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平田政府委員 まず私から、今度の税制
改正が、山林に対してどういう点が一番従来よりかわるかという点を先に申し上げます。一番の点はやはり相続税、
所得税両方にわたりますが、まず相続税におきましては、御
承知の
通り相続が開始しますと、山林の時価を評価しまして、従来は譲渡したものと見て譲渡
所得税を課税し、その残額に対しまして相続税を課税する、こういう行き方をと
つていたのでございますが、この点は、主として山林等につきまして
お話のような
事情がございましたので、今回は相続の際における譲渡
所得税は課税しないということにいたしております。これはもちろん山林だけでなくて、ほかの不動産の場合におきましても同様でありまするが、山林だけに扱いを認めて、ほかの方に認めないというわけにはやはり行きませんので、山林等の
関係を主として考慮しまして、そのような課税
制度を変更いたしたのでございます。これは
一つの大きな従来との差のある点でございます。
それから相続税につきまして基礎控除を
引上げ、税率を引下げる、これも
一般的じやないかという
お話でございますが、やはり私
ども調べてみますと、現在
農村方面におきましては、農地は農地改革で大部分地主がとられまして、現在あまり持
つていない。やはりまとま
つて財産を持
つておりますのは山林の所有者でございます。従いまして相続税を軽くするということは、山林の所有者にとりましては相当な軽減になるので、この場合もひとり山林の所有者だけに特別処置をや
つているのではございませんで、やはり山林その他の場合にも同様な
事情が大分ございますので、かような
措置をいたした次第でございまして、主としてまとま
つた資産としまして今日地方に残
つておりまする山林の所有者は、やはり今度の相続税の
改正によりまして相当な軽減になるものと私は見ておるのでございます。
それからもう
一つは、年賦、延納の
期間につきまして、従来五年しか認めていなか
つたのでございますが、今回は山林不動産など、換貨が比較的むずかしいものを持
つておられる場合におきましては、十年の年賦償還を認める。これも山林だけ認めるのではなく、ほかの不動産も認められるじやないかというふうに御批評があるかもしれませんが、やはり山林等の場合におきまして、そのようなことが特に顕著に考えられましたので、このような
制度を設けることにいたした次第でありまして、山林に認めるということになりますと、その権衡から行きまして、他の不動産にも及ぼした方がいいのではないかという
趣旨で同じようなことにいたした次第でございます。なおその場合の利子税につきましても、将来は四銭の利子税を今回は二銭に引下げることにいたしております。これらの処置はいずれも山林だけに限
つてやるわけではございませんが、結果から見まして、一番利益を受けましたのは、どつちかというと山林であります。また山林の課税の問題が、いろいろやかましい問題としまして
承知いたしておりましたので、こういうような相続税の
改正をすることにつきましては、そういう
見地から
改正を考えておるということを御了承願いたいと思います。
それから
所得税におきましても、伐採しました場合に十万円の特別控除を行いますことは、今申し上げた
通りでございまするし、なお
法律案の
提出が遅れておりますが、再評価税につきましても、同様に十万円の基礎控除を行
つて課税することに、おつつけ
法律案を
提案する見込みでございます。
所得税におきましては、主として中小の山林所有者の場合に、従来と比べまして、相当な負担軽減になるのではないかと考えております。
それから今
お話の評価の問題と課税から全然除外するかという問題でございますが、富裕税及び相続税の山林の評価につきまして、昨年以来実地によく調査いたしました結果、最近
国税庁で通達を出してもらいまして、従来に比べまして著しい
改善を加えつつあることは、おそらく御
承知かと思います。たとえば幼齢樹林の評価等につきましても、従来の
方法で評価した場合に比べますと、大体半額
程度になるかと思いますが、補助金等の件を全然除外するとかあるいは今御指摘の奥地林の評価につきましても、売買実例から奥地林の評価を
推定いたします場合の評価
方法に
改善を加える。それからグラーセの例の評価方式を用います場合におきましても、
一定の年齢以上に達しました場合におきましてはカーブをゆるやかにするというような
方法を講じまして、極力山林の
実情に即応するようにしようというので、これもことしの富裕税並びに山林の相続税から
適用することにいたしまして、目下すでに実行に移しておる次第でございます。
そのようにいたしまして、もちろん私
ども税制の一環としてでございますので、山林だけの
見地から見志すと、あるいはなお不十分じやないかというお感じをお持ちになるかと思いますが、やはりそういうその他の点もでき得る限り考えつつ、山林につきまして妥当な課税に結果的になるようにという
趣旨で、相続税、
所得税等の立案をいたしておりますことを御了承願いたいと考える次第でございます。幼齢樹林等を全然富裕税の課君外に置くということにつきましては、今申し上げましたように、評価の問題としては大いに考えられると思いますが、全然課税外に置くということは、いやしくも富裕税を設ける以上は、これはやはり適当ではない、相続税の場合におきましても同様であると考えるのでありまして、やはり相税政策として考えます上におきましては、全体の政策と相関連しつつ、できる限り山林政策に寄與するような
方法をとろう、こういう点で、私
どもといたしましてはその調節に相当苦慮をしておるような次第でございますので、その点も最後につけ加えさしていただきたいと思う次第でございます。