この外貨をどう使おうかというので、フランス、イギリス、アメリカとは違つて、どちらかというとインフレ政策をとりつつある、こういうような状況でありまして、この世界の動きいうのは、各国おのおの違つております。うまいやり方もありますし、下手なやり方もあるようでありますが、とにかく日本としましてはこういうものを見ながら、その間に処して徐々に経済力を強くして行かなければならぬ。こうなるとか、ああなるとか言つても、国民全体が力を合せて行かなければ、経済の伸びとか好景気というものは来ないのであります。そこで私はこういうふうな情勢を見まして、ポンド地域への輸出はある程度制限するとか、あるいはこの際に将来に備えて企業の近代化をやるとか、あるいはまた輸出を押えるとかしてその物資を国内消費に向けて行くとか、こういうやり方で日本経済の正常化をやつて行こう。景気はよくなるかとか悪くなるかとかいうことは、いろいろな所で聞かれますが、国民が力を合せて行けば景気はよくなる、こういうことになると思います。世界の経済が今みな正常化に努力しておるのであつて、そうデフレ傾向に向うとは考えられません。上昇傾向を——紆余曲折ではありますが、総体としては上昇傾向をたどつておる。そうしてそれによつて日本も将来を頭に置きながら、企業を合理化をし生産拡充のもとを開いて行きたい、こう答えるよりほかにないのであります。
  127. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣の仰せられるように、やはり一銀行総裁の談を批評する限りでもないでありましようから、この方面は少し気には入りませんけれども、面をかえたいと思います。  そこで設備資金——産業構造ということも考えねばなりませんが、設備資金の状況については依然としていろいろな制限がついております。これは統制ではないのですが、制限をつけざるを得ない。資金量がある程度固定している以上やむを得ないことで、これは批評する者の方が自由なくらいでありましよう。そこでこれらの金融対策の重点は、自己資本の蓄積ということがもとより基本的な点でありますが、やはり流通金融ということに重点が振り向けられて行く時期が、おいおい迫つて来たのではないか。そこでまず第一番に証券市場をながめてみましても、毎月今でも若干の増資、社債の発行等はありますけれども、全般的に見て、証券がコール市場あるいは担保金融の対象になる銘柄が、きわめて局限されておるのでありますが、流通金融の面から見ますると、主としてコール市場に担保を持ちますところの銘柄を追加して行かなければならない。また信用供与率につきましても、掛目の問題でありますが、これも五五%ずつかける。そんな程度だと思いますが、これを六〇%、七〇%等に拡充して行くことが適当ではなかろうか。それから証券金融の今五五%の信用供与率によりまして、日歩が三銭四、五厘というところなんですが、これらに対しましての金利ももう少し安くしてやる必要があるのではないか。これにつきまして大蔵大臣の御方針はどんなでございますか。
  128. 池田勇人

    ○池田国務大臣 証券対策ということは、流通金融の面のみならず、金融全般いわゆる設備資金の点から申しましても重要なことでございまして、金融政策の片一方をかつぐ大きい問題であると思います。幸いに昨年の春過ぎから証券界も活況を呈しまして、一時非常に不況で低かつた株価も、低いところから比べますると、七、八割程度の上昇ぶりを示しておるのであります。こういうふうなときに、今のお話のような証券対策の一環をさつそく出すということは、時期的にどうかという考えがあるのであります。いろいろな掛目の問題、日歩の問題あるいは日証金その他への融資の問題、いろいろな点がありまするが、私は証券対策の手を今どんどん出して行くことがいいか、出し方とかあるいはその時期等につきまして、相当慎重な態度で進まなければならぬと思います。幸いに今までの増資も相当活況を呈し、ことに五月には百五十億程度の新株の発行がある、こういうことに相なつておりますので、五月の新株の発行等につきましては、ある程度金融的の措置考えなければならぬと思いますが、今ただちに掛目の問題、日歩の問題に出るのはいかがか、こういう気持を持つております。
  129. 宮幡靖

    宮幡委員 次にお伺いいたしたいのは、これは場合によりましては銀行局長さんからお答え願つてもけつこうでありますが、昨年十月か十一月でしたか、設備資金の融資規制に対しまする局長通達が出ております。今度は大体設備資金の融資対象のものが、おもに産業合理化の業種に上つておるものを対象として設備資金の供給の道を開く。これは規制委員会等に御通告なすつたのじやないかと思いますが、その内容につきまして、ただいま大蔵大臣のお話くだすつた全体の経済の状況とあわせて、お聞きしておきたいのであります。あるいは資料でもけつこうでありますが、この際ある程度御答弁願えたら、お伺いしたいと思います。
  130. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一、二日前の新聞に、従来大蔵省のとつておりました設備資金に対する方針が、いかにも緩和されたように載つておるのでありますが、私まだそこまでの発表をするつもりではないのであります。ただ新聞に出ましたのを、私はまだ銀行局長から報告を受けておりませんが、外貨の貸付をやる。機械等その他設備近代化への外貨の貸付をやる。その場合に、外貨の貸付に見合つた設備資金を出さなければ、たとえばせつかく機械を入れましても、その機械をすえつける場所その他につきまして金融が行かぬということになると、片手落ちになりますから、設備近代化のために外貨を使用した、その使用に伴うものにつきましては、従来の非常に重点産業を主とした以外にも出すべきである、こういう気持を持つております。それが銀行局から日銀の方に行つておりますので、そういう意味の設備金融というものは、その意味においてある程度においてふえて参ります。昨年秋やりましたものを今全面的に撤回するとか、重要な部分改正するまでにはまだ至つていないと思います。
  131. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大蔵大臣の答弁は、満足という言葉は適当でないかもしれませんが、前から伺つております一貫した大蔵大臣の所信といいますか、現在までとつて来ました政策にぴつたり一致する。もし巷間伝わるような考え方をいたしたとするならば、これはやはりこの面だけから見ますと、一応片づいたようなことになります。外貨貸付をいたしましたものと見合うだけの円資金を供給する。これは当然の措置であります。この程度であろうと私どもは考えておるのであります。どうもあまり安易に民間が考えておりますので、これは念のためにお伺いしておきたいと思つてつたのであります。そこできのうでありましたか、社会党の松尾委員から、日銀の貸付減という問題について若干お尋ねがありましたが、時間の関係もあるし、御答弁の点についてもはつきり聞きとれなかつたので、あるいは重複するかもしれませんが、念のために伺わせていただきます。日銀の貸出しが減つて来たという問題に対する原因や理由など、いまさら申し上げるまでもありませんが、日銀の貸出しの減少ということは、これは財政金融の総括的な面から見まして、いい傾向とお考えになつているか、悪い傾向とお考えになつているか、この判断でありますが、この点について大蔵大臣の御所信を承つておきたいと思います。
  132. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日銀の貸出しが減つて来ることは、全体から申しますといいことであります。
  133. 宮幡靖

    宮幡委員 それでは貸出しの減つて参りますことは、これは現象としてはオーバー・ローンが解消されて行くという一つの形でありますが、こういうことが将来とも持続いたしまして、順次オーバー・ローンの程度が緩和されるものとお見越しになつているかどうか。
  134. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この日銀の貸出しの減少が、ほかに何もなくて減つて行くということは、これはよくない。しかしほかに普通銀行の手元が預金増加によつて楽になる、あるいは民間事業が利潤を上げて、借金を返して、日本銀行にそれが還流する、こういうことはいいことであります。こうしてオーバー・ローンの解消ができることはいいことであります。私は原則としていいことであると考えます。
  135. 宮幡靖

    宮幡委員 原則としていいことである、ということはけつこうであります。  その次にお伺いいたしたいのは、これもまた前々からうわさを聞いておつたのでありますが、大蔵省から決定的な御提案を受けておりません。差迫つておるであろうと思いますが、いわゆるやみ金融取締りの強化の問題であります。ただいまの貸金業等の取締に関する法律でありますが、これを廃止せられるということをほのかに聞いておりました。そうしてこれを法務府の所管にでも移しまして、高利貸を取締つてやろう、こういうことで、新聞やラジオで言いますのは、日歩五十銭の程度、月一割五分などと放送しております。そのことにつきましても、その程度についてのよしあしを伺つておきたい。一体金融行政の一元化の趣旨に反するのじやないか、いや決して反しない、警察の取締りにまかして大蔵大臣はノー・タツチで行つても、金融行政一元化の方向にそむかないという御信念をお持ちかどうか。大蔵省が手放しにやられてみて、こうした方がかえつて弊害がない。たとえば大蔵省免許だとか、大蔵省公認だとかいうような看板を掲げてやみ金融をやられることは、大蔵省の面目にかかわるという点も出て来るでありましよう。しかしその逆も出て来るのであります。こういう点について、金融政策全般についての御所見をお伺いしたいと思います。
  136. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 まずただいまの貸金業に関することでありますが、この問題は実は昨日の閣議で法律案を御決定願いまして近く国会に御提案申し上げることになつております。その大体の骨子は、貸金業法つまり現在できております取締法は、その制定以来の経過にかんがみまして、その必要を認めないということ、必要を認めないばかりでなく、むしろ弊害を生ずるように思いますので、この制度はやめて参りたい。しかしそうかといつて、この法律をやめるということは、正当な業務としての貸金業を禁止するとか、あるいは非常にのけもの扱いにするというような考え方からではございません。これに対する特別の取締りの規定はいらないという考え方にかわつたのであります。ただしかしながらお示しのございましたように、非常に高い金利をとつて借手を不利益な状態に持つて行くとか、あるいは預金受入れ禁止の規定、これに反することを貸金業者がやりました場合には、これに対する取締りの罰則を強化するという意味で、若干の法制上の改正をいたしたい、そういう趣旨で、いずれ提出になりましたら十分御審議願いたいと思います。
  137. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣は時間の関係もあるようですから、重要事項を項目的に伺いますが、いよいよ国際通貨基金への加入を閣議あたりで御決定になつたような報道でありますが、それにつきまして大蔵省意見として巷間伝わりますのは、出資金が二億五千万ドルは少い、ぜひ三億ドルは確保したいという意向だつたそうですが、この少な過ぎるという理由、三億が二億五千万ドルに減つた場合に不利になる点等につきまして、大蔵省の御見解をお伺いいたしたいのであります。
  138. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体国際開発銀行からの借入れの限度が、クオータにある程度支配されるのですから、なるべく多い方がいいというので主張いたしたのであります。二億を主張する国もありまたし、われわれのように三億を主張する国もありましたが、大体二億五千万ドルにおちついて、もうこれを動かすことは困難だという見通しがつきましたので、最後までがんばりましたけれども、これで一応入ることにいたしたのであります。
  139. 宮幡靖

    宮幡委員 国際通貨基金及び国際開発銀行に加入のための、いわゆる払込み資金等の手当に、大体円資金として二百四十三億ぐらいを必要とするようになつて参ります。平和回復善後処理費として二百億あると承知しておりますが、これは来るべき八月あたりに召集される来年度の通常国会において、これの補正でもされる御用意がありましようか。
  140. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国際通貨基金加入についての資金は二百億ぐらいとつておりますが、その後の情勢によりまして、お話のように二百四十億ばかりいるのであります。従いまして補正予算を組まなければ入れないというかつこうになるのでありますが、幸いに日本銀行の記帳価格で金は一グラム三円五十五銭でございます。実際は四百円いたしております。二百億円の中からある程度のものを三円五十五銭で金を買いまして、それで金とドルと両方で出資しよう、こうすれば補正予算を組まなくてもできることになりますので、その方針で進んでおります。従いまして日本銀行の金を記帳価格で、時価の百分の一ぐらいで買うということにつきましては法律を要しますので、その法案は本国会に提案することにして進めております。
  141. 宮幡靖

    宮幡委員 その点は非常によくわかりました。最近、これはおもに外為の意見でありますが、かねがね懸案のドル・ユーザンスを実施してもらいたいということを、大蔵省あたりに申し入れているということを聞き及んでいるのでありますが、大蔵省としては外銀ユーザンスで、輸入手形に対します振出しを事実上は延ばしてもらつているような、ただいま妙な貿易慣習があるのであります。これはやつても、ただ実際慣習上やつております延べ手形が、今度はユーザンスによつて裏づけされるという結果にしかならない面もありますが、事実は輸入を促進するという面において、非常な役割を果すわけであります。これにつきまして、大蔵省としての考えはどうか。あわせて為替銀行——現在十一、二ありますが、これはまあほんとうに為替銀行とは名のみの発足をしている。そこでこれらの関係と見合いまして、どういうような推移になるか。これはあらましでけつこうでありますが、大蔵省の御意見をお伺いしたい。
  142. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題につきましては、昨年来いろいろなことをやつているのでありまして、実は私もけさの新聞で外為の意見として載つているのを見ましたので、どういう理由で、どういう方法で、どういう時期でということまではまだ検討いたしておりません。よく事務当局からいろいろな点を聞いてきめたいと思います。
  143. 宮幡靖

    宮幡委員 金融問題は今日はその程度にしておきまして、次の機会にいたしますが、ただ一つ違つた方面の問題を伺いまして、私の質問は今日は終ります。最近私の——現在自分で手をおろしてやつておりませんが、自分の職業事務所あたり、ほとんど全国的にあるといつてよろしいのでありますが、出先税務署等に参りますと、非常に税務職員が危険にさらされているという切々たる訴えがある。そうして税務警視制度でも設けてもらわなかつたならば、今後どうも火焔びんをほうり込まれるという事例が非常に多くなつて来る。非常にあぶなくて困つている。従つてずるい納税者に対しましても、あるいは、そう言つていいかどうかわかりませんが、第三国人等の不法な行動に対しましても、積極的活動ができない。これはぜひこういう税務警視制度というものを設けてもらいたいというような意見が、多数あるのであります。税務警視制度と申しますのは、税務署の請願巡査という意味であります。そういうもので身体を自分の機関で保護してもらいたい、こういう要望があるのでありますが、これに対しまして大蔵大臣はどういう考えを持つているか。あるいはこういうことは、組織の問題もありますし、予算の問題もありましようから、すぐにはできないけれども、将来必要があるといたしますれば、その方面にも配慮しようという御意向であるかどうか。この点、簡單でけつこうでありますから、お尋ねいたします。
  144. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今年の初めごろから一箇月ぐらい前までの調査では、二十七件ほど全国の税務署に火焔びんその他の放火に類するようなことがございました。その後におきましてもやはり二十件余り出ております。しこうして税務署に火焔びんを投げ込むのみならず、署長の宅とか、あるいは課長の宅にも不法な行為をするものがちよちよい出て来ており、税務職員の志気に非常に影響いたしておるので、従いまして火焔びんを投げつけられまして、よく防火につとめ、非常によくやつておりますものには、その都度国税年長官等より適切な措置をとつておりますが、なおだんだん広がつて行くようならば対策を考えなければならぬ。しかしこれも時期的の問題でございますので、もうしばらく様子を見まして、もしこういうのが続くようならば、適当な措置をとらなければいかぬと思います。これは請願巡査のようなものだけでいいか、あるいは税務職員に対しまして危険があつた場合の補償とか、いろいろなやり方があると思います。もう少し情勢を見ましてきめて行きたいと思います。
  145. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣に対する質問は、きようは時間のお約束で、これで打切ります。管財局長にひとつ伺います。すでに国有財産特別措置法は修正案の提案までされておりまして、実は採決直前にある。そこでまだ資料の中にあまり現われて来ないところで、一点だけこの際はつきりしていただきたいのであります。第九条の第二項、それに対するいわゆる交換差金が出るか出ないかの算定方法、これは政令によつてきめることになつておりますが、その機械の交換をいたします差金を計算いたします評価の基準について、政令で定める予定の構想を、ここではつきりと述べておいていただきたいと存じます。そう申しますのは、交換差金が不当に高いものであり、あるいは時価に換算してみたり、あるいはかつての価格を八十何倍するとかいうような定規もあるように、前々ほのかに知つている。そういう点で無用の差金が出るような交換をいたしますれば、これは交換を阻止する法律になつてしまいますので、適当なところの評価の基準というものをわれわれが知らない以上は、この法律の成立に残念ながら賛成できないというような事態も起るので、その評価の基準をはつきりとお示し願いたい。
  146. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 機械の交換につきまして、国有財産特別措置法に規定を置きました趣旨は、たびたび申し上げておりますように、大蔵省としては非常に進歩的な考えで、国有財産の取扱いを財政的見地からさらに経済的見地に一歩進める、こういう趣旨でございます。従つてこの差金のとり方がどうであろうと、私はあの条項は非常に進歩的で、経済関係方面からは喜ばれることであろうという確信を持つているのであります。次に差金のとり方でありますが、これは差金をとらないことにすれば、一番関係の業者等にも喜ばれると思いますが、ただ国有の機械と民間の中小企業等が持つておりまする旧機械等の状況が、個々の場合においてすべて違う。そこで国が持つている甲の機械と民間が持つているAの機械とを交換した場合の価値の違い方と、国が持つている乙の機械を民間の業者が持つているBの機械と交換した場合の価値の違い方が同じであれば、これはあまり問題になりませんが、それがみな違う。この場合に差金をとらないようなことをいたしますと、民間の業者相互間において非常に不公平が起きまして、ある甲の業者は非常に利益を受けるが、乙の業者はあまり利益を得ないということになりますから、これは公平の基準において差金をとる方がよいと思います。第三番目に差金をとるとり方でありますが、これは非常な無理なとり方は私はいたしたくないと思いますと同時に、技術的にも政府が交換をいたします際に、政府の持つておる機械の評価をすると同時に、民間の中小企業者が持つておるその評価も、あわせてしなければならぬということになりますと、かりに国が十万台の機械を交換にまわします際には、その交換の対象になる民間保有の十万台についても評価をしなければならぬ。合計二十万台の評価をしなければならぬということで非常に複雑になりますから、技術的に政府の持つている機械の評価と、民間の持つております機械の評価を簡單な方法でやる、あわせて返す刀でと申しますか、差金が非常に無理な額にならないようにすべきだと、かように考えております。具体的には通産省と打合せてきめるつもりでおりまして、最終的に決定はいたしておりませんが、たとえば評価の基準を——これは皆様通産省にもおられまして、専門家であろうと思いますが、たとえば工作機械というようなものは、大体重量一トン当りどれくらいの値段だという通常の価値評価というものはあるようであります。また工作機械の中にも、レースとかドリルとかミーリング・マシンとか、いろいろの機械によりまして、大体一キロ当り幾らというような評価がありますから、そういうような物理経済的な簡單な評価の方法を政令できめまして、単純かつ過酷でないような評価の方法をとる考えであります。この点は御信頼願つてけつこうだと思います。
  147. 宮幡靖

    宮幡委員 今のことで私のお尋ねしたのは、差金をとらないでいいというのではない。差金をとるべきだというのです。とらないで交換なんかしたらとんでもない。ただ中小企業が多いのでありまして、二十七万台くらい賠償機械や工作機械があるのですが、そのうち交換できると考えますのは、せいぜい七万台か五万台くらいではなかろうかと思います。なぜかと申しますと、すでに物資活用の面におきまして、貸付をいたしておるわけであります。こういう現在において使つておるものは、なかなか返しもないで、それに払い下げるということが常識になつて参ります。ただ今の工作機械の目方によつて評価する等の場合におきましても、おおむね交換に出て来ます機械は、いわゆる精度の低い老朽化した物理経済的に無価値のものが多いのであります。従つてそれとまた経済価値のあるものと交換する場合に、差金が多くないようにすると管財局長は言いますが、実際は必ず多い。しかも中小企業が、その差金を五年間の年賦で払えるだけの現金の融通能力があるかどうかということを考えますと、これはなかなか簡單な問題ではないのであります。それでありますから私どもの考えますのは、いずれ賠償機械にしろ旧簿価があります。簿価に対しまして一定の倍率で時価を出す。こういう一つの方式があるのでありますから、その生れて来た簿価同士の差金に対し、たとえば八十倍の倍率をかけるといたしますならば、差金自体に倍率をかけて行くというような算定、しかし実際は両方の簿価に対しまして、未償却の額を引きましたそのときの帳簿価格を求めて、それの交換差金を出して行くのがいいのだ、しかし実際の交換方法は簿価同士で差引いて参りますのが妥当だと考えるのでありますが、深くお考えがあると思いますから、また私は十分その点は考慮ついたしまして、スライドされることを安心いたしまして、おまかせいたします。どうぞこれらが実際の中小企業の合理化ということに役立つ意味に、ひとつ御配慮をいただきたいということを、この法案審議の上において希望条件を強く付しましてお願いいたしておきます。
  148. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次会は明二十四日午前十時より開会の上、質疑を続行することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会