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1952-06-04 第13回国会 衆議院 水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月四日(水曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 川村善八郎君    理事 小高 熹郎君 理事 田口長治郎君    理事 永田  節君       石原 圓吉君    川端 佳夫君       久野 忠治君    鈴木 善幸君       冨永格五郎君    二階堂 進君       平井 義一君    松田 鐵藏君       水野彦治郎君  出席政府委員         水産庁長官   塩見友之助君         海上保安庁長官 柳沢 米吉君         (海上保安官警         備救難部長)  松野 清秀君  委員外出席者         検     事         (法務検務局         経済課長)   高橋 勝好君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整第一課         長)      尾中  悟君         専  門  員 杉浦 保吉君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 五月三十一日  委員平井義一辞任につき、その補欠として庄  司一郎君が議長指名委員に選任された。 六月二日  委員龍野喜一郎辞任につき、その補欠として  今村長太郎君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員庄司一郎辞任につき、その補欠として平  井義一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  漁業取締に関する件  公海漁業に関する件  水産物の高度利用に関する件     —————————————
  2. 川村善八郎

    川村委員長 これより水産委員会を開きます。  漁業取締に関する件について調査を進めます。この際密漁取締りについて松田永田川端委員より発言を求められております。順次これを許します。本日説明員として法務検察局経済課長高橋勝好君、水産庁漁業調整第一課長尾中悟君が出席されております。松田君。
  3. 松田鐵藏

    松田委員 私は取締りの問題はあとにしまして、尾中課長質問いたしますが、第十二国会において私が委員長代理をして漁業取締りに対するまき網、小手繰といつた問題に関しての法案を審議するにあたり、まき網の問題は海区を三つにわけ、中型以上のものは農林大臣許可、その他の海区に対しては知事許可というのが原案であつたのであります。そこで当時川村委員よりこのことについて十分水産庁に対して意見を求められた。北海道において知事許可しているまき網はまことに僅少であり、しかも北海道においては内地から相当入会船が入つて来ている。しかも北海道漁民自営の船においてわずかに十五、六箇統か二十箇統より操業しないのに、内地府県から入つて来る、そのうち最も強大な資本を持ち、しかも一万トン以上の母船をも持つて来てやつているのが大洋漁業である。かようなことで、漁価維持対策の問題から論ずるならば非常にいいことであるが、北海道の海区に対してああした大きな資本を持つてどんどんやつて来られては、とうてい北海道漁業が成り立たない、そこで地方々々の実情をよく考えて、北海道自営する漁業者があるならば、それに対して相当数増わくを認めることを要望したのに対して、当時水産庁としては、北海道実情はその通りであるから、将来自営船において行わんとするものであつたならば、相当増わくを認める用意があるということをはつきり説明されておつたのであります。さて今回北海道からそれに対する要望があつたのに対して、尾中課長はこれを拒否したという話を聞いておるのでありますが、水産庁でさようにお答えになつておるのにかかわらず、どういう理由で拒否したのであるか。この点を承りたいと存じます。
  4. 尾中悟

    尾中説明員 まき網の問題につきましては、本年三月省令を公布いたしまして、新しい調整方式に乗り出したわけでありますが、その考え方といたしましては、全国に現存しておりますまき網統数は大体過剰の状態にあるので、現有統数をもつて一応押えた上で、内部相互、海区相互間の調整をはかると同時に、今後のまき網漁業の基本的な対策を研究して参りたいというのが、その趣旨であつたわけであります。そこで統数の問題につきましては、一応現存の統数をもつてわくづけいたしまして、そのわく範囲内で都道府県知事許可を行うという制度をとつたわけでありまして、北海道におきましても、現在わくづけになつております統数は二十七箇統ということに相なつておるわけであります。石川等も同様の事情でございますが、従来まき網漁業が比較的発達していなかつたというような地帯におきましては、現有統数をもつてぎづけされてしまつてはどうにもならないというお話が当時からあつたのでありまして、その点に関しまして、われわれといたしましても今後十分実態調査いたしまして、現在全国的に見ますと一応過剰の状態になつておりますので、それを無制限にわくを広げるということはとうていできないのでございますが、特殊な地帯につきましては十分現地の御事情も伺いまして、全体の態勢がくずれないような範囲内においてその調整をはかつて参りたいと思つております。ただいまお話がありました北海道の問題につきましては、事務的に北海道庁の方といろいろ実態関係につきまして調査中でございまして、その調査を待つてわくの問題についてはどうするかというような点を十分検討して参りたいと思つております。
  5. 川村善八郎

    川村委員長 ただいま政府委員といたしまして海上保安庁長官柳沢米吉君、同じく警備救難部長松野清秀君、水産庁長官塩見友之助君が出席せられました。松田君。
  6. 松田鐵藏

    松田委員 水産庁の現在の考え方はよくわかりましたが、今日のようなさような現状をもつて将来のことを律されるような例があつたから、当時川村委員はつきりと、北海道に対しては増わくをするかしないのかということを質問されたのであります。北海道実情は、当時ただいまお話のあつたような内容になつてつたから、増わくをするということであつた。しかも百二十何統とか百五十統という許可北海道庁として出しておるが、現在やつておるものは、北海道漁民でわずかに二十七箇統である。ゆえに北海道庁が出した許可のその大半というものが、すべて利権化されておる。内地業者と共同の名前によつて利権化されておることがあるのではないか。これでは正しい漁民の営業というものは成り立たないというのが川村委員の当時の論法であつた。さようなことでは正しい水産行政というものはでき得ないから、自営をもつて正しくやる漁民があつたならば、それに対して許可を与える方針であるということをはつきり明言されておつた。しかるに今日、今や六月の半ば、七月の初旬からさば漁業がその最盛期に向わんとするときに、北海道庁から出して来ておるこの許可わくづけをも、全国的に満限になつておるから許可ができないと言う。それじや当時われわれがここに論議したことがくつがえされておるような状態になつておる。しかも水産庁は、北海道庁が出して、漁民はその幾分のてら銭かせぎをやつていることを認めておるのではありませんか。これが真の漁業行政であるか、または水産庁利権化することをむしろ奨励しておるのではないか。私は塩見長官はさような長官とは思つていない。最も正しい長官だとわれわれは考えておる。それに現実の問題は、利権化を認めておる。これが自由党政策としたならば、自由党政策などというものはとんでもない政策である。われわれは自由党所属代議士であつて、さような考え方を持つていないのであります。正しい漁民をどこまでも育成強化して行くのが自由党政策だと思うし、また当委員会においてもそれが論議されたのである。今北海道庁からわくづけを要求されているのに、それを拒否する理由がどこにあるか。ただあなた方は前に、日本全国現有許可統が満限に達しておるからという言葉は前にも聞いたのであるが、それをそうじやない、これから許可をする方針だ、かように答えられておつた課長もかわつたし、長官もかわられたのだから、そんなことは知らないと言われれば、速記を見て、それによつて——水産庁行政の面というものは、その当時から一貫しておるものだと私は考えておるのでありますが、この点に対して尾中課長でなく、長官からはつきりまた御答弁を承りたいと思います。
  7. 塩見友之助

    塩見政府委員 御趣旨はよくわかりました。私らもそういう方針でやりたいとは思つておりますけれども利権化したものというのは北海道庁許可当時につくられておるもので、これは方向といたしましては、今御質問のありましたようにできるだけ早くそういうものは整理して行くのが方針である、こう思つております。いろいろ事情があると思いますので、北海道庁の方とよく協議して、そうしてやつて参りたいと思つております。  それから全体としての満限の問題については、やはり今御質問のあつた通りの問題で、ことにさばのようなまき網については、資源的には必ずしも濫獲という段階には行つてないだろうというのが技術者の大体の意見でありまして、問題はやはり同じ漁法で、同じ漁場で、それで隻数だけふやすというふうなことが、共倒れになる危険があるというふうな点が一番重点であろうかと思うので、底びきとは状態がちよつと違うのではないか、こう考えられますけれども、そういうふうな点について、やはり経営的に見て、共倒れというような点もある程度考慮して行かなければならない。現在の漁民状態、魚価の状態、それから技術段階から見ますればそう考えられまするので、そういう点については、できるだけ早く間に合うように、北海道庁の方と協議をして進めて参りたいと考えております。
  8. 松田鐵藏

    松田委員 そこで私は長官の御趣旨はよくわかる。それはこういうことだと私が解釈してさしつかえありませんか。要するに北海道の旋網の漁業というものは発達していないのだ、ゆえにやむを得ざる事情によつて、今日内地からの船と北海道漁民許可をとつたものとが協力してやつておるので、今ただちに利権化しておるようなことを摘発もできないだろうし、またそれの調整というものもこれからよく考えなければならない問題である。しかしまき網漁業というものは、全国をずつと歩いて初めて一年中の操業ができるのであつて、要するに全国沿岸隻数というものは満限になつておるから、また新たに統数をふやすというようなことであればいけない、また漁業経営ということから見まして、新しく船をつくつてそういう許可をするということは、ただいまの議論からしてもいけない。但し正しい漁民が自己の船を持つてつて、別の漁業をやつておる。しかしそのときは閑散期であるから、その間二箇月なり三箇月なりというものを、ほんとうに北海道漁民として経営をして行きたいのである。かようなものに対しては、北海道庁協議の上に適当な方法を講じてやるという御趣旨のように了承してさしつかえありませんか。この点を伺いたい。
  9. 塩見友之助

    塩見政府委員 現在のところは、そういう今おつしやつたような部分については、最も優先的に考えるべきではないか、こう考えておりますけれども北海道庁意見もよく聞いてきめたい、こう思つております。
  10. 川村善八郎

  11. 永田節

    永田委員 最近瀬戸内海におきましては、取締り民主化というものに便乗いたしまして、証拠不十分ということに味をしめて、一部の業者が、極端にダイナマイトを使用して、密漁の兆候が特に顕著になつてつておるのであります。これに対しまして、水産庁瀬戸内海漁業調整事務局、また瀬戸内海のそれぞれ管区の保安庁、検察庁にも、特段の御配慮と御努力を煩わしておるのでありまするが、今日なお悪辣な、むしろ残忍な密漁が、しかも白日のもとに堂々と横行しておる現実であります。これらの事実をわれわれ水産常任委員といたしまして、各地からの報告を受けまして、すみやかにこれを根絶しなければ、わが国の漁業制度の改革も、いかにりつぱな法律をつくりましても、およそこれは死文にひとしきものになるおそれある、かように考えるのであります。本日特に法務検務局経済課長高橋勝好君をお招きして、お伺いしたいと思いますことは、本年三月二十一日未明、広島県豊田郡豊浜村漁民によつて取押えられたダイナマイト密漁船焼打ち事件について、爾後の御報告をまず受けたいと思うのであります。
  12. 高橋勝好

    高橋説明員 ただいま永田委員の御質問の事項にお答え申し上げます。検察庁並びに法務府といたしましては、ただいま永田委員の御指摘の御懸念は非常にもつともなことと考えております。終戦後爆薬等を使う密漁事件が、全国的にだんだんと広まつてきて、中にははなはだ悪質と思われるものもございましたので、この事態を憂慮いたしました私どもは、昨年の五月三十日法務府主宰で広島高等検察庁に、瀬戸内海沿岸関係検察庁検事高等検察庁検事、並びに海上保安庁、それから国警、各府県水産庁取締り関係責任者、これらの方々に全部集まつていただきまして、密漁特にその方法の、どういうものを使い、またどのようなことを行つておるか、爆薬などはどこから手に入れるのか、またこれの取締りにつきましてはどういう方法取締り関係取締官としてはどのような連絡を講ずべきか、こういうようなことにつきまして、克明に検討、協議いたしたのであります。そうして同年の六月十五日法務総裁から、並びに同じ日付で検事総長から、それぞれ管下の検察庁に対しまして、凶悪密漁事件等処理並びに報告について、もう一つ最高検からは、爆薬使用等の悪質な漁業法等違反事件処理要綱、この二つ通牒を発しまして、これに関する検察庁処理態度根本方針というものを決定しておるのであります。この根本方針は、今永田委員指摘通り見地に立ちまして、厳重に処罰しなければならぬということであります。  この根本処理方針に基きまして、昨年度の漁業法遠反事件、これは単に爆薬使用に限りませんが、事件の計数を見てみますと、検察庁で受理しました事件は千四百十二件、起訴いたしましたものが六百二十七件、不起訴が二百九十四件、未済が三十七件、すなわち起訴率が六八・二%となつております。御承知のように、一般刑事事件起訴率は大体二〇%ないし二三%になつておりますが、この漁業法違反事件につきましては、今申しましたように六八・二%という非常に高率を示しておりますのは、先ほど申し上げましたような検察庁のこの事件処理に関する根本態度が現われておるものとお考え願いたいと思います。この傾向は今年の一月、二月、三月、四月におきましても同じであります。たとえば今年一月に受理しました事件は八十七件、このうち起訴が三十七件、不起訴が十三件、起訴率が六七・五%、二月は受理しましたのが九十三件、起訴しましたのが三十五件、不起訴が二十二件、起訴率が六一・四%、三月は受理件数が百二十件、起訴しましたのが三十六件、不起訴が二十三件、起訴率が六一%、四月は受理しましたものが百三十四件、起訴が四十一件、不起訴が三十九件、起訴率が五一%、こうなつております。大体先ほど申し上げましたように、根本の線が守られておると思うのであります。こうして検察庁といたしましては、この事件につきましては、できるだけ厳正な態度をもつて有効適切な処理方針をとつておるのであります。  次にただいま御指摘の、今年三月二十一日未明広島県で起りました密漁事件、これは取締りのある意味の弱点をついた事件でもあるし、また関係沿岸漁民の感情その他いろいろの点を現わした非常に重要な事件と考えられております。この事件につきましては、検察庁国警あるいは海上保安庁と緊密な連絡のもとに捜査をいたしまして、密漁に従事いたしました五人の者につきましては、今年の四月十一日公判を請求しております。まだ身柄は拘束してあると思います。公判は行われておりません。この起訴事実は二つからなつております。第一は、この関係者五人が本来の三月八日ごろ、広島県安芸郡倉橋島村字横島付近海上ダイナマイト使つて密漁行つておる。三月十三日にも同じように密漁行つておる。それから四月二十日本件の焼打ち事件動機となりました密漁。第二の点は、取締船に追いかけられて、自分たちの逮捕を免れるために、爆薬を使用して取締船に大きな損害を与えた事件でございます。この事実につきましては、御承知通り、単に漁業法違反となりますと、法定刑も三年以下の懲役または二十万円以下の罰金となりまして、あまり重いものではないのでありますが、これは火薬取締法違反あるいは爆発物取締罰則違反、これがありますし、その上人の乗つておる船に対して爆薬を投げつける。すなわちその船を破壊し、場合によると人命をそこなう、そういうことを承知の上で投げつけておるのでありますから、この点は見のがしがたいということから、検事としましては、漁業法違反、それから火薬取締法違反、刑法百十七条の船舶破壊罪、それからさらに爆発物取締罰則違反、この四つの罪名で起訴をしております。漁業法違反火薬取締法違反法定刑は先ほど申し上げたように、それほどのものではございませんが、船舶破壊罪になりますと、やはり百十七条になつて、「死刑ハ無期クハ五年以上」と非常に重い刑になつております。さらに爆発物取締罰則第一条も、これよりも重く、「死刑ハ無期クハ七年以上の懲役ハ禁錮」となつておりますが、これらの法規を適用して起訴せざるを得なかつた事情を御了承願いたいと思います。
  13. 永田節

    永田委員 ただいまの御説明によりまして、大体その全貌がはつきりして参つて来たのでございまするが、事件は幸いにして検察庁の御処置にかかるもので、あげて検察庁の御処分に対して全面的に信頼しておるものでありまするが、私どもは本日この委員会において、これを動機といたしまして研究してみたいと思いまするのは、この瀬戸内海に一般的でございまするが、爆薬物がどうして漁民の手に入るか、この径路捜査する必要があるのではないかと思われるのでございます。私の調査によりますと、江田島、能美島、倉橋島付近一帯がいわゆる元の火薬庫であつて相当多数の火薬がこれらの島々の海底に沈められておる。その場所についてもこの付近漁民がよく状況を知つておるということ、またこの火薬引揚げの認可が所管海上保安部からサルベージ会社に与えられて、さらにこのサルベージ会社地方漁民に下請をさせる、こういう状態だと考えられるのでありまするが、そこに現物漁師に入るルートが発見されると思うのであります。この現物漁師に入る、ここを何とかひとつ取締方法はないものか、かように考えるのであります。あくまでも犯罪未然に防がなければなりませんし、一方また漁民職業的競争意識によりまして、他の船が漁をすれば、自分の船もしたいということになりまして、往々手段を選ばないということがかようなことになつたと思うのでありまするが、この現物陸上捜査に当りましては、少くとも海上取締りよりも、注意をすれば案外簡単に成果があげられるのじやないか、かように考えられるのであります。たとえば、聞くところによりますと、火薬を扱う漁師の指先が黄色い、また船も自然黄色くなつておるというふうなことで、一見してわかるそうであります。しからばさような船等を根拠といたしまして、陸上捜査をするというふうな場合に、一体この捜査の任に当るのはどこの所管になるのでございましようか。
  14. 高橋勝好

    高橋説明員 ただいま永田委員の御指摘の、犯罪未然に防ぐために爆薬入手径路の元を押える、この点はまつたく同感でございます。私たちもその点につきましては極力努力しておるつもりであります。試みに先ほど申し上げました法務総裁通牒の一部を読んでみますと、こういうふうになつております。「最近瀬戸内海をはじめとし全国各地沿岸において、ダイナマイトその他の爆薬を用いて禁止漁業を敢てし、また機船底曳網禁止地域において禁止漁具を用いて密漁を行い、一面沿岸漁業施設を破壊し魚族保存に甚大なる脅威を与えるとともに、他面沿岸漁民の生活を脅かし、屡々これと紛擾を惹起し地方の安寧を棄し、静ひつを害しているばかりでなく、その取締に従事し又はこれを援助する者並びにその乗船に対してダイナマイト等を投付け、或は体当りを敢行して逆襲の挙に出でる等の兇悪事犯の頻発を見ている。これはただに水産資源保護見地から軽視するを許されないばかりでなく、当該爆薬等入手手段としてダイナマイト類の窃盗、海没弾薬類不正引揚事犯等を誘発し、国内治安の確保に重大な支障をもたらしつつあると考えられる。仍つてこの種事犯取締を厳にし、これが処理に当つて厳罰方針をもつて臨み、漁業法偉反、火薬取締法違反放火罪傷害罪」云々を総合的に駆使し、一罰百戒よく事犯の防止に効果あらしめるよう格段の努力を注がれたいというようになつております。ここにあります通り爆薬入手につきましては、それの流れる元につきまして克明に捜査するように指示しております。あるいは鉱山から盗まれて来るものもございますし、または銃砲火薬等の倉庫から盗まれるものもあります。大体密漁に使われております多くのものは、海没砲弾火薬類を抜きとつたものが多いようであります。これらの捜査はやはり陸上におきましては、警察を第一線といたしますところの警察並びに検察庁、また海上では海上保安庁その他それぞれの取締り関係官がその責任に当るものと考えております。
  15. 永田節

    永田委員 違反事件はすこぶる多いのでありまして、この時間ではとうてい終らないと思うのでありまするが、大体この三月二十一日のダイナマイト使用密漁船の焼打ち事件というものも、その前々からの問題というものは、大体本年一月上旬から三月中ごろまでにおいて、ダイナマイト密漁というものが行われており、最も盛大に行われておるという情報が入つておるのでありまするが、しかもそれが戦後毎年わずかにダイナマイト使用が一、二回程度のものであつたのが、最近では三箇月の間に実に四十三回という記録を示しておるのでございます。密漁船の根拠地というものは三鷹にあるやに聞いておりますが、大体県下で九隻程度で、一隻に約四、五名が乗り込んで一発で約五十貫、主としてたいとかすずきなどがとれておるようでございますが、かようなものが漁獲されておる。しかもその爆薬によつて収獲できる漁獲というものはその半分ぐらいしかない。あとの半分は海底に沈んでしまう、こういうような状態と承つておるのでありますが、その魚も三原であるとか、あるいは呉方面に特殊な市場を設けて販売をしておるというふうな情報も入つております。火薬はそのまま使用するものもあるが、別に無人島などに持ち上げて、あるいは詰めかえて使用するというふうな大規模な計画がこのごろは行われておるというふうな情報も入つておるのであります。大体月夜に多いのが、最近はその区別なく、その時を選ばない、かような状態のように情報も入つておるのであります。私の考えといたしましては、先ほど何か検察庁では昨年の五、六月ごろ各検事団海上保安庁国警水産庁、これらの方々がお集まりになつて協議をなされたというふうに承つて、まことにけつこうなことだと考えておるのでありますが、もう少し進歩した、いわゆる総合取締りということを考えてみたいと考えるのであります。その方法といたしましては、まず取締り協議会というものを組織いたしまして、もちろんこれには検察庁海上保安庁水産庁、県庁それから水産業者、この五者くらいが集まつて、定時に密漁取締総合協議会というものを至急に御編成を願つたならば、その効果があるいはすみやかに現われて来るのではないか、かように考えるのでございます。これにつきまして各庁のそれぞれの御意見を承りたい。  もう一点は、今月の爆薬を使用する密漁過渡期におきましては、現在のような装備ではとうてい取締りは不可能であろう、かように考えられます。のみならず、むしろ業者のいたずらなる挑発によりまして、ダイナマイト密漁がますます蔓延して参るのではないかという徴候すらうかがわれて参つておるのであります。そこで海上保安庁の予算の問題も伴いますが、それは一応別にいたしまして、海上保安庁といたしましてもいま少しく人員を増加する。船の速力も、少くとも密漁船の速力には追いつくような速力を出せる船をお持ちになる。そのほか設備だとか、装備もいま少しく取締りにふさわしい方法に改めること、特に保安官の火器の使用の制限もいま少しく解放する必要があるのではないか。でき得べくんばライフル銃くらい持たないと、密漁船側は手榴弾を投げて来る。ピストルではとうてい間に合わない。そのピストルも使用が制限されるということにおいては、とうてい取締り責任にたえるということはもちろん望めないことでありますし、また海上保安庁の保安官の身になつて考えても、さような危険の区域に危険を冒してまで、はたして取締りの任を全うすることができるかということも疑わしい問題でございます。そこでさしずめ海上保安庁にその予算がない、あるいはその装備が間に合わないということになりますならば、この保安庁の船に、専門的な警察予備隊というような機関に協力を願い、御同船を願つて、すみやかにこの憎むべき残虐なる密漁取締りを解決するという方法ができないものでございましようか、海上保安庁並びに検察庁にお伺いする次第であります。
  16. 高橋勝好

    高橋説明員 凶悪な密漁取締りのために、取締り協議会取締り関係各庁でもつて持つということは、非常にけつこうなことと考えております。この点につきましては、私たち取締りは総合的になさなければ効果はあがらないということに着眼いたしまして、実は二十七年度の予算編成にあたりましてこの費用を請求したのでありますが、遺憾ながら削られてしまつたわけでございます。私たちといたしましては、全面的に御趣旨には賛成でございますので、なおそういう協議会を持ち得るように努力したいと考えております。
  17. 柳沢米吉

    柳沢(米)政府委員 お尋ねの協議会の点につきましては、ただいま検察庁からお話がありました通り、われわれも同意見でありまして、今までもこの点については相当協議をして参つたのでありますが、なおこれから十分御趣旨を体しまして努めて行きたいと思います。  なお海上保安庁の巡視船の速力及び装備の問題でございますが、悪質な密漁事件につきましては、海上保安庁といたしましても各方面と連絡して、最も悪質なるものに対する対策には十分留意はしておるのでございます。詳しくお話がございましたが、爆薬の元につきましても、陸においてソースを求める場合と、お話通り海底にあるものについての物資を利用した場合とがあると思うのであります。海底における各種の危険物の引揚げにつきまして許可制をとつておるということもお話通りで、これらにつきまして、この許可した人々が信頼が置けるかどうかという点につきましても十分に調査をいたしておるわけであります。なおこの業者につきましても、専門の者たちが必要数入つておらなければ許可しないというふうな取扱いをしておりまして、危険物の種類あるいはその量——この火薬を抜きその他をいたした場合の数量の検査というようなことにつきましても、詳細な報告をさせておる状態でございます。しかしながら海の中に非常に少量のものが散在している場合、こういう少量のものがひそかに海底から引揚げられるということが起り得るわけであります。大量のものにつきましては、業者といたしましても採算が成り立ちますから、従つて許可を受けて引揚げをやるということに相なる。しかし非常に少量のものが散在しておるというような場合に、そのようなことが起るということに相なつております。これらに対しましては、お話通り船にも色がつき、あるいは手にも色がつく、こういうことによつて発見も相当可能なものと考えます。この点につきましては検察庁国警等におきまして十分承知しておることで、これらについて捜査を進めておる状態であります。なお爆薬でとりました魚につきましては、御承知通りに魚のとれたあとの形等で一見してわかる状態に相なつておるわけであります。かくのごとく、これが捜査をし、発見をしようと思えばできるということには理論的になつております。従いましてこれらの点を十分注意いたしまして、これがソースを探しておる状態でございます。  これに対しまして、海上保安庁といたしまして、速力あるいは装備をどういうふうにするかというお話でございますが、御承知通り段階におきましては、海上保安庁の船舶の速力というものは、海上保安庁法の改正以前におきまして、十五ノットに制限されておつたわけであります。今後におきましては、この速力制限等は、今回の改正をもちまして撤廃されるということになりますし、また今まで制限されました隻数、トン数等につきましての制限も撤廃されることに相なつておるわけでありまして、国会の御承認を得て、予算さえありますればこれから制限が撤廃されますので、ある程度のことはできる、かように考えております。現在ありますところの船舶につきましても、十五ノットと申しますと相当の速力でございまして、新造船につきましては、ある程度の威力を持つておると考えておるのであります。しかしながら現在におきましては、まだ戦前の古い船がある程度つておりますので、これらの船をやむなく使用しておる状態でございますが、これらの船につきましては、御指摘のような点があると考えられる次第であります。今後におきましては、先ほど申し上げました通り、速力その他につきまして十分留意をして行きたいというふうに考えておるわけでございます。  なお装備の点でございますが、装備の点につきましては、現在われわれの方としましては、お話通り凶悪なる密漁事件につきまして、前線におきまして活躍しておる保安官が非常なる苦労をしておるわけでありますが、これに対しまして、われわれとしましては、でき得るならば本年度中におきまして、これについてある種の装備をいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  18. 永田節

    永田委員 そこで水産庁にお伺いします。取締網を厳重にするということは、この種の違反を終熄せしめるということになるのでありますが、ついては、力強い海上保安庁長官の御説明もありましたので、ややその前途が明るくなつたような感じがして参つたのであります。海上保安庁の予算の獲得につきましては、同じくやはり水産庁も半ばこれに協力して、その線に沿うべく御努力を願わなければならないと思うのでありますが、これに対する態度を承りたい。  それから漁業取締りと申しておりまするけれども、今日ではこの火薬が一日も早く解決しなければ、やむを得ず実力取締り以外にないのであります。それに関しまして、ひとつ私は水産庁に聞きたいことは、検察庁の司法処分では、若干軽いのではないかというふうに考えられるのであります。ほんの一つの例をあげますと、愛媛の八幡浜、第二大祐丸船長久保末吉、当二十六年、それから香川県三豊郡の伊吹村、第一大祐丸船長久保利雄、当三十四年、これは違反者です。違反船の方は第一大祐丸四十四トン九十六、八幡浜市。第二大祐丸四十四トン九十三、同じく八幡浜市。違反船の船主は愛媛県の八幡浜市大黒町四丁目久保政一、満三十六年。これらは何ら法定の除外事由がないのに、昭和二十六年二月二日、機船底びき網漁業の禁止区域である大分県水ノ子燈台北方三海里の海区において不当漁業をなしたるものである。その処分の概要は、昭和二十六年二月二十二日大分地方検察庁へ送致、昭和二十六年九月十四日、各罰金一万円。こういうことになつておるのでありまするが、これは水揚げが最低五万ないしは五十万あると思うのであります。それに対してわずかに一万の罰金ということになれば、あらかじめ一万円用意して密漁をやつた方が楽じやないか、かように考えられるし、さような緩漫な御処置がかえつて今日の原因をなしておる、かように考えられるのであります。しかしこれも一方三権分立の今日、われわれはいたずらに容喙するものではございませんが、これに対しまして水産庁は、あるいは行政処分を併科して、停船命令を出すくらいなことはできるのではないかと考えられるのでありますが、これに対してお答えを求めたい。  それから爆薬を使用して漁獲した魚の販売を取消すというような方法をお考えになつてもらいたい。ついては県の条令を改めさせて、爆薬によるところの魚を一切各魚市場で、いかなる方法でも販売させないということもあわせて考えてしかるべきじやないかと思うのでありますが、長官のお考えを承りたいのであります。
  19. 塩見友之助

    塩見政府委員 関係各省の協力によつて行わなければならないわけですが、この問題については水産庁の方も非常にその取締りの能力等が、予算関係等に制約されて十分ではございません。こつちも強化しなければならないと思いますけれども、もちろん海上保安庁等とも、そういう点についての力の入れ方は、ともどもにやつて行く仕事ですから、われわれの方として協力はいたして参りたい、こう考えております。  また処罰の点につきましては、今具体的にお出しになつた案件につきましては、今資料を持つておりませんので、帰つて調べてみなければわかりませんけれども水産庁としましてはもちろん、たとえば底びき網ならば底びき網として、またその他の漁法についても、あるいは許可船に対しあるいは無許可船に対して碇泊命令というふうな処分権は持つておるわけでございまして、それには一定の基準をつくつてつております。底びき網の場合には、底びき網の禁止区域偉反とかあるいは期間の違反とか、そういうものについて考えておつて、そういう爆発物を使つた場合の基準というふうなものを今つけていないかもしれませんけれども、そういう点については十分考える必要があると思います。具体的な事例については調べないとわかりませんが、私の方としましては十分御意見に沿うように、行政処分を併科してしかるべきだと考えております。  なおまたその漁獲物の販売処理制限の問題でございますが、これはなかなかそれが違反のものであるかどうかという認定においてむずかしい問題はあるわけで、その点については過去から取締り上いろいろ問題があるわけですが、今問題になつておりますところの爆発物を使つたような場合には、ある程度そういうような認定が可能かとも思われますし、そういう点については十分研究して参りたいと考えております。
  20. 永田節

    永田委員 最後にお伺いいたしますが、検察庁当局並びに海上保安庁それから水産庁の横の連絡がなければ、司法処分と行政処分の併科ができないことになるのでありますが、これはこの三者がお互いに通報し合うということが、この一事のみを中心にして考えられないものでありましようか。この点を伺いたいと思います。
  21. 柳沢米吉

    柳沢(米)政府委員 この点につきましては、まず取締りの方面から考えて、御趣旨のような効果をあげるによい方法といたしましては、やはり検察庁が中心になりまして、先ほど御提案になりました協議会というようなものを通じまして、一番起りやすい現地の広島あるいは四国方面というような箇所におきまして、出先機関で相当具体的な打合せをするということが、最も適当な方法ではないかと考えております。これにつきましては三者寄りまして、早急に具体策を練りたいと考えます。
  22. 永田節

    永田委員 そこで法務府の高橋さんにお伺いいたしますが、これは一応検察庁がイニシアチーヴをとりまして、私どもが提案いたしたところの総合的取締り協議会みたいな機関をつくつていただきたいと思いますので、近々にひとつこの問題を至急におとりはからい願いたいと思うのでありますが、いかがでありましようか。
  23. 高橋勝好

    高橋説明員 帰りましてよく上司とも相談いたしまして、できるだけ早くこれが実現するよう努力いたしたいと考えます。
  24. 川端佳夫

    川端委員 ただいま永田委員から、瀬戸内海ダイナマイト密漁の問題を中心にいたしまして、取締り実情についていろいろただされたわけであります。私どもも前から関係当局にその取締りの問題について強く要請をいたしておつたわけでありますが、最近の事情を現地に聞きますと、その後一向に特段の変化も見ておらない、要するに従前と同じような状態である、こういうことを言われるのであります。そこでこういう現地の情報に基きまして、再び御意向をただしたいと思うのでありますが、先ほど検察当局のお話により、事犯としての処置は非常に厳粛にやつておられる事情を承つたわけでありますが、この密漁の予防の問題について、水産庁を中心にいたしまして取締り当局の具体的な方法を伺つてみたい。私は先ほどからの質疑応答を伺つておりまして、水産庁当局が実際に瀬戸内海の事務局等を通じて、あの深刻な事情長官自身がつぶさに聞いておられるのかどうかという疑いさえも持つのでありますが、瀬戸内海密漁事情は、事務局等を通じて刻々水産庁長官報告がございますかどうか、まずこの点から伺つてみたいと思うのであります。
  25. 塩見友之助

    塩見政府委員 瀬戸内海漁業調整事務局を通じてのものもございます。それ以外に直接的なお話も聞いております。
  26. 川端佳夫

    川端委員 それでは次にこの対策強化の方法について、現在水産庁はどういうふうな具体的な方法をおとりになつておられますか、あわせて保安庁の対策についても伺いたいと思います。
  27. 塩見友之助

    塩見政府委員 その点については、水産庁の方の取締船を重点的にそういう方面に向けるということももちろんやつておりまするが、やはり隻数その他のものが不十分なので、海上保安庁及び検察当局と十分な連絡をとりながら、具体的な事犯のある都度連絡はやつております。しかしながら予防という点につきましては、先ほどから永田委員からいろいろとつつ込んだ御質疑がありましたけれども、これは陸上関係とまた海に沈めてあるところの火薬のようなもののソースを押えることは、水産庁のみでは十分な手配をいたしかねるので、こういう点は、先ほどから御質問があつた通りに、関係の官庁と十分な緊密な連絡をとつてやる必要があると思います。その十分な緊密な連絡をとつてやるという点については、まだ十分ではないというところがあるので、その点について努力する余地は十分残つておると考えております。そのことについては先ほど御質問があつた通りですが、私の方も極力そういう方法で、さらに強化して参りたいと考えております。
  28. 柳沢米吉

    柳沢(米)政府委員 海上保安庁といたしましては、この密漁事件に関しまして、二十六年度中において、私どもが検挙いたしました全国の違反漁業は二千四百五十件に上つております。そのうち約半分は瀬戸内に起つておりまして、大体千件以上は昨年度検挙しております。一日に約三件というものが毎日検挙されている状態でございます。この状態から勘案いたしまして、昨年末におきましては、九州及び西部の瀬戸内方面に船舶二隻を増強いたしました。なお大分方面に巡視船を一隻本年四月に配置いたしております。また近く松山方面に巡視船一隻を配置いたしたいと考えております。
  29. 川端佳夫

    川端委員 私が水産庁に伺いたいのは、心構えはよくわかつておりますが、水産庁取締船がどういうふうに活躍いたしているのか、現地でははつきりとわからないということですが、私はあそこに取締船があることは知つております。新造船ができたことも知つております。この活躍の事情が地元の漁民はつきりとわからないようなお話を伺うから、私は長官にただしたのであります。だからあえてこの答弁を私は必要といたしませんが、こういう話もあるのでありまするから、この点についてはよく長官のおさしずを得たいと思うのであります。  なお、広島方面を中心にしてダイナマイトが流れておる形跡は、瀬戸内海漁民はよく知つておるわけであります。この危険物の出所をもう少し探究をいたしてもらいたいことは、先ほど永田委員からつぶさにお話があつた通りであります。この点について私は関連して伺いたいのでありまするが、この危険物の取扱いは、保安庁が専門でなさつておるわけであります。現在この横流れをいたす爆薬の出所というものは、先ほど保安庁から御答弁があるかと思つたのにありませんでしたが、ある程度形がわかつておるのじやないか。私たちはかねて海中に沈んでおりまするああいう危険物を、特殊な予算をもつて揚げるべきだ、そして一手にこれを取扱うべきだというような主張をいたして参つたのであります。そして私たちは、これは水産庁あるいは保安庁の両者の間でやつてもらわなければならぬとしう主張をいたして参つたのであります。特に危険物については、保安庁において扱うべき資格を持ち、責務を持つておるという立場から、もう少しこの実態をおつかみになつておるのじやないか、また保安庁がお取上げになつておられる実情は、どういうふうになつておるのかということを伺つてみたいと思うのであります。要するに、具体的にはどういうふうに爆薬物をお扱いになつておるか、今までどういうふうな所でお揚げになつたかというような点を、伺つてみたいと思います。
  30. 柳沢米吉

    柳沢(米)政府委員 御質問海底にある危険物の取扱いでございますが、これにつきましては、独立以前においては、海底にあります弾薬その他の危険物は連合軍の所有でございまして、日本政府のものでなかつたのでございます。従いましてこれらを引揚げます業者は、日本政府で許可いたしまするが、同時に司令部におきましても同様の審査を経て、二重の許可ということになつております。これによりまして先ほど申し上げました通り、資格ある技術者を持ち、信用のできる者に許可をするという行き方で、海底の危険物処理許可いたしておる。これらを揚げました場合に、解鉄の場所を指定しておる。この解鉄の場所に持つて来ないものは処分ができない。その解鉄の場所に持つて参りまして、解鉄工場で火薬とその他の部分とわけるのであります。わけたことによりまして、ここでその物資が解体され、弾薬、砲弾その他の形式を整えなくなつた場合に、初めて日本政府にこれが渡るというかつこうであります。独立した後におきましては、この所有は、日本政府のものに相なるわけでございます。そこで結局日本政府における一本の許可ということに相なつておるわけでございます。解鉄工場を取締るということによつて最終の取締りができるわけでありますが、この途中において横流しをするという点につきましては、海上保安庁といたしまして、揚げた物資の量と解鉄工場に持つて来ましたときの量と比較検討いたしまして、その間に横流れのないように処置しております。しかしながらこの間においていろいろなケースがあつたのでありまするが、いずれにいたしましても、われわれの手で相当厳格な取締りをしておるつもりでございます。先ほど永田委員に御説明申し上げました通り、一番危険なものは、少量に揚つたものでございます。この少量に揚つたものは二通りの貯蔵の仕方をしております。現在とつて使うという行き方と、すでにとつてしまつたもので貯蔵しているものを使うという二つの行き方があるわけであります。これに対しましてどういう実例があつたかというようなお話でございますが、先ほどお話に出ました三鷹等でわれわれの手で捜査いたしましたときには、一部落がほとんどそういうことをやつているという実例がございます。しかもその所においては、海底から引揚げる必要もないくらい相当爆薬を貯蔵しておつて、これを逐次使つておるというようなケースもございます。これらの捜査に関しましては、陸上、水上及び水産庁検察庁を中心として、そういう点を考慮して、協議会その他によつていろいろ手づるを探つて行けば、相当に効果が上るのではないかと考えている次第であります。
  31. 川端佳夫

    川端委員 水産庁も、保安庁や法務府と相互連絡をとつて、先ほど永田委員お話のように、協議会式のものを早急につくつて、この取締りの面に特段の力を注いでもらうということは、私たちも申し上げたい点であるわけであります。これを早急に実現していただきたいことを申し上げると同時に、あわせて水産庁に最後にお伺いをしたいのは、取締りの面で水産庁取締船もありますが、関係県あるいは組合等に取締船を持たす便宜を与える方法をお考えになることができるかということです。要するに瀬戸内海においては、底びき類似船等の整理をやつているわけであります。こういう船等を転用し、装備をして、これを組合あるいは県当局に持たせて、独自の立場からこれに取締りを行わす、こういうことを県あたりにおいては非常に要望をいたしておりますが、これについてのお考えを伺つておきたいと思います。
  32. 塩見友之助

    塩見政府委員 府県は、その取締船を過去においても持つておりましたし、もちろん現在も持つているわけであります。要点は、やはりその府県取締船の強化だろうと思いますけれども、これは一定の速力その他いりますので、現在の府県財政において十分を期待し得ない部分もあるかと思いますが、その点については、政府の方で助成ができるかという点について検討してみたいと思います。また組合の方の問題は、これはいろいろ問題があります。実効は非常に上るのでありますが、各地で終戦後に実際起りました事態は、組合ですと権限がないので、往往にしてほんとうの被害者でありますので、非常に強く反感を持つております。そのために違反船を焼いてしまうとか、漁獲物をとつてしまうとか、法律上からいうと、むしろ違反船から逆に訴えられるような事件をあちらこちらに引起しました。そういう点については、現行犯はもちろん押えられるわけですけれども、それ以上に取締りという権限を持たすことについては、弊害の方も相当生ずるような状態でありますので、今のところはまだ考えておらぬのであります。
  33. 松田鐵藏

    松田委員 大綱については、今まで永田委員からいろいろと御注文、御質問がありまして、当局の御意向もわかつたのでありますが、最も大切な問題が一つあるのであります。それは私どもこの問題の陳情を受けたときにおいて、実地をも調査に参つたのでありますが、神戸の海上保安本部に行つて実情をよくお聞きしますと、最も重大な問題は、政治的にとやかくされることが一番困るという話であつた。もつとも話である。違反を押えても、政治的にこれがとやかくされるのでは、取締りの上において最も困るという話であつた。この点が重大な問題であろうと私は考えて参つたのであります。これではせつかく努力して、違反を防止しようとしてやつておる海上保安庁の御苦心も水のあわになつてしまう。かようなことがありとしたならば、非常に困るのでありますから、どうか水産庁長官においては、この点十分に御考慮に入れていただきたい。また検察庁においても御考慮に入れていただきたい。私ども行つて聞いた実情というものはひどい。もはやダイナマイトではない、爆雷とひとしきドラム・カンに入れて、追つて来る船にそれを流してやるとか、また海上保安庁の役人を離島にふつとばしてやるとか、まつたく日本人として考えられないようなことをやつておることを聞くのであります。その最もひどいのは川端君の選挙区である八幡浜であつて、これらも川端君が十分水産委員会で発言されたように、厳重に取締りをしなければ、とうてい所期の目的は達せられないのでありましてい政治的にこれが動かされることに対しての不安がないように、お願いいたしたい。
  34. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 取締りの問題で長時間を費したあとでありますが、御当局の御答弁はどうも核心にふれないように思うのであります。第一瀬戸内海なるものは、毛利氏の時代から海賊の巣である。伊勢湾もその通りであつて、われわれも先祖は海賊であつたかと思うておるのであります。そういう海賊の伝統的な血をもつて今日密漁をやつておる。そのものを普通の取締りでやつても効果は上らない。私はこの点には体験と意見を持つておる。われわれは三重県でありますが、すでに国の取締船も保安庁の船も信用ができない。それで今年快速優秀な取締船を建造して、四月に進水式を終えて活動しておるのであります。しかもその建造費の大部分を漁業証券によつて漁民が負担せなければならぬような状態になつておるのであります。また私の県の海にやつて来る密漁船が、密漁をやつておる時分には、取締船は影を見せない。密漁取締りの船は一年や半年ではわからぬが、二年目になると、どの漁業がどの沖合いで何月の何日ごろにやるということはわかるのであります。そうしたらそのころ厳重な取締りをしたならば、それで成果は上るのであります。しかるに、こわいのかあるいはなまけておるのか、実際に取締りをしなければならぬときにはその船がおらぬ。そういうことが非常に信望を失うのです。土地の漁民がみずから建造費の大部分を負担して、今、ころ優秀な快速船をつくるという状態であります。従つてこの取締りの効果をあげるには、利害関係ある土地の漁業協同組合の役職員を乗込ましめる——私の県でも小学校の生徒が手拭の先に石ころを旬んだり、竹やり、弓矢をつくつたりして、愛知県の密漁船と闘つたものであります。そのとき放火、殺人未遂というようなこともありまして、三十六人の漁師が三箇月未決であつたことがある。執行猶予で一人も実罪は科せられなかつたのでありますが、それはいかに密漁が深刻であるかということを語るのであります。いかに高級で優遇をいたしましても、今までの状態では効果は上るまい。どうしても利害関係の深いその土地々々の漁業者の代表を乗り込ませることが、私は最も必要であると思います。これは御研究の材料として申し上げておきます。  そこでお尋ねしたいのは、今回日、米、加漁業協定によりまして、西経百七十五度の線に日本とアメリカ、カナダとの漁業の境界ができたわけであります。この方面に今かに工船等が出漁せんとし、またさけ、ますの漁業者は出ておるが、これに対し保安庁及び政府は、どういう取締りをやらんとしておるのかという問題であります。公海漁業がだんだんと圧迫を受けますと、自然と資本漁業沿岸にやつて来まして、私の県のごときも、資本漁業のために定置漁業資本的に圧迫を受けておるのであります。この関係は非常に微妙なものがあります。この取締りを徹底すると同時に、公海の安全を期するための保護もやつてやらなければいかぬと、私は思うのであります。ただ取締るだけではいかぬのであつて漁業者がたとい資本漁業の船であろうと、漁業者の安全は保障してやらなければならぬ。支那海などにおいて拿捕された船の船員に対しては、その補償をしなければならぬというような法律も、今つくらなければならぬようなことになつておる。かように取締船、保安庁の任務は重大でありますが、今日まで一体どういう計画で、何馬力の速力の船を何ぞう建造せんとして、それが予算の関係でどれだけよりできないのかということを、われわれ水産常任委員に知らしめておくことは、保安庁が船をつくつて取締りを充実する予算の上に必要なのであります。でありますから、そういう点を明細に、早い目にわれわれにお知らせを願うように希望いたしておきます。この点についてはただいま御答弁は願えませんから、なるべく早い期間に種々の資料をお届けくださるように希望をいたしておきます。  次に公海漁業の問題に移ります。公海漁業の日、米、加の漁業協定は、御承知のように日、米、加の協定ができて、そうして不日批准の交換をされんとするのでありますが、来る六日に公海漁業に関して、外務委員会水産委員会との連合審査会をやることは、水産庁長官は御承知と思います。それにつきまして、われわれの知らんとするところがちつとも知れていない。たとえば台湾との漁業協定の経過、朝鮮との協定の経過、みなそれぞれお並べになつたように聞いておりますが、内容はわからないのであります。ことに最も心配することは、カナダ等に、百七十五度線の以内へ鯨をとりに来るな、とつてもらつたら困るというような意見があるということでありますが、こういう重大なことを、外務省に引きずられて、水産庁は煙幕の中へ入れて、われわれの耳に達しないような態度をとつておるのではないかということを心配するのであります。いつも言うことでありますが、外務省はいろいろの協定、条約を結ばぬならぬから、水産だけに強い主張はできにくい。そのために、まあまあということで水産庁が押えられておるおそれがある。現にこの間の輸出まぐろの税金の問題でも、まあ何とかなるからやかましく言わずにおいてくれという、外務省の意見水産庁の方に尊重されておるといううわさもあるのであります。こういうことは非常に漁民にとつては重大であります。そう秘密外交をやる必要はないので、あくまでも正々堂々と、ガラス張りの外交をやらなければならぬと思う。それに水産庁が引きずられて、外務省の煙幕のうちに入れられるというようなことがあればたいへんだと思うのであります。よつてそれらの点は、来る六日の公海漁業連合審査会の私の発言に必要な点が多くありますから、その心構え、またその経過につきまして、一応長官お話を十分承りたいのであります。  なおこの際委員長に要望をいたします。この海上取締りのことでも、対外的な公海漁業のことでも非常に重大でありまするが、どうもわが党以外の委員諸君の御出席が皆無か、あるいはあつてもごく少いようであります。これは全国挙党一致で解決をせぬならぬ問題でありまして、その出席が少いことはどういう経過でありましようか、承ることができればけつこうであると思うのであります。なお引続き質問がありますが、一応これで長官の御意見を承ります。
  35. 川村善八郎

    川村委員長 石原委員の先ほどの取締りの御発言に対して、海上保安庁長官より御答弁をされるという申出がありますから、まずこれを許します。  なお野党の委員諸君がこの重大な委員会に出席がないというお話でありますが、事務を通じて十分これを要望しております。しかしながら野党の委員諸君は、御承知通りいつでも水産委員会には出席が少いようであります。これは漁業に理解がないのか、あるいは関心がないのかわかりませんけれども、いつでも野党の委員は一人か二人でありまして、私も残念だと思つておりますから、今後野党の委員諸君にもぜひ御出席を願うように努力いたします。
  36. 柳沢米吉

    柳沢(米)政府委員 海上保安庁の今後の漁船の取締りないしは保護に関して、現有勢力及び将来の計画はどうかというお話であります。現在海上保安庁といたしましては、漁業法取締り方面に、あるいは海難救助に使用しております二百トン以上の船舶が九十二隻ございます。それからそれより少し小さい準巡視艇が二十九隻、港内艇が百七十六隻、合せて二百五隻はもつぱらその方向に使われておるわけであります。このほかに拿捕船その他の保護に関しましては、今回設置せられました海上警備隊におきまして千五百トン級船舶十隻、及び二百五十トン級船舶五十隻、合せて六十隻が増強されることになつておる次第であります。なお将来に対しましては、海上保安庁といたしましては、各般の取締りあるいは海上の航行安全に対しまして、百トン級以上の船舶百隻というものは最小限必要ではないかと考えております。これに対しまして今後進んで行きたいと考えておる次第であります。
  37. 塩見友之助

    塩見政府委員 北洋の捕鯨の問題につきましては、現在ロンドンで行われております国際捕鯨会議の方の問題でございまして、日、米、加の漁業条約の問題ではございません。これにつきましては、各国の提案内容その他発表できない部分も向うからの通告でございますし、またこちらの方で内容について、会議に出ないと必ずしも明確にはわからない部分等もございますので、現在の捕鯨会議の代表の方と時々連絡をとりながら進めておる状態でございます。カナダからのああいう提案は予測はされておつたわけでございまして、あれに対しては、こちらとしてはもちろん賛成いたしかねるという態度を堅持しております。  国民政府との交渉の問題でございますが、これは政府の交渉としては全然まだ未着手でございます。過去において新聞その他にいろいろと書かれたりなどしておりますのは、占領期間中に台湾におります米軍のMSAの関係の方が間に立ちまして、MSAが日本の民間人を選びまして、これで向うとの協力という関係を進めるという方向で処理していた問題がございます。これにつきましては、独立後はもちろんそういう問題は日本政府と国民政府という関係で規律して行かなければならぬわけでございまして、外務省の方とも十分連絡をとつて、その方針でやつて参る、こういう方針にしておりますし、近く十分な資料等も向うで整えた上で、いろいろな協議が始まることと思いますが、今までには政府間の交渉というものは全然ございません。  それから対韓国との関係でございますが、これはたびたび申し上げましたが、これにつきましては、日、米、加漁業条約の問題とは異なりまして、両方の代表団の間で、発表は両国協議の上で発表の内容等をきめる、それから発表する責任者は両方から一人ずつというふうな最初の協定がございます。それについて過般新聞等にも書き上げられましたが、韓国側の全権団の方で、新聞に協定外のことを発表したという点から、日本側において強硬な申入れをした。こういう事実もございまして、協定外のことについては、正式な発表ということはできないことになつておるので、こちらも、もちろん抗議を申し込んだというふうな関係から、日本側においても、協定以外には発表はできないわけでございますが、この交渉につきましては、別に現在までのところ、外務省に圧迫されて、漁業協定について水産庁が折れたというふうな事実は全然ございません。またその会議の内容等につきましても、非常な荒い問題で終始しておりまして、御存じの通りの李承晩ラインというふうなものを認めるか認めないかという点について終始して、それ以上には出ておらないわけであります。その範囲においては水産庁の、もちろんこれは業界その他の意見も十分聞いているわけですけれども、その意見を外務省の方において非常にゆるめるとかどうとかというふうな関係は、全然ないわけでございます。
  38. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 ただいまの御説明でありまするけれども、国際漁業関係につきましては、日本の漁民の総意を反映せしめる手段方法に欠くるところがあると私は思うのであります。このいわゆる国民外交、漁民外交という建前をとられて、日本の漁民の総意を反映せしめるという方法に、いま一段のごくふうが必要でなかろうか、こう私は思うのであります。ぜひその手段をとつてもらいたい。現に西経百七十五度線のごときも、われわれ水産常任委員会はむろんのこと、大いに関心を持ち、これに対する意見を持つ人々の多数の者の知らない間に、この百七十五度という線がきまつていたと私は信ずるのであります。私は、おそらく水産庁内にも、この線を設けたことに賛否両論があると思うのであります。もしこの線がいいのだとか悪いのだという長官の御意見を承ることができれば、私は非常に参考になると思います。ただこれをしいて要求する次第ではありません。  これに関連するところのかつお、まぐろ代船建造の資金の問題であります。最近の新聞によりますると、資本漁業会社がまぐろの船団をつくつて、すでに出漁したという記事があるのであります。その事実は、私はまだ確かめないが、おそらく実際出漁したのだろうと思うのであります。これは資本漁業の力によつて出漁したものといわなければならぬ。むろん合法的ではありましようが、これは試験的に出したのか、あるいは永久的の許可漁業の性格を帯びているのか、この点を承つておきたいのであります。とにかくかような船団をもつてまぐろをとりに行くことは、日本のいわゆるまぐろ、かつおのつり漁業者、なわ漁業者全体を圧迫するものであると私は思うのであります。さようにまぐろ、かつお漁業者を圧迫して、一面代船建造に対する資金は、政府はちつとも目鼻をつけない。このことは、やがてかつお、まぐろの遠洋漁業者が全滅して、その結論として、漁業者沿岸に襲来して、沿岸漁業の共食いが始まると、私は思うのであります。私の聞くところによると、長官はこの代船建造融資の問題は、一つの御意見があつて、漁船課の方にもいろいろの意思の表示は差控えるように命じておられるというようなことも聞くのでありまするが、それならばこれは非常にけつこうなことであると思うのであります。しかし実現せなければ、やがて五年の間には、かつお、まぐろの漁船の大半は働けないようになる、廃船同様になります。その半面には、資本漁業会社が船団を続々出します。そうして遠洋漁業者は全滅のおそれがある。そういう事態にもかかわらず、今日まぐろ船を一隻許可せいとか、かつお船を一隻許可せいとか、その要求に対して、水産庁は絶対にお許しにならぬではありませんか。それのみならず、三十トンの船を、古くなつたから五十トンにするのも許さない。そういう非常なきゆうくつな制限を加えておつて、その一面には代船の建造の融資の道も明けないで、資本漁業に対しては、船団等の編成をして出漁さす。これはまぐろ、かつおの遠洋漁業者を見殺しにするものであると思うのであります。こういう点に対してどういうお考えを持つておられるか、承つておきたいのであります。
  39. 塩見友之助

    塩見政府委員 まぐろ漁業の遠洋出漁の問題は、過去においても、司令部の許可のもとで個々に一件々々やつてつたわけでありますが、今般の許可は、やはり過去と同様、一件々々やつて行くわけであります。マッカーサー・ライン撤廃後のことでもありますので、日本から行ける独航船の操業できる区域というふうなものを避けまして、全部二船団とも赤道以南というふうなところに制限しまして、日本本拠でもつて出かけますところのまぐろ漁業者との競合がないように処置して、未開発の漁場、あるいは過去においてちよつと調査をしたというふうな漁場の方に向けております。その母船団の持つて行きますキャツチャーは、融資したりその他をして新造したものでなく、過去にかつお、まぐろの許可を受けておりますところの船の中から選んで行つたわけでありまして、これがプラスになつて母船団に行つておるわけではございません。これは全部過去の許可漁船でございまして、それについては、もちろん母船会社の船だけではなくて、できるだけその他の沿岸漁業者の船を中に入れるように慫慂いたしまして、大半はそういうふうな船を連れて行つておるわけでございます。  それからまぐろ、かつお漁業の漁船建造の資金の問題は、過去において開発銀行——復金から引継がれたものもございますが、開発銀行を通じて融資を受けておるわけでございますが、その中には償還期限が来ておるにかかわらず償還をしないで、しかも新しい船を別のところから資金をつけてどんどんつくつておるものもかなりある。もし償還をしさえすれば、それがほかの漁業者の方へもまぐろ、かつおの金融としては、信用力を増加して金の方もまわりがいいわけでありまするが、それを非常に利己的な形で、自分は借りた、償還能力があるにかかわらず、それを償還しないでおいて別の方でまた船をつくる。金利が安いとかいろいろな点もありましようが、そういうふうな事実が相当あるために、開発銀行の方としても、返すものは返し、つくるものはつくるという方向をきめてもらいたいという要望は強いわけでございます。その点については、私の方もかつお、まぐろ漁業者の組合にもたびたび申しましたし、そういうことによつて水産金融全体について非常に信用を落すようなことがあつては困るわけですから、そういう点は十分信用を回復するような形で運営して参りたいと考えているわけです。  それからかつお、まぐろの許可のトン数のわくの問題でございますが、これはあの漁区に制限されていた関係上、占領当時におきましては、日本の漁船全体についても厳重なわくがございましたし、かつお、まぐろについてももちろんあつたわけでございます。漁区が広がりました場合においては、もちろんトン数を増加して、経営的にも安定したかつお、まぐろ漁業を営みたい、こういう要求は当然漁業者の方から出て来るわけでございまして、それについては漁船のトン数のわく、あるいはかつお、まぐろ漁業許可わくというようなものが非常な制約になつておりますので、そこはできるだけ早く調整をする必要があると考えておるわけでございますが、さしあたりマッカーサー・ライン撤廃を見越しまして、許可わくについては従来の行き方をぐつとゆるめたわけでございますが、全体のわくの問題については現在検討を続けているわけでございまして、これは御趣旨に沿つた方向で、経営も安定され、新しく設定された漁区で、漁業者の希望に沿つて十分活動できるだけの船型に改良できるように、許可トン数のわく等についても調整は考えて参りたいと思つております。
  40. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 長官は、赤道直下の向うの方へやつて、かつお、まぐろの従来の漁業者をおびやかさないようにするというお言葉でありましたが、それは全然実行できないことであります。航海中にまぐろやかつおに行き当つて漁業者がそれをとらずに赤道を向いて船団が突破し得るというような、そんなばからしいことはないのであります。至るところでとるのであります。またかりに赤道直下にしましても、赤道直下からあそこに遊泳しているかつお、まぐろは、太平洋のこつち側へ来ないかというと、ああいう快速に遊泳する魚が移動するということは常識的にわかることでありまして、太平洋のどこでとつても影響はあると私は断ずるのであります。また船団を許すのならば、このかつお、まぐろの漁業者をもつて船団を組織せしめることをどうして許さないか、そのものはほつたらかしておいて、資本漁業者のみにこれを許すということは非常に不条理なことである。ことにまた船団については、かつお、まぐろはただいま申されるように数が制限されております。ところが今度の船団は指定漁業であつて、数の制限がない。それだから、あなたの方へ運動に行つて、運動効を奏するものにはさらにまた許すかもしれないという不安があるわけであります。そういう不安が横溢しておつて、かつお、まぐろ漁業者は意気消沈の傾きになつておるのであります。このことを考えてもらわなければ、単に今お話されるようにかつお、まぐろの漁業者は復興金融に金を返さぬから融資せぬとか、そんなばからしいことは言うべきことではないのであります。あの復興金融金庫法をつくるときは、私もあの委員会理事の一人でありました。そうして民間その他の危険を感ずる産業に対して融資する、一般金融機関からは安心できないというので貸さないところの、いわゆる不安なる産業に対して融資をするというのが、復興金融金庫の性格であります。そのとのき速記録をごらんになつたらはつきりしております。それがだんだんとかわつて、開発銀行へ債権が肩がわりになつたために、開発銀行はそういう昔の因縁も知らずに、また自分のところへ引継ぎを受けたから、しやにむに回収しなければならぬというために、その借銭のある漁業者は非常に苛酷な制裁を受けて、最近漁村で船主が財産を差押えられたり、競売されたりすることが起つて来たのであります。元来不安な産業に貸すという資金であるのに、今日苦しんでおるのは復興金融金庫の金を借りた人たちであります。これは水産庁としては、むしろそういう復興金融の焦げつきの債権は棒引にしてやれということを大蔵省へ進言し、そういう規定をつくるのが水産庁長官の親心であると私は思うのであります。どうかそういう意味で善処をお願いいたします。  もう時間の関係上お尋ねをいたしませんが、このかつお、まぐろの従来の遠洋漁業船は、わくをおかえになるお考えがあるということを承つて、いささか苦難に瀕している漁業者及びこれからこの漁業をやりたいという者に対しても、一つの福音と私は信じて了承をいたします。ただこの場合に、指定遠洋漁業を制限せよ、また今後船団をつくる場合は、従来のかつお、まぐろの漁業者を主体としてつくるべきであるという、この意見に対する長官の御答弁を願つておきます。
  41. 松田鐵藏

    松田委員 関連して。ただいま石原委員の御発言中に、資本漁業が船団を出した、その船団を出した漁船というものは今までの業者でないようなお話がありましたが、もし石原委員の言うようなお話であつたならば、とんでもない問題でありますが、この点ひとつはつきり御答弁を願いたいと思います。
  42. 塩見友之助

    塩見政府委員 許可をしましたのは日水と大洋でありまして、これは今までの漁業者でございますし、それから日本独立前においても母船式の漁業を再々許可をしてやらせておる漁業者でございます。そのやり方も、もちろんキヤツチヤーとしましては新しく自分のところで船をつくつてやるというふうなことは許しておりません。現在かつお、まぐろの許可を持つている船を連れて行くという条件でやつておるわけであります。ですから同じ船でもつて操業する海面が広がつた、その関係は母船でなければ行けない海面に広がつたというような形でありまして、その点については、かつお、まぐろ漁業者の組合その他関係漁業者意見も十分聞いて、調整はとつております。
  43. 永田節

    永田委員 水産庁にお伺いいたします。御存じの通り豊前海は、水深五メートルの線を合せまして約七千四百町歩の浅海、干潟がありまして、かような広大なる地区が令日まで放置されておるのでありますが、この海面を強力に開発することができますれば、約二千百町歩以内におきまして貝類の養殖場となり、一年に約一千万貫の生産があがり、これによりまして、一貫目について約三十円といたしましても優に三億円の水揚げが予想されるのであります。さらにまた水深五メートルの地点で約三千六百町歩のうち、千町歩においてのりの養殖をするといたしましても、三千五百四十万枚の生産が考えられ、これが単価約三円五十銭といたしましても、八千八百五十万円というふうな水揚げが現われて来るのであります。これに対しまして、先般松田委員とともに実地について調査したのでありますが、その調査の結果、開発の事前といたしまして、この瀬戸内海に魚礁の設置に対する補助をしなければ、とうてい地元の負担金によつてはこの実現が困難であるというような実情もうかがわれますので、魚礁の設置の補助について政府はどういうようにお考えになつておりますか。また浅海、干潟を利用する養殖場の造成に当りまして、この補助を政府はどういうようにお考えになりますか。またのりの養殖場も魚礁も兼ねまして防波堤の築造、あるいは耕耘機械の購入というような問題も、あわせて全額国庫補助というようなことを、政府の方においてはどういうふうにお考えになつておられるか。さらにまたのり、貝類の共同処理場の設置に対して、あるいはまた共同加工場の設置に関しまして、特融をお認めになるかどうかということも、あわせてお伺いしたい。さらにまた浅海増殖に伴いまするところの種苗を国が無償で配付することができるかどうか。以上の点について、一応水産庁の御意向を承りたいと思います。
  44. 塩見友之助

    塩見政府委員 浅海、干潟の利用を高度化することは、これは非常に大事なことだと存じております。ただいま御質問のありましたところの漁礁の設置については、現在補助はたしかしておらないと思いますが、それの効果等につきましていろいろ研究すべき事項が相当あるようでございまして、研究の方は至急やつて参るように今準備中でございます。ことに浅海、干潟、またそういうふうな問題の多いところの地帯について、それをやつて参りたいと考えております。  それからまた防波堤の築造につきましては、これは囲われた中の養殖をするものが非常に高価なものである場合には、相当採算もいいわけでございますが、防波堤につきましては、これを投石でやるか、またその海の深さと海底状態と波の強さ、方向等につきまして、もし相当大きな施設となりますと、相当の金がかかるという関係から、投資効果と見合つてどういうふうになるかという点につきまして、十分研究して参らなければならないと思つておりまして、現在そういう点につきましては、増殖の関係者のみでなくて、土木の関係者にも十分研究させてみたいと思つて、今それを進めておる状態でございます。まだ具体的なところまでは行つておりません。  耕転機械につきましては、これは必要性が十分ありまするので、これに補助をやつておりますが、全額というところまでは行つておらないわけで、ほかの方の各種の補助と見合つて、適当な比率をたしかきめております。三分の一でしたか二分の一でしたか、詳細にちよつと承知しておりません。  それからのりや貝の共同処理場の問題でございますが、こういうふうなものについては、特融の方で広げて行くという方針をとつて参りたいと思います。ことに共同の処理場等につきましては、沿岸の零細な各漁民にとつては特に必要だと思います。  それから種苗につきましては、これは非常に大事な問題でございますが、今のところ無償配付は考えておらないわけでありまして、種苗の生産については、国なり県なりでもつて相当力を入れてやつてつて、できるだけ安くというふうなことは考えております。しかし今のところ無償まで行くことは、ほかのいろいろな関係もございますので、できるだけ種苗についてはやはり漁業者のみにまかせないで、国なり県なりが力を入れて、それでできるだけ安いものを配付できるような処置を考えております。
  45. 川村善八郎

    川村委員長 本委員室は午後一時から大蔵委員会が使用することになつておりますので、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時二十八分散会