○松田
委員 私は、先ほどの
長官の御答弁のうちに、これからのわれわれの態度に対して非常に大きな心配の点が
考えられるのでありまして、
長官の御
意思をひ
とつ承りたいと思うのであります。先ほど
石原委員からの御質問に対する答弁でありますが、私は塩見
長官に対しては、官房長当時からおつきあいを願
つて、その前はとかくの御批判のあ
つた方であるということを聞いておりましたが、官房長当時の御手腕に対してはまことに敬意を表してお
つたのであります。しかして藤田
長官は、ほんとうからい
つたならば、平和な時代であ
つたならば、男爵か子爵をもらう資格のある三国
漁業協定の線についての
努力をされて、成功されたのであります。それが自由党内閣において首に
なつたということは、私
どもは実に解せない問題である。これは私が
国会議員として出て来てからの一番の疑問の点であるのであります。これはどういうことであ
つたかというと、三国
漁業協定というものは、
日本の将来の
漁業に対して、
漁民の迫害されておる
公海に、沿岸から再び大洋に向
つて進出する機会を与えられるというものであ
つたのであります。ゆえに藤田前
長官は
委員会と完全なる了解、また審議の上に立
つて、あの三国
漁業協定について身をも
つて努力されたのであります。ゆえにあの成果を上げたのであります。この功成り名遂げた人が首に
なつたという理由については、私は
委員会では発言でき得ないけれ
ども、まことにその裏面は恐ろしいものがある。しかしてわれわれが尊敬し、信頼した塩見
長官においても、前
長官と同様に、
漁民のためにあらゆる
努力をされて、たとえば藤田前
長官同様に罷免をされようとも、
漁民のために
努力をされることであろうということを私は期待し、そういう
考え方を持
つてお
つたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかして今日
朝鮮との
漁業協定、
台湾との
漁業協定、かような問題が今
協議されつつあるのでありますが、これに対して、
大臣を補佐して
水産の行政をつかさどる
水産長官が、ただ
外務省にその
漁業協定をまかせておけばいいというようなお
考えでおられるということに対して私は今までの期待が裏切られたのであります。この点に対して、決してさようなことはないであろうと私は信じておるのであります。
次長を通じてか、また部長を通じてか、必ずや自己の信念を
外務省に披瀝して、真剣にな
つて取組んで、強硬に進んでおられることだろうと私は信じおるのでありますが、いろいろな
事情からして
長官は、
外務省が一本にな
つてや
つておるのだと言明されておることでなかろうかと、私は
考えておるのであります。この点願わくば、私の現在
考えておる点に対して同一であ
つてくれと願うものであります。
さてかような点から行きまして、
水産の行政は実にそのときどきによ
つていろいろな変化を来して、ちようど魚が大洋に泳いでいると同様に、目もあれば、しつぽもあれば、ひれもあるということで、非常に紆余曲折があ
つて行くものと、私はかように
考えておるが、賢明なる
長官は、多分にそれを
考えて
努力されておることだろうと私は信じておるのであります。しかし先ほど
長官の言われるところの、
大臣の
指示通りに動くという言葉に対しては、まことに私は残念に思うのであります。
大臣は、それは
大臣としての
立場から、いろいろな無理な要求もよそからも来ることであろう。いろいろな政治
関係からいろいろな無謀なこともやることもないととも限りません。しかも廣川農林
大臣はその点に対しては、わが党の一大エキスパートであると確言しても私はかまわないのであります。その点に対して
長官の苦労のほどは察しておるのであります。しかしてそうい
つたときにおいて、
長官の態度というものは、われわれが信頼する
長官であればあるほど、真剣にな
つていただかなければならないのに、残念ながら
議会を軽視しておる点がたまたま見受けられる。要するに苦衷はお察し申し上げます。しかし
表面に現われている点から言
つて、
議会軽視の点が相当現われておることは、私は非常に遺憾でございます。なぜもつと突つ込んで
お話を願
つて、協力を求められないかというところに、私
どもの塩見
長官に対する信頼感がちよいちよい薄らいで来ておるような傾向を来しておるのであります。
日本の国が終戦後において、今日まで立ち上り、これまでの経済の確立ができ、治安の維持ができておることは、木村君はいなと言うかは存じませんが、連合国の好意ある援助によ
つてなされたものであります。しかし今日国民の中に、ややもすれば反米的思想が芽ばえて来ておることは、これこそは何であるか。
日本の最も正しい、
日本の美徳というものは家族制度でありこの家族制度の伝統、これが
日本の道徳であります。しかるに朝から、昼でも、アメリカの兵隊がパンパンガールと手をつないでああして歩いておるような
状態が、
日本の道徳の上から、敗戦国なるがためにじつとわれわれはこたえておることである。言うことのでき得ない現状にあることを、
日本国民のだれしもこれはいやな思いをしておる。そうした小さな事柄によ
つて、
日本国民の中にこの恩義ある連合国に対して多分に反米的思想が芽ばえて来ておる現実の姿であります。
長官の苦衷はよくわかる、苦労はよくわかるが、多分に反塩見的な議論がこの
国会にも出て来ておるということは、あなたは非常に大きな苦しみをしておるが、この
議会軽視というような事柄が—やむを得ずや
つておることであろうが、ここに非常な蹉跌を来しておるのではないかと、私は実に心配しておるものであります。しかし四月の十五日以降、
日本の国がただちに独立国家と
なつたときには、今日のような
状態で、この
国会が運営されると思
つたら大きな間違いだ。四月の十五日を期して、
国会というものはほとんど様相はかわ
つて行くことを賢明なあなたはよく御認識であろうと私は
考えておるのであります。
まずこの程度にまで申し上げまして、私は
長官の将来の善処を
希望申し上げ、
委員会との緊密なる
連絡をと
つていただくならば、われわれは
長官に対しあらゆる協力を惜しむものではなく、
国会と行政との間には円滑なる運営ができることと私は信じておるものでありまして、今後ともにある程度までのことは打明けて御
協議あらんことを
希望して、
公海漁業の問題をきようは私は終らしていただきます。
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