運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-02-23 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十三日(土曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 小山 長規君       有田 二郎君    大上  司君       川野 芳滿君    島村 一郎君       夏堀源三郎君    三宅 則義君       宮原幸三郎君    宮腰 喜助君       松尾トシ子君    高田 富之君       深澤 義守君    久保田鶴松君  出席政府委員         大蔵政務次官  西村 直己君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         国税庁長官   高橋  衞君         林野庁長官   横川 信夫君  委員外出席者         議     員 金原 舜二君         議     員 平野 三郎君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      福田 久男君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 二月二十一日  委員川島金次君辞任につき、その補欠として松  尾トシ子君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十二日  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第三七号) 同月二十三日  公庫の予算及び決算に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三八号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十一日  在外資産の補償に関する陳情書  (第五八八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三〇号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)  砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第三七号)     ―――――――――――――
  2. 佐藤重遠

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  まず昨二十二日本委員会に付託されました、国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案議題として、政府当局より提案理由説明を聴取いたします。西村大蔵政務次官。     —————————————
  3. 西村直己

    西村(直)政府委員 ただいま議題となりました国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  最近におけるわが国の経済情勢の推移に応じ、貯蓄増強緊要性はますます加わつて参りましたが、貯蓄しやすい環境の造成をはかりますとともに、特に少額貯蓄を奨励し、これを優遇いたしますため、この際国民貯蓄組合法改正いたすこととし、この法律案提案いたした次第であります。  次にこの法律案による改正内容について申し上げますと、まず第一は、国民貯蓄組合のあつせんする貯蓄利子等に対し所得税非課税とする金額限度引上げたことであります。すなわち、現行法においては元本三万円までが非課税となつておりますが、この金額は、戦前に比較いたしまして実質的には著しく低いものでありますので、物価騰貴率、現在の物価水準あるいは預金現状等諸般実情を勘案いたしまして、元本十万円までを非課税とすることに改めることといたしたのであります。  第二は、三つ以上の国民貯蓄組合に加入することを制限したことであります。従来の国民貯蓄組合運営におきましては、時宜に応じて、各種の貯蓄組合に加入するよう奨励されたこともありましたが、前に申しました非課税限度引上げ少額貯蓄を優遇する趣旨をも考慮いたしまして、この際一つ貯蓄組合のみに制限することが妥当と考えたのであります。  なおこの加入制限規定に関連いたしまして、現に二つ以上の組合に加入しております組合員貯蓄については、これを一つ組合に預けがえを行わせる等の措置を講ずることとし、所要経過的規定をあわせ設けている次第であります。  以上本法律案につきましてその提案理由及び内容の概略を御説明いたしました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  4. 佐藤重遠

    佐藤委員長 なお本案の内容について、詳細なる説明を求めます。大蔵省銀行局総務課長福田久男君。
  5. 福田久男

    福田説明員 国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案についての改正の要点は、ただいま提案理由によつて政務次官から御説明申し上げた通りでありますが、若干敷衍いたしまして御説明をつけ加えさしていただきたいと思います。  まず改正の第一点は、非課税限度現行三万円を十万円に引上げる点でありますが、貯蓄組合法による貯蓄組合預金非課税限度は過去数回にわたつて引上げが行われて参つたのでありますが、昭和十六年にこの法律が制定されました当時におきましては、非課税限度は三千円であつたのであります。その後昭和十七年の三月に五千円、二十年の十二月に一万円、二十二年六月に三万円というふうに引上げられて参りましたが、いずれも郵便貯金預け入れ限度歩調を合せて進んで参つたのであります。今回十万円に引上げるにあたりましても、一般郵便貯金法改正案と並行いたしまして、郵便貯金の方でも預け入れ限度が十万円ということに改正するよう法案が提案されておる次第でございます。そこで三万円から十万円に引上げることについての根拠といたしましては、いろいろな見方がありますが、たとえば一つの例をとつて申しますと、東京卸売物価指数基準にして考えますと、三万円に改正されました昭和二十二年六月を基準といたしまして、最近では七・四三倍ぐらいになつておるのであります。そういたしますとそれを三万円にかけてみますと約二十二万円になるのであります。またCPIを基準といたしますと二・七三倍ぐらいになります。そういたしますと三万円が約八万円程度になるのであります。また全国銀行預金のうち、当座預金を除いた預金について見ますと六・四五倍ぐらいになりますが、それによりますと十九万円程度になるのであります。これらの事情をも勘案しながら、またほかの諸般事情をも加味いたしまして十万円ということに限度引上げ金額をきめることになつたのでございます。  それからこの限度引上げに関連いたしまして、改正の第二点としては、二つ以上の組合に同じ人が加入することはできないという規定を新たに加えることといたしたのであります。この点につきましては相当大幅な限度引上げでございますので、一面から申しますと所得税逋脱というような目的預金を分散するというようなことも、濫用するとすればそういうことも考慮されますし、また他面真に少額貯蓄を優遇するという趣旨を明らかにする必要もあると認められますので、この際先ほど申しましたような、同じ人が二つ以上の組合に加入するということを制限することとなつたのであります。現に郵便貯金法でも同じような趣旨のものが当初からございますので、それと一応歩調を合せるということにいたしたのであります。なお同じ人が二つ以上の組合にかりに入つた場合についての措置でありますが、国民貯蓄組合法におきましては、現在罰則といたしまして、現行法の十一條に一定の場合には三百円以下の過料に処する、金額昭和十六年の立法でありますので非常に小さいのでありますが、その一定の場合というのが、本法もしくは本法に基いて発する命令またはこれに基いてなす処分に違反したものについては、先ほど申しましたような過料制裁があるのでありますが、その規定適用の対象となるものがまた命令定められることとなつておりますので、その命令改正によつて二以上の組合加入制限に違反した者も該当するように措置いたしたいと考えております。また真に所得税逋脱目的でこの制限を免れようというような悪質なものにつきましては、所得税法六十九條の二の規定適用によつて所得税通脱犯としての処分が行われる可能性もあるというふうに、理論上は解釈されるように思うのであります。  それから第三に経過的な措置を附則の第二項に規定いたしておりますが、過去におきましては幾つもの貯蓄組合に加入してでも貯蓄組合預金増加をはかるように努めて参つた場合もあつたのでございます。従いまして現在においても二つ以上の組合に入つておるものもあると思います。それらのものに対しては経過的に原則といたしまして三箇月間の猶予期間を置きまして、その三箇月間内に一つ組合に預けかえ等の措置によつて、その預金をまとめてもらうということを規定しておるのでございますが、ただ預けておる預金の性質によりまして、普通預金のようにいつでも出せる預金と、定期預金のように一定期限が来なければ出せないものとございますので、貯蓄組合預金の全部が普通預金のような期限定めのないものであれば、この法律の施行のときから三箇月間、期限定めのあるものはその一番長い期限が過ぎた後三箇月以内に所要一つ組合に預けかえ等の措置をとつていただく、そこに但書がございまして——ちよつとわかりにくい規定になつておりますが、但書意味は利息を元本に加えるような場合にはそれはやむを得ない、しかし元本増加する、新たに追加して幾つもの組合預金をふやすということはいけない。但書の括弧の中にありますのは、ある中心にしようとする貯蓄組合についてだけ元本がふえる場合はよろしいという非常にこまかな規定がございますが、要するにこの法律が施行されましてからはいずれか一つ中心とするということをきめていただきまして、その中心とした貯蓄組合預金にその他の貯蓄組合預金を漸次統合していただくというねらいでございます。  なお御参考までに貯蓄組合の現在の状況について簡單に御説明いたしたいと思います。昭和二十六年の三月末におきまして、貯蓄組合の数は十一万五千六百四組合ございまして、組合員の数は千八百六十六万六千余人となつております。また貯蓄組合のあつせんした貯蓄金額は千百二億二千五百余万円となつております。前年同期に比較いたしまして、組合の数におきましては一割四分の増加であり、組合員の数においては一割五分の増加であります。またその預金額におきましては二割二分以上の増加となつておるのでございます。これを全体の預金の増勢に比較いたしますと、金額的にはもちろんやや低くなつてはおりますが、今後免税限度引上げ等措置によりまして、ますます貯蓄組合の活用をはかつて参る。資本蓄積重要性にかんがみまして、その一つの手段としてこの措置を大いに活用して参りたいというふうに存じております。簡單でございますが御説明申し上げます。     —————————————
  6. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次に前会に引続き所得税法の一部を改正する法律案外三税制改正案一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。宮腰喜助君。
  7. 宮腰喜助

    宮腰委員 西村大蔵政務次官がおりますので一点だけお伺いいたします。これは西村大蔵政務次官委員当時に再三政府当局を追究されておつたところの青紙申告制度の問題でありますが、この制度自体農民中小企業、たとえば農家なんかたんぼに出て働くような場合に、疲れて帰つて来ますと、とうてい帳簿をつける力もありませんし、またこれを記入する力もない場合が多いのであります。また中小企業にしても、たとえば商店の小売商あたりがみそ、しようゆをはかつた手でただちに伝票なりいろいろな記載をするということは困難であります。こういうような青紙申告制度について、農民とかあるいは中小企業というような方々、特に農民方々については、特別な、青紙申告簡易制度をこしらえる必要があるように伺つています。昨日の公聴会の方も、農民に対して青紙申告制度を採用するということは非常に困難であるということを申されておりますが、われわれも同感に思つているのでありますが、これについて次官のお考えをお伺いしたいと思います。
  8. 西村直己

    西村(直)政府委員 お答えいたします。青色申告につきまして、あるいは農村あるいは中小企業業者等が忙しい——青色申告のみならず、私自体も実は納税申告書につきましてはいま少し簡素化できないかということについては、まつたく同意見でございます。ただ現行法に基きます青色申告は、十分になれていない農村人々であるとか中小企業等方々に対しては、執行機関の方においても十分にその信憑性を尊重してなるたけ簡素な方法で扱つて行きたい、こういう考え方でいるわけであります。
  9. 宮腰喜助

    宮腰委員 高橋長官にお伺い申し上げますが、青紙申告制度の案施されている現在の状態でありますが、法人個人のその後の申告状態、ことに個人の場合は農民中小企業の場合の二点についてお伺いしたいと思います。
  10. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 青色申告申請状況でありますが、昭和二十六年分の申請者の数は総数が十八万三千余人と相なつております。それでその内訳は営業が十四万五千余人農業が二万三千余人、その他の事業——これは諸業等でありますがこれは一万四千余人合計が十八万三千五百三十九人というふうに相なつております。それでこの申請をされた方の納税者総数に対する割合は、営業においては八%でございます。農業は非常に少うございまして一%、合計といたしましては四%と相なつております。
  11. 宮腰喜助

    宮腰委員 私は青紙申告に対する手続の煩雑のためにこういうぐあいに申告する人が少いと思うのであります。ことに青紙申告した人としない人を農家の場合に分離しまして申告しない者についてはいわゆる待遇を與えないということであれば、不公平な問題が起ると思うのでありますが、この農家の場合については、青紙申告しなくても反実收高によつて大体の所得がわかるのでありますが、こういう場合もやはり区別して税をかけるかどうか。青紙申告しなくても現在の反実收高がわかるので、それによつて判定するのか、その点をお伺いしたいと思います。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 お尋ね趣旨がよくわかりませんので、適切なお答えになるかどうかわかりませんが、農家の場合は、御承知通り帳面がない場合におきましては、実收を調べましてそれに標準率を乗じまして所得を算定するという方法をとつております。青色申告をいたしますれば、それがさらに精細な所得の計算ができまして、一層正しい申告ができるということになるかと存じます。
  13. 宮腰喜助

    宮腰委員 青紙申告については、特に申請すると特別な待遇を與えられるわけでありますが、農家の場合だと、府県の行政官庁で厳重な監督を受けまして、実收高が大体わかつておりますが、こういう場合は両方とも区別すること自体が非常に不合理に思うので、私は先ほど西村大蔵政務次官お話通りに、青紙申告制度をもう少し簡易化してもらつた方が農家にとつては非常によろしいように考えるのでありますが、この今度の改正法でも改正前の法律でも青紙申告に対しては特別待遇があり、また農家申告しないものについては待遇はないということであれば非常に不合理になるのでありまして、局長にもぜひこの点を今後研究の上、簡易表に直すなり、あるいはまた反実收高がはつきりわかる場合は、青紙申告と同様な待遇を與えてあげる万が農家のために合理的だと思うのでありますが、今後そういうふうにお願いしたいと思うのであります。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 青色申告様式等はできるだけ簡易にするという御趣旨は私どもも賛成でありまして、現在のところやつていただきますとそうむずかしいことは実はないのでございます。一般営業者の場合におきましては、例の正規の簿記原則という趣旨に従いまして、大体複式簿記に近いような記載方法を要請している場合が多いのでございますが、農家の場合におきましては收入と支出との関係並びに家計費との関係、これがはつきりいたしておりますれば、帳面様式等そうやかましくしなくて記載を認めるということに相なつている次第でありまして、最近の農業協同組合等における農家経営指導等に用いておりまする記帳の奨励の仕方などと比べまして、むしろあるいは青色申告の方が簡單なくらいの必要條件を要請しているにすぎないのでございますので、やつていただきますればそうむずかしいことはない。ただ、大したことでないので、めんどうだからついやらない、こういうのが一般傾向じやないかと思うのでございます。しかしやはり農業経営合理化という点から見ますと、ある程度記帳をしていただくということが望ましいことではないかと考えまするし、税法の上におきましても、いわゆる実收に対して標準をかけるというような方法は、どちらかと申しますと、これもやはり一種の推定にすぎないのでございますから、一定記帳をされまして、それに基いて正しく計算してもらうというのが、今後の農業見地から行きましてもいいのではないかと私は思つております。しかし、その方法及び様式等できるだけ簡單にしまして、必要最小限度にとどめるという御趣旨は私どもつた同感でありまして、そういう方向へなお今後も指導して参りたいと思います。  それからなお、青色申告にどういう特例があるかと申しますと、一番の特例帳面を調査しなければ更正決定をしないということでございます。これはやはり青色申告者でなければこういう特例は認めがたいのでございます。それから、その他審査の請求があつた場合には、そのけりがつくまで強制処分の一部の実行を見合すということにしておりますが、これもやはりはつきりした基礎があるということが前提の場合にのみ考えられるのであります。帳面記載もなく、單に推定所得を調べるという場合にはなかなかそうは行かない。それから必要経費の面から行きましても、家計費企業両方にまたがるような企業の場合におきまして、青色申告者の場合は、家計費に関連する経費として、事業見地で必要だと認められるようなものにつきましては、できるだけ損費に算入する、経費に落すことを認めておるわけでありますが、こういう問題もやはり何か記帳がなければ認めがたいのではないかと思います。それから例の、時価による評価を認めておりますが、こういうものもやはり記帳がなければ認めがたい。それから今度の専従者の控除にいたしましても、幾ら払うのか帳面等によつてはつきりしておりません場合には、漫然と認めますのは少し行き過ぎではないかというようなわけであります。従つて青色申告に対しまして特例を認めております事項は、記帳前提として初めて考えられる事柄でございますので、そういう点を考えますと、今認めておりますような特点青色申告者に限る。ただ方法は今お話通りなるべく簡單化いたしまして、この制度がなるべく広く普及するようにしたい。この点におきましては私どもつた同感でございますので、そういう趣旨政府におきましても指導上一層遺憾なきを期して参りたいと考える次第であります。
  15. 宮腰喜助

    宮腰委員 それから、過去にさかのぼつて間税違反の問題が追及される場合に——ごく最近はそうではございませんが、古い事件になると、昭和二十五年ごろは盛んに査察が厳重に行われまして、本税の五倍というような重税を課して、つぶれかかる法人が、あるいは個人が相当ありますが、こういう場合に税源を涸渇するような間税のとり方ということも不合理だと思いますが、こういう場合にまた重ねて悪質なことをすると、また罰金をかけられて、そういう点について二重な制裁をかけられる。こういう意味産業界にも相当影響することだと思います。ごく最近の傾向はそうでありませんが、過去の事件については今もつてそういう問題を追究されつつあるのでありますが、この際そういうような問題は、昭和二十五年あたりのような査察制度の厳重な時代のかけ方でなく、あるいは一倍、一倍半くらいで処理することがかえつて税源を涸渇しない意味で必要であると思います。ごく最近においてもこういう問題が——二十五年度の査察の厳重な時代と同様に五倍追究する、それに加算税をかけられるとその法人がつぶれてしまうというようなものが、現在に至つてまだ処理の途上にあるケースが相当あるのであります。そういう場合に制裁が二重になるという意味において、間税で厳重に取上げた場合には訴追をしないで、あるいは訴追しても体刑の処分くらいにして、あと罰金の追究をするということはわれわれの常識から考えて不合理なように考えられますが、現在そういう事件がたくさんあります。国税庁としてはそういう事件の場合にどういうふうに処理されるかお伺いしておきたいと思います。
  16. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 旧税法におきましては、申告期限から五箇年間を経過したならば更正決定をなし得ないという規定に相なつておるのであります。それを先般の改正によりまして、昭和二十六年度分からは三年を経過した場合においては更正決定をなし得ないという制度にかわつたのであります。しかしながらそれは旧税法に関しては適用がございませんので、昭和二十六年度分からそれが適用になるということになつておると思います。全体としては、つまり税務行政運営の根本的な心構えといたしましては、旧税法に関してもできる限り新しいものに重点を置いて行くというやり方をいたしておるのでありますが、ただこういうふうに三年を経過した場合においては更正決定をなし得ないという規定におきましても、脱税犯等、つまり詐欺その他不正の行為によるという場合におきましては、この期間の限界をはずしておりますので、やはりある程度古いものであつてもこれを追究せざるを得ないのではないかと考えるのであります。ただ宮腰さんもよく御承知のように、査察関係の職員の数も非常に限られておりますし、また税法も漸次合理化されて参りましたし、また社会経済状態も漸次平常に返つて参りましたので、非常に税務行政運営状況もよくなつて参つたのでありますが、そういうような各時代におけるところの環境というものを十分に考慮に入れまして、実際上これをどの程度に追究するかという問題につきましては、十分実情に合致するようにいたしたいと考えておる次第であります。
  17. 宮腰喜助

    宮腰委員 全国幾つかあると考えられますが、模範税務署なるものの設置をやられまして、現にその税務署において税をとつておるわけですが、その模範税務署の構造の内容についていろいろ部内の人々意見を聞くというと、いろいろ非難があるようであります。この模範税務署全国幾つぐらいあるか、そしてその税務署の成績をお伺いしたいと思います。
  18. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまお尋ね模範税務署と申しますのは、私どもの方ではこれを基準税務署と称しておるのでございます。その基準税務署を設置いたしました趣旨は、いろいろ税務行政について新しい企画、新しい改善をいたしたいと考える場合に、この基準税務署においてそのことを実験をして、その成績によつてそれを全般の税務署適用し得るかどうかということをよく見て行きたいという趣旨をもつてつくつたのであります。全国でただいまのところ二十一の税務署基準税務署にいたしておるのであります。しかしてこの基準税務署でただいままでいたしました事柄は、まず第一に内外事務分離ということをいたしております。これは内部の帳簿整理をいたします者と、それから外部に出て外部の調査に従事する者と、その仕事を判然と区分して行くことが、今後の税務行政改善の上において非常に重要であると考えまして、その内外事務分離の方式、やり方、またはどこへ分界をつけるかというような事柄について検討をいたして参つたのであります。なおそのほかに、一昨年の十一月から、各税務署につきまして、賦課徴收との仕事分界をどういうふうにきめたらよいかということ、またさらに進んで、賦課徴收一体化をやつてみたらいかがであろうかというような観点から、それぞれの段階に応じてこれを三つのグループにわけて、この賦課徴收緊密化と申しますか、一体化と申しますか、そういうふうな試みをいたしておるのであります。そうしてこれらの事柄につきましても、大体ある程度の結論を得られるに至りましたので、昭和二十七年度からは、このやり方をある程度変更いたしまして、さらに全国のいろいろ実験と申しますか、新しい企画をやつて行くところの税務署にして行き、さらにこの数もある程度減少して行きたいと考えておるのであります。と申しますのは、基準税務署以外におきましても、実はそういうふうな新しい企画をあつちこつちの税務署において始めておるのであります。たとえて申しますと、ただいま全国的に適用いたしております徴收関係、滞納処分関係の整理の方式としてインターナル・コントロール・システムというものを始めたのでありますが、これは最初澁谷の税務署において一昨年の暮ごろから初めてこれが実験を始めまして、そうしてこれを全国三百八十の税務署について、昨年の七、八月ごろに適用することにいたしたのであります。そのほか現在いたしておりますことは、芝の税務署、小石川の税務署、並びに大阪におきましては、北野税務署、阿倍野の税務署、この四つの税務署におきまして即日審査整理方式という一つの内部事務の整理方式を試験的に実行いたしております。これは帳簿の簿冊をカード化しまして、そのカードの流れをうまく合理化することによつて、常時賦課徴收と申しますか、または相互のチエツクが完全にでき上るという組織を新しくくふういたしまして、これを四つの税務署に、昨年の七月ごろから実験をいたしておるのであります。これも相当の成績を上げ得る非常な特徴を有しておるという点を認めましたので、来年においては、ある程度これを拡張して行きたいというふうに考えておるのであります。その他そういうふうな新しい考案等をいたしました際において、適当な税務署を選んで常時それを実地に移し、そしてそれがはたしてうまく行くかどうか、実行上能率を上げる上において効果があるかどうか、その他各方面の点を十分に検討いたしまして、今後の税務行政改善に資して行きたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  19. 宮腰喜助

    宮腰委員 この基準税務署の問題でありますが、長官も一生懸命努力されておることを伺つておりますが、この外部事務と内部事務の問題について、どう内部事務の方はおもしろくないから外部事務に出たいといつても、容易にその事務の担当ができないという欠陥がありまして、部内でも不平を申し出る人が大分あるようです。それから賦課徴收を一緒の人がやることになつた場合に、人情にからまれたり感情にからまれて成績が上らないということもあり得るという心配があるのでありますが、こういうようなことについて、そういう不満の場合、あるいはまた賦課徴收ついては、何らか具体的な方法をとつて行かなければ、情実関係が起つたり、あるいはまた感情的な問題が横たわる心配があると考えるのでありますが、それについての対策をひとつお教え願いたいと思います。
  20. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 内部事務と外務事務を分離することによりまして、内部事務に従事する職員は、ほとんど外部に対して出張ができないとか何とかいう事柄について、ある程度の不平を聞くことはたまたまあるのでございます。しかしながらとにかく全体としての能率を上げるという上におきましては、どうしても事務をそれぞれの性質に応じて分類いたしまして、それぞれ専門化して行くということが、今後の税務行政改善の向うべき道ではないか、そういうふうに考えまして、職員等に対しては十分そういうふうな大局的な見地に立つて、よくその趣旨を了解してもらつてつて行くように努力いたしておる次第であります。  また賦課徴收一体化につきましては、まだ私どもも結論を出す段階には至つておりませんが、当初心配されておりました徴收の困難さのために賦課そのものがゆがめられるというふうな事柄につきましては、実際やつてみますと、その面の心配はあまりないようでございます。むしろ双方とも同じ係でやるということによりまして、資料の收集も楽になり、また仕事の連絡はもちろんよくなりますので、いい面も相当あるのでありますが、ただ仕事の流れと申しますか、ある時期にはもつぱら賦課仕事のみを重視し、ある時期には徴收仕事のみになるというふうな関係からいたしまして、その点ほんとうに徴收にも努力しなければいかぬというふうな意味において、徴收の面が空白になるというふうなことがありまして、これは仕事の流れの上から相当に研究を要する点があろうかと考えております。
  21. 宮腰喜助

    宮腰委員 大阪の北野、阿倍野、それから東京都内の芝、澁谷、こういうようなところで即時審査整理方式をとつておられるというお話ですが、これは結局カードによりまして、カード引出しによつて毎日々々そういう人を呼び出して調べる、こういうような方法で納めろとかいうふうな滞納整理方法が行われておるようですが、こういうふうにカード式によつてしよつちゆうきようも呼んだ、あすも呼んだというのでは、納税者はしよつちゆう呼び出されて、仕事をやつておるのに非常に迷惑になるというようなこともあろうと思うのであります。この呼出しは、持つて来るまではほとんど連続的に呼び出して、半ば間接的に脅迫みたいな徴收の仕方がされるおそれがあるじやないかというわれわれの心配があるのでありますが、そういう実際的な技術面をどういうふうにやつておるかということについてお教え願いたいと思います。
  22. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 そのICSのやり方は、私ども納税者に対しても非常に親切であり、整理上も非常に能率を上げ得るというふうに考えておるのであります。と申しますのは、従来は一一の滞納者につきましては、その家に臨んで督促をし、または物件の差押えをし、または物件の引上げをなし、または公売をするというふうな事柄をやつてつたのでありますが、徴收の係の職員だけでございますと、賦課その他の点についてまず第一に不平不満等がありました際、または何らかの誤謬があつたような場合におきまして、十分御意見を伺う機会を得ないし、またはそういうふうなことがありましても、それにお答えをする能力を持たないのが普通であります。いま一つは、従来は内部整理の問題ではありますが、一人の納税者について数件以上の滞納の税目があるというふうな場合、それが個々に処理されておつたのでありますが、今度の方法によりまして、これは全部各納税者ごとに名寄せをいたしまして、その名寄せ者についてはどの場合にどれだけ、またはどの税についてどれだけの滞納があるということを全部整理いたしまして、そうして税務署においでを願つて、その事柄について十分お話をし、また不平不満等がおありになる場合、または実際は納めておると考えておられるのに、それが税務署帳簿に整理されていないという場合、それを資料等によりましてその場でよく整理することができるのであります。ことに税務署においでを願えば、幹部がみなおりますから、たとえば賦課関係においては直税関係、または間税関係の職員のところで十分にお話を伺うこともできますし、また納付されたと思つてつたものの実際の行方についても十分追究することができるのであります。そういうようなことをすることによりまして、滞納税額について十分御納得を得て、しかもいつ、どの程度納められるかということについても、御相談に応じて、適切な整理の方策を各納税者ごとに立てるというような、非常な利点を持つておるのであります。またこちらからお伺いいたします際においては、その納税者のお宅に伺いましても、御不在であるとか、その他仕事の途中であつて、非常に御不便であるとかいろいろな事情がありまして、そのためになかなか整理がはかどらぬという面があるのであります。従いましておいでを願うということは、一面において何らか非常に御苦労な感じもするのでありますが、結局その方が全体の能率を上げ、ほんとうにわかつていただいて納税していただくという面において、非常に効果がありますので、これを全般的に適用して参りたいと考えておる次第でございます。
  23. 宮腰喜助

    宮腰委員 それから国税局の調査と税務署の調査とがダブつてやる場合が非常に多いのでありまして、税務署に言わせると、どうも国税局の調査課があまり干渉しておもしろくない。こういう話で、感情的になつている場合もありますが、調査の場合、国税局の調査と、税務署の調査というものを区別ができるものでありますか。あるいは国税局も関係していいのだということになるのでしようか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  24. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 税務署の所管に属する納税者と、それから調査課の所管に属する納税者とは、これは大蔵省令によりましてはつきり区分いたしております。従つて調査課の所管に属する納税者の調査に関しては、税務署は権限を持たないのであります。ただ徴收の面に関しましては、これは税務署に第一次的な責任はすべてございますので、税務署において徴收の面から調査することはありますが、調査自体としては、判然といずれかに区分されておりまして、双方に調査されるというようなことはないと考えておるのでございます。
  25. 高田富之

    ○高田(富)委員 最近の昭和二十六年度の申告指導といいますか、これに関連いたしまして、最近非常に多額の所得の増額が税務署から指示されて、各所において、相当困難な状況に直面しておるのでありますが、これに関連して質問したいと思います。まずお伺いしたいことは、特にこの場合は、農村もありますけれども、零細な業者の場合に、特別この問題がむずかしい問題を起しておると思いますので、個人営業について特にお伺いしたいと思います。最近の状況として、配付された資料を見ましても、平均五割ないし六割くらいの所得増加が見込まれておりまして、税額におきましても、昭和二十五年度に対して五割の税の收納増加が見込まれておるわけであります。ところが実際に私自身も、最近この問題につきましては、納税者からいろいろ相談を受けて調べてみましたが、五割くらいの大幅な、あるいは五割以上のところも相当あるのでありますが、收入増加を見込む根拠が、個々の具体的な場合にぶつかつてみますと、まつたく疑わしい場合が多いのであります。私はこれはもともと非常に無理な方針に基いてやつているのではないかという感じを、非常に強くしております。たまたまこちらに配られました資料に基いてちよつと検討してみたのでありますが、これは結局五割だとか六割だとかいう厖大な、申告指導による一種の押しつけになつておると思います。押しつけた所得増を見積つております根拠は、先日配付されました主税局の調査表を見ますと、大体申告所得者の所得階層別の、昭和二十五年から昭和二十六年の間の変化が、昭和二十五年におきましては、十万円から十五万円までという層が圧倒的に多かつた。全体の三割一分幾らを占めておりまして、金額においても二割六分近くを占めております。それが一年間に、昭和二十六年度になりますと、二十万円から三十万円までの間が、人員におきましても圧倒的に多く、三割を占めております。金額におきましても、同様に三割を占めて、圧倒的に多いというようになつておりまして、所得の階層の変化の見方が、十万円、十五万円といつたようなところから、二、三十万円のところに急に非常に大きく移動しておる。税をとる対象がそういうところへ集中されて来た。その結果、租税全体としてはさほどふえておらなくても、特に申告所得税の場合のこの階層につきましては、著しく集中的に徴税の努力がここえ集中されているのではないか。そうでもなければ、個人営業者が五割、六割、場合によつては十割も、この不景気のさ中に、金詰まりのひどい最中に、所得を水増しされるということは、常識的にちよつと考えられない。個々の具体的な場合を見ましても、私は痛感いたしたのでありますが、全然法律よりも営業の成績は上つていない。むしろ苦しい。それで私の調べたところでは、倍以上の決定を受けておる。そういうようなことは、根本的において、個々の調査にあたつておる税務官吏が、経済知識に乏しいとか、そこのうちを誠意をもつて調べなかつたとかいうことばかりでなく、上の方で見込んでおる收入を主として上げるために、結局ここへ集中せざるを得ない。何となれば、これ以下の小さいところは無理に拾つてみましても、努力の割合に税金は上らない。ところがこの層でありますと、非常にこれは、いい意味におきましても、努力すれば努力のしがいのある階層でありまして、帳面もろくすつぽ持つておらない。家族でやつておる。しかもある程度の收益を上げておると見込まれるし、人数も多い。この階層をつかむことなしには、所得税の成績を上げることはできないのであつて、どうしてもこの層に向つて集中せざるを得ないという結果に現在なつておるために、どうしても末端におきましては、一層成績を上げなければなりませんから、ますますそういうところへ集中する。ですから結局これらの層におきましては、五割というのは低い方で、大体六割、七割、倍以上のところはざらにあるというふうな、まつたく常識を無視した大きな決定が行われるようになつているのではないかというふうに感ぜられるのであります。昭和二十五年から昭和二十六年までに非常に国民所得がふえたというようなことに、政府の方ではなつておるようでありますけれども、それは昨年の補正予算のときにも明らかになりました通り、主として朝鮮事変関係法人は莫大な利益が上つて、予算の上で見積つていなかつた利益で、三倍も税金がとれるというような非常なふくらみがあつたのでありますが、個人所得の場合には、むしろ当初予算よりも自然減を見込まなければならないような状態でありまして、国民所得がかりに政府の計算の通りふえたと仮定いたしましても、これが昭和二十六年度の申告指導に現われておるように、中小業者の零細なところへ向つて、五割以上も集中されるということは、まつたく弱いところへ、徴税可能なところへ向つて集中しているとしか考えられないのでありますが、その点はいかがですか。
  26. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいま資料に基いて御質問になつたのでありますが、この資料は、私ども税務行政上使用する資料とは全然異なつておりますので、この点を念のために申し上げておきます。税務行政につきましては、何らかの先入主をもつてその調査に当るということが、最も真実を得る上におきまして障害となるのであります。従つてどもはどこまでもその人の所得が何であるか、どれだけであるかということを、虚心坦懐に各種の資料また直接の調査等によつて調査いたしましてその所得を把握して行く、そうしてその正しい所得に基いて納税者の指導をして行くということをいたしておるのであります。しこうして先般どなたかの御質問に対して答弁を申し上げたかと思うのでありますが、二十六年の所得について、全国でそれぞれ実際の調査をいたしておりますが、それらの調査を集計して見まして、前年度やはり同じように所得税を納めておられた方について総額について比較をして見ますと、所得において四割七分程度の増額を示しております。しかしながらこれは調査せられた結果の数字であつて、それを予想としてやつておるものでは全然ありません。またこれも各業種によつて非常な差があるのでありまして、それぞれその人の実際の所得がどれであるかということについて十分検討いたしまして、そうして税務署で調査したところを納税者の一人々々の方に十分御説明申し上げ、そうして納税者のお話も伺い、いい申告を出していただくというふうにお願をいたしております。現在ちようど各税務署とも納税者においでを願つてそれぞれ説明を申し上げておる最中でありますが、中間的な状況を私ども見ておりまするが、納税者の方々も今年は昨年以上に十分納得していただきまして、いい申告をよく出していただいておる状況でございまして、その点は私どもも非常に喜んでおる次第であります。
  27. 高田富之

    ○高田(富)委員 昨年よりいい申告を出していると言いますが、それは下の税務署からの報告はあるいはそういうふうに報告されておるかもしれませんけれども、末端の実情は、こちらでただいまも委員が質問しましたけれども、呼び出しまして判を押させておるわけです。だから自主申告の形みたいなことになつておりますが、役所へ呼び出されますと、大体帳面もないような零細業者が呼び出されますと、それだけでもう今の状態においては客観的には、主観のいかんを問わず脅迫みたいなことになるわけです。いわんやそこに多少の主観は入ります。何とかしてとりたいのでありますから……。どうしてもその結果は判を押さざるを得ないはめに陷る、ここで判を押さずに帰れるような人はよほどの人であつて、何万人に幾人くらいしかいないのです。そういう状態のもとに更正決定をしなくてもいいようなことになつておるのですから、これは非常に私は重大だと思います。  それから今のこの資料はこれをもとにしてやつているという意味じやありません。私もそうは見ませんが、これは実際に税金をかけた結果の大蔵省の集計だろうと思うのです。ですからこういうふうに税金がかかつたということでありますから、この二十五年はこれはもう実績がここに出ておると思います。二十六年の方は大体それは推定も入つておるだろうと思いますが、そういうふうな点で、これはどうしても常識的にいつてもそうだと思います。各税務署でもつて努力をする場合、努力の集中はやつぱり一番簡單に成績の上るところに向つて努力を集中することはあたりまえなんです。それがこういう表にたまたま結果として現われて来るのだと思うのです。ですからかりに五割も六割も七割も一般的に收入が上つておるとしますと、多少基礎控除が上つたからといいまして、下に脱落して行くものは非常に少くなると思うのです。また新たに入つて来る人もできて来るわけでありまして、そういう点から行きましても、新しくふえる割合というものは非常に減るはずだと思いますし、また下の方に対してもかなり多数のものがかかるのだと思うのです。そうではなくて、やはり一定のちようど手ごろなところに向つて重点が移動して来ておるということは、これは徴税の上から出て来ておる実態上の、実際の各階層別の收入増加率を表わすのであつて税務署がどこへ努力を集中したかということが、この表になつて私は現われて来ると思うのです。だから現在やつているこれらの暦に対する申告指導というものが、納得の行つた指導でなく、まつたくこれはやむを得ず判を押しておる。結局これはまた滞納になるかもしれない。そういうふうなことになつておるということが、私は実情だと確信いたしております。でございますから、そういうことが絶体に行われていないとか、行われるはずがないというようなことでありましたら、その根拠をひとつ明確にしていただきたい。もしそういうことも行われ得る可能性がありますならば、これを何とかして是正するというためには、相当これは努力しなければならぬと思います。これは判を押しちやつたからということで何とかやろうとしましても、これはとれません。そういうようなことで、今当面の問題でありますから、ひとつ明確なお考え並びに方針をお示し願いたいと思います。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 私からさきにお手元に配りました表について若干御説明申し上げておきます。これは今高田さんもお話になりましたように、二十六年分と二十七年分は大体私どもが予算を見積る場合におきまする増加指数、これは経済の趨勢によりまして、生産、物価所得率把握等の関係を考慮しまして、前国会でも御説明申し上げましたあの指数によりまして、所得の二十五年分から引延ばして行つて、それから新税制を当てはめて、失格するものは落す。こういう趣旨でこの表を実はつくつたわけでありまして、別段これを行政的に意図しようとか、そういうものではございません。今お話のように、納税者層が漸次中、大というふうに、上の方がふえて来ておりますことは、これはもう一般傾向としては私どももその通りだと思いますが、特にそれがはげしくなつておりますのは、控除の引上げによりまして、下の方の所得層が失格者がたいへんふえて来た。納税者の数も二十五年度四百三十万に対しまして、二十六年度は三百八十万と見ておりますが、約五十万ほど減つております。これは大部分今御指摘の十五万円以下の所得階級であります。こういう人々所得はある程度ふえたが、税法改正によりまして、控除することによつて納税者から失格して行く。そういう関係で下の方が落ちておる。その二つ関係、つまり所得一般にふえますのと、税法改正で下の方の所得者が失格者になる。この二つ関係で、所得の階層別の分布がここ二、三年相当かわりつつあるということでありまして、別段これは行政的にどうという趣旨のものでないことを御了承願いたいと思います。なおこれは長官からあとでお答えになると存じますが、高田さんも今御指摘になりましたように、この所得を調べまして申告指導をしておりますのは、二十五年の所得に対する二十六年の所得の比較でございますね。ところが実際の納税者の感じから行きますと、昨年に比べて今ごろの状態と申しますか、どうも感じとしては、この状態で受取りがちになります。たれしもちよつと考えますとそういうふうになるのでございますが、ただ問題になつておりますのは、二十五年一箇年の実績でございますね。その半分は、例の、二十五年の当初におきまする——大分いろいろ危機だといわれて騒がれましたが、一種のデフレ的現象を生じました半年分、その後朝鮮動乱が六月に起きまして漸次上向きいたしましたが、小企業に及ぼす影響は二十五年は特に遅くなつて現われた。それが二十六年になりまして、消費者物価指数も漸次ある程度つて行き、それから生産の増加に伴いまして、日用品、国民消費物資等の取扱い数量もふえて来た。そういう関係で、二十六年の所得を実際調べますと、今高田さんのお話にありましたように、調査の結果といたしまして、四割から五割ぐらいふえるものが相当たくさん出て来ておるわけでありまして、こういう表をつくつて今行政的意図で非常にこういう表から押しつけるといつたような趣旨のものではない、それはまつたく実態をよく調査いたしました結果の数字でありまして、この調査がはたしてよかつたか悪かつたかということは、これは大いに私は問題になると思いますが、これにつきましては最近はよほど税務官吏もなれて来ておりますし、それから昨年以来大分実額調査を励行してやつて来ておりますので、私も相当な結果を收めているんじやないかと見ておりますが、そのことは決して全体の見方から押しつけましてやつて行くのではなくて、個別的に調べたものを積み上げて集計をしているものにすぎない、こういうことでございます。従いまして二十六年分の最終に申告され、あるいは更正決定をしたあとの所得がこういう階級別になるかならないか、これは一つの問題だと思いますが、この階級別表は、私どもさつき申し上げましたような補正予算で見積りました所得額の増加指数と税制の改正、この二つを元にいたしましてつくりまして、税負担の状況あるいは税制改正の際の皆様の判断の資料としまして、実は提出いたしたような次第でございますので、その点私から表の説明といたしまして一つ補足さしていただいた次第であります。
  29. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 納税者に正しい、いい申告をしていただくために、現在各税務署がやつております方法につきましては、私ども非常な注意を払つておりまして、実は先般来都内の各税務署をひまのある限り歩きまわつて見ておるのであります。昨日も三つばかりの税務署に行つて納税者の方のいろいろな感想も伺いますし、また現実に説明をしている状況等もしさいに見ておるのでありますが、全体の感じといたしましては昨年よりもずつとなごやかな状況でございまして、にこにこしながら非常に平静に、なごやかな気分のもとにいろいろ話を聞いておられ、また伺つておりますから、ああいうふうな状況であれば、ただいま御心配になりましたような強制的なと申しますか、非常に無理なという感じはあまり受けないということを私自身確認いたしておるのであります。納税者の待つておられる方の感想もいろいろ聞いてみておりますが、むしろ概して非常によくなつたというお言葉をいただいておるような状況でございます。一昨年ごろは、どの税務署に参りましても空気が非常に緊迫いたしておりまして、場合によりますと怒号が聞えるというような状況であり、または非常に悲痛な顔つきをしておられるという状況でありましたが、その点が格段とよくなつてつておりますので、私ども相当に喜んでおる次第でございます。もちろん現在のやり方が万全であるというふうにうぬぼれてはおりません。なお改善すべき点は今後あらゆる努力をして改善して行きたいと思いますが、大体私どもが常時見ておりますところはそういう状況であるということを申し上げておきます。
  30. 高田富之

    ○高田(富)委員 それから申告指導をやる場合に、相当多額の、たとえば二倍とか二倍以上の税金を納めなければならぬというようなことになりました場合に、呼び出されておりますから、たいていの場合はさつき言いましたように判を押してしまうわけです。押してしまつても実際払えない、どう考えても払えない。その場合にどうしますかと言いますと、押させると同時に分割払いの提案税務署の方でするわけです。そうしてこういうふうに分割払いにしてやるからこれでひとつ判を押せ、これでもお前拒否するか、そうするともつとひどいことになるぞということになりまして、せつかく分割払いにしてもらつたが、その分割払いたるや、理論的にも実際的にも全然なつていないような分割払いが非常に多いのであります。この分割払いについては、私もあまり何ですが、法的な、何か規則か通牒があるのかどうかわかりませんが、その企業の月々の收益の中から税金を差引いて、なおかつ生活がやつて行けるという合理的な税務署の方でした決定に基いて算定するのだから、これは問題はないと思いますが、その決定した所得を上げるためには、大体どのくらいの所得が月々にあるか、そうするとその中からこれだけ税金を払つて、残りのこれだけでやつて行けるという合理的のものであるためには、場合によりましては、これを一箇年にしなければ月賦返済はやれないという場合もあるでしようし、あるいは半年でも十分返済できるという場合もある。そういうふうなことを合理的にやつておりませんと、せつかく月賦にしても、月賦の滞納がまた始まるわけです。ですから月賦は、初めから滞納されるような形の可能性のあるような月賦では、恩典にしたようで結局恩典にならぬのでありますが、そういうことについて何か方針がありますか。
  31. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 納税につきましては、正直な正しい申告をしていただくということがまず第一要件であり、かつその申告に基いて納税をしていただくということがぜひとも必要なわけであります。しかしながら納税者の方方の中には、なるほど所得はあつたけれども、最近のいろいろな事故等のためにどうしても一時に納付することが困難であるというような事情の方がございます。これはそういうような事情も十分にお聞きして、そうして実情に即するような措置を講ずることが、私どもやり方としては当然であるというふうに考えまして、税務署におきましても、申告の済まれた方に対して、納付について、もしもほんとうに困難な事情があれば、その事情を十分お聞きいたしまして、法律上分納または徴收猶予を認め得られる場合においては、それを認めて差上げるということをいたしておるのであります。徴收猶予をなし得る場合は、国税徴收法の七條でもつてはつきり規定いたしておるのでありまして、その要件は、震災であるとか、風水害とか、その他の災害にかかつた場合、または納税者の家族に疾病があつて、その療養費に相当金がかかつた、また転廃業等のことをなすつた場合、または納税者がその事業について最近において甚大な損害を受けたというような、いずれもそういうふうな事実に基いて、一時に納付することが困難であるということが認められれば、分割並びに徴收猶余等の措置を御相談いたしまして、実情に即するようにして差上げておるのであります。現在やつております事柄は、むしろ税務署といたしまして納税者に対してできるだけ実情を聞いて差上げる、そうして無理の行かないように、滞納にならないようにという趣旨をもつてよくお話を伺つて、そうしてそれぞれの條項に該当するかいなかということも検討いたしまして、いつ何日にどの程度納めていただけるかというお話も伺つて、そういうふうな取扱いをいたしておる次第であります。
  32. 高田富之

    ○高田(富)委員 それではあとの質問はこの次にいたしまして、今のことだけもう一ぺん念を押しておきますが、その場合に事情に適応していないような場合であれば、これは相談が不適当であつたということになりますから、あるいは徴收を猶予する、その猶予する期間をどれくらいにする、あるいは分割納入の場合の期限をどのくらいにするかというようなことは、一切何らの制約なく、ただ実情に即して——無理に延ばしたり無理に少くしたりするのはいけませんが、誠意をもつて完納しようという限度においてぴつたりするようなものであればよろしいか、それには何らかの制限がありますか。
  33. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまの御質問の趣旨がちよつとわかりかねますので、あるいは適切な御答弁になるかどうかと考えますが、延納等を認める場合についての画一的な基準は持つておりません。それから法律に基くはつきりした場合におきましては、それは相当長期の期間を認め得るのでありますが、税務署において現実に行われているものにつきましては、そういう法律に基くというような場合よりもむしろ、せめて一、二週間待つていただけば納期までには大体三分の二を納めるとか、あとの三分の一くらいは、たとえば三月の十五日、または三月末日までに納めるというようなお話でありますが、その程度のことでありますと、もちろんその間利子等はかかりますけれども納税者の御都合も十分お察しして認めて差上げるのが妥当ではないかという常識的な観点からさような処置をしているものと思います。
  34. 佐藤重遠

    佐藤委員長 ちよつとお諮りいたします。ただいま議員金原舜二及び平野三郎両君から山林の相続税に関し、政府当局に対して質疑を行うための発言を求められておりますが、この際両君の委員外発言を順次許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 佐藤重遠

    佐藤委員長 御異議ないようですから、まず金原君の委員外発言を許可いたします。議員金原舜二君。
  36. 金原舜二

    ○金原舜二君 委員外の発言を許していただいたことに感謝いたします。  日本の国土の荒廃という点について年々公共事業費あたりが赤字に赤字が次いでおること、並びに森林の資源の欠乏ということは日本の国家として重大な問題である。それらの点はもうすでに何人も認めるところでありまして、国会においてもしばしば国土緑化推進運動であるとかいろいろの決議をなされたことは申すまでもないことであります。従つていかにして森林を育成するかという問題は、日本の国策の大きな問題であります。しかるにかかわらず、税の面においてこの森林に対して保護することが非常にかけておるのでありまして、私ども従来その点に関しまして大蔵大臣並びに農林大臣にしばしばお目にかかつて、直接いろいろの事情を申し上げますと、大蔵大臣もすべて何もかもまつたくその通りだということで御承知なんです。であるにかかわらず、実際の税制の面になると、税の公平であるとか、いろいろの観点からこれらを改めることに非常に臆病である。私をして言わしむるならば、なるほど森林の育成が非常に大事であるということを頭では理解をしておる。しかしながら、その重要性をほんとうに身に感じていないのではなかろうかというふうに考えるのであります。今回の相続税の改正におきましても、なるほど一般の林業家、特に比較的小さな山林を持つておる方が相当保護されておることは私ども認めざるを得ないのであります。しかしこの税法改正を見ましても、山林とその他の不動産と税法上常に同一の取扱いをしておるのであります。東京都における不動産、宅地、それらのものと山林というものを同様に取扱つておる。私は必ずしもそれが悪いというのではありません。しかしこれほど重要な山林の育成という目的をいかにして達成するか、この問題を取上げての税制上の考慮は払つていないように思われるのであります。今度の改正では、奥地林の搬出経費の七割以上かかるものは所得税の対象にしない、ゼロに見積る、この一点だけで、その他は山林の重要性を考えて税制に考慮を払われたという面が見当らぬように感じるのであります。これだけ皆重要な問題として真劍に考えている場合に、それでははなはだ不適当ではないか。御承知でございましようが、山林事業を新たに始めようと思つても、今日のような税法状態では事業が遂行し得るかどうか問題であります。五十年、六十年前には木を山に植えるということはむしろ気違い扱いをされたのであります。何のためにそんなことをするかと気違い扱いされたのはまだ五十年、六十年前のことであります。しかるに今日は全国民この森林資源の涵養がいかに国土の保全の上に必要であるかということを痛切に感じておる。そういう際に実際の林業家は従来の一種の惰性によつて植えておる。祖先がせつかく植えてくれた木を売るだけ、採算がとれてもとれなくてもかまわない。祖先に対する気持がおもになつて植林をしているのでありますが、先祖が自分の所有にして植えてくれたからこそ今日辛うじてこれが永続されているのであつて、新たにこの事業をしようと思つても今日の税法では絶対に不可能である。東北パルプであるとか王子あたりの有力会社ですら今日の税法では山林の育成は絶対にできない。非常に景気がよくてもうかつたときには自分の将来の財力にするためにあるいは公共性のために植林に努力するけれども、一旦もうからなくなつた場合にはこれらの事業はすべて放擲してしまう実情にある。こういう大会社ですらさような経済的な状況下に置かれている今日、三分の二を占める民業の仕事の完成ができるかどうかよくお考え願わなければならぬのであります。相先からの山を持つて林業に従事している者はほかの收入によつてどうにか暮らしておつて、採算が合つても合わなくても自分の義務としてこれを継続して来たのが今日までの状況であります。しかし実際問題といたしまして、終戦後の経済の非常な変動のため、ほかの收入によつて生活を維持することは困難になつて、森林資源によつて家族の生計を営む以外まつたく道がないのであります。かような場合に、切つた山の跡に植林をし手入れもして行く経費は、他からは絶対に出る道がないのであります。でありますから、簡單に申せば、植林というものはそれ自体によつて生活も維持でき採算もとれて行くようでなければ——国策だと言つて強力に主張いたしましても、国会で決議いたしましても、日本の山ははげ山にならざるを得ないというのが今日の状態である。この点大蔵当局は特に身にしみてお考え願いたいのであります。さような意味で今度の税法改正で多少小さなものは比較的相続の場合に負担が軽くなつたことは認めますけれども、特にこの幼齢林あたりが富裕税の対象として——幼齢林を植えたばかりの山、これから十五年間は年々これを投資して行かなければならぬのを、一つの富裕税の対象として税金をとるというようなことは、まつたく言語同断な行き方である。それこそ学生に税金をかけるような仕打である。われわれは、まず幼齢林に対する課税、特に富裕税の対象からは免除していただきたい、こういうふうに考えるのでありますが、その点ひとつ大蔵当局の御見解を伺いたいのであります。
  37. 平田敬一郎

    平田政府委員 まず私から、今度の税制改正が、山林に対してどういう点が一番従来よりかわるかという点を先に申し上げます。一番の点はやはり相続税、所得税両方にわたりますが、まず相続税におきましては、御承知通り相続が開始しますと、山林の時価を評価しまして、従来は譲渡したものと見て譲渡所得税を課税し、その残額に対しまして相続税を課税する、こういう行き方をとつていたのでございますが、この点は、主として山林等につきましてお話のような事情がございましたので、今回は相続の際における譲渡所得税は課税しないということにいたしております。これはもちろん山林だけでなくて、ほかの不動産の場合におきましても同様でありまするが、山林だけに扱いを認めて、ほかの方に認めないというわけにはやはり行きませんので、山林等の関係を主として考慮しまして、そのような課税制度を変更いたしたのでございます。これは一つの大きな従来との差のある点でございます。  それから相続税につきまして基礎控除を引上げ、税率を引下げる、これも一般的じやないかというお話でございますが、やはり私ども調べてみますと、現在農村方面におきましては、農地は農地改革で大部分地主がとられまして、現在あまり持つていない。やはりまとまつて財産を持つておりますのは山林の所有者でございます。従いまして相続税を軽くするということは、山林の所有者にとりましては相当な軽減になるので、この場合もひとり山林の所有者だけに特別処置をやつているのではございませんで、やはり山林その他の場合にも同様な事情が大分ございますので、かような措置をいたした次第でございまして、主としてまとまつた資産としまして今日地方に残つておりまする山林の所有者は、やはり今度の相続税の改正によりまして相当な軽減になるものと私は見ておるのでございます。  それからもう一つは、年賦、延納の期間につきまして、従来五年しか認めていなかつたのでございますが、今回は山林不動産など、換貨が比較的むずかしいものを持つておられる場合におきましては、十年の年賦償還を認める。これも山林だけ認めるのではなく、ほかの不動産も認められるじやないかというふうに御批評があるかもしれませんが、やはり山林等の場合におきまして、そのようなことが特に顕著に考えられましたので、このような制度を設けることにいたした次第でありまして、山林に認めるということになりますと、その権衡から行きまして、他の不動産にも及ぼした方がいいのではないかという趣旨で同じようなことにいたした次第でございます。なおその場合の利子税につきましても、将来は四銭の利子税を今回は二銭に引下げることにいたしております。これらの処置はいずれも山林だけに限つてやるわけではございませんが、結果から見まして、一番利益を受けましたのは、どつちかというと山林であります。また山林の課税の問題が、いろいろやかましい問題としまして承知いたしておりましたので、こういうような相続税の改正をすることにつきましては、そういう見地から改正を考えておるということを御了承願いたいと思います。  それから所得税におきましても、伐採しました場合に十万円の特別控除を行いますことは、今申し上げた通りでございまするし、なお法律案提出が遅れておりますが、再評価税につきましても、同様に十万円の基礎控除を行つて課税することに、おつつけ法律案提案する見込みでございます。所得税におきましては、主として中小の山林所有者の場合に、従来と比べまして、相当な負担軽減になるのではないかと考えております。  それから今お話の評価の問題と課税から全然除外するかという問題でございますが、富裕税及び相続税の山林の評価につきまして、昨年以来実地によく調査いたしました結果、最近国税庁で通達を出してもらいまして、従来に比べまして著しい改善を加えつつあることは、おそらく御承知かと思います。たとえば幼齢樹林の評価等につきましても、従来の方法で評価した場合に比べますと、大体半額程度になるかと思いますが、補助金等の件を全然除外するとかあるいは今御指摘の奥地林の評価につきましても、売買実例から奥地林の評価を推定いたします場合の評価方法改善を加える。それからグラーセの例の評価方式を用います場合におきましても、一定の年齢以上に達しました場合におきましてはカーブをゆるやかにするというような方法を講じまして、極力山林の実情に即応するようにしようというので、これもことしの富裕税並びに山林の相続税から適用することにいたしまして、目下すでに実行に移しておる次第でございます。  そのようにいたしまして、もちろん私ども税制の一環としてでございますので、山林だけの見地から見志すと、あるいはなお不十分じやないかというお感じをお持ちになるかと思いますが、やはりそういうその他の点もでき得る限り考えつつ、山林につきまして妥当な課税に結果的になるようにという趣旨で、相続税、所得税等の立案をいたしておりますことを御了承願いたいと考える次第でございます。幼齢樹林等を全然富裕税の課君外に置くということにつきましては、今申し上げましたように、評価の問題としては大いに考えられると思いますが、全然課税外に置くということは、いやしくも富裕税を設ける以上は、これはやはり適当ではない、相続税の場合におきましても同様であると考えるのでありまして、やはり相税政策として考えます上におきましては、全体の政策と相関連しつつ、できる限り山林政策に寄與するような方法をとろう、こういう点で、私どもといたしましてはその調節に相当苦慮をしておるような次第でございますので、その点も最後につけ加えさしていただきたいと思う次第でございます。
  38. 金原舜二

    ○金原舜二君 御苦心の跡もよくわかつておりますし、ただいまの御説明の点は、私ども大体すでに承知しておりますが、私はここで別に議論をするわけでも何でもありません。何か観念論にとらわれておるようなふうにお聞きになるかもしれませんが、山林だけを特殊扱いにするわけには行かないから、ほかの不動産と同じようにするというお考え方が、どうも私には気に入らないので、なぜそういうことをお考えになるか。たとえば今度の秘密預金にしても、これは理由つて秘密預金にのみ適用するところの法律である。他の不動産と別に扱つておかしいことは何にもない。これは森林資源の涵養が国策上最も必要であるという点から見て、ここに結論が出て来て少しもふしぎはないと私は思う。そういう意味で、私どもは幼齢林を課税対象から除外しよう、あるいは除外することは適当でないにしても、先ほどのお説のように幼齢林を半分以下に評価をなさる——これは国税庁お話も確かにさようなことであるように承つておりますけれども、二年間は非常に少くする、三年目からは例のグラーセの法則でやる、こういうことは——一体まつたく中途半端な、十五年間ぐらいはどうしたつて用材として使えない、投資一本やりで行くんだから、この期間ぐらいは、かりに全面的に免除されないにしても、今の安い評価一本で行つて、後日これらはどうせ所得税なり相続税なりの対象になるりつぱな資産になるのだから、そのときに税金をとられて一向さしつかえないのだ、わずかなことで非常に民間の森林育成の意欲をさまたげて行く、年々投資して行かなければならぬ、これから投資しなければならぬものに対して、税金の対象にするということは当を得ないと思う。しかもこれは国家全体の税金の收入から見て、ごくわずかなものである。こんなわずかなものに何もこだわる必要はない。森林の特異性ということを真に身をもつて感じておるならば、これらは当然な処置でなければならぬ。そして先ほどのお話の延納の場合に、従来は日歩四銭であつた、それを日歩二銭にした、これもけつこうでございますけれども、木を植えて日歩二銭の利まわりに発育するということは非常に困難です。こういう面こそ、特にこの森林の税あたりについては、もしどうしてもこの利息を免除することができないということならば、まつたく国策的に考えて、一つの補助の意味合いからいつても、これらの金は、国家全体の経費からいつて非常にわずかなものですから、二銭と言わず、せめて一銭とか一銭二厘の、ごく低い延滞金を課すべきだというふうに考えておるのであります。そういう点について、もう一度所見をお伺いしたいと思います。
  39. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話は、最初に申し上げました通り、相続税の免税にしろ、あるいは譲渡所得税の相続の際の課税の免除にしろ、実は私、山林等の問題が一番深刻であるということを頭におきまして、そういうことを考えたのであります。その結果そういう特例をやれば、山林だけ認めて、ほかの方は認めなくてもいいじやないかという考え方もあるかと思いますが、しかしやはり類似のものは——程度の差は若干あると思いますが、やはり山林につきまして認めますれば、その類似のものにつきましては、できるだけ認めて行くということは、税制の運営におきまして常に配慮しなければならぬ問題で、それまで排除するのは、少しいかがであろうか。結果におきまして山林につきまして相当な目的が達成できるならば、その方がいいんじやないかというふうに考えておる次第であります。それから利子税の点でございますが、日歩二銭といいますと、年利にして約七分でございます。預金の金利よりも若干高くなつておりますが、一般の貸付金利に比べますと、著しく低い。いわんや個人の貸借上の金利からしますと、問題にならぬ低い金利と思いますので、この程度にいたしますれば、まずごしんぼう願えるのじやないかと私どもとしましては考えておる次第であります。なおちよつとつけ加えておきますが、山林の所得税の問題におきましても、先ほど申し上げましたように、中小の山林の所有者は、今回の改正で私はよほどもう問題はなくなつて来ると思います。問題は少し大きな山林経営をしておられる方に若干残ると思います。その残る理由は、いろいろ調べてみますと、実地に調査した結果もそうでございますが、前回の財産税の評価が少し問題がありまして、財産税がフルに評価されております人の場合におき場ましては、ほとんど山を売りまして、再評価税だけで済んで、譲渡所得税等がかかる場合は稀な場合か、あるいは、かかりましてもわずかな金額だけにしかならぬ場合が相当あるようであります。私ども実地に派遣いたしまして、木曽でございましたかどこでございましたか、各地にまわりまして、主としてまとまつた山を持つておられる方の所得税内容を調べてみたのでございますが、正しく経理して今までちよつとやつておられる方の場合は、あまり実は山林所得税もかからなくても済むという方が多い。これに反しまして、まとまつた山を持つておりまして、財産税の評価が少し——これはもちろん納税者の責任だけじやなくて、税務署の責任でもありますが、低かつたような場合、こういう人の場合におきましては、讓渡所得税、山林所得税がかかつて来る、こういう点で残る問題があります。この問題を全部解決してしまうということもいろいろ考えてみたのでありますが、どうもそこまでやりますのは、これは少し行き過ぎになりはしないかということも考えまして、その問題だけは、なお若干問題として残つておるかと存じますが、あとの点は私ども今回の改正によりまして、これが実行に移されますれば、よほどよくなるのではないか。私どもとしましては、そのように大体観測しておりますことを、つけ加えさしていただきたいと考えております。
  40. 平野三郎

    ○平野三郎君 私も委員外発言の取扱いに感謝いたしまして、時間がありませんので、簡單に一言だけ主税局長お尋ね申し上げます。森林の特異性につきましては、ただいま金原君からるる説明されたところで盡きております。問題は課税上いかなる措置をとつて特に森林を擁護するかということでありますが、ただいまの主税局長の御説明のように、今回の改正によつてやや森林に対する特別措置があつたということは、私どももよく承知いたしております。しかしそれは消極的な面であつて、ひとつ何らか積極的な手を打つということはないか、この新しい構想についてお尋ねしてみたいのであります。現在の日本の森林の状態は、御承知通り、成長量は六千万石程度でありますが、需要量は用材だけでも一億以上、薪炭を合せると二億というような状態に達しておるわけであつて政府推定によりましても、このまま続けて行けば、今後十八年間に日本の森林は絶滅するというような恐るべき状態にあるわけであります。そこで現在の木材の需要を押えることはできませんので、やむを得ず奥地林の開発というようなことをやつておりますが、何といつても基本は森林の維持造成をはからなければならぬ。すなわち造林をしなければならぬということでありますが、造林に対して何か税法上特別の取扱いができないかどうか。すなわち所得税の評価基準を下げるとか、相続税の譲渡所得税を廃止するとかいう程度の消極的なことだけでは、どうしても日本の危機を救うことはできぬわけであつて、何らかひとつ所得税法の一部を改正しまして、森林に対して投資をする、すなわち林地に還元するということの認められた部分については、特に資産の増加とみなさないで、これを所得税から一部減免するとかいうようなことはできないか。少くも政府とせられては、税法上何らかひとつ造林に対して特別の措置をするという必要をお認めになるかどうか。もしお認めになるとすれば、何らかそうした方法をおとりになる、そういうことを、国会に提案せられる御意思がないかどうか、そういうことについて農林省などといろいろ御協議になり、御研究になつておるかどうか。そういう点をひとつ伺いたいのであります。  実は昔から山に対して感謝の意を表するという気持は、十分にあると思うのであります。また特に森林に重大関係のある、最近のパルプその他の殷張産業なども、多額の税金を納めておるわけでありますが、あの連中はやはり何とか森林に投資したいという熱情を持つております。持つておるけれども、何も税法上の特別措置がないために、やりたくてもやれないような状態にあるので、何かちよつとした水を向ければ、これが非常に効果があるのではないかというように考えるのでありますが、以上の点について簡單政府の所信をお尋ねいたします。
  41. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話でございますが、具体的の問題としましては、山林を伐採しまして、それに対しまして新しい苗木を植えつける、そういう場合の植付費を経費として見たらどうか、これも今お話一つかと存じますが、この点はあらゆる場合の所得計算におきまして、常に問題になる点でございます。これは所得税所得計算の非常にかたい原則でございますが、必要経費とそれから資本支出と申しますか、その二つの限界、これをくずしますと、所得の計算が実はさつぱりわけのわからないものになるおそれがございますので、たとえば資本拠出につきましては、普通の工場等の場合におきましては、一ぺんに経費に認めないで、償却という形で認めて行く、それから山林等の場合におきましては、現実に山を売つた場合における経費として見る、こういう建前を税法一般原則といたしまして堅持をいたしておる次第でございます。従いましてその原則を根本からくずすような行き方を認めるということは、これまたどうも私どもとしましては、あまりにも行き過ぎに過ぎやしないかと思うのでございます。しかしそういうことに至らずして、何かいい方法があるか、これはもしもあまり税法一般原則等と根本的に背反しないで、しかも山林の助長をはかるようなうまい方策があれば、私はあえて別段研究することにやぶさかでないと存じますけれども、全部植えかえました際に、植えかえました費用を引くということは、これはどうも少しいかがであろうかと存じます。従いまして税の上におきましても、できる限りの考慮を払いますが、山林政策につきましては、やはり歳出の面等におきましても、できる限り考えまして、各般の施策を通じて、山林の育成、維持をはかつて行くということで解決しなければ、税だけで解決することはやはり私は問題がありはしないかと感じます。なおこのような問題につきまして、もし具体的な提案がございますれば、それに基きまして研究するのは一向さしつかえないと思います。
  42. 平野三郎

    ○平野三郎君 何か具体的な提案があれば考えるというお話でありましたが、一言だけこの際提案をして御研究願つておきたいと思います。それは今森林投資を経費として落して行くということについては、非常に技術的に困難だということでありましたが、これについては私はすでに政府が昨年度から農業漁業資金融通法に基いて政府出質をもつて造林に金融をしております。従つてこれは政府投資ばかりでなしに、一般の資本も吸收して、そうしてその方面の資金をふやして行くということも一策であろう。そのためには政府が森林復興債券というようなものを発行して、民間資本を吸收するとか、あるいは別に森林銀行というようなものをこしらえてそれに対してそうした公債を発行せしめるところの権限を與えるとか、そういうことをしまして、この森林復興債券というものに投資する、これを引受ける分については特に税務署長が特別の認定をした上において、何らか税法上の減税措置をとる、こういうような方法をとれば今の問題が簡單に解決するのではないかということを考える。それを私は一つの具体的な提案として、政府において御研究あらんことを切望して私の質疑を打切ります。
  43. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私はすでに本委員会において、数回主税局長にも質問をいたしたのでございますが、本日は委員外として金原舜二君、並びに平野三郎君が質疑いたしましたが、幸い林野庁長官が来ておられますから、林野庁長官にもひとつその御趣旨を伺いたいと思います。私は言うまでもなく、すでは緑化運動、治山、治水という問題からいたしましても、森林愛護の念、森林感謝の念は十分に認識しておるわけであります。そこで今平野君も申されましたが、われわれは相続税につきましては特に別に考えて、宅地や建物等とは別な観点から、特別な考慮を払つたらよろしかろう、また所得につきましても、今度は十万円の基礎控除にはなりましたけれども、これをまたその意味におきまして、たとえば半額の基礎控除というような線を出すとか、あるいは延滞日歩につきまして先ほど金原君も申しましたごとくに、普通の不動産と同様にしないで、別な観点で、そういうものを否定し、もしくは無税にする、延滞日歩をなくするというような線を出すというようなこともあるわけでございますが、林野庁長官は日本の国有林並びに民有林に対しまして十分なる監督とその責任を痛感せられて政府をして実行せしめる地位にあると考えておりますから、よろしく大蔵当局とも積極的に交渉せられまして、今各委員の申されました事柄等を基準に考え、またあなたのお考えを発表せられまして善処せられたい、かように思いまするが、林野庁長官はどう考えておりますか、この際承りたいと思います。
  44. 横川信夫

    ○横川政府委員 私、林政の担当者といたしまして先ほど来お話のございました林業税制につきましてはできるだけ低く、山林の所有者の所得が多くなるようにということを数回にわたつて事務的に折衝をしまして、今度の改正案に盛られておるような結果を実現し得たのでありまして、従来と比較いたしますると、非常に改善されておるのであります。中小の森林所有者にとりましてはほとんど問題がなくなつたのであります。大森林所有者につきましては幾分富裕税あるいは相続税の点で問題を残しておりますが、今後これらの点につきましては、なお御検討を願いまして、さらに改善していただきたい、かように念願しておるのであります。なお先ほど主税局長からお話のございましたように、税制問題だけでは林政の振興ということは解決し得ない問題でありまして、公共事業その他の財政投資によります面と税制とを合せて解決をはかつて行かなければならないと考えております。公共事業におきましては本年度は約九十億の国家投資をいたします。二十七年度におきましてはわずかではありまするけれども、約五億の増加をしております。また農林漁業の特別融資におきましては四十六億のきわめて低利な国家資金を投入しておるのであります。これらを合せまして、現在荒廃しております林野をできるだけ昔のようなりつぱな森林に回復して参つて、国民生活の安定をはかりますように、一日も早くさようなことが実現いたしますように念願しておるものであります。
  45. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今林野庁長官は率直に政府の立場を要望せられたわけでございますが、私も実は過日平田主税局長にお願い申し上げておいたわけであります。どちらかと申しますと、山間に住む方につきましては、はなはだ行き過ぎた言かもしれませんが、新しい税法その他についてもなかなか納得が行つておりません。市街地あるいは平坦部に近いところの方々は割合に文化が早く浸透して参りますが、山の中に入りますと、文化の浸透が半年も一年も遅れる。こういう点があるわけでありまして、せつかく政府が善政をしき、いろいろな恩典を法律できめましても、これが浸透するのに半年も一年もかかりますと、遂にその恩典に浴しないというものがあるわけであります。税務署等は平坦地にあるのでありまして、山を持つている人は山間僻地におるのであります。こういうことにつきまして私は主として大蔵委員会で、農業者には農業者に適するような平易な解説雷を、商業者には商業者に適するような平易な解説書、工業者には工業者に適するような平易な解説書もしくはその見本等を入れまして、国民大衆がよく了解する納税をいたしたい、こういうことを要望したわけでありますが、特に山林山村につきましては、やはり農家の一環ではございますけれども、特別に山林行政にマツチするような平易な解説書もしくはひな形等を早急に作成いたしまして、山間僻地で山をお持ちの方にも、全部行きわたるように、行政を円滑にしていただきたい、そして負担の公平またその恩典にあずかるようにいたしたいと思いまして、私は主税局長に申したわけでありますが、林野庁長官もこれに並行して、進んで頒布並びに徹底を期していただきたいと思います。林野庁長官はどう考えておりますか承りたい。
  46. 横川信夫

    ○横川政府委員 私どもの現地の技術普及員というものが約千名おります。経営指導員が二千九十九名ほどおります。これらの者は常に山森所有者と密接な連絡をとつて、技術普及に当つております。それらの者に、税制のことにつきましても、ただいまお話のようなきわめてわかりやすく書いた解説書を近く配るようにいたしまして、ちようど準備をいたしておるところであります。
  47. 佐藤重遠

    佐藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明後二十五日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後一時十一分散会