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長谷政府委員 ただいま
参考人の方から、今回行われようといたしております
漁業用無線の
電波の切りかえについて、いろいろ
実情をお述べになりましたが、やや私
どもの考えておりますところと二、三
違つているような点もございますので、この際担当いたしております私
どもとしての考えなり、ただいまと
つております
措置の模様を申し上げてみたいと思うのであります。
先ほど来
お話のございましたごとく、
漁業無線は
日本で
電波の
利用のはげしい
一つの部門でございます。かねがね当
委員会におかれましても、
漁業無線のことにつきまして深い
関心を寄せておられることも存じ上げておりますし、われわれといたしましても、
水産日本としての活躍を十二分にや
つていただくためには、
漁業無線が十二分に活用できるということが必要な要素であるということを考えまして、かねがね
漁業無線ができるだけ高能率に使えるようにということに意を用いて来たのでございます。たとえば先ほど来
お話のございましたごとく、従来実際に
漁船に使われております
電波の数は、専用として割当てておりますのが十五波、それから共用で割当てておりますのが二波、それから現在いろいろな
事情から
使用中止にな
つているものが一、二ございますが、そうい
つた状態でございます。ところがこれを用いております船の数は、
お話の出ましたごとく、三千数百隻に及んでおりますために、
一隻あたりの一日平均の
通信時間というものは六分ないし七分というような非常な短時間でございます。
従つてこれをぜひ波の数をふやしてくれ、こういう御
要望が戰前から非常に熾烈なものがございまして、私
どもも一波でも多く
漁業無線に使
つていただくようにしたい、こういうつもりで
努力いたして来たのでございます。御
承知のごとく、
電波は
混信ということがございまして、やたらにどんどんふやして行きましても、よそからの
混信を受けたり、あるいはよそに
混信を及ぼしたりいたしまして、用をなさない結果になります。これは単に国内だけではなしに国際的にも、
電波の
獲得量にはとりきめなり、
交渉を十分遂げましてお互いに
混信のない波を探し合
つて使うことは御
承知の
通りでございます。幸い
国際会議におきまして世界中の
電波の再
編成をやろうということに一九四七年の
国際会議できまりまして、その後いかにこの再
編成をすべきかということで、たびたび長い
期間にわたる
国際会議が持たれたのであります。私
どもといたしましては、先ほど来申し上げたような
漁業無線の
重要性を考えまして、この際こそ斯界の
要望にこたえ得るだけの
電波を獲得したい。こういうことで不肖私も二箇年半ヨーロツパに駐在いたしまして、この
国際会議で
電波の獲得に努めたのであります。幸い
漁業無線に対しましては、従来の十七波に対して三十七波獲得することができ、全体といたしまして
日本として問題になりました
電波の
範囲では約三割強の増加ということになりましたけれ
ども、特に
漁業無線は他に例のない比率をも
つて倍加されたのであります。しかし
漁業無線に使える適当な波というのは、これはわれわれ
電波の
波長で区別いたしておりますが、ある
範囲に限られております。あまり長いものでも、あまり短いものでも不適当でございます。また現在
漁業無線に使われております
機械は、それぞれ能力がございまして、ある
範囲しか
電波が出ない。こういうことにな
つておりますので、その
範囲の中から、新しい三十七波を探し出さなければならぬわけであります。言葉をかえますと、今まで十間の幅のところに十七人並んでお
つたのを、その中に三十七人いかに配置するかということになるわけであります。その間隔等を適宜に配置するためには、どうしても全部の方が一応席を立
つて並びかえていただけなければならぬ、こういう結果にな
つたのでございます。また国際間に新たに
日本だけが相当な数の
電波をとるためには、たとえて申し上げますと、東亜においては朝鮮から中国、フイリピン、インドネシヤ、それからアメリカ合衆国、そういう方面との関連も十二分に考えて行われなければならないのは当然でありまして、そういう観点から
電波を二倍半に増加するために全面的に一応
電波の切りかえを行わなければならないということに相
なつたわけであります。以前には、こういう
電波の増加等に伴
つて電波の切りかえをいたします場合には、特に政府が
補償するという
制度はございませんでした。しかし二年前の
電波法が新たに制定されましたときに、政府が
免許人の意思に反して
電波の切りかえ、電力の切下げ等のことを行
つた場合には、それによ
つて生ずる通常の
損失を
補償しなければならない、こういう規定があるのであります。今回の全面的な切りかえ、しかも
電波の数が増して、従来よりも
電波の効用が増加して行くという場合にも、はたしてこの
損失補償の問題がまつ正面から適用できるかということにも多少の議論はあ
つたのでありますけれ
ども、私
どもといたしましては、法の許す限り
補償ということはしてあげよう、すべきではないか、こういう観点からただいま大蔵当局といろいろこの
補償の問題につきまして
交渉し、計数の整理等を行
つておるのでございます。先ほど来いろいろ
お話がございましたけれ
ども、今回の処置は高い性能の
機械を新たに要求するとか、あるいは高能率のものにかえていただくように要請するということではなしに、ただ今までAという
電波を使
つてお
つたのをBに切りかえていただく、こういうことだけであります。しかも私
どもといたしましては、毎年定期的に全部の
漁船の
機器にわた
つて検査をいたしておりますから、私
どもといたしましては、個々にどの船がどんな機能の
機械を積んでおるか、あるいはその
機械は何年ぐらい年数のた
つたものであるか、すべての記録を保持してございます。そういう記録から一々丹念に
検査いたしまして、可能である限り現在の
機械を
改造するようなことをせずに、
電波の切りかえだけを行えるようにという考え方で、今回の切りかえを行う計画を立てております。その結果から申し上げますと、三千数百のうち数十隻程度のものは現在持
つておる
機械の性能上からい
つて、あるいは
改造を必要とするのではないか。もしも四つなり五つなりの
電波を割当てることができるのを、
改造のために相当の
費用を要するから当分三つでがまんする。——たとえ三つでがまんされましても従来の
通信時間よりはずつとふえるのでございますが、ある程度そういう
措置をしていただければ、その
改造さえも私
どもはいらないと思
つております。先ほど
お話になりました九九%ということは、私
どもは実際の
調査から申しまして確信を持
つて申し上げたことでございまするし、また現在も申し上げ得る数字でございます。
お話のように
漁業無線、特に用いられております
機械は、相当條件が悪いもとで使われますから、ほかの
状態で使われる場合に比しますと、
機械の壽命が短いと存じます。
従つてこの際これをとりかえたいという御希望のあるところもあると存じられますけれ
ども、これは遺憾ながら
補償の対象になることはちよつとむずかしいのではないかと考えておるわけであります。先ほど来申し上げておりますように、現在持
つておられる
機械で出し得る能力の
範囲内での切りかえを行う、そのために必要な
経費を計算いたしまして個々にわた
つて調査の上で
補償をいたしたい、こういうふうに考えております。
なお御
参考に申し上げますと、昨年
北海道周辺におきまして、進駐軍との
関係でやむを得ず
電波の切りかえを行
つた例がございます。その際も各
免許人の方々の御要求に応じまして
補償をいたしておりますが、これは現在まで全部完結しております。
これで一応御
説明を終えまして、なお御質問に応じてお答え申し上げます。