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平田政府委員 私久保回さんのお気持はよくわかるわけでございまして私
どもも
所得税が戰後非常に重くな
つた。この
所得税を何とか軽減いたしたい、ほかのあらゆる税に先がけまして、
所得税はできる限り軽減したい、こういう考え方で臨んで来ましたのも、気持としましては今久保田さんのような気持で、実は私
ども参
つて来たつもりでございます。しかし大分よくな
つたことは事実でございますが、なおまだ不十分であるので、何かもつと思い切
つたことができないかという点が、今の御要望かと思います。しかし率直に申し上げまして、私
ども財政事情さえ許すならば、やはりもう少し軽くした方がいいという点は、たしかに考えておる次第でございますが、しかし單に
所得税を軽くするという見地からのみ、判断するわけにも行かない事情もありますので、漸を追
つて実は改正して参
つた次第でございます。その結果としまして、実は低額
所得者、一番低い
所得者の負担は、この二、三年の改正で非常に軽くなりました。
所得金額が少くて家族の多いような、たとえば農民の方々は、これは
納税者が三分の一に減
つたのでございます。
昭和二十四年がたしか三百九十万人くらい
納税者がありましたのが、今年の見込みでは、百三十万人くらいに減る。これはお手元に
資料として別途に配
つておりますが、相当減
つております。これは農民の
所得が
一般に低くて家族が多いから、控除の引上げによる影響が強く現われまして、そのような結果にな
つたのでございます。実は
所得は若干増加しましてなおかつそうでございますので、相当に効果は出ておるものと見ておるのであります。それから勤労者の場合におきましても、低額
所得者の場合は、実は相当軽くな
つて参
つておるのであります。ただ問題は中と申しますか、下の上と申しますか、中以上からなお
所得税が重い。なかんずく中ごろの
所得のところが、なかなか
納税者がそう簡單に納められるような軽い負担ではない。相当なものでございます。これにつきましても、もちろん今までたびたび軽減をはか
つて来たのでございますが、なお相当なものである。ただそれに関しまして、
数字を申し上げるのは恐縮ですが、やはり
納税者の声の中に、どうもいろいろなあれがありますので、やはりひとつどれくらいの負担にな
つているかということを、よく頭に入れて御判断願いたいのですが、まず勤労者の場合、月給取りの場合でございますと、さつき
お話になりました平均一万六、七千円でございますが、一万五千円の月收のある人は、今度の改正で、家族が五人おりますと、
税金は二百十六円でございます。
所得に対して一・四%の負担にすぎない。それから二万円の方、この辺が家族の多い人が相当多いと思いますが、二万円の方の場合は、改正前は二千円でございますが、改正後は千百六十六円になります。五・八%になるのでございますが、まずこれが非常に過重かと申しますと、私はそれほどだとは感じません。もちろんこのほかに市町村民税が約二割ほどかかりますが、それにいたしましても、約千四百円
程度の負担であります。三万円のところになりますと、それが少しふえまして、現行税額は五千四百円でありますのが、改正後は三千九百円、約四千円負担する。そのほかに市町村民税がかかります。この辺から、実際といたしましても、どうも
税金が大分重いなというふうに感ぜしめるところになりはしないか。それから事業
所得の場合におきましては、これも下の方は相当軽くなりましたが、
給与所得は今申しましたように一割五分の勤労控除がございますので、事業
所得と違うわけでございます。事業
所得の場合におきましては、二十万円から三十万円ぐらいのところが、実は営業者の場合は多い。農家の方々の場合は、十五万円前後が、平均しまして多いのでございます。十五万円以下の方も相当おられますが、そういう人は大体失格しておられる。十五万円の場合におきまして現在九千円の負担が改正後は二千円になる。二十万円の場合におきましては、現在二万一千二百五十円の負担が一万二千円になる。それから三十万円の場合におきましては、現在五万三千二百五十円の負担が改正後は三万八千円になる。この辺は一割二分六厘という負担でございます。地方税を入れますと約一割五分、三十万円の年收がありまして、約一割五分の負担をするわけでありますが、この辺のところは実際はなかなかやはり納税しにくい。と申しますのは、納期になりまして一ぺんに納めざるを得ない。勤労者の場合は源泉で差引きますので、多いとはいいながら、何とかや
つて行けますが、事業者の場合はどうもやはり金繰りに困る点もありまして、納期になりましてから一ぺんに納める。ことに確定
申告で一ぺんに納めなければならぬというような事情に相なりますと、どうもなかなか
税金が納まらない、
従つて重い、こういうような
実情にな
つておりますことは、これはどうも私
ども否定するものではないのでありまして、そういう点からしまして、できるだけ軽くいたしておるわけでございますが、しかし絶対的に言
つて、この
程度が今なお非常に重過ぎるかということになりますと、前よりもよほどよくな
つて来ているということは、同時にお認め願いたいと思うのでございます。従いまして、一方におきましては納税資金と申しますか、納税貯蓄運動を平素からいたしまして、納期において納税をしやすくするということが、何と申しましても事業者の場合の納税を容易にし、また役所の場合におきましても、徴税を円滑ならしめるゆえんでございますので、そういう点とあわせ進めまして、でき得る限り摩擦なりあるいは負担のしにくい点を緩和しようというのが、今の私
どもの考え方でございます。しかしそれにいたしましても、なおやはり相当重いものを御負担していただくということは、これはもうあえて否定するものではございません。でございますが、今申し上げましたような事情で、相当軽くな
つて参
つておりまするし、まず本
年度といたしましてはこの
程度の負担をごしんぼう願う。私は簡單に納められる
税金とも思いませんが、諸般の事情から見まして、納税していただく額としましては、そう過重なものではないということは、言い得るのではないかと考えておる次第でございます。